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フェイスブック個人情報の不正使用問題、Cambridge Analyticaとはどんな企業か、大統領選挙への影響はあったのか

Saturday, March 31st, 2018

Facebook利用者の個人情報が不正に使われ、情報管理の責任が厳しく問われている。この疑惑の中心は英国のCambridge Analyticaというベンチャー企業で、5000万人の個人情報を不正に入手した疑いがもたれている。Cambridge Analyticaはこれら個人情報をAIの手法で解析し、米国大統領選挙に影響を与えたとされる。

出典: Google

Cambridge Analyticaとは

Cambridge Analyticaはロンドンに拠点を置くベンチャー企業で、データサイエンスの手法で消費者や有権者のパーソナリティを把握する技術を開発 (上の写真、本社ビル)。二つのソリューションを提供しており、広告企業には消費者を対象としたターゲティング広告を、選挙関係者には有権者を解析する選挙ツールを提供する。Facebook個人情報が有権者の政治指向を把握するために使われたと疑われている。

Psychographic Analysisという技法

消費者や有権者を解析する際に「Psychographic Analysis (心理解析)」と呼ばれる技法が使われる。これは、個人の性格を把握しグループ化する手法で、Facebookプロフィール情報を使って、利用者の性格特性を導き出す。具体的には、利用者がLike Button (いいね!ボタン) を押した情報でパーソナリティを把握することができる。

モデルを応用すると

このモデルを使うとアルゴリズムは、画家のダリ (Salvador Dalí) が好きな人は開放的な性格で、ジョギングを趣味とする人は几帳面な性格と判定する。また、アニメや漫画が好きな人は社交的でないと診断する。これを選挙に応用すると様々な知見を得ることができる。このモデルは共和党支持者と民主党支持者を正確に判定できる。更に、共和党支持者のなかで、閉鎖的で心配性な有権者を特定することができる。アルゴリズムはこのグループが低学歴で高齢の男性の共和党支持者と推定する (トランプ大統領のコア支持者層を示す)。Psychographic Analysis はLike Buttonを押すパターンとパーソナリティの間には強い相関関係があることを示している。

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Psychographic Analysisとは】

ベースとなる研究論文

この技法のベースとなる理論は、ケンブリッジ大学心理学部 (Department of Psychology, University of Cambridge) とスタンフォード大学コンピューターサイエンス学部 (Department of Computer Science, Stanford University) が共同で開発した。この手法を使うとLike Buttonデータをアルゴリズムに入力すると、被験者のパーソナリティを5つの要素で推定する。人間のパーソナリティは五つの要素で構成され、それぞれ、Openness(開放性)、Conscientiousness(良心的)、Extraversion(外交的)、Agreeableness(協調性)、Neuroticism(不安感) となる。これらがどんな比重で構成されるかで人の性格が決定づけられる。

出典: Michal Kosinski et al.

Personality Test

両大学はPsychographic Analysisについて論文「Computer-based personality judgments are more accurate than those made by humans」でその手法を発表した。この手法は被験者のパーソナリティをFacebookのLike Buttonから判定する。最初に、被験者 (70,520人) がPersonality Test (性格診断テスト) を受け、性格を判定する。性格は上述の五つの要素で構成され、Personality Testによりそれぞれの重みが決まる (上のグラフィック、左端)。

Facebook Likes

次に、これら被験者の Facebook個人プロフィール情報を参照する。Like Buttonを押した対象 (例えばRunning、Ford Explorer、Barak Obamaなど) を把握し、被験者がどの項目に興味を示しているかを掴む (上のグラフィック、左から二番目)。

情報収集方法

これら個人情報を収集するためにアプリ「myPersonality」が開発された。利用者はこのアプリでPersonality Testを受け自分の性格を知ることができる。また、利用者の許諾のもと、アプリはLike Buttonが押された情報を収集する。これらの情報は学術研究のためだけに利用された。

機械学習の手法

Personality TestとLike Buttonの情報が集まると、次に、これらデータ間の関連性を機械学習 (Linear Regression) の手法で導き出す。パーソナリティといいね!ボタンの関連性を定義する変数を導き出す。例えば、外向性が強い人は、Running、Ford Explorer、Barak Obamaなどの項目をどんなパターンで好むかを算定する (上のグラフィック、左から三番目)。

モデルで判定

決定したモデルを使って実際の判定を実施する。Personality Testを受けていない被験者のLike Button情報をこのモデルに入力すると、個人のパーソナリティを判定する。上述の五つの構成要素がどの割合であるかを推定する (上のグラフィック、右端)。このモデルはLike Button情報だけで、その人物の性格を推定できることを示している。

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モデル開発を開始

Cambridge Analyticaは米国大統領選挙に先立ち、モデルを開発するために、Psychographic Analysisを開発したケンブリッジ大学にコンタクトし協力を求めた。しかし、賛同をえることができず、この研究に詳しい同大学のAleksandr Kogan教授に支援を求めた。Kogan教授は上述の手法をベースにモデルを開発した。

5000万人の個人情報を収集

Kogan教授は上述「myPersonality」を模した性格診断テストアプリ「thisisyourdigitallife」を開発し、Facebook利用者27万人がこれを利用した。利用者はこのアプリで自分のパーソナリティを知ることができる。同時に、アプリは個人情報にアクセスすることを求め、プロフィールデータが収集された。更に、アプリは利用者の友人のプロフィール情報にもアクセスし、Kogan教授は5000万人分の個人情報を入手した。このデータに対しPsychographic Analysisの手法で解析を実行し、3000万人のパーソナリティを推定した。

個人情報を不正に提供

Kogan教授はこれらの情報をCambridge Analyticaに提供したとされる。その当時、Facebookは利用者の許諾を得ると、第三者が個人情報を収集することを認めていた。しかし、収集した情報を他人に渡すことは禁じていた。ここが問題の核心部分で、Facebookの規定を逸脱し、Cambridge Analyticaは個人情報を不正に受け取った。Cambridge Analyticaはこれを否定しているが、英国政府はデータ不正使用の容疑で捜査を開始した。

個人情報はどう使われた

Cambridge Analyticaに渡された個人情報がどのように使われたかについては明らかになっていない。Psychographic Analysisを選挙戦に適用すると、Like Buttonが押された情報から、有権者のパーソナリティを把握できる。ひいては、有権者の政治的指向を把握でき、最適なキャンペーンを展開できる。

出典: Reuters

有権者の弱点を突く

この問題を告発した元社員Chris Wylie (上の写真、英国議会での公聴会) は、このモデルを米国大統領選挙にどう適用したかについて証言した。このモデルは有権者の精神的な弱点を洗い出すことを目的としていた。更に、この弱点を刺激するフェイクニュースをターゲティング送信することで、有権者を特定方向に向かわせ、トランプ候補への投票を促すとしている。ただ、Wylieは、モデルを運用するプロセスには関与しておらず、実際にどう活用されたかは分からないとも述べている。

効果を疑問視する声も

Psychographic Analysisは既にターゲティング広告で使われており、消費者のパーソナリティを把握し最適な広告メッセージが配信されている。Netflixは視聴者が好むであろう映画を推奨するためにこのモデルを使っている。一方、この手法が有権者にどれだけインパクトを与えるかについては疑問視する声が多い。有権者の心を動かすのは難しく、Cambridge Analyticaが大統領選挙に及ぼした影響は限定的であるとの見方が大勢を占めている。

Facebookの責任は重大

大統領選挙への影響のあるなしにかかわらず、Facebookは個人データ管理の責任を厳しく問われている。Facebookは個人情報保護対応を進めており、プロフィール設定方式を分かりやすくした。今までは、個人情報設定は20画面に分散していたが、これを1つの画面に集約し、情報管理を容易にした。また、Facebookは第三者機関が生成する解析データの提供を中止した。データ解析企業ExperianやAcxiomなどがオフラインデータを解析し、これを広告主に提供しているが、これを停止すると発表した。

真相究明

Cambridge Analyticaは米国大統領選挙だけでなく、英国Brexit国民投票で離脱派の解析ツールとしても使われた。多くの識者は同社の影響力を疑問視するが、国民世論がデータ解析で操作されているとの感触はぬぐい切れない。Cambridge Analyticaが不正にデータを受け取り、大統領選挙に影響したのか、真相解明は今後の捜査を待つことになる。

FacebookのBrain-Typing研究、脳から直接コンピュータに文字を入力

Friday, June 16th, 2017

Facebookは脳の情報を出力する研究を進めている。これは「Brain-Typing」と呼ばれ、頭で思うだけで文字を出力する。今はデバイスを操作する時に音声で指示するが、この技術が完成すると声に出さなくても頭で思うだけで操作できる。究極のインターフェイスでデバイスと意思疎通ができ生活が劇的に変わる。

出典: Facebook

ブレインインターフェイスを開発

Facebookは開発者会議「F8」でブレインインターフェイスを開発していることを発表し、このプロジェクトの存在を明らかにした (上の写真)。これはRegina Duganが主導するプロジェクトで、脳の情報を出力する技術や皮膚経由で情報を入力する技術を公開した。DuganはDARPA (アメリカ国防高等研究計画局) で長官を務め先進技術の開発に寄与してきた。その後、Googleに移りATAP (Advanced Technology and Projects、社内インキュベータ) 部門を創設した。ここでTango (拡張現実技術) やProject Ara (モジュール方式スマホ) が生まれた。

毎分100語の早さで出力する

ブレインインターフェイスには様々な方式があり多くの研究機関が取り組んでいる。医療分野ではデバイスを脳にインプラントし会話を実現する方式が研究されている。Facebookは一般消費者を対象にしており、非侵襲性 (Non-Invasive) のデバイスで脳の情報を出力する方式を目指す。頭で思ったことを毎分100語の早さで出力する性能を目標とする。これは一般にBrain-Typingと呼ばれ光学的な手法で実現する。研究チームは60人体制で、Optical Neuroimaging (脳のニューロンの構造を光学的に解明する技法) 研究者を中心に構成されている。

Optical Neuroimagingとは

Optical NeuroimagingとはLEDやレーザーを使い大脳皮質 (cerebral cortex) から発信されるシグナルを受信して解析する手法を指す。具体的には近赤外線を頭皮表面に照射し、その反射波を測定し脳機能をマッピングする。頭皮上に光源とセンサーをあてて、CTスキャンのように脳内構造を3Dで把握する。

脳内のヘモグロビン量を測定

これ以上の説明は無かったがOptical Neuroimagingは脳内のヘモグロビン (血液) の量を測定することでニューロンの活動量を把握する。ヘモグロビン (Oxy-HbとDeoxy-Hb) と脳の活動はニューロンの酸素消費量を通し相関関係があることが分かっている。近赤外線を頭皮表面に照射すると光は頭皮を通過し脳に届く。脳内のヘモグロビンがPhoton (光子) の束を吸収し、その反射波をセンサーで読み取るとニューロンの活動状態が分かる。明るい光源に手をかざすと血液が近赤外線を吸収し指が赤く見える原理を応用している。

現行技術からの大きな飛躍

Optical NeuroimagingをALSなど運動系に障害がある患者に適用し意思疎通を行う研究が進められている。最新の事例ではALS患者がYes/Noの意思表示ができたとの報告がある。この技法は医療分野での研究が先行している。Facebookはこの手法を消費者向けのインターフェイスとして利用する。Yes/Noのバイナリーなシグナルを読み取る技術から、毎分100語の早さで出力する技術にジャンプすることになる。このためにはニューロンの状態を毎秒数百回サンプリングする必要があるといわれ、極めて高度な技術を必要とする。

出典: Facebook

仮想現実や拡張現実などで利用する

Facebookはこの技術をタイピングだけでなく、メッセージを伝える手段として開発している。仮想現実や拡張現実などで利用することを想定している。例えば、スマートグラスを使った拡張現実では、利用者はデバイスに語り掛けるのではなく思うだけで情報を入力できる。スマートグラスがアイスクリームを認識し「ランニング距離を2マイル伸ばしますか?」と問いかけると (上の写真)、これに対して利用者は頭で思うだけで声を出さないで返答を入力できる。満員電車の中でも周りを気兼ねすることなくスマートグラスを操作できることになる。Facebookはこのシステムを数年のうちに実現するとしている。

多くの疑問が未回答のまま

Brain-Typingは理想のインターフェイスであるが、Duganの説明に対して医学界から疑問の声が上がっているのも事実。Optical Neuroimaging手法について具体的な説明はなく、多くの疑問が未回答のままとなっている。現在はデバイスを脳にインプラントする方式が主流であるが、それでも出力精度は40-50%に留まる。これに対して頭皮からシグナルを読み取る方式は精度が悪く、Facebookのブレークスルー技術は何なのか疑問の声が寄せられている。

Building 8

FacebookはMoonshotと呼ばれる先進技術を「Building 8」で開発している(下の写真)。これはGoogle Xに相当する先進技術研究所でコミュニケーションを促進するハードウェアデバイスの開発が進められている。Brain-Typingプロジェクトは2016年10月頃から始まり二年間の研究期間が与えられている。二年後に研究結果をレビューしプロジェクトを継続するかどうかが決まる。

出典: Facebook

人とマシンの関係が根本から変わる

消費者向け製品では頭皮から電気シグナル (Electroencephalography、脳波) を読み取り利用者の意図を把握する方式が中心となっている。大量のノイズの中から対象シグナルを検知するのが課題で、単純な操作に限定して使われている。多くの企業から製品が出荷され、ゲームやリラクゼーションなどで利用されている。Facebookの方式はヘモグロビン量からニューロンの活動を読み解くもので現行技術から大きな飛躍になる。これが本当に実現できれば恩恵は計り知れない。健常者と非健常者ともに人とマシンの関係が根本から変わる。

Facebookが会話ボットを投入、人工知能と対話して買い物する「会話コマース」がビジネスを一変する

Thursday, April 14th, 2016

Microsoftに続きFacebookが会話ボットを投入した。Facebookの会話ボットは優秀な店員のように振る舞い、消費者と対話しながら商品を販売する。こんなに便利な仕組みがあれば、ウェブサイトでの買い物から足が遠のく。次の産業崩壊はウェブショッピングなのか、ビジネスが大きく変わろうとしている。

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Facebookが会話ボットを投入

Facebookは2016年4月、San Franciscoで開催された開発者向け会議「F8」で会話ボット (Bots) を発表した (上の写真)。会議の模様はストリーミングで中継された。会話ボットはメッセージングサービス「Messenger」で稼働し、Facebookはこれを「Bots on Messenger」と呼んでいる。企業やブランドはMessenger上で会話ボットを使ってビジネスを展開する。会話ボットが人間のように振る舞い、顧客サポート、ショッピング支援、ニュース配信などを手掛ける。

会話ボットでフラワーアレンジメントを購入

投入された会話ボットを使って実際に商品を購入してみた。Messengerで会話ボットを起動し、対話しながらのショッピングは快適だった。街の小売店で店員さんに案内されながら買い物をしているようで心地よかった。実際に使った会話ボットは花屋さん「1-800-Flowers.com」で、フラワーアレンジメントを注文した (下の写真)。会話ボットの指示に従って進み、好みの商品を見つけ、クレジットカードで会計した。初期画面で「Oder flowers」ボタンを選択し (下の写真左側)、メッセージに従って、商品配送先住所を入力した (下の写真中央)。更に、商品の配送日を指定した。

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会話ボットは商品サンプルをカテゴリーごとに表示し、ここから希望の商品を選択した。「Roses」というカテゴリーを選択するとバラのフラワーアレンジメントが表示され、この中から「Julep Cup Petite Bouquet」という商品を選択した (上の写真右側)。

親近感を感じる

更に会話ボットの質問に対し、フラワーアレンジメントに沿えるメッセージやメールアドレスなどを入力した。料金はクレジットカードで支払うが、この処理はMessengerを離れ、決済クラウド「Stripe」で実施された。StripeのウインドウがMessenger上にオーバーレイされ、必要情報を入力し決済処理が行われた。注文したフラワーアレンジメントは二時間後に配送され(下の写真)、会話ボットでの買い物はあっけないほど順調に終了した。

会話ボットを使ったショッピングは、アプリを使う方法に比べて便利と感じた。会話ボットと対話しながらショッピングが進むのは、店舗で店員さんと話しながら買い物をしているようで、親近感を感じた。アプリでのショッピングは機械的であるが、会話ボットはどこか親しみを感じた。人間は他人とコミュニケーションすることを求めているのか、相手が会話ボットであっても、しっくりするものを感じた。

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Messenger Platformで会話ボット開発

Facebookは会話ボットを開発する基盤として「Messenger Platform」をリリースした。企業やブランドはこの基盤で会話ボットを開発する。会話ボット自体の開発では専用API「Send / Receive API」を組み込みメッセージを送受信する。「Structured Templates」とよばれるフォームを使うことで、メッセージにUIを組み込む。上述のフラワーアレンジメントで表示されたボックス、選択ボタン、写真などで使われている。

Facebookは会話ボットを使ってマーケッティングする仕組みも提供している。企業のウェブサイトに「Messenger Code」を表示し、消費者がこのコードをスキャンすると、会話ボットにリンクする。下の写真はCNNの事例で、画面中央のコード (ロゴの周りの青色の線) をMessengerでスキャンするとCNN会話ボットにリンクする。この他に、ウェブサイトやアプリに「Message Me」ボタンを表示し、これををクリックすると会話ボットにリンクする。消費者が簡単に会話ボットを見つける仕組みが提供されている。

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インテリジェントな会話ボット

会話ボットはMessenger Platformで開発されるが、Facebookは会話ボットのAI機能「Bot Engine」を公開した。Bot Engineは機械学習機能や複雑な会話機能を組み込むために使われる。Bot Engineには「Wit.ai」というAI技術が使われている。Wit.aiは自然言語解析エンジンで利用者の言葉を理解する。

Facebookは2015年1月Wit.aiを買収し、自社の会話ボット「Facebook M」にこの技術を組み込んでいる。Bot Engineの機械学習機能を使い、会話ボットにデータを読み込ませて教育する。会話ボットはデータから学習を続けインテリジェントになる。下の写真右側は会話ボット「Movie Bot」の事例で、利用者が映画「Zootopia」のチケットを購入している様子。会話ボットは多彩な表現を理解でき、消費者は会話しながらチケットを購入する。Wit.aiに消費者が話す多彩な表現を定義しておく (下の写真左側)。

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多くの企業が会話ボットを投入

既に多くの企業がMessengerで会話ボットを投入することを表明している。銀行では「Bank of America」が会話ボットを運用する。消費者に対して会話ボットがアラートを発行することが計画されている。旅行サイト「Expedia」は会話ボットがホテルや飛行機の予約購入を受け付ける。このほかに、映画チケットサイト「Fandango」、IT企業「HP」、カフェ「Philz Coffee」、レストラン「Burger King」が会話ボットの開発を進めている。

Messengerがアプリを置き換える

Messenger利用者数は9億人で、その数は急速に増えている。9億人が会話ボットの潜在顧客となり、FacebookはMessengerをコマース・プラットフォームと位置づけ、便利に買い物ができる仕組みを構築した。Messengerが好まれる理由は、トランザクションを実行する際に、アプリを使うよりはるかに便利なためである。今までは異なる商品を購買するためには、異なるアプリを起動し、IDとパスワードでログインしてきた。しかし、Messengerでは同じ場所で航空券や洋服やフラワーアレンジメントを購入できるため、使い勝手が格段に向上する。このため、ショッピングではMessengerがアプリを置き換えるといわれている。

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Conversational Commerce (会話コマース)

会話ボットで買い物をするスタイルはFacebook Mが示している (上の写真)。AIを搭載したFacebook Mはヒトのように振る舞い、利用者は自然な会話で目的を完遂する。出産のお祝いを探しているときは、Mに対して「出産祝いを探しているが、おもちゃは十分ある」と語り掛ければ、Mは「靴はどうですか」とズバリ回答を示す (上の写真左側)。シカゴに出張するときに、お勧めのレストランを訪ねるとMは「Command Burgerが人気がある」と教えてくれる (上の写真右側)。

Amazonで好みの商品を探すより、はるかに簡便に目的を達成できる。商品の購入や情報検索はウェブサイトからメッセージングに移ることをFacebook Mが示唆している。つまり、我々の生活空間はメッセージング基盤に構築され、これに伴いビジネスもここで展開される。消費者と会話を通じた取引は「Conversational Commerce (会話コマース)」と呼ばれている。現在のElectronic Commerce (Eコマース) からパラダイムシフトが始まった。

Facebookの次の10年、人工知能が支えるソーシャルネットワーク

Friday, January 9th, 2015

Facebookが事業を開始して10年が経過した。CEOのMark Zuckerbergは次の10年を睨んだ戦略を描いている。ここで重要な役割を担うのが人工知能だ。Facebookは人工知能研究所を開設し、Deep Learning研究第一人者Yan LeCunの指揮の元、研究開発を進めている。ソーシャルネットワークと人工知能はどう関係するのか、また、Zuckerbergは何を目指しているのか、Facebookの人工知能戦略をレポートする。

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Facebook人工知能研究所

Facebookは2013年9月、人工知能研究所「Facebook AI Research」を開設し、同12月にはYann LeCunが所長に就任したことを発表した。人工知能研究所が活動を始め一年が経過し、研究の一端が見えてきた。LeCunは、先月、ビッグデータのカンファレンス「Data Driven NYC」で、Facebook人工知能研究所について語った。研究概要だけでなく、人工知能でビジネスを興すヒントなどにも言及し、その模様はYouTubeなどで公開された。

上の写真は、このカンファレンスとは別に、モントリオールで開催された人工知能学会のひとこまで、LeCunがFacebookに公開した。人工知能研究のオールスターが勢ぞろいしている。左から二番目がYann LeCun本人。右から、Andrew Ng (Google XからBaiduに移籍)、Yoshua Bengio (モントリオール大学教授)、Geoffrey Hinton (トロント大学教授でGoogleで研究開始)。歴史に名を残す人工知能研究者が、Facebook、Baidu、Googleに引き抜かれていることが分かる。

最適な記事を表示

Facebookはソーシャルネットワークのトップを走っているが、次の10年はSocial Interactionで革新が必要との見解を示した。Social Interactionとは、利用者がデジタルメディアを介して友人と接する方式のことで、これを人工知能がアシストするモデルを描いている。

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いまFacebookを開くと、多くの友人が投稿した記事が表示される。その数は数千件にも上り、全ての記事に目を通すことはできない。Facebookは人工知能を導入し、この仕組みを改善しようとしている。機械学習の手法Deep Learningを適用し、アクティビティなどを分析し、利用者の嗜好を把握する。更に、Deep Learningで、利用者の友人が投稿した記事の内容を把握する。両者をマッチングすることで、利用者が興味を引く記事だけをフィードに表示する。具体的には、ある利用者が赤色のフェラーリ (上の写真) に興味があるとシステムが判断すると、友人が投稿した赤色フェラーリの写真をフィードに表示するという仕組みとなる。利用者が登録するのではなく、Deep Learningが記事を自然言語解析し、嗜好を把握し学習を続ける。今は数千件の記事がフィードに表示されるが、これを最適な100件程度に絞り込む計画だ。

両親のようにアドバイス

更に、長期的には人工知能研究を推し進め、インテリジェントな機能を提供するとしている。具体的には個人秘書 (Personal Assistant) や質疑応答 (Questions & Answers) の形態で実装する。個人秘書は状況に応じて利用者にアドバイスを行う。例えば、みっともない写真 (泥酔した自撮り写真など) を投稿しようとすると、システムはそれを認識し、再考を促すメッセージを表示する。Facebook利用者は若者が多く、システムが両親に代わって、行き過ぎた行為を戒めることとなる。LeCunは触れなかったが、質疑応答ではシステムが、ファッションなどの相談にのってくれるのかもしれない。ソーシャルネットワークには個人に関する膨大なデータが揃っており、Deep Learningにとっては、またとない実力を発揮できる環境となる。

大学と企業の人工知能研究

LeCunはDeep Learning研究で、大学と企業の役割にも触れた。大学は学生を教育し研究者を育てる他に、独自の視点でDeep Learning研究を進めている。その成果はオープンソースやビデオなどで公開され、コミュニティーの一員として貢献している。企業は大規模なコンピューター資源を使い、積極的にDeep Learning研究を展開している。Google、IBM、Microsoftなどが中心的な役割を担っている。Deep Learning研究では両者の活動が密接に関連しており、それぞれの特徴を生かしながら、補完する関係の構築が必要であるとの見解を示した。上述の事例の通り、人工知能研究では企業と大学間の人の交流が活発で、大学の基礎研究が企業の製品開発に、うまく繋がりつつある。

人工知能ビジネスの戦略

LeCunは人工知能で事業を構築するためのポイントにも言及した。人工知能市場を、水平市場と垂直市場の観点から考察し、何処を攻めるべきかを示した。水平市場はDeep Learning技術を汎用的に提供するモデルで、垂直市場は業種ソリューションに統合して展開するモデルを指す。水平市場では、現行モデル (Convolutional Neural Networksなど) を凌ぐアルゴリズムが求められ競争は極めて厳しい。

これに対し垂直市場では、業種ソリューションをDeep Learningで強化する方式で、ビジネスとして成立しやすい。LeCunが注目している垂直市場は医療で、メディカル・イメージングがDeep Learningと親和性が高く、ここに大きなチャンスがあるとしている。この市場はSiemensやGEが大きなシェアを占めているが、イメージ解析では参入のチャンスがあるとの見解を示した。Deep Learningで自社の業種ソリューションを強化することが、企業が進むべき道であると理解できる。

Zuckerbergは個人で人工知能ベンチャーに出資

Facebookは企業として人工知能研究を進めているが、Zuckerbergは個人としても、人工知能に大きな将来性を感じている。Zuckerbergは人工知能ベンチャー「Vicarious」に個人として投資している。Vicariousはサンフランシスコに拠点を置き、人間のように考えて学習するソフトウエアを開発している。Vicariousは、Zuckerbergの他に、Elon Musk (TeslaやSpaceX創業者)、 Peter Thiel (PayPal創業者)、Ashton Kutcher (人気俳優)、Jeff Bezos (Amazon創業者) など著名人から出資を受けたことで、一気に話題となった。

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イマジネーションを使って高速学習

しかしVicariousは秘密裏に開発を進めており、その内容は分からない。色々な情報を総合すると、Vicariousは高速で学習する次世代Deep Learningを目指しているようだ。現在のDeep Learningは大量のデータを読み込み学習する必要がある。これに対してVicariousは、人間のように、”イマジネーション”を使って高速に学習すると言われている。上の写真はその事例で、一頭の牛の写真を示すと、Vicariousは牛とは何かを理解し、イマジネーションで多くの牛を描くことができる。馬や山羊に見える図形も交じっているが、Vicariousは牛の特徴を掴んでいることが分かる。

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Captchaを解読

Vicariousはこの技術を使い、Captchaを解読したことで話題を集めた。Captchaはチャレンジ・レスポンス型のテストで、数字や文字が不規則に並び、これを読み説いてログインの認証を受ける。マシンには解読できなくて、サイトにログインするのは人であることを確認するために利用される。上の写真はYahooサイトのCaptchaで、文字が重なっていて、人間でも読み違えることがしばしばある。

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上の写真はこれをVicariousが解読したものである。文字が重なっているが、見えない部分を”イマジネーション”で補完し、正しく回答した。Vicariousを使うと、マシンがYahooサイトにログインできることとなる。

高精度のターゲット広告や写真分類

勿論、Captchの解読が目的ではなく、Vicariousはソーシャルネットワークや検索エンジンの飛躍的な強化を目標にしている。また、X線検査から腫瘍を検出し、製造ラインで規格外製品を検出し、また、ロボットが家庭内で移動するモデルも計画されている。VicariousはFacebookでの応用分野については触れていないが、高精度のターゲット広告や写真分類で利用されると言われている。

シリコンバレーでAIベンチャー買収が続く

Facebookは、今月、人の言葉を理解する技術を開発しているベンチャー「Wit.AI」を買収した。これは人工知能の中で自然言語解析と呼ばれる分野で、ロボットやウエアラブルに頭脳を持たせる技術として注目されている。これに先立ち、Zuckerbergは、驚異的な速度で学習する人工知能「DeepMind」の買収を目論んでいた。結局、Larry Pageが直接交渉し、Googleが買収することで決着した。シリコンバレーの主要企業は、人工知能ベンチャーの買収で、熱い戦いを繰り返している。人工知能技術への期待と投資が過熱気味であるが、各企業はここに大きなビジネスチャンスを描いている。今年は人工知能を要素技術としたユニークな製品が数多く登場することが期待される。

利用者の感情を表現できるボタン

Thursday, April 18th, 2013

利用者の感情を表現できる機能の登場が相次いでいる。B-Sm@rk (ビー・スマーク) は、Dublin (アイルランド) に拠点を置くベンチャー企業で、利用者がウェブサイトに掲載されている記事や写真に対して、自分が抱いている感情を表現するボタンを提供している 。

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感情表現のパレットとセマンティック技術

このツールはMySmark (マイ・スマーク) という名称で、ブラウザーのプラグインとして実装される。上のスクリーンショット (出展はいずれもVentureClef) がその事例で、USA Todayの記事を読み、読者が記事に対して、どんな感情を抱いているのかを表現できる。ポップアップ画面にRose of Emotions (感情の薔薇) と呼ばれるパレットが表示され、33の感情が示される。利用者は記事を読んだ時に抱いた感情を、花弁をクリックして選択する。上の事例では、Joy (楽しみ) という感情を選択したところで、この情報が利用者のMySmarkページに登録される。また、TwitterやFacebookにも掲載することができ、記事と記事に対する感情を友人と共有できる。記事全体だけでなく、特定の写真や文章についてもこの操作を行える。MySmarkは、収集した情報から利用者の嗜好を抽出し、ブランド向けのプロモーションで利用するとしている。Facebookでは、Likeボタンという二次元の情報を処理するが、MySmarkは33次元の情報を処理し、利用者の嗜好を高度に解析することができる。感情を表現する言語としてはEmotion Markup Language (EML) がある。EMLは、W3CのEmotion Incubator Groupにより定義された言語で、感情という情報を処理することができる。EMLにより、利用者の意見や感情を集約し、コンピュータで処理することが可能となる。一方、EMLは、市場で普及が進まないのも事実である。B-Sm@rk CEOのNicola Farronatoによると、「EMLは重要な言語であるが、仕様が複雑で実装が難しいため、MySmarkでは自社開発した技術を実装している」と説明した。MySmarkは独自技術で、感情というタグを機械で処理し、そこから有益な情報を抽出している。

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Facebookは、今月から、コメントを投稿する際に、今の感情をタグできる機能 (上のスクリーンショット) の提供を始めた。アイコンを選択して、コメントと共に、いま楽しいのか、悲しいのか、感情を表現できるようになった。絵文字でコメントに付随する感情を補完する方式で、Facebookの中で使われ始めた。GoogleはGmailで絵文字をサポートしており、日本で生まれた絵文字文化が、アメリカで受け入れられている。利用者は自分の感情表現の手段を求めており、ベンチャー企業であるB-Sm@rkは、いち早くMySmarkでこの要請に応え、大手企業がこれに追随している格好となっている。