Archive for the ‘web 3.0’ Category

携帯電話で渋滞情報センシング

Saturday, November 14th, 2009

Tim O’Reillyは、Web 2.0の次はWeb2 (ウェブ・スクエアード) に進化すると述べ、Web 2.0 Summit 09において、次期ウェブ技術のコンセプトを紹介した。このレポートでは、登場し始めたウェブ・スクエアードの事例を紹介する。

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Mobile Millenniumプロジェクト

カリフォルニア大学バークレー校のCalifornia Center for Innovative Transportationは、携帯電話を自動車運行状況のセンサーとして利用し、交通渋滞をリアルタイムでモニターするシステムの研究を行なっている。この研究は08年6月に始まり、20台の自動車を使ったプロトタイプが構築された。更に、08年10月には、100台の自動車を使った大規模な展開が行なわれ、これをMobile Millennium (モバイル・ミレニアム) と呼んでいる。

Mobile Millenniumは、自動車のドライバーが持っている、GPS搭載のノキア製携帯電話を利用して、自動車の位置やスピードをリアルタイムに収集して、渋滞情報をリアルタイムに監視するものである。(上の写真、道路の渋滞情報がセンターに表示されている様子、出展:California Center for Innovative Transportation) そして、これらの渋滞情報は、リアルタイムでドライバーの携帯電話に送信される。運転しながらリアルタイムで道路渋滞情報を見ることができる。また、Mobile Millenniumでは、今後は、渋滞情報を解析して、渋滞が後どのくらいすると緩和するのか、また、いつから渋滞が始まるのかなどの、予想情報を併せて携帯電話に送信する計画である。

システム概要

Mobile Millenniumは、自動車のドライバーが持っている携帯電話のGPS位置情報から、自動車が特定のポイントを通過した際に、走行速度情報をサーバに送信する。(下のグラフィックス、路面上に立っている棒が走行速度を表している、出展:California Center for Innovative Transportation)

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サーバ側では、フィールドから受信するデータを統合して、道路の渋滞情報を生成する。通信回線の制約から、データ送信量を抑えるため、携帯電話からのデータ送信のポイントは必要最低限に設定されている。現在は、サンフランシスコ地区とニューヨークでシステムが構築され、ボランティアーによる試験が続いている。サンフランシスコ地区においては、プロジェクト対象道路は、ハイウェーであるが、将来は主要一般道路まで拡大するとしている。

携帯電話向けGoogle Maps

グーグルはGoogle Mapsで、ハイウェーの渋滞情報を提供している。地図上で「Traffic」ボタンをクリックすると、ハイウェーでの自動車の走行速度を色分けして表示する。これをスマートフォンで使うと、即席のカーナビとなるのだが、問題も少なくなかった。Google Mapsで車が流れていると表示されているにも係わらず、実際に走ってみると、渋滞であったケースが少なくなかった。

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これに対してグーグルは、リアルタイムの渋滞情報サービスを開始した。スマートフォンのGoogle Mapsを起動すると、デスクトップでお馴染みの地図画面が登場する。ここで「My Location」ボタンをクリックすると、地図上に現在地を青色の円で表示する。GPSやWiFiアクセスポイントなどを利用して、位置を表示する。そして、自動車に乗るときにGoogle Mapsを起動すると、GPS搭載のスマートフォンが、位置と走行速度情報をセンシングして、その情報をグーグルに送信する。グーグルは、これらの情報を集約して、リアルタイム渋滞情報として、Google Maps上に表示する。(上のスクリーンショット、出展:Google)

グーグルは、これをCrowdsourcing (クラウド・ソーシング) と呼び、利用者との共同作業で、リアルタイム渋滞情報を構築できるとしている。グーグルは、このCrowdsourcingへの参加者が増えることで、幅広い地域をカバーできるとして、参加を呼びかけている。現在、T-Mobile myTouch 3GやPalm Preには、Google Mapsがプレ・インストールされているが、その他携帯電話は、無料でソフトウェアをダウンロードできる。グーグルは、利用者のプライバシー保護のために、匿名でデータを収集し、利用者が目的地に到着すれば、データを消去するとしている。

考察

Mobile Millenniumは、大学研究所のプロジェクトとして、GPS搭載の携帯電話を活用して、リアルタイムで渋滞情報を表示するシステムの開発を進めてきた。Google Mapsでは、これを商用ベースで展開している。両者に共通していることは、Crowdsourcingで、利用者の携帯電話がセンサーとなり、リアルタイムで位置と速度情報を収集する。これがウェブ・スクエアードで定義している、センサーによるCollective Intelligenceである。人間に代わり、マシンがデータを収集して、人間に役に立つ情報を構成する。

これに対して、既存の道路渋滞情報は、路面に設置されたセンサーや自動車に搭載されたトランスポンダーなどから収集している。この方式は、確実に自動車の走行状態をモニターできるが、センサーを道路や自動車に設置・運用するために、多額の費用が発生する。これに対して、携帯電話のGPSを活用する方式では、導入費用が安い反面、カバーできるエリアが限られている。しかし、ここにきてスマートフォンの爆発的な普及で、センサーがカバーするエリアも飛躍的に広がりつつある。ウェブ・スクエアードの定義の通り、スマートフォンで集合知が形成される土台が整いつつある。モバイル版Web 2.0が現実のものとなってきた。

ウェブ・スクエアード

Saturday, November 7th, 2009

毎年サンフランシスコにおいて、ウェブ技術の最新動向を議論するカンファレンスである、Web 2.0 Summitが開催される。今年も、ウェブ技術の第一人者が招待され、最新技術や将来動向が議論された。カンファレンスでの議論の模様はウェブサイト(http://www.web2summit.com/web2009/)に掲載されているビデオで見ることができ、ここから今年のウェブ技術動向を考察する。

Web 2.0からWeb2に進化

今年のウェブ技術動向のキーワードは、Web2 (ウェブ・スクエアード) である。Web 2.0 Summitに先立ち、Web 2.0という言葉の命名者であるTim O’Reillyは、「Web Squared: Web 2.0 Five Years On」 (ウェブ・スクエアード:Web 2.0の五年間を振り返り) というタイトルの白書を公開した。この白書の中で、ウェブ・スクエアードという新しいコンセプトを紹介している。昨年のWeb 2.0 Summitは、「Web Meets World」(ウェブが実社会と交わる) というテーマで、ウェブ技術が議論された。今年は、これをもう一歩進めて、Web 2.0 + World をウェブ・スクエアードと命名した。ウェブ・スクエアードとは、ウェブが実社会と交わる技術と定義され、デスクトップだけでなくスマートフォンを含む、日々の生活における拡大ウェブ技術を示している。ウェブ技術はWeb 2.0から、Web 3.0ではなく、Web2に進化するとしている。

Web 2.0を振り返ると

白書では、五年前にO’Reillyが命名したWeb 2.0という現象を振り返り、それを検証するとともに、ウェブ・スクエアードにどのように展開されるかを解説している。O’Reillyは、Web 2.0の“2.0”はソフトウェアの版数ではなく、ドットコム・バブル崩壊後に来る“次”のウェブという意味であると、その由来を解説している。更に、Web 2.0の本質はCollective Intelligence (集合知) であると述べている。Collective Intelligenceとは、利用者がウェブから情報を得るだけでなく、ウィキペディアのように、利用者がウェブに知識をインプットし、コミュニティーが新しい価値を創造する動きである。

これに対して、ウェブ・スクエアードでは、人間が知識をインプットするだけではなく、センサーが計測した様々な情報をシステムにインプットする。センサー・ネットワークから構成されるCollective Intelligenceであるとしている。白書ではこのように、ウェブ技術は、人間だけでなく、様々な機器と連携することで、進化するとしている。そして、このトレンドの切欠が、様々なセンサーを搭載しているスマートフォンであるとしている。スマートフォンの爆発的な普及が、ウェブ・スクエアードという現象を引き起こしたことになる。

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ウェブ・スクエアードの事例

白書では、登場し始めたウェブ・スクエアードの事例を、紹介している。その代表が、「Google Mobile App」 (上のグラフィックス、出展:Apple) という、iPhone向けのアプリケーションである。このアプリケーションは、キーワードをタイプする代わりに、音声入力でグーグル検索を行う機能を提供する。ただこれだけの機能であるが、これがウェブ・スクエアードの事例である。スマートフォンでの音声認識技術は、iPhoneではなく、サーバ側に搭載されている。音声認識の対象は検索キーワードで、頻繁に使われる言葉を中心に、ボキャブラリーが増える。つまり、頻繁に使われることで、賢くなっていく。センサー・ネットワークからインプットされた情報で、インテリジェンスが増していくことを示している。アプリケーションを起動して、「Pizza」 (ピッツァ) と質問すると、今いる近辺のピザ・レストランを検索結果に表示する。ピサの斜塔のPisa (ピザ) ではなく、食べ物のピッツァで、しかも現在地に一番近いレストランをトップに表示する。また、前述の通り、音声認識はグーグル側のサーバで行い、クラウド・コンピューティングが、スマートフォンまで降りてきた事例でもある。このように、iPhoneという実生活で一番身近にあるセンサーを利用したシステムがウェブ・スクエアードであり、この形態が社会に広がっている。

情報の影

白書では、ウェブ・スクエアードのひとつの側面が、Information Shadow (情報の影) であるとしている。情報の影とは、リアルの社会のオブジェクトが、バーチャルな社会に影をつくるという意味である。そして、バーチャルな世界の影を、我々は、センサーを通して見ることができる。その実例が、Layar (レイヤー) によるAugmented Reality (拡張現実) である。Layarはオランダの企業で、スマートフォン向けに、同名のLayarという拡張現実のアプリケーションを開発している。下の写真 (出展:Layar) がその事例で、スマートフォンのカメラを通して街の景色を見ると、そこに主要な建造物の説明が付加されるというものである。付加される説明は、銀行名やATMがある場所の表示、また、アパートなど不動産の空室情報である。このように、スマートフォントいうセンサーを通して、建造物というオブジェクトを見ると、その内容説明という影を、バーチャルな世界に投影してくれる。これがウェブ・スクエアードの一面であるとしている。

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考察

本日、Verizonはアンドロイド搭載スマートフォンであるDroid (ドロイド) の販売を開始した。アメリカで最大の携帯電話会社が、アンドロイドをサポートすることで、iPhoneとの競合が鮮明になった。日本は携帯電話先進国であるが、アメリカではスマートフォンが、予想以上のスピードで市場に入ってきた。このような背景で、ウェブ・スクエアードが登場した。ウェブ・スクエアードの意味を、敢えて一言で表現すれば、スマートフォンでのウェブ技術ということになる。Web 2.0はデスクトップでのウェブ技術であったが、ウェブ・スクエアードは、モバイル版Web 2.0と呼んでも大きく外れてはいない。Web 2.0は人々の暮らしを劇的に変えたが、ビジネスとしての成功事例は多くは無かった。これに対して、ウェブ・スクエアードは、如何に社会生活に貢献できるか、また、事業として成り立つかに、大きな期待が集まっている。