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電話交換機でのイノベーション (OSCON 2008より)

Sunday, August 31st, 2008


オレゴン州ポートランドで開催されたOSCON (オスコン) で、一番新鮮であったのが「Open Source’s (VoIP) Call for Change(オープンソースでの革新的VoIP通話の提案) という分科会である。この分科会は、オープンソース電話交換機であるAsterisk (アスタリスク) 開発者のMark Spencer (マーク・スペンサー) によって行なわれた。Spencerは、いつものように、Tシャツに半ズボンとサンダルという格好で講演を行なった。お洒落だとは言い難いが、とても好感の持てるスタイルである。

 

Asteriskとは

Asteriskは、余りにも有名で説明する必要は無い\が、オープンソースのPBX (Private Branch Exchange) である。Spencerにより開発され、Digium (ディジアム) 社が有償でサポートしている。Asteriskは余りにも有名なため、 電話交換機としてのイメージが強く、技術的に新鮮味が無い。ところが、Spencerは、「Asteriskは電話交換機というアプリケーションではなく、電話アプリケーション向けのプラットフォームである」と説明し、Asterisk上で開発された斬新なアプリケーションを紹介した。下記に、そのいくつかを示す。

 

Botanicalls

Asterisk上のアプリケーションで一番有名なのが、「Botanicalls(ボタニコールズ) である。これは家庭の鉢植えの水が無くなると、鉢植えが主人に電話して、水が欲しいと音声で伝えるアプリケーションである。主人が水をあげると、鉢植えからお礼の電話がかかってくる仕組みである。実際、Botanicallsの鉢植えに電話すると、鉢植えから「自己紹介」や「健康状況」を聞くことができる。因みに電話番号は、212-202-8348で、この番号に電話すると上記を聞くことができる。

 

Botanicalls Twitterg038_asterisk.jpg

分科会でSpencerは、鉢植えの水が無くなると、今度は、鉢植えがTwitter(トゥイッター)というブログにお願いのメッセージを投稿するシステムを紹介した。ブログのメッセージは主人に配信され、これを読んで主人が水を上げるという手順となる。両者とも仕組みは同じで、鉢植えのセンサーが水不足を感知すると、それに応じた音声メッセージまたはテキストメッセージ(上の写真、出展:Botanicalls Twitter) Asterisk経由で、電話で発信するというものである。

 

通話ソリューションの進化

柔軟で機知に富む若い世代のエンジニアが、半分遊び心で、Asterisk上にユニークなアプリケーションを開発している事例である。一方、以前紹介したように「Voiceroute (ボイスラウト) は、Asterisk上でユニファイド・コミュニケーションという企業向けシステムを開発している。電話という閉じた社会で、オープンソースによるイノベーションが進行している。

オープンソース版ユニファイド・コミュニケーション (OSCON 2008より)

Friday, August 8th, 2008



OSCON (オスコン) 展示会会場では、オープンソースの手法でユニファイド・コミュニケーション (Unified Communications) 製品を開発している企業「Voiceroute (ボイスラウト) から話を聞くことができた。

 

Voicerouteという企業

Voicerouteのブースで、CEOMing Yong (ミング・ヤング、写真右側、出展:VentureClef) と、CTONavin Kumar (ナビン・クマー、写真左側) が対応してくれた。

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Voicerouteはコネチカット州ノーウォーク (Norwalk) とシンガポールに拠点を置く若い企業である。Voicerouteが提供している製品は「Druid(ドゥルイッド)という名前で、オープンソースを基盤とするユニファイド・コミュニケーション機能を搭載したソフトウェアである。Druidは商用版とオープンソース版があり、オープンソース版は同社のサイトからダウンロードできる。Druidの開発は両者のほかに、Vikram Rangnekar (ヴィクラム・ラングニカー) が加わり三人で行なっている。Yongはシンガポール出身で、コーネル大学とミシガン大学で学んだ、若いエンジニアである。大学時代に知り合ったKumarと一緒にこの会社を創設した。

 

Druid製品概要

YongDruidについて「複数種類のメッセージを統一して扱うことができるユニファイド・コミュニケーション・ソフトウェアであり、オープンソースでCisco Call Manager (シスコ・コール・マネジャー) を目指している」と説明してくれた。

g035_druid_b.jpg

これはDruid Open Source Edition (OSE) のスクリーンショットである。(出展:Voiceroute) この画面は利用者のウェブ・ポータルで、ここで各種通信を行い、また、システム設定を行なうことができる。この画面の「Unified Mailbox」をクリックすれば、ボイスメールやファックスを纏めて見ることができる。電子メールと同じ要領でボイスメールやファックスの一覧表から希望のメッセージを選んで再生できる。

 

Call Routing」は、電話を指定の宛先に転送する際に使用する。社外に外出する時は、オフィスへ掛かってきた電話を携帯電話に転送することができる。また、正午から午後1時の昼休みの時間に受信した電話は、自動的に留守番電話に接続するように設定することもできる。「Call Records」では、パソコンのログを見る要領で、電話のログを見ることができる。いつ誰から電話が入り、それに対してどのように対応したかが記録されている。

 

Druidの特徴は、携帯電話との連携を中心とした、ユニファイド・コミュニケーションである。ブースにおいて、Kumarが、上記の「Call Routing」を使って、オフィスに掛かってきた電話を携帯電話に転送するデモをみせてくれた。

g035_druid_c.jpg

ブースのモニター(出展:VentureClef)では、BlackBerry (ブラックベリー) のスクリーン上に表示されたウェブ・ポータルを操作するデモが行なわれた。Druidはパソコンからだけでなく、ブラックベリーからも操作することができる。将来はApple iPhoneもサポートするとのことである。

 

Druidのアーキテクチャー

Druidは前述の通り、オープンソースを基盤とするユニファイド・コミュニケーション・ソフトウェアである。Druid内の交換機には「Asterisk(アスタリスク)を、インスタント・メッセージングには「Jabberd2(ジャバー・ディトゥー)、電子メールのプロトコール(IMAP)には「Dovecot(ダブコット)が、ファックス・サーバーには「HylaFAX(ハイラ・ファックス)が使われている。これらにより、Druidは、音声、インスタント・メッセージング、ビデオ、電子メール、ファックス、携帯電話通話を統合して扱うことができる。YongDruidのもう一つの特徴について、「SOAP APIを提供しており、第三者アプリケーションと簡単に連携することができる」と説明した。例えば、オープンソースのCRMである「SugarCRM(シュガーCRM)から簡単にDruidを呼び出すことができる。SugarCRMの電話番号をクリックすると、その顧客に電話を発信する機能を簡単に付加することができる。

 

なぜオープンソースなのか

Druidは前述の通り、オープンソースで構成されているだけでなく、Druid自身もオープンソースとして公開している。Yongに何故オープンソースとしたのかと尋ねると、質問の意味を理解するためか一呼吸おいて、「コミュニティの知恵を製品に取り入れ、このサイクルが繰り返され、息の長い製品とするため」と述べた。Yongのような若いエンジニアにとっては、プログラミングを始めた頃にはオープンソースが広まっており、これを利用して製品を作ることが当たり前のオプションとなっている。オープンソースという優秀な部品が揃っており、Voicerouteの付加価値は、オープンソースを部品として構築されたコミュニケーション・ソリューションである。YongのようなGeneration Yにとってはこれが当たり前の開発手法である。

 

トレンド

Yongに会社の最終目的はIPOかと尋ねると「そんな先までは考えていない」との答えが返ってきた。話を聞いていると、Yongは純粋にソフトウェアが好きであるということが伝わってくる。若い世代の優秀なエンジニアが、自分の好きなことに没頭して製品開発を行なっている構図が浮かび上がる。これからこの世代において、革新的な技術が登場しそうな予感を感じながら話を終えた。

ソーシャル・コミュニケーター (DEMO 08より)

Friday, February 29th, 2008

今年は、ユニファイド・コミュニケーションズ (Unified Communications) が加速しそうな年である。DEMO 08では、ノキア (Nokia) の拠点であるフィンランドから、Movial (モービアル) という会社が、ユニファイド・コミュニケーションズの最新作を発表した。

Social Communicatorという製品

ユニファイド・コミュニケーションズとは、電話、電子メール、IM、電話会議、ビデオ会議、プレゼンスなど、一連のコミュニケーション機能を統合して、ダッシュボード上で提供するものである。通信機能を統合すれば使い勝手が良くなるだけでなく、企業内でコラボレーションが進み、生産性が向上することが期待されている。またソーシャル・ネットワークのように、社員間でのネットワーク効果で、新製品を生み出したり、開発期間を短縮するなどの効果を狙っている。

g023_movial_a.jpg左はMovialがデモを行った「Social Communicator(ソーシャル・コミュニケーター) という製品で、このダッシュボードに電話からビデオ会議まで、様々な通信機能が統合されている。(出展: Movial)

Movialが他社と異なるのは、ユニファイド・コミュニケーションズにソーシャル機能を取り入れていることである。ワンクリックで受信したニュースを共有したり、ワンクリックでユーチューブ・ビデオを共有できることである。更に、Social Communicatorはパソコンだけでなく、携帯電話も稼動し、携帯電話がユニファイド・コミュニケーションズのダッシュボードになる点がこれからのトレンドを示唆している。

携帯電話でのWeb 2.0

今回のDEMO 08では実演しなかったが、Movialは携帯電話Linux (Mobile Linux) 向けに、インターネット・アプリケーション・スイートを開発している会社で、「Internet Experience Suite (IXS)」という名称で出荷している。

g023_movial_b.jpg

IXSには、ブラウザー、メディア・プレーヤーとこのSocial Communicatorが含まれており、携帯電話メーカーは、IXSを自社向けにカストマイズして使う。(上の写真は携帯電話への実装事例。) つまり、携帯電話の性能がパソコンに近づくにつれて、デスクトップ上での処理が携帯電話にオフロードされていく。IXSFlashAjaxをサポートし、次世代の携帯電話では操作性が大幅に向上する。Social Communicatorをデスクトップと携帯電話の両方で使えることにより、社外からは勿論、社内で席を外していても携帯電話経由で即座にテレビ会議ができることになる。Social Communicatorはノキア本社の隣町で生まれた製品であるが、日本における成長が期待される製品である。