Archive for the ‘structure’ Category

クラウド間の移行ツール (Structure 10より)

Friday, September 3rd, 2010

クラウド・コンピューティングのカンファレンスでるStructure では、LaunchPad (ローンチ・パッド) というセッションにおいて、ベンチャー企業が最新のクラウド技術を披露した。LaunchPadにおいて、最優秀賞に選ばれたのが、CloudSwitch (クラウド・スイッチ) というベンチャー企業である。

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CloudSwitchとは

LaunchPadでは、CloudSwitchの共同創設者であるEllen Rubin (エレン・ルビン) が、CloudSwitchの概要について説明した。CloudSwitchは、企業内のクラウドで稼動しているシステムを、アマゾン・クラウド (Amazon Web Services) に、移行するサービスを提供している。企業のシステム管理者は、CloudSwitchをダウンロードして、仮想システム上にアプライアンスとしてインストールする。CloudSwitchを起動すると、上のスクリーンショット (出展:CloudSwitch) のように、左側に企業内クラウドで稼動しているシステムが表示され、右側にアマゾン・クラウドの状態が表示される。

この事例は、企業内クラウドで稼動している「CentOS5.4-SugarCRM」というシステムを、アマゾン・クラウドに移行して様子である。操作は至って簡単で、アマゾン・クラウドにログインして、中央にある「Move to Cloud」というボタンを押すだけである。画面は、丁度、ボタンを押したところで、右側の画面に、移行処理の状況が表示されている。反対に、アマゾン・クラウドで稼動しているシステムを、企業内クラウドに戻す際は、中央にある「Move Back」ボタンを押すだけである。CloudSwitchは、このように簡単な操作で、企業内クラウドとアマゾン・クラウドの間で、システムをスイッチできる。

CloudSwitchの動作概要など

この事例では、CentOS5.4-SugarCRMという、CentOS (LinuxベースのOS) で稼動している、SugarCRM (顧客管理アプリケーション) を、社内クラウドからアマゾン・クラウドに移行している様子である。このシステムは、企業内のVMware上で稼動しており、技術的には、VMwareの仮想イメージを、アマゾン・クラウドの仮想イメージ (Amazon Machine Image) に変換することになる。アマゾン・クラウドでは、仮想システムとしてXenが使われているため、CloudSwitchが背後で、VMwareからXenへのコンバージョンを行う。利用者は、企業のデータセンターから、ファイアーウォールを通して、アマゾン・クラウドで稼動している、SugarCRMを利用する。クラウド間の通信では、データは暗号化され送受信される。CloudSwitchを利用する目的は、プライベート・クラウドとパブリック・クラウドを、用途に応じて活用することである。本番システムは、社内クラウドで動かし、開発環境をアマゾン・クラウドに構築するような使い方である。また、災害対策の環境を、アマゾン・クラウドに設けることもできる。LaunchPadでは、ベンチャー企業が解釈する、ユニークな技術が公開された。その中で、CloudSwitchが、群を抜いて、印象的であった。

グリーン・クラウド (Structure 10)より

Friday, September 3rd, 2010

クラウド・コンピューティングのカンファレンスでるStructure の、LaunchPad (ローンチ・パッド) において、アイスランド・レイキャビックに拠点を置く、GreenQloud (グリーン・クラウド) というベンチャー企業が、環境に優しいクラウドを発表した。

GreenQloudとは

LaunchPadで、GreenQloudの共同創設者であるEirikur Hrafnssonが、製品概要について説明した。GreenQloudは、アイスランドにおいて、地熱発電と水力発電を利用して、100%クリーンな電力で、クラウド・サービスを提供している企業である。GreenQloudは、リアルタイムで、エネルギー消費量や二酸化炭素排出削減量を表示し、利用者は、クリーンな環境を数字で把握できる。GreenQloudは、再生可能な電力を使用しているが、料金は市場レベルか、それより安いとしている。クラウド・サービスの料金は、仮想マシン、ストレージ、ネットワークを使用した時間で課金される。GreenQloudは、現在は試験運転中で、ベータ・サービスは今年の第四四半期から行われ、本格稼動は2011年を予定している。GreenQloudのもう一つの特徴は、地理的に北米と欧州の中間地点に位置することである。また、アイスランドは、大西洋における、ファイバー・ケーブルのハブでもある。これらの特性を生かして、GreenQloudは、北米と欧州の、両地域の利用者を対象とするサービスを目指している。GreenQloudは、アマゾン・クラウド (Amazon Web Services) と同等の機能を提供し、アマゾン・クラウドと同じAPIを提供している。このため、使い慣れたインターフェイスで、クラウドを操作でき、アマゾン・クラウドへの移行も容易である。

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GreenQloudが、エコなクラウドである背景には、アイスランドで運営しているデータセンターである、Verne Globalの施設を利用しているためである。Verne Globalは、地熱発電と水力発電を利用しており、100%再生可能電力で運営している。アイスランドでの発電施設は、上のグラフィックス (出展:Verne Global) の通りで、赤色の円が地熱発電を、水色の円が水力発電を示している。実線は送電線のルートと容量を示している。電気料金については、今後20年間保障されている。

環境問題

翻ってアメリカにおいて、Facebookは、利用者数の急増に伴って、Prineville (オレゴン州) に、巨大なデータセンターを建設中である。このデータセンターは、石炭による火力発電を利用する予定である。このためGreenpeaceは、Facebookはクリーンな電力を使用すべきとのキャンペーンを展開している。Greenpeaceは、Facebookのサイトで、50万人の署名を集め、Zuckerbergに書簡を送付した。このキャンペーンは、大きなうねりにはなっていないが、データセンターの将来動向を示唆している。IT企業は、グリーンなクラウドで環境問題に取り組み、社会的な責務を果たすことが求められてきた。グリーンなクラウドがキーワードになりつつある。

アメリカ連邦政府のクラウド戦略

Friday, August 27th, 2010

オバマ大統領は、アメリカの景気の回復のペースが遅く、人気が低迷している。「Jobless Recovery」といわれている通り、雇用情勢が一向に改善しなくて、オバマ政権の経済チームは、苦戦を強いられている。オバマ大統領の景気対策法 (American Recovery and Reinvestment Act of 2009) は、規模が充分でないという議論や、GDP浮揚の効果はあるが、雇用の促進に直結していないなど、その効果を疑問視する声も少なくない。様々な議論があるものの、景気対策法の執行状況を克明に公開しているのが、Recovery.govというウェブサイト (下のスクリーンショット) である。このサイトで景気対策法に基づく、プロジェクト進捗状況、予算執行状況、新規雇用人数等を公開している。

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クラウドへの移行

このRecovery.govは、今年5月に、アマゾン・クラウド (Amazon Web Services) 上に移行され、ここで運用されている。今までに、アメリカ連邦政府のプロジェクトを、試験的にアマゾン・クラウドで運用するケースはあったが、大規模な本番システムをアマゾン・クラウドで運用するのは、Recovery.govが最初のケースである。連邦政府のクラウドへの対応は、歩みが速くはなかったが、Recovery.govのクラウドへの移行で、各省庁においてクラウドへの流れが加速しそうな状況である。

アメリカ連邦政府のCIOであるVivek Kundra (ヴィヴェキ・カンドラ) は、Open Government Initiativeのブログの中で、Recovery.govをクラウドに移行したことについて説明している。以前にもレポートした通り、Kundraは、オバマ大統領の下で、Open Government Initiativeを推進し、連邦政府の情報公開を進めている人物である。Kundraは、ブログの中で、Recovery.govをクラウドに移行した理由は、連邦政府の無駄を省き、機能していないシステムを廃止するプログラムの一環であると説明している。クラウドに移行することで、今後一年半で$750,000の予算削減になるとしている。また、クラウドに移行することで、ダウンタイムが大幅に短縮され、システムを安定して稼動させることができるとしている。

クラウドへの移行と安全性

Recovery.govを、クラウドに移行するプロジェクトは、同サイトの責任者であるRecovery Accountability and Transparency Boardが推進した。この委員会は、実際のシステム移行作業を、Smartronix (スマートロニクス) という企業に委託して実行した。Smartronixは、Hollywood  (メリーランド州) に拠点を置く、軍事システムを中心としたシステム・インテグレータである。Smartronixは、様々なクラウドの評価を実施し、今年4月に、Recovery.govのクラウド・インフラとして、Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) を選定した。そして今後は、Smartronixが、Recovery.gov向けに、クラウド・インフラの運用管理を実施することとなる。

Recovery.govが、クラウドに移行する最初のケースであり、政府内で安全性の問題が議論となった。委員会の会長であるEarl Devaney (アール・ディベイニー) は、クラウドの効用だけでなく、その安全性について、ウェブページで解説している。Devaneyによると、Amazon EC2で稼動しているRecovery.govが、ハッカーからの攻撃を受けて、データを改造された場合は、五分間以内でデータを復元できるとしている。また、Amazonとの契約で、Recovery.govを運用するサーバはすべて、アメリカ国内に設置されていることを明らかにしている。Recovery.govが取り扱うデータそのものは、機密情報ではないが、システムのセキュリティー対策には万全を期している。

クラウドの安全対策基準

Recovery.govをクラウドに移行するために、Federal Information Security Management Act (FISMA) と呼ばれる法令に準拠する必要があった。FISMAは、2002年に制定された法令で、連邦政府の情報システムのセキュリティーを担保することを目的としている。Recovery.govをAmazon EC2に移行するために、FISMAに沿って、運用上のセキュリティー問題の検証や、運用手順の制定などが実施された。Recovery.govが、クラウドに移行する最初のケースであり、このプロジェクトがクラウドの安全性を検証した最初のモデルとなった。今後、各省庁のシステムをクラウドに移行する場合は、同じプロセスを繰り返すのは無駄であり、新しい基準が制定された。

前述の、連邦政府CIOであるKundraは、Cloud Computing Advisory Councilという諮問委員会を設立し、ここでセキュリティー専門家により、クラウドに関するセキュリティー・プログラム、Federal Risk and Authorization Management Program  (FedRAMP) を制定した。FedRAMPとは、各省庁がシステムをクラウドに移行する際に、セキュリティー要件の設定や、購買可能なクラウド企業を登録するプログラムである。各省庁が導入するクラウドを、すべて検証するのではなく、事前に承認したベンダーを定めておこうという試みである。対象となるシステムは、アウトソース・システムや、省庁間を跨る大型システムであるが、最初はクラウドに限定して、このプログラムを運用している。FedRAMPの制定により、政府内でクラウド導入の手続きが簡素化され、クラウドの普及が進むとみられている。

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クラウドの開発

連邦政府は、Amazon Web Servicesのようなパブリック・クラウドの利用だけでなく、自らプライベート・クラウドの開発も行っている。NASAは、オープンソースを利用して、独自のクラウド・システムであるNebula (ネビュラ) を開発中である。Nebulaは、コンテナー型のデータセンター (上の写真、出展:NASA) に実装するクラウドとして開発されている。コンテナー型のデータセンターとは、トラックで使用するコンテナーに、システムを高密度に実装したデータセンターである。Nebulaは、Federal Cloud Computing技術開発のテストベッドとして開発され、2011年の完成を目指している。アメリカ連邦政府のクラウドへの取り組みは、歩みがゆっくりであったが、今年に入り大きく動き始めた。

Cloud 2 (Structure 10より)

Friday, August 13th, 2010

6月23日から24日まで、カリフォルニア大学サンフランシスコ校で、Structure (ストラクチャー) という、クラウド・コンピューティングのカンファレンスが開催された。Structureは、GigaOM Network (ギガオム・ネットワーク) が主催するカンファレンスで、今年で三年目を向かえ、クラウド最新技術動向が、パネル・ディスカッション形式で議論された。クラウド業界の主要人物が集い、意見交換を通して、クラウド技術と進行方向が議論された。

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Hello, Cloud 2

カンファレンス初日に、Salesforce.comの会長及びCEOであるMarc Benioff (マーク・ベニオフ、上の写真右側、出展はいずれもGigaOM Network) が、「Hello, Cloud 2」と題する、基調講演を行った。Benioffは、Structure主催者である、Om Malik (オム・マリック、上の写真左側) との対談形式で、新世代のクラウドについて意見を展開した。Benioffは、この新世代クラウドを、Cloud 2と命名している。対談における、Benioffの論旨を纏めると、以下のようになる。

歴史を振り返ると、Salesforceは、クライアント・サーバ形式で提供されていたサービスを、オンデマンド形式で提供することで、事業を始めた。このシステム形態を、今では、Cloud 1と呼んでいる。そしてCloud 2は、Salesforceが提供している、最新のクラウドを指しており、クラウドとソーシャル・ネットワークとモバイル・アプリケーションが統合したものである。Benioffは、このカンファレンスの直前に、日本を訪問しており、Cloud 2の説明で、日本市場の動向をしばしば引用した。日本市場は急速に、クラウドに向かって進んでおり、「クラウド・コンピューティングへ、大規模なシフトが起こっている」と表現した。また、日本は、モバイル・コンピューティングの先進国であり、更に、ソーシャル・ネットワークでは、Mixiが幅広く利用されている。このように、日本は、クラウド・コンピューティングとモバイル・コンピューティングとソーシャル・ネットワークが共存しており、Cloud 2の環境が整っているとしている。その一方で、日本ではクラウドとは名ばかりの、False Cloud (偽のクラウド) も多く、注意が必要であると警告した。

Cloud 2の概要

アメリカにおいては、Facebookが市場から絶大な支持を得ており、クラウド技術の手本となっている。Salesforceは、Facebookの機能を企業に取り込むことを目指して、Cloud 2の開発をスタートした。Cloud 1では、企業システムをAmazon形式で提供することを目指したのに対して、Cloud 2ではそれをFacebook形式で提供することを目指した。Salesforceは、今年6月に、Cloud 2を製品化した、Chatter (チャター) というシステムを発表した。Chatterは、ソーシャル・ネットワーク機能を統合した、コラボレーション・プラットフォームで、前述の通り、Facebookの機能を、企業システムに取り込んだ構造となっている。

企業における利用者は、Chatterを使えば、Facebookのインターフェイスで、業務を遂行することができる。Profileというページ (下のスクリーンショット) は、利用者のプロフィールを掲載している様子である。個人の連絡先や、仕事での専門分野などを公開している。また、Feeds (画面中央部) では、Facebookと同様に、利用者の最新情報を掲載できる。利用者が担当している商談状況を発信できるだけでなく、商談が行き詰まった際には、社内に助けを求めることができる。この画面では、John Allenが担当している、Green Dot Media社の商談状況について、進捗状況を発信している。また、Allenが、Green Dot Media社へのアプローチ方法について助言を求めると、同僚であるLaura Ashleyから、Feedの中に回答が寄せられている。Facebookののりで、社内でのコラボレーションが進むことを目指している。

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Cloud 2の特徴

クラウドのサービス基盤については、上述の通り、Cloud 1はAmazonをモデルにしており、Cloud 2ではFacebookのインターフェイスを取り入れている。利用者への情報提示方法は、Cloud 1ではTabsをクリックして情報を閲覧していたが、Cloud 2では、上述の事例の通り、Feedsに表示される。非常にシンプルな表現であるが、高度な情報技術を使っている。Feedsでは、利用者や同僚が投稿したテキスト・メッセージが掲載されるだけではなく、PowerPointのようなファイルを掲載し、その内容を閲覧できる。また、Salesforceが提供している、CRMアプリケーションから、第三社が提供しているアプリケーションまで、Feeds内で実行できる。必要な情報を、ウィンドウを遷移することなく、一つのページの上で見ることができる。また、これらの情報は、Pull (探しに行く) ではなく、Push (必要情報が配信) される。そして、画面の操作は、Cloud 1ではマウスでクリックしていたが、Cloud 2では、iPadをクライアントとして、タッチ操作で行うこともできる。Benioffは、講演の中で、iPadの機能に触れて、タッチ・インターフェイスが、モバイル・コンピューティングを加速させると強調した。iPadの登場で、今まで言われてきたモバイル・クラウドが、本格的に立ち上がる兆しをみせている。

考察

Salesforceが提唱しているCloud 2は、このように、Facebookのインターフェイスで、iPadを端末とするクラウド、と纏めることができる。ソーシャル・ネットワークの登場とともに、多くのソフトウェア企業が、ソーシャル・ネットワークの機能を、企業での生産性向上に適用することを試みた。IBMがLotus製品で、ソーシャル・ネットワーク機能を実装し、社員間でのコラボレーションの促進を目指した。ここにきて、Facebookが、ソーシャル・ネットワーク市場で圧倒的な人気を集め、Facebookのインターフェイスが、デファクト・スタンダードとなってきた。Salesforce Chatterでは、その標準仕様を採用している。Facebookが市場を独占するとともに、クラウド技術が新しい段階に進み始めた。ここ最近は、ベンチャー・キャピタルのクラウド技術に対する投資が、目立って増えてきており、クラウド市場が大きく動き始めた。