Archive for the ‘ソーシャル・ネットワーク’ Category

FacebookはAIアシスタント「M」を開発、次世代ソーシャルネットの姿が見えてきた

Friday, November 27th, 2015

Facebookは次の10年を睨んだ戦略を展開している。人工知能、上空からのネットワーク、没入型インタフェースを三本の矢と位置づけ、投資を進めている。その中でも人工知能を最重要テーマとして開発を加速している。Facebookは、ソーシャルネットワーク企業から、大きく路線を転換しようとしている。

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AIアシスタントでアクションを完遂

Facebookは2015年8月、インテリジェントなサービス「Facebook M」の試験を開始することを発表した。Mはメッセージングサービス「Messenger」の中心機能として位置づけられ、タスクを実行するエージェントとして動作する。Mは利用者の言葉を理解し、指示に従って、買い物などを実行する。

MはApple Siriなどのアシスタント機能と異なり、実際にタスクを実行する点に特徴がある。Mに質問すると回答を返し、Mとのやり取りを通し、実際にアクションを取る。具体的には、「友人が出産するので贈り物を探している。服やおもちゃはたくさん持っている。」と語りかけると、Mは「靴はどうか」と回答し、その写真と価格を提示する (上の写真左側)。この提案が気に入れば、そのまま指定のサイト(Luxegeneva)で購入できる。また、「来週シカゴに出張するが、ハンバーガー・レストランのお勧めは?」と質問すると、Mは「Command Burger」を推奨し写真とそのURLを表示する。更に、Mは「予約しておきましょうか?」と問いかけ、「Yes」と答えると、そのまま予約できる (上の写真右側)。多くのアシスタント機能は情報検索機能に留まるが、Mは実際に商品の購買やレストランの予約など、アクションを完遂することができる。

実証試験が始まる

Mはベータユーザを対象にシリコンバレーで実証試験を進めている。その結果は公開されていないが、多くのメディアが試験状況をレポートしている。それらによると、利用者の関心はレストランや買い物に集まっている。Mに対する指示で一番リクエストが多いのがレストランの予約。好みの料理や価格などを指定すると、Mがその条件でレストランを探し予約する。また、買い物を手助けする機能も人気が高い。店舗に出向いて買い物する代わりに、Mが利用者が好みそうな商品を提示する。また、商品を購買する際は、Mが支払処理をして、商品の発送先などを指定する。利用者は必要最小限の操作で、商品を見つけ、それを購入し、指定の場所で受け取ることができる。

人工知能とヒトとの共同作業

Mの機能は人工知能に支えられているが、解析処理をすべてこなせる訳ではない。人工知能は人間のトレーナーと共同作業する形態を取っている。利用者がMに指示を出すと、人工知能がこれを解釈し、回答を生成する。次に、トレーナーはこの回答を読み、そのままリリースするかどうかを判断する。手直しが必要なものは、トレーナーが修正してリリースする。更に、トレーナーが全て書き換えるケースもある。

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トレーナーの修正はMにフィードバックされ、人工知能は回答生成について学習を重ねる。回答は業種ごとに異なり、人工知能は分野ごとに固有なプロセスを学ぶ。現在、トレーナーの数は数十人と言われ、Facebookキャンパスでこの作業に従事している。人工知能は進化を重ねるが、Mが一般に公開された時点でも、人工知能が全ての処理に対応できる訳ではない。当面はトレーナーとの共同作業が続く。ただし、Mの最終目標はヒトの手を借りないで処理することで、それに向かってトレーナーとの共同作業が続く。(上の写真はFacebook本社キャンパスの様子。オフィスの雰囲気は会社と言うよりはテーマパークに近い。)

買収される前のSiri

Facebook MのアイディアはSiriにあるのかもしれない。Appleに買収される前のSiri (Siri, Inc.) はタスク完遂システムを目指した。口頭で航空券の予約を指示すると、SiriはウェブサイトのAPIを利用して、実際にフライトを予約し、チケットの購入を目指した。Siriは米国国防省の人工知能研究プロジェクト「CALO」の研究結果を元に開発された。Siriは自然言語解析など最先端のAI技術を搭載し、2009年5月にベータ版が公開された。その翌月に、Siriのデモを見たが、そのインテリジェンスの高さに驚いたことを、いまでも鮮明に覚えている。Appleは2010年にSiriを買収し、その後は情報検索機能に限定してサービスを展開している。AIアシスタントに一番近い位置にいたSiriであるが、その開発は中断した形となった。

Facebook Mの課題

オリジナルSiriに代わり、Facebook MがAIアシスタント開発を進めているが、技術的には難易度が極めて高い。タスク処理は対象分野が幅広く、どの分野・業種を対象とするかがカギになる。航空券の購買と株式売買では、求められるスキルが異なり、トランザクションも大きく変わる。後者では、株式ポートフォリオ管理や株式売買の意思決定など、業種に特化したスキルが求められる。既に消費者は、Mに対して多様な要求を投げかけている。ある人はMに対して、結婚式のアレンジをリクエストした。結婚式会場の予約から、料理の選択、衣装レンタルから招待状の送付まで、Mに求めるというものである。数多くのタスクから構成される指示にどう対応するのか、解決すべき課題は少なくない。

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Facebookの人工知能研究

ZuckerbergはFacebookの長期研究プロジェクトとして人工知能研究を重点的に進めている。2013年9月には、人工知能研究所「Facebook AI Research (FAIR)」を開設し、同12月にはYann LeCunが所長に就任した。研究員の数は現在50人であるが、今後、150人態勢に拡充するとしている。

Facebookは研究成果を論文やデモビデオで公開している。2015年6月には、論文「End-To-End Memory Networks」で、Neural Networkに短期記憶を付加した構造で、ヒトのように言葉を理解するモデルを発表した。システムは出来事の記述を読み、そこから常識を学習することができる。上の写真がその事例で、システムは映画「Lord of the Rings」のストーリーを理解することができる。システムを事前に教育し、そこに映画のあらすじを入力する (上の写真上段)。次に、映画の内容を質問すると、システムは正しく回答する (同下段)。例えば、「いまリングはどこにある?」との問いに、「Mount-Doomにある」と回答している。つまり、システムは国語テストに回答できることになる。今ではシステムを拡張し、大規模なデータに対して、同様な機能を発揮できる。

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ビジュアル質疑応答

Facebookは2015年11月、画像解析と自然言語解析を組み合わせた「Visual Q&A (VQA)」を開発した。利用者が写真について質問すると、VQAが回答する。例えば、「写真の中に赤ちゃんが写っている?」との質問すると、VQAは「イエス」と回答 (上の写真左側)。これは視覚障害者のためのシステムで、写真の内容を質問して確認できる。これで視覚障害者もFacebook記事を楽しめることになる。この他に、「赤ちゃんは何をしている?」と聞くと、VQAは「歯磨きしている」と答える。また、「犬はどんな遊びをしている?」との質問に、VQAは「フリスビー」と回答する (上の写真右側)。

VQAはプロトタイプであるが、今後、応用分野が広がる。Facebook人工知能研究所所長のYann LeCunは、VQAをパーソナルアシスタントとして拡充していくアイディアを示している。Mとの関係については言及しなかったが、AIアシスタントがFacebookの新しいインターフェイスになることを示唆している。

Facebookの次の10年、人工知能が支えるソーシャルネットワーク

Friday, January 9th, 2015

Facebookが事業を開始して10年が経過した。CEOのMark Zuckerbergは次の10年を睨んだ戦略を描いている。ここで重要な役割を担うのが人工知能だ。Facebookは人工知能研究所を開設し、Deep Learning研究第一人者Yan LeCunの指揮の元、研究開発を進めている。ソーシャルネットワークと人工知能はどう関係するのか、また、Zuckerbergは何を目指しているのか、Facebookの人工知能戦略をレポートする。

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Facebook人工知能研究所

Facebookは2013年9月、人工知能研究所「Facebook AI Research」を開設し、同12月にはYann LeCunが所長に就任したことを発表した。人工知能研究所が活動を始め一年が経過し、研究の一端が見えてきた。LeCunは、先月、ビッグデータのカンファレンス「Data Driven NYC」で、Facebook人工知能研究所について語った。研究概要だけでなく、人工知能でビジネスを興すヒントなどにも言及し、その模様はYouTubeなどで公開された。

上の写真は、このカンファレンスとは別に、モントリオールで開催された人工知能学会のひとこまで、LeCunがFacebookに公開した。人工知能研究のオールスターが勢ぞろいしている。左から二番目がYann LeCun本人。右から、Andrew Ng (Google XからBaiduに移籍)、Yoshua Bengio (モントリオール大学教授)、Geoffrey Hinton (トロント大学教授でGoogleで研究開始)。歴史に名を残す人工知能研究者が、Facebook、Baidu、Googleに引き抜かれていることが分かる。

最適な記事を表示

Facebookはソーシャルネットワークのトップを走っているが、次の10年はSocial Interactionで革新が必要との見解を示した。Social Interactionとは、利用者がデジタルメディアを介して友人と接する方式のことで、これを人工知能がアシストするモデルを描いている。

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いまFacebookを開くと、多くの友人が投稿した記事が表示される。その数は数千件にも上り、全ての記事に目を通すことはできない。Facebookは人工知能を導入し、この仕組みを改善しようとしている。機械学習の手法Deep Learningを適用し、アクティビティなどを分析し、利用者の嗜好を把握する。更に、Deep Learningで、利用者の友人が投稿した記事の内容を把握する。両者をマッチングすることで、利用者が興味を引く記事だけをフィードに表示する。具体的には、ある利用者が赤色のフェラーリ (上の写真) に興味があるとシステムが判断すると、友人が投稿した赤色フェラーリの写真をフィードに表示するという仕組みとなる。利用者が登録するのではなく、Deep Learningが記事を自然言語解析し、嗜好を把握し学習を続ける。今は数千件の記事がフィードに表示されるが、これを最適な100件程度に絞り込む計画だ。

両親のようにアドバイス

更に、長期的には人工知能研究を推し進め、インテリジェントな機能を提供するとしている。具体的には個人秘書 (Personal Assistant) や質疑応答 (Questions & Answers) の形態で実装する。個人秘書は状況に応じて利用者にアドバイスを行う。例えば、みっともない写真 (泥酔した自撮り写真など) を投稿しようとすると、システムはそれを認識し、再考を促すメッセージを表示する。Facebook利用者は若者が多く、システムが両親に代わって、行き過ぎた行為を戒めることとなる。LeCunは触れなかったが、質疑応答ではシステムが、ファッションなどの相談にのってくれるのかもしれない。ソーシャルネットワークには個人に関する膨大なデータが揃っており、Deep Learningにとっては、またとない実力を発揮できる環境となる。

大学と企業の人工知能研究

LeCunはDeep Learning研究で、大学と企業の役割にも触れた。大学は学生を教育し研究者を育てる他に、独自の視点でDeep Learning研究を進めている。その成果はオープンソースやビデオなどで公開され、コミュニティーの一員として貢献している。企業は大規模なコンピューター資源を使い、積極的にDeep Learning研究を展開している。Google、IBM、Microsoftなどが中心的な役割を担っている。Deep Learning研究では両者の活動が密接に関連しており、それぞれの特徴を生かしながら、補完する関係の構築が必要であるとの見解を示した。上述の事例の通り、人工知能研究では企業と大学間の人の交流が活発で、大学の基礎研究が企業の製品開発に、うまく繋がりつつある。

人工知能ビジネスの戦略

LeCunは人工知能で事業を構築するためのポイントにも言及した。人工知能市場を、水平市場と垂直市場の観点から考察し、何処を攻めるべきかを示した。水平市場はDeep Learning技術を汎用的に提供するモデルで、垂直市場は業種ソリューションに統合して展開するモデルを指す。水平市場では、現行モデル (Convolutional Neural Networksなど) を凌ぐアルゴリズムが求められ競争は極めて厳しい。

これに対し垂直市場では、業種ソリューションをDeep Learningで強化する方式で、ビジネスとして成立しやすい。LeCunが注目している垂直市場は医療で、メディカル・イメージングがDeep Learningと親和性が高く、ここに大きなチャンスがあるとしている。この市場はSiemensやGEが大きなシェアを占めているが、イメージ解析では参入のチャンスがあるとの見解を示した。Deep Learningで自社の業種ソリューションを強化することが、企業が進むべき道であると理解できる。

Zuckerbergは個人で人工知能ベンチャーに出資

Facebookは企業として人工知能研究を進めているが、Zuckerbergは個人としても、人工知能に大きな将来性を感じている。Zuckerbergは人工知能ベンチャー「Vicarious」に個人として投資している。Vicariousはサンフランシスコに拠点を置き、人間のように考えて学習するソフトウエアを開発している。Vicariousは、Zuckerbergの他に、Elon Musk (TeslaやSpaceX創業者)、 Peter Thiel (PayPal創業者)、Ashton Kutcher (人気俳優)、Jeff Bezos (Amazon創業者) など著名人から出資を受けたことで、一気に話題となった。

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イマジネーションを使って高速学習

しかしVicariousは秘密裏に開発を進めており、その内容は分からない。色々な情報を総合すると、Vicariousは高速で学習する次世代Deep Learningを目指しているようだ。現在のDeep Learningは大量のデータを読み込み学習する必要がある。これに対してVicariousは、人間のように、”イマジネーション”を使って高速に学習すると言われている。上の写真はその事例で、一頭の牛の写真を示すと、Vicariousは牛とは何かを理解し、イマジネーションで多くの牛を描くことができる。馬や山羊に見える図形も交じっているが、Vicariousは牛の特徴を掴んでいることが分かる。

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Captchaを解読

Vicariousはこの技術を使い、Captchaを解読したことで話題を集めた。Captchaはチャレンジ・レスポンス型のテストで、数字や文字が不規則に並び、これを読み説いてログインの認証を受ける。マシンには解読できなくて、サイトにログインするのは人であることを確認するために利用される。上の写真はYahooサイトのCaptchaで、文字が重なっていて、人間でも読み違えることがしばしばある。

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上の写真はこれをVicariousが解読したものである。文字が重なっているが、見えない部分を”イマジネーション”で補完し、正しく回答した。Vicariousを使うと、マシンがYahooサイトにログインできることとなる。

高精度のターゲット広告や写真分類

勿論、Captchの解読が目的ではなく、Vicariousはソーシャルネットワークや検索エンジンの飛躍的な強化を目標にしている。また、X線検査から腫瘍を検出し、製造ラインで規格外製品を検出し、また、ロボットが家庭内で移動するモデルも計画されている。VicariousはFacebookでの応用分野については触れていないが、高精度のターゲット広告や写真分類で利用されると言われている。

シリコンバレーでAIベンチャー買収が続く

Facebookは、今月、人の言葉を理解する技術を開発しているベンチャー「Wit.AI」を買収した。これは人工知能の中で自然言語解析と呼ばれる分野で、ロボットやウエアラブルに頭脳を持たせる技術として注目されている。これに先立ち、Zuckerbergは、驚異的な速度で学習する人工知能「DeepMind」の買収を目論んでいた。結局、Larry Pageが直接交渉し、Googleが買収することで決着した。シリコンバレーの主要企業は、人工知能ベンチャーの買収で、熱い戦いを繰り返している。人工知能技術への期待と投資が過熱気味であるが、各企業はここに大きなビジネスチャンスを描いている。今年は人工知能を要素技術としたユニークな製品が数多く登場することが期待される。

シリコンバレー新興企業が成功する秘密、斬新なアイディアと「グロースハッキング」

Saturday, May 24th, 2014

シリコンバレーの若い起業家たちから斬新なアイディアが生まれている。しかし企業として成功するためには、これだけでは十分でなく、グロースハッキング (Growth Hacking) という成長戦略が必要だ。シリコンバレーの新興企業が成功する秘密を、人気アクセラレーター500 Startupsから分析する。

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Facebookを教材にした語学教育

斬新なアイディアで事業を拡大している新興企業にCultureAlleyがある。同社はサンフランシスコを拠点に、語学教育サービスを展開している。スペイン語、中国語、ヒンディー語などの語学レッスンを提供しているが、アプローチがユニークだ。レッスンで使うテキストが、利用者のFacebookである。

上の写真がその事例で、私のFacebookがスペイン語レッスンの教材となっている。これはフォローしている人気歌手Katy Perryのニュースフィードで、いくつかの単語がスペイン語に置き換わっている (赤色でハイライトされた部分) 。これをクリックすると、クイズが出題される。上の事例では「May」という英語はスペイン語でなんというか、という三択クイズとなっている。ここでは「Mayo」が答えで、正解するとキャンディーを貰える。キャンディーが10個たまると次の段階のレッスンに進むという構成である。実際に使ってみると、Facebook上気になる記事が教材で、親近感を持ってスペイン語を学ぶことができる。頻繁に登場する言葉を中心に学習でき、身の回りの世界がスペイン語で見えてきて、飽きのこない学習法である。

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500 Startupsサンフランシスコ・オフィス

CultureAlley共同創設者Pranshu Bhandariに、同社オフィスでデモを見せてもらいながら、製品開発の狙いや事業拡大の手法を聞いた。CultureAlleyは、新設されたばかりの500 Startupsサンフランシスコ・オフィス (上の写真中央のビル最上階) に入居している。ここはユニオンスクエアの近くで、有名デパートなどが集まっているショッピングエリアの一角に位置する。

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オフィスフロアーはまだ改装中で、五階を仮のオフィスとして使用している。上の写真が仮オフィス内部の様子で、左手奥がCultureAlleyのデスクである。

Distribution Teamから事業拡大を学ぶ

CultureAlleyは500 Startupsで様々なことを学んできたが、その中で最大の成果は事業を拡大する方法を学んだこと、と述べている。500 Startupsはメンター呼ばれる業界著名人のネットワークを有しており、新興企業に多彩で実用的な教育を行っている。その中に、事業拡大を専門に指導する「Distribution Team」がある。CultureAlleyはこのチームから事業展開の極意を学んだ。

CultureAlleyは、製品プロモーションとして、YouTubeに語学レッスンビデオを公開し、視聴者を増やしてきた。しかし、これら視聴者はビデオは見るが、ホームページに来て利用者登録する数は限られていた。また、CultureAlleyはGoogle検索広告 (AdWords) を使いプロモーションを行ったが、その効果は限定的であった。

ランディングページのデザイン改良

このような状況を、Distribution Teamに説明し、利用者数増大の秘訣について、指導を受けた。検証の結果、Distribution TeamはFacebookに広告を掲載することを勧めた。更に、広告の目的を明確に定義し、会社PRではなく、会員登録が主目的で、CPA (会員一人を獲得するためのコスト) を指標として効果を測定すべきであると指導した。更に、ランディング・ページ (利用者が最初に見るページ) についてもデザインを一新した。

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当初は上の写真の通り、複数方式で会員登録できるデザインであった。FacebookやGoogleなどのIDで利用者登録ができた。

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これを一つに変更した。上の写真が改良後のランディング・ページで、会員登録するためのボタンは一つで、Facebook IDだけで登録を行う。CultureAlleyは、多くの選択肢があれば、登録者数が増えると期待していた。しかし、Distribution Teamの判断は、選択肢が多いと利用者は判断に迷い、その結果、登録者数が減ると判断した。このデザインに変更して、登録者数が倍増したと述べている。

グロースハッキングを実践

Distribution Teamが行っていることは、グロースハッキングで、企業成長のための、様々な手法を提示することにある。グロースハッキングとは、科学的な見地から、「イニシアティブを生成し」、「それを繰り返し実行し」、「成果を検証し」、企業やサービスを急成長させることである。一言で表現すると「コードが書けるマーケティング」ということになる。シリコンバレーの多くの企業は、グロースハッカーという職種で人材募集を行い、この手法を実践している。

Distribution Teamは著名グロースハッカーから成り、CultureAlleyは上記の指導を受け事業拡張を目指している。全米にデビューするためには、斬新なアイディアだけでは十分でなく、500 Startupsはメンター・ネットワークを通して、企業成功のための幅広い実践的な教育を行っている。シリコンバレーでは著名グロースハッカーから指導を受けることができ、ここが事業成功への決定的なカギとなる。

Bhandari によると、CultureAlleyは日本人向けに英語レッスンを公開する予定である。利用者のFacebookで、日本語を英語に置き換えて、英語レッスンを受けることになる。また、ブラウザー・プラグインも公開する予定で、利用者の好みのウェブサイトで英語の学習ができるようになる。CultureAlleyは、斬新な製品アイディアに、グロースハッキングの手法を取り入れ、世界に羽ばたこうとしている。

Google I/Oレポート(2) Google+の写真機能が大幅に向上

Monday, May 27th, 2013

Google I/Oでは、Engineering担当上級社長Vic Gundotraが、Google+の最新技術について説明した。Google+は、リリースされて丸二年間となり、利用者数は1億人に達し、早いピッチで成長している。Google+は、Stream (ニュース・フィード)、Hangouts (通信)、Photos (写真アルバム) で機能強化が行われた。Streamは、レイアウトが一新され、記事が雑誌スタイルで表示される。Hangoutsは、複数の通信手段を、統合したもの。Photosは、写真エンハンス機能が追加され、掲載した写真が自動で鮮やかになる。Google I/O会場には、Google+ブース (下の写真) が設置され、写真エンハンス機能などをアピールしていた。

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Google+のレイアウトが一新

Google+のStream (Facebookのフィードに相当) 形式が大きく変わった。Google+のレイアウトは、従来のシングル・カラムから、マルチ・カラムに改良された(下のスクリーンショット)。記事はカード形式で表示され、裏返して見ることができる。カードには、Google+が自動生成したハッシュタグが付加される。下の事例は、#landscapephotographyというタグが自動で生成され、カードに付加されている様子である(左側画面)。ハッシュタグをクリックするとカードが反転し、同じタグのカードが表示される。このタグは風景写真を意味し、他の会員が撮影した風景写真が表示される。Google+は、カードに説明文がなくても、画像解析技術で写真を解析し、イメージが意味していること (下の事例では風景写真) を把握し、自動でハッシュタグを生成する。Googleらしい機能である。

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コミュニケーション機能をHangoutsに統合

Googleは、Hangoutsというコミュニケーション・ツールを投入した。下のスクリーンショットは、スマートフォンでHangoutsアプリを使っている様子である。Hangoutsは、チャットとビデオ会議を統合した機能を持っている。下の事例は、チャット機能を使って、写真やテキストを交換している様子である。

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パソコンでは、Google+ウェブサイトから、Hangoutsを利用する。GmailやChromeブラウザーからもHangoutsを利用できる。Googleは分散していた通信機能 (Talk、Google+ Messenger及び当初の Hangouts) を統合して、Hangoutsという統合サービスとした。バラバラであった通信機能が一つに纏まり、分かり易くなった。

写真自動エンハンス機能を追加

Googleは、カンファレンスに先立ち、Google Drive、Gmail、Google+ Photosで無料で利用できるデータ容量を15GBにすると発表した。従来は、Gmailで10GB、Google DriveとGoogle+ Photosで5GBであったが、合計で15GBまで無料で利用できるようになった。写真サイズについては、8MBまでサポートしており、高画質の写真をアップロードできる。

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Google+ Photosは、Picasa Web Albumsを取り込んだ形の写真アルバムである。アルバムで、Highlightsというタグを選択すると、数多くの写真の中らから、Googleが代表的な写真を抽出する。上のスクリーンショットがその様子で、大量の写真から、ピンボケ、重複、逆光の写真を除き、有名な場所が写っている写真や、笑顔の写真を抽出する。更に、構図が優れているものや、利用者の身近の人物が写っている写真を抽出する。色々なセットで試してみたが、重複写真を除いてくれるのは便利な機能である。Googleが選択した写真は、絵になる構図が多いように感じる。Google+ Photosは、写真を自動でエンハンスする、Auto Enhance機能を搭載した。写真をエンハンスする技法は、露出補正 (Tonal Distribution)、肌を滑らかに補正 (Skin Softening)、ノイズ除去 (Noise Reduction)、奥行き付加 (Structure)、白色補正 (White Balancing) 等が使われる。

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上は露出補正の事例である。左側はオリジナルの写真で、露出不足 (Underexposure) で全体が暗くなっている。右側はそれを補正したもので、暗い部分が明るくなり、適正な露出となっている。露出過度(Overexposure) の写真についても適正な露出に調整する。スマートフォンの暗いレンズで撮影した夜の風景が綺麗に再現され、これは便利な機能である。

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上は奥行き付加の事例である。奥行き付加とは、フラットな写真に奥行きを付ける技法である。左側は夕方のSan Francisco Bayであるが、全体がフラットに写っている。右側は奥行き付加を施したもので、空の色にメリハリをつけ、夕焼けをドラマチックに再現している。のっぺりとした空が、厚みを持ち、ビビッドに表現されている。

Gundotraは、「写真は撮影するものではなく、創るものである」と説明した。Google+ Photos背後のクラウドが、この機能を担う。利用者がマニュアルで写真を改良でき、また、Auto Enhance機能で、システムがこれを自動で実行する。コンテンツがビジュアルに向う中、写真エンハンス機能の重要度が増してきた。Google+は、写真エンハンス機能を中心に、サービスを再構成してきた。

短時間で消えるメッセージ

Friday, March 22nd, 2013

ティーンエイジャーを中心に、コミュニケーションのありかたが変わりつつある。受信メッセージが、10秒程度しか表示されないで、その後は跡形もなく消え去るアプリが広がっている。RSA Innovation Sandboxで、Wickr (ウィッカー) という、San Francisco (カリフォルニア州) に拠点を置くベンチャー企業が、この技術を紹介した (下の写真、出展はいずれもVentureClef)。

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メッセージ送受信の方法

Wickrは友人同士でコミュニケーションするアプリを開発している。このアプリはWickrという名前で、アプリを起動して、友人からのメッセージを読む (下のスクリーンショット)。左側画面は受信メッセージを表示しており、メッセージには鍵のアイコンがついており、ここにタッチしてメッセージを開く。開いたメッセージにはタイマーが表示され、カウントダウンでゼロになると、メッセージが消滅する。左側画面の最下段は、受信したメッセージを開いている様子である。このメッセージは、15秒後に消滅するように設定されており、右上に消滅までのタイマーが示され、あと4秒で消えることが分かる。メッセージが消滅すると、Expiredと表記され、メッセージが消えたことを示している。右側画面はメッセージを作成している様子である。テキストを入力した後に、メッセージ表示時間を設定する。ここでは15秒と設定している。

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Wickrのメッセージには写真、ビデオ、ファイルなどを添付して送信することができる。Wickrはクラウドと連携しており、クラウド上のファイルを添付して送信する。下のスクリーンショット左側画面がその様子で、Box、Dropbox、Google Driveからファイルを選択する。右側画面は、Google Driveを選択したところで、格納されているファイルが表示されている。ここからファイルを選択し、メッセージに添付して送信する。送信したファイルは、同様に、時間が指定されており、時間が過ぎると自動でファイルが消滅する仕組みとなっている。

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Wickrはメッセージを送信する際は、データの暗号化を行う。サーバには暗号化されたメッセージが一定期間保存されるが、その後は削除される。利用者のデバイスでは、上述の通り、受信メッセージは指定時間の後に消滅される。Wickrは友人間でコミュニケーションを行うだけでなく、業務で社内データを安全に送信する利用法も模索されている。今後、医療機関などでの利用が始まると期待されている。

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いまどきのコミュニケーション

短時間で消滅するメッセージを考案したのは、Pacific Palisades (カリフォルニア州) に拠点を置くSnapchat (スナップチャット) というベンチャー企業である。利用者は写真を撮影し、メッセージを添えて、友人に送信する。受信者がメッセージを開くと、10秒以内にそのメッセージは消える。Snapchatは、交信記録が残らない通信手段として、利用されている。ティーンエージャーを中心に利用が広まり、新しいモードの通信手段として話題を集めている。友人からメッセージを受信すると、メール・ボックスに表示される (上の写真左側)。受信したメールにタッチすると、メッセージが開き、タッチし続けて写真を閲覧する (同右側)。メッセージは予め指定された時間だけ表示される。時間は1秒から10秒の間である。画面から指を離すとメッセージは見えなくなり、指定時間を過ぎるとメッセージは消去される。

Snapchatに対抗して、FacebookはPoke (ポーク) というアプリをリリースした。Pokeはすぐに消えるメッセージで、利用者は送信画面でメッセージを入力 (下のスクリーンショット左側) し、友人に送信する。写真やビデオを撮影して、メッセージに添付することもできる。メッセージを受信すると、青色の吹き出しで表示される(同右側)。メッセージを閲覧するためには、この吹き出しを指で押さえる。メッセージは最長10秒間だけ表示され、その後は消滅する。

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なぜこの方式のメッセージが流行るのか

Snapchatは、当初は、きわどい写真を送受信する目的で使われていたが、次第に利用方法が変わり、普段のコミュニケーションで利用され始めた。ソーシャル・ネットワークでは、送信したデータが保存されるため、利用者は他人から見られることを前提に、気取ったかたちで会話する。SnapchatやPokeでは、記録が残らないため、ありのままの姿でのコミュニケーションが可能となった。Snapchatで本音で意見交換をしても、就職の妨げにはならないし、両親から叱られることもない。高校生を中心に爆発的に利用が広がり、今では、幅広い層で使われている。Wickrの共同創設者であるNico Sellは、RSA Innovation Sandboxのステージで、Wickrは、個人情報がインターネットに永遠に記録されるのを防ぐ、と開発思想を説明した。Wickrは、上述の通り、これをビジネスに応用する試みを始め、社内データを安全に共有するツールとして提案している。企業でもこの方式が受け入れられるのか、トライアルが始まったところである。