Archive for the ‘ウェアラブル’ Category

Apple Watchを見据えたデジタルヘルス、臨床試験基盤「ResearchKit」で医学が進歩!

Friday, April 3rd, 2015

センサーやウエアラブルや人工知能の進化で、デジタルヘルスが転換点に差し掛かっている。Appleは昨年9月、「Health」アプリを投入し、健康管理市場へ参入した。先月は、臨床試験基盤「ResearchKit」を発表し、医療研究を下支えするフレームワークを投入。来月にはApple Watchが登場し、健康管理で重要な役割を担う。Appleのデジタルヘルス戦略のストーリーが繋がってきた。

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臨床試験を支援するサービス

医療現場でResearchKitが話題になっている。ResearchKitは医療機関向けの技術で、これを使えば簡単に臨床試験アプリを開発できる。一方、臨床試験に参加するモニターは、iPhoneでこのアプリを稼働し、身体情報を記録する。具体的には、臨床試験アプリは、健康管理アプリ「Health」が収集したデータを読み込み、モニターのアクティビティや健康状態を収集する。医療機関はこれらデータを解析し、医療情報に関する知見を得る構造となっている。

既に、ResearchKitで開発された臨床試験アプリが登場している。Stanford Medicine (スタンフォード大学医学部) は、心臓の健康状態を解析するアプリ「MyHeart Counts」を開発した (上の写真、アプリ専用サイト)。このアプリはモニターの日常生活をモニターすることで、生活習慣と心臓疾患の関係を医学的に解明することを目標にしている。更に、心臓疾患を予防するためには、どのような生活を送るべきかを理解する。

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モニターになってみた

筆者もこのアプリを使った臨床試験に参加した (上の写真左側、アプリ初期画面)。こう書くと仰々しいが、誰でも簡単に臨床試験に参加できるのがこのアプリの最大の特徴だ。アプリで研究目的や注意事項を読み (上の写真右側)、同意書に名前をタイプするだけで手続きが完了。スタンフォード大学病院に行って説明を受ける必要は無く、全てアプリで完結する。使用できるスマホは、iPhone 5s、iPhone 6、及びiPhone 6 Plusだが、既にApple Watch向け機能も実装されている。モニターは、身体情報を大学病院に”寄付”するが、その見返りとして、心臓の健康状態を把握できる。

モニターはアプリが指定するタスクを実行し、アンケート調査に回答する方式で進む。アプリはiPhoneセンサーでモニターの動きを自動で把握し、収集したデータから、行動パターンや心臓の健康状態を理解する。収集したデータは暗号化して送信され、名前はランダムに発生したコードで置き換えられる。身体情報を扱う研究なので、セキュリティー機能に配慮されている。ただ、収集したデータはスタンフォード大学以外でも使われる可能性ありとの記述が気になったが、ここは目をつぶってサインした。

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アプリが読み込むデータソース

試験開始前に、アプリが読み込む身体情報のデータソースを指定する。上述の通り、モニターの行動は、iPhoneに搭載されている各種センサーで、自動的に収集される。センサーが収集したデータはHealthに格納され、これをアプリが利用する構造となっている。上の写真左側がその設定画面で、Healthに格納しているデータの中で、アプリがアクセスできる項目を指定する。身長や体重などの基本情報へのアクセスを許諾した。また、血糖値や血圧など、健康診断情報へのアクセスも許諾した。最後に、アンケート調査に回答する。質問は、健康状態から家族の病歴まで、広範囲に及ぶ。上の写真右側がアンケート調査の画面で、ここでは仕事と運動量についての質問に回答している。

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データ計測は自動で行われる

試験中はiPhoneを携帯して生活するだけで、何も特別な操作は必要ない。iPhoneはズボンのポケットに入れるよう指定され、加速度計がアクティビティーや歩数を自動で計測する。一日が終わると、前日の睡眠時間など、簡単な質問に回答する。これで計測が終了し、その結果が円グラフで表示される (上の写真左側、下段)。円グラフの色が、アクティビティー種目 (睡眠、座ってる状態、運動している状態など) を示す。更に、一日の歩数が示される。アクティビティーや歩数は、上述の通り、健康管理アプリHealthで収集される。上の写真右側がHealthアプリの「Step」画面で、一日の歩行数を示している。アプリはここから歩数などのデータを読み込む。

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心臓年齢や病気に罹る確率

計測は一週間続き、最後に「ストレステスト」が行われる (上の写真左側)。これは名前の通り、心臓に負荷をかけ、心拍数を測定し健康状態を算定するものである。モニターは三分間、できるだけ早く歩き、アプリはその歩行距離を記録する。Apple Watchや他のウエアラブルで、歩行中と終了三分後の心拍数を計測する。アプリは年齢、性別、身長・体重に応じた歩行距離や心拍数をベースに、モニターのフィットネスを算定する。まだApple Watchは出荷されていないので、今回は歩行距離だけが使われた。

アンケート調査「Heart Age」に回答すると、モニターの心臓年齢を算出する (上の写真右側、サンプル)。心臓の健康年齢と病気 (心臓疾患と脳梗塞) にかかるリスクの割合が表示される。このケースでは、62歳のモニターの心臓年齢は60歳と若く判定されている。病気発症の確率は6%と、目標値 (7%) よりいい結果となっている。(筆者のケースでは、病気に罹るリスクが標準より高いと判定された。健康状態をデジタルに示されるとインパクトが大きい。これを契機に、食生活の改善や運動の強化を考えているところ。)

運動を促すコーチング

試験は7日間続き、これが1セットとなり、三か月ごとに繰り返される。一週間の試験が終わると、アプリはモニターに対し、毎日運動するよう「コーチング」を行う。三か月後に、再度、同じ試験を一週間にわたり行う。コーチングはゲームやメッセージなどで、アプリはどの方式が一番効果があるかを検証する。但し、筆者のケースでは、一週間のテスト期間が終了したが、コーチング情報は表示されていない。

大反響を呼んだ臨床試験アプリ

スタンフォード大学は、アプリを公開して24時間で、1万人が登録したと公表した。これだけの規模のモニターを募るには、通常、一年の歳月と50の医療機関が必要とされる。iPhoneアプリとHealthで臨床試験ができるようになり、多くのモニターを短期間で集めることができた。収集したデータはそのままクラウドに記録される。従来の紙ベースの臨床試験と比べ、はるかに効率的に知見を得ることができると評価している。

臨床試験アプリへのコメント

一方、ResearchKitで開発したアプリを使った臨床試験に対し、様々な意見が寄せられている。モニターから得られるデータの質が議論となっている。iPhone利用者は高学歴・高収入という統計情報があり、臨床試験モニターはデモグラフィックスを正しく反映していないのでは、という疑問の声も聞かれる。その一方で、FDA (米国食品医薬品局、新薬などの認可をする機関) はスマホを使った臨床試験について肯定的な評価をしている。アプリを使った臨床試験で、医療技術が進むことを期待している。因みに、このアプリは医療行為は行わないため、FDAの認可は不要である。

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パーキンソン病研究アプリなど

MyHeart Counts以外にも、ResearchKitで開発されたアプリが登場している。その一つがパーキンソン病研究のためのアプリ「mPower」で、University of RochesterとSage Bionetworksにより開発された。アプリで敏捷性、バランス、記憶力、足並みを測定することで、日常の行動と病気の関係を理解する。モニターはアプリを起動し、人細指と中指で画面を早くタップしたり (上の写真)、マイクに向かって長く「アー」と発声する。俊敏性や発声とパーキンソン病の関係を解析する。研究に寄与するだけでなく、モニターは自身の病気の予兆を早く知ることができる。また、糖尿病研究のためのアプリ「GlucoSuccess」や乳癌研究のアプリ「Share the Journey」などもリリースされている。

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IT企業はデジタルヘルスに向う

Googleは2014年7月、人体の研究を行うプロジェクト「Baseline Study」を開始した。Baseline Studyは175人の健康なモニターから遺伝子と分子情報を収集し、健康な人体のベースライン情報を把握する。心臓疾患や癌の兆候を早期に発見することを目的とする。身体情報はウエアラブルで収取される。Googleが開発したコンタクトレンズを使うと、血糖値をリアルタイムで測定できる。測定したデータは、個人の遺伝子情報と共に、人工知能を使って解析される。健康な人体を定義し、医師は病気予防に重点を置いた措置が可能となる。他に、Microsoft、IBM、Samsungなども、デジタルヘルス分野で技術開発を加速している。IT企業がデジタルヘルス事業を展開する背後には、テクノロジーの進化がある。プロセッサーやセンサーや人工知能の技術開発が進み、低価格で生体情報を収集・解析できるようになった。

AppleはResearchKitで、Healthやウエアラブルを束ねるアプローチを取っている。ResaerchKitを使うと、病院や製薬会社は、簡単に臨床試験を展開できる。現在は、iPhoneで身体情報を収集するが、やはり最適なデバイスはウエアラブルで、Apple Watchを見据えた設計となっている (上の写真)。Apple Watchの機能は心拍数の計測に留まるが、将来は、幅広い生体情報を収集すると期待されている。消費者にとってはResearchKitは無縁の存在であるが、医療現場では医学研究にインパクトを与える画期的なツールとして評価が高まっている。今年はデジタルヘルス市場でブレークスルーが起ころうとしている。

お洒落だけど革新的でない?Apple Watchの狙いを読み解く

Wednesday, March 11th, 2015

Appleは、3月9日、サンフランシスコで、Spring Forwardと題した発表イベントで、Apple Watch詳細情報を発表した。改めて、Apple Watchは洒落なスマートウォッチで、ハイエンドモデル「Watch Edition」は息をのむほど美しい (下の写真)。一方、Apple Watchで生活がどう便利になるか、分かりづらいという意見もある。Apple Watchの機能は革新的でないとの評価もあるが、発表されたアプリを子細に検証すると、別の姿が見えてくる。

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パートナー企業が開発したアプリ

発表イベントで、CEOのTim Cookが、Apple Watchについて詳細情報を公表した。機能については、驚くような情報は無かったが、パートナー企業が開発したアプリについては、新鮮な情報が揃っていた。技術担当副社長Kevin Lynchが、Apple Watchを使って、これらアプリをデモし、新しい使い方を示した。アプリを子細に見ていくと、Apple Watchの狙いが浮き上がる。

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おサイフケータイ付き腕時計

Apple Watchでおサイフケータイ機能「Apple Pay」が使えることが大きなアドバンテージとなりそうだ。店舗で買い物をし、サイドボタンをダブルクリックし、リーダーにかざすだけで支払がいできる (上の写真、左側)。ポケットからスマホを取り出す必要は無く、腕時計で支払いができるのは、圧倒的に便利。セキュリティーに関しては、Apple Watchを着装する際に、四桁のPINを入力して本人確認をする。Apple Watchを外すとログオフした状態となり、他人が支払いをすることはできない。リーダーとはNFC (Near Field Communication) 方式で交信する。筆者は、スターバックスでリストバンド「Microsoft Band」で支払いをしているが、この方式はヒットの予兆を感じる。

ホテルのルームキーとなる

Apple Watchをホテルのルームキーとして使える。これはホテルチェーン「Starwood Hotels & Resorts」が開発したアプリで、Apple Watchがルームキーとなる (上の写真、右側)。ホテルに到着するとアプリでチェックインし、そのまま部屋に向う。アプリには「Room Number 237」などと、部屋番号が表示される。部屋のドアにApple Watchをかざすと鍵がアンロックされる。このケースもドアの鍵とはNFC方式で交信する。ホテルカウンターで長い行列に並ぶ必要は無く、スマートにチェックインできる。ホテル側としても、業務の効率化に役立つ。

駐車場で料金を支払う

Apple Watchで駐車料金を支払うことができる。パーキング・メーターにApple Watchかざすと、駐車場のスロット番号が自動で入力され、登録しているクレジットカードで支払いができる。これは「PayByPhone Parking」というアプリで、パーキング・メーターとはNFC方式で通信する。アプリは駐車時間終了10分前にメッセージを表示する。時間までに戻れそうにない時は、アプリで追加料金を払い時間を延長できる。

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自動販売機で料金を支払う

NFC方式での支払いは駐車場だけでなく、自動販売機にも広がっている。Coca-Colaは、今年末までに、北米でApple Payに対応した自動販売機を10万台導入するとしている。iPhoneをかざすだけで、清涼飲料水を購入できる (上の写真)。今回の発表イベントでは、Apple Watchで同じ処理ができることを明らかにした。日本ではSuicaを使って自動販売機で支払いをするのは普通の生活だが、米国でもApple Payの影響力でこの流れが始まった。Apple Watchの登場で、ポケットからスマホを取り出す代わりに、腕時計で買い物する方式が注目されている。

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スマートホームを操作する

スマートホームとウエアラブルの連携がトレンドとなっている。Apple Watchとスマートホームが連動するアプリが登場した。上の写真左側は、スマート・サーモスタット「Honeywell Lyric」と連動するアプリ。時計のディスプレイで「外出中」や「就寝」ボタンを押すと、空調が省エネモードとなる。利用者が自宅から遠いところにいると、アプリはメッセージで確認したのち、「旅行」モードで運転する。サーモスタットはApple Watchで利用者の位置を把握し、帰宅すると室内が最適な温度になっている。

上の写真右側は、スマートホーム機器「Lutron」と連動するアプリで、家庭内の電燈をApple Watchで操作する。ソファに座ったままで、「映画モード」を選択すると、室内の照明が落ちる。寝室で「就寝モード」を選択して家全体を消灯する。家を離れている時も操作でき、防犯のため、夜間に電燈を点けることもできる。電燈を点けたまま外出すると、アプリが消すかどうかを尋ねる。

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大型店舗で買い物をする

Apple Watchが買い物の手助けをする。これは大型店舗「Target」が開発したアプリで、買いたい商品の売り場に近づくと、アプリがそれを教えてくれる。事前にiPhoneで買い物リストを作っておき、店舗ではその売り場に近づくと、Apple Watchにメッセージが表示される (上の写真左側、スポーツ用品売り場で自転車を表示)。アプリは消費者の場所を把握し、売り場に関連する買い物リストを表示する。これ以上の説明は無いが、店舗にBluetoothビーコン「 iBeacon」を備えておけば、ピンポイントで消費者の位置を把握できる。スマホにメッセージが表示されるのとは異なり、腕時計を見ながらの買い物は便利に違いない。

定番のランニングアプリ

ウエアラブルの必須アプリはランニング管理。上の写真右側は「Nike+ Running」で、アプリがランニングの走行距離、時間、ペースなどを表示する。iPhoneとペアで利用し、走りながらApple Watchで途中経過を確認できる。ランニング中に友人から応援メッセージが届くと、それをApple Watchで閲覧できる。ヘッドセットとBluetoothで繋ぐと、走りながら音楽を聞ける。ランニングが終わるとアクティビティーのサマリーを表示する。取り立てて新しい機能は無いが、ウエアラブルで一番人気のアプリ。

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Bring Your Own Wearable (BYOW)

早くもApple Watchを仕事に活用するアイディアが登場した。上の写真左側は、米国の先進医療機関「Mayo Clinic」が開発した、医師向けのアプリ。アプリは忙しい医師のスケジュールを管理する。医師はApple Watchを見て、患者がロビーで待っているのか、検査を終えたのかなどを把握する。診察する際には、アプリで患者の年齢、性別、体重などを閲覧し、お洒落に情報にアクセスする。BYOD (Bring Your Own Device) の次は、BYOWが話題になっている。

上の写真右側は、コントラクターが仕事をした時間を管理し、請求書を発行するアプリ「Invoice2go」。コントラクターは、Apple Watchをして仕事場に到着すると、アプリはそれを把握。職場はGeofencing機能で定義され、Apple Watchがその中に入ると、仕事をしているとみなされ、働いた時間を記録する。コントラクターはこの情報を元に、請求書を発行する。支払いを受領すると、アプリが知らせてくれる。

登場しなっかたアプリ

発表イベントでは新しいアプリが数多く紹介されたが、期待に反し登場しなかったアプリもある。これはデジタルヘルス関連で、Apple Watchは、血圧、心電図、皮膚の電気伝導率 (ストレスの度合いを測定)、血中酸素濃度を測定する機能を搭載すると噂されていた。しかし、昨年9月の発表でこれら機能は公表されず、Apple Watchはデジタルヘルスから大きく路線を転換したことが明らかになった。今回もこの路線を踏襲し、高度なデジタルヘルス機能は登場しなかった。これら重要な機能が欠落したままのApple Watchは考えにくく、将来製品に順次搭載されることを期待している。

今まで述べてきたアプリに共通しているのは、Apple WatchがNFCやBluetoothなどでネットワークに繋がり、センサーの役割を果たしていること。Internet of Thingsとして機能し、バックグランドで必要なデータを送受信し、利用者に便利な機能を提供している。Apple Watchが、クレジットカードやドアの鍵となり、リアル社会のツールとして使われる。Apple Watchは、情報表示端末ではなく、Internet of Thingsのセンサーとして捉えれば、製品の狙いが分かり易い。将来は、上述の通り、Apple Watchが身体情報をモニターするバイオ・センサーとしての役割が期待されている。

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お洒落にITを楽しむのがニューノーマル

Appleは製品発表に先立ちPRを展開してきた。上の写真は女性雑誌「Vogue」三月号で、中折の部分に12ページにわたり、Apple Watchのコマーシャルが掲載された。ドレスやバッグと並び、Apple Watchがファッションアイテムとして位置づけられている。Apple Watchのテレビコマーシャルも始まった。お洒落なApple Watchで、秒針が時を刻むように、その機能を次から次へと紹介した。プライムタイムで女性を対象に、ファッション性を前面に押し出したコマーシャルだった。お洒落にITを楽しむのがニューノーマルであるとのメッセージを感じた。

Google Glass次期製品のヒント、究極のグラスアプリを体験

Friday, January 23rd, 2015

Google Glassベータ製品 (Explorer Edition) の販売が中止され波紋を呼んでいるが、もう既に、Glass次期製品の憶測が飛び交っている。New York Timesは、販売中止に至った経緯を詳細に検証し、その上で、次期製品はゼロから設計が見直されるとの見解を示している。GoogleはGlass開発を継続しており、最終製品はExplorer Editionとは大きく異なると分析している。

記事とは別に、サンフランシスコの美術館を訪問した際に、Glass次期製品のヒントが見えてきた。展覧会で絵画の前に立つと、操作しなくても、作品ガイドがGlassに表示された。Glassはコンテクストを理解し、必要な情報を目の前に表示する。Googleが目指す理想のGlassに一歩近づいた気がした。

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サンフランシスコの美術館がGlassを採用

この展覧会はサンフランシスコの人気美術館「de Young Museum」 (上の写真) で開催された。企画展「Keith Haring: The Political Line」で、Glassを使った作品ガイドシステムが導入され、早速、このシステムを体験した。会場に入りGlassをかけて作品の前に立つだけで、ディスプレイに作品ガイドが表示された。指でタップするなどの操作は不要で、必要な情報が必要なタイミングで自律的にGlassにプッシュされた。これが情報アクセスの理想形かもしれないと思いながら、会場内を散策した。

因みに、de Young Museumはアメリカ近代絵画を中心に、幅広いジャンルの作品を取り揃えている。企画展のアーティストKeith Haringは、1980年代に活躍した米国の画家で、街中でグラフィティを描き、活動家として意見を主張してきた。タイトル「The Political Line」が示す通り、政治色が際立った作品が展示された。

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GuidiGOというアプリを利用

美術館はGuidiGO社が開発した同名のアプリ「GuidiGO」を導入。GuidiGOはパリなどに拠点を置く企業で、ルーブル美術館などにシステムを提供している。このアプリを事前にGlassにダウンロードしておき、会場入り口でそれを起動する。その後は操作は不要で、前述の通り、作品に近づくと、自動で作品ガイドが起動する。上の写真はその事例で、作品のそばに立つと、作品ガイド (右上のウインドウ) がGlassのディスプレイに表示された。これによりタイトルは「With LA II (Angel Ortiz) Statue of Liberty」で、1982年に製作されたことが分かる。この作品ガイドを見たい時は、Glassをタップするとビデオが始まる。作品番号を入力したり、Glassのカメラで作品をスキャンするなどの操作は不要で、自律的に作品ガイドが表示される。

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作品ガイドを見る

作品ガイドをタップすると、Glassでビデオが再生される。上の写真がその様子で、「無題」という1984年に製作された作品の解説ビデオ (右上のウインドウ) がディスプレイで再生される。絵画の前で、音声だけでなく、グラフィックスを取り込んだガイドを聞きながら、作品の主張を理解できる。これはHaringがコンピューターと人間社会の関係を描いたもの。中央の人物の頭脳がコンピューターで置き換わり、人工知能の脅威を表している。人物が跨っている爆撃機は、人工知能が無制限に拡散することへの危険性を主張している。当時、AppleのSteve Jobs (写真左側の人物) がMcIntoshを発売し、パソコンという概念が社会に広まっていた。Haringはコンピューターを肯定的に受け止め、技術進化に期待を寄せていた。その一方で、コンピューターを悪用することへの警戒感を絵画で表現した。Glassでガイドを見ると、作品の前で一気に理解が深まる。

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必要なタイミングで情報が表示される

上の写真は1982年に製作された「無題」という作品で、棒を足で折るしぐさが描かれている。これは警察がデモ隊を警棒で威圧することに対し、自らの運命を自分で決定することを描いている。Haringはグラフィティを地下鉄駅構内や路上に描いていた (右上のウインドウ)。このため、作品は単純な線と明確な色彩で構成され、短時間に (10分程度で) 描かれる。時に、警察に検挙されることもあった、とガイドは説明している。展覧会を振り返ると、ディスプレイに作品解説が自動で表示されるので、専属説明員に案内されながら作品を鑑賞した気分だった。欲しい情報が目の前に自律的に表示されると、如何に利便かを実感した。

Bluetooth Beaconを利用

作品の前に立つとGlassにガイドが表示されるのは、会場に設置されているBluetooth Beaconで、デバイスの位置を把握しているためである。BeaconがGlassとBluetoothで交信し、位置情報に応じた、作品ガイドを再生する指示を出す。これはスマートフォンでは馴染みの仕組みである。Apple Storeに入店すると、iBeaconがiPhoneとBluetoothで交信し、商品情報などがロックスクリーンに表示される。スマートフォンでは、デバイスをポケットから取り出し、メッセージを読まなくてはならないが、Glassでは目の前のディスプレイに直接表示されるので、利便性が格段に向上する。会場内ではBluetooth Beaconが、目立たないように壁の上部に設置されていた。

このシステムは美術館だけでなく、汎用的に利用できる。Glass利用者が増えるという前提だが、小売店舗で採用すると、目の前に特売情報などを表示でき、販売促進に役立つ。また、街中に実装すると、観光案内などで利用できる。名所旧跡などに近づくと、観光案内が目の前に表示される。日本を訪れる観光客向けのガイドなどで利用できるかもしれない。仕組みはシンプルであるが、Glassで活用するとスマートフォンよりその効果が増大する。

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Glassと人工知能の組み合わせ

Glassを使って一番便利と感じる機能が、必要な時に必要な情報が、目の前に現れる機能である。上述の美術館での作品ガイドの他に、屋外ではGoogle Nowを便利と感じる。Google Nowは、利用者のコンテクストを理解し、最適な情報を配信する機能である。スマートフォンやスマートウォッチで使われている。Glass向けにも実装されており、Glassをかけて通りを歩くと、近隣のお勧めの店舗が表示される。そのカードをタップすると、その詳細情報が表示される。

上の写真がその事例で、お昼時、サンフランシスコ対岸のサウサリトを歩くと、Glassが近くの人気レストランを教えてくれる。この近くに「Poggio Trattoria」というイタリアン・レストランがあると、ディスプレイにカードが示される (写真右上のウインドウ)。こちらの嗜好を把握し、時間と場所に依存した情報をプッシュする。お昼時に近くの人気レストランが表示されると、そちらに足が向く。自分でレストランを探す必要はなく、Glassに気になる情報が表示され、とても便利と感じる。Google NowはApple Siriに匹敵するパーソナル・アシスタント機能で、背後では人工知能の技術が使われている。Googleのコア技術である人工知能とGlassの組み合わせが、キラーアプリへの最短ルートかもしれない。

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Glass利用者は団体で入場

展覧会会場でちょっと気になる話を聞いた (上の写真)。美術館スタッフにGlassについて尋ねたところ、Glassをかけた入館者の殆どが団体客であるとのこと。Glassをかけた個人の入館者は少ないとのことであった。スタッフはこの理由は分からないとしているが、今のサンフランシスコの雰囲気を端的に象徴している事例かもしれない。Glassのプライバシー問題が大きく報道され、屋外でGlassの使用をためらう人が増えている。個人で使うには勇気がいるが、団体の一員としてなら抵抗感が和らぐ。因みに、著者は個人で入館したが、やはり見えないプレッシャーを感じる。Glassで撮影する時はプライバシー問題に配慮し、スマートフォンの時に比べ、慎重にアングルを選ぶようになった。他人の迷惑にならないようGlassを使っている。

Glassの最終目的地に一歩近づく

Googleは次世代Glassを開発中で、完成したと判断したら発売すると表明している。プライバシー問題の解決やデザインの改良が急務となるが、Glassのキラーアプリについての議論も盛り上がっている。Google X研究所長のAstro Tellerは、Glassの開発目標を、技術を意識しないで日常生活ができること、と述べている。更に、存在が意識されなくなった時が、Glass開発の到着地点とも述べている。展覧会で作品を前に、Glassで作品ガイドを見ながら、Keith Haringの世界に没頭していた。Glassはまだまだ未完の製品であるが、Tellerが述べている目標に一歩近づいた気がした。

消費者の観点からすると、数多くの問題を抱えているが、Glassのような生活を豊かにするウエアラブルは、途中で挫折することなく、開発を継続してほしい。必ずしもGoogleである必要はなく、技術とセンスがある企業が手掛けるのが自然な形だ。その意味で日本企業は、いまが出番かもしれない。米国の消費者は周囲の眼を気にしないで、堂々と使えるスマートグラスの登場を待ち望んでいる。

ウエアラブルでお洒落になる!スマートドレスが似合う洋服を教えてくれる

Wednesday, December 3rd, 2014

米国クリスマス商戦で、オンラインストアーの売り上げが大幅に伸びている。しかし、衣料品の購入では自分に合うサイズの商品を見つけるのが難しい。これは自分のサイズを詳細に掴んでいないのと、業界で統一したサイズ基準が無いためである。この永遠の課題に終止符を打つ技術が登場した。スマートドレスを着ると、サイズを測定でき、自分にフィットする洋服が分かるのだ。

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スマートドレスでサイズを測定

これは「LikeAGlove」という新興企業が開発しているスマートドレス「Smart Garment」で、シリコンバレーで開催された「DEMO Fall」で公開された。このドレスを着ると体のサイズを詳細に測定でき、自分にフィットする洋服が分かる。上の写真のモデルさんが着ている赤いドレスがSmart Garmentで、伸縮する素材でできている。この素材には伝導性ファイバーが織り込まれ、身体サイズをドレスが計測する。収集したデータは衣服のコントローラーからタブレットに送信される (モデルさんの持っているタブレット)。

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測定結果をタブレットで閲覧

上の写真が測定結果サンプルで、身体の五か所のサイズが表示される。具体的には、わき下間サイズ、カップサイズ、バンドサイズ、ウエスト、ヒップが計測される。実際にモデルさんにデモを見せてもらったが、お腹をへこませると、その結果がリアルタイムでタブレット上に表示された。実際には、Smart Garmentを数分間着装し、サイズを測定する。

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消費者にフィットする商品を表示

スマートドレスで自分のサイズが正確に分かるが、これでフィットする洋服を見つけられる訳ではない。もう一つの問題は、衣服のサイズに統一基準がないことである。つまり、同じサイズでも、ブランドにより大きさが異なるのだ。LikeAGloveは主要ブランドの衣服サイズのデーターベースを構築している。サイズが分かると、データベースを検索し、消費者にフィットする商品を表示する (上の写真)。更に、LikeAGloveはサイズだけでなく、消費者の体型を考慮し、一番似合う衣服を推奨する。

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何故サイズを統一できないのか

ジーンズやシャツを買うとブランドによりサイズが異なり不便を感じる。米国アパレル業界では、洋服のサイズ表記について統一したルールが無いためである。同じサイズ表記でもブランドが異なると、実際の大きさが異なる。上のグラフはそれを示しており、「サイズ10」でもブランドにより、大きさが異なる。黒色の線は業界の中央値で、ピンク色の線は米国人気ブランド「K-mart」を示す。K-martブランドの衣服は、標準値より大きめに設定してあり、「サイズ10」でも、実際にはその上の「サイズ12」に近い。これは「Vanity Sizing」(虚栄心サイジング)というマーケティング戦略である。K-martに行くと、一つ小さい「サイズ10」の服も着れるということで、売り上げが伸びる仕組みだ。

ビジネスモデルは検討中

DEMO Fall会場で、LikeAGlove CEOのSimon Cooperと、CMOのJessica Insalacoから、製品概要とビジネスモデルの説明を受けた。LikeAGloveはSmart Garmentとして、キャミソール (上述のドレス) の他に、ソックス、シャツ、レギングスを開発している。女性用だけでなく、男性向けには、シャツとレギングスを提供する。Smart Garmentの販売チャネルについては未定としているが、複数のオプションを検討している。具体的には、Amazonなど、オンラインストアー経由で販売することを目指している。また、消費者に直販するモデルも検討されている。価格は公表されていないが、量産すると安くなるとしている。

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eBayは超高精度な仮想試着室を開発中

オンラインストアーの技術進歩が著しい中、eBayは高精度なコンピューターグラフィックスを駆使し、仮想の試着室を開発している。eBayは2014年2月、3Dモデリング技術を開発している企業「PhiSix」を買収し技術開発を開始した。PhiSixは衣服の写真やパターンファイルなどから3Dモデルを生成し、衣服の挙動をシミュレーションする。消費者は高精度のコンピューターグラフィックスを見て、どの洋服を買うかを決める。消費者が体のサイズを入力すると、システムは体にフィットする商品を推奨する。

仮想試着室では異なる環境の中で衣服を着て動くことができる。上の写真はファッションショーのステージをイメージしたもので、モデルの動きは極めて精巧で、人間の動きと見分けがつかない。衣服もその特性に合った挙動をする。このケースではトップスは薄手のシャツで、歩くと風を切って、シャツが軽くたなびく。周囲の環境はステージの他に、街中や、ゴルフ場などが開発されている。購入する服を着て街中を歩くと、どのような感じなのかを把握できる。ゴルフ場では、購入するウエアを着てスイングすると、周りからどう見えるのかを理解できる。eBayはこの仮想試着室をオンラインストアーやモバイルアプリなどで展開する。仮想試着室でリアルなイメージが掴めれば、オンラインストアーの売り上げが伸びるという目論見だ。

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シリコンバレーでサイズ測定専用機が登場

消費者にフィットする洋服を見つけるために、ベンチャー企業はしのぎを削ってきた。「Bodymetrics」と言うベンチャー企業は、消費者の体をスキャンしてサイズを測定する技術を開発した。この装置はシリコンバレーの高級デパート「Bloomingdales’」に設置された (上の写真)。消費者はこの装置の中で、サイズを測定する。Bodymetricsは16台のMicrosoft Kinectを実装しており、3Dカメラで被写体の体を撮影し、立体オブジェクトを生成する。

10秒ほどで測定ができ、その結果は小売店のiPadに表示される。200ヵ所のサイズを計測し、アプリは最適な商品を推奨する。消費者は事前に専用アプリをインスト―ルしておくと、測定結果を自分のiPhoneで見ることができる。同様に、アプリは最適なサイズの商品を推奨する。従来はレーザー光での測定であったが、Kinectを使うと低価格で簡単に測定ができる。街で話題となった技術であるが、現在は使われていない。

ウエアラブルでサイズを測定するという発想

多くのベンチャー企業から、衣服にセンサーを組み込み、心拍数や心電図を測定し、健康管理に役立てる技術が登場している。これに対し、LikeAGloveはファッションの用途で、スマートドレスで身体サイズを計測する。しかし、一度サイズが分かればドレスは不要となる。家族や知人で利用する方法もあるが、LikeAGloveはドレスの再利用についてはコメントしていない。もし利用者が定期的にサイズを測定すれば、体型の変化を把握でき、健康管理やフィットネスに役に立つ。もう少し先になるが、3Dプリンターで衣服を印刷できれば、身体の詳細な三次元データが必要不可欠となる。究極の洋服を作れるが、Smart Garmentのようなセンサーが再び必要となる。Smart Garmentのデモを見て夢の広がる技術だと感じた。

Apple Siriに負けるな!ロボットやウエアラブルに頭脳を持たせる技術が登場

Friday, November 14th, 2014

音声アシスタント機能「Siri」はは、ヒトの言葉を理解し、指示に従ってタスクを完遂する。Siriがスマホの頭脳となり、自動車への展開も始まっている。ベンチャー企業も”Siri”を開発している。この技術をロボットやウエアラブルに応用すると、音声で操作できる。人工知能は大企業だけの技術ではなく、ベンチャー企業も開発を急いでいる。

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キーボードを持たないデバイスの操作

この技術を開発しているのは「Wit.AI」というベンチャー企業だ。Wit.AIは、ヒトの言葉を解釈し、意図を把握する技術を開発している。いわゆる自然言語解析で、Apple Siriに代表されるように、スマホやタブレットを話し言葉で操作できる。Wit.AIはキーボードを持たないデバイスに特化して技術開発を進めている。これらデバイスは音声が唯一の入力モードで、ウエアラブル、自動車、スマート家電、ロボット (上の写真、音声指示に従って立ち上がっている様子)、ドローンなどへの展開を目指している。

音声操作の仕組み

Wit.AIは人工知能クラウドで、「音声認識」 (Speech Recognition) と「自然言語解析」 (Natural Language Processing) から構成され、利用者の音声指示から意図を解読する。音声認識とは、音声をテキストに変換する技術で、Wit.AIはオープンソース・ソフトウェア「CMU Sphinx」を利用している。これはカーネギーメロン大学が開発したシステムで、解析の前処理として利用している。自然言語解析とは、非定型な話し言葉を解析し、そこに含まれる命令を把握し、それをマシンが解釈できる形に置き換えるプロセスを指す。

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発言内容を三種類に区分

具体的には上の写真のようなステップとなる。この事例では、利用者がスマートグラスに対し、「撮影した写真の最新三枚をGoogle+に掲載して」と音声で指示したところ。自然言語解析は、発言内容を三種類に区分する。「Intent」は利用者の意図で、ここでは「掲載する」ことを指す。「Expression」は表現方法で、音声での指示そのものを指す。「Entities」は表現方法の中の変数で、ここでは「撮影順序 (最新)」、「枚数 (三枚)」、「対象物 (写真)」、「ソーシャルメディア (Google+)」を指す。Wit.AIで解析したこれらデータをアプリに入力し、アプリは指示された内容を実行するという構造となる。

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Wit.AIクラウドを利用する

ウエアラブルやロボット開発者は、Wit.AIクラウドを使って命令を定義する。上の写真がその事例で、「明日朝6時に起こして」という命令を定義しているところ。先頭のボックスに「wake me up tomorrow at 6」と「Expression」を入力し、「Intent」を「alarm (目覚ましを鳴らす)」と設定する。更に、「Entity」を「wit/datetime (日時)」と設定する。これで利用者が「明日朝6時に起こして」と口頭で指示すると、インテリジェント家電が6時に目覚ましを鳴らす仕組みとなる。更に、異なる言い回しの命令多数を追加していくことで、目覚まし時計はヒトの言葉を理解できるように成長していく。

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スマートウォッチで利用されている

Wit.AIは既に3000社で利用されている。SamsungやPebble (上の写真) はスマートウォッチでWit.AIを利用している。スマートウォッチはキーボードを搭載しておらず、音声でデバイスを操作する。このため、Wit.AIのような機能が必須となる。因みに、Wit.AIはPebbleのオフィスに同居しており、両社は密接に技術開発を進めている。

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ロボットを音声で操作

Wit.AIはAldebaran Roboticsの小型ロボット「Nao」で利用されている。Aldebaran Roboticsはフランスのロボット開発企業で、ソフトバンクに「Pepper」を供給していることで有名となった。ロボットを音声で操作する時もWit.AIが利用されている。上の写真はそのデモで、開発者 (Roland Meertens) がNaoに「Please shake my hand」と語りかけ、握手をしている様子である。Naoは命令を受けると、それをWit.AIに送信し、クラウド側で解析を行う。その結果がNaoに返され、利用者の意図に従ったアクションを取る仕組みとなる。この他にNaoは「1メートル前進」や「ダンスを踊りなさい」など、多くの命令を理解し、アクションを取ることができる。

スマホアプリを音声で操作

Wit.AIはスマホアプリでも利用されている。これは「M.A.R.A. Running Assistant」というランニングアシスタントで、音声でアプリを操作できる。ランニング中にスマホを取り出さないで、音声で操作できる。ベンチャー企業はSiri同等機能を使ったアプリを開発できるようになった。

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上の写真はアプリを使って40分のウォーキングを行っているところ。アプリを起動するとマップが表示され、画面をタップして話しかける。「We are going to do a 40 minute walk」と指示し (左側) 測定を開始する。ウォーキングの途中で「How am I doing?」と質問すると、アプリは走行距離、残り時間、ペースを音声で回答する(右側)。「どこまで来た?」というように、異なる聞き方をしてもアプリは正しく回答する。ウォーキングの途中で天気、気温、時刻、場所などを尋ねると、アプリはそれに音声で答える。ウォーキング中に音楽の再生もできる。まるでApple Siriを使っている感覚だ。入力した音声はWit.AIクラウドで解析され、スマホに回答が戻ってくる。クラウドでの処理に多少時間がかかるが、問題なく利用できる。

ベンチャー企業が人工知能に向う

自然言語解析ではApple SiriやGoogle Nowが市場をリードしているが、Wit.AIのようなベンチャー企業から製品が登場している。Wit.AIは両社と比較すると製品完成度はもう一歩であるが、多くの製品で実績を積み改良を重ねている。人工知能はAppleやGoogleだけの技術ではなく、Wit.AIにより、新興企業が幅広く利用できるようになった。ロボットやウエアラブルで大きなブレークスルーが起こる環境が整った。