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ツイッター広告とデータマイニング (SemTech 11より)

Thursday, June 16th, 2011

セマンティック技術最大のカンファレンスである、Semantic Technology Conference 2011が、先週、サンフランシスコで開催された。会場は、ユニオン・スクエアー傍のHilton San Francisco Union Square (下の写真、出展:VentureClef) で、研究成果の発表に加え、企業での応用事例などが紹介された。

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ツイッターとセマンティック技術

ソーシャル・メディアが爆発的に広がる中で、セマンティック技術を使って、ウェブから有益な情報を抽出する事例が増え始めた。カンファレンスでは、「How Hollywood Learned to Love the Semantic Web (なぜハリウッドはセマンティック・ウェブを好きになったか)」と題して、映画スターとセマンティック技術の関係が紹介された。Beverly Hills (カリフォルニア州) に拠点を置く、Adly (アドリー) というベンチャー企業から、Chris Testa (クリス・テスタ) が、ツイッターを使ったブランド広告と、その背後のシステムを紹介した。学術的な色彩が濃いカンファレンスであるが、このセッションは、多くの広告代理店からの出席があり、華やいだ雰囲気で、議論が進んだ。

Adlyという企業は、ツイッターを中心に、ソーシャル・メディアを使って、商品をプロモーションするサービスを展開している。ツイッターでの広告方式が模索される中で、Adlyは、ハリウッドのセレブのツイッターを使って、ブランド・プロモーションを行なう方式を生み出した。ブランド・イメージを、セレブとマッチングさせ、セレブのツイッターなどで、ブランドに関するメッセージを発信するというものである。Adlyは、セレブが発信するツイートの中に、広告メッセージを含めて発信する。ツイッターのフォロワーは、メッセージに添えられている、リンクを辿り、商品の購入を行なう仕組みである。

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Charlie Sheenの事例

Adlyが、一躍有名になったのは、セレブにCharlie Sheen (チャーリー・シーン) を採用してからである。Sheenは、CBSテレビのコメディー番組「Two and a Half Men」で、絶大な人気を得ていた。しかし、Sheenの発言や行動の問題から、先の3月に、この番組を降板となった。いわく付きのセレブであるが、人気は衰えていない。Sheenは、この時期に、Adlyにアプローチして、ツイッターを始めた。上のスクリーンショットは、Sheenの2011年3月7日のツイート (出展:Twitter) である。メッセージは、「I’m looking to hire a #winning INTERN with #TigerBlood.」で、「#winning (成功を目指し) 、#TigerBlood (熱い血の) インターンを求む」、というものである。このメッセージに挿入されているリンク (http://bit.ly/hykQQF) を クリックすれば、Internships.comという、企業インターン募集サイトにジャンプする。Sheenが、ツイートで、この広告を行い、多くのフォロワーが、このサイトでインターン応募に応募して、このキャンペーンは大成功を収めた。

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データマイニング

Adlyはこのように、企業ブランドとセレブを組み合わせて、プロモーションを行なう仕組みを生み出し、その効果が認められてきた。Adlyに登録しているセレブは、Charlie Sheenのほかに、Kim Kardasian (キム・カーダシアン、テレビ女優) など千人以上に上る。また、Adlyと契約している企業は、NBC、Sony、Microsoft、Old Navyなど150社を超える。Testaによると、セレブの登録数が急増しており、セレブのプロフィール情報を如何に収集し、解析するかが大きな課題となってきた。このため、Adlyは、セマンティック技術を使って、ウェブサイトからセレブ情報を、データマイニングする方式を開発した。

また、Testaによると、ウェブ上には豊富なデータが揃っており、特に、セレブに関する情報は充実している。Adlyが利用しているウェブサイトは、Linked Dataと総称される、セマンティック化されたウェブである。具体的には、Freebaseなど、コミュニティーにより構築された、セマンティック・ウェブである。上のスクリーンショット (出展:Metaweb) は、Freebaseにおいて、Kim Kardashianを検索した様子である。Freebaseは、Metaweb社により開発されたセマンティック・ウェブで、2010年7月に、Googleが買収している。Freebaseは、セマンティック化されたWikipediaと表現でき、記事にアクセスするための様々なAPIやツールを公開している。Adlyは、これらAPIやツールを利用して、データマイニングを行なっている。Adlyは、マイニングしたセレブ情報を、ビジネス・インテリジェンスの手法で解析し、セレブのプロフィールを構築する。このプロフィールにマッチするブランドを選び、ツイッターでメッセージを発信する手順となる。

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トレンド

セレブがツイッターを使って、製品紹介を行なうことに対して、読者から反対の声があるものの、多くの読者は好意的に受け止めている。上のスクリーンショット (出展:Twitter) はMandy Moore (シンガー・ソング・ライター) が、ツイートで、AOLの新しいロゴについて述べている様子である。ちょうどテレビ広告で、セレブが、製品紹介を行なうのと同じ方式である。これらのメッセージには、(Ad) と表記され、広告メッセージであることを明示している。ツイッターが広告モデルを模索している中で、Adlyは、セマンティック技術を応用し、ひとつの筋道を示している。

オバマ候補ウェブサイト

Saturday, February 9th, 2008

Super Tuesdayを終えてオバマ上院議員は、本命のヒラリー上院議員に並ぶまで健闘し、民主党指名争いは大混戦となってきた。アメリカでの選挙権はないが、オバマ候補のウェブサイトでサポーターとして登録をしているので、オバマ候補からは電子メールやSMSで、重要なポイントにメッセージをもらう。昨日は、これからの予備選挙に備えて、Phonebankへの協力を促すメールを受信した。

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このメールは「Thank You」というタイトルで、Super Tuesdayでの選挙サポートに感謝を表する内容で、次の選挙に向けて更に頑張りましょうという内容である。具体的には、次の選挙区でのPhonebankについてである。このPhonebankとは、選挙区の民主党員に電話して、オバマ候補への投票をお願いするキャンペーンである。上記の「GET STARTED」をクリックすると、オバマ候補のウェブサイトのPhonebankの画面に入る。

米国大統領選挙とウェブ技術

Friday, February 1st, 2008

米国大統領候補選びは25日のスーパー・チューズデイ (Super Tuesday) に向けて白熱してきた。四年前の大統領選挙では、テレビや新聞に加えてブログと言うメディアが大きな影響を与えた。ブッシュ大統領のテキサス軍従軍問題で、CBSを代表するアンカーであったダン・ラザー (Dan Rather) が、ブログ記事により辞任に追い込まれたのは記憶に新しい。今年の大統領選挙では、ブログに代わりユーチューブ (YouTube) が選挙戦に大きな影響を及ぼすと予想していたが、現実はそう簡単な構図ではなさそうである。

選挙戦での新しい動き

今年の選挙戦は何か違うと感じている人は少なくないが、その理由については絞り込めていないのが現状である。各誌が様々な分析記事を掲載し始めているが、昨日のニューヨーク・タイムズは、現在までの両党の党員集会 (Caucus) や予備選挙 (Primary) 結果を簡潔に纏めた記事[1]を掲載している。この記事によると、今年の選挙では30歳以下の若者層が選挙結果に大きな影響を与えている。特にその影響は民主党で顕著に現れており、「アイオワとニューハンプシャーでは若者層の投票率が前回に比べて大きく向上した」としている。特に、「無党派層 (Independent) の若者が選挙の鍵を握っており、この無党派層の多くがオバマ候補を支持している」と分析している。

オバマ陣営の選挙戦術

若者層がオバマ候補を支持している背景には、選挙戦でのウェブ技術と関連があるように思える。今年の選挙戦の特徴は、既存メディアやブログに加えて、ウェブ技術が総動員されていることである。ソーシャル・ネットワークからコラボレーションまで、ウェブサイトで人気を博している技術が候補者サイトで幅広く採用されている。

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オバマ候補のキャンペーン・サイト (http://www.barackobama.com/) では、オバマ候補の紹介、政策の説明、最新のニュースに加えて、独自のチャネル(BarakTV)を設けてオバマ候補に関するビデオを放送している。オバマ候補の遊説活動はFlickrに写真が掲載されている。オバマ・サイトに登録すれば、オバマ候補に関連する情報を電子メールや携帯電話で送信できる。またこのサイトから、オバマ候補の演説の一部を切り取った着メロをダウンロードすることもできる。(出展: Barakobama.com)

選挙戦でのソーシャルネットワーク

オバマ候補のサイトは情報発信だけでなく、支援者がウェブサイト上で、簡単にアクションを起こせる構成となっている。Salesforce.comを思わせるウェブ基盤で、支援者向けのオンデマンド機能が提供されている。例えば、支援者は家庭のパソコンからそのまま選挙活動ができる構造になっている。「フォンバンク」 (Phonebank) という電話による選挙活動では、サイトにログインすると、支援者に割り当てられた氏名とその電話番号が示される。支援者は表示された番号に電話して寄付や支援を求める活動を家庭にいながら簡単にできる。

オバマ・サイトでの最大の特徴は、支援者個人のネットワーク (My Network) を開設できることである。個人向けダッシュボードに近所で開催されるイベントを登録し、選挙活動のグループに参加し、友人のネットワークを構築できることである。また、個人のブログを開設したり、資金集めを行うためのウェブサービスが整備されている。これはソーシャル・ネットワーク・サービスそのものの機能を選挙戦に転用しているものである。この機能を使って仲間とのコラボレーションで草の根運動を展開していく構図となっている。オバマ候補は自身のサイトだけでなく、外部の主要サイト (YouTubeFacebookなど) に特設チャネルを設けて情報発信を行っている。オバマ陣営は明らかに若者層を狙ったウェブ戦を展開している。

選挙戦の効果は

同じ民主党のクリントン候補も既存メディアに加えて、ウェブサイトでIT技術を駆使して、情報発信とソーシャル・ネットワークによる選挙戦を展開している。ウェブ戦略では遅れを取っていた共和党も、今年の大統領選挙では、ユーチューブやブログを活用し、急速にIT技術を取り入れている。今年の大統領選挙では、ウェブでの情報発信とコラボレーションが標準ツールとなり始めた。そして、選挙戦はウェブ上のコンテンツに移りつつあり、オバマ候補はここで成功している。チェンジ (Change) をキャッチフレーズに、国民に、ブッシュ政権という古い皮を破る必要性を唱え、これが若者世代の心を捉えている。オバマという新風はウェブ文化と互換性が高く、ネット上で大きな支持を集めている。日本人から見てもオバマ候補の演説は心を打ち、国を正しい道に導くという使命感に感銘を受ける。

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一方で、クリントン候補のイメージは、ネット上では相性が悪く、若者の心を捉え切れていない。これはテレビ映画「Sopranos」最終回のシーンをモチーフとしたクリントン候補のPRビデオである。このビデオは若者層を意識した作品であるが、不発に終わったばかりか、からかいの対象となってしまった。このビデオはクリントン・サイトではもう見ることはできないが、YouTubeではここ(http://www.youtube.com/watch?v=9BEPcJlz2wE) に掲載してある。(出展: YouTube)

選挙戦の行方は

ウェブ技術を使って、オバマ候補は若者層の支持を集める一方で、クリントン候補はそれを利用しあぐねている。1960年の大統領選挙では、テレビが選挙戦を左右する主要なメディアとなり、「テレビ映り」のよいジョン・ケネディー (John F. Kennedy) が当選した話は有名である。今年の選挙は、「ウェブ映り」のよいオバマ候補がクリントン候補を猛追している。くしくもケネディー大統領の娘であるキャロライン・ケネディーはオバマ候補を父親の再来と評している。依然として全米ではクリントン候補が優位を保持しているが、来週のスーパー・チューズデイでオバマ候補がどこまで迫ることができるのか、ウェブ時代の選挙戦が始まろうとしている。




[1] A Look at the Numbers, Andrew Kohut, 1/31/2008, http://campaignstops.blogs.nytimes.com/2008/01/31/a-look-at-the-numbers/index.html

成長が止まったブログ

Friday, May 4th, 2007


昨年からブログの動きが変である。ブログの投稿件数が減りつつあることが明らかになってきた。 これは、テクノラティ (Technorati) が四半期ごとに公表している、「ブログ白書」(The State of the Live Web) の統計情報によるものである。昨年前半までは、ブログ投稿数が急速に伸び続け、一日の投稿件数が150万件を突破した。テクノラティが指摘しているように、ブログ投稿件数は、「事件」と密接に関連しており、067月のイスラエルとヒズボラの戦闘では、ブログ投稿件数が急増し250万件を超えた。 しかしその後は、150万件前後で停滞している。

 

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ブログの一日あたりの投稿件数が頭打ちになってきた (出展:Technorati)

 

ブログ投稿件数のトレンドを把握するのは難しいが、昨年の中から今年にかけて、ブログ投稿件数は、減少傾向にある。 テクノラティも一日あたりの投稿件数について、「成長が鈍っている」との見方を示している。 しかし、何が原因でブログの成長が止まったのか、その理由については明らかにしていない。

 

日本語ブログの急成長

これと同時に、テクノラティは、言語別のブログ投稿数で、日本語のブログ投稿数が英語のブログ投稿数を押さえてトップになったことを明らかにした。 日本語のブログといえば、日本で日本人が作製するものが殆どである。一方、英語のブログというカテゴリーには、米国、カナダ、英国、豪州、ニュージーランドなどで英語で作製されたブログが含まれる。英語を母国語とする人は全世界で38千万人いるといわれており、一方、日本語を母国語とする人口は日本の人口と同じで13千万人である。 言語人口で三倍の差があるところで、日本語ブログ投稿数がトップになった。 つまり、日本人は英語圏の人間に比べて三倍ブログを書いていることになる。

 

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言語別ブログ投稿数で日本語() が英語() を押さえてトップになった (出展:Technorati)

 

ブログが日本人の嗜好にヒットしたことは間違いないが、もう少し詳しく見ていくと、日本人と英語圏のブログに対する考え方が異なっていることが分かる。英語のブログでは、いわゆる「メガサイト」が中心であるが、日本語のブログにはこれがない。米国のブログの一番人気は「Engadget (エンガジェット) である。 このブログは最新の小道具を紹介するサイトで、デジカメや携帯電話からITまでをカバーする商用サイトである。 クールなガジェットの紹介については、ニューヨークタイムズ (New York Times) の得意とするところであるが、今では、Engadgetがお株を奪っている。 ブログが本格的なメディアに成長した事例である。 一方、日本語のブログサイトで世界のトップ100にランクされるとことはなく、日本語のブログは個人を中心に情報発信されている実態が浮かんでくる。 日本ではオピニオンリーダーが世論を引っ張るという形式より、個人が出来事を記録する掲示板として使われている。使い方は異なるが、シリコンバレーで生まれたブログが、本家では衰退を始めたが、日本では独自の成長を遂げている。

 

ビデオとブログ

英語のブログ投稿数が減少しているが、ブログを書かなくなった人が、何処に行ったのかという統計は、残念ながら見たことがない しかしビデオの世代では、ブロガーがマイスペース (MySpace) やユーチューブ (YouTube) に流れていると見るのは、妥当な線である。 テクノラティはもともとブログ検索エンジンとして誕生し、ブログの動向をモニターしてきた。しかし今では、テクノラティは、ブログではなくビデオや音楽の人気サイトを中心にモニターしている。時代は確実に、ブログからマルチメディアに移っている。

 

これを端的に表しているのがユーチューブでの08年米国大統領選挙キャンペーンである。これはユーチューブ上のチャネルとして設定されており、その名称も「ユーチューズ 08 (YouChoose 08) となっている。ここに大統領候補者がウェブサイトを設け、ビデオを中心に選挙キャンペーンを展開している。04年の大統領選挙ではブログが大盛況で、ブログで論戦が交わされ、これが草の根運動として選挙戦を底辺で支えていた。08年の大統領選挙では、インターネット技術が、ブログからユーチューブに移行した。ユーチューブがテレビと同じ土俵で勝負できるほど、影響力を及ぼしている。04年の大統領選挙でブログは脇役であったが、今回の大統領選挙では、ユーチューブが選挙戦を左右するメディアとなってきた。

 

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08年大統領選挙キャンペーンのチャネルであるYouChoose ‘08 (出展:YouTube)

 

日本のブログはどこに向かうのか

一方、大統領選挙に関連するビデオで視聴者を集めているのは、テレビ放送のクリップを投稿したものや、各陣営で製作したビデオを投稿したものである。アマチュアの役割は、膨大なビデオコンテンツの中から、特定のビデオ・クリップを投稿するというフィルターの役割に留まっている。まだまだ自作コンテンツは少ないが、ビデオ選択という集合知で大統領選挙に大きな影響を与えている。文字から画像に移るのが自然の流れなのか、米国大統領選挙では論戦の場がブログからユーチューブに移った。日本人とブログの相性は抜群であるが、日本でもこれから米国と同じ軌跡を辿るのか。それともインテリジェントな国民性を背景に、ブログという形式の活字文化は定着し、独自の進化を遂げるのか。ブログの将来が決まる岐路にさしかかっている。