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ニュース予測証券市場 (DEMO 08より)

Saturday, March 8th, 2008

カリフォルニア州パームデザートで開かれたDEMO 08には、欧米を中心に77のベンチャー企業が集い、最新のテクノロジーが実演された。ここに参加するベンチャー企業は、ユニークなアイディアで聴衆の関心を引き付けるだけでなく、いち早く流行の技術を取り入れているため、今年の技術動向を見る上で大変に参考になる。

Hubdubというベンチャー企業

アメリカ大統領選挙の年に登場したベンチャー企業に「Hubdub (ハブダブ) という会社がある。Hubdubは昨年11月にイギリス・エジンバラで起業し、現在四人で運営している典型的なガレージ企業である。今年1月にサイトを公開し、現在急速に会員数を増やしている企業である。Hubdubは証券取引所の要領で、ニュース結果予想に投資する場を提供している。

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Hubdubはサイトに様々な質問を掲載しており、これに対して会員がその将来を予想して投資する仕組みである。上記は「Who will the 2008 Democratic candidate for President be?(誰が民主党の大統領候補になるか?) という質問に対して、その投資途中経過を示している。会員は「Barak Obama」や「Hillary Clinton」などの選択肢から大統領候補者に選ばれると思われる人をクリックし、投資金額を指定するというものである。会員は入会するとH$1,000を貰え、これを元手に投資をして資産を増やしていく。また会員がこれらの質問を投稿することができる。Hubdub市場においては、オバマ株が61%と、クリントン株の39%を大きく引き離している。

Hubdubの目的

Hubdubのサイトではニュース予測だけでなく、それに関連するニュース記事を幅広く掲載している。利用者は、受動的にニュースを読むだけでなく、投資を介して積極的にニュースから情報を摂取していく。これにより訪問者数を増やし、宣伝広告から収入を得るというのがHubdubのビジネスプランである。そのため多くの人が関心を持つ質問を掲載し、その範囲は、政治、スポーツ、エンターテイメント、ビジネス、テクノロジーと幅広くカバーしている。時節柄、今はアメリカ大統領選挙の結果を占うものに人気が集まっている。

ではHubdubの予想がどれだけの確度で当たっているかを、過去の事例から見てみる。「Will Hillary Clinton cry again by March 4th? (クリントン候補は34日の投票日までに泣くか?) という質問には95%の人がNoと答え正しく予想している。一方で、「Who will win the POPULAR vote in the March 4 Democratic Texas Primary?(34日のテキサス州の予備選挙では誰が勝つか?) という質問には56%の人がObama候補と答え外れているが、会員の予測が世論調査の結果に類似しているのが興味深い。ちなみに次の山場であるペンシルバニア州の予備選挙については、65%の人がクリントン候補が勝つと見ている。

プレディクション・マーケット

Hubdubのアイディアは新しい分けではなく、プレディクション・マーケット (Prediction Market) と呼ばれ、多くの企業や研究機関でシステムが開発されている。Hundubに類似したサービスを提供しているのが「The Industry Standard」という企業である。The Industry Standardはインターネット・バブル期に発刊された雑誌の名前であるが、今ではIDGの一部門としてテクノロジーに特化したニュースサイトとして生まれ変わっている。The Industry Standardはニュースを掲載するだけでなく、ニュースの結果を予測させるサイトも併設して運用している。「Google to buy Digg?(グーグルはDiggを買収するか?) などの質問にイエスかノーで投資をする仕組みとなっている。

ヤフーは「Buzz Game」という名称で、もう少し本格的なニュース結果予測株式市場を開いている。市場はテクノロジーを中心に色々な分野に区分けされ、そこに上場されている銘柄を売買する方式である。例えば「Browser Wars(ブラウザー戦争) という市場には、Mozilla (シンボル: MOZFF)Internet Explorer (シンボル: IE) などが上場しており、実際の株と同じように売り買いをする。利用者は登録すれば仮想の$10,000を貰え、これを元手に投資をしていく。それぞれの銘柄は売買高で値がつき、今日はMOZFF$17.80で、IE$13.13である。ヤフーの目的は株価の動向を見て、テクノロジーのトレンドを予測することである。テクノロジー株式の売買を通して、市場での流行りや廃りの風説 (Buzz) を把握しようとするもので、ひいては、検索キーワードの動向を予測しようとするものである。

現実のニュース結果予測市場

HubdubThe Industry Standardやヤフーは、仮想のお金を貰って投資をするわけで、投資のリターンも仮想のお金であり、必ずしも投資のインセンティブが高いとはいえない。そこで、実際のお金を投資してニュース結果を予測するサイトに、アイルランドのダブリンを拠点とするIntrade (イントレード) がある。主なイベントの結果予測をお金を賭けて行なもので、そのプロセスは株式取引と同じように、株券を売買する。例えばオバマ候補が大統領候補になる事象の株券は$7.36ドルで、クリントン候補の株券は$2.60と値がついている。事象が成就された際には$10.00となり、その差額 (オバマ候補だと$2,64ドル) が手に入る。

これを大学の研究課題として運営しているのがアイオワ大学の「Iowa Electronics Markets」である。ここでは研究目的に学生が自分のお金を投資して資産運用している。

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上はIowa Electronics Marketsでの株価の推移を示したグラフで、黄色がオバマ株で水色がクリントン株。スーパーチューズデイを境にオバマ株が急騰し、クリントン株が大きく根を下げたが、34日のジュニア・スーパーチューズデイでゆり戻しがあったことを示している。現在Hubdubはシンプルな機能を提供しているが、その背後には重要な技術課題が潜んでおり、これからどこまで成長するか気になる企業である。

ソーシャル・コミュニケーター (DEMO 08より)

Friday, February 29th, 2008

今年は、ユニファイド・コミュニケーションズ (Unified Communications) が加速しそうな年である。DEMO 08では、ノキア (Nokia) の拠点であるフィンランドから、Movial (モービアル) という会社が、ユニファイド・コミュニケーションズの最新作を発表した。

Social Communicatorという製品

ユニファイド・コミュニケーションズとは、電話、電子メール、IM、電話会議、ビデオ会議、プレゼンスなど、一連のコミュニケーション機能を統合して、ダッシュボード上で提供するものである。通信機能を統合すれば使い勝手が良くなるだけでなく、企業内でコラボレーションが進み、生産性が向上することが期待されている。またソーシャル・ネットワークのように、社員間でのネットワーク効果で、新製品を生み出したり、開発期間を短縮するなどの効果を狙っている。

g023_movial_a.jpg左はMovialがデモを行った「Social Communicator(ソーシャル・コミュニケーター) という製品で、このダッシュボードに電話からビデオ会議まで、様々な通信機能が統合されている。(出展: Movial)

Movialが他社と異なるのは、ユニファイド・コミュニケーションズにソーシャル機能を取り入れていることである。ワンクリックで受信したニュースを共有したり、ワンクリックでユーチューブ・ビデオを共有できることである。更に、Social Communicatorはパソコンだけでなく、携帯電話も稼動し、携帯電話がユニファイド・コミュニケーションズのダッシュボードになる点がこれからのトレンドを示唆している。

携帯電話でのWeb 2.0

今回のDEMO 08では実演しなかったが、Movialは携帯電話Linux (Mobile Linux) 向けに、インターネット・アプリケーション・スイートを開発している会社で、「Internet Experience Suite (IXS)」という名称で出荷している。

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IXSには、ブラウザー、メディア・プレーヤーとこのSocial Communicatorが含まれており、携帯電話メーカーは、IXSを自社向けにカストマイズして使う。(上の写真は携帯電話への実装事例。) つまり、携帯電話の性能がパソコンに近づくにつれて、デスクトップ上での処理が携帯電話にオフロードされていく。IXSFlashAjaxをサポートし、次世代の携帯電話では操作性が大幅に向上する。Social Communicatorをデスクトップと携帯電話の両方で使えることにより、社外からは勿論、社内で席を外していても携帯電話経由で即座にテレビ会議ができることになる。Social Communicatorはノキア本社の隣町で生まれた製品であるが、日本における成長が期待される製品である。

パソコン組み込み型携帯電話 (DEMO 08より)

Friday, February 29th, 2008

DEMO 08で一番目を引いたデモがRibbit (リビット) の「Amphibian(アンフィビアン) という製品である。この製品を一言で表現するなら、デスクトップへの組み込み型携帯電話である。文字通り、携帯電話機能をソフトウェアでエミュレーションし、ウインドウズで稼動させたもので、携帯電話にかかってきた通話をパソコンで受信でき、同時に、パソコンから携帯電話の発信ができる、というものである。

Amphibianの機能概要

Amphibianとは両生類という意味で、携帯電話がハードウェアとソフトウェアの二つの形態で存在することを、この名称は示唆している。

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これはAmphibianのスクリーン・ショットで、左上のアイコンは、着信電話のボイスメッセージを示している。アイコンをクリックすればメッセージを聞くことができるだけでなく、メッセージをテキストに変換した画面 (中央) が表示される。これは音声をテキスト変換したもので、Amphibianは過去のボイスメッセージを記録しており、利用者は電子メールを見るように、過去のボイス・メッセージにアクセスしたり、キーワードでメッセージを検索することができる (出展: Ribbit)

また、電話の着信においては「Call ID」機能で、電話発信者の氏名、電話番号、メールアドレスなど個人情報を表示するだけでなく、発信者が掲載しているブログ、ビデオ、写真など、また、加入しているソーシャル・ネットワークの情報など幅広く表示する。コールセンターのオペレーターのように、電話の受信者は発信者のプロフィールを把握しながら会話できる。また、電話の発信においては、デスクトップから携帯電話、及び、Skypeなどのソフトフォンを発信できる。

電話アプリケーション

Amphibianの特徴は、このプラットフォームのAPIを公開しており、開発者はAmphibian上で自由にアプリケーションを開発できることである。

g022_ribbit_b.jpg左の写真 (出展: Ribbit) Adobe AIRで開発されたAmphibian上のアプリケーション「AIR iPhone」である。AIR iPhoneは実物のApple iPhoneと外見がそっくりなだけでなく、iPhoneと同じ機能を搭載している。AIR iPhoneを横向きにすれば、画面も自動的に横向きになる。これを、デスクトップ上に貼り付けたり、Facebook上で電話機能として使うことができる。Amphibianのプラットフォームを公開することで、コミュニティーの頭脳を結集して、面白い電話アプリケーションが登場することが期待されている。携帯先進国である日本で、ハードウェアだけでなく、Amphibian上にソフトウェアとしての携帯文化が開花するのか、様々な可能性を秘めたウェブ・アプリケーションである。

インテリジェントなテレビ会議 (DEMO 08より)

Saturday, February 23rd, 2008

インターネットとテレビ会議は相性が悪い。究極の分散システムであるインターネットを利用して、中央集権型システムであるテレビ会議を構築するためには、専用回線や特殊システムを導入する必要があり、その費用が嵩み普及が進んでいないのが現状である。更に、テレビ会議システムが高画質 (High Definition) に移るにつれて、その導入がますます難しくなってきた。ここに新しいビジネス・チャンスがあり、低価格で高画質なテレビ会議システムを提供するベンチャー企業が登場した。

Vidyoというベンチャー企業

Vidyo (ビディオ) は一般に普及しているブロードバンドを使って高品質なテレビ会議システムを低価格で提供しているベンチャー企業である。DEMO 08では、会場から三ヶ所を結んだテレビ会議の実演が行われた。

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上記がその三ヶ所で、上から時計回りに、専用テレビ会議室、オフィスのPCDEMO会場のPCからの画像である。(出展: DEMO)

それぞれのサイトは回線速度やプロセッサーの処理能力が異なるが、Vidyoテレビ会議システムは、それぞれが処理できるだけのビデオ画像を送信する。つまり、専用テレビ会議室では高画質で、また、DEMO会場のPCでは低画質なビデオ画像を、送信エラーなく見ることができる。また、PCモニターでビデオ・ウインドウの大きさを小さくすれば、それに併せて送信画像のデータ量を低下させるなど、ダイナミックな制御を行っている。こうすることで、限られたバンド幅で滑らかな動きの画像をみることができる。

Vidyoを支えている技術

現在、一番普及しているビデオ圧縮技術はH.264/AVC (Advanced Video Coding)である。ユーチューブは投稿されたビデオを全てH.264/AVCで圧縮するなど、インターネット・ビデオサイトで幅広く採用されている。しかしH.264/AVCは通信エラーに対してセンシティブで、ビットストリームの欠落がそのまま画質に跳ね返り、ぎこちない画像になる。そのためVidyoH.264の拡張機能であるH.264/SVC (Scalable Video Coding) を採用している。

H.264/SVCは基本ビットストリームのほかにサブビットストリームを持っており、通信条件に併せてビデオの画質を変えることができる。この役割を担っているのがVidyoRouterで、このルーターは端末の回線速度や性能、また、ウインドウの大きさを把握し、それに最適なビットストリームを配信する。ブースではマーケティング副社長のMarty Hollander (マーティ・ホランダー) から、「Vidyoはこの技術をシスコにライセンスしており、Vidyo技術はCisco Unified Communications製品に組み込まれ出荷されている」と説明を受けた。Vidyoとは少し可笑しな名前であるが、名前とは裏腹に、コーディック最新規格を先行して取り入れて、画期的な製品を開発している。

ビデオ内視聴率の計測 (DEMO 08より)

Saturday, February 23rd, 2008

今年のDEMOでは、インターネット・ビデオの「視聴率」を測定するサービスが色々と登場してきたが、その中でひときわ目を引いたのがVisible Measures (ビジブル・メジャーズ) である。

Visible Measuresのアプローチ

Visible Measuresは、特定のビデオ・クリップの視聴率を、時間とともに計測する。ビデオ・クリップを構成するそれぞれの画面が、どれだけ視聴者を引き付けるのか、ミクロな視聴率を計測する。

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左に示されたビデオ・クリップをクリックするとビデオが開始し、視聴回数が右のグラフ(青色の実線)で示される。赤色の縦棒が表示されているビデオ画面の位置を示す。赤色の実線は最後までビデオを見た人の数を示す。このグラフが意味することは、ビデオ開始直後に視聴者を引き付けるシーンがあること。更に、このビデオは視聴者を飽きさせることなく、最後まで高い視聴率を維持している。(出展: Visible Measures)

Visible Measuresの利用目的

Visible Measuresはビデオのホスティング・サイトや宣伝広告企業によって活用される。ホスティング・サイトでは、サイトへのトラフィックを増やすために、魅力的なビデオを掲載して、如何に人目を引くかを分析する。掲載したビデオが視聴者からどう評価されているかを測定するためにこのサービスを活用する。宣伝広告企業としてはVisible Measuresを使って、誰が何処でビデオを見ているのかを把握する。つまり、対象のビデオはどの年齢層で好評なのか、また、どの国や都市で見られているかなど、ビデオの視聴者情報を幅広く収集できる。

DEMOの会場で、開発部門の副社長であるKyle Mashima (カイル・マシマ) に話を聞いた。Mashimaは、Visible Measuresの使用目的について、「プロモーション・ビデオの人気度をビデオ・フレームごとに把握し、宣伝効果を実測するために使用する」と熱心に説明してくれた。インターネットはテレビと異なり、「視聴者の反応が敏感であるため、視聴者を如何に最後までビデオ広告に繋ぎ留めるかが鍵になる」と解説してくれた。MashimaはブースのPCで、DEMO08参加企業のビデオ視聴率解析デモを行い、どの参加企業が人気を集めているのか、グラフで紹介してくれた。

Visible Measuresの仕組み

Mashimaによると、ビデオ視聴率を測定するために、「ビデオ・プレーヤーに軽量のプラグインを搭載し、視聴者が行うプレーやリワインドの操作を計測する」とのこと。「人気のある場面ではリワインドされ繰り返し見られ、興味のない場面では、視聴者は別のビデオに移る」ため、視聴者数の山や谷ができるとのこと。従来の測定方式であるページビューの計測では、ページ閲覧回数は分かっても、ビデオ視聴者数は正確に把握できない。Visible Measuresはこのギャップに目をつけて、プライバシーに配慮しながらサービスを提供している。YouTube時代に必須のツールである。