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犯罪者の社会復帰を後押しするインキュベーター、刑務所は人材の宝庫!

Friday, December 12th, 2014

米国で犯罪者の社会復帰を支援する事業が話題を集めている。インキュベーターのモデルで、罪を犯した人が起業するのを支援する。犯罪者の中には優秀な人材が埋もれており、これを社会に役立てようという試みである。実際に、刑務所内でプログラミング教育が始まり、その成果に注目が集まっている。刑務所を舞台に新たな取り組みが始まった。

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犯罪歴のある人の事業を支援

この事業を推進してるのが「Defy Ventures」というニューヨークに拠点を置く非営利団体で、刑期を終え出所した人を対象に、事業のスタートアップを支援し出資する。創設者でCEOのCatherine Hoke (上の写真、右側の女性) が、シリコンバレーで開催されたカンファレンス「DEMO Fall 2014」で、事業の狙いを自らの体験を交えて紹介した。また、出所して起業家の道を歩んでいる二人 (上の写真、男性二人) が、事業を起こす経緯を語った。

Defy Venturesは犯罪歴のある人を対象としたインキュベーターで、教育プログラムと起業資金を提供し、事業のスタートアップを支援する。このプログラムは10万ドルのファンドを用意し、成績優秀な受講者複数に振り分ける。コンペティションの形でプログラムが進行する。

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プログラムの内容

受講者は、まず、導入プログラム「Introductory Training Program」で三週間の教育を受ける。このプログラムを通過した人は「Defy Academy」に進む (上の写真)。これは七か月の集中教育で、受講者はリーダーシップやビジネスの基礎を学習する。今年からオンライン教育を開始し、七つの州から参加している。受講者は「Entrepreneurs-in-Training」 (教育中の起業家) と呼ばれる。講師陣には著名ベンチャーキャピタル「Draper Fisher Jurvetson」のTim Draperなどが含まれている。受講生はプログラムの中で起業について学ぶだけでなく、実際に起業しビジネスを始める。

Defy Venturesは受講者に対し、前述の10万ドルのファンドから、起業のために一人当たり最大2万ドルを出資する。Defy Venturesが出資先を選定する際は、ビジネスの将来性、ビジネスピッチ、プログラムの成績などが考慮される。出資対象ビジネスは精査され、Defy Venturesが認めているビジネスタイプに限定される。

プログラムの実績とビジネスモデル

このプログラムを終了し、実際に起業した件数は71社に上る。ベンチャーキャピタルと異なり、Defy Venturesは出資した資金を回収するのが目的ではない。Defy Venturesは篤志家からの寄付で運用している。一方、今年から授業料を徴収するモデルに変更し、中期的には授業料収入で事業を運営することを目指している。

米国では毎年200万人を超える人が収監され、世界の中で単位人口当たりの受刑者数が一番多い。Hokeによると、これら犯罪者にはHustler (やり手) が多く、犯罪者が巨大な人材プールを形成している。Defy Venturesは、ここから優秀な人を発掘することを目指している。このプログラムへの参加者は2012-13年は115人で、2014年は172人に増えている。2015年は大幅に増え1000人となり、このうち500人はサンフランシスコ地区で教育を受ける計画である。

プログラムを受講した感想

ステージ上で二人の受講者が起業に至る経験を紹介した。一人はドラッグディーラーで (先頭の写真、左側の人物)、刑務内で雑誌を読みDefy Venturesを知り、出所してすぐに応募した。今ではスポーツ用品販売の事業を立ち上げている。もう一人 (先頭の写真、中央の人物) は脱税で収監された。服役中に食品ビジネスを立ち上げ、今はそれを拡大し「Inside Out Bars」というブランドでグラノラバーの販売を行う計画だ。話し方はソフトで素敵な笑顔でグラノラバーは売れそうだと感じた。Hokeは28歳の時に、テキサス州で受刑者を起業家に育ているプログラムに参加し衝撃を受けたと述べた。刑務所には優秀な人材が眠っていることを発見し、このビジネスを始めたとしている。Hokeの持論は、受刑者から学ぶことが多いということで、犯罪者は間違った方向に進んでいるものの、ビジネスセンスに長けた人が少なくないという解釈だ。

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刑務所内でプログラミング教育

既に刑務所内で受刑者に対する教育が始まっている。「The Last Mile」はサンフランシスコに拠点を置く非営利団体で、受刑者にプログラミングを教育することで、社会復帰を支援している。手に職を付けると、刑期を終えた受刑者が再び犯罪を起こす確率が下がり、刑務所維持費を大幅に削減できるとしている。これは「Prison Programs」と呼ばれ、受刑者に起業のための教育とプログラミング教育を実施する。サンフランシスコ近郊の刑務所「San Quentin State Prison」で10月から18人の受刑者を対象に始まった。これは「Code 7370」と命名され、六か月にわたり、HTML、CSS、JavaScriptなどのプログラミング言語を学ぶ (上の写真)。

教育はプログラミング教育ベンチャー「Hack Reactor」が務める。講師はGoogle Hangoutsを使って受刑者にリモートで講義を行う。受刑者はパソコンを使い、実際にプログラムをコーディングする。受刑者はインターネットにアクセスすることが禁じられており、オフラインで学習する。インターネットにアクセスする際は、刑務所の専任スタッフが受刑者に代わり、検索などを行う。受刑者がプログラミング技術を習得することで、社会復帰を後押しする。収監中はカリフォルニア州政府向けにプログラムの開発を行う。

The Last Mileはプログラミングを社会復帰の手段に利用しているが、長く収監されている受刑者は、キーボードやマウスに触ったことが無い人も少なくない。iPhoneはテレビのコマーシャル知ったという人も多い。解決すべき課題は少なくないが、ITを社会復帰に利用する取り組みが始まった。

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大手ベンチャーキャピタルが注目する理由

上述のTim Draper (上の写真、前列中央の人物、受講生との集合写真) はDefy Venturesの講師を務め、プログラム運用に深くかかわっている。Draperは、受刑者はある意味で起業家であり、社会復帰のためには自らがビジネスを興すことが最適の選択肢であると述べている。投資家の眼からすると、受刑者たちは起業に向いていると見ている点は興味深い。また、Hokeの話しを聞くと、犯罪者に対して同じ目線で接し、家族の一員のように対応しているのを感じる。米国は失敗しても再度挑戦できる社会であるが、犯罪者は多くの企業から敬遠されているのも事実である。DraperやHokeは、事業の観点からは、ここに大きなチャンスがあることを感じ取っている。米国という“犯罪大国”だけで成立するモデルかもしれないが、受刑者から革新的なビジネスが登場するのも、そう遠くはないとの印象を受けた。

ウエアラブルでお洒落になる!スマートドレスが似合う洋服を教えてくれる

Wednesday, December 3rd, 2014

米国クリスマス商戦で、オンラインストアーの売り上げが大幅に伸びている。しかし、衣料品の購入では自分に合うサイズの商品を見つけるのが難しい。これは自分のサイズを詳細に掴んでいないのと、業界で統一したサイズ基準が無いためである。この永遠の課題に終止符を打つ技術が登場した。スマートドレスを着ると、サイズを測定でき、自分にフィットする洋服が分かるのだ。

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スマートドレスでサイズを測定

これは「LikeAGlove」という新興企業が開発しているスマートドレス「Smart Garment」で、シリコンバレーで開催された「DEMO Fall」で公開された。このドレスを着ると体のサイズを詳細に測定でき、自分にフィットする洋服が分かる。上の写真のモデルさんが着ている赤いドレスがSmart Garmentで、伸縮する素材でできている。この素材には伝導性ファイバーが織り込まれ、身体サイズをドレスが計測する。収集したデータは衣服のコントローラーからタブレットに送信される (モデルさんの持っているタブレット)。

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測定結果をタブレットで閲覧

上の写真が測定結果サンプルで、身体の五か所のサイズが表示される。具体的には、わき下間サイズ、カップサイズ、バンドサイズ、ウエスト、ヒップが計測される。実際にモデルさんにデモを見せてもらったが、お腹をへこませると、その結果がリアルタイムでタブレット上に表示された。実際には、Smart Garmentを数分間着装し、サイズを測定する。

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消費者にフィットする商品を表示

スマートドレスで自分のサイズが正確に分かるが、これでフィットする洋服を見つけられる訳ではない。もう一つの問題は、衣服のサイズに統一基準がないことである。つまり、同じサイズでも、ブランドにより大きさが異なるのだ。LikeAGloveは主要ブランドの衣服サイズのデーターベースを構築している。サイズが分かると、データベースを検索し、消費者にフィットする商品を表示する (上の写真)。更に、LikeAGloveはサイズだけでなく、消費者の体型を考慮し、一番似合う衣服を推奨する。

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何故サイズを統一できないのか

ジーンズやシャツを買うとブランドによりサイズが異なり不便を感じる。米国アパレル業界では、洋服のサイズ表記について統一したルールが無いためである。同じサイズ表記でもブランドが異なると、実際の大きさが異なる。上のグラフはそれを示しており、「サイズ10」でもブランドにより、大きさが異なる。黒色の線は業界の中央値で、ピンク色の線は米国人気ブランド「K-mart」を示す。K-martブランドの衣服は、標準値より大きめに設定してあり、「サイズ10」でも、実際にはその上の「サイズ12」に近い。これは「Vanity Sizing」(虚栄心サイジング)というマーケティング戦略である。K-martに行くと、一つ小さい「サイズ10」の服も着れるということで、売り上げが伸びる仕組みだ。

ビジネスモデルは検討中

DEMO Fall会場で、LikeAGlove CEOのSimon Cooperと、CMOのJessica Insalacoから、製品概要とビジネスモデルの説明を受けた。LikeAGloveはSmart Garmentとして、キャミソール (上述のドレス) の他に、ソックス、シャツ、レギングスを開発している。女性用だけでなく、男性向けには、シャツとレギングスを提供する。Smart Garmentの販売チャネルについては未定としているが、複数のオプションを検討している。具体的には、Amazonなど、オンラインストアー経由で販売することを目指している。また、消費者に直販するモデルも検討されている。価格は公表されていないが、量産すると安くなるとしている。

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eBayは超高精度な仮想試着室を開発中

オンラインストアーの技術進歩が著しい中、eBayは高精度なコンピューターグラフィックスを駆使し、仮想の試着室を開発している。eBayは2014年2月、3Dモデリング技術を開発している企業「PhiSix」を買収し技術開発を開始した。PhiSixは衣服の写真やパターンファイルなどから3Dモデルを生成し、衣服の挙動をシミュレーションする。消費者は高精度のコンピューターグラフィックスを見て、どの洋服を買うかを決める。消費者が体のサイズを入力すると、システムは体にフィットする商品を推奨する。

仮想試着室では異なる環境の中で衣服を着て動くことができる。上の写真はファッションショーのステージをイメージしたもので、モデルの動きは極めて精巧で、人間の動きと見分けがつかない。衣服もその特性に合った挙動をする。このケースではトップスは薄手のシャツで、歩くと風を切って、シャツが軽くたなびく。周囲の環境はステージの他に、街中や、ゴルフ場などが開発されている。購入する服を着て街中を歩くと、どのような感じなのかを把握できる。ゴルフ場では、購入するウエアを着てスイングすると、周りからどう見えるのかを理解できる。eBayはこの仮想試着室をオンラインストアーやモバイルアプリなどで展開する。仮想試着室でリアルなイメージが掴めれば、オンラインストアーの売り上げが伸びるという目論見だ。

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シリコンバレーでサイズ測定専用機が登場

消費者にフィットする洋服を見つけるために、ベンチャー企業はしのぎを削ってきた。「Bodymetrics」と言うベンチャー企業は、消費者の体をスキャンしてサイズを測定する技術を開発した。この装置はシリコンバレーの高級デパート「Bloomingdales’」に設置された (上の写真)。消費者はこの装置の中で、サイズを測定する。Bodymetricsは16台のMicrosoft Kinectを実装しており、3Dカメラで被写体の体を撮影し、立体オブジェクトを生成する。

10秒ほどで測定ができ、その結果は小売店のiPadに表示される。200ヵ所のサイズを計測し、アプリは最適な商品を推奨する。消費者は事前に専用アプリをインスト―ルしておくと、測定結果を自分のiPhoneで見ることができる。同様に、アプリは最適なサイズの商品を推奨する。従来はレーザー光での測定であったが、Kinectを使うと低価格で簡単に測定ができる。街で話題となった技術であるが、現在は使われていない。

ウエアラブルでサイズを測定するという発想

多くのベンチャー企業から、衣服にセンサーを組み込み、心拍数や心電図を測定し、健康管理に役立てる技術が登場している。これに対し、LikeAGloveはファッションの用途で、スマートドレスで身体サイズを計測する。しかし、一度サイズが分かればドレスは不要となる。家族や知人で利用する方法もあるが、LikeAGloveはドレスの再利用についてはコメントしていない。もし利用者が定期的にサイズを測定すれば、体型の変化を把握でき、健康管理やフィットネスに役に立つ。もう少し先になるが、3Dプリンターで衣服を印刷できれば、身体の詳細な三次元データが必要不可欠となる。究極の洋服を作れるが、Smart Garmentのようなセンサーが再び必要となる。Smart Garmentのデモを見て夢の広がる技術だと感じた。

スマートグラスでビジネスアプリが続々登場、Googleはグラスアプリ開発を支援

Wednesday, April 30th, 2014

サンフランシスコで開催されたDEMO Enterpriseカンファレンスでスマートグラス最新技術に注目が集まった。Remedyというベンチャー企業は、Google Glassを基盤とする医療アプリを発表した。XOEye Technologiesというベンチャー企業は、「XOne」というスマートグラスのデモを行った。スマートグラスはビジネスとの相性が抜群で、斬新なビジネスソリューションが続々と登場している。Googleはこの流れを受け、「Glass at Work」というプログラムを開始し、Google Glass向けビジネスアプリの開発を支援している。

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Google Glassで患者の様態を記録

Remedyはサンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業で、Google Glass向けに医療アプリ「Beam」を開発している。医師はGoogle Glassでこのアプリを使い、患者の状態を撮影し (上の写真)、それを別の場所にいる専門医に送信する。専門医は受信映像をタブレットなどで閲覧し、治療に関するアドバイスを行う。Beamは担当医師が病状を正しく判断し、効率的な治療を目指している。

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上の写真はBeamデモの様子である。担当医師がGoogle Glassを着装して、患者の病状をビデオ撮影する。パソコン画面には、ビデオ撮影された患者の症状が、ライブラリーとしてまとめられている。皮膚にできた斑点や術後のスティッチなどが記録されている。別の場所にいる専門医がこのビデオを見て、担当医師に治療方針についてアドバイスを行う仕組みである。

大学病院での評価は上々

後日、Remedy創設者でCEOのNoor Siddiquiに、Beamのフィールド・トライアルについて話を聞いた。Siddiquiによると、BeamはHarvard Universityでパイロット・システムの検証が行われている。更に、University of Pennsylvaniaでシステムを展開する準備を行っている。Harvard UniversityのBeamへの評価は高く、ER (救急救命室) で担当医がBeamを使い、専門医からアドバイスを受けることで、医療効率が向上したとしている。また、一般病棟においても、担当医がBeamを使い、専門医と治療方針を決め、不要な入院が減ったとしている。Harvard Universityは、医師だけでなくナースなどがBeamを使い、医療コスト削減を目指すとしている。多くの大学でGoogle Glassトライアルが行われており、グラスは医療現場で必要不可欠の存在となってきた。

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独自仕様のスマートグラス

Google Glassに触発され、スマートグラス開発が加速している。テネシー州ナッシュビルに拠点を置くXOEye Technologiesは、独自のスマートグラス「XOne」 (上の写真) を発表した。XOneは一般消費者ではなく、企業ユーザを対象としている。XOneはビジネス・グラス仕様で、フレームの中央にカメラを搭載しており、バーコードをスキャンしたり、テレビ会議を行う。XOneにはディスプレイはなく、内側にLEDライトが搭載され、処理の完了を知らせる。

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宅配スタッフが商品をスキャン

XOneはオフィスの外で業務を効率的に行うことを目的に開発された。作業員や専門スタッフが着用して作業の効率化を図る。上の写真はXOneを着装した配送スタッフが商品を宅配しているところである。配送先で商品の写真撮影を行い、バーコードをスキャンする。商品梱包が傷んでないことを証拠として残し、バーコードをスキャンして配送完了を入力する。正常にスキャンされるとXOne内側のLEDライトが点灯する。

XOneは「Vision」というクラウドと連動して稼働する。XOneでスキャンしたデータはVisionに送信され、サーバ側のアプリケーションで処理される。XOneのカメラで撮影したビデオはVisionに送信され、別の社員がそれを閲覧できる。前述Beamのように、遠隔地の専門技術者がビデオを見て、作業員にアドバイスを与えることができる。作業員が電子機器内部の配線を撮影し、それを専門スタッフが見て操作手順をアドバイスできる。スマートグラスを使ったコラボレーションが新しいワークスタイルとなる。

Glass at Workでグラスアプリ開発支援

Google Glassは消費者向けに開発されたが、実は、ビジネス・アプリとの相性が抜群にいいことが分かってきた。Google Glassは多くの病院でトライアルが始まり、患者治療で必須のツールとなってきた。ビジネス・グラスは工場や作業現場で、安全と効率化の切り札となっている。一方、Google Glassを企業システムと連携するには、特別な作業が発生する。Google Glassをアメリカの病院で利用するためには、HIPPA (医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律) の要請で、セキュリティ機能が必要となる。データ暗号化が求められ、更に、データを施設外に持ち出すことはできない。つまり、Googleサーバにデータが格納されることは禁じられ、Mirror APIを使うのではなく、利用者側で専用システムの構築が必要になる。

このような背景で、Googleは「Glass at Work」プログラムを開設し、Google Glassの企業向けシステム開発を支援している。Google Glassがビジネス・ソリューションに向かう中、Googleのグラス開発戦略もビジネスに重心を移しつつある。

衝撃の新技術!! WiFiではなく地磁気を利用し建物内でピンポイントに位置を特定

Thursday, April 24th, 2014

GPSシグナルの届かない建物内で位置を特定するためにはWiFiシグナルが利用される。IndoorAtlasというベンチャー企業は、WiFiシグナルではなく、建物の磁気特性を利用して位置を特定する技術を開発した。ピンポイントに位置を特定できるだけでなく、ハードウェア機器は不要である。インドア・ポジショニングと呼ばれる、屋内で位置を決定する新技術の登場が相次いでいるが、IndoorAtlasはこの市場で波紋を起こしている。

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小売店舗のショッピング・アプリで利用

IndoorAtlasは、Mountain View (カリフォルニア州) に拠点を置くベンチャー企業である。創設者兼CEOのJanne Harverinen教授 (上の写真) は、DEMO Enterpriseカンファレンスで、製品デモを交えて、IndoorAtlas技術について説明した。同社が開発しているインドア・ポジショニング技術は、小売店舗におけるショッピング・アプリなどで利用が始まっている。

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上の写真はフィンランドのPrisma Storeというスーパーマーケットで、IndoorAtlasを利用したアプリのデモである。消費者が店舗で「Ben & Jerry」アイスクリームを買いたいが、売り場の場所が分からない。アプリの検索画面に「Ben & Jerry」と入力すると、売り場の場所が表示される (画面左上ポップアップ)。消費者の場所は青丸で示される (画面左下)。売り場に向って歩けば、画面上で青丸も移動し、目的地に到達できる。精度は1.8メートルで、売り場の場所を正確に把握できる。一方、小売店舗側としては、消費者がどの売り場の前に立っているのかを正確に捕捉できる。これにより、その売り場で販売している商品のクーポンを消費者にプッシュするなど、位置に応じたプロモーションが可能となる。WiFiを使ったインドア・ポジショニングは精度が低く、消費者がどの棚の前に立っているかまでは特定できない。IndoorAtlasを使うと高度な販売促進プログラムが可能となる。

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位置決定のメカニズム

Harverinen教授はブースでその背景技術について解説した。IndoorAtlasが屋内で場所を特定する仕組みは、建造物の磁気を読み取り、それをフロアプランにマッピングすることによる。建造物は固有の磁気特性を持っており、上の写真はそれをヒートマップで表示している。

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上の写真は同じ建造物のフロアープランを示している。上述の磁気特性をこのフロアープランにマッピングすることで、高精度で位置を特定できる。実際には、スマホ向け専用アプリでフロアープランに沿って歩き、磁気を計測し、測定したデータをフロアープランと共にIndoorAtlasクラウドに格納する。更に、店舗側でショッピング・アプリを開発し、IndoorAtlasが提供するAPIで、位置情報にアクセスする構造となる。

下の写真はIndoorAtlas専用アプリでフロアープランをHEREマップにアップロードしている様子である。この作業のあと、施設内でスマホを持ち、フロアープランに沿って歩き、磁気特性を計測する。

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iOS向けアプリ開発が加速する

Harverinen教授は新技術の特長について、IndoorAtlasは磁気特性を指標に位置を決定するため、スマホのコンパスをセンサーとして利用できると説明した。どのスマホもコンパスを標準搭載しており、そのままで利用できる。インドア・ポジショニングでは、前述の通り、WiFiシグナルを利用する方式が一般的である。これはWiFiポジショニングとも呼ばれ、受信シグナルの強度を測定し、三角測量のアルゴリズムから位置を決定する。測定結果は人の込み具合や温度に依存し、精度は3-10メートルと言われている。

それ以前に、AppleはiOS上でWiFi APIへのアクセスを制限しており、iOSクライアント上でインドア・ポジショニング・アプリを構築することができない。現在、iOSでWiFi位置情報を利用するためには、クラウド上にシステムを展開する必要がある。これに対しIndoorAtlasは、iOS上でインドア・ポジショニング技術を提供し、iOS上でのアプリ開発が可能となる。iOSにおける位置情報アプリ開発の道を開くことになり、その意義は極めて大きい。

ロボットが北に向って走らない

Harverinen教授はIndoorAtlas開発の切っ掛けについても説明した。教授は大学研究室でロボティックス研究に従事していた。屋内で北に向けてロボットを走らせたが、方向が頻繁に変わり真っ直ぐ進まない。二番目のロボットも同様に真っ直ぐ進まなかったが、一番目のロボットと同じ軌跡を辿った。これがヒントとなり、建物は固有の磁気特性を持つことを発見し、IndoorAtlasの開発に至った。

Harverinen教授はこちらの質問に丁寧に回答し、研究室で特別授業を受けているようであった。二階建ての建物で使えるかとの質問には、磁気特性は三次元であり問題ないと回答。教授はIndoorAtlasは地下でも使えるため、東京の地下街で実力を発揮するとも述べた。地磁気を使ったインドア・ポジショニングとは衝撃的な発想で、同時に、大学の基礎研究が事業に結びつくビジネス・センスの高さも感じた。

Google Glassで支払いができる「グラス決済」に注目!!

Friday, December 13th, 2013

Google Glass完全ガイド:ファイナンス編】

スマホ決済の次はGoogle Glassで支払いを行う「グラス決済」が始まる。Google Glassをかけて店舗に入り、値札のバーコードを読み込むと、商品内容が分かり、Google Glassで支払いを行う。レジに並ぶことなく、商品を受け取って、そのまま店を出る。Google Glassがショッピング・スタイルを大きく変えようとしている。

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Google Glassで買い物をするデモ

このシステムは「GlassPay」という名前で、West Henrietta (ニューヨーク州) に拠点を置くRedBottle Designというベンチャー企業が開発している。Santa Clara (カリフォルニア州) で開催されたDEMOカンファレンスで、GlassPay開発責任者Ryan Langilleらがデモを交えて (上の写真)、その仕組みを解説してくれた。顧客はGoogle GlassにGlassPayアプリをインストールして利用する。店舗で買い物をして、商品バーコードをGlassPayで読み込むと、そのままビットコインで支払いができる。ビットコインとは注目を集めている仮想通貨で、オンライン・ショッピングだけでなく、街の店舗で利用できるところが増えてきた。

上の写真はPier 10という店舗で、GlassPayを使って買い物をするデモである。タブレット画面は、Google Glassのスクリーン・イメージを表している。顧客は店舗に入り、Google Glassに「Let’s Shop」と語りかけると、GlassPayアプリが起動する。Google GlassはBluetoothで店舗に設置されている ビーコンと交信し、アプリは今どの店舗にいるかを認識する。そしてアプリは、その店舗の商品データベースと連携する。

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Google Glassで商品バーコードをスキャン

次に、Google Glassに「Scan items」と言うカードが表示され、顧客は商品プレートのバーコードをスキャンする。上の写真がその様子で、視線を移動し四角の枠をバーコードに重ねる。

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上の写真は商品プレートで、左上に商品バーコードが印刷されており、ここに視線を合わせてスキャンする。バーコードのスキャンが終わると、Google Glassに商品情報がカード形式で示される (下の写真)。

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ビットコインで支払いを行う

ここには商品名が「Blue T-Shirt」で価格が「0.25 BTC」と表示されている。BTCとはビットコイン単位で、今日現在、1 BTCが908ドルで、0.25 BTCは227ドルに相当する。ティーシャツにしては高すぎるが、デモ当日のBTC相場は200ドル程度で、商品価格は50ドルであった。先月からビットコイン相場がバブル状態で、BTCが高騰し、引いてはドル換算すると割高になっている。

買い物が完了するとGoogle Glassに「pay for my order」と語りかけると、GlassPayは買い物金額の合計を表示する。金額を確認し、Google Glassをタップしすると、支払いプロセスが起動する。決済が完了すると、Google Glassに「ready for pick-up」と表示され、顧客は店舗出口で購買した商品を受け取り、店を出るプロセスとなる。レジの列に並んで支払いをする必要はなく、スマートに買い物ができる。

グラス決済の応用シーン

RedBottle Design は、GlassPayを使ったグラス決済を、イケアような大型家具販売店で利用するシナリオを描いている。顧客は売り場フロアーで家具を選び、GlassPayを使って、その場で支払いを済ませる。出口では、イケアのスタッフが家具を組み立て、顧客はそれを受け取り店舗を出る。また、Best Buyのような家電量販店での導入も目指している。店舗フロアーには代表的な商品だけを陳列し、顧客は商品を手にもって試すことができる。GlassPayを使うと、異なるオプションの商品を閲覧でき、顧客は気に入った商品をその場で購入できる。店舗側としては、売り場フロアーへの陳列商品点数を最小限に抑えることができる。また、スーパーマーケットでの導入も目指している。顧客は棚から商品を取り上げるごとにGlassPayでスキャンする。レジで支払いをする際は、Google Glassに「pay for my order」と語りかけるだけで、全商品の決済が完了する。レジの手間が省け、チェックアウト・プロセスが簡便になる。

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Google Glassは決済に最適なデバイス

会場ではブースにランプなどの商品が並べられ、即席の小売店舗が作られ (上の写真)、GlassPayの利用法が示された。デモを見て強く感じたことは、スマートフォンでバーコードを読み込んで決済するより、Google Glassでの決済が飛躍的に便利であることだ。ポケットからスマートフォンを取り出し、パワーオンし、アプリを立ち上げ、カメラでバーコードを捉えるより、Google Glassでバーコードを覗き込むほうが簡便であり、また人間の自然な動きに近い操作でもある。Google Glassは買い物での決済に最適なデバイスで、これから大きな展開が期待できる。

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ビットコインは問題を抱えながらも評価向上

GlassPayは、前述の通り、ビットコインと連動しており、消費者はビットコイン口座から支払いをする。決済手数料がかからないため、個人や小売店舗での利用が増えている。コーヒーショップやレストランで使用できるだけでなく、カーディーラーでもビットコインを取り扱うところが登場した。Lamborgini Newport Beachというカーディーラーは、Tesla Model Sを91.4BTC (103,000ドル) で販売し話題となった。一方、ビットコインはドラッグなど違法薬物の購入やマネーロンダリングで使われ、社会問題になっている。更に、ビットコインは投機の対象となり、相場は乱高下している (上のグラフ、ドルの対ビットコイン為替レート、最新六か月)。ビットコインは多くの課題を抱えながらも、その利用範囲は確実に広がっている。ビットコインに対する評価も上がる中、Google Glassでの決済方式は大きく飛躍するという手ごたえを得た。おサイフケータイの次は、Google Glassで支払いを行う「おサイフグラス」が始まった。