Archive for the ‘ウェアラブル’ Category

リオ五輪で選手を支えたウエアラブル ~ 脳科学を応用したヘッドセットで瞬発力アップ、電気的ドーピングとの声も

Wednesday, August 24th, 2016

リオデジャネイロ五輪で米国チームは121個のメダルを獲得し、その活躍ぶりに社会は沸いた。メダルの半分以上を競泳と陸上で獲得し、選手層の厚さが再認識された。リオデジャネイロ五輪はスポーツテクノロジーの戦いでもあり、選手はハイテクデバイスでトレーニングを積んできた。

話題のトレーニングデバイス

リオデジャネイロ五輪が終わり、アスリートを支えたウエアラブルが話題になっている。いま注目を集めているのが「Halo Sport」というウエアラブルだ (上の写真)。これはサンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業Halo Neuroscienceが開発したもので、ニューロサイエンスをトレーニングに応用する。Halo Sportはヘッドセットの形状で、これを頭に着装してトレーニングする (下の写真)。「Neuropriming」 (脳を刺激する) という手法を使い、アスリートの潜在能力を引き出す。Halo Sportを使うとスキルを早く習得でき、強い肉体をつくることができる。

脳を刺激する電気シグナル

アスリートはトレーニングを始める前に、又、トレーニング中にHalo Sportを使う。ウエアラブルに装着されているPrimer (上の写真、ヘッドセット内側の突起のあるデバイス) が脳のMotor Cortex (運動野) を刺激する電気シグナルを発する。この刺激によりシナプスなどの結合パスの組み換えが頻繁に起こり、神経系と筋肉を結ぶ回路が強化される。これにより、アスリートは正確な動きができ、瞬発力を得ることができる。このプロセスを「Neuropriming」と呼び、アスリートはその成果を短期間で得ることができる。

脳が持っているポテンシャルを引き出す

ヒトの脳は膨大な能力を持っているが、これらは活用されないまま眠っている。この潜在能力は「Neuroplasticity」と呼ばれる。ニューロンのパスを柔軟に変更することで、新しいものを学習する能力を発揮する。これが外国語や数学を学ぶ能力となる。アスリートにとっては、体の動きを学び、筋肉を強化する能力となる。トレーニング中にMotor Cortexを刺激すると、高速で学習できる状態「Hyperplasticity」となり、ニューロンのパスを通常より柔軟に繋ぎかえることができる。

リオデジャネイロ五輪

Halo Sportはベータ製品で、トップアスリートがこれを使い実証試験を進めている。リオデジャネイロ五輪では、選手がHalo Sportを使ってトレーニングを重ねてきた。米国では、陸上男子400メートルリレー走者のMike RodgersがHalo Sportを使っている。決勝で米国チームは三着でゴールし、テレビ中継は大きく盛り上がった。しかし、バトン受け渡しで違反があり、米国チームは失格となった。米国以外のアスリートも含め、4人がオリンピックに向けてHalo Sportでトレーニングを重ねてきた。

ピョンチャン冬季五輪

米国スキー協会「U.S. Ski & Snowboard Association」はスキージャンプでHalo Sportを取り入れたトレーニングを始めた。スキージャンプトのレーニングは期間が限られ、また、選手が怪我をするのを避けるため、Halo Sportの導入が決まった。既にトレーニング成果が公開されており、Halo Sportによりジャンプの踏切りパワーが13%向上したとしている。米国スキージャンプチームは2018年のピョンチャン冬季五輪に向けてトレーニングを続けている (下の写真)。

米国国防省がHalo Sportを導入

米国国防省もHalo Sportの効果に注目している。国防省長官Ash Carterは2016年7月、Defense Innovation Unit Experimental (DIUx) プログラムを発表した。DIUxとは国防省と民間企業を橋渡しするプログラムで、企業で開発している先進技術を国防省に取り入れることを目的とする。DIUxは15の先進技術を選び、その一つとしてHalo Sportの採用を決めた。Halo SportはSpecial Operations Command (テロ対策など特殊任務を遂行する部隊) で使われる。Halo Sportを使った軍事技術トレーニングで教育効果を検証する。

Transcranial Direct Current Stimulation

Halo Sportの方式は一般に「Transcranial Direct Current Stimulation (tDCS)」 と呼ばれる。tDCSとは脳皮に電極を付け、低電圧の直流電流を流し、脳の対象となる部分を刺激する方法を指す。tDCSは脳障害や精神疾患の患者を治療する方法として開発された。特にうつ病患者の治療で効果を上げている。一方、健常者が認識能力を向上する効果や、パーキンソン病患者が記憶力を回復する効果などは報告されていない。

学術的な検証を進める

Halo Sportの方式は学術的には検証されておらず、その効果を疑問視する研究者も少なくない。このためHalo Neuroscienceはトップアスリートと実証試験を進め、その効果を正式に公開するとしている。具体的には、実験結果を学術論文として公表しPeer Review (他の研究者による検証) を受ける予定である。tDCSのスポーツへの応用が実用段階に近づいていることを意味する。これを受け、Halo NeuroscienceはHalo Sportを一般消費者向けに販売することを計画している。(下の写真はHalo Sportのコンセプト。Halo Sportはアスリートの脳にチータのように走れと教育する。)

電気的ドーピングとの声も

Halo Sportはリオデジャネイロ五輪で注目を集め世界的に知名度が上がった。ロシアからはHalo Sportは電気的なドーピングであると批判的な声も聞かれる。ロシアは禁止薬物の使用で多くの選手が大会に出場できなかった。Halo Sportは脳への電気的な刺激で筋肉を強化するため、ドーピングのメカニズムに近いとロシアのメディアは主張する。tDCSとドーピングの関係につてはガイドラインは定められていない。今後、World Anti-Doping Agency (世界反ドーピング機関) はtDCSをどう評価するのか注視していく必要がある。今ではトレーニングに高度なテクノロジーを取り入れないと世界の舞台に立てない。同時に、どこに線を引くのかその判断が難しくなってきた。

AIが人に感動を与える、心に響く広告メッセージはアルゴリズムが生成する

Thursday, July 28th, 2016

AIが生成する文章は機械的で、意味は分かるがそれ以上のものではない。いま、AIは単に文章を書くだけではなく、人の心に響くメッセージを創ることができるようになった。人間のコピーライターの想像力を上回るとの意見も聞かれる。この技術を広告に応用すると、商品の売り上げが伸びる。医療機関はAIが生成するメッセージで効果的な治療法を研究している。男性が女性をデートに誘うときのメッセージの書き方をAIが指南する。米国大統領選挙では、有権者を駆り立てるメッセージをAIで生成しているに違いない。

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アルゴリズムで人の心に響くコンテンツを生成

この技術を開発しているのはNew Yorkに拠点を置くPersadoというベンチャー企業だ。機械学習や自然言語処理の技術を使って、消費者に行動を促すメッセージを生成する。このシステムは「Cognitive Content Platform」と呼ばれ、アルゴリズムが人の心に響くコンテンツを生成する。ウェブサイトやメールなどのキャンペーンメッセージを生成する時に利用する。既に多くの企業で使われ、人間が生成したメッセージに比べPersadoで生成すると、コンバージョン率 (商品を購入する率) が平均で49.5%向上したとの統計データがある。Persadoは人間以上に魅力的なメッセージを創作する。

旅行会社のキャンペーンメッセージ

Persadoはこの機能を「Persado Enterprise」と「Persado Go」として商品化している。Persado Enterpriseはフルスペックのプラットフォームで、Persado Goはその簡易版となる。Persadoを使って電子メール、ウェブページ、Facebook記事、広告メッセージを生成する。例えば、旅行会社がキャンペーンメッセージを生成すると次のようになる。旅行会社のウェブサイトで「期間限定の格安フライト、予約は今だ」との見出しをよく目にする。これに対しPersadoがタイトルを生成すると、「自分のご褒美に最高の旅行を、さあ出発しよう」となる。後者のほうが親しみを抱かせる表現と思えるが、Persadoは統計手法に沿ってメッセージを生成している。Persadoは膨大な数の事例から学習し、コンバージョン率が上がる文字列を生成する。

データベースと機械学習

この背後にはマーケティングメッセージに関する大規模なデータベース (先頭の写真) や機械学習で強化されたアルゴリズムがある。Persadoはマーケッティングで使われる言葉やフレーズを解析し、これらの重みや関係を定義する。言葉は三つのカテゴリーに分類される。「Descriptive」は記述言語を意味し、製品の説明文章がこのカテゴリーになる。「Emotional」は消費者の感情に訴える言語を意味する。「Functional」はボタンを押すなどナビゲーションに関する記述を表す。

過去のキャンペーンで使われたメッセージサンプルを収集し、それらをPersadoで編集し、繰り返しその効果を検証した。つまり、Persadoで生成したメッセージの効果を測定し、機械学習の手法でその機能を上げていく。その結果、感情に訴えるメッセージが消費者からのレスポンスを大きく向上させることが分かった。上述のEmotionalに区分される言葉を有効に組み合わせる手法で人の心を揺さぶるメッセージを生成する。

感情に訴える言葉とは

Emotionalに区分される言葉はEmotional Languageと呼ばれツリー構造で分類される。大きくはPositiveとNegativeに分類され、その下に小分類が続く。Positiveの下には、「Joy」、「Achievement」、 「Encourage」などがある。この分類は「Ontology of Emotion」と呼ばれ、語彙の意味と他の語彙との関係を示し25万語から構成される。Persadoは定義されたEmotional   Languageを使ってコンテンツを生成する。言葉のパズルを解くように言葉を組み合わせてメッセージを生成する。下のグラフはEmotional Languageの解析結果で、ポジティブな言葉でも、その効果は大きく異なる。「Exclusivity」は大きくプラスに作用するが、「Excitement」は反対に大きくマイナスに作用する。Persadoは膨大な数のベンチャーマークを通し、解析結果を把握し、文字列を最適化していく。

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クリック率とコンバージョン率が大きく増える

Persadoの効果は多くのキャンペーンで実証されている。下の写真はAmerican Expressのバナー広告の事例で、上段が一般的に利用されるコンテンツで、下段はそれをPersadoを使って改良したもの。Persadoがキャッチコピーを創ると、消費者のクリック率はほぼ三倍に増えた。そして、コンバージョン率はほぼ2.5倍となった。一見すると両者の間に大きな違いはないが、ベンチマークではこのように大きく差がついた。「Ends Soon」という言葉が危機感をあおり、消費者に購買を促すように思えるが、Persadoはその理由までは解明できないとしている。ここが現在のAIの力の限界でもある。

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病院と患者が効果的にコミュニケーションする手法

Persadoは広告キャンペーンだけでなく、幅広い分野で新しい使い方を開発している。その一つがデジタル・ヘルスケアーで、病院と患者が効果的にコミュニケーションする手法を開発している。オバマケアーが目指しているように、医療機関は患者を治療するだけでなく、疾患に関し標準的な治療プロセスを確立し、治療効果を上げ、コストを下げる方向に進んでいる。

この手法は「Clinical Pathway」と呼ばれ、糖尿病や高血圧患者の治療でトライアルが始まっている。医師は患者に治療のための指導をするが、いかに患者を納得させるかでPersadoの技術を活用する。患者がオンラインサイトで食事の指導を受けるときに活用する。どのような言葉の並びが患者を説得し、実際の行動につながるかの研究をしている。

例えば、患者に薬を飲むことを促すメッセージとして「4時半になりました、処方した薬を飲みましょう」が一般的である。これに対してPersadoは、「チャールズさん薬を飲んでください。家族はあなたを必要としています。」というメッセージを生成する。患者を恣意的に誘導するのではなく、健康な生活を促すためにはどう記述すべきかの研究が続いている。

ウェアラブルに表示するメッセージ

医療に関連する分野にQuantified Selfがある。これは消費者がウエアラブルなどで身体のデータを収集し、それを健康な生活を送るために活用しようとする動きである。Persadoを健康な生活を送るために利用する。Apple Watchなどのウエアラブルに健康管理のメッセージが表示されるが、消費者の多くはこれを好意的に受け止めていない。ディスプレイに「立ち上がる時間です」とメッセージが表示されるが、それに従って行動を起こす人は多くはない。これに対し、Persadoは利用者のモティベーションを高めるメッセージはどうあるべきかを研究している。

消費者に支払いを督促する方法

金融機関もPersadoに関心を寄せている。日々のトランザクションに関するメッセージをPersadoで生成する。衛星ラジオSirius XMは、利用者に料金を遅延なく支払うことを伝えるメッセージを開発している。料金の支払いが遅れると、電気会社からは「電気を止める」と脅かされ、これを快く思っていない消費者も少なくない。カード会社からは「忙しいのは理解できる」と同情され、少しは気分が楽になる。消費者に支払いを督促するにはどんな文字列が最適なのか、PersadoはAmerican Expressと開発を進めている。

男性が女性を誘うときのメッセージ

米国では交際相手を見つけるためデートアプリが幅広く使われている。日本の出会い系サイトのように危険なアプリもあるが、その多くは相手を探すための重要なツールとして社会生活に定着している。Tinderのように若者に爆発的に広まったアプリもある。Persadoはデートアプリの機能として、男性が女性を誘うときのメッセージをアドバイスする。女性に対して、「今夜出かけませんか?」というのはダメで、「今日は出かけるには素晴らしい日ですね?」と言うように指南する。どれだけ効果があるのかベンチマーク結果は公表されていないが、Persadoの新しい活用モデルとして期待が集まっている。

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大統領選挙で有権者の心を掴む

選挙で有権者に配信するメッセージの生成でPersadoが使われる。選挙戦はSNSやメールやメッセージングなど、デジタルの戦いになっている。有権者に集会などキャンペーン活動に参加を促すためにPersadoが使われる。また、ボランティア活動への参加者を募るためにも利用される。Persadoはどのような言葉の配列が効果を上げるのか、その結果を検証している。米国では両党から大統領候補が出そろい、本格的な選挙戦が始まった。それぞれの陣営が有権者に配信するメッセージをAIで作成している可能性は否定できない。(上の写真:民主党全国大会はHillary Clintonを大統領候補に指名して本日幕を閉じた。)

AIがコピーライターの職を奪う

米国市場の大きな流れは、テキストをマニュアルで作成する方式から、アルゴリズムで生成する方式に変わってきたこと。更に、Persadoのように、アルゴリズムがコピーライターより効果的なメッセージを生成するようになったこと。市場では再び、AIがコピーライターの職を奪うとの危機感が広がっている。一方、Persadoはあくまで人間の創作活動を支援するツールに過ぎないという意見もある。人間が書いた文章をPersadoがブラッシュアップする。我々がスペルチェッカーを使うように、これからはワードプロセッサーで書いた文章をPersadoが添削する。どちらももっともな意見であるが、AIは着実に我々の仕事に迫っているように感じる。

言葉をエンジニアリングする企業

Persadoの手法は、Behavioral MarketingなのかPsychologyなのか議論が続いている。前者は消費者の挙動に応じた広告手法を意味する。いわゆるターゲッティング広告でゴルフのニュースを見ると、ゴルフ製品の広告が表示されるという方式である。後者は心理学で、消費者の心情を理解して広告を配信する手法を指す。メッセージを受信した消費者はどう感じているのかについてはPersadoは把握していない。ただ、Persadoは消費者が特定のメッセージを受信すると、それにどう反応するかを経験的に掴んでいる。Persadoは両者の境界領域にある会社として位置づけられる。また、Persadoは言葉をエンジニアリングする企業とも定義できる。

Apple Watchでの支払いは予想以上に便利!”おサイフウォッチ”がブレーク寸前

Friday, April 24th, 2015

Apple Watchを手に取ると写真以上に美しかった。実際に腕にはめてみると快適だった。Apple Storeで試着した印象で、これが決め手となり、ウェブサイトで購入した。Apple Watchで生活すると、一番便利な機能は断然「Apple Pay」(下の写真)。レジの支払いが、Apple Watchをかざすだけでできる。自動販売機にウォッチをかざすとコーラが買える。おサイフケータイの次は”おサイフウォッチ”の時代が到来すると強く感じた。

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Apple Watchでの支払いは快適

「Apple Pay」は米国版おサイフケータイで、iPhone 6で利用できる。Apple Watchもこの機能を備え、ウォッチをかざすだけで支払いができる。

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レジで支払いする際に、サイドボタンをダブルクリックすると、Passbookに登録しているクレジットカードが表示される (上の写真)。これリーダーにかざすと支払が完了する。上のケースでは、リーダーのディスプレイ部分にApple Watchをかざす。ポケットからiPhoneを取り出し、TouchIDで指紋認証する必要は無く、ウォッチで支払いができるのは格段に便利と感じた。

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クレジットカード登録と安全機能

Apple Payを使う前に、専用アプリ「Apple Watch」でカードを登録する。iPhoneの時と同じ手順で、カメラでカードを撮影し、カード番号など必要なデータを入力する。カード登録が完了すると、Apple WatchのPassbookに格納される (上の写真、左側)。

iPhoneでApple Payを使う際は、指紋認証で本人確認をする。これに対して、Apple Watchでは、PINを入力して本人確認をする。Apple Watchを着装する際に、四桁のPINを入力すると (上の写真、右側)、デバイスがアンロックされる。支払いの際には認証は必要なく、Apple Watchをリーダーにかざすだけで処理が完了。Apple Watchを外すとログオフした状態となり、ウォッチを盗まれても、他人が支払いをすることはできない。Apple Watchでも安心して買い物ができる。

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一気におサイフウォッチに移行するか

iPhoneと同様に、Apple WatchとリーダーとはNFC (Near Field Communications) 方式で交信する。支払いする際は、Apple Watchをリーダーに接触させるくらい近づけて使う (上の写真)。米国では大規模なカードデータ盗用事件が相次ぎ、多くの店舗がNFC機構を搭載したリーダーの設置を進めている。このため、Apple Payを利用できる店舗が増えてきた。便利になったのと同時に、プラスティックのカードを使うのと比べ、安心感が格段に向上した。

Apple WatchをiPhone 5とペアリングして使うことができる。つまり、iPhone 5でApple Payを使えるようになった。iPhone 5利用者はApple Watch側で支払いができる。これは、Apple Payに対応したデバイスが急増することを意味し、普及が一層進むこととなる。米国では、おサイフケータイが普及する前に、一気におサイフウォッチに移行する気配をみせている。

Apple Watchでコカコーラを買う

Apple Watchで自動販売機の支払いができる。Coca-Colaは北米で、Apple Payに対応した自動販売機の整備を進め、今年末までに10万台を導入するとしている。iPhoneやApple Watchをかざすだけで、清涼飲料水を購入できる。

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上の写真がその様子で、Apple Watchでコーラを買ったところである。自動販売機にはクレジットカードやNFCリーダーが装着されている。Apple WatchをNFCリーダー (上の写真の黄色の部分) にかざすと支払処理ができ、買いたい商品のボタンを押すとボトルが出る。

日本では駅構内に設置されている自動販売機で、Suicaを使って清涼飲料水を購入するのは、日常生活の一部になっている。米国ではNFC機構を搭載した自動販売機が、ホテルやスーパーマーケットなどに設置されている。Apple Watchで飲み物を買える社会が到来した。

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米国版SuicaもApple Watch対応へ

電車の改札でもApple Watchが使えるようになる。サンフランシスコ地区では公共交通機関「Caltrain」などで、米国版Suicaともいえる「Clipper Card」が使われている。上の写真は駅に設置されている検札機に、Clipper Cardをかざしている様子。乗り降りの際と、車内での検札で、カードをかざす必要がある (車内検札では車掌さんが持っているポータブルリーダーにかざす)。 いまClipper Card機能をiPhone 6とApple Watchに実装する計画が進められている。これからは改札でカードの代わりにApple Watchで乗車でき、通勤が格段に便利になる。

Appleは日本でのApple Payの展開についてはコメントしていないが、最重要市場と見ているのは間違いない。今後、日本においてApple Watchで支払いができ、電車に乗れるようになれば、生活がより一層便利になる。Apple Watchを使ってきて、おサイフウォッチ機能は、むしろ日本社会向きだと感じている。

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StarbucksもApple Watch対応

StarbucksではApple Watchでコーヒーを買える。Passbookに格納している「Starbucks Card」を使って支払いをする。レジで、Apple WatchにカードのQRコードを表示し、ウォッチをリーダーにかざして支払いする (上の写真)。今まではiPhoneにStarbucks Cardを表示していたが、Apple Watchをかざすだけでスマートに支払いができる。

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ただ、Apple Watchのアイコンは小さいので、Passbookアプリを探してオープンするのは、慣れるまでに時間がかかる。上の写真左側が筆者のホーム画面で、Passbookアイコンは中央最下部に位置している。レジでの支払いでは、事前にPassbookを開いて準備しておく必要がある (上の写真、右側)。Siriを使い、音声で「Hey Siri Open Passbook」と語りかけ、Passbookをオープンする方法もある。ただ、レジの待ち行列では他人の迷惑になり、控えた方がよさそうだ。

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ホテルのルームキーとなる

Apple Watchがホテルのルームキーとなるサービスも登場している。ホテルチェーン「Starwood Hotels & Resorts」は、iPhoneをルームキーとするサービス「SPG Keyless」を提供している。これをApple Watchに展開している。Apple Watchに部屋番号が表示され、ドアにウォッチをかざすと鍵が開く。ホテルカウンターで長い行列に並ぶ必要は無く、スマートにチェックインできる。

利用者は事前に、iPhoneで必要事項を記入しデバイスを登録をしておく。宿泊24時間以内に通知を受け、確認ボタンを押すとチェックインが完了する。アプリを起動すると部屋番号が表示され、そのまま部屋に向う手順となる。部屋だけでなくホテル施設でも利用できる。Apple Watchと鍵はBluetoothで交信する。SPG Keylessが利用できるホテルは「W Hotels」や「Aloft Hotels」など、ちょっとお洒落なホテルが中心となる。荷物を抱えながらiPhoneを取り出すより、Apple Watchで部屋に入れるのは便利そうだ。

「ウォッチ・ネイティブ」のアプリ

Apple Watchを使ってみて、便利な機能とそうでない機能がはっきり分かってきた。メール、テキストメッセージ、通話機能、カレンダーなどは、確かに便利ではあるが、なくてもそれ程困らない。一方、便利と感じる機能はApple Payや健康管理「Activity」などである。ざっくり区分けすると、iPhoneのセカンドスクリーンになっているアプリは余り便利と感じない。一方で、Apple Watch”ネイティブ”のアプリは便利と感じる。ネイティブアプリは、Apple Watchに搭載されているハードウェア機構を駆使し、有益な機能を提供する。Apple PayではNFC機構であり、Activityのケースでは心拍数計測などのバイオセンサーである。Apple Watchのアプリの数は3000本といわれているが、ほとんどがiPhoneアプリの焼き直しである。今後、ウォッチ・ネイティブのアプリが登場し、クールな機能を提供してくれることを期待する。

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Appleらしいお洒落なデザイン

機能面とは別に、いたるところにAppleらしいお洒落なデザインが施されている。Apple Watchを最初に起動して、iPhoneとペアリングするが、銀河星雲が回転しているようなイメージが登場した (上の写真)。ペアリングでは通常QRコードが使われるが、Apple Watchはポイントクラウドと呼ばれる、データポイントの集合体を使う。銀河星雲が四桁の数字を示し、iPhoneカメラで撮影してペアリングする。ポイントクラウドで機能が向上するわけではないが、単純作業も楽しくできる。

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ガジェットがファッションアイテムになる

やはりAppleの色彩感覚が気になる。スポーツモデル「Watch Sport」のバンドの色は五種類提供されている (上の写真、Apple Storeのショーケース)。実は、この五色の配色は、グリーンを除いて、すべてGoogle Glassのフレームの色に同じである。色調もコピーしたようによく似ている。AppleがGoogle Glassの色を参考にしたとも思えなく、消費者が好む色を絞り込むと、これら五色になるのかもしれない。

筆者はブルーのバンドと装着感に惹かれて、Apple Watchを購入した。このモデルを着装するとすがすがしい気分にな。着装するときは、袖を少しめくり、Apple Watchがチラッと見えるようにしている。Appleがスマートウォッチをデザインすると、ITガジェットからファッションアイテムになる。

Apple Watchを見据えたデジタルヘルス、臨床試験基盤「ResearchKit」で医学が進歩!

Friday, April 3rd, 2015

センサーやウエアラブルや人工知能の進化で、デジタルヘルスが転換点に差し掛かっている。Appleは昨年9月、「Health」アプリを投入し、健康管理市場へ参入した。先月は、臨床試験基盤「ResearchKit」を発表し、医療研究を下支えするフレームワークを投入。来月にはApple Watchが登場し、健康管理で重要な役割を担う。Appleのデジタルヘルス戦略のストーリーが繋がってきた。

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臨床試験を支援するサービス

医療現場でResearchKitが話題になっている。ResearchKitは医療機関向けの技術で、これを使えば簡単に臨床試験アプリを開発できる。一方、臨床試験に参加するモニターは、iPhoneでこのアプリを稼働し、身体情報を記録する。具体的には、臨床試験アプリは、健康管理アプリ「Health」が収集したデータを読み込み、モニターのアクティビティや健康状態を収集する。医療機関はこれらデータを解析し、医療情報に関する知見を得る構造となっている。

既に、ResearchKitで開発された臨床試験アプリが登場している。Stanford Medicine (スタンフォード大学医学部) は、心臓の健康状態を解析するアプリ「MyHeart Counts」を開発した (上の写真、アプリ専用サイト)。このアプリはモニターの日常生活をモニターすることで、生活習慣と心臓疾患の関係を医学的に解明することを目標にしている。更に、心臓疾患を予防するためには、どのような生活を送るべきかを理解する。

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モニターになってみた

筆者もこのアプリを使った臨床試験に参加した (上の写真左側、アプリ初期画面)。こう書くと仰々しいが、誰でも簡単に臨床試験に参加できるのがこのアプリの最大の特徴だ。アプリで研究目的や注意事項を読み (上の写真右側)、同意書に名前をタイプするだけで手続きが完了。スタンフォード大学病院に行って説明を受ける必要は無く、全てアプリで完結する。使用できるスマホは、iPhone 5s、iPhone 6、及びiPhone 6 Plusだが、既にApple Watch向け機能も実装されている。モニターは、身体情報を大学病院に”寄付”するが、その見返りとして、心臓の健康状態を把握できる。

モニターはアプリが指定するタスクを実行し、アンケート調査に回答する方式で進む。アプリはiPhoneセンサーでモニターの動きを自動で把握し、収集したデータから、行動パターンや心臓の健康状態を理解する。収集したデータは暗号化して送信され、名前はランダムに発生したコードで置き換えられる。身体情報を扱う研究なので、セキュリティー機能に配慮されている。ただ、収集したデータはスタンフォード大学以外でも使われる可能性ありとの記述が気になったが、ここは目をつぶってサインした。

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アプリが読み込むデータソース

試験開始前に、アプリが読み込む身体情報のデータソースを指定する。上述の通り、モニターの行動は、iPhoneに搭載されている各種センサーで、自動的に収集される。センサーが収集したデータはHealthに格納され、これをアプリが利用する構造となっている。上の写真左側がその設定画面で、Healthに格納しているデータの中で、アプリがアクセスできる項目を指定する。身長や体重などの基本情報へのアクセスを許諾した。また、血糖値や血圧など、健康診断情報へのアクセスも許諾した。最後に、アンケート調査に回答する。質問は、健康状態から家族の病歴まで、広範囲に及ぶ。上の写真右側がアンケート調査の画面で、ここでは仕事と運動量についての質問に回答している。

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データ計測は自動で行われる

試験中はiPhoneを携帯して生活するだけで、何も特別な操作は必要ない。iPhoneはズボンのポケットに入れるよう指定され、加速度計がアクティビティーや歩数を自動で計測する。一日が終わると、前日の睡眠時間など、簡単な質問に回答する。これで計測が終了し、その結果が円グラフで表示される (上の写真左側、下段)。円グラフの色が、アクティビティー種目 (睡眠、座ってる状態、運動している状態など) を示す。更に、一日の歩数が示される。アクティビティーや歩数は、上述の通り、健康管理アプリHealthで収集される。上の写真右側がHealthアプリの「Step」画面で、一日の歩行数を示している。アプリはここから歩数などのデータを読み込む。

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心臓年齢や病気に罹る確率

計測は一週間続き、最後に「ストレステスト」が行われる (上の写真左側)。これは名前の通り、心臓に負荷をかけ、心拍数を測定し健康状態を算定するものである。モニターは三分間、できるだけ早く歩き、アプリはその歩行距離を記録する。Apple Watchや他のウエアラブルで、歩行中と終了三分後の心拍数を計測する。アプリは年齢、性別、身長・体重に応じた歩行距離や心拍数をベースに、モニターのフィットネスを算定する。まだApple Watchは出荷されていないので、今回は歩行距離だけが使われた。

アンケート調査「Heart Age」に回答すると、モニターの心臓年齢を算出する (上の写真右側、サンプル)。心臓の健康年齢と病気 (心臓疾患と脳梗塞) にかかるリスクの割合が表示される。このケースでは、62歳のモニターの心臓年齢は60歳と若く判定されている。病気発症の確率は6%と、目標値 (7%) よりいい結果となっている。(筆者のケースでは、病気に罹るリスクが標準より高いと判定された。健康状態をデジタルに示されるとインパクトが大きい。これを契機に、食生活の改善や運動の強化を考えているところ。)

運動を促すコーチング

試験は7日間続き、これが1セットとなり、三か月ごとに繰り返される。一週間の試験が終わると、アプリはモニターに対し、毎日運動するよう「コーチング」を行う。三か月後に、再度、同じ試験を一週間にわたり行う。コーチングはゲームやメッセージなどで、アプリはどの方式が一番効果があるかを検証する。但し、筆者のケースでは、一週間のテスト期間が終了したが、コーチング情報は表示されていない。

大反響を呼んだ臨床試験アプリ

スタンフォード大学は、アプリを公開して24時間で、1万人が登録したと公表した。これだけの規模のモニターを募るには、通常、一年の歳月と50の医療機関が必要とされる。iPhoneアプリとHealthで臨床試験ができるようになり、多くのモニターを短期間で集めることができた。収集したデータはそのままクラウドに記録される。従来の紙ベースの臨床試験と比べ、はるかに効率的に知見を得ることができると評価している。

臨床試験アプリへのコメント

一方、ResearchKitで開発したアプリを使った臨床試験に対し、様々な意見が寄せられている。モニターから得られるデータの質が議論となっている。iPhone利用者は高学歴・高収入という統計情報があり、臨床試験モニターはデモグラフィックスを正しく反映していないのでは、という疑問の声も聞かれる。その一方で、FDA (米国食品医薬品局、新薬などの認可をする機関) はスマホを使った臨床試験について肯定的な評価をしている。アプリを使った臨床試験で、医療技術が進むことを期待している。因みに、このアプリは医療行為は行わないため、FDAの認可は不要である。

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パーキンソン病研究アプリなど

MyHeart Counts以外にも、ResearchKitで開発されたアプリが登場している。その一つがパーキンソン病研究のためのアプリ「mPower」で、University of RochesterとSage Bionetworksにより開発された。アプリで敏捷性、バランス、記憶力、足並みを測定することで、日常の行動と病気の関係を理解する。モニターはアプリを起動し、人細指と中指で画面を早くタップしたり (上の写真)、マイクに向かって長く「アー」と発声する。俊敏性や発声とパーキンソン病の関係を解析する。研究に寄与するだけでなく、モニターは自身の病気の予兆を早く知ることができる。また、糖尿病研究のためのアプリ「GlucoSuccess」や乳癌研究のアプリ「Share the Journey」などもリリースされている。

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IT企業はデジタルヘルスに向う

Googleは2014年7月、人体の研究を行うプロジェクト「Baseline Study」を開始した。Baseline Studyは175人の健康なモニターから遺伝子と分子情報を収集し、健康な人体のベースライン情報を把握する。心臓疾患や癌の兆候を早期に発見することを目的とする。身体情報はウエアラブルで収取される。Googleが開発したコンタクトレンズを使うと、血糖値をリアルタイムで測定できる。測定したデータは、個人の遺伝子情報と共に、人工知能を使って解析される。健康な人体を定義し、医師は病気予防に重点を置いた措置が可能となる。他に、Microsoft、IBM、Samsungなども、デジタルヘルス分野で技術開発を加速している。IT企業がデジタルヘルス事業を展開する背後には、テクノロジーの進化がある。プロセッサーやセンサーや人工知能の技術開発が進み、低価格で生体情報を収集・解析できるようになった。

AppleはResearchKitで、Healthやウエアラブルを束ねるアプローチを取っている。ResaerchKitを使うと、病院や製薬会社は、簡単に臨床試験を展開できる。現在は、iPhoneで身体情報を収集するが、やはり最適なデバイスはウエアラブルで、Apple Watchを見据えた設計となっている (上の写真)。Apple Watchの機能は心拍数の計測に留まるが、将来は、幅広い生体情報を収集すると期待されている。消費者にとってはResearchKitは無縁の存在であるが、医療現場では医学研究にインパクトを与える画期的なツールとして評価が高まっている。今年はデジタルヘルス市場でブレークスルーが起ころうとしている。

お洒落だけど革新的でない?Apple Watchの狙いを読み解く

Wednesday, March 11th, 2015

Appleは、3月9日、サンフランシスコで、Spring Forwardと題した発表イベントで、Apple Watch詳細情報を発表した。改めて、Apple Watchは洒落なスマートウォッチで、ハイエンドモデル「Watch Edition」は息をのむほど美しい (下の写真)。一方、Apple Watchで生活がどう便利になるか、分かりづらいという意見もある。Apple Watchの機能は革新的でないとの評価もあるが、発表されたアプリを子細に検証すると、別の姿が見えてくる。

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パートナー企業が開発したアプリ

発表イベントで、CEOのTim Cookが、Apple Watchについて詳細情報を公表した。機能については、驚くような情報は無かったが、パートナー企業が開発したアプリについては、新鮮な情報が揃っていた。技術担当副社長Kevin Lynchが、Apple Watchを使って、これらアプリをデモし、新しい使い方を示した。アプリを子細に見ていくと、Apple Watchの狙いが浮き上がる。

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おサイフケータイ付き腕時計

Apple Watchでおサイフケータイ機能「Apple Pay」が使えることが大きなアドバンテージとなりそうだ。店舗で買い物をし、サイドボタンをダブルクリックし、リーダーにかざすだけで支払がいできる (上の写真、左側)。ポケットからスマホを取り出す必要は無く、腕時計で支払いができるのは、圧倒的に便利。セキュリティーに関しては、Apple Watchを着装する際に、四桁のPINを入力して本人確認をする。Apple Watchを外すとログオフした状態となり、他人が支払いをすることはできない。リーダーとはNFC (Near Field Communication) 方式で交信する。筆者は、スターバックスでリストバンド「Microsoft Band」で支払いをしているが、この方式はヒットの予兆を感じる。

ホテルのルームキーとなる

Apple Watchをホテルのルームキーとして使える。これはホテルチェーン「Starwood Hotels & Resorts」が開発したアプリで、Apple Watchがルームキーとなる (上の写真、右側)。ホテルに到着するとアプリでチェックインし、そのまま部屋に向う。アプリには「Room Number 237」などと、部屋番号が表示される。部屋のドアにApple Watchをかざすと鍵がアンロックされる。このケースもドアの鍵とはNFC方式で交信する。ホテルカウンターで長い行列に並ぶ必要は無く、スマートにチェックインできる。ホテル側としても、業務の効率化に役立つ。

駐車場で料金を支払う

Apple Watchで駐車料金を支払うことができる。パーキング・メーターにApple Watchかざすと、駐車場のスロット番号が自動で入力され、登録しているクレジットカードで支払いができる。これは「PayByPhone Parking」というアプリで、パーキング・メーターとはNFC方式で通信する。アプリは駐車時間終了10分前にメッセージを表示する。時間までに戻れそうにない時は、アプリで追加料金を払い時間を延長できる。

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自動販売機で料金を支払う

NFC方式での支払いは駐車場だけでなく、自動販売機にも広がっている。Coca-Colaは、今年末までに、北米でApple Payに対応した自動販売機を10万台導入するとしている。iPhoneをかざすだけで、清涼飲料水を購入できる (上の写真)。今回の発表イベントでは、Apple Watchで同じ処理ができることを明らかにした。日本ではSuicaを使って自動販売機で支払いをするのは普通の生活だが、米国でもApple Payの影響力でこの流れが始まった。Apple Watchの登場で、ポケットからスマホを取り出す代わりに、腕時計で買い物する方式が注目されている。

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スマートホームを操作する

スマートホームとウエアラブルの連携がトレンドとなっている。Apple Watchとスマートホームが連動するアプリが登場した。上の写真左側は、スマート・サーモスタット「Honeywell Lyric」と連動するアプリ。時計のディスプレイで「外出中」や「就寝」ボタンを押すと、空調が省エネモードとなる。利用者が自宅から遠いところにいると、アプリはメッセージで確認したのち、「旅行」モードで運転する。サーモスタットはApple Watchで利用者の位置を把握し、帰宅すると室内が最適な温度になっている。

上の写真右側は、スマートホーム機器「Lutron」と連動するアプリで、家庭内の電燈をApple Watchで操作する。ソファに座ったままで、「映画モード」を選択すると、室内の照明が落ちる。寝室で「就寝モード」を選択して家全体を消灯する。家を離れている時も操作でき、防犯のため、夜間に電燈を点けることもできる。電燈を点けたまま外出すると、アプリが消すかどうかを尋ねる。

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大型店舗で買い物をする

Apple Watchが買い物の手助けをする。これは大型店舗「Target」が開発したアプリで、買いたい商品の売り場に近づくと、アプリがそれを教えてくれる。事前にiPhoneで買い物リストを作っておき、店舗ではその売り場に近づくと、Apple Watchにメッセージが表示される (上の写真左側、スポーツ用品売り場で自転車を表示)。アプリは消費者の場所を把握し、売り場に関連する買い物リストを表示する。これ以上の説明は無いが、店舗にBluetoothビーコン「 iBeacon」を備えておけば、ピンポイントで消費者の位置を把握できる。スマホにメッセージが表示されるのとは異なり、腕時計を見ながらの買い物は便利に違いない。

定番のランニングアプリ

ウエアラブルの必須アプリはランニング管理。上の写真右側は「Nike+ Running」で、アプリがランニングの走行距離、時間、ペースなどを表示する。iPhoneとペアで利用し、走りながらApple Watchで途中経過を確認できる。ランニング中に友人から応援メッセージが届くと、それをApple Watchで閲覧できる。ヘッドセットとBluetoothで繋ぐと、走りながら音楽を聞ける。ランニングが終わるとアクティビティーのサマリーを表示する。取り立てて新しい機能は無いが、ウエアラブルで一番人気のアプリ。

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Bring Your Own Wearable (BYOW)

早くもApple Watchを仕事に活用するアイディアが登場した。上の写真左側は、米国の先進医療機関「Mayo Clinic」が開発した、医師向けのアプリ。アプリは忙しい医師のスケジュールを管理する。医師はApple Watchを見て、患者がロビーで待っているのか、検査を終えたのかなどを把握する。診察する際には、アプリで患者の年齢、性別、体重などを閲覧し、お洒落に情報にアクセスする。BYOD (Bring Your Own Device) の次は、BYOWが話題になっている。

上の写真右側は、コントラクターが仕事をした時間を管理し、請求書を発行するアプリ「Invoice2go」。コントラクターは、Apple Watchをして仕事場に到着すると、アプリはそれを把握。職場はGeofencing機能で定義され、Apple Watchがその中に入ると、仕事をしているとみなされ、働いた時間を記録する。コントラクターはこの情報を元に、請求書を発行する。支払いを受領すると、アプリが知らせてくれる。

登場しなっかたアプリ

発表イベントでは新しいアプリが数多く紹介されたが、期待に反し登場しなかったアプリもある。これはデジタルヘルス関連で、Apple Watchは、血圧、心電図、皮膚の電気伝導率 (ストレスの度合いを測定)、血中酸素濃度を測定する機能を搭載すると噂されていた。しかし、昨年9月の発表でこれら機能は公表されず、Apple Watchはデジタルヘルスから大きく路線を転換したことが明らかになった。今回もこの路線を踏襲し、高度なデジタルヘルス機能は登場しなかった。これら重要な機能が欠落したままのApple Watchは考えにくく、将来製品に順次搭載されることを期待している。

今まで述べてきたアプリに共通しているのは、Apple WatchがNFCやBluetoothなどでネットワークに繋がり、センサーの役割を果たしていること。Internet of Thingsとして機能し、バックグランドで必要なデータを送受信し、利用者に便利な機能を提供している。Apple Watchが、クレジットカードやドアの鍵となり、リアル社会のツールとして使われる。Apple Watchは、情報表示端末ではなく、Internet of Thingsのセンサーとして捉えれば、製品の狙いが分かり易い。将来は、上述の通り、Apple Watchが身体情報をモニターするバイオ・センサーとしての役割が期待されている。

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お洒落にITを楽しむのがニューノーマル

Appleは製品発表に先立ちPRを展開してきた。上の写真は女性雑誌「Vogue」三月号で、中折の部分に12ページにわたり、Apple Watchのコマーシャルが掲載された。ドレスやバッグと並び、Apple Watchがファッションアイテムとして位置づけられている。Apple Watchのテレビコマーシャルも始まった。お洒落なApple Watchで、秒針が時を刻むように、その機能を次から次へと紹介した。プライムタイムで女性を対象に、ファッション性を前面に押し出したコマーシャルだった。お洒落にITを楽しむのがニューノーマルであるとのメッセージを感じた。