Archive for the ‘インターネット第二の波’ Category

Google Book Search集団訴訟 (上)

Saturday, August 29th, 2009

先月、カリフォルニア州マウンテンビューにあるComputer History Museumで、「Books, Google and the Future of Digital Print」 (書籍とグーグルとデジタル・プリントの行方) と題する講演会が開催された。この講演会は、社団法人情報処理学会で、日本のコンピュータの歴史を編纂されている委員の方から紹介して頂いた。Google Book Searchは、昨年10月に和解協定が結ばれたが、デジタル・アーカイブを進めているOpen Content Allianceなどを中心に反対意見が優勢になってきた。アメリカを二分しての議論に発展しているだけでなく、日本やヨーロッパなど、海外にも波紋を広げている。Google Book Searchがアメリカ社会に問いかけている問題について、二回に分けてレポートする。

 

Google Book Searchとは

この講演会は、Google BooksのEngineering DirectorであるDaniel Clancy (ダニエル・クランシー) が、Google Book Searchについて、Computer History MuseumのCEOであるJohn Hollar (ジョン・ホラー) と、対話する形式で行なわれた。講演会の題目からして、Googleが描いているデジタル・プリント構想の説明を期待していたが、講演の内容はGoogle Book Search集団訴訟問題に終始した。

 

Google Book Searchについては、よく知られているが、その経緯を簡単に遡ると、次のようになる。Google Book Searchは、04年に、Google Printという名前でプロジェクトが始まった。Googleは、アメリカの大学と提携して、大学図書館の蔵書をスキャナーで読み取り、デジタル書籍のライブラリーを構築することを目指している。Googleは、デジタル・ライブラリーを、研究者だけでなく、一般市民にも公開して、幅広く社会に貢献すると表明している。Google Book Searchに、人類の知恵が集結するという、少し恐怖を感じるが、壮大なプロジェクトが進んでいる。

 

このプロジェクトには多くの大学が賛同し、Googleが大学図書館の蔵書をスキャンすることを認めている。Clancyによると、Googleは、現在、700万冊のスキャンを終え、最終的には1500万冊をスキャンすることを目指している。しかし、プロジェクト開始翌年の05年には、Authors Guild (オーサーズ・ギルド) などがGoogleに対して、訴訟を起こした。Authors Guildは、アメリカの著作者団体で、Googleが書籍を無断でスキャンし、この行為は著作権の侵害に当たるとして提訴した。Googleが書籍を、スキャンして、それを保存して、加工して、Snippet (スニペット) として公開していることが、著作権を侵害しているという主張である。

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Google Booksでのサービス

Googleがスキャンした書籍は、Google Booksに掲載されている。Google Booksのサイトには、大量のデジタル書籍が掲載されている。著作権が存続している書籍については、そのSnippetが公開されている。Snippetとは、書籍の断片で、書籍の一部が公開されており、利用者はそれを読み、書籍の概要を把握することができる。上のスクリーンショット (出展:Google) は、私の書籍の事例で、Google Booksに、表紙を含めて36ページのSnippetが掲載されている。全体では166ページあり、書籍の22%がSnippetとして公開されている状況である。また、書籍購買のためのリンクや、書評へのリンクも掲示されている。

 

著作権が失効している書籍については、パブリック・ドメインの書籍として、すべてのページが公開されている。利用者は、パブリック・ドメインの書籍については、Google Booksで、全頁を読むことができるだけでなく、書籍内部を検索することができる。読者にとっては大変に有難いサービスであるが、Authors Guild等は、これらの行為が著作権侵害にあたるとして提訴している。

 

Google Book Search集団訴訟和解案

Clancyは、集団訴訟和解案の内容について、紹介した。GoogleとAuthors Guild等は、08年10月に、和解協定に調印し、両者の和解が成立した。Googleは、総額で1億2500万ドルを、Authors Guildに支払うことで合意した。そのうち、Googleは、4500万ドルを基金として、書籍をデジタル化された著者に和解金を支払う。著者は、一人当たり最大で60ドルの支払いを受けることになる。また、Googleは、3450万ドルの基金で、Book Rights Registryを設立する。Book Rights Registryとは、著者や出版社が書籍を登録するためのウェブサイトで、ここで実際の和解手続きを行なう。更に、Googleは、Google Booksに掲載された書籍が売れた場合、また、関連広告で収入を得た場合には、その売り上げの67%を、著者や出版社に支払う。

 

Book Rights Registryは、既に、09年2月にオープンし、運用が始まっている。このサイトは、下のスクリーンショット (出展:Book Rights Registry) のとおり、Google Book Settlementという名称で、書籍の著者や出版社が、書籍の登録を行い、支払いを受ける手続きを行なう。一方で、Googleのこの契約に同意できない著者や出版社は、その旨を宣言する。下の事例は、再び、私の本をBook Rights Registryに登録した様子である。登録後に、Googleが提示している、前述の集団訴訟和解案に合意するかどうかの意思表示を行なうことになる。(個人的には、出版社との契約が終了する来月に、Googleとの和解に同意する予定である。)

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この集団訴訟和解案は、裁判所の承認をもって、効力を発効する。これにより、Googleは、書籍のデジタル化を続行することができる。しかし、この和解案に対しては、多くの団体が反対している。その代表が、Microsoftらが構成している、Open Content Allianceである。更に、アメリカ司法省は、この和解案は、独占禁止法に抵触する恐れがあるとして捜査を始めた。Google Book Searchはその行方が不透明になってきた。