Archive for the ‘人工知能’ Category

自律走行型オフィス警備ロボットが登場、人間社会と共存できる優しいデザインが特徴

Friday, March 3rd, 2017

シリコンバレーでオフィス警備ロボットが登場した。ロボットは多種類のセンサーとAIを搭載し自動走行する。施設内で異常を検知するとオペレータに通知する。不審者を見つけると身分証明書の提示を求める。警備を担うロボットであるが威圧感は無く、形状は流線型で親しみやすいデザインとなっている。自動運転車で培った技術がロボットに生かされている。

出典: Cobalt Robotics

屋内警備を担うセキュリティロボット

このロボットはシリコンバレーに拠点を置くCobalt Roboticsにより開発された。ロボットは「Cobalt」という名前で、屋内警備を担うセキュリティロボットとして登場した (上の写真)。ロボットは多種類のセンサーを搭載し自律的に移動する。ここにはComputer VisionやAIなど先進技術が使われている。プロモーションビデオをみるとCobaltはロボットというより家電に近いイメージだ。

施設を自動走行し異常を検知

ロボットは事前に設定されたルートを巡回して警備する。また、ロボットがランダムに施設内を移動することもできる。ロボットは経路上で人物や物を認識し、問題と思われるイベントを検知しこれを管理室に通報する。例えば、ドアがロックされないで開けられた状態であれば、これを異常事態と認識しオペレータ(Human Pilotと呼ばれる)に対処を促す。

環境をモニタリング

ロボットはオフィス環境をモニタリングし、水漏れなどの異常を検知することもできる。また、オフィスに不審物が置かれていれば管理室にアラートを上げる。備品管理機能があり、倉庫での棚卸や資材管理にも利用できる。更に、オフィス内のWiFiシグナル強度をモニターする機能があり、不正アクセスポイントを検知できる。

社員とのインターフェイス

ロボットは人間を認識でき、オフィス環境で共存できることを設計思想とする。ロボットは正面にディスプレイを搭載しており、社員が直接オペレータとビデオを介して話すことができる。また、非常時にはオペレータがロボットを遠隔で制御し社員を安全な場所に誘導する。更に、ロボットは定時以降オフィスに残っている人に対しては身分証明書の提示を求める。社員は身分証明書をロボットのリーダーにかざし滞在許可を受ける (下の写真)。

出典: Cobalt Robotics

多種類のセンサーを搭載

ロボットは多種類のセンサーを搭載している。光学カメラは360度をカバーし全方向を見ることができる。暗闇での警備のために赤外線カメラを搭載している。Point Cloud Cameraで周囲のオブジェクトを3Dで把握する。Lidarと呼ばれるレーザースキャナーで周囲のオブジェクトを3Dで把握する。遠距離まで届くRFIDリーダーでオフィス備品などに張り付けられているタグを読み取り資材を管理する。

自動運転車で培われたAI技法を採用

ロボットはAIやMachine Learningの手法でセンサーが読み込んだデータを解析する。周囲のオブジェクトを判別し、安全に走行できる経路を計算し、ロボットが自律的に走行する。また、Computer Visionで水漏れなどの異常を検知する。更に、ロボットはマッピング技術を実装しており、走行時にLidarで周囲のオブジェクトをスキャンし高精度3Dマップを生成する。生成された3Dマップを頼りにロボットは自動走行する。多くの技術は自動運転車で開発され、Cobalt Roboticsはこの成果をロボットに応用している。

家電に近いロボット

Cobaltは警備ロボットであるが外観は人間に親しまれる形状となっている (下の写真)。これは著名デザイナーYves Béharによりデザインされ、表面は金属ではなく柔らかい素材が使われている。また、Cobaltはヒューマノイドではなく、下に広がる円筒形のデザインとなっている。ロボットというと鉄腕アトムのようなヒューマノイドを思い浮かべるが、Cobaltは家電とか家具に近いイメージだ。自動走行する家電と表現するほうが実態に合っている。

出典: Cobalt Robotics

若い世代が考えるロボット

Cobalt RoboticsはErik SchluntzとTravis Deyleにより創設された。Schluntzはハーバード大学在学中にインターンとしてSpaceXとGoogle Xで製品開発に従事した。Deyleはジョージア工科大学でロボット研究を専攻し、Google XでSmart Contact Lensの開発に携わった。二人とも大学を卒業して間もなくCobalt Roboticsを創設した。若い世代がロボットを開発するとCobaltのように優しいイメージになる。

警備ロボットは既に社会で活躍

実は警備ロボットは既にアメリカ社会で活躍している。シリコンバレーに拠点を置くベンチャー企業Knightscopeはセキュリティロボットを開発している。このロボットは「K5」と呼ばれ、多種類のセンサーを搭載し屋外の警備で使われている。Microsoftがキャンパス警備でK5を採用したことで話題を集めた。Knightscopeの敷地内をK5がデモを兼ねて警備にあたっている(下の写真)。

出典: VentureClef

屋内向け警備ロボットを投入

Knightscopeは小型ロボット「K3」を投入した。K3は建物内部を警備するためのロボットで、K5に比べて一回り小さな形状となっている。サンフランシスコで開催されたセキュリティカンファレンス「RSA Conference」でK3が紹介された (下の写真)。人間に代わりオフィスを警備するロボットで、高度なセンサーとAIを搭載し自律的に移動する。K3は形状が小型化しただけでなく、対人関係を考慮したキュートなデザインとなっている。

出典: VentureClef

ロボットは商用施設に向かう

いまロボットは、オフィス、銀行、病院、高齢者介護施設、ホテル、小売店舗など商用施設で受け入れられている。警備機能だけでなく、ここでは既に多種類のロボットが稼働し企業の効率化を支えている。これら企業環境はロボットにとって自動走行しやすい場所である。企業のオフィスを例にとると、レイアウトが固定で通路が明確で、そこで働く社員は社会的な行動を取る。ここがロボット適用のスイートスポットで事業が急速に拡大している。

最後のフロンティアに向かっての準備

反対にロボット最後の市場は家庭環境といわれている。家庭のフロアには玩具や衣類が散在し、子供やペットが走り回る。WiFi通信は不安定で通信は頻繁に途切れる。AI家電のAmazon EchoやGoogle Homeは対話するロボットして位置づけられるが、移動する機能はない。一般家庭が最後のフロンティアで、商業施設向けロボットはその準備段階として重要な意味を持つ。

脳科学でサイバーセキュリティを強化、Googleは研究成果をChromeに応用

Friday, February 24th, 2017

企業や政府機関はサイバー攻撃に対し多大なコストと時間をかけてセキュリティシステムを構築するが、社員や職員は不審な添付ファイルを開きマルウェアが侵入する。セキュリティ教育で怪しいリンクを不用意にクリックしないよう指導するがフィッシング被害は後を絶たない。なぜ人間は簡単なトリックに騙されるのか、ニューロサイエンスの観点から研究が始まった。

出典: WikiLeaks

クリントン陣営へのサイバー攻撃

トランプ大統領が就任して以来、ロシア政府との関係が連日報道される。ロシア政府が大統領選挙を操作したとの疑惑で事実解明は進んでいない。一方、US Intelligence Community (米国諜報機関連合体) は大統領選挙でロシアがクリントン候補の活動を妨害したと結論付けている。米国諜報機関によるとクレムリンと関係のある人物がDNC (民主党全国委員会) のメールシステムに侵入し、それをWikiLeaksに提供したとしている (上の写真、窃取されたメールを閲覧できる)。

サイバー攻撃で大統領選が左右された

WikiLeaksに公表されたのはクリントン陣営会長John Podestaのメールで2万ページに及ぶ。この中にはクリントン候補がウォールストリートで講演した内容も含まれ、これらが公開されるとで選挙戦で大きなダメージを受けたとされる。クリントン候補の敗戦理由の一つがWikiLeaksで公開されたメールといわれている。

侵入の手口はシンプル

DNCのメールに侵入した方法はSpear Phishingといわれている。これはPhishingの常套手段で、信頼できる発信人を装い受信者の機密情報を盗む手法である。このケースではPodestaのGmailが攻撃された。Bitlyで短縮されたURLをクリックすると、Gmailログインページが表示され、IDとパスワードの入力を求められた。Podestaは怪しいと感じIT部門に確認したが、結局、このトリックに騙された。この事件は人間の脳の構造が関与しているといわれる。

脳科学とセキュリティに関する論文

脳科学を活用したセキュリティ技術研究が進んでいる。Brigham Young UniversityのAnthony Vanceらは脳科学とセキュリティに関する論文「More Harm Than Good? How Messages That Interrupt Can Make Us Vulnerable」を発表した。この論文は人間の脳はセキュリティメッセージにどう反応するかをfMRI (下の写真) を使って解析した。

出典: Jenkins et al.

マルチタスクでの試験

この研究は人間がマルチタスクを実行 (これをDual-Task Interfaceと呼ぶ) するときに着目し、脳の機能をfMRIで観察した。マルチタスクとは二つの作業を同時にこなすことで、ここでは作業中にセキュリティメッセージを読むタスクが課された。具体的には、被験者に7ケタの数字を覚えることを求め、同時に、セキュリティメッセージに正しく対応できるかが試験された。

マルチタスクでは血流が悪くなる

この時、脳内の血流をfMRIで計測した。対象はMedial Temporal Lobe (MTL) といわれる部位で、ここは長期記憶を司る部分とされる。結果は、被験者がマルチタスクの状態でセキュリティメッセージを読むとMTLの血流が少なくなっているのが観察された。このことはマルチタスクがMTLの活動を低下させ、長期記憶にアクセスしてセキュリティメッセージに反応する機能が著しく制限を受けることを意味する。(下の写真は普通の状態でセキュリティメッセージを読んでいる状態。マルチタスクの時と比べ、オレンジ色の分部で血流が増えた。)

出典: Jenkins et al.

Neurosecurityという研究

これは「Neurosecurity」と呼ばれる研究で、脳科学をセキュリティに応用し製品のインターフェイスを改良することを目指す。論文はセキュリティメッセージを表示するインターフェイスを改良する必要があると提言している。具体的には、利用者が作業を終えたタイムングを見計らってセキュリティメッセージを表示べきだとしている。

研究成果をGoogle Chromeに適用

Brigham Young UniversityはGoogleと共同で、研究結果をブラウザー「Chrome」に応用する試みを進めている。Chromeは「Chrome Cleanup Tool」というセキュリティツールを提供している。これをブラウザーにインストールしておくと、ブラウザーが問題を検知するとメッセージを表示し (下の写真、右上の分部)、利用者にツールを起動するよう促す。このツールを起動することでブラウザーに侵入したマルウェアなどを除去できる。

利用者はメッセージを無視する

便利なツールであるが、メッセージを表示しても利用者がアクションを取らないという問題を抱えている。実際に856人の被験者 (Amazon Mechanical Turkを利用) を使って試験が行われた。この結果、利用者がビデオをみている時にこのメッセージを出すと (下の写真)、79%のケースで無視された。つまり、マルチタスクの状態では利用者はセキュリティメッセージに反応しないことが分かった。このため、セキュリティメッセージはビデオが終わった後に表示するようGoogle Chromeのインターフェイスが改良された。

出典: Jenkins et al.

Chromeインターフェイス改善

この他にも、利用者がタイプしている時や、情報を送信している時など、マルチタスク実行時には80%のケースでメッセージが無視されることも分かった。一方、ビデオを見終わったタイミングでメッセージを表示すると無視されるケースが44%に下がる。更に、ウェブページがロードされるのを待っている間にメッセージを表示すると無視されるケースが22%と大幅に低下する。これらの研究結果がGoogle Chromeのインターフェイス改善に生かされている。

脳科学に沿ったセキュリティデザイン

企業や政府でPhishing被害が後を絶たないが、これは人間の脳が持っている基本的な属性が大きく関与している。本人の不注意という側面の他に、ブラウザーやアプリのインターフェイスが悪いことが重要な要因となる。忙しい時にメッセージが表示されると、注意が散漫になり、操作を誤ることは経験的に感じている。Brigham Young Universityはそれを定量的に証明し、Googleはこの成果を製品開発に活用している。脳科学に沿ったセキュリティデザインに注目が集まっている。

Googleは駐車場の込み具合をAIで予測する技術を開発、センサーは不要でアルゴリズムが正確に推定

Friday, February 3rd, 2017

駐車場管理はInternet of Thingsの得意分野で、設置したセンサーがクルマの有無を捉え混雑状況を把握する。Googleのアプローチはソフトウェアで、クルマの流れをMachine Learningで解析し混雑状況を正確に推定する。駐車場にセンサーを設置することなく、アルゴリズムのパワーで施設を管理する。

出典: VentureClef

駐車場の混雑情報を表示

駐車場の混雑状態を表示するサービスが今月から始まった。Google Mapsで目的地までの道順を検索すると、駐車場の込み具合も表示される (上の写真、最下段の分部)。例えば、Mountain View市街に向かうとき、駐車場の込み具合は「Medium」となっている (上の写真左側)。これは「駐車場を探すのは難しくない」という意味で、時間通りに出発できる。込み具合に応じて出発時間を調整することができる。

駐車場が無ければ電車で移動

一方、サンフランシスコのカンファレンス会場への道順を検索すると、駐車場は「Limited」と表示される (上の写真右側)。これは「駐車場は限られている」という意味で、駐車場を探すために時間がかかると注意を促している。駐車が難しいのであれば電車で行くという選択肢も浮上する。事実、Googleによるとこのサービスを始めると、電車で移動するルートの検索件数が急増したとしている。

混雑状況を把握する仕組み

Googleは新サービスの仕組みを「Using Machine Learning to predict parking difficulty」として公表した。これによると、駐車場空きスペースを把握するために、クラウドソーシングとMachine Learningという技法を使っている。クラウドソーシングとはユーザデータを集約して利用することを示す。このケースではGoogle Mapsユーザの位置情報を集約して利用する。Google Mapsユーザに「駐車場を探すまでどのくらいかかりましたか?」という質問を送り、その回答を集約し、駐車場を探す難易度を算定した。Googleはこの手法で信頼度の高いGround Truth (基準データ) を収集した。

店舗やレストランの混雑状況

Googleは早くから利用を許諾したユーザの位置データを使ったサービスを展開している。その代表がGoogle Mapsで表示されるLive Traffic (渋滞情報) でクルマの流れをリアルタイムで表示する。また店舗やレストランのPopular Time (混雑情報) やVisit Duration (滞在時間) を提供している。便利なツールで生活の一部として利用されている。

クラウドソーシングの限界

しかしこの手法だけでは駐車場の込み具合を正確に推定することはできない。クルマを駐車する場合はパターンの数が多く、これらの要因も考慮する必要がある。例えば、クルマが私有地に駐車すると、アルゴリズムは空きスペースがあると誤認する。また、利用者がタクシーやバスで移動したケースも、アルゴリズムは駐車スペースがあると誤認する。駐車スペースを判定するためにはクラウドソーシングの手法では限界がある。

出典: VentureClef

クルマの移動パターンと駐車場の有無

このためクルマがどんなパターンで移動すると駐車場が無いことを示すのか、その特徴量を見つけることがカギとなる。昼食時間にクルマが街中を周回する動きをすると (下の写真)、これは駐車場が無いためと判断する。一方、利用者が目的地に到着し、そのまま施設に入った場合は駐車場があったと判断する。このような特徴量を把握してアルゴリズムに反映した。

出典: Google

20のモデルを生成

この他に目的地に特有な条件や駐車場の位置に依存した要因も考慮する必要がある。また、駐車する時間や、駐車する日に依存する条件なども取り入れる。更に、過去の統計情報も利用された。最終的には20のモデルが作られ、これを使ってアルゴリズムが教育された。

Logistic Regressionという手法

前述の通り、このモデルの解析ではMachine Learningが使われた。Machine Learningには様々な手法があるが、その中でもLogistic Regressionという技法が使われた。Logistic Regressionとは統計学の代表的な技法で、変数の間の関係を推定する。アルゴリズムを教育することで、ある変数を入力すると、その結果を推定することができる。つまり、Logistic Regressionはある事象に関する結果を予想する。ここではドライバーの運転データを入力すると、駐車場を探すのが容易であったか、困難であったかを推定する。アルゴリズムは容易か困難かの二つの値を出力し、これはBinary Logistic Modelと呼ばれる。

Deep LearningではなくMachine Learningを採用

Deep Learningで世界をリードするGoogleであるが、敢てMachine Learningの技法を使ったことは興味深い。具体的には、Neural Network (人間の脳を模したネットワーク) ではなくLogistic Regression (統計手法) が使われた。Googleはこの理由として、「Logistic Regressionは技術が確立しており、挙動を理解しやすいためと」述べている。このことは、Neural Networkは中身がブラックボックスでその挙動が分かりにくいということを示す。

今年のAI技法のトレンド

Googleや他の企業でMachine Learningを見直す動きが広がっている。Neural Network全盛時代であるが、長年にわたり培われた技法を改良しうまく利用しようとする試みである。同時に、Neural Networkのブラックボックスを開き、仕組みを解明しようという研究も始まった。AIの観点からは、Machine Learningの改良とNeural Networkの解明が今年の大きなテーマになっている。

サンフランシスコ市街の駐車場

この技法でサンフランシスコ市街の駐車場の混雑を予測すると下の写真の通りとなる。市街地を区画ごとに分け駐車場の込み具合を表示している。色の濃い部分が混雑が激しいことを示す。上段は月曜日で下段は土曜日。左側は午前8時で右側は午後9時の標準的な込み具合を表示している。月曜日の朝はFinancial Districtを中心としたビジネス街の駐車場が混むが、土曜日の夜はUnion Squareを中心とした観光スポットの駐車場が込むことが分かる。

出典: Google

サンフランシスコ市の取り組み

駐車場管理や混雑情報の発信は行政の責任でもある。事実、サンフランシスコ市は駐車場にIoTを導入し、混雑度を把握する実証実験「SF Park」を進めている。サンフランシスコ市街地では路上駐車スポットにParking Meterが設置され、コインやカードやアプリで駐車料金を支払う (下の写真)。同時に、Parking Meterがセンサーとなり、クルマの有無を検知する。Parking MeterはIoT専用ネットワークSigfoxで結ばれ、駐車スポットの込み具合を集約する。このIoTシステムが完成すると、駐車場混雑情報がリアルタイムで分かることになる。

出典: San Francisco Municipal Transportation Agency

センサー対アルゴリズム

果たしてサンフランシスコ市によるIoT駐車場管理システムは正しく混雑状態を把握できるのか関心が高まっている。Parking Meterで駐車を正しくセンシングできるかという問題である。Parking Meterのある駐車スポットに違法で駐車したり、また、特別許可証を持ったクルマが駐車した場合は空きと判断される恐れがある。また、駐車時間が残っているのにクルマを出す人もあり、このケースでは駐車中と判断される可能性が高い。

スマートシティー開発のモデルケース

リアルタイムで正確な駐車場空き情報を把握するのは難しい作業となる。これに対し、Googleはセンサーは使わないでアルゴリズムが混雑状況を把握する。センサーとアルゴリズムの戦いが始まり、どちらに軍配が上がるのか地元住民だけでなく全米で関心が高まっている。GoogleやSF Parkの取り組みが米国で展開されているスマートシティー開発のモデルケースとして注目されている。

トランプ大統領は米国に製造業を呼び戻すが自動化で雇用は増えない、強い国づくりにはロボット産業再生が必須

Friday, January 27th, 2017

トランプ大統領は米国に製造業を呼び戻すことを最重点課題として掲げている。自動車メーカーに工場を米国に移転するよう強く求めている。しかし、最新工場はロボットなどで自動化が進み、従業員の数は多くない。新工場が稼働しても生み出される雇用者数は限られる。

出典: UNCTAD

本国回帰Reshoringの流れが始まる

これと並行して、工場が高度に自動化されることで、労働賃金の安い国で製造するメリットが薄らいでいる。発展途上国での生産施設を本国に戻す動きが起こっている。この流れはOff-Shoringに対し「Reshoring」と呼ばれている。トランプ大統領に要請されなくても、米国で製造するメリットが大きい時代になってきた。この潮流はトランプ政権の産業政策に大きな影響を与えることになる。

発展途上国で職が失われる

国際連合 (United Nations) の主要組織であるUNCTAD (United Nations Conference on Trade and Development) は2016年11月、Reshoringの流れを分析したレポートを発表。UNCTADは発展途上国への投資や経済支援などを目的に設立された組織で、先進国でロボットが普及すると発展途上国労働者の職が奪われると予想する。労働賃金が低いことで成立していた発展途上国の製造工場が、ロボットの普及で脅かされていると警告している。

自動車とエレクトロニクス

ロボットなどの自動化技術の進化で最も影響を受けるのは発展途上国で、今後2/3の職が失われると指摘する。まだ経済へのインパクトは小さいが、これから多くの企業が製造施設を本国に戻す流れが本格化すると予測している。産業用ロボットは主に自動車とエレクトロニクス産業で使われており、これらの製造工場が集中するメキシコとアジア諸国への影響が大きいと分析している。

中国に産業用ロボットが集中

レポートは世界の産業用ロボットの稼働状況についても分析している (先頭のグラフ)。中国は2013年から産業用ロボットを大規模に導入している。年間の購入金額は30億ドルを超え、2016年末には設置台数で日本を抜くと予想している。今までは日本が産業用ロボットの設置台数で世界をリードしてきたが、これからはロボットは中国に集中することになる。

出典: Tesla

製造業はアメリカ回帰の傾向

Reshoring先は製品最終仕向け地や製造施設を運用する環境などが判断材料になる。自動車では巨大市場を擁すアメリカに製造施設を移転する可能性が高くなる。ロボットで自動化が進むと、米国内での製造コストがメキシコ工場でのコストと大きな違いがなくなる。Teslaはシリコンバレー郊外でクルマを製造するが (上の写真)、工場は高度に自動化されコスト競争力があることを示している。トランプ大統領の強い要請でFordはメキシコ工場建設計画を撤回し、ミシガン州で製造規模を拡大する。この決断の背景には輸入税 (Border Tax) だけでなく工場の自動化技術があるのかもしれない。

工場は戻るが雇用は限定的

しかし、工場が米国に戻って来てもロボットによる自動化で従業員数は大きくは増えない。産業がアメリカに回帰するものの、雇用を生み出すという面ではその効果は限定的である。更に、AIやロボットにより米国産業全体で職が失われることになる。トランプ政権ではAIによる大失業時代を迎えることとなり、その対策で重い荷を背負うこととなる。

ロボット産業育成が重要

製造業を支える重要な基盤技術はロボットであるが、これら産業用ロボットは欧州と日本で開発されている。強いアメリカを取り戻すためには、ロボット技術を持つことが要件となる。トランプ大統領はロボット政策について見解を発表していないが、New York Timesとのインタビューでこれに触れている (下の写真)。New York Timesが「工場で職を奪うのはロボットでは?」との問いかけに対し、「その通りで、(米国で)ロボット開発を進める必要がある」と答えている。また、米国に産業用ロボット企業が無いことも認識しており、ロボット産業育成が重要であるとの見解を示した。

出典: New York Times

市場でもロボット産業育成の声

米国産業界でロボット開発を進める必要性について議論が高まっている。ロボットニュースサイトRobot Reportによると、ロボットの2/3が米国外で生産されている。更に、産業用ロボットについては全て海外製である。産業用ロボットは米国で生まれたが、今では米国は全てを輸入に頼っている。シリコンバレーに拠点を置くAdept Technologies社が米国における最後の産業用ロボット企業といわれてきた。しかし同社はオムロンに買収され、米国から産業用ロボット企業がなくなった。

トランプ大統領への提言

米国の産業用ロボットが衰退した理由は政府からの補助金が少ないためという意見が多い。米国の実業家で投資家であるMark Cubanは、トランプ大統領に対してロボット開発を推進するよう提言した。トランプ大統領は1兆ドル (100兆円) をインフラ整備に投資するとしているが、Cubanはその中で1000億ドル (10兆円) をロボット開発に投資すべきとしている。米国で生まれたロボットを復活させる必要があると主張する。政府はEVや再生可能エネルギー産業の育成で成功したように、今度はロボット産業に注力すべきとの見解を示している。

高度なAI技法をロボットに適用

ロボット開発ではGoogleが最新のAIを活用し研究開発を加速している。Googleのアプローチはコモディティ・ハードウェアに最新のAI技法を取り込み高度なロボットを開発するというもの。この背後では「Reinforcement Learning」といわれるAI技法が使われている。この技術は囲碁ソフトAlphaGoで使われ、人間のチャンピオンを破り世界の注目を集めた。今度はこれをロボットに応用する。

ロボットがお互いに教え合う

ロボットは学習したノウハウを他のロボットと共有する。数多くのロボットがReinforcement Learningの手法で学習するが、習得した知識はクラウド「Cloud Robotics」に集約される。ここで知識をポリシーに昇華し他のロボットと共有する。つまり、数多くのロボットが並列で学習することで、技能の習得が格段に早くなる。この手法は「Transfer Learning」と呼ばれ注目されている。(下の写真は4台のロボットがドアの開け方を学習している様子。それぞれのロボットが学んだことを4台で共有する。)

出典: Google

ロボットが人間のように学ぶ

人間や動物は試行錯誤で新しいスキルを学習するが、このモデルをロボットに応用したのが上述のReinforcement Learningである。ロボットは失敗を繰り返しながら、目的を完遂できるよう自ら学習していく。人間や動物はこれに加え、物に触るとそれがどう動くかを理解している。人間は内部にメンタルモデルを構築し、アクションを起こすとそれに応じて環境がどう変わるかを予想できるとされる。

ロボットがタッチ感覚を習得

Googleはこれと同じモデルを構築し、ロボットに物の扱い方を教える。テーブルに様々な文房具を置き、ロボットが特定のオブジェクトに触るとそれがどう動くかをこのモデルは予測する。このモデルで教育すると、ロボットは人間のように意図を持った操作ができるようになる。つまり、ロボットにオブジェクトと場所を指示すると、ロボットはそれを指定された場所に移動する。このモデルは「Deep Predictive Model」と呼ばれ、ロボットは人間のようにタッチ感覚を習得する。

Googleロボット開発の行方

先進技術を生み出すGoogleロボット開発であるが、この事業は中止されるとのうわさが絶えない。GoogleはBoston Dynamicsを5億ドルで買収したが、2016年にはこれをToyotaまたはAmazonに売却すると報道された。これに先立ち、プロジェクト責任者Andy RubinはGoogleを離れた。Alphabet配下の開発プロジェクトが相次いで中止される中、Googleのロボット開発がどこまで進むのか注視されている。

Boston Dynamicsの四つ足ロボット

先行きが見えない中でもBoston Dynamicsはロボット開発を積極的に進め、新技術を相次いで公開している。同社が開発するロボットは動物のように四本足で走行するのが特徴で、足場が悪くても歩けるため軍事への展開を目指していた。最近ではロボットを小型化し、家の中で移動し家事をこなす機能を実装している。下の写真は「SpotMini」というモデルで手 (頭に見える部分) で物を掴み操作できる。主人にビールを運び、シンクから食器を持ち上げウォッシャーに入れることができる。高度なインテリジェンスを持つが、外見は小型恐竜のようにも見え、家で使うにはデザイン面で工夫が必要かもしれない。

出典: Boston Dynamics

米国ロボット産業が再び花開く

Googleロボット事業の先行きが不透明なものの、ロボット開発はAIと密接に関係し、Googleの強みを生かせる分野である。GoogleはDeepMindと連携してロボット開発を進めており、世界最先端のAI技法を取り込むことができる。自動運転車と並んでロボット開発は将来の事業を支える柱に成長する可能性を秘めている。また、トランプ政権がロボット開発を国策として後押しする可能性もあり、開発が一気に加速するかもしれない。米国ロボット産業が再び花開く兆しを感じる。

音声操作できない製品はもう売れない!家電、ロボット、クルマが相次いでAmazon AIボイスクラウドを採用

Friday, January 20th, 2017

AmazonのAIスピーカーEchoが爆発的に売れている。その理由はAIの適用で会話機能が格段に進化したためだ。自然な会話でEchoを快適に使うことができる。Amazonはこの会話機能をAIボイスクラウドとして一般に公開した。メーカーは相次いでAIボイスクラウドの採用を決めた。Amazonはサーバクラウドの次はAIボイスクラウドで市場を席捲しようとしている。

出典: Amazon

Amazon Echoとは

Amazonは2014年にAIスピーカー「Echo」を発売し、累計で510万台が出荷され、大ヒット商品となった。今では「Echo Tap」(携帯版Echo) と「Echo Dot」(小型版Echo、上の写真) が製品ラインに加わった。製品の背後ではAIボイス機能「Alexa」が稼働し会話を司る。デバイスに話しかけて音楽を再生しニュースを聞く。また、スマートホームのハブとして機能し、家電を言葉で操作できる。

コンセプトは宇宙大作戦

Amazon Alexaの開発は2012年に始まり、クラウド機能をすべて音声で操作するシステムを目指した。このアイディアはテレビ番組「Star Trek」(宇宙大作戦) にあり、宇宙船内の複雑な機器を言葉で操作できるシーンからヒントを得た。Alexaはデバイスに触ることなく言葉だけで情報にアクセスし、家電を操作できる構造となっている。言葉は人間の本質的なコミュニケーション手段で、Amazon開発チームはこれをAlexaに応用した。

Amazon Alexaはプラットフォーム

Amazon AlexaはEchoだけでなく一般に公開され、多くの企業にボイスサービスを提供している (下の写真)。つまり、Alexaはプラットフォームとして位置づけられ、ここにエコシステムが形成されている。パートナー企業はこの機能を使い音声で操作するボイスアプリを開発する (下の写真、Alexa Skills Kitの分部)。また、家電や自動車メーカーはそれぞれの製品にボイス機能を組み込むことができる (下の写真、Alexa Voice Serviceの分部)。更に、スマートホーム企業は音声で操作できる機器を開発する (下の写真、Amazon Smart Homeの分部)。

出典: Amazon

ボイスアプリの数が急増

ボイスアプリはAmazonだけでなくパートナー企業により開発されている。ボイスアプリはAmazon Echoで稼働し、出荷当初は10本程度であったが、今では5000本を超えた。人気のボイスアプリは「Amazing Word Master Game」で、Echoとゲームで対戦する。これはしりとりをするゲームで、単語の長さが得点となる。Echoを相手にゲームをする形式で、英語の勉強にもなる。一人で時間を持て余している時にEchoが遊び相手になってくれる。

Alexaでレンタカーを予約

ビジネスと連携したボイスアプリが増えてきた。旅行サイト「Expedia」はAlexaを使って言葉で予約できるサービスを開始した。航空機を予約している人は言葉でフライト内容を確認できる。「Alexa, ask Expedia to get my trip details」と指示すると、Echoは予約状況を読み上げる。「Alexa, ask Expedia to book a car」と指示すればレンタカーを予約できる。ただし、フライトとホテルの予約にはまだ対応していない。

LenovoはAmazon Echo対抗製品を発表

LenovoはAIスピーカー「Smart Assistant」 (下の写真) を発表した。Echoとよく似た形状で、ボイス機能としてAmazon Voice Serviceを使っている。形状だけでなく機能的にもEchoと類似の製品仕立てになっている。Smart AssistantがEchoと異なる点はプレミアムスピーカー「Harman Kardon」を搭載している点。価格は179.99ドルで2017年5月から出荷が始まる。この事例が示すように、Amazonは競合デバイスの開発を歓迎しており、事業の目的はAIボイスクラウドの拡大にある。

出典: Lenovo

Fordはクルマに会話機能を組み込む

Fordは自動車メーカーとして初めてAlexa Voice Serviceの採用を決めた。利用者は家庭のAmazon Echoからクルマを操作できる。「Alexa, ask MyFord Mobile to start my car」と指示するとエンジンがかかる。運転中はナビゲーションパネルから音声でAlexaを利用できる (下の写真)。目的地の検索やガレージドアの開閉などを言葉で指示できる。これはFord「SYNC 3」技術を使ったもので、ドライバーのスマホアプリからクルマにアクセスする構成となる。前者の機能は2017年1月から、後者の機能は夏から利用できる。クルマが自動運転車に向かう中、ドライバーとクルマのインターフェイスはボイスとなる。

出典: Ford

HuaweiはスマホにAlexaを組み込む

Huaweiは最新のスマートフォン「Mate 9」 (下の写真) にAlexaをプレインストールして出荷することを明らかにした。Mate 9はボイスアプリを搭載し、この背後でAlexa Voice Serviceが使われている。利用者は音声で備忘録を作成し、天気予報や渋滞情報を尋ねることができる。また、スマートホームのハブとして家電を操作することもできる。ボイスアプリは2017年初頭から提供される。GoogleはAndroid向けにAI会話機能「Assistant」を提供しており、Alexaと正面から競合することになる。

出典: Huawei

UBTechはロボットのインターフェイスにAlexaを採用

UBTechはShenzhen (中国・深セン) に拠点を置くロボット開発会社で「Lynx」 (下の写真) を発表した。LynxはAlexa Voice Serviceを組み込み、言葉でロボットを操作することができる。音楽再生やメールの読み上げなどを言葉で指示できる。Alexaが提供する機能の他に、Lynxは搭載しているカメラで利用者を識別し、個人に沿った対応ができる。また、カメラをセキュリティモニターとして使えば、Lynxが留守宅を監視する。価格は800ドルから1000ドルで2017年後半に発売される。ロボット開発では会話機能がネックとなるが、Alexa Voice Serviceを使うことで、開発工程が短くなる。手軽にロボットを開発でき、市場への参入障壁が大きく下がる。LynxはAlexaがロボットの標準インターフェイスとして普及する可能性を示唆している。

出典: UBTech

テレビを音声で操作する

DISHは衛星テレビ会社でテレビ放送やインターネットサービスを提供する。DISHはセットトップボックス「Hopper DVR」をAmazon Echo又はDotとリンクし、テレビを言葉で操作できる機能を提供する (下の写真)。Echoに対し「Alexa, Go to ESPN」と指示すると、テレビはスポーツ番組「ESPN」にチャンネルを変える。番組を検索するときは「Alexa, what channel is the Red Sox game on?」と尋ねる。EchoはRed Soxの試合中継があるチャンネルを回答する。このサービス2017年前半から提供される。これからのテレビはリモコンだけでなく、音声操作が必須のインターフェイスとなる。GoogleはAI会話機能「Assistant」でテレビを音声で操作する機能を提供している。テレビ操作のインターフェイスでもAmazon AlexaとGoogle Assistantが覇権を争うことになる。

出典: DISH

LGは冷蔵庫にAlexaを搭載

LGはスマート冷蔵庫「Smart InstaView Door-in-Door」 (下の写真) でAlexa Voice Serviceを利用することを発表した。冷蔵庫は29インチのタッチパネルを搭載し (下の写真、右上のパネル) Microsoft Cortanaを音声インターフェイスとして利用してきた。今般、LGはこれをAlexa Voice Serviceに変更する。Alexaが組み込まれることで、音声でレシピを検索し、ショッピングリストを作成できる。また、Amazonでの買い物が音声でできる。冷蔵庫はスマートホームのハブとしても機能する。LGスマート冷蔵庫は音声で操作できない家電は売れなくなることを示唆している。

出典: LG Electronics

AIを駆使した高度な会話機能

メーカーが相次いでAlexaを採用する理由はAIを駆使した高度な会話機能にある。Alexaを搭載したデバイスは「Alexa」という枕言葉を検出すると、それに続く音声ストリームをクラウドに送信する。一連の会話処理はクラウドで実行される。具体的には音声認識 (Speech Recognition)、自然言語解析 (Natural Language Processing)、音声生成 (Text-to-Speech Synthesis) の処理が実行され、これらのプロセスでAIが使われている。単一のAIではなく、各モジュールに高度なAIが実装されボイスサービスを支えている。

Alexa人気の秘密は教育データ

Amazon Alexaが高度な会話機能を提供できる理由はAIアルゴリズムを最適化する教育データにある。教育データとは喋った言葉 (サウンド) とそれを書き下した文字 (テキスト) の組み合わせを指す。ボイス教育データとしてはコールセンターのオペレータの会話が使われる。しかし、家庭環境での会話 (「ガレージのドアを閉めて」など) をベースにした教育データは存在しない。Amazonは2014年に製品を出荷し、利用者からのフィードバック (下の写真) などを使い、教育データを整備してきた。この蓄積が高度な会話機能を支え、他社の追随を許さない理由になっている。

出典: VentureClef

日本企業のオプションは

家電メーカー、自動車メーカー、ロボット開発企業はAlexa Voice Serviceを利用することで製品に会話機能を組み込むことができる。自社でAIボイス機能を独自に開発する手間が省ける。Amazon AWSを利用するように、これからはAlexa Voice Serviceが標準ボイスクラウドとなる勢いをみせている。AIの基礎技術であるボイスサービスをAmazonに頼るのか、それとも独自で開発する道を進むのか、日本産業は岐路に差し掛かっている。