Archive for the ‘Android’ Category

Androidの「Now on Tap」は便利!ユーザーインターフェイスとしての人工知能がその秘密

Friday, December 4th, 2015

Googleは2015年10月、最新基本ソフトAndroid 6.0 “Marshmallow”のリリースを開始した。Marshmallowは大幅に機能アップし、その中でもインテリジェントな検索機能「Now on Tap」は素晴らしい。ホームボタンを長押しすると、知りたい情報がカード形式で表示される。この背後で人工知能が稼働し、利用者の疑問を先読みし、その回答を表示する。

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インテリジェントな情報検索

「Now on Tap」はアプリ内のインテリジェント機能として位置づけられ、ホームボタンを長押しすると、表示されている頁を検索する。検索結果はGoogle Nowカードとして表示される。例えば、Facebookに投稿された記事を読んでいる時に、知らない言葉に出会ったら、Now on Tapを使う。上の写真がその事例で、FacebookでHillary Clintonが投稿した記事を読んでいるところ (左側)。この記事は「Rosa Parks」について述べているが、誰だかわからない。その際には、ホームボタンを長押しすると、三枚のカードが表示される (中央)。一番下の「Rosa Parks」カードにこの人物に関する情報が表示される。更に、カード下部のアイコンにタッチすると、そのサイトにジャンプする。Google アイコンにタッチすると、Google Appが開き、ここにRosa Parksの詳細情報がKnowledge Graph形式で示される(右側)。これを読むと、Parksは黒人女性の活動家で、黒人の人権を主張して戦ったことが分かる。今までは、Facebookを離れ、検索アプリを開いて情報を検索したが、Now on Tapではそのまま必要な情報にジャンプできる。

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アーティストの評価を読む

音楽ストリーミング「Spotify」で音楽を聞くときも、Now on Tapはとても便利。アーティストの評判や最近の話題に瞬時にアクセスできる。上の写真はSpotifyの新曲ページ「New Releases」を閲覧している様子 (左側)。この中で「The Vamps」というグループが気になるが、どんなバンドなのか知らない。ここでホームボタンを長押しすると、掲載されているアーティストのカードが登場する (中央)。この中で二段目が「The Vamps」カードで、英国大手新聞社Guardianのアイコンにタッチする。そうすると、ニュースアプリが立ち上がり、Vampsに関するレビュー記事を読むことができる (右側)。これによると、Vampsは英国の音楽グループで、その存在感を確立するために苦闘しているとある。音楽を聞きながらアーティストについての理解が深まる。

メールを読みアクションを取る

Now on Tapは受信メールで威力を発揮する。受信メールを読んでいる時に、Now on Tapを使うと、知らない情報を教えてくれ、次のアクションを素早く取れる。下の写真はその事例で、受信メールを読んでいる時に、Now on Tapを起動した様子。

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メールは、「SpectreをCinema 16に見にいこう」という内容 (左端)。Now on Tapは内容を理解し、「Century Cinema 16」、「Spectre」、「Create calendar event」の三枚のカードを表示した (左から二番目)。Now on Tapは、Spectreとは映画であると認識し、カードに関連リンクを表示した。ここでYouTubeアイコンにタッチすると、映画の予告編を見ることができる (左から三番目) 。また、Now on Tapは、Cinema 16は映画館であると理解し、映画館の情報を表示。ここで映画館の場所や上映時間をチェックできる。更に、Now on Tapは予定表カード「Create calendar event」を表示した。このカードにタッチすると、カレンダーアプリが起動し、映画の予定を登録できる (右端)。Now on Tapは情報検索に加え、次に必要な操作を先回りして示し、アプリを離れないでタスクを完遂できる。

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音声で入力するオプション

しかし、Now on Tapは、こちらが探している情報のカードを表示しない時もある。上の写真はその事例で、レストラン予約アプリ「OpenTable」でメニューを確認している様子 (左側)。メニューの「Spanakotiropita」について知りたいのが、Now on Tapはこのカードを提示しない(中央)。このような場合は、Now on Tapの画面で、知りたい単語を音声で入力する。具体的には、「Ok, Google, Spanakotiropita」と語ると、Googleの検索結果が表示される(右側)。これはギリシャ料理で、ほうれん草を挟んだパイであることが分かる。

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Now on Tapの仕組み

Marshmallowは「Assistant」という機能を導入し、アプリを使う新しい方式を始めた。具体的には、ホームボタンを長押しするか、キーフレーズを音声で入力すると、ウインドウが開く。このウインドウで、閲覧しているページに関連するアクションを実行する。この方式の一つが、デバイスにインストールしているアプリとの連携である。

利用者が「Source App」でホームボタンを長押しすると、「Assistant App」が起動し、カード上で利用者がアアクションを取る構造となる。これに従って、「Destination App」が起動して一連の処理が完結する。上の写真がこの一連の流れを示している。ここでは、Source Appは写真アプリ「Instagram」で、川の流れの写真が掲載されている (左側)。Assistant AppはGoogle Nowとなる (中央)。現在は、Assistant Appに登録されているのはGoogle Nowだけである。カードに表示されたGoogleアイコンにタッチすると、Knowledge Graphが表示される (右側)。この場合Destination Appは「Google App」で、検索エンジンが起動する。

Assistant Appはシステムが提供する「Assist API」を使って開発する。このAPIで、Source Appのテキスト及びイメージをコピーし、Destination Appに送信するなどの処理を定義する。また、Source Appは特別な変更は必要ないが、Destination Appは事前に登録しておく必要がある。

AIがUIとなる

Now on TapはGoogle Nowの拡張機能として捉えることができる。そもそもGoogle Nowとは、利用者に関する情報を解析し、求めている情報を先回りして提示する機能を指す。具体的には、利用者のコンテクストを理解し、利用者に回答を提示し、利用者に次のアクションを促す。

Now on Tapはこの一連のアクションを瞬時に提供することを目的に開発された。いま使っているアプリから離れることなく、必要な情報を表示し、次のアクションを取ることができる。構造としては、スマホアプリの上位レイヤーで機能し、Now on Tapが新しいユーザーインターフェイスを構成する。Now on Tapの背後では、自然言語解析など、人工知能が幅広く使われている。ヒトとマシンの関係は、クールなデザインに加え、これからは人工知能がユーザーインターフェイスの重要な部分を担う。

日本生まれのおサイフケータイが米国で急成長!Googleは「Android Pay」で再挑戦

Friday, June 5th, 2015

米国でおサイフケータイ技術の進化が止まらない。Apple Payがこのブームに火をつけ、Googleが「Android Pay」でこれを追う。Android Payは一見するとApple Payのコピーに見えるが、アーキテクチャーは全く異なる。Google Walletで挫折を味わったGoogleだが、Android Payでリベンジを狙う。日本で誕生したおサイフケータイだが、米国で大きく成長し、日本市場をうかがう勢いだ。

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Google版おサイフケータイ

Googleは2015年5月、開発者会議Google I/Oで「Android Pay」を発表した。これはGoogle版おサイフケータイで、Apple Payに匹敵する機能を備える。カード決済機能だけでなく、会員カードと連携するとポイントが貯まる (上の写真左側)。また、アプリ内での決済機能もある (同右側)。従来のGoogle Walletは、おサイフケータイ機能を抜き、ピアツーピア支払い (個人間での送金) サービスとして位置づける。これにより、Android PayとApple Payが正面から衝突する。

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Android Payの特徴

Android Payの使い方はApple Payと同じで、スマホをカードリーダーにかざすと、Android Payが立ち上がる。メッセージに従ってPINを入力するだけで処理が完了する。スマホをパワーオンしたり、Android Payを立ち上げる必要はない。別のアプリを使っている時でも、スマホをかざしてAndroid Payを利用できる (上の写真)。次期基本ソフトAndroid Mから指紋認証機能が導入され、Apple Payのように指を当てて認証を受ける。

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会員カードと連携

Android Payは会員カードと連動し、買い物をすると自動でポイントがたまる。これはApple Payには無かったが、先週のWWDCで、同等機能を搭載することを表明した。上の写真がその事例で、自動販売機でコカ・コーラを買うと、会員カード「MyCokeRewards」にポイントが貯まったことを示している。コカ・コーラを10本買うと1本無料でもらえる。貯まったポイント数はスマホのMyCokeRewardsアプリで確認できる。Android Payでは、会員カードを使ったマーケティングが、Googleの大きな収益源になると予想される。

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アプリ内決済

Android Payはアプリ内での決済にも対応している。アプリで買い物をした際に、「Buy with Android Pay」ボタンにタッチして決済する。上の写真はレストラン出前サービス「GrubHub」でハンバーガーを注文したところで、最下段のボタンにタッチするだけで支払いが完了する。1000以上のアプリがAndroid Payに対応している。

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Android Payの実装方式

Android Payはアプリとして提供され (上の写真、中央部のアイコン)、Google Playからダウンロードして利用する。対応している基本ソフトはAndroid 4.4 (KitKat) 以降のバージョン。主要キャリア (Verizon、AT&T、T-Mobile) が販売するスマホにはAndroid Payがプレロードされる。更に、店舗で購入する際は、専門スタッフが利用者に代わり、カードを初期設定する。

Google Wallet (初代おサイフケータイ) は、上述キャリア三社のサービス「Softcard」と激しく競合した。いまでは、GoogleがSoftcardを買収し、キャリア三社は一転して、Android Pay事業を支援する。この変わり身の速さにも驚かされる。

Android Payを使える店が増える

Android Payは全米の主要ストアー70万店で利用できる。米国では大規模なカード盗用事件が相次いだ。オバマ政権はカード会社に対し、2015年10月までに、EMVカード (ICカード) にアップグレードするよう指導している。小売店舗では、これに対応して、NFC (近距離無線通信) 機能も搭載したリーダーの設置が急ピッチで進んでいる。設置期限である10月までに、Android Payを利用できる店舗が急増する。

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三階層のアーキテクチャー

Android PayはApple Payのコピーのように見えるが、アーキテクチャーは全く異なる。Android PayはOSの機能として位置づけられ、三階層の構造をしている。リーダーとの交信はNFCがつかさどる。カード番号はデバイスに固有な番号に置き代えられ、暗号化して送信される。これは「Tokenization」と呼ばれ、カード情報盗用を防ぐことができ、安全性が大幅に向上した。ここまでがGoogleとAppleに共通した機能である。

カード情報をクラウドに格納

異なる点は、Android Payはカード情報をスマホではなくクラウドに格納する。Apple Payなど現行のおサイフケータイは、カード情報をSecure Element (SIMカードなどのハードウェア領域) に保存するが、Googleはクラウドに格納する方式を選択した。この方式は「Host Card Emulation」と呼ばれ、Secure Elementをクラウド上に構築する。カード情報をクラウドに保存しておき、決済処理の際にカード情報をクラウドからスマホに送信して利用する。このため、Android Pay使用時にはスマホはオンラインである必要がある。

おサイフケータイのプラットフォーム

これら基本機能を「Android Pay API」で提供する。Android PayアプリがこのAPIを使うだけでなく、パートナー企業が開発するアプリもAPIを使いおサイフケータイ・アプリを開発できる。Googleは自社のおサイフケータイ事業の成功だけでなく、このプラットフォームでフィンテック・イノベーションが生まれることを期待している。

手数料問題

上述のTokenizationという手法はApple Payで採用され、今ではMasterCardなどカード会社が標準化して、Googleなどに提供している。カード会社は決済処理の安全性を高めるため、Tokenization機能を無料で提供する。その見返りに、Googleに対しAndroid Payでカード発行銀行から手数料を取らないことを求めたとされる。GoogleはAndroid Payで決済手数料を手に入れそこなったことになる。一方、Apple Payはカード発行銀行から手数料を徴収しており、上述ルールと異なる運用となる。このため、MasterCardなどは、Appleに対しても同様な取り決めを求めていくとしている。

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顔パスで決済

Googleは秘密裏に、新しい決済技術を開発している。これは「Hands Free」と呼ばれ、文字通り、スマホを使わないで”顔パス”で支払いする方式だ。支払いをする際に、レジの前で「I would like to pay with Google」というだけで、決済が完了する。カードやスマホを取り出す必要はなく、赤ちゃんを抱えたお母さんにとって大変便利 (上の写真)。Hands Freeの仕組みは公表されおらず、謎が深まり話題となっている。GoogleはHands Freeをサンフランシスコ地区のMcDonnellとPapa Jonesで、今年から限定的に試験を開始する。

今度は成功するとの見方

おサイフケータイと無縁であった米国社会は、Apple Payの登場でその安全性と便利さにショックを受けた。Apple Payは米国からカナダや英国に広がり、中国ではAlibabaと交渉しているとされる。Apple Payが世界規模で広がる勢いを示している。この追い風のなか、Android Payが登場した。大苦戦したGoogle Walletであるが、Android Payは事業環境が整いつつある。市場の前評判は上々で、Android Payが一気に拡大する可能性を秘めている。

モバイル決済事業で激動の予兆!Googleは「Android Pay」で”おサイフケータイ”に再挑戦

Friday, March 13th, 2015

「Google Wallet」で苦戦しているGoogleは、モバイル決済基盤「Android Pay」を投入し、“おサイフケータイ”事業の再構築を目指す。モバイル決済基盤とは分かりにくいコンセプトであるが、Android PayはGoogle Walletというアプリを稼働させるプラットフォームとして機能する。Google Walletだけでなく、他社が開発した決済アプリを稼働させるのが狙いだ。Apple Payという巨人に対抗するため、Samsung Payを含め、Android陣営の力を結集することを狙っている。更に、ここでフィンテック (FinTech) イノベーションが起きることを期待している。激動が予想されるGoogleのモバイル決済戦略をレポートする。

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モバイル決済基盤とフィンテック

Googleの上級副社長Sundar Pichaiは、バルセロナで開催されたWorld Mobile Congressで、モバイル決済基盤「Android Pay」を開発していることを明らかにした (上の写真)。この模様はMobile World Liveで放送された。Android Payは噂が先行していたが、今回初めてその一端が明らかになった。詳細については、開発者会議Google I/Oで発表される予定。

Android Payは、Google Walletとは異なり、モバイル決済基盤で、Android OSで稼働するアプリに、決済機能を提供する。Google Walletは、Android Payで稼働する、一つのアプリとして位置づけられる。具体的には、アプリはAndroid Payが提供するAPIを使い、決済機能を利用できる。Android Payがアプリの背後で、NFC (Near Field Communication) 通信、セキュアーな通信 (トークンを使った通信)、更に、将来は指紋認証による本人確認を行う。つまり、Android Payを使うと、誰でも簡単に”おサイフケータイ”を開発し、事業を始めることができる。決済アプリ開発の敷居がぐんと下がり、フィンテックと呼ばれる斬新なモバイル決済サービスが登場すると期待されている。

Samsung Payとの関係は複雑

Samsungは、同じ会場で前日に、「Samsung Pay」を発表している。これはGoogle Walletと正面からぶつかり、Googleの対応が注目されていた。Pichaiはこの発表に関し、Samsung PayはGoogleのタイムラインと異なるスケジュールで進んでいる、と述べている。具体的な内容には言及しなかったが、Samsung PayもAndroid PayのAPIを使うことができることを意味している。つまり、Samsung PayをAndroid Payで稼働する一つのアプリとして位置づけ、Googleのコントロール配下に置きたい、という意図がうかがえる。Googleとしては、Android陣営内で内輪争いをするのではなく、リソースを共有し、理路整然とおサイフケータイ事業を展開することを目指している。

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Apple Payが”黒船”になった

Google Walletは2011年にサービスが始まったが、利用者数は伸びなかった。しかし、Apple Payの登場で米国市場が一変した。Apple Payが決済方式のスタンダートとなり、それに伴い、Google Walletの人気が出てきた。Google Walletの処理金額が50%増加したと言われている。Apple Payが米国モバイル決済市場の”黒船”になった。

Apple Payを使うためにiPhone 6を購入する人も多いと言われている。店舗により普及率が異なるが、健康食品スーパーマーケット「Whole Foods」(上の写真) では、カード決済の20%がApple Payという統計がある。サービス開始当初はApple Payで支払いをすると珍しがられたが、今では普通の光景になった。レジでiPhoneを手に持っていると、「Apple Payですね」と言って、会計処理をしてくれる。Google Walletではこのような現象は起こらなかったが、Appleの影響力の甚大さを改めて認識した。

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Google Wallet苦戦の理由

Google Walletが市場に受け入れられなかった理由は多々ある。最大の理由は通信キャリアとの関係で、これが事業展開の障害となってきた。通信キャリア三社 (Verizon、AT&T、T-Mobile) は、ジョイントベンチャー「Softcard」(当初の名前はISIS) を立ち上げ、モバイル決済事業を目指した。Google Walletと正面から競合する関係にあった。

このため、通信キャリアは販売するスマートフォンに、Google Walletをプレロードすることを受け入れなかった。更に、通信キャリアは、Google Walletの機能を技術的に制限した。具体的には、Google Walletで決済する時には、セキュアーエレメントに格納しているカード情報を、決済システムに送る必要がある。通信キャリアはこの通信を遮断して、Google Wallet事業を制限した。(セキュアーエレメントは通信キャリアのSIMカードにある。)

筆者はVerizonから購入したスマホで、Google Walletを使ってきた (上の写真)。サービス開始当初は使えたが、途中から使えなくなった。Googleから説明は無かったが、この時点でセキュアーエレメントの通信がブロックされたと思われる。信頼性が第一の決済サービスで、方式の変更は利用者に不安を抱かせる。Google Walletのブランドイメージが大きく低下した。

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通信キャリアを迂回する方式

Googleは通信キャリアに依存しない方式を模索した。その結果、Googleはセキュアーエレメントのカード情報を送信する代わりに、これをソフトウェアでエミュレーションする方式に変更した。この方式はHost Card Emulation (HCE)と呼ばれ、セキュアーエレメントをクラウド上に構築する方式である。HCEは、カード情報をクラウドに保存し、決済処理の際に情報をスマホに読み込み、NFCリーダーに送信する。セキュアーエレメントを使わないので、通信キャリアが通信をブロックすることはできない。

これに先立ち、Googleは2013年10月、Android 4.4 (KitKat) の発表で、OSにHCE機構を搭載することを明らかにした。HCEはOSの追加機能として実装された。KitKat以降のNFC搭載スマートフォンで、Google Walletの”おサイフケータイ”機能を使うことができる。

今ではGoogle Walletは、クラウド・ワレットとしての機能も充実している (上の写真)。店舗での買い物だけでなく、オンラインショッピングの支払いもできる。Google Walletに入出金が纏められ、家計簿としても利用価値がある (左側)。また、いま流行の送金機能もあり、アプリから簡単にお金を送ることができる (右側)。

カード会社もHCE方式を推進

一方、カード会社もセキュアーエレメントを使わないHCE方式を積極的に推進している。昨年2月、MasterCardとVisaは、HCE方式での決済サービスを提供すると発表した。MasterCardはこれを「Cloud Based Payments」と呼び、米国を含む世界15カ国でプロジェクトを展開している。カード会社としては、HCE方式を採用することで、パートナー企業が簡単に”おサイフケータイ”システムを構築でき、モバイル決済事業が拡大するという目論見がある。カード会社のお墨付きで、HCE方式が世界の主流になる可能性も出てきた。

通信キャリアとの和解

技術的な側面だけでなく、Googleと通信キャリアの関係が大きく前進した。Googleは今年2月、Softcardから技術や知的財産を買い取ることに合意した。Softcardは2010年にジョイントベンチャーを設立し、システム開発を始めたが、開発は難航した。2012年にサービス開始にこぎつけたが、その普及は芳しくなかった。Softcardはサービス停止を決定し、上述の通り、Googleが資産や事業を継ぐ形式となった。

この和解により、通信キャリア三社は、Google Wallet事業に全面的に協力することを表明。販売するスマートフォンにGoogle Walletをプレインストールし、Googleはこれ対し料金を払うとしている。また、Google検索に連動する広告手数料を上げるとも言われており、通信キャリアは広告収入増加が見込まれる。一方、GoogleはGoogle Walletで生成されるデータを解析し、広告コンバージョン率を上げ、引いては広告収入向上を目指している。

Android Pay経済圏が出現するか

Googleは大きな障害をクリアーし、Google Wallet事業を再構築する環境が整った。今回は単におサイフケータイ事業だけでなく、パートナー企業がモバイル決済サービスを展開するのを支援する。まず、Samsung Payがこの基盤を利用するのかが注目される。HTCやLGも独自のモバイル決済事業を展開する道が開けてくる。ベンチャー企業からは、クールなモバイル決済アプリが誕生するかもしれない。Android Payはフィンテックのインキュベーターとなる可能性を秘めている。

Google I/OでクールなAndroid Wearアプリが登場!スマートウォッチの便利さが見えてきた

Saturday, June 28th, 2014

Googleは、開発者向けイベントGoogle I/Oで、Androidを多角展開することを明らかにした。スマホ向けには「Android L」を発表し、タッチ・インターフェイスが大幅に改良された。自動車向けには「Android Auto」を、テレビ向けには「Android TV」を発表。スマートウォッチ向けには既に「Android Wear」を発表しているが、今回はアプリのデモでその利便性をアピールした。

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Googleが開発しているアプリ

ステージ上でAndroid部門ディレクターDavid SingletonがAndroid Wearについて説明 (上の写真)。Googleは今年3月にAndroid Wearを発表しており、今回はアプリを実演し、ウエアラブル時代のライフスタイルを紹介した。日々の生活でスマートウォッチをどう利用するかが示された。

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朝起きると、まず天気を確認する (上の写真左側、出典はいずれもGoogle)。スマートウォッチはサンフランシスコにいることを把握しており、当地の天気を表示。カードを右にスワイプすると会社までの通勤時間と、道路渋滞情報が表示される (同右側)。スマートウォッチは、利用者の勤務先を把握している。これらは「Google Now」をスマートウォッチに展開したもの。Google Nowは利用者の場所、時間、嗜好などに沿った情報を提示する。これは「Contextual Information」と呼ばれ、スマートウォッチは優秀な秘書のように、利用者が指示しなくても、阿吽の呼吸で必要な情報を提示する。このコンセプトは3月に発表されており、今回はこれをデモで証明した形となった。

パートナー企業からのアプリ

今回のハイライトはパートナー企業が開発したアプリが紹介された点である。これらアプリはスマートウォッチという新しいデバイスをどう活用しているのか、デモを通して紹介された。同時に、ウエアラブルに対する開発コンセプトも読み取れる。

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最初の事例は写真共有アプリ「Pinterest」。Pinterestには綺麗な写真が掲載されており、気になる投稿者をフォローできる。気に入った写真を自分のボードにピン止めすることもできる。Pinterestでピン止めしたレストランの近くに来ると、スマートウォッチに通知が表示される。上の写真左側がその様子で、「Han II Kwan (韓国料理店) のそばにいる」と表示されている。画面をスワイプすると詳細情報にアクセスでき、そこまでの道順が示される (同右側)。興味を持っていたレストランに行くことができる。通知を受信した際、スマホを取り出すより、スマートウォッチを見るほうが便利である。道案内に沿って歩くときも、やはりスマートウォッチのほうが便利だ。

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料理を注文し支払する

「EAT24」はレストランで宅配を注文するアプリ。Singletonはこのアプリを使いスマートウォッチでピザを注文するデモを実施。画面を上方にスワイプして料理の種類を選択する (上の写真左側)。そこでピザ選び、画面を左側にスワイプすると、前回注文したレストランとメニューが表示される (同右側)。この画面にタッチして発注する。次に値段が表示された画面にタッチすると支払いが完了。スマートウォッチで20秒間でピザを注文するというデモはインパクトがあった。オンライン・ショッピングをスマートウォッチで行う時代が到来した。

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音声でタクシーを呼ぶ

音声で操作するアプリも注目を集めた。「Lyft」はタクシー・ネットワークで、利用者はスマホから配車のリクエストをする。これをスマートウォッチで行うデモが実演された。スマートウォッチに「Call me a car」と語りかけタクシーを呼ぶ。スマートウォッチは現在地 (747 Howard St、Google I/O会場) を認識しており、Lyftに配車指示を行う (上の写真左側)。アプリは、「あと3分で到着」と、Lyftからのメッセージを表示 (同右側)。車が到着するとその旨のメッセージが表示される。スマホでは地図上にピンを立て、配車位置を連絡する。スマートウォッチではこの操作はできないため、音声での入力となる。では別の場所に配車を依頼する時は音声で住所を入力するのか、インターフェイスの説明は無かった。日頃「Uber」という類似アプリでタクシーを利用しているが、車が到着するまで、頻繁にスマホを取り出し車の位置を確認する。スマートウォッチなら、腕時計を見るだけですみ、やはり便利。

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スマート家電を操作する

Runtasticは人気のフィットネス・アプリ。ジョギングしている時、スマホに走行距離や走行時間を表示。Runtasticはスマートウォッチ向けアプリを開発しており、利用者はスマホを取り出さなくても、腕のスマートウォッチを見ると、これらの情報が分かる (上の写真)。スポーツなど体を動かしている時は、スマートウォッチのほうが使い易い。

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電機・家電製品メーカーPhilipsは「Philips Hue」というスマート・ライトを販売している。Philips Hueは1600万色を発光し、利用者はスマホからライトをコントロールし、好みの色に設定できる。今度は、スマートウォッチからこれらの操作を行うことができる (上の写真)。ソファーに座って、スマホを取りに行かなくても、腕のスマートウォッチで、室内の色を変えることができる。今後は、テレビや空調などをスマートウォッチで操作するアプリが登場すると思われる。Philips Hueはスマートウォッチがスマートホームのリモコンとなることを示唆している。

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多くのアプリが開発されている

Googleは、上記を含め、60本のアプリがAndroid Wear向けに開発されていることを明らかにした (上の写真)。このリストを見るとスマートウォッチ利用形態のトレンドが見えてくる。「Delta」はデルタ航空のアプリで、スマートウォッチでフライト情報を確認し、QRコードの搭乗券を表示し、そのまま搭乗できる。搭乗ゲートでポケットからスマホを取り出す必要が無くなる。「LevelUp」はカード支払いアプリで、店舗で買い物をした際に、クレジットカードを出さなくても、スマートウォッチで支払いができる。「Mint」は家計簿アプリで、スマートウォッチで銀行口座残高を照会できる。市場はモバイル・バンキングからウエアラブル・バンキングに向っている。「Salesforce」などの名前もあり、スマートウォッチが仕事のシーンで活用されることになる。既に「Bring Your Own Wearable (BYOW)」という造語も登場しており、BYODの次の流れを示している。

これらスマートウォッチ向けアプリは、利用者がダウンロードする必要はない。スマホ向けアプリをダウンロードすると、自動的に、スマートウォッチ向けアプリもダウンロードされる。スマホ・アプリが更新されると、スマートウォッチ・アプリも自動でアップデートされる。

Android Wear成功のカギは

上述の通り、Googleが提供するアプリは、Google Nowをスマートウォッチに焼直したものである。利用者のコンテキストを把握し、利用者が欲していると思われる情報をプッシュする。それに対して、パートナー企業が開発しているアプリは、スマートウォッチという形状に最適な使い方を目指している。今回の発表でその外郭が見え、スマートウォッチ活用法が形となってきた。スマートウォッチが単にスマホのセカンドスクリーンであるなら、その利用価値は限定的である。Android Wearが成功するためには、腕時計という形状を生かしたクールなアプリの登場が鍵を握る。Googleとパートナー企業からのイノベーションに期待が寄せられている。

アンドロイド搭載スマートウォッチMotorola 「Moto 360」はファッション性をアピール

Wednesday, March 26th, 2014

Googleは2014年3月18日、ウエアラブル向け基本ソフトである「Android Wear」を発表した。Motorola Mobilityは同時に、これを搭載したスマートウィッチ「Moto 360」を発表した。(下の写真) Moto 360は典型的な腕時計の形状をしているのが特徴で、ハイテクよりファッションを意識した製品である。スマートウォッチのこの手法は消費者の心を掴むことができるのか、そのインターフェイスを検証する。

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円形のディスプレイ

Motorolaデザイン責任者Jim Wicksは、Google Hangoutsを使った記者会見で、Moto 360の開発コンセプトについて解説した。Moto 360はAndroid Wearを搭載した最初のスマートウォッチで、ディスプレイが円形で高級感あるデザインとなっている。Wicksによると、Moto 360のディスプレイを円形にしたのは、伝統的な腕時計を表現するためである。腕時計は100年の歴史があり、ずっと円形であった。現在販売されている腕時計の80%は円形で、この形状が腕にしっくりするためである。WicksはMoto 360をデザインする際に「ファッション・テスト」という言葉が鍵になると説明した。Moto 360は利用者からお洒落について及第点をもらうことが必須要件で、スマートウォッチは機能性と共に、ファッション性が事業成功のカギを握る。

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Google Nowを中心とした機能

Moto 360は時計とGoogle Nowを融合させた構造となっている。Google NowはApple Siriに対抗する機能で、音声で操作し、必要な時に最適な情報を表示する。上の写真はMoto 360に時間と天気を表示している。これはGoogle Nowの気象情報で、デバイスは現在地を把握し、場所に特化した情報を表示する。また、Google Nowのカレンダー機能で、一日のスケジュールを管理できる。

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サイクリングをしている時はMoto 360が道案内をする。「50フィート先を右折してWashington Streetに入る」と道順を表示する。(上の写真) また、Hangoutsを使うとメッセージを送受信できる。Moto 360の表示フォーマットは簡潔で、利用者は一見して情報を把握できる。Wicksはこの方式を「Glanceable (チラ見できる)」と呼んでいる。この「チラ見」がAndroid Wearの標準インターフェイスとなる。

スマートウォッチの次は

Moto 360は情報を表示する目的で使用されるため、カメラは搭載していない。給電のためのUSBポートもない。概観は腕時計で、電子機器固有のパーツは見えない。MotorolaはMoto 360のハードウェア仕様を公開しておらず、ディスプレイの解像度、センサーの種類、バッテリーの寿命などは不明である。製品出荷は今年夏からで、アメリカを最初に世界に展開する。Wicksは製品ロードマップについても触れた。今回はAndroid Wear搭載スマートウォッチを開発したが、今後は他のウエアラブルに展開していくと述べた。詳細は明らかにしていないが、スマートウォッチの次はスマートグラスなのか、Motorolaがウエアラブル製品に重心を移している。

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LG G Watchは四角なインターフェイス

LGもこの発表に合わせて、Android Wear搭載のスマートウォッチ「G Watch」を発表した。(上の写真) G Watchはディスプレイが四角形で、従来型スマートウォッチのデザインを踏襲している。LGも製品仕様は公開していないが、Google Nowを中心に機能を実装している。製品出荷は今年第二四半期で、価格については公表していない。LGはスマートウォッチ開発でGoogleと密接にプロジェクトを進めており、G WatchはGoogleの意向を反映した製品となっている。LGはスマートフォンやタブレットにおいても、Googleと密接に製品開発を行い、Nexus 4、 Nexus 5、LG G Pad 8.3 Google Play Editionとして商品化している。これらは「純正製品」でAndroidのあるべき姿を示している。

Samsungは二系統で開発

Googleはデバイス製造パートナーとして、MotorolaとLGの他に、Asus、HTC、及びSamsungを挙げている。Samsungは、パートナーに名前は連ねているが、製品発表は行っていない。Samsungは既に独自スマートウォッチ「Galaxy Gear 2」を発表している。Gear 2の基本ソフトにTizenを採用しており、Googleと袂を分かつ形となっている。今後Samsungは、スマートウォッチでTizenとAndroid Wearの二系統で開発を続けるのか、その先行きが不透明である。

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ファッション性をアピール

Android WearパートナーでFossil Groupの名前が目に留まる。Fossilは時計 (上の写真) や宝飾品を販売する企業で、ファッション・ブランドがAndroid Wearを搭載したスマートウォッチを発売することとなる。Moto 360と同様に、お洒落なスマートウォッチを開発するという路線となる。腕時計を熟知している企業が開発するスマートウォッチはどんなデザインなのか、パートナーの中で一番気になる製品である。GoogleはGoogle Glassでもメガネ最大手Luxottica Group (傘下にRay BanやOakleyブランドを持つ) との提携を発表し、一流ブランドのデザインや販路を取り入れる。スマートグラスやスマートウォッチは「デザイン・テスト」に重心を移しつつあり、機能性に加えファッション面で、消費者に訴求している。