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犯罪者の社会復帰を後押しするインキュベーター、刑務所は人材の宝庫!

Friday, December 12th, 2014

米国で犯罪者の社会復帰を支援する事業が話題を集めている。インキュベーターのモデルで、罪を犯した人が起業するのを支援する。犯罪者の中には優秀な人材が埋もれており、これを社会に役立てようという試みである。実際に、刑務所内でプログラミング教育が始まり、その成果に注目が集まっている。刑務所を舞台に新たな取り組みが始まった。

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犯罪歴のある人の事業を支援

この事業を推進してるのが「Defy Ventures」というニューヨークに拠点を置く非営利団体で、刑期を終え出所した人を対象に、事業のスタートアップを支援し出資する。創設者でCEOのCatherine Hoke (上の写真、右側の女性) が、シリコンバレーで開催されたカンファレンス「DEMO Fall 2014」で、事業の狙いを自らの体験を交えて紹介した。また、出所して起業家の道を歩んでいる二人 (上の写真、男性二人) が、事業を起こす経緯を語った。

Defy Venturesは犯罪歴のある人を対象としたインキュベーターで、教育プログラムと起業資金を提供し、事業のスタートアップを支援する。このプログラムは10万ドルのファンドを用意し、成績優秀な受講者複数に振り分ける。コンペティションの形でプログラムが進行する。

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プログラムの内容

受講者は、まず、導入プログラム「Introductory Training Program」で三週間の教育を受ける。このプログラムを通過した人は「Defy Academy」に進む (上の写真)。これは七か月の集中教育で、受講者はリーダーシップやビジネスの基礎を学習する。今年からオンライン教育を開始し、七つの州から参加している。受講者は「Entrepreneurs-in-Training」 (教育中の起業家) と呼ばれる。講師陣には著名ベンチャーキャピタル「Draper Fisher Jurvetson」のTim Draperなどが含まれている。受講生はプログラムの中で起業について学ぶだけでなく、実際に起業しビジネスを始める。

Defy Venturesは受講者に対し、前述の10万ドルのファンドから、起業のために一人当たり最大2万ドルを出資する。Defy Venturesが出資先を選定する際は、ビジネスの将来性、ビジネスピッチ、プログラムの成績などが考慮される。出資対象ビジネスは精査され、Defy Venturesが認めているビジネスタイプに限定される。

プログラムの実績とビジネスモデル

このプログラムを終了し、実際に起業した件数は71社に上る。ベンチャーキャピタルと異なり、Defy Venturesは出資した資金を回収するのが目的ではない。Defy Venturesは篤志家からの寄付で運用している。一方、今年から授業料を徴収するモデルに変更し、中期的には授業料収入で事業を運営することを目指している。

米国では毎年200万人を超える人が収監され、世界の中で単位人口当たりの受刑者数が一番多い。Hokeによると、これら犯罪者にはHustler (やり手) が多く、犯罪者が巨大な人材プールを形成している。Defy Venturesは、ここから優秀な人を発掘することを目指している。このプログラムへの参加者は2012-13年は115人で、2014年は172人に増えている。2015年は大幅に増え1000人となり、このうち500人はサンフランシスコ地区で教育を受ける計画である。

プログラムを受講した感想

ステージ上で二人の受講者が起業に至る経験を紹介した。一人はドラッグディーラーで (先頭の写真、左側の人物)、刑務内で雑誌を読みDefy Venturesを知り、出所してすぐに応募した。今ではスポーツ用品販売の事業を立ち上げている。もう一人 (先頭の写真、中央の人物) は脱税で収監された。服役中に食品ビジネスを立ち上げ、今はそれを拡大し「Inside Out Bars」というブランドでグラノラバーの販売を行う計画だ。話し方はソフトで素敵な笑顔でグラノラバーは売れそうだと感じた。Hokeは28歳の時に、テキサス州で受刑者を起業家に育ているプログラムに参加し衝撃を受けたと述べた。刑務所には優秀な人材が眠っていることを発見し、このビジネスを始めたとしている。Hokeの持論は、受刑者から学ぶことが多いということで、犯罪者は間違った方向に進んでいるものの、ビジネスセンスに長けた人が少なくないという解釈だ。

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刑務所内でプログラミング教育

既に刑務所内で受刑者に対する教育が始まっている。「The Last Mile」はサンフランシスコに拠点を置く非営利団体で、受刑者にプログラミングを教育することで、社会復帰を支援している。手に職を付けると、刑期を終えた受刑者が再び犯罪を起こす確率が下がり、刑務所維持費を大幅に削減できるとしている。これは「Prison Programs」と呼ばれ、受刑者に起業のための教育とプログラミング教育を実施する。サンフランシスコ近郊の刑務所「San Quentin State Prison」で10月から18人の受刑者を対象に始まった。これは「Code 7370」と命名され、六か月にわたり、HTML、CSS、JavaScriptなどのプログラミング言語を学ぶ (上の写真)。

教育はプログラミング教育ベンチャー「Hack Reactor」が務める。講師はGoogle Hangoutsを使って受刑者にリモートで講義を行う。受刑者はパソコンを使い、実際にプログラムをコーディングする。受刑者はインターネットにアクセスすることが禁じられており、オフラインで学習する。インターネットにアクセスする際は、刑務所の専任スタッフが受刑者に代わり、検索などを行う。受刑者がプログラミング技術を習得することで、社会復帰を後押しする。収監中はカリフォルニア州政府向けにプログラムの開発を行う。

The Last Mileはプログラミングを社会復帰の手段に利用しているが、長く収監されている受刑者は、キーボードやマウスに触ったことが無い人も少なくない。iPhoneはテレビのコマーシャル知ったという人も多い。解決すべき課題は少なくないが、ITを社会復帰に利用する取り組みが始まった。

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大手ベンチャーキャピタルが注目する理由

上述のTim Draper (上の写真、前列中央の人物、受講生との集合写真) はDefy Venturesの講師を務め、プログラム運用に深くかかわっている。Draperは、受刑者はある意味で起業家であり、社会復帰のためには自らがビジネスを興すことが最適の選択肢であると述べている。投資家の眼からすると、受刑者たちは起業に向いていると見ている点は興味深い。また、Hokeの話しを聞くと、犯罪者に対して同じ目線で接し、家族の一員のように対応しているのを感じる。米国は失敗しても再度挑戦できる社会であるが、犯罪者は多くの企業から敬遠されているのも事実である。DraperやHokeは、事業の観点からは、ここに大きなチャンスがあることを感じ取っている。米国という“犯罪大国”だけで成立するモデルかもしれないが、受刑者から革新的なビジネスが登場するのも、そう遠くはないとの印象を受けた。

ウエアラブルでお洒落になる!スマートドレスが似合う洋服を教えてくれる

Wednesday, December 3rd, 2014

米国クリスマス商戦で、オンラインストアーの売り上げが大幅に伸びている。しかし、衣料品の購入では自分に合うサイズの商品を見つけるのが難しい。これは自分のサイズを詳細に掴んでいないのと、業界で統一したサイズ基準が無いためである。この永遠の課題に終止符を打つ技術が登場した。スマートドレスを着ると、サイズを測定でき、自分にフィットする洋服が分かるのだ。

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スマートドレスでサイズを測定

これは「LikeAGlove」という新興企業が開発しているスマートドレス「Smart Garment」で、シリコンバレーで開催された「DEMO Fall」で公開された。このドレスを着ると体のサイズを詳細に測定でき、自分にフィットする洋服が分かる。上の写真のモデルさんが着ている赤いドレスがSmart Garmentで、伸縮する素材でできている。この素材には伝導性ファイバーが織り込まれ、身体サイズをドレスが計測する。収集したデータは衣服のコントローラーからタブレットに送信される (モデルさんの持っているタブレット)。

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測定結果をタブレットで閲覧

上の写真が測定結果サンプルで、身体の五か所のサイズが表示される。具体的には、わき下間サイズ、カップサイズ、バンドサイズ、ウエスト、ヒップが計測される。実際にモデルさんにデモを見せてもらったが、お腹をへこませると、その結果がリアルタイムでタブレット上に表示された。実際には、Smart Garmentを数分間着装し、サイズを測定する。

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消費者にフィットする商品を表示

スマートドレスで自分のサイズが正確に分かるが、これでフィットする洋服を見つけられる訳ではない。もう一つの問題は、衣服のサイズに統一基準がないことである。つまり、同じサイズでも、ブランドにより大きさが異なるのだ。LikeAGloveは主要ブランドの衣服サイズのデーターベースを構築している。サイズが分かると、データベースを検索し、消費者にフィットする商品を表示する (上の写真)。更に、LikeAGloveはサイズだけでなく、消費者の体型を考慮し、一番似合う衣服を推奨する。

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何故サイズを統一できないのか

ジーンズやシャツを買うとブランドによりサイズが異なり不便を感じる。米国アパレル業界では、洋服のサイズ表記について統一したルールが無いためである。同じサイズ表記でもブランドが異なると、実際の大きさが異なる。上のグラフはそれを示しており、「サイズ10」でもブランドにより、大きさが異なる。黒色の線は業界の中央値で、ピンク色の線は米国人気ブランド「K-mart」を示す。K-martブランドの衣服は、標準値より大きめに設定してあり、「サイズ10」でも、実際にはその上の「サイズ12」に近い。これは「Vanity Sizing」(虚栄心サイジング)というマーケティング戦略である。K-martに行くと、一つ小さい「サイズ10」の服も着れるということで、売り上げが伸びる仕組みだ。

ビジネスモデルは検討中

DEMO Fall会場で、LikeAGlove CEOのSimon Cooperと、CMOのJessica Insalacoから、製品概要とビジネスモデルの説明を受けた。LikeAGloveはSmart Garmentとして、キャミソール (上述のドレス) の他に、ソックス、シャツ、レギングスを開発している。女性用だけでなく、男性向けには、シャツとレギングスを提供する。Smart Garmentの販売チャネルについては未定としているが、複数のオプションを検討している。具体的には、Amazonなど、オンラインストアー経由で販売することを目指している。また、消費者に直販するモデルも検討されている。価格は公表されていないが、量産すると安くなるとしている。

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eBayは超高精度な仮想試着室を開発中

オンラインストアーの技術進歩が著しい中、eBayは高精度なコンピューターグラフィックスを駆使し、仮想の試着室を開発している。eBayは2014年2月、3Dモデリング技術を開発している企業「PhiSix」を買収し技術開発を開始した。PhiSixは衣服の写真やパターンファイルなどから3Dモデルを生成し、衣服の挙動をシミュレーションする。消費者は高精度のコンピューターグラフィックスを見て、どの洋服を買うかを決める。消費者が体のサイズを入力すると、システムは体にフィットする商品を推奨する。

仮想試着室では異なる環境の中で衣服を着て動くことができる。上の写真はファッションショーのステージをイメージしたもので、モデルの動きは極めて精巧で、人間の動きと見分けがつかない。衣服もその特性に合った挙動をする。このケースではトップスは薄手のシャツで、歩くと風を切って、シャツが軽くたなびく。周囲の環境はステージの他に、街中や、ゴルフ場などが開発されている。購入する服を着て街中を歩くと、どのような感じなのかを把握できる。ゴルフ場では、購入するウエアを着てスイングすると、周りからどう見えるのかを理解できる。eBayはこの仮想試着室をオンラインストアーやモバイルアプリなどで展開する。仮想試着室でリアルなイメージが掴めれば、オンラインストアーの売り上げが伸びるという目論見だ。

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シリコンバレーでサイズ測定専用機が登場

消費者にフィットする洋服を見つけるために、ベンチャー企業はしのぎを削ってきた。「Bodymetrics」と言うベンチャー企業は、消費者の体をスキャンしてサイズを測定する技術を開発した。この装置はシリコンバレーの高級デパート「Bloomingdales’」に設置された (上の写真)。消費者はこの装置の中で、サイズを測定する。Bodymetricsは16台のMicrosoft Kinectを実装しており、3Dカメラで被写体の体を撮影し、立体オブジェクトを生成する。

10秒ほどで測定ができ、その結果は小売店のiPadに表示される。200ヵ所のサイズを計測し、アプリは最適な商品を推奨する。消費者は事前に専用アプリをインスト―ルしておくと、測定結果を自分のiPhoneで見ることができる。同様に、アプリは最適なサイズの商品を推奨する。従来はレーザー光での測定であったが、Kinectを使うと低価格で簡単に測定ができる。街で話題となった技術であるが、現在は使われていない。

ウエアラブルでサイズを測定するという発想

多くのベンチャー企業から、衣服にセンサーを組み込み、心拍数や心電図を測定し、健康管理に役立てる技術が登場している。これに対し、LikeAGloveはファッションの用途で、スマートドレスで身体サイズを計測する。しかし、一度サイズが分かればドレスは不要となる。家族や知人で利用する方法もあるが、LikeAGloveはドレスの再利用についてはコメントしていない。もし利用者が定期的にサイズを測定すれば、体型の変化を把握でき、健康管理やフィットネスに役に立つ。もう少し先になるが、3Dプリンターで衣服を印刷できれば、身体の詳細な三次元データが必要不可欠となる。究極の洋服を作れるが、Smart Garmentのようなセンサーが再び必要となる。Smart Garmentのデモを見て夢の広がる技術だと感じた。