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Google DeepMindはAIのIQを測定、ニューラルネットワークは知能を持ち人間になれる

Friday, August 17th, 2018

Google DeepMindが開発したAlphaGoは囲碁のチャンピオンを破り世界を驚かせたが、本当に賢いのか疑問の声が上がっている。AlphaGoはニューラルネットワークで構成され、この技法を究めれば人間のような知能を手にできるのかも問われている。

出典: DeepMind

AIは知能を持つ

ニューラルネットワークは単に統計処理のアルゴリズムで、この道を進んでも知能を持つことはできない、との意見が少なくない。今の人工知能は人工無能と揶揄されるゆえんである。これに対し、DeepMindはAIのIQテストを実施し、ニューラルネットワークは一定の知能があることを突き止めた。ニューラルネットワークを改良すると、人間のように推論できる汎用的な知能を得ることができるとDeepMindは主張する。

ニューラルネットワークのIQテスト

DeepMindはニューラルネットワークのIQテストを実施した。この試験で、ニューラルネットワークは人間のように推論(Abstract Reasoning)できるかが試される。ニューラルネットワークで人間レベルの知能を目指すには、まず、今のAIの知能指数を把握する必要がある。(上の写真、IQテストのサンプルでAIが質問に答えていく。上段パネルの空白部分の答えをAからHの中から選ぶ。答えはA。円の数は左から右に向かい一つずつ増加。これはProgressionという概念を試験するもの。)

知能とは

知能(Intelligence)とは人間が持つ高度な能力で、論理的思考、自己認識、学習能力、推論能力、創造性など、幅広い要素から構成される。AIが知能を備えるためには、この中で推論機能が最初のステップとなり、ニューラルネットワークは推論機能を備えているかがカギとなる。知的なAIを開発するためには、いまのニューラルネットワークが抽象的概念をどの程度理解できるかを把握する必要がある。

IQテストの意味

DeepMindはこの目的で、ニューラルネットワークの知能指数を計測するIQテストを開発した。IQテストは経験から学習したことを図形などを使って視覚的に試験する。例えば、人はモノが進化する様子を経験的に学習する。庭で花が咲く様子を観察し、教室では数学の時間に数が増える概念を教わる。これらはProgressionという概念で、IQテストはこれをゲーム形式に展開し、被験者がこの概念をどれだけ応用できるかが試される。

IQテストの実例

実際の試験ではRaven-style Progressive Matricesという方式のIQテストが使われた(下の写真)。これは1960年代に開発されたもので、言葉ではなく図形を使い、生徒の知能(Fluid Intelligence)を試験する。これをニューラルネットワークに適用し、AIの知能を測定する。この試験ではProgressionの他に、XOR(排他的論理和)、OR、AND、Consistent Unionなど異なる概念が試験された。(下の写真左側:Progressionの試験。答えはA。星の数は上から下に向かい増える。下の写真右側:XORの試験。答えはA。左二つのパネルをXORで演算した結果を右端のパネルに表示。)

出典: David G.T. Barrett et al.

試験方式

人間のIQテストは、我々が日々の生活で学習したことが試験される。しかし、AIは社会に接することはなく、人間のように学習する機会はない。このため、AIのIQテストでは、ニューラルネットワークをあるテストセットで教育し、別のテストセットで試験した。ニューラルネットワークが一つのテストセットで学習した知識を別のテストセットで生かすことができるかが試験された。

試験結果

試験では代表的なニューラルネットワーク(ResNetやLSTMなど)が使われ、それらの知能指数が計測された。更に、DeepMindはこの試験のために知的なニューラルネットワーク「Wild Relation Network (WReN)」を開発し、このモデルの知能指数を計測した。ニューラルネットワークは異なる条件で試験され、IQテストの正解率が示された。ニューラルネットワークの中でWReNが最もいい成績を収めた。WReNの正解率は76.9%で一定のインテリジェンスを持つことが示された(下のテーブル、最上段)。このケースでは教育と試験において同じテストセットが使われた。

出典: David G.T. Barrett et al.

データセットが異なると

しかし、教育データと試験データが異なると、ニューラルネットワークの正解率は大幅に低下した。データが異なるとは、黒色のオブジェクトで教育し、白色のオブジェクトで試験する場合などを指す(先頭のIQテストにおいて、黒丸を白丸に変えて試験するケース)。この場合は正解率が13.0%と大きく下がり(上のテーブル、下から二段目)、ここがニューラルネットワークの弱点であることが分かった。人間だとオブジェクトの色や形状が変わっても数をカウントできるが、ニューラルネットワークは属性の変化で推論の過程が混乱する。

試験結果の解釈

DeepMindはこの研究を通して、ニューラルネットワークは抽象的な推論を学び、それを問題に適用する一定の機能があることを示した。ネットワークはピクセルから抽象的な概念が存在することを推論することができた。一方、ニューラルネットワークは実社会との接触はなく、限られたデータで教育されれるため、推論機能は限定的であることも分かった。つまり、知的なAIを開発するためには、人間社会との交わりが必須であることを示唆している。

次のステップ

DeepMindの目的は汎用的な知能を持つAIを開発することで、ニューラルネットワークが学んだことを幅広く適用することがゴールとなる。このために、WReNがIQテストで解を求める仕組みを解明することが次の研究ステップとなる。DeepMindは知能指数の高いAIを開発するコンテストを計画している。これは抽象類推コンテスト「Abstract Reasoning Challenge」と呼ばれ、高度な推論機能を持つAIをコミュニティと供に研究を進める。

二つの考え方

AI研究の次の目標は人間に匹敵する抽象推論(Abstract Reasoning)機能を持つマシンの開発にある。Facebook AI研究所所長のYann LeCunは、ニューラルネットワークを改良することで、推論や抽象事象を学習できるとの前提で研究を進めている。一方、New York UniversityのGary Marcus教授は、ニューラルネットワークを突き進めても壁に当たり、一般的な抽象推論機能を持つことはできないと主張する。DeepMindは前者の陣営に属し、ニューラルネットワークをベースとする知的なAIの開発を進めている。

WaymoがUberを置き換える、自動運転車の四つの事業形態

Friday, August 3rd, 2018

Waymoは自動運転車の営業運行を目前に控え、事業形態を明らかにした。事業は、無人タクシー、無人トラック、無人乗用車、無人公共交通の四つの柱から構成される。無人タクシーについては、既に実証実験が始まっている。無人トラックの試験走行も始まり、また、自動運転車を直接消費者に販売する計画も明らかにした。更に、Waymoは無人公共交通について、住民のラストマイルを支える交通網とする事業モデルを発表した。

出典: Waymo

無人公共交通

Waymoは2018年7月、アリゾナ州フェニックスの公共交通機関「Valley Metro」と提携し、自動運転車で交通網を構成すると発表した(上の写真)。Valley Metroはバスや路面電車を運行しており、Waymo自動運転車が自宅とバス停や電車の駅を結ぶ移動手段となる。Waymoが住民のラストマイルを支える交通手段を提供する。

ラストマイル

この背景には、都市開発で交通網の整備が進むものの、それを有効に利用できていないことがある。フェニックスでは自宅とバス停や電車駅までの距離が長く、これが公共交通機関を利用するときの障害となっている。このギャップを効率的に埋める輸送機関が求められ、Waymo自動運転車がこの任務を担う。

効果の検証

当面は試験運用として、Valley Metro従業員を対象に、自宅から近くの交通機関まで送迎する。従業員はWaymoアプリを使い、Uberを使う要領で、クルマをリクエストすると無人タクシーが配車され、近くの駅まで送り届けられる。更に、このサービスを高齢者や体の不自由な人に拡充する。試験運用で有効性が確認されると、一般住民を対象としたサービスに進む。

無人タクシー

Waymoはフェニックスで自動運転車の走行試験を続けているが、2017年11月からは無人タクシーとして運行を開始した。当初は、安全のためにセーフティドライバーが搭乗していたが、2018年3月からは、文字通り無人のタクシーとして運行している。今では、生徒が通学の足として、また、住民が買い物に行くために、Waymoを利用している(下の写真)。

出典: Waymo

無人タクシー利用形態

毎日400人の住民が無人タクシーを利用している。利用者は、高齢者、高校生、子供がいる家族、身体障害者など幅広く、Waymoが日々の移動手段となっている。利用形態で一番多いのが通勤と通学で、また、レストランやバーに行くときも頻繁に利用される。スーパーマーケットに買い物に行くときの住人の足として機能している。

無人タクシーの中で

無人タクシー利用者は、移動中に何をしているかも明らかになった。クルマのなかで学校の宿題をしたり、メールや本を読むケースが多い。乗客は車内でWaymoの運行を監視しているオペレーターと話をすることができる。どの道を通って目的地に行くのかなど、質問があるときは車内に設置されているボタンを押してオペレーターに質問できる。

料金体系

Waymoは無人タクシー料金について公表していないが、Uberの料金が基準となることは間違いない。実証実験では料金は無料であるが、試験的にアプリに料金が表示される仕組みになっている。例えば、11.3マイルの距離を走ると19.15ドルと表示される。マイルあたりに換算すると1.69ドルとなり、これはUberXLの料金(マイルあたり1.55ドル)に匹敵する。WaymoはUberより安い料金体系を計画しているとも噂され、無人タクシーはライドシェア市場を直撃することになる。

無人タクシー事業展開

実際に、Waymoは無人タクシー事業を大規模に展開する計画を公表している。WaymoはFiat Chrysler Automobilesから62,000台のHybrid Pacifica Minivansを購入し、自動運転パッケージを搭載し、無人タクシーとして運行する(上の写真)。更に、WaymoはJaguar Land Roverから20,000台のI-PACEを購入し、プレミアム版の無人タクシーとして運行する(下の写真)。I-PACEはJaguarが開発した初の電気自動車(EV)で、お洒落なデザインとなっている。Pacifica Minivanを日常生活の足として使い、特別な日にリッチに移動するときにI-PACEに乗る、という使い分けになりそうだ。

出典: Waymo

無人トラック

Waymoは2018年3月、無人運転トラックを開発していることを明らかにした。車体はPeterbilt社のModel 389 (Class 8)で、ここにWaymoのセンサーとソフトを搭載している(下の写真)。センサーは自動運転車と同じもので、ソフトウェアも95%が同じであるとしている。自動運転車で培ってきた技術をそのまま使うことができるが、トラックはブレーキ操作、右折や左折、ブラインドスポットなどが異なるため、若干の手直しが必要となる。無人トラックはAtlanta(ジョージア州)で試験走行が展開されている。Atlantaは全米のロジスティクスのハブで、Waymoはここを拠点に無人トラックの開発を進める。

無人トラック応用分野

自動運転トラックは輸送会社のネットワークに組み込まれ、製造工場、配送センター、港湾などを結び、貨物を輸送する。ハイウェーで自動運転トラックの走行試験が進んでおり、セーフティドライバーが搭乗し、問題が発生すると運転を取って代わる。Waymoはホンダとの技術提携を発表したが、両社で配送向けの自動運転技術を開発していると言われている。

出典: Waymo

無人乗用車

Waymoは自動運転車を個人に販売するビジネスモデルも進めている。Waymoは、前述の、Fiat Chryslerと個人向け自動運転車の開発に関する協議を始めた。また、Waymoは、自動車メーカーの半分以上と、個人向け自動運転車に関する交渉をしているとも言われている。自動運転車は無人タクシーなどビジネスユースが中心となるが、消費者が自動運転車を所有したいという需要も大きいとみている。

ロードマップ

Waymoから四つのビジネスモデルが出そろい事業の骨格が明らかになった。無人タクシーが最初の事業で、アリゾナ州に続きカリフォルニア州で試験運行が実施される。無人タクシー商用運行時期は公表されていないが2020年と噂されている。商用運行が始まると、無人タクシーはライドシェアを直撃し、輸送形態が激変する。タクシーがUberに置き換わったように、今度はWaymoがUberを置き換えることになる。

GoogleはAIコールセンターを発表、人間に近づきすぎたAIが顧客のクレームを処理

Friday, July 27th, 2018

GoogleはコールセンターにAIを統合したサービス「Contact Center AI」を発表した。Google Cloud Nextで科学研究責任者のFei-Fei Liが基調講演の中で明らかにした(下の写真)。Contact Center AIはコールセンターのオペレーター業務をAIで代行するもので、顧客からの問い合わせに、人間のようにインテリジェントに対応する。

出典: Google

AIが消費者の苦情を処理

講演の中でContact Center AIのデモビデオが紹介された。消費者が、購買した商品を返品するため、eBayのコールセンターに電話したという設定で、Contact Center AIの機能が紹介された。消費者がコールセンターに電話するとAIに繋がり、AIは人間のように自然な会話で対話する。AIが消費者の苦情を聞き、その内容を理解して、事務処理を完結した。

AIと人間の共同作業

具体的には、消費者はテニスシューズを買いたかったが、間違えてランニングシューズを購買したので、これを返品したいと申し出た。AIは会話を通して、消費者の意図を理解し、商品返品のプロセスを実行した。更にAIは、消費者はテニスシューズを買いたいという意図を掴み、電話をファッション担当オペレーターに転送した。消費者はオペレーターと会話して、目的のシューズを購買することができた。インテリジェントなAIが示されたことに加え、人間と協調してコールセンターのタスクを実践する仕組みも明らかになった。

消費者とAIとの会話

消費者とAIの会話は次の通り進行した:

AIは冒頭でマシンであることを明らかにし、人間そっくりの口調で消費者と対話を始めた。ここにGoogle Duplex(人間過ぎる仮想アシスタント)の技法が使われている。オープンエンド形式の会話モデルで、AIはHelloと挨拶してから要件を確認した。オープンエンド形式とは、テンプレートが無い会話モデルで、消費者の発言にAIが臨機応変に対応する。多くのコールセンターはツリー形式の会話モデルで、質問に答えながらガイダンスが進む。

AI:Hello Mala, I am an automated agent.  Welcome back to eBay.  It looks like we delivered six running shoes on June 26the.  Are you calling about this order?

出典: Google

消費者は購買したシューズが合わないので返品したいと告げる(上の写真)。AIはこれを理解して、返品のプロセスを起動し、その確認書をメールで送信したと告げる。

消費者:Unfortunately, they don’t fit.  So I need to return them.

AI: I can help you that.  I am starting a return for you.  You will be receiving an email with the details of your return.

AIは消費者の意図を把握し、更に、会話した情報を記録する。AIは、消費者は返品だけでなく、目的のシューズを探していることを推測する。AIは消費者にファッション担当オペレーターに電話を転送しましょうかと提案。消費者はイエスと答え、AIはオペレーターに電話を転送した。

AI:One more thing.  Would you like me to connect to an eBay fashion expert to find the right shoes?

オペレーター向けの情報

電話が転送されると、オペレーターのデスクトップには消費者とAIの会話が表示され、今までの経緯を理解することができる。更に、オペレーターが消費者と会話を進めると、AIは対話をリアルタイムで解析し、消費者の意図を把握し、最適な商品を推奨する。このケースでは、AIはハードコート用のテニスシューズを推奨し(下の写真)、消費者はこれを購入して一連のトランザクションが終了した。

出典: Google

システム構成

このケースではGoogle Cloudで稼働するGenesysのコールセンターシステムが使われた (下の写真、中央部)。消費者(左側)はAI(AI Virtual Agent、中央上部)と対話し、AIが自然言語でクレーム処理のタスクを実行する。次に、AIはオペレーター(右側)に電話を転送する。オペレーターが消費者と会話する際に、別のAI(Agent Assist、中央下部)が会話をリアルタイムで解析し、推奨製品などをディスプレイに表示する。

出典: Google

インテグレーション

Contact Center AIは既存のコールセンターシステムに統合して利用される。Contact Center AIがインテリジェントな音声対応機能(Interactive Voice Response)を司り、コールセンターの頭脳として機能する。このデモではGenesysが使われたが、この他に、Mitel、Cisco、TwilioなどのシステムでContact Center AIを使うことができる。企業はコールセンター業務をContact Center AIで実行し、人間のオペレーターを知的な業務に振り向けることができる。

Google Duplex

Googleはこれに先立ち、会話型AI「Google Duplex」を公開している。Duplexは人間のように会話するAIで、レストランの店員と話してテーブルを予約する(下の写真)。話し方が人間そっくりで、市場からは驚嘆の声が上がっている。同時に、なぜAIをここまで人間に近づける必要があるのか、議論となっている。Google Duplexは消費者向けのサービスとして登場したが、Contact Center AIに組み込まれ、適用範囲が企業向けに拡大した。

出典: Google

人間の能力を開花させる

Googleは先進的なAIを投入し社会で波紋が広がっているが、企業向けのソリューションであるContact Center AIでは、人間との協調を重視している。Fei-Fei Liは事務的な作業はAIに任せることで、人間は知的な仕事に専念できると説明した。これを「Elevating Human Talent」と呼び、Contact Center AIはオペレーターの職を奪うのではなく、人間の能力を開花させる存在であることを強調した。

AIコールセンター市場

AIコールセンターではIBM Watsonなどが先行しているが、Googleは強みであるAIを全面に押し出して、インテリジェントな機能で先行他社に挑戦する。今回の発表では、各社が独自のAIを開発するためのツールも公開された。業務形態に合わせてAIコールセンターを開発することができる。多様なキャラクターのエージェントが開発され、人間より対応が上手なAIが登場するのか、期待が膨らむ技術である。

Googleは人間過ぎるAIの運用を開始、Duplexが電話してレストランを予約

Friday, June 22nd, 2018

Googleは会話型AI「Google Duplex」を公開した。Duplexは人間のように会話するAIで、レストランの店員と話してテーブルを予約する。Duplexは開発者会議Google I/Oで発表されたが、話し方があまりにも人間そっくりで、本当に存在するのか疑問視されていた。Googleはライブデモを実施し、Duplexが実存することを示し、これらの疑念を払しょくした。更に、来月7月からDuplexのサービスを開始することも明らかにした。

出典: Google

レストラン予約ビデオ

GoogleはDuplexが実際に稼働している様子をビデオで公開した。Duplexがレストランを予約する手順が紹介された。仮想アシスタントであるGoogle Assistantにレストランの予約を指示すると、背後でDuplexが電話してこれを実行する。Google I/Oではエッセンスだけが示され誤解を招いたが、ビデオではDuplexと店員の対話が忠実に描写され、完成度の高さをアピールしている。

予約を指示する

Assistantにレストラン予約を指示すると (「Hey Google, Book a table for 2 at El Cavotero on Tuesday at 7 pm」)、Assistantは予約の時間帯を確認する (「Alright. Just in case, if that’s not available, can I try between 7 pm and 8 pm?」、上の写真)。これに対し「Sure」と答えると、Assistantは内容を確認をして(「I’ll book under your name…」)、予約プロセスを起動する。

Duplexがレストランに電話

この指示に基づき、Duplexがレストランに電話をかけ、自己紹介をして、予約したい旨を告げる (「Hi, I am the Google Assistant to make a reservation for a client.」、下の写真)。これに続き、会話が録音されている旨を伝える (「The automated call will be recorded.」)。相手に人間だと誤解されないため、Duplexは会話の冒頭でAIであることを明らかにする。更に、会話の内容が録音されているとのコメントを追加する。カリフォルニア州では、通話を録音する際は、法令でこれを相手に明示することが義務付けられている。

出典: Google

予約時間の調整

次に、Duplexが予約の日時を告げる (「Can I book a table for Tuesday, the 12th?」)。これに対し、店員が何人かと尋ねると (「How big is the party?」)、Duplexは二人と返答(「It’s for 2 people」)。次に、店員が日時を尋ねると (「When did you say they want to come in?」)、Duplexは火曜日の午後7時と再度告げる (「Tuesday at 7 pm」)。店員が空き時間を確認し、7時は空いていないが8時ならあると述べると(「I don’t have 7, but we can do 8」)、Duplexは8時でも大丈夫と答え(「Year, 8 pm is fine.」)、時間調整が完了。

予約が成立

店員が名前を尋ねると(「Can I get their name?」)、DuplexはAnaと回答 (「The first name is Ana」)。店員がそれでは火曜日に(「Okay, we will see Ana Tuesday」)と内容を確認すると、Duplexはありがとうと述べて(「Okay, awesome. Thanks a lot 」)、予約が完了する。Anaのスマホには予約確認のメッセージが届き (下の写真)、一連のトランザクションが完了する。

出典: Google

Duplexを報道機関に公開

このビデオとは別に、Googleはレストラン店舗 (下の写真) に報道関係者を招待し、Duplexのデモを実施した。招待された記者たちは、レストラン店員に扮し、Duplexからの電話を受け、対話しながら予約を受け付ける作業を体験した。この中には、Duplexが余りにも人間そっくりなため、このシステムはデモのために作られた、とレポートした記者も含まれていた。このデモの内容についてCNNなど主要メディアが報道し、Duplexは実際に稼働していることが明らかになった。

出典: Google Street View

人間的である理由

Duplexを人間と感じる理由は、人間の悪い癖であるDisfluenciesを取り入れているため。Disfluenciesとは、 “えーと”など意味のない繋ぎ言葉を指し、これが会話の中に配置され、人間臭さを醸し出す。これに対して、Duplexは人間を模倣する必要はない、という意見も少なくない。AIはAIらしくぎこちなく喋るべき、というのがその理由。Googleは、Duplexを人間に近づけている理由を、ぎこちなく喋ると聞き手はイライラが募り、電話を切ってしまうケースが増えるため、と説明している。実際に、電話の音声ガイダンスは好感が持てないが、Duplexの溌溂とした女性の声には親近感を感じる。

オペレータが手助け

今回のデモで、GoogleはDuplexの背後でオペレータが運用を支えていることを明らかにした。Duplexが応対できるケースは8割程度で、処理できない時には人間のオペレータに回送される。会話の途中で問題が起こると、Duplexはオペレータに繋ぐと述べて(「I think I got confused. Hold on, let me get my operator.」)、電話を転送する。

Duplexが対応できないケース

Googleは、Duplexが対応できない具体的な事例は示していないが、デモを体験した記者たちがこれをレポートしている。デモの中で、記者たちは意地悪な質問をして、Duplexの機能の限界を試した。ある記者は、予約グループの中に食事制限をしている人がいるかと尋ねると、Duplexは回答できなかったとしている。また、車いすを使う人がいるかとの質問にも、Duplexは答えることができなかった。更に、天気に関する話題など、予約以外のトピックスにはDuplexはついていけない。Duplexは人間のように世間話ができるわけではなく、予約一筋に事務作業を遂行するキャラクターとなっている。Duplexのナレッジベースを拡大することが、今後の課題となる。

サービス開始時期

Duplexはレストランの予約の他に、ヘアサロンの予約もできる。また、祝日の営業時間の問い合わせにも対応している。これらの機能が順次、一般に公開される。数週間後に、祝日の営業時間を問い合わせる機能が、夏までにレストランとヘアサロンの予約機能が公開される。一般利用者がスマホやGoogle Homeで、Duplexを使うことができるようになる。まだ、レストランとヘアサロンの予約に限られるが、人間に代わってAIが電話して予約する時代が始まろうとしている。

GoogleのAIカメラ「Clips」はプロ写真家の技を習得、AIが自動でシャッターを切り印象的なビデオを撮影

Friday, June 15th, 2018

GoogleはAIカメラ「Google Clips」 の販売を開始した。カメラにAIが搭載され、自動でビデオを撮影する。Google Clipsのアルゴリズムは、絵になるシーンを認識し、自動でシャッターを切る。実際に使ってみると、Google Clipsは独自のテイストを持っていて、子供や大人やペットが楽しんでいるシーンをビデオに収めていく。

出典: Google

開発コンセプト

Deep Learningの進化で、アルゴリズムがオブジェクトの種類を高精度で把握できるようになった。この技術を応用して、人間に代わりAIが写真を撮影する技術が、次の開発テーマとなっている。Clipsはその一つの解で、カメラがシャッターチャンスを自動で認識し、プロ写真家のようにビデオ撮影することを目標に設計された。

家族やペットに反応

Clipsは家族やペットなどを撮影することを想定してデザインされた。Clipsはインテリジェントな機能を持ち、AIが人物やペットを識別する。Clipsに家族関係者を教えておくと、その人物を中心に撮影する。アルゴリズムは笑顔や動き (ダンスやハグなど) をシャッターチャンスととらえ、ビデオ撮影を始める。

操作方法

Clipsは小型形状のカメラでシンプルなデザインとなっている (上の写真)。カメラのレンズ (黒円の部分) を右に回すと撮影が始まる。撮影中は白いライトが点滅し、撮影していることを示す。Clipsが最適なシーンを選び、短いビデオ (6秒間のビデオクリップ) として収録する。レンズの下のボタンを押すと、マニュアルで撮影することもできる。

スマホアプリ

Clipsを被写体の近くに置き、レンズを回して撮影を開始する。被写体までの距離は3フィートから8フィート (0.9メートルから2.4メートル) が最適。130度の広角レンズを搭載しており、被写体に近づけて使う必要がある。Clipsにはファインダーはなく、スマホアプリ「Google Clips」でカメラが捉えた映像を見る (下の写真、左側上段の画面)。また、カメラのポジションもアプリで確認し、水平になっているかどうかをチェックする (同、右下の白枠)。

出典: Google

ビデオの保存

撮影したビデオはClipsのストレージ(16GB)に格納される。これらビデオはClipsからアプリに送信され、スマホの上で閲覧する。ビデオでSaveオプションを選ぶと、写真クラウドGoogle Photosにアップロードされる (上の写真、右側中段)。ビデオは写真またはビデオクリップとして保存できる。プライバシー保護の観点から、撮影したビデオは、Save機能を使わない限り、デバイスに留まる。

実際に使ってみると

Clipsは人間に代わりAIが印象的なシーンを自動で撮影するので、スマホを持って被写体を追跡する必要はない。食事中にClipsをテーブルに置いておくだけで、絵になるシーンが撮影される。また、プールで遊んでいる子供を撮影するときは、Clipsを被写体に向けておくだけで、楽し気なシーンが撮影できる。ファインダーでシャッターチャンスを追う必要はなく、AIがこれを代行するので、写真撮影のスタイルが根本的に変わる。

AIの際立った特性

Clipsは絵になるシーンを捉える際に、際立った判定規準を持っている。Clipsは人が何かアクションを取っていることに敏感に反応し、シャッターを切る。例えば、飛び上がったり、ダンスしているシーンをシャッターチャンスだと理解する。また、お母さんと赤ちゃんが水に手を入れて、水しぶきを立てて遊んでいるシーンを逃さない。楽しそうに笑っているシーンは必ず撮影する (下の写真)。一方、Clipsは構図、色彩、ライティングについては考慮していない。つまり、AIは人やペットの自然なシーンを撮影するよう教育されている。

出典: Google

シャッターチャンスの学習方法

アルゴリズムが最適なシーンを学習するため、Googleは教育データを生成した。ビデオから多くのセグメントを抽出し、そこからシーンのペアをつくり、プロ写真家がそれぞれのペアを比較し、どちらが絵になるかを判定した。これが教育データとなり、アルゴリズム教育で使われた (下の写真)。ニューラルネットワーク (MobileNet Image Content Model)がシーンの中のオブジェクトを判定し、機械学習の手法(Segmented Regression) でどちらのシーンが絵になるかを判定。このプロセスを繰り返し、アルゴリズムがプロ写真家のテクニックを学習した。

出典: Google

Google Clipsはプロを超えたか?

実際に使ってみると、Clipsは子供や大人が楽しそうにしている顔の表情や、体全体のアクションを確実に捉え、生活の一部が切り取られたように、印象的なビデオを作り出す (下の写真)。筆者が撮影したビデオと、Clipsが撮影したものを比べると、Clipsの画面は生き生きしているシーンが多い。素人写真よりもテクニックは上で、プロの技を伝授された面影を感じる。人間の仕事は、Clipsが撮影したビデオの中から、気に入ったシーンをより分ける作業となる。

出典: VentureClef

インスタ映えする写真はAIが撮る

ただ、ClipsのAIは子供や大人やペットに反応するが、その他のオブジェクトを自動撮影することはできない。観光スポットや綺麗な洋服を撮影する仕様ではなく、AIはこれらの被写体を撮影対象とは理解していない。今すぐに、写真撮影がAIに奪われることはないが、人間の技量がまた一つAIに置き換わる方向に進んでいる。インスタ映えする写真は人間ではなくAIが撮影する時代はもう目の前だ。