Archive for the ‘クラウド’ Category

音声操作できない製品はもう売れない!家電、ロボット、クルマが相次いでAmazon AIボイスクラウドを採用

Friday, January 20th, 2017

AmazonのAIスピーカーEchoが爆発的に売れている。その理由はAIの適用で会話機能が格段に進化したためだ。自然な会話でEchoを快適に使うことができる。Amazonはこの会話機能をAIボイスクラウドとして一般に公開した。メーカーは相次いでAIボイスクラウドの採用を決めた。Amazonはサーバクラウドの次はAIボイスクラウドで市場を席捲しようとしている。

出典: Amazon

Amazon Echoとは

Amazonは2014年にAIスピーカー「Echo」を発売し、累計で510万台が出荷され、大ヒット商品となった。今では「Echo Tap」(携帯版Echo) と「Echo Dot」(小型版Echo、上の写真) が製品ラインに加わった。製品の背後ではAIボイス機能「Alexa」が稼働し会話を司る。デバイスに話しかけて音楽を再生しニュースを聞く。また、スマートホームのハブとして機能し、家電を言葉で操作できる。

コンセプトは宇宙大作戦

Amazon Alexaの開発は2012年に始まり、クラウド機能をすべて音声で操作するシステムを目指した。このアイディアはテレビ番組「Star Trek」(宇宙大作戦) にあり、宇宙船内の複雑な機器を言葉で操作できるシーンからヒントを得た。Alexaはデバイスに触ることなく言葉だけで情報にアクセスし、家電を操作できる構造となっている。言葉は人間の本質的なコミュニケーション手段で、Amazon開発チームはこれをAlexaに応用した。

Amazon Alexaはプラットフォーム

Amazon AlexaはEchoだけでなく一般に公開され、多くの企業にボイスサービスを提供している (下の写真)。つまり、Alexaはプラットフォームとして位置づけられ、ここにエコシステムが形成されている。パートナー企業はこの機能を使い音声で操作するボイスアプリを開発する (下の写真、Alexa Skills Kitの分部)。また、家電や自動車メーカーはそれぞれの製品にボイス機能を組み込むことができる (下の写真、Alexa Voice Serviceの分部)。更に、スマートホーム企業は音声で操作できる機器を開発する (下の写真、Amazon Smart Homeの分部)。

出典: Amazon

ボイスアプリの数が急増

ボイスアプリはAmazonだけでなくパートナー企業により開発されている。ボイスアプリはAmazon Echoで稼働し、出荷当初は10本程度であったが、今では5000本を超えた。人気のボイスアプリは「Amazing Word Master Game」で、Echoとゲームで対戦する。これはしりとりをするゲームで、単語の長さが得点となる。Echoを相手にゲームをする形式で、英語の勉強にもなる。一人で時間を持て余している時にEchoが遊び相手になってくれる。

Alexaでレンタカーを予約

ビジネスと連携したボイスアプリが増えてきた。旅行サイト「Expedia」はAlexaを使って言葉で予約できるサービスを開始した。航空機を予約している人は言葉でフライト内容を確認できる。「Alexa, ask Expedia to get my trip details」と指示すると、Echoは予約状況を読み上げる。「Alexa, ask Expedia to book a car」と指示すればレンタカーを予約できる。ただし、フライトとホテルの予約にはまだ対応していない。

LenovoはAmazon Echo対抗製品を発表

LenovoはAIスピーカー「Smart Assistant」 (下の写真) を発表した。Echoとよく似た形状で、ボイス機能としてAmazon Voice Serviceを使っている。形状だけでなく機能的にもEchoと類似の製品仕立てになっている。Smart AssistantがEchoと異なる点はプレミアムスピーカー「Harman Kardon」を搭載している点。価格は179.99ドルで2017年5月から出荷が始まる。この事例が示すように、Amazonは競合デバイスの開発を歓迎しており、事業の目的はAIボイスクラウドの拡大にある。

出典: Lenovo

Fordはクルマに会話機能を組み込む

Fordは自動車メーカーとして初めてAlexa Voice Serviceの採用を決めた。利用者は家庭のAmazon Echoからクルマを操作できる。「Alexa, ask MyFord Mobile to start my car」と指示するとエンジンがかかる。運転中はナビゲーションパネルから音声でAlexaを利用できる (下の写真)。目的地の検索やガレージドアの開閉などを言葉で指示できる。これはFord「SYNC 3」技術を使ったもので、ドライバーのスマホアプリからクルマにアクセスする構成となる。前者の機能は2017年1月から、後者の機能は夏から利用できる。クルマが自動運転車に向かう中、ドライバーとクルマのインターフェイスはボイスとなる。

出典: Ford

HuaweiはスマホにAlexaを組み込む

Huaweiは最新のスマートフォン「Mate 9」 (下の写真) にAlexaをプレインストールして出荷することを明らかにした。Mate 9はボイスアプリを搭載し、この背後でAlexa Voice Serviceが使われている。利用者は音声で備忘録を作成し、天気予報や渋滞情報を尋ねることができる。また、スマートホームのハブとして家電を操作することもできる。ボイスアプリは2017年初頭から提供される。GoogleはAndroid向けにAI会話機能「Assistant」を提供しており、Alexaと正面から競合することになる。

出典: Huawei

UBTechはロボットのインターフェイスにAlexaを採用

UBTechはShenzhen (中国・深セン) に拠点を置くロボット開発会社で「Lynx」 (下の写真) を発表した。LynxはAlexa Voice Serviceを組み込み、言葉でロボットを操作することができる。音楽再生やメールの読み上げなどを言葉で指示できる。Alexaが提供する機能の他に、Lynxは搭載しているカメラで利用者を識別し、個人に沿った対応ができる。また、カメラをセキュリティモニターとして使えば、Lynxが留守宅を監視する。価格は800ドルから1000ドルで2017年後半に発売される。ロボット開発では会話機能がネックとなるが、Alexa Voice Serviceを使うことで、開発工程が短くなる。手軽にロボットを開発でき、市場への参入障壁が大きく下がる。LynxはAlexaがロボットの標準インターフェイスとして普及する可能性を示唆している。

出典: UBTech

テレビを音声で操作する

DISHは衛星テレビ会社でテレビ放送やインターネットサービスを提供する。DISHはセットトップボックス「Hopper DVR」をAmazon Echo又はDotとリンクし、テレビを言葉で操作できる機能を提供する (下の写真)。Echoに対し「Alexa, Go to ESPN」と指示すると、テレビはスポーツ番組「ESPN」にチャンネルを変える。番組を検索するときは「Alexa, what channel is the Red Sox game on?」と尋ねる。EchoはRed Soxの試合中継があるチャンネルを回答する。このサービス2017年前半から提供される。これからのテレビはリモコンだけでなく、音声操作が必須のインターフェイスとなる。GoogleはAI会話機能「Assistant」でテレビを音声で操作する機能を提供している。テレビ操作のインターフェイスでもAmazon AlexaとGoogle Assistantが覇権を争うことになる。

出典: DISH

LGは冷蔵庫にAlexaを搭載

LGはスマート冷蔵庫「Smart InstaView Door-in-Door」 (下の写真) でAlexa Voice Serviceを利用することを発表した。冷蔵庫は29インチのタッチパネルを搭載し (下の写真、右上のパネル) Microsoft Cortanaを音声インターフェイスとして利用してきた。今般、LGはこれをAlexa Voice Serviceに変更する。Alexaが組み込まれることで、音声でレシピを検索し、ショッピングリストを作成できる。また、Amazonでの買い物が音声でできる。冷蔵庫はスマートホームのハブとしても機能する。LGスマート冷蔵庫は音声で操作できない家電は売れなくなることを示唆している。

出典: LG Electronics

AIを駆使した高度な会話機能

メーカーが相次いでAlexaを採用する理由はAIを駆使した高度な会話機能にある。Alexaを搭載したデバイスは「Alexa」という枕言葉を検出すると、それに続く音声ストリームをクラウドに送信する。一連の会話処理はクラウドで実行される。具体的には音声認識 (Speech Recognition)、自然言語解析 (Natural Language Processing)、音声生成 (Text-to-Speech Synthesis) の処理が実行され、これらのプロセスでAIが使われている。単一のAIではなく、各モジュールに高度なAIが実装されボイスサービスを支えている。

Alexa人気の秘密は教育データ

Amazon Alexaが高度な会話機能を提供できる理由はAIアルゴリズムを最適化する教育データにある。教育データとは喋った言葉 (サウンド) とそれを書き下した文字 (テキスト) の組み合わせを指す。ボイス教育データとしてはコールセンターのオペレータの会話が使われる。しかし、家庭環境での会話 (「ガレージのドアを閉めて」など) をベースにした教育データは存在しない。Amazonは2014年に製品を出荷し、利用者からのフィードバック (下の写真) などを使い、教育データを整備してきた。この蓄積が高度な会話機能を支え、他社の追随を許さない理由になっている。

出典: VentureClef

日本企業のオプションは

家電メーカー、自動車メーカー、ロボット開発企業はAlexa Voice Serviceを利用することで製品に会話機能を組み込むことができる。自社でAIボイス機能を独自に開発する手間が省ける。Amazon AWSを利用するように、これからはAlexa Voice Serviceが標準ボイスクラウドとなる勢いをみせている。AIの基礎技術であるボイスサービスをAmazonに頼るのか、それとも独自で開発する道を進むのか、日本産業は岐路に差し掛かっている。

生活が横着になったシリコンバレー、人工知能を使った宅配サービスが大ブーム!

Friday, April 17th, 2015

シリコンバレーでベンチャーキャピタルの投資が過熱している。1999年のインターネットバブルの投資金額を上回り、第二のブームになっている。インターネットバブルでは、ウェブサービスが中心だったが、今回はリアル社会のサービスが中心となる。その中で、人工知能を駆使した宅配サービスが波紋を広げている。宅配は日本企業の得意分野であるが、ITを駆使したシステムから、学ぶところが少なくない。宅配サービスで横着になった生活をレポートする。

g408_instacart_01

大型投資の衝撃

生鮮食料品宅配サービスを提供する新興企業「Instacart」は、昨年12月、大手ベンチャーキャピタルから、2億2千万ドル (264億円) の投資を受けた。ベンチャーキャピタルの投資が活発だが、誕生まもない新興企業にこれだけの規模の投資をするのは異例。Instacartは生鮮食料品を”オンデマンド”で配送する。スマホ専用アプリ「Instacart」から、商品を注文すると、宅配スタッフ(Shopperと呼ばれる) が指定したスーパーマーケットで買い物をして、自宅まで届けてくれる (上の写真)。宅配費用は安く、配送時間を一時間ごとに指定できるのがうれしい。

g408_instacart_02

スーパーマーケットで販売されている商品を購買

このサービスが大人気で、筆者もスーパーマーケットに買い物に行く代わりに、スマホで宅配サービスを利用するようになった。操作は簡単で、アプリで行きつけのスーパーマーケット「Whole Foods」を選ぶと、ホーム画面に商品一覧が表示される (上の写真、左側)。野菜やフルーツの他に、食肉や魚介類 (上の写真、右側)、デリ、牛乳や卵、食パン、パスタ、調味料など、スーパーマーケットで販売されている商品が全て揃っている。通常のショッピングアプリと同じで、アイコンににタッチし、個数を指定して商品をカートに入れる。

g408_instacart_03

希望する時間帯を一時間単位で選ぶ

商品の選定が終わると、カートアイコンにタッチして、チェックアウトする (上の写真、左側)。決済は登録しているApple Payででき、新興企業のサービスでも安心して利用できる。従来通り、クレジットカードを登録して、支払いするオプションもある。最後に、配送時間の指定画面で、希望する時間帯を一時間単位で選ぶ (上の写真、右側、別の日の事例)。

通常1~2時間程度で配送される。商品は店舗と同じ価格に設定されている。配送手数料は3.99ドルだが、混雑時は4.99ドルかかる。また、購買金額が35ドル以下の場合は、配送手数料が7.99ドルに跳ね上がる。日本では時間単位の同日配送は当たり前だが、シリコンバレーではInstacartが初めて手掛けた。明日朝のシリアルを切らしたときも、直ぐに注文でき、今では手放せないサービスになった。

g408_instacart_04

注文した商品はInstacart専用のショッピングバッグで、時間通りに届けられた (上の写真)。但し、注文したブロッコリーは在庫が無く、その旨をボイスメッセージで連絡を受け、後ほど、この代金が払い戻された。米国のサービス品質は必ずしも良くないが、商品が時間通りに届き、欠品についての細かい対応に、正直驚いた。

柔軟な勤務体系がサービス品質向上の鍵

宅配スタッフはJimという名前の男性で、自分の自動車を運転して商品を届けてくれた。JimはWhole Foods店舗を担当する配達員で、スマホで注文を受け、それに従い買い物をし、商品を顧客に届ける。Jimは毎週五日程度勤務し、当日は10時から14時までと、16時から18時まで勤務していた。このように、宅配スタッフは自分の都合のいい時間帯だけで仕事ができる。

宅配スタッフの多くは20歳代を中心とする、若い労働層が中心になる。しかし、Jimは60過ぎの男性で、仕事を引退して宅配スタッフをしているようであった。自動車はプリウスで、身なりや話し方からすると、生活に困っている様子ではなかった。引退後も社会にかかわっていたい、という雰囲気を感じた。Instacartは柔軟な勤務体系を提供し、これが優秀な人材を惹きつける。シリコンバレーでの働き方が大きく変わった。

g408_instacart_05

配送員になるプロセス

宅配スタッフを希望する人はInstacart専用サイトから応募する。応募者は履歴などの調査の後、面接と教育を受け採用される。上の写真は応募のプロセスを示したもので、氏名などの基本情報の他、希望の勤務体系を記載する。ここで、仕事をする曜日や勤務時間などを指定する。また、希望する勤務地域を指定できる。自動車を持っていればその情報を記載する。ウェブサイトで応募し、簡単に宅配スタッフになれる。

Instacartはパートタイムとは異なる。パートタイムでは、会社が勤務時間を指定するが、Instacartは従業員が勤務時間を選択できる。好みの時間を自由に選択できるという意味で”アラカルト勤務”とも呼ばれている。自由度が大きい勤務体系が、今の時代の労働者にアピールしている。

ソフトウェアの力にかかっている

一方、雇用側は、配送スタッフの数が曜日や時間帯により大きく変わるため、需要に合わせた労働力の確保が新たな課題となる。マニュアルでの調整では間に合わず、人工知能など、ソフトウェアを駆使して最適化する。待ち時間を最小限にし、顧客へ1時間以内に配送できるシステムの構築は、ソフトウェアの機能にかかっている。配送員の位置情報をGPSで把握し、日時や天候などの要因を勘案し、最適なロジスティックスを構成する。パターンの数が膨大で、Machine Learningなどの手法を活用し、過去の事例を学習し、労働力の最適化を図っている。

システムは学習を続けている

Instacartのシステムは完成している訳ではなく、まだ学習を続けている。Instacartの宅配スタッフは正社員ではなくコントラクターで、4000人いるとされる。宅配スタッフの給与は、配送件数と商品アイテムの数から算出される。Instacartは時給25ドル程度としているが、閑散期には時給10ドル程度ともいわれている。顧客からの注文が少ない時は、配送員は自動車の中で待機し、次の注文を待つことになる。配送員は多めに配置され、バッファーとしての機能も担っているようだ。

Uberのモデルをコピー

Instacartのシステムは、合法なハイテク白タク「Uber」のモデルをコピーしたものである。Uberはライドシェアと呼ばれる運輸ネットワークを展開し、45か国130都市でビジネスを展開している。ドライバーは、自家用車を使い、自分の都合に合わせ働くことができる。この労働形態がドライバーに訴求し、サンフランシスコ地区ではタクシードライバーが、雪崩を打ってUberに移動している。

g408_instacart_06

Uberモデルをレストランの出前に応用

宅配サービスは、スーパーマーケットの買い物だけに留まらない。出前サービス「DoorDash」が破竹の勢いで事業を拡大している。同社は、地域のレストランと提携し、出前サービスを展開している。スマホ専用アプリから、レストランの料理を注文すると、DoorDashの宅配スタッフ (Dasherと呼ばれる) が届けてくれる。

アプリには近所のレストランが掲載され (上の写真、左側)、希望のレストランのメニューから料理を選ぶ (同右側)。この日は昼ごはんに、クレープを注文しているところである。料理を選んで、チェックアウト画面で支払いをする。ここでもApple Payで決済でき、安心して利用できる。料理の値段は同じだが、配送手数料が一律に5.99ドルかかる。チップはオプションでパーセントボタンを押して支払う。

注文が終わると、アプリには配送プロセスが表示される。11:02に注文を受け付け、到着予定時刻は11:49と表示された。実際には11:38に料理が届けられ、配達されるまでの時間は36分だった。30分程度で料理が届くので、一回使い始めると、止められなくなった。

g408_instacart_07

レストランで食事するより早い

この日は「Crepevine」というレストランでSiena CrepeとPattaya Crepeを注文した (上の写真)。サラダとスプーンやフォークがついてきて、そのまま食事ができる。ここは大人気のレストランだが、予約は取らず、店では席が空くのを待たなくてはならない。DoorDashを使うと30分程度で食事が届くので、レストランで食事するより早く食べられる。

出前スタッフは女子学生で、自分の車で配送してくれた。女性は時間がある時に、DoorDashで出前サービスをしているとのこと。忙しそうでゆっくり話を聞けなかったが、学費や生活費を稼ぐため、働いている様子であった。

g408_instacart_08

インフラのコストは最少

出前で使う自動車には、フロントグラスにDoorDashのプレートが付いているだけで、特別な仕様にはなっていない。また、配送スタッフはDoorDashのTシャツを着ているが (上の写真)、私服で来る人も少なくない。つまり、DoorDashは、出前サービスのインフラには、ほとんどコストをかけていない。ハードウェアにはお金をかけないで、ITを駆使して身軽に配送事業を展開するのが、いまのビジネスモデルになっている。ただ、DoorDashのケースでは、調理というプロセスが入るので、ロジスティックスが格段に複雑となる。調理時間や間違った料理への対応などが必要となり、人工知能の手法であるMachine Learningを使っていると言われている。

g408_instacart_09

Googleがベンチャーに苦戦

ベンチャー企業の登場で、Googleが苦戦している。Googleは、独自の配送サービス「Shopping Express」を展開しているが、伸び悩んでいる。Amazon対抗のサービスとして開始したが、実際には、小回りの利くベンチャー企業との競合が厳しくなっている。Shopping Expressで注文すると、配送は翌日で、しかも配送時間帯は午前・午後・夜の枠から選ぶこととなる。同日配送や一時間ごとの指定ができない。配送手数料も4.99ドルと、やや高めの設定である。

そもそもShopping Expressは、生鮮食料品を取り扱っておらず、衣料品や家庭用品などが中心となる。そのため、毎日利用するのではなく、使用頻度はぐっと低くなる。ずっとShopping Expressを使ってきたが、今ではInstacartに乗り換えた格好となっている。上の写真はShopping Express専用車両で、通りで頻繁に目にする。インフラにコストがかかっており、Googleのサービスが重厚長大で、時代の波に乗り遅れているのを感じる。

シリコンバレーの生活パターンが変わる

Instacartはニューヨークなど15の主要都市で事業を展開している。シリコンバレーでは多くの家庭がInstacartを利用している。また、DoorDashはサンフランシスコを中心に、7都市でサービスを展開している。シリコンバレーではDoorDashが大人気で、パロアルトでは4軒に1軒が利用しているといわれている。前述の通り、人気レストランで食事を注文するより、出前サービスのほうが早く食事できる。ただ、DoorDashの出前料金は少し高いので、筆者宅では友人と一緒にレストランに行く代わりに、DoorDashを利用している。出前サービスで料理を注文すると、自宅でくつろいで食事ができる。

シリコンバレーで働き方も大きく変わった。パートタイムとして企業に就職する代わりに、InstacartやDoorDashなどで、自分の都合のいい時間に働くスタイルが広まってきた。類似のサービスが数多く登場しており、これを本業としている人も出始めた。複数の仕事を掛け持ちし、時給が最大になる組み合わせで働く。稼ぐ人であれば、年収6万ドル (720万円) になる人もでてきている。Uberが仕掛けたビジネスモデルが、幅広い分野で波紋を広げている。

企業側のビジネスモデル

大手ベンチャーキャピタルがInstacartに大規模な投資をし、DoorDashに注目しているのは、このビジネスモデルを高く評価しているため。Instacartで買い物をしても、価格はスーパーマーケットと同じ設定となっている。これが可能となるのは、Instacartがスーパーマーケットから、販売コミッションを貰う仕組みとなっているため。つまり、スーパーマーケットとしては、Instacartを新しい販売チャネルとして位置づけ、新規顧客を呼び込み売り上げが増えるとみている。

一方で、大手スーパーマーケット「Safeway」で買い物をすると、商品価格が15%増しとなる。これは、コミッションを貰えないケースで、追加料金がInstacartの事業収益となる。実は、Safewayは独自の配送サービスを展開しており、Instacartとは競合する関係にある。

g408_instacart_10

DoorDashも同じ構造で、レストランからコミッションを貰っているといわれている。レストラン側としては、DoorDashの出前サービスが新たな販売チャネルで、売り上げが伸びるとみている。事実、レストラン側としては、出前サービスで売り上げが伸びており、重要な新規事業として力を入れている。ただ、消費者の視点からは、レストラン出前サービスが乱立状態で、受け取る料理の品質に大きな幅があり、レストランの選択には注意が必要。上の写真はクレープを注文したCrepevineで、ウェブサイト前面でDoorDashを紹介し、出前サービスを積極的にプロモーションしている。

高齢化社会の重要なインフラ

このモデルは日本の都市部での配送システムに応用できるかもしれない。日本では既に大手企業の宅配サービスが充実しているが、もっとフットワークの軽いモデルを構築できれば、誰でも気軽に安い値段で利用できる。特に、自由に買い物に行けないシニア層向けに提供できれば、高齢化社会の重要なインフラとして機能する。これらのサービスを支えているのがMachine Learningなど人工知能で、IT企業の果たす役割が重要となる。

Google I/Oレポート(1) パーソナライズされたGoogle Maps

Tuesday, May 21st, 2013

Googleの開発者向けカンファレンスであるGoogle I/Oが、先週、San FranciscoのMoscone Center (下の写真) で開催された。今年のGoogle I/Oは、既存製品の機能強化を中心に、最新技術が紹介された。モバイル・デバイスについての新製品発表はなく、Google本来のIT技術に立ち戻り、カンファレンスが進行した。今週からシリーズで、Google最新技術をレポートする。

g320_google_io_maps_01

Google I/Oカンファレンス総括

Google I/O初日は、基調講演が行われ、今年のGoogle新技術が紹介された。Google Play Musicから、All Accessという定額制音楽配信サービスが登場した。YouTube Paid Channelsとともに、有償化路線が鮮明になってきた。Google+では、Photosという写真アルバムが強化され、撮影した写真が自動で鮮やかになる機能Auto Enhanceが登場した。会場にはGoogle+ Photosブースが設置され、この機能をアピールしていた(下の写真)。検索ではVoice Search機能が強化され、Google Nowがよりインテリジェントになった。この二つの機能が連携し、Apple Siriに対抗する製品を構成している。Google Mapsでは、インターフェイスが一新され、表示される地図が利用者ごとに最適化された。Street Viewが海の中に入り、海底の散歩を楽しめるようになった。

g320_google_io_maps_02

新しいGoogle Mapsを使ってみる

このレポートでは、インターフェイスが一新された、Google Mapsを考察する。Google Mapsの新機能を一言で括ると、Personalization (個人化) である。Google Maps担当副社長Brian McClendonらが機能強化された製品を説明した。新しくなったGoogle Mapsは、利用者個人に最適な情報を地図上に表示するのが特徴である。更に、位置情報の精度が向上し、Google Mapsにレストランなど店舗情報をプロットできるようになった。

g320_google_io_maps_03

早速、Google Mapsをアップグレードし、新機能を使ってみた。上のスクリーンショットがGoogle Mapsの新しいインターフェイスである。左上隅に検索ボックスが表示され、ここにキーワードを入力して検索する。上は「Moscone Center」で検索した様子で、検索結果がマップ上にピンで表示され、左上に施設の概要がInfo Cardの形式で表示される。ここまでは、従来のGoogle Mapsと大きな違いは無い。

g320_google_io_maps_04

Google Mapsは、カテゴリーで検索する機能が追加された。上のスクリーンショットは、「restaurants」というカテゴリーで検索した結果で、地図上にレストランがプロットされる。大きなアイコンは、過去に検索したレストランを示し、星印はSaveしたレストランを示す。Your Circleというリンクをクリックすると、友人が推奨するレストランが示される。Google+のサークルがMapsに統合されている。上はサークル・メンバーのMarissa Mayerが、Evviaというレストランについてコメントをしている事例である。随所にPersonalize機能が実装されている。

g320_google_io_maps_05

Google MapsでGoogle Earthボタンを押すと、マップが三次元で表示される。上のスクリーンショットがその様子で、San Francisco市内を三次元で表示したもので、ビルの周りを飛行できる。これは撮影した写真を三次元ベクトルで処理したもので、移動や回転操作をスムーズに行える。Appleが先行しているFly Over機能であるが、Googleも正式にサービスを開始した。最下段には利用者が撮影した写真などが表示され、サムネールをクリックすると、街並みを連続写真で楽しめる。これはクラウド・ソーシングによる地図作成で、利用者がGoogle Maps作成に貢献できる仕組みとなっている。

g320_google_io_maps_06

Street Viewでダイビング

Google MapsのStreet Viewは、海中に入り、綺麗な海にダイビングできる。上のスクリーンショットは、Heron Island (オーストラリア) の海中で、ゆっくり泳ぐカメが捉えられている。海中のGoogle Mapsは、下の装置で撮影される。これは潜水機にカメラ (Seaview SVII) を搭載した形状となっている。カメラは、Catlin Seaview Surveyという、サンゴ礁の調査プロジェクトが開発したもので、海中を360度撮影できる。

g320_google_io_maps_07

Googleは、昨年から、Art Projectで世界の有名美術館内部をStreet Viewで公開している。下のスクリーンショットは、Museum of Modern Art (ニューヨーク州) の事例で、ブラウザーで美術館を散策できる。画面左枠がフロアー・レイアウトで、現在地と見ている方向を示している。画面右枠が美術館内部で、展示されている作品を見ることができる。これはHenri Rousseauのコナーで、一番手前に「The Sleeping Gypsy」を見ることができる。Art Projectは世界51の美術館をカバーしている。

g320_google_io_maps_08

Google Mapsのねらい

Google Mapsは、個人に特化した情報を表示するよう、大きく進化した。検索結果は直接地図上にプロットされ、それをサークルで絞り込むことができる。気に入った店舗をSaveしておくこともできる。Top reviewersというリンクをクリックすると、専門家が推奨するレストランが表示される。更に、Google Mapsは、利用者の嗜好に沿ったレストランや小売店舗を推奨する。地図の個人化による推奨機能で、利用者が店舗に足を運ぶ可能性が高まることが期待される。新しいGoogle Mapsは、便利になっただけでなく、Googleの広告事業に貢献する構造となっている。Street Viewは、プライバシー問題だけがクローズアップされているが、着実にカバー範囲が増えている。Google Street View Galaryには、上述のOceanに加え、世界の名所旧跡、秘境、世界遺産などが掲載され、世界旅行を楽しめる。今年のGoogle I/OはGoogleの原点に戻った技術展示となった。

闇クラウドを見つけ出す技術

Friday, March 15th, 2013

RSA Innovation Sandboxでは、セキュリティ技術のイノベーションが紹介された。Skyhigh Networks (スカイハイ・ネットワークス) はCupertino (カリフォルニア州) に拠点を置くベンチャー企業で、企業内で不正に使用されているクラウド・サービスを管理する機能を提供している。

g310_skyhigh_networks_01

無許可クラウドの検知と管理

企業がクラウドに支出する費用は2015年には729億ドルとなり、年間伸び率は27.2%で、ITサービスのクラウドへの移行が加速している。これと並行して、Shadow IT (シャドーIT) が大きな問題となっている。Shadow ITとは、IT部門の許可を受けないで、社員が独自に使用しているクラウドを指す。Shadow ITは、業務効率化に寄与しているものもあるが、セキュリティ面で危険性をはらんでいる。Skyhigh Networksは、社内で利用されているクラウドの実態を把握するための機能を提供している。Skyhighのブースにおいて (上の写真、出展はいずれもVentureClef)、 エンジニアリング担当副社長であるSekhar Sarukkaiから、Skyhigh Networksのデモを見ながら機能説明を受けた。

下の写真はSkyhigh Networksのダッシュボードで、社内で利用されているクラウドについて、統計情報を表示している。画面上段には、社内で利用されているクラウドの数が表示され、全部で294のクラウドが利用されていることが分かる。その中で69が危険性をはらんでいるクラウドであると警告している。中段のグラフはクラウドへのアクセス数の推移を示しており、リスクの度合いをグラフの色で表示している。グラフ上の赤丸は、問題となるイベントを示しており、アイコンをクリックすると詳細情報が表示される。下段は、利用されているクラウドをアクセス回数の多い順に表示している。

g310_skyhigh_networks_02

危険なクラウドとは、マルチ・テナントで運用されているサービスや、データを暗号化しないで保管しているサイトなどで、社内データ流出の危険性がある。Skyhigh Networksは、これらのクラウドについて、リスクが大であると評価し、IT管理者に注意を喚起する。また、Skyhigh Networksは、社員のクラウド操作を監視し、データ送信量が急増するなど、不審なオペレーションにフラッグを立て警告する。Skyhigh Networksは、Ciscoなどで利用されており、社内データ流出につながるクラウドの運用を停止したり、社員の不審な挙動の検出などに利用されている。Skyhigh Networksは、クラウドの影の部分に光を当て、企業データ保全に努めている。

IT企業内のリーン・スタートアップ

Friday, October 5th, 2012

新興企業が最新技術を紹介するカンファレンスであるDEMO Fall 2012は、10月1日から3日まで、Santa Clara (カリフォルニア州) のHyatt Regencyで開催された。カンファレンスには77の企業が参加し、ステージ上で6分間のデモを実演し、最新技術を紹介した。カンファレンスにはCitrixの社内ベンチャーである、Citrix Startup Acceleratorのポートフォリオ企業が参加し、先進的な技術を披露した。

g287_citrix_startup_accelerator_01

Startup Acceleratorというインキュベータ

カンファレンスに先立ちStartup AcceleratorのChief TechnologistであるMichael Harriesに、組織概要や投資目的について話を聞いた。Startup AcceleratorはCitrix社内に設立されたインキュベータで、新興企業への投資と育成を行なっている。上の写真 (出展:VentureClef) はCitrixのオフィスビルで、Startup Acceleratorは三階に入居している。Startup Acceleratorは新興企業に対して、25万ドルまでの投資を行い、オフィス・スペースなどを提供する。新興企業はこれらの資金とリソースを使って、18ヶ月間で製品開発を行なう。Harriesは「Lean Startups (リーン・スタートアップス) という投資手法で、限られた資金で、短期間で製品開発を行なう」と説明した。CitrixがStartup Acceleratorを運用している目的は、「新興企業が開発した技術をCitrix製品にフィードバックするのではなく、動きの激しい市場で、技術動向をモニターすることである」と説明した。Startup Acceleratorは現在までに12社に投資を行い、今後6-8社に投資を行う予定である。Startup Acceleratorの対象分野はモバイル・ワークスタイルとクラウド・サービスである。Harriesにポートフォリオ企業の中で、期待を寄せている企業について尋ねると、「自分の子供の中で、どの子が好きかと聞かれているようで、答えにくい」としながらも、モバイル・ワークスタイルの分野ではZeroMailを、クラウド・サービスの分野ではGraymaticsを挙げた。これらの企業はDEMO Fallに出展しており、会場で両社からデモを交えて、製品の説明を聞いた。

g287_citrix_startup_accelerator_02

ZeroMail: メールボックスの近代化

ZeroMailは、ここ20年間技術進化が止まっているメールボックスを改良し、利用者に使いやすいメール機能を提供することを目指している。ZeroMail創設者であるBart Jellemaがデモを実演し、使い方を解説してくれた。多くのGmail利用者のメールボックスには、3000通近いメールが未読のまま溜まっている。ZeroMailは3分間で、受信メールを区分けして、整理整頓する機能を提供している。上のスクリーンショット (出展:ZeroMail) がZeroMailのダッシュボードで、ここにGmail Inboxの2993通のメールを項目別に区分けして表示している。ZeroMailは四つの区分を設けており、それらはConversations (交信メール)、Notifications (通知メール)、Groups (グループ討議)、Newsletters (購読ニュース) である。利用者はZeroMailの指示に従ってメールを整理していき、仕事や個人関連で、返信などのアクションが必要なメールだけを抽出し、これらを特定のフォルダーに格納する。ZeroMailのデモで、実際に、2993通の未読メールを3分足らずで整理整頓できた。

g287_citrix_startup_accelerator_03

Graymatics: イメージ認識の広告への応用

Graymaticsは写真やビデオでのイメージ認識技術を開発し、これを広告分野に応用したソリューションを提供している。同社CEOであるAbhijit Shanbhagが、ブースにて広告への応用事例を解説してくれた。上の写真 (出展:VentureClef) は、イギリスの大衆紙であるThe Sunのウェブサイトである。ニュース記事の写真の中で、衣服、サングラス、カメラなどに添付された矢印をクリックすると、それらに嗜好が近い製品が表示される。この事例では、Brad Pittが着ているシャツの矢印をクリックしたところで、Pittが羽織っているシャツに近いイメージの男性向けシャツが表示されている。これをクリックするとAmazon.comで買い物ができる。この技術はConVisual (コンビジュアル) と呼ばれ、画像イメージに沿った商品を紹介するサービスである。これに対して、Google AdSenseなどは、テキストの文脈 (Context) に沿った商品広告を掲示するサービスである。

g287_citrix_startup_accelerator_04

上の写真 (出展:VentureClef) は、この技術を使って、広告掲載の設定を行なっている様子である。写真中央はJaguar Light Gray Convertibleで、これに嗜好の近い商品を右上の枠内に表示する。利用者が商品イメージを右上の枠内にドラッグすると、システムが両者の親和性を計算する仕組みである。Graymaticsは、ビデオ世代において、Contextではなく、ConVisualな解析技術を開発している。

考察

Startup AcceleratorはCitrixオフィス・ビル内にあり、新興企業がフロアーにブースを構え、オフィスを構成している。シリコンバレーを中心に、Lean Startupsの手法で技術開発が行なわれているが、Citrixはこの手法を社内ベンチャーに応用した、新しい試みを展開している。Citrixはモバイル・ワークスタイルやクラウド・サービスにおいて業界をリードしているが、Startup Acceleratorをセンサーとして、日々技術動向を追っている。モバイルやクラウドなど、動きの速い分野では、IT企業は市場の動きを追跡するメカニズムが必要なことをCitrix Startup Acceleratorは示している。