Archive for the ‘ウェアラブル’ Category

Google Glass次期製品のヒント、究極のグラスアプリを体験

Friday, January 23rd, 2015

Google Glassベータ製品 (Explorer Edition) の販売が中止され波紋を呼んでいるが、もう既に、Glass次期製品の憶測が飛び交っている。New York Timesは、販売中止に至った経緯を詳細に検証し、その上で、次期製品はゼロから設計が見直されるとの見解を示している。GoogleはGlass開発を継続しており、最終製品はExplorer Editionとは大きく異なると分析している。

記事とは別に、サンフランシスコの美術館を訪問した際に、Glass次期製品のヒントが見えてきた。展覧会で絵画の前に立つと、操作しなくても、作品ガイドがGlassに表示された。Glassはコンテクストを理解し、必要な情報を目の前に表示する。Googleが目指す理想のGlassに一歩近づいた気がした。

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サンフランシスコの美術館がGlassを採用

この展覧会はサンフランシスコの人気美術館「de Young Museum」 (上の写真) で開催された。企画展「Keith Haring: The Political Line」で、Glassを使った作品ガイドシステムが導入され、早速、このシステムを体験した。会場に入りGlassをかけて作品の前に立つだけで、ディスプレイに作品ガイドが表示された。指でタップするなどの操作は不要で、必要な情報が必要なタイミングで自律的にGlassにプッシュされた。これが情報アクセスの理想形かもしれないと思いながら、会場内を散策した。

因みに、de Young Museumはアメリカ近代絵画を中心に、幅広いジャンルの作品を取り揃えている。企画展のアーティストKeith Haringは、1980年代に活躍した米国の画家で、街中でグラフィティを描き、活動家として意見を主張してきた。タイトル「The Political Line」が示す通り、政治色が際立った作品が展示された。

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GuidiGOというアプリを利用

美術館はGuidiGO社が開発した同名のアプリ「GuidiGO」を導入。GuidiGOはパリなどに拠点を置く企業で、ルーブル美術館などにシステムを提供している。このアプリを事前にGlassにダウンロードしておき、会場入り口でそれを起動する。その後は操作は不要で、前述の通り、作品に近づくと、自動で作品ガイドが起動する。上の写真はその事例で、作品のそばに立つと、作品ガイド (右上のウインドウ) がGlassのディスプレイに表示された。これによりタイトルは「With LA II (Angel Ortiz) Statue of Liberty」で、1982年に製作されたことが分かる。この作品ガイドを見たい時は、Glassをタップするとビデオが始まる。作品番号を入力したり、Glassのカメラで作品をスキャンするなどの操作は不要で、自律的に作品ガイドが表示される。

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作品ガイドを見る

作品ガイドをタップすると、Glassでビデオが再生される。上の写真がその様子で、「無題」という1984年に製作された作品の解説ビデオ (右上のウインドウ) がディスプレイで再生される。絵画の前で、音声だけでなく、グラフィックスを取り込んだガイドを聞きながら、作品の主張を理解できる。これはHaringがコンピューターと人間社会の関係を描いたもの。中央の人物の頭脳がコンピューターで置き換わり、人工知能の脅威を表している。人物が跨っている爆撃機は、人工知能が無制限に拡散することへの危険性を主張している。当時、AppleのSteve Jobs (写真左側の人物) がMcIntoshを発売し、パソコンという概念が社会に広まっていた。Haringはコンピューターを肯定的に受け止め、技術進化に期待を寄せていた。その一方で、コンピューターを悪用することへの警戒感を絵画で表現した。Glassでガイドを見ると、作品の前で一気に理解が深まる。

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必要なタイミングで情報が表示される

上の写真は1982年に製作された「無題」という作品で、棒を足で折るしぐさが描かれている。これは警察がデモ隊を警棒で威圧することに対し、自らの運命を自分で決定することを描いている。Haringはグラフィティを地下鉄駅構内や路上に描いていた (右上のウインドウ)。このため、作品は単純な線と明確な色彩で構成され、短時間に (10分程度で) 描かれる。時に、警察に検挙されることもあった、とガイドは説明している。展覧会を振り返ると、ディスプレイに作品解説が自動で表示されるので、専属説明員に案内されながら作品を鑑賞した気分だった。欲しい情報が目の前に自律的に表示されると、如何に利便かを実感した。

Bluetooth Beaconを利用

作品の前に立つとGlassにガイドが表示されるのは、会場に設置されているBluetooth Beaconで、デバイスの位置を把握しているためである。BeaconがGlassとBluetoothで交信し、位置情報に応じた、作品ガイドを再生する指示を出す。これはスマートフォンでは馴染みの仕組みである。Apple Storeに入店すると、iBeaconがiPhoneとBluetoothで交信し、商品情報などがロックスクリーンに表示される。スマートフォンでは、デバイスをポケットから取り出し、メッセージを読まなくてはならないが、Glassでは目の前のディスプレイに直接表示されるので、利便性が格段に向上する。会場内ではBluetooth Beaconが、目立たないように壁の上部に設置されていた。

このシステムは美術館だけでなく、汎用的に利用できる。Glass利用者が増えるという前提だが、小売店舗で採用すると、目の前に特売情報などを表示でき、販売促進に役立つ。また、街中に実装すると、観光案内などで利用できる。名所旧跡などに近づくと、観光案内が目の前に表示される。日本を訪れる観光客向けのガイドなどで利用できるかもしれない。仕組みはシンプルであるが、Glassで活用するとスマートフォンよりその効果が増大する。

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Glassと人工知能の組み合わせ

Glassを使って一番便利と感じる機能が、必要な時に必要な情報が、目の前に現れる機能である。上述の美術館での作品ガイドの他に、屋外ではGoogle Nowを便利と感じる。Google Nowは、利用者のコンテクストを理解し、最適な情報を配信する機能である。スマートフォンやスマートウォッチで使われている。Glass向けにも実装されており、Glassをかけて通りを歩くと、近隣のお勧めの店舗が表示される。そのカードをタップすると、その詳細情報が表示される。

上の写真がその事例で、お昼時、サンフランシスコ対岸のサウサリトを歩くと、Glassが近くの人気レストランを教えてくれる。この近くに「Poggio Trattoria」というイタリアン・レストランがあると、ディスプレイにカードが示される (写真右上のウインドウ)。こちらの嗜好を把握し、時間と場所に依存した情報をプッシュする。お昼時に近くの人気レストランが表示されると、そちらに足が向く。自分でレストランを探す必要はなく、Glassに気になる情報が表示され、とても便利と感じる。Google NowはApple Siriに匹敵するパーソナル・アシスタント機能で、背後では人工知能の技術が使われている。Googleのコア技術である人工知能とGlassの組み合わせが、キラーアプリへの最短ルートかもしれない。

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Glass利用者は団体で入場

展覧会会場でちょっと気になる話を聞いた (上の写真)。美術館スタッフにGlassについて尋ねたところ、Glassをかけた入館者の殆どが団体客であるとのこと。Glassをかけた個人の入館者は少ないとのことであった。スタッフはこの理由は分からないとしているが、今のサンフランシスコの雰囲気を端的に象徴している事例かもしれない。Glassのプライバシー問題が大きく報道され、屋外でGlassの使用をためらう人が増えている。個人で使うには勇気がいるが、団体の一員としてなら抵抗感が和らぐ。因みに、著者は個人で入館したが、やはり見えないプレッシャーを感じる。Glassで撮影する時はプライバシー問題に配慮し、スマートフォンの時に比べ、慎重にアングルを選ぶようになった。他人の迷惑にならないようGlassを使っている。

Glassの最終目的地に一歩近づく

Googleは次世代Glassを開発中で、完成したと判断したら発売すると表明している。プライバシー問題の解決やデザインの改良が急務となるが、Glassのキラーアプリについての議論も盛り上がっている。Google X研究所長のAstro Tellerは、Glassの開発目標を、技術を意識しないで日常生活ができること、と述べている。更に、存在が意識されなくなった時が、Glass開発の到着地点とも述べている。展覧会で作品を前に、Glassで作品ガイドを見ながら、Keith Haringの世界に没頭していた。Glassはまだまだ未完の製品であるが、Tellerが述べている目標に一歩近づいた気がした。

消費者の観点からすると、数多くの問題を抱えているが、Glassのような生活を豊かにするウエアラブルは、途中で挫折することなく、開発を継続してほしい。必ずしもGoogleである必要はなく、技術とセンスがある企業が手掛けるのが自然な形だ。その意味で日本企業は、いまが出番かもしれない。米国の消費者は周囲の眼を気にしないで、堂々と使えるスマートグラスの登場を待ち望んでいる。

ウエアラブルでお洒落になる!スマートドレスが似合う洋服を教えてくれる

Wednesday, December 3rd, 2014

米国クリスマス商戦で、オンラインストアーの売り上げが大幅に伸びている。しかし、衣料品の購入では自分に合うサイズの商品を見つけるのが難しい。これは自分のサイズを詳細に掴んでいないのと、業界で統一したサイズ基準が無いためである。この永遠の課題に終止符を打つ技術が登場した。スマートドレスを着ると、サイズを測定でき、自分にフィットする洋服が分かるのだ。

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スマートドレスでサイズを測定

これは「LikeAGlove」という新興企業が開発しているスマートドレス「Smart Garment」で、シリコンバレーで開催された「DEMO Fall」で公開された。このドレスを着ると体のサイズを詳細に測定でき、自分にフィットする洋服が分かる。上の写真のモデルさんが着ている赤いドレスがSmart Garmentで、伸縮する素材でできている。この素材には伝導性ファイバーが織り込まれ、身体サイズをドレスが計測する。収集したデータは衣服のコントローラーからタブレットに送信される (モデルさんの持っているタブレット)。

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測定結果をタブレットで閲覧

上の写真が測定結果サンプルで、身体の五か所のサイズが表示される。具体的には、わき下間サイズ、カップサイズ、バンドサイズ、ウエスト、ヒップが計測される。実際にモデルさんにデモを見せてもらったが、お腹をへこませると、その結果がリアルタイムでタブレット上に表示された。実際には、Smart Garmentを数分間着装し、サイズを測定する。

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消費者にフィットする商品を表示

スマートドレスで自分のサイズが正確に分かるが、これでフィットする洋服を見つけられる訳ではない。もう一つの問題は、衣服のサイズに統一基準がないことである。つまり、同じサイズでも、ブランドにより大きさが異なるのだ。LikeAGloveは主要ブランドの衣服サイズのデーターベースを構築している。サイズが分かると、データベースを検索し、消費者にフィットする商品を表示する (上の写真)。更に、LikeAGloveはサイズだけでなく、消費者の体型を考慮し、一番似合う衣服を推奨する。

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何故サイズを統一できないのか

ジーンズやシャツを買うとブランドによりサイズが異なり不便を感じる。米国アパレル業界では、洋服のサイズ表記について統一したルールが無いためである。同じサイズ表記でもブランドが異なると、実際の大きさが異なる。上のグラフはそれを示しており、「サイズ10」でもブランドにより、大きさが異なる。黒色の線は業界の中央値で、ピンク色の線は米国人気ブランド「K-mart」を示す。K-martブランドの衣服は、標準値より大きめに設定してあり、「サイズ10」でも、実際にはその上の「サイズ12」に近い。これは「Vanity Sizing」(虚栄心サイジング)というマーケティング戦略である。K-martに行くと、一つ小さい「サイズ10」の服も着れるということで、売り上げが伸びる仕組みだ。

ビジネスモデルは検討中

DEMO Fall会場で、LikeAGlove CEOのSimon Cooperと、CMOのJessica Insalacoから、製品概要とビジネスモデルの説明を受けた。LikeAGloveはSmart Garmentとして、キャミソール (上述のドレス) の他に、ソックス、シャツ、レギングスを開発している。女性用だけでなく、男性向けには、シャツとレギングスを提供する。Smart Garmentの販売チャネルについては未定としているが、複数のオプションを検討している。具体的には、Amazonなど、オンラインストアー経由で販売することを目指している。また、消費者に直販するモデルも検討されている。価格は公表されていないが、量産すると安くなるとしている。

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eBayは超高精度な仮想試着室を開発中

オンラインストアーの技術進歩が著しい中、eBayは高精度なコンピューターグラフィックスを駆使し、仮想の試着室を開発している。eBayは2014年2月、3Dモデリング技術を開発している企業「PhiSix」を買収し技術開発を開始した。PhiSixは衣服の写真やパターンファイルなどから3Dモデルを生成し、衣服の挙動をシミュレーションする。消費者は高精度のコンピューターグラフィックスを見て、どの洋服を買うかを決める。消費者が体のサイズを入力すると、システムは体にフィットする商品を推奨する。

仮想試着室では異なる環境の中で衣服を着て動くことができる。上の写真はファッションショーのステージをイメージしたもので、モデルの動きは極めて精巧で、人間の動きと見分けがつかない。衣服もその特性に合った挙動をする。このケースではトップスは薄手のシャツで、歩くと風を切って、シャツが軽くたなびく。周囲の環境はステージの他に、街中や、ゴルフ場などが開発されている。購入する服を着て街中を歩くと、どのような感じなのかを把握できる。ゴルフ場では、購入するウエアを着てスイングすると、周りからどう見えるのかを理解できる。eBayはこの仮想試着室をオンラインストアーやモバイルアプリなどで展開する。仮想試着室でリアルなイメージが掴めれば、オンラインストアーの売り上げが伸びるという目論見だ。

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シリコンバレーでサイズ測定専用機が登場

消費者にフィットする洋服を見つけるために、ベンチャー企業はしのぎを削ってきた。「Bodymetrics」と言うベンチャー企業は、消費者の体をスキャンしてサイズを測定する技術を開発した。この装置はシリコンバレーの高級デパート「Bloomingdales’」に設置された (上の写真)。消費者はこの装置の中で、サイズを測定する。Bodymetricsは16台のMicrosoft Kinectを実装しており、3Dカメラで被写体の体を撮影し、立体オブジェクトを生成する。

10秒ほどで測定ができ、その結果は小売店のiPadに表示される。200ヵ所のサイズを計測し、アプリは最適な商品を推奨する。消費者は事前に専用アプリをインスト―ルしておくと、測定結果を自分のiPhoneで見ることができる。同様に、アプリは最適なサイズの商品を推奨する。従来はレーザー光での測定であったが、Kinectを使うと低価格で簡単に測定ができる。街で話題となった技術であるが、現在は使われていない。

ウエアラブルでサイズを測定するという発想

多くのベンチャー企業から、衣服にセンサーを組み込み、心拍数や心電図を測定し、健康管理に役立てる技術が登場している。これに対し、LikeAGloveはファッションの用途で、スマートドレスで身体サイズを計測する。しかし、一度サイズが分かればドレスは不要となる。家族や知人で利用する方法もあるが、LikeAGloveはドレスの再利用についてはコメントしていない。もし利用者が定期的にサイズを測定すれば、体型の変化を把握でき、健康管理やフィットネスに役に立つ。もう少し先になるが、3Dプリンターで衣服を印刷できれば、身体の詳細な三次元データが必要不可欠となる。究極の洋服を作れるが、Smart Garmentのようなセンサーが再び必要となる。Smart Garmentのデモを見て夢の広がる技術だと感じた。

Apple Siriに負けるな!ロボットやウエアラブルに頭脳を持たせる技術が登場

Friday, November 14th, 2014

音声アシスタント機能「Siri」はは、ヒトの言葉を理解し、指示に従ってタスクを完遂する。Siriがスマホの頭脳となり、自動車への展開も始まっている。ベンチャー企業も”Siri”を開発している。この技術をロボットやウエアラブルに応用すると、音声で操作できる。人工知能は大企業だけの技術ではなく、ベンチャー企業も開発を急いでいる。

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キーボードを持たないデバイスの操作

この技術を開発しているのは「Wit.AI」というベンチャー企業だ。Wit.AIは、ヒトの言葉を解釈し、意図を把握する技術を開発している。いわゆる自然言語解析で、Apple Siriに代表されるように、スマホやタブレットを話し言葉で操作できる。Wit.AIはキーボードを持たないデバイスに特化して技術開発を進めている。これらデバイスは音声が唯一の入力モードで、ウエアラブル、自動車、スマート家電、ロボット (上の写真、音声指示に従って立ち上がっている様子)、ドローンなどへの展開を目指している。

音声操作の仕組み

Wit.AIは人工知能クラウドで、「音声認識」 (Speech Recognition) と「自然言語解析」 (Natural Language Processing) から構成され、利用者の音声指示から意図を解読する。音声認識とは、音声をテキストに変換する技術で、Wit.AIはオープンソース・ソフトウェア「CMU Sphinx」を利用している。これはカーネギーメロン大学が開発したシステムで、解析の前処理として利用している。自然言語解析とは、非定型な話し言葉を解析し、そこに含まれる命令を把握し、それをマシンが解釈できる形に置き換えるプロセスを指す。

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発言内容を三種類に区分

具体的には上の写真のようなステップとなる。この事例では、利用者がスマートグラスに対し、「撮影した写真の最新三枚をGoogle+に掲載して」と音声で指示したところ。自然言語解析は、発言内容を三種類に区分する。「Intent」は利用者の意図で、ここでは「掲載する」ことを指す。「Expression」は表現方法で、音声での指示そのものを指す。「Entities」は表現方法の中の変数で、ここでは「撮影順序 (最新)」、「枚数 (三枚)」、「対象物 (写真)」、「ソーシャルメディア (Google+)」を指す。Wit.AIで解析したこれらデータをアプリに入力し、アプリは指示された内容を実行するという構造となる。

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Wit.AIクラウドを利用する

ウエアラブルやロボット開発者は、Wit.AIクラウドを使って命令を定義する。上の写真がその事例で、「明日朝6時に起こして」という命令を定義しているところ。先頭のボックスに「wake me up tomorrow at 6」と「Expression」を入力し、「Intent」を「alarm (目覚ましを鳴らす)」と設定する。更に、「Entity」を「wit/datetime (日時)」と設定する。これで利用者が「明日朝6時に起こして」と口頭で指示すると、インテリジェント家電が6時に目覚ましを鳴らす仕組みとなる。更に、異なる言い回しの命令多数を追加していくことで、目覚まし時計はヒトの言葉を理解できるように成長していく。

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スマートウォッチで利用されている

Wit.AIは既に3000社で利用されている。SamsungやPebble (上の写真) はスマートウォッチでWit.AIを利用している。スマートウォッチはキーボードを搭載しておらず、音声でデバイスを操作する。このため、Wit.AIのような機能が必須となる。因みに、Wit.AIはPebbleのオフィスに同居しており、両社は密接に技術開発を進めている。

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ロボットを音声で操作

Wit.AIはAldebaran Roboticsの小型ロボット「Nao」で利用されている。Aldebaran Roboticsはフランスのロボット開発企業で、ソフトバンクに「Pepper」を供給していることで有名となった。ロボットを音声で操作する時もWit.AIが利用されている。上の写真はそのデモで、開発者 (Roland Meertens) がNaoに「Please shake my hand」と語りかけ、握手をしている様子である。Naoは命令を受けると、それをWit.AIに送信し、クラウド側で解析を行う。その結果がNaoに返され、利用者の意図に従ったアクションを取る仕組みとなる。この他にNaoは「1メートル前進」や「ダンスを踊りなさい」など、多くの命令を理解し、アクションを取ることができる。

スマホアプリを音声で操作

Wit.AIはスマホアプリでも利用されている。これは「M.A.R.A. Running Assistant」というランニングアシスタントで、音声でアプリを操作できる。ランニング中にスマホを取り出さないで、音声で操作できる。ベンチャー企業はSiri同等機能を使ったアプリを開発できるようになった。

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上の写真はアプリを使って40分のウォーキングを行っているところ。アプリを起動するとマップが表示され、画面をタップして話しかける。「We are going to do a 40 minute walk」と指示し (左側) 測定を開始する。ウォーキングの途中で「How am I doing?」と質問すると、アプリは走行距離、残り時間、ペースを音声で回答する(右側)。「どこまで来た?」というように、異なる聞き方をしてもアプリは正しく回答する。ウォーキングの途中で天気、気温、時刻、場所などを尋ねると、アプリはそれに音声で答える。ウォーキング中に音楽の再生もできる。まるでApple Siriを使っている感覚だ。入力した音声はWit.AIクラウドで解析され、スマホに回答が戻ってくる。クラウドでの処理に多少時間がかかるが、問題なく利用できる。

ベンチャー企業が人工知能に向う

自然言語解析ではApple SiriやGoogle Nowが市場をリードしているが、Wit.AIのようなベンチャー企業から製品が登場している。Wit.AIは両社と比較すると製品完成度はもう一歩であるが、多くの製品で実績を積み改良を重ねている。人工知能はAppleやGoogleだけの技術ではなく、Wit.AIにより、新興企業が幅広く利用できるようになった。ロボットやウエアラブルで大きなブレークスルーが起こる環境が整った。

Apple Watchの健康管理機能は意外に普通?既に次期モデルが話題に!

Friday, September 12th, 2014

Appleはウエアラブル端末「Apple Watch」を発表。お洒落なデザインで話題となっているが、健康管理に限ると、画期的な機能は登場しなかった。Apple Watchは高機能ウエアラブルと言われてきたが、基本機能の搭載に留まった。しかし、これは出発点で、次期モデルに搭載される高機能センサーが、既に話題となっている。

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二つの健康管理アプリ

Apple Watchは健康管理機能を二つのアプリで提供。それらは「Activity App」 (上の写真左側、出典はいずれもApple) と「Workout App」 (同右側)。Activity Appは活動状態をモニターする。アプリは三つの機能で構成され、活動状況がグラフで表示される。「Move」は消費カロリー量を、「Exercise」は運動量を、「Stand」は立っている時間を示す。一日の目標値を設定し、それに到達すると円グラフとなる。

Standとは聞きなれないコンセプトであるが、一時間のうちに一回以上立ち上がった回数を記録。仕事中に椅子に座ったままでなく、立ち上がることを奨励している。最近では、長時間座っていることは、喫煙と同じくらい健康に悪いと言われている。Standは、一日12時間のうち、各時間で立ち上がることを目標値としている。

Work Appはトレーニングのためのアプリ。ランニング、ウォーキング、サイクリングなどで使う。アプリは過去の履歴を参照し、目標を自動で設定する。目標値は走行距離や走行時間など。勿論、利用者がマニュアルで変更できる。トレーニングをしている最中は、途中経過情報を表示し、目標を達成すると本物そっくりのバッジを貰える。

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センサー情報を解析

Apple WatchはiPhoneとペアリングして利用する。Apple Watchは加速度計と光学センサー (上の写真、四つの円形の部分) を搭載しており、それぞれ、体の動きと心拍数を計測する。iPhone側に搭載されているGPSとWiFiで位置を把握する。またiPhone 6に搭載されるM8コプロセッサーは気圧差の測定ができ、垂直方向の移動(階段の上り下りなど) を測定できる。Activity AppやWorkout Appは、これらセンサーで収集した情報を利用する。アプリで解析した情報は健康管理プラットフォーム「HealthKit」で管理され、医療機関と共有することができる。

光学センサーに特徴あり

Apple Watchは、上述の通り、背面に光学センサーを四基搭載している。センサーは可視光と赤外線のLED光源を持ち、フォトダイオードで反射波を読み取る。腕表面の血管に光をあて、その反射波から心拍数を測定する。心拍数測定では、ECGのように電気信号を読み取るのが一般的で、病院などで使われている。ウエラブルでは、心拍数測定に、可視光か赤外線のどちらかを使う。これに対しApple Watchは、両者を併用する点に特徴がある。

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リアルタイムで心拍数が測れるか

Apple Watchは腕の血管の血流を読み取り、心拍数を算定する。高機能スマートウォッチBasisも同じ方法で心拍数を測定する。但し、Basisは赤外線だけでセンシングする。Basisは心拍数を測定する際は、静止状態である必要がある。運動しながら測定することはできない。つまり、トレーニング中にリアルタイムで心拍数を把握できない。Appleは前述の通り、二つの光源で心拍数を測定する。Appleは詳細機能については公開しておらず、運動しながらApple Watchで心拍数を測定できるのか、関心が集まっている。因みに、BasisはIntelに買収され、高機能ウエアラブルでは、Apple対Intelの構図が生まれた。

Apple Watchは心拍数の測定結果をコミュニケーションで利用している。これはDigital Touchという機能の一つで、利用者の心拍を相手に送ることができる (上の写真)。受信者は送信者の心臓の鼓動を腕で感じることができる。離れているカップルが使うのか、今の気持ちを振動で伝えることができる。

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以外に標準的なセンサー

これらの機能は概ね他社から提供されており、革新的センサーと言う訳ではない。なぜ、Apple Watchは標準機能に留まったのか、議論が起こっている。その一例がスリープトラッカー。これは睡眠状態をモニターするセンサーで、FitBitなど多くのウエアラブルに搭載されている。Apple Watchにスリープトラッカーが搭載されなかった理由は、バッテリー容量と言われている。バッテリーは一日しかもたず、毎晩充電する必要がある。このためApple Watchをつけたまま寝ることはできない。一方、Appleは睡眠研究の第一人者Roy Raymannを採用し、開発を重ねている。この問題が解決すると、スリープトラッカー機能が搭載されると言われている。

センサーよりファッション性を優先

Apple Watchは、フィットネス情報だけでなく健康情報を収集し、HealthKitに格納する。Appleはこれらの情報を病院と共有し、治療に役立てる構想を打ち出している。そのためには、Apple Watchで身体情報を幅広く収集する必要がある。前述の通り、このための高機能センサーは、搭載が見送られた。今回は光学センサーで心拍数計測だけに留まった。これはファッション性を優先し (上の写真)、高機能センサーを無理やり実装することは避けたためと思われる。まずは、ファッションや使い易さを優先したデザインとなっている。また一説では、AppleはFDA (アメリカ食品医薬品局) の認可が必要な医療機器としてのセンサーを、あえて搭載しなかったとも言われている。

次期モデルで血圧、心電図、血糖値などの測定ができるのか、すでに議論となっている。今回の発表で、Apple Watchのスタートラインが明らかになり、これからの技術進化に期待が寄せられている。

「Apple Pay」で決済サービス事業に参入!Apple Watchから利用できる

Wednesday, September 10th, 2014

Appleは9月9日、スマートフォン「iPhone 6」とウエアラブル端末「Apple Watch」を発表。更に、Appleは決済サービス「Apple Pay」を発表。iPhone 6やApple WatchのNFC (近距離無線通信) 機構でカード決済ができる。Apple Watchは洗練されたデザインで、アップルらしい製品仕立てとなった。

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お洒落な製品

Apple Watchは三つのモデルから成り、それぞれ、「Watch (標準)」、「Watch Sport (スポーツ)」、「Watch Edition (ハイセンス)」。使う目的によりデザインが異なる。上の写真 (出典はいずれもApple) はWatch Edition。フレームは18Kイエローゴールドでバンドは赤色レザー。

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このモデルを身に付けると上の写真のようなイメージとなる。お洒落な製品で消費者の心に訴求する。ディスプレイサイズは38mmと42mmで大小二つのモデルを投入。出荷は2015年初頭で、価格は349ドルから。

Apple Payとは

iPhone 6とApple Watchに次ぐ発表ハイライトはApple Pay。Apple PayはNFCによる決済サービスで、おサイフケータイのアップル版と言える。但し、通信プロトコールは異なる。Apple PayはiPhone 6とApple Watchで利用できる。

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iPhone 6でApple Payを使う際は、指をTouch IDにあて、デバイスをリーダーにかざす (上の写真)。Touch IDで本人認証を行う。支払いが完了すると、デバイスが震えて知らせる。

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Apple Watchで支払いする際は、下側のボタンをダブルクリックし、リーダーにかざす (上の写真)。Appleは認証方式については言及しなかった。(Watch背面のセンサーでバイオメトリックな情報を読み、これを認証で利用するのか。) 読み込みが終わると、Watchが震えて知らせる。

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アプリ内でも利用できる

Apple Payはアプリ内の支払いに利用できる。アプリで買い物して支払いする際は、「Apple Pay」ボタンにタッチし、指をTouch IDにあてる。上の写真左側は、レストランPanera Breadでランチをオーダーしている様子。中央は大手デパートTargetでの買い物。右はライドシェアUberで車を呼んでいるところ。いずれも画面最下部のApple Payバーにタッチして支払いする。

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カードの登録

Apple Payのセットアップはシンプル。クレジットカードやデビットカードをPassbookに格納する (上の写真左側)。チケットなどを入れておくPassbookが財布となる。iTunesにカードを登録している場合は、カードのSecurity Codeを入力し、Passbookに移す。新規にカードを登録する際は、カードの表面をカメラで撮影して、カード情報を読み込む (同右側)。

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Apple Payのセキュリティ

カードをPassbookに格納する際は、カード番号ではなく、デバイスに固有の番号「Device Account Number」が生成される。これを暗号化して、デバイスのSecure Elementに格納する。Device Account Numberはデバイス内に留まり、Appleサーバーには格納されない。

支払処理では、トランザクション毎に固有な番号が生成される。Device Account Numberとこの番号が決済システムに送信される。所謂、ワンタイム・トークンによる決済方式で、クレジットカード番号やデビットカード番号が送信されることは無い。

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iPhone 6やApple Watchにカード番号が格納されないため、デバイスを紛失してもカード情報は洩れない。デバイスを紛失した際は、「Find My iPhone」機能を使って (上の写真)、デバイスを「Lost Mode」にする。これでApple Payなどの機能が使えなくなる。

既に多くのパートナー

Apple Payは、Visa、MasterCard、American Expressに対応している。Apple Payを使える小売店舗は、Macy’s、Walgreens、Whole Foods、Apple Storeなど22万店舗。Apple Payを利用できるアプリは、Groupon、OpenTable、Starbucks、Target、Uberなど10アプリ。カード会社はApple Payでカードが使われる毎に、Appleに手数料を支払うと言われている。iPhone 6やApple Watchでカードを使うことで、消費者の購入金額が増えるとみている。

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アメリカ市場に受け入れられるか

日本では馴染みのおサイフケータイ機能であるが、アメリカではほとんど使われていない。Googleは「Google Wallet」でおサイフケータイ機能を提供しているが、あまり人気が無い。このためGoogleは、Google Walletをオンライン決済を中心に展開している。

このところTargetなどが攻撃に合い、クレジットカード情報が盗まれる被害が続出している。Apple Payは決済処理でカード情報を使わないため、このような問題を回避できる。また、Apple Watchで支払いができ、ポケットやバッグからスマートフォンを取り出す必要はない。AppleがNFC決済ビジネスに参入することで、市場が活性化するか、期待が寄せられている。