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AIのグランドチャレンジ、人間のように会話するチャットボットの開発

Saturday, December 16th, 2017

Amazonは会話するAIの開発コンペティション「Alexa Prize」を開催した。目標は20分間会話できるチャットボットを開発することで、22か国から100を超える大学チームが技術を競った。初年度の2017年は、米国のUniversity of Washingtonが優勝した。

出典: Amazon

コンペティションの目的

AmazonがAlexa Prizeを始めた理由は、AIスピーカー「Echo」が目指している会話するAIを開発するためだ。AIの中で会話技法は極めて難しく、永遠に目標に到達できないという意見もある。AmazonはAlexaでこの技術を探求しているが、大学に参加を呼びかけ、若い頭脳によるブレークスルーを期待している。

Socialbotを開発

Amazonは会話するAIを「Socialbot」と呼んでいる。Socialbotとはチャットボットとも呼ばれ、AlexaのSkill (アプリに相当) に区分される。SocialbotはEchoを介し、幅広い話題で利用者と音声で会話する。話題としては、芸能、スポーツ、政治、ファッション、テクノロジーが対象で、人間とスムーズに対話が進むことがゴールとなる。

判定基準

参加大学はAmazonが提供するボイスアプリ開発環境 (Alexa Skills Kit) を使ってSocialbotを開発する。審査員がSocialbotと20分間会話し、会話能力を採点する。具体的には、Socialbotが話題に一貫性を持ち(Coherently)、相手を惹きつける(Engaging)能力などが評価される。但し、これはTuring Test (AIが人間のふりをする能力の試験) ではなく、あくまで会話能力が試される。

Socialbotと会話してみると

上位3チームのSocialbotは公開されており、Amazon Echoから会話することができる。実際に、Socialbotと話してみたが、技術は未完で会話はたどたどしい。しかし、Socialbotが話す話題は興味深く、話術も感じられ、会話に惹きつけられた。人間レベルに到達するにはまだまだ時間がかかるが、大きな可能性を秘めていることを実感した。

会話シーンのサマリー

優勝校のSocialbotとの会話は次のように進行した。Amazon EchoでSocialbotを起動すると、Socialbotは冒頭で挨拶 (「調子はどうですか?」) をしてから会話に入った。この技法は「Icebreaker」と呼ばれ、いきなり会話に入るのではなく、堅苦しさをほぐしてくれた。

興味ある話題を提示

ほぐれたところで、Socialbotは会話の話題を提示した。「休暇や人工知能や・・・の話をしましょうか?」。これは「Topic Suggestion」と呼ばれる技法で、相手の興味をそそる話題を提示する。Socialbotとは初対面なので、一般に受け入れられる話題が示された。

出典: Amazon

最新の面白い話題を紹介

この問いかけに「人工知能」と返答すると、Socialbotはとっておきの面白い話を聞かせてくれた。「Facebookは利用者が投稿する写真からその人の感情を推測するAIを開発している・・・」。これは「Knowledge Ingestion」という技法で、Socialbotは最新の話題を常に取り入れ、会話でうんちくを披露し相手を惹きつける。人間の会話と同じように、フレッシュな話題が相手を惹きつける。

意地悪な質問

これに対して少し意地悪な質問をした。「どういう仕組みなの?」と尋ねると、Socialbotはこちらの質問を復唱した。Socialbotが、こちらの質問を正しく理解していることが分かり、少し気持ちよく感じた。

掘り下げて説明

しかしSocialbotはこの質問には回答できなかった。「I ask myself the same question」と返答した。相手が興味を持っていることを掘り下げて説明することを「Deep Dive」という。Deep Diveすることで話が深くなり対話が進む。ただし、このシーンではうまくいかなかった。

対話をリードする

Socialbotはこれにもめげず、「人工知能の話を続けますか」と質問してきた。これは「Leading Conversation」と呼ばれる手法で、会話のトピックスを示し、対話をリードする。会話がとん挫しそうになったが、これに対し「Yes」と回答し、人工知能の話題がさらに続いた。

出典: Amazon

話題が展開する

その後、Socialbotは「クラウドの友人が興味深いアドバイスをしてくれたが、聞きたい?」と興味をそそる。「Yes」と答えるとその話を始めた。「過酸化水素が入ったホワイトニングを使って歯磨きしたあとは、数分間そのままでいると効果があるよ」と生活のコツを紹介してくれた。「この話より人工知能に興味ある」と言ったが、この発言は無視され、Socialbotはホンジュラスの大統領選挙の話を始めた。

全体の感想

こちらの発言を無視されると、Socialbotであると分かっているが、あまり快く感じない。また、会話の話題が急に変わると、どうしたのかと不安を覚える。まだSocialbotが人間のように会話できるとは言い難いが、会話の内容は興味深く、対話時間は13分に及んだ。20分がゴールであるので、まだ研究開発は続く。

システム構成

SocialbotはAmazonのボイスアプリ開発環境で開発された。学生チームは、Amazonが提供している音声認識 (Automatic Speech Recognition、声をテキストに変換) とスピーチ合成 (Text-to-Speech、テキストを声に変換) を使うことができる。こちらが喋った言葉をシステムが認識し、Socialbotの発言は聞きなれたAlexaの声となる。

会話技術の開発

チームはその中間の会話技術を開発し、その技量が試験される。スムーズに会話するのは勿論であるが、Socialbotの話術やキャラクターなども開発目標となる。Socialbotが興味深い話題を話すだけでなく、自分の主張を持ち意見を述べることも視野に入る。更に、相手の言葉に対してジョークで返答すると完成度がぐんと上がる。

来年に向けて

Amazon EchoやGoogle Homeの爆発的な普及で会話するAIがホットな研究テーマになっている。企業で開発が進むが、大学の研究にも期待がかかっている。自動運転車は大学間のコンペティションで開発が一気に進んだ。Alexa Prizeは2018年度も計画されており、会話するAIはどこまで人間に近づけるか、グランドチャレンジが続く。

Amazonはビジネス向け音声サービスを投入、AIスピーカーが秘書となり会社の事務作業をこなす

Thursday, December 7th, 2017

大ヒット商品Amazon Echoが会社に入ってきた。Amazon Echoを会議室に置き、部屋の予約やテレビ会議への接続を言葉で指示できる。コピー室に置いておくと、用紙が切れた時には、Amazon Echoに発注を指示できる。AIスピーカーを会社で使うと事務作業が格段に便利になる。

出典: Amazon

ビジネス向けのAlexa

このサービスは「Alexa for Business」と呼ばれ、Amazon開発者会議「AWS re:Invent 2017」で発表された。音声アシスタント機能をビジネスに適用するもので、家庭向けに提供されているAlexaを企業向けに拡大した構成となる。会社では煩雑な事務作業が多いが、Alexaがインテリジェントな秘書となり、言葉で指示したことを実行してくれる。

Alexa for Businessは個人モデル (Enrolled User) と共有モデル (Shared Device) がある。前者は社員がデスクに置いて個人で利用する形態で、後者は公共の場所 (会議室など) に置いてみんなで使う形態である。

デスクに置いて利用する

Alexaをデスクに置いて、スケジュール管理などで利用する (上の写真)。「Alexa, what’s my first meeting today?」と尋ねると、Alexaは次の打ち合わせ予定を回答する。また、Alexaに指示して、打ち合わせを設定することもできる。「Alexa, schedule a meeting with sales team at 2 pm on Thursday?」と言えば、販売チームとの打ち合わせをセットしてくれる。

会議室で利用する

会議室ではAlexaがミーティングのアシスタントとして活躍する (下の写真)。テレビ会議を始めるときに、「Alexa, start a sales meeting」と指示すると、Alexaが指定の番号に電話を発信し、モニターに参加者が映し出される。プレゼン中に資料が必要になると、「Alexa, pull up the last month sales」と指示すると、Alexaがディスプレイに先月の売り上げ情報を表示する。

出典: Amazon

コピー室に設置しておくと

Alexaをオフィスの様々な場所に設置しておくと意外な使い方ができる。オフィス入り口に設置しておくと、Alexaが受付の役割をこなす。「Where is the Tyler’s office?」と尋ねると、オフィスの場所を教えてくれる (下の写真)。

出典: Amazon

コピー室に設置しておけば、用紙が切れた時に、Alexaに指示すれば発注してくれる。「Alexa, ask the office for more printer paper.」。 Alexaはプリンター用紙を発注するだけでなく、印刷中のタスクについて、「Should I send your job to Printer 3?」と質問し、別のプリンターで印刷するよう取り計らってくれる。

Alexaで会議室を予約する

Alexaのビジネスソリューションはパートナー企業により提供される。Teemという新興企業はAlexaと連動し、会議室を管理するスキルを提供する。会議室入り口にディスプレイを設置し、部屋の使用状況を表示する (下の写真)。多くの企業がTeemで会議室を管理しており、Alexaとの統合で、これを言葉で指示できるようになった。

会議室を予約するときは、部屋に設置してあるAlexaに、「Alexa, ask Teem to book this room」と指示する。また、ディスプレイの「Reserve」ボタンにタッチして予約することもできる。会議室を使い始めるときは、「Alexa, ask Teem to check in this room.」と言い、時間を延長する時は、「Alexa, ask Teem to extend this meeting by 15 minutes.」と指示すると、15分間延長できる。

出典: Teem

ERPとの連携

Acumaticaという新興企業は、Alexaを使って在庫管理システムを音声で提供している。Alexaに言葉で在庫状態を尋ねることができる。「Alexa, ask Acumatica how many laptops do we have in stock?」と質問すると、Alexaはラップトップの在庫量を答えてくれる。在庫がない場合は、Alexaに商品発注を指示できる。「Alexa, ask Acumatica order 10 please.」というと、その商品を10点発注する。

AlexaはAcumaticaのERPシステムに統合され、在庫に関するデータを参照する仕組みとなる。更に、AlexaはERPシステムに商品の発注をリクエストすることができる。ただ、ERPという基幹システムにアクセスするため、Alexaの認証機能を強化することが課題となる。Alexaの認証方式は、4ケタのPINを言葉で語るのが一般的で、PINを聞かれる危険性がある。声紋などバイオメトリックな認証が次のステップとなる。

ホテル客室に導入

Alexa for Businessに先立ち、Amazon Echoはホテル客室で使われている。Wynn Las Vegasはラスベガスの高級リゾートホテルで、全ての客室にAmazon Echoを導入すると発表。4,748台のAmazon Echoが設置され、宿泊客はホテルや客室情報をEchoに尋ねることができる (下の写真)。

また、宿泊客は音声で部屋の設備をコントロールできる。「Alexa, I am here」と言えば、部屋の電灯が灯り、「Alexa, open the curtains」と言えばカーテンが開く。「Alexa, turn on the news」と言えばテレビがオンとなり、ニュース番組が放送される。Alexaがコンシェルジュとなり、宿泊客をサポートする。ホテル側としては、宿泊客がフロントに電話する回数が減り、コスト削減にもつながるという読みもある。

出典: Wynn Las Vegas

有償のサービス

家庭向けのAlexaは無償で使えるが、企業向けのAlexa for Businessは有償のサービスとなる。サービス料は共有モデルではデバイスごとに月額7ドルで、個人モデルでは利用者あたり月額3ドルとなる。また、企業のIT部門がデバイスや利用者を管理する体制となる。

共有モデルがヒットする

Alexaをデスクに置いて利用する個人モデルでは、会話が周囲に聞こえ迷惑になるだけでなく、内容によるとセキュリティのリスクもある。一方、共有モデルはこの問題は無く、また、役に立つクールなスキルが数多く登場している。家庭でヒットしているAmazon Echoは共有モデルがベースで、会社の中でもこのモデルの普及が予想される。