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第四次産業革命に突入、ダボス会議は大失業時代が到来すると警告

Friday, January 15th, 2016

「World Economic Forum (世界経済フォーラム)」 の年次総会 「ダボス会議」が2016年1月20日から23日まで、スイス・ダボスで開催された。今年の主要テーマは「Fourth Industrial Revolution (第四次産業革命)」で、テクノロジーの社会への影響が議論された。「今までに経験したことのない時代に入りつつある」との認識が示されたものの、「その実態は不明な点が多い」とも述べている。特に、テクノロジーの進化が労働者の職を奪うことになり、大失業時代に備えた対策が必要であると警鐘を鳴らしている。

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The Future of Jobs」

世界経済フォーラムは将来の雇用についての報告書「The Future of Jobs」を公開した。この報告書は、世界は第四次産業革命に入りつつあるとの認識を示し、人事採用、技能、労働力はどうあるべきかを論じている。ビジネスの破壊的な変化で雇用情勢が劇的に変わるとし、新しい職業が生まれると同時に、従来の職業がなくなるとしている。いま小学校に入る子供の65%が、いまは存在しない職業に従事するとも述べている。

報告書は、新しい時代に求められる技能や職種や人事採用に対応するために、企業や政府や個人は時代の流れに乗ることを求めている。つまり、対策を講じないと大量の失業者が生まれ、深刻な社会問題を招くと警告している。この報告書は2020年までの雇用について論じている。報告書は先進国と新興国の371社のChief Human Resources Officers (採用責任者) のアンケートをもとに構成されている。

産業革命の定義

世界経済フォーラムは産業革命を次の通り定義する。第一次産業革命では、家畜に頼っていた労力を蒸気機関など機械で実現した。第二次産業革命では、内燃機関や電力で大量生産が可能となった。第三次産業革命では、コンピュータの登場でデジタルな世界が開けた。第四次産業革命は、現在進行中で様々な側面を持ち、その一つがデジタルな世界と物理的な世界と人間が融合する環境と解釈している。(ここで述べられる第四次産業革命は、Industry 4.0で使われる用語より幅広い意味を持つ。)

第四次産業革命では、今までバラバラに開発された技術が、いまお互いに影響を及ぼしている。具体的には、人工知能、機械学習、ロボティックス、ナノテクノロジー、3Dプリンター、遺伝子工学、バイオ技術が、お互いに影響しあい技術進化を加速させる。また、スマートホームやスマートシティーなどは地球温暖化の問題解決に貢献する。

大量の失業者が生まれる

報告書は2015年から2020年の間で、失われる仕事と新しく誕生する仕事を分析している。先進国と新興国で710万人の雇用が失われ、200万人の雇用が創出され、差し引き510万人が失業すると分析している。(下のグラフがそれを示す。左側が雇用が失われる職種で、右側が増える職種。) 雇用が失われる最大の職種は「Office and Administrative」で、ホワイトカラーの事務職としている。他に製造業や建設業も雇用数が大きく減るとみている。一方、ビジネス・経理、会社経営、コンピュータ・数学などで雇用が増えると予測している。

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大量の失業者を生む理由

報告書はテクノロジーが失業者を生む理由と分析する。雇用を減らす最大の要因は、モバイル・インターネットとクラウド、及び、ビッグデータとしている。2015年から2017年にかけては、新エネルギー、Internet of Things、高度製造技術(3Dプリンター)が主因となる。2018年から2020年にかけては、ロボット・自動運転車、人工知能・機械学習、高度製造技術が職を奪うと分析する。今は人工知能や自動運転車やロボットの開発がピークであるが、雇用に影響が出るのは2018年からということになる。

求められる職業

一方で、報告書は、この期間で求められる職種についても分析している。一番求められる職種が「Data Analysts」で、大量のデータを分析し、そこから知見を引き出すアナリストが求められている。技術が劇的に進化し、大量のデータが蓄積され、この有効活用が求められている。次は「Specialized Sales Representatives」で、特殊技能を持つ営業となる。技術進化が進む中、顧客企業や官公庁に、革新的な製品の内容を的確に伝える技能が求められている。

今すぐ失業対策が必要

報告書は、雇用の将来動向の見解については、二極分離する傾向があるとしている。あるグループは、新たに誕生する職種は労働者をルーチンワークから解放するとし、大きな期待を寄せている。別のグループは、テクノロジーにより大失業時代が到来すると考える。先の産業革命では新しい職種のための教育システムを構築するのに数十年を要した。多くの職種がコンピューターで置き換わり、大量の失業者を生んだ。第四次産業革命は高速で技術革新が進み、今すぐに対策が必要であるとしている。

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具体的な提言

政府や企業は、短期的には、労働者を新しい労働環境に移行する措置が必要で、長期的には将来求められるスキルを担った人材の育成が必要となる。この対策を取らなければ、大量の失業者が生まれ、企業の事業が縮小していく。政府は人材の教育に加え、労働市場に対する指針を示し、労働関連法令を改定していく必要があるとしている。つまり、社会のパラダイムが変わり、大量の失業者を生むが、再雇用のチャンスを与えるためのシステムを構築することに尽きると解釈できる。

短期的な対策

人事機能を根本から変える必要があるとしている。企業が新しい環境で事業を展開するためには、新しい人材が必要となる。人事は解析ツールを活用し、必要な人材を見つけ、企業に欠落しているスキルを埋める。また、データ解析(Data Analytics)の活用を促している。企業や政府は新しい環境に適応するために、人材の採用計画や管理が求められる。将来予測や計画のためにデータ解析ツールが重要となる。

長期的な対策

教育システムの改善が何よりも必要と結論付けている。現在の教育システムは二つの大きな問題を抱えている。一つは、大学は人文科学と科学工学に分かれており、純粋な学問を学ぶ場として機能する。もう一つは、著名専門学校は実質的教育よりも卒業証書に重点を置く。つまり、両者とも激変している社会に対応できる教育を提供できていないと、報告書は指摘する。更に、生涯教育の必要性を強調している。これは一生にわたり教育を受けるという意味ではなく、我々は生涯にわたり新しいスキルを習得し、産業に貢献する必要がある、ということを示す。特に、日本のように急速に高齢化社会に向かう国は、シニア層も新しいスキルを身に付け、労働市場に参加すべきとしている。

国家レベルの対策が必要

報告書を一言でまとめると、テクノロジーの進化で社会が激変しているが、その実態はつかめていない。しかし、テクノロジーが人間の職を奪い大失業時代が到来することは確実だ。政府や企業や個人は、教育を通してこの荒波を乗り越える必要がある、ということになる。世界経済フォーラムは、国家レベルの対策が必要で、各国に今すぐにアクションをとることを求めている。

犯罪者の社会復帰を後押しするインキュベーター、刑務所は人材の宝庫!

Friday, December 12th, 2014

米国で犯罪者の社会復帰を支援する事業が話題を集めている。インキュベーターのモデルで、罪を犯した人が起業するのを支援する。犯罪者の中には優秀な人材が埋もれており、これを社会に役立てようという試みである。実際に、刑務所内でプログラミング教育が始まり、その成果に注目が集まっている。刑務所を舞台に新たな取り組みが始まった。

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犯罪歴のある人の事業を支援

この事業を推進してるのが「Defy Ventures」というニューヨークに拠点を置く非営利団体で、刑期を終え出所した人を対象に、事業のスタートアップを支援し出資する。創設者でCEOのCatherine Hoke (上の写真、右側の女性) が、シリコンバレーで開催されたカンファレンス「DEMO Fall 2014」で、事業の狙いを自らの体験を交えて紹介した。また、出所して起業家の道を歩んでいる二人 (上の写真、男性二人) が、事業を起こす経緯を語った。

Defy Venturesは犯罪歴のある人を対象としたインキュベーターで、教育プログラムと起業資金を提供し、事業のスタートアップを支援する。このプログラムは10万ドルのファンドを用意し、成績優秀な受講者複数に振り分ける。コンペティションの形でプログラムが進行する。

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プログラムの内容

受講者は、まず、導入プログラム「Introductory Training Program」で三週間の教育を受ける。このプログラムを通過した人は「Defy Academy」に進む (上の写真)。これは七か月の集中教育で、受講者はリーダーシップやビジネスの基礎を学習する。今年からオンライン教育を開始し、七つの州から参加している。受講者は「Entrepreneurs-in-Training」 (教育中の起業家) と呼ばれる。講師陣には著名ベンチャーキャピタル「Draper Fisher Jurvetson」のTim Draperなどが含まれている。受講生はプログラムの中で起業について学ぶだけでなく、実際に起業しビジネスを始める。

Defy Venturesは受講者に対し、前述の10万ドルのファンドから、起業のために一人当たり最大2万ドルを出資する。Defy Venturesが出資先を選定する際は、ビジネスの将来性、ビジネスピッチ、プログラムの成績などが考慮される。出資対象ビジネスは精査され、Defy Venturesが認めているビジネスタイプに限定される。

プログラムの実績とビジネスモデル

このプログラムを終了し、実際に起業した件数は71社に上る。ベンチャーキャピタルと異なり、Defy Venturesは出資した資金を回収するのが目的ではない。Defy Venturesは篤志家からの寄付で運用している。一方、今年から授業料を徴収するモデルに変更し、中期的には授業料収入で事業を運営することを目指している。

米国では毎年200万人を超える人が収監され、世界の中で単位人口当たりの受刑者数が一番多い。Hokeによると、これら犯罪者にはHustler (やり手) が多く、犯罪者が巨大な人材プールを形成している。Defy Venturesは、ここから優秀な人を発掘することを目指している。このプログラムへの参加者は2012-13年は115人で、2014年は172人に増えている。2015年は大幅に増え1000人となり、このうち500人はサンフランシスコ地区で教育を受ける計画である。

プログラムを受講した感想

ステージ上で二人の受講者が起業に至る経験を紹介した。一人はドラッグディーラーで (先頭の写真、左側の人物)、刑務内で雑誌を読みDefy Venturesを知り、出所してすぐに応募した。今ではスポーツ用品販売の事業を立ち上げている。もう一人 (先頭の写真、中央の人物) は脱税で収監された。服役中に食品ビジネスを立ち上げ、今はそれを拡大し「Inside Out Bars」というブランドでグラノラバーの販売を行う計画だ。話し方はソフトで素敵な笑顔でグラノラバーは売れそうだと感じた。Hokeは28歳の時に、テキサス州で受刑者を起業家に育ているプログラムに参加し衝撃を受けたと述べた。刑務所には優秀な人材が眠っていることを発見し、このビジネスを始めたとしている。Hokeの持論は、受刑者から学ぶことが多いということで、犯罪者は間違った方向に進んでいるものの、ビジネスセンスに長けた人が少なくないという解釈だ。

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刑務所内でプログラミング教育

既に刑務所内で受刑者に対する教育が始まっている。「The Last Mile」はサンフランシスコに拠点を置く非営利団体で、受刑者にプログラミングを教育することで、社会復帰を支援している。手に職を付けると、刑期を終えた受刑者が再び犯罪を起こす確率が下がり、刑務所維持費を大幅に削減できるとしている。これは「Prison Programs」と呼ばれ、受刑者に起業のための教育とプログラミング教育を実施する。サンフランシスコ近郊の刑務所「San Quentin State Prison」で10月から18人の受刑者を対象に始まった。これは「Code 7370」と命名され、六か月にわたり、HTML、CSS、JavaScriptなどのプログラミング言語を学ぶ (上の写真)。

教育はプログラミング教育ベンチャー「Hack Reactor」が務める。講師はGoogle Hangoutsを使って受刑者にリモートで講義を行う。受刑者はパソコンを使い、実際にプログラムをコーディングする。受刑者はインターネットにアクセスすることが禁じられており、オフラインで学習する。インターネットにアクセスする際は、刑務所の専任スタッフが受刑者に代わり、検索などを行う。受刑者がプログラミング技術を習得することで、社会復帰を後押しする。収監中はカリフォルニア州政府向けにプログラムの開発を行う。

The Last Mileはプログラミングを社会復帰の手段に利用しているが、長く収監されている受刑者は、キーボードやマウスに触ったことが無い人も少なくない。iPhoneはテレビのコマーシャル知ったという人も多い。解決すべき課題は少なくないが、ITを社会復帰に利用する取り組みが始まった。

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大手ベンチャーキャピタルが注目する理由

上述のTim Draper (上の写真、前列中央の人物、受講生との集合写真) はDefy Venturesの講師を務め、プログラム運用に深くかかわっている。Draperは、受刑者はある意味で起業家であり、社会復帰のためには自らがビジネスを興すことが最適の選択肢であると述べている。投資家の眼からすると、受刑者たちは起業に向いていると見ている点は興味深い。また、Hokeの話しを聞くと、犯罪者に対して同じ目線で接し、家族の一員のように対応しているのを感じる。米国は失敗しても再度挑戦できる社会であるが、犯罪者は多くの企業から敬遠されているのも事実である。DraperやHokeは、事業の観点からは、ここに大きなチャンスがあることを感じ取っている。米国という“犯罪大国”だけで成立するモデルかもしれないが、受刑者から革新的なビジネスが登場するのも、そう遠くはないとの印象を受けた。

シリコンバレー新興企業が成功する秘密、斬新なアイディアと「グロースハッキング」

Saturday, May 24th, 2014

シリコンバレーの若い起業家たちから斬新なアイディアが生まれている。しかし企業として成功するためには、これだけでは十分でなく、グロースハッキング (Growth Hacking) という成長戦略が必要だ。シリコンバレーの新興企業が成功する秘密を、人気アクセラレーター500 Startupsから分析する。

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Facebookを教材にした語学教育

斬新なアイディアで事業を拡大している新興企業にCultureAlleyがある。同社はサンフランシスコを拠点に、語学教育サービスを展開している。スペイン語、中国語、ヒンディー語などの語学レッスンを提供しているが、アプローチがユニークだ。レッスンで使うテキストが、利用者のFacebookである。

上の写真がその事例で、私のFacebookがスペイン語レッスンの教材となっている。これはフォローしている人気歌手Katy Perryのニュースフィードで、いくつかの単語がスペイン語に置き換わっている (赤色でハイライトされた部分) 。これをクリックすると、クイズが出題される。上の事例では「May」という英語はスペイン語でなんというか、という三択クイズとなっている。ここでは「Mayo」が答えで、正解するとキャンディーを貰える。キャンディーが10個たまると次の段階のレッスンに進むという構成である。実際に使ってみると、Facebook上気になる記事が教材で、親近感を持ってスペイン語を学ぶことができる。頻繁に登場する言葉を中心に学習でき、身の回りの世界がスペイン語で見えてきて、飽きのこない学習法である。

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500 Startupsサンフランシスコ・オフィス

CultureAlley共同創設者Pranshu Bhandariに、同社オフィスでデモを見せてもらいながら、製品開発の狙いや事業拡大の手法を聞いた。CultureAlleyは、新設されたばかりの500 Startupsサンフランシスコ・オフィス (上の写真中央のビル最上階) に入居している。ここはユニオンスクエアの近くで、有名デパートなどが集まっているショッピングエリアの一角に位置する。

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オフィスフロアーはまだ改装中で、五階を仮のオフィスとして使用している。上の写真が仮オフィス内部の様子で、左手奥がCultureAlleyのデスクである。

Distribution Teamから事業拡大を学ぶ

CultureAlleyは500 Startupsで様々なことを学んできたが、その中で最大の成果は事業を拡大する方法を学んだこと、と述べている。500 Startupsはメンター呼ばれる業界著名人のネットワークを有しており、新興企業に多彩で実用的な教育を行っている。その中に、事業拡大を専門に指導する「Distribution Team」がある。CultureAlleyはこのチームから事業展開の極意を学んだ。

CultureAlleyは、製品プロモーションとして、YouTubeに語学レッスンビデオを公開し、視聴者を増やしてきた。しかし、これら視聴者はビデオは見るが、ホームページに来て利用者登録する数は限られていた。また、CultureAlleyはGoogle検索広告 (AdWords) を使いプロモーションを行ったが、その効果は限定的であった。

ランディングページのデザイン改良

このような状況を、Distribution Teamに説明し、利用者数増大の秘訣について、指導を受けた。検証の結果、Distribution TeamはFacebookに広告を掲載することを勧めた。更に、広告の目的を明確に定義し、会社PRではなく、会員登録が主目的で、CPA (会員一人を獲得するためのコスト) を指標として効果を測定すべきであると指導した。更に、ランディング・ページ (利用者が最初に見るページ) についてもデザインを一新した。

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当初は上の写真の通り、複数方式で会員登録できるデザインであった。FacebookやGoogleなどのIDで利用者登録ができた。

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これを一つに変更した。上の写真が改良後のランディング・ページで、会員登録するためのボタンは一つで、Facebook IDだけで登録を行う。CultureAlleyは、多くの選択肢があれば、登録者数が増えると期待していた。しかし、Distribution Teamの判断は、選択肢が多いと利用者は判断に迷い、その結果、登録者数が減ると判断した。このデザインに変更して、登録者数が倍増したと述べている。

グロースハッキングを実践

Distribution Teamが行っていることは、グロースハッキングで、企業成長のための、様々な手法を提示することにある。グロースハッキングとは、科学的な見地から、「イニシアティブを生成し」、「それを繰り返し実行し」、「成果を検証し」、企業やサービスを急成長させることである。一言で表現すると「コードが書けるマーケティング」ということになる。シリコンバレーの多くの企業は、グロースハッカーという職種で人材募集を行い、この手法を実践している。

Distribution Teamは著名グロースハッカーから成り、CultureAlleyは上記の指導を受け事業拡張を目指している。全米にデビューするためには、斬新なアイディアだけでは十分でなく、500 Startupsはメンター・ネットワークを通して、企業成功のための幅広い実践的な教育を行っている。シリコンバレーでは著名グロースハッカーから指導を受けることができ、ここが事業成功への決定的なカギとなる。

Bhandari によると、CultureAlleyは日本人向けに英語レッスンを公開する予定である。利用者のFacebookで、日本語を英語に置き換えて、英語レッスンを受けることになる。また、ブラウザー・プラグインも公開する予定で、利用者の好みのウェブサイトで英語の学習ができるようになる。CultureAlleyは、斬新な製品アイディアに、グロースハッキングの手法を取り入れ、世界に羽ばたこうとしている。

アメリカはウエアラブルの実験場、Google Glassでビジネスを構築するアイディアが満載

Friday, March 14th, 2014

【Google Glass完全ガイド:アイディア編】

メガネ型ウエアラブルとして登場したGoogle Glassを、どう活用すべきなのか、多くの企業や個人がキラーアプリを模索している。このレポートで最新のGoogle Glass活用法をコラージュ風に分析する。ここにはGoogle Glassで事業展開するためのヒントが詰まっている。

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居眠り運転防止アプリ

新興企業から、Google Glassで居眠り運転を防止するアプリが登場した。これは「DriveSafe」と言う名称で、アプリが運転中にドライバーの居眠りを検知すると、音声で警告メッセージを出し、注意を喚起する。これはディスプレイにも表示され (上の写真)、カードをタップすると、休憩所までの道順が示される。アプリはグラスの赤外線カメラと傾きセンサーでドライバーの状態をモニターする。居眠りの前兆を検知すると、警告を発する。グラスを居眠り検知センサーとして利用するアイディアだ。そもそも運転中にGoogle Glassを使用できるのか、まだ公式見解は出ていない。カリフォルニア州サンディエゴで行われていた交通裁判では、Google Glassをかけて運転した女性に対し、無罪の判決が下された。運転中にGoogle Glassディスプレイがオンであったことを証明できない、という理由からである。ではディスプレイがオンであったらどうだったのか、グラスに対する安全評価は続いている。

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あの人と同じ洋服が欲しい

街で素敵なファッションに出うと、その人をGoogle Glassで写真撮影すると (上の写真)、同じ洋服を買うことができる。これはFashion Discovery Labsという新興企業が開発した技術で、グラスは被写体が着ている衣服を認識し、利用者はそれをそのまま購入できる。気になるファッションに出会ったら、音声でアプリを起動し撮影すると、グラスは衣服のブランドや商品名をカードに表示する。

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上の写真がその様子で、女性が着ている服は、「Circus by Sam Edelman」というブランドの「Colorblock Faux Leather Moto Jacket」で、価格は128ドルであることが分かる。アプリはその衣服に近いイメージの商品も紹介する。商品が気に入ればグラス上で購入できる。グラスで撮影する時には、相手の許可を得ることが必須である。知らない相手に声をかけるのは勇気がいるが、それ以上に知りたい気持ちが上回るのかもしれない。

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匠の技を伝承する

Google Glassで著名ヘアスタイリストの技を録画し、新人教育に活用する取り組みが登場した。これはL’Oreal USAの子会社が始めたもので、「Matrix Glass for Class」という教育プログラムである。サロンプロを目指す生徒に、スキルを指導するものである。教材はGoogle Glassを使って撮影され、教師視線でテクニックが解説される。撮影されたビデオはオンラインに掲載され、生徒はこれを見て学習する。同時に、このプログラムは製品プロモーションとしても利用されている。著名ヘアスタイリストの技を家庭でも実践できるというシナリオである(上の写真)。グラス視線で撮影したビデオは、技法を伝えるには最適のメディアである。この方式は、ヘアスタイリスト以外に、大学病院や製造現場などで幅広く使われ始めた。熟練技術者が定年退職する前に、匠の技をGoogle Glassで撮影し、次世代に伝えることもできる。

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学校教育で仮想社会見学を取りれる

Apple iPadが登場した時、教育関係者は一斉に、タブレットを学校教育に取り入れる方策を模索した。いま同じ取り組みがGoogle Glassで起こっている。その代表が「Virtual Field Trip」という手法で、教室の生徒たちが仮想で社会見学するものである。先生がGoogle Glassをかけて街に出る。上の写真は、先生がスイスCERNを訪問し、大型ハドロン衝突型加速器をGoogle Glassで撮影し、その映像を教室 (写真右上隅) に中継しているところである。先生が加速器の仕組みを説明し、生徒たちはパソコンでその映像を見る。通信システムはGoogle Hangoutで、Google Glassとテレビ会議ができる。生徒の質問に現場にいる先生が答え、仮想の社会見学を行っている。この先生はグラス中継だけでなく、Google Glassで教材を開発し、サイトに公開している。対象分野は、物理、生物、テクノロジー、数学で、日常生活で出会う現象をグラスで撮影し、難しい論理を実例を交え、分かり易く教えている。

ウエアラブルの実験場

Googleはグラスを発表した当初から、メガネ型ウエアラブルに特有な使い方を公開してきた。市場では企業や個人が、Google Glassを活用するための、様々な利用法を公開している。スマートグラスならではの活用法を探求している。アメリカ全体が巨大な実験場となり、Google Glassのベスト・プラクティスが模索されている。今はまさにスマートグラスの黎明期で、これらトライアルの多くがプロトタイプで、製品として出荷されているものは数少ない。素晴らしいアイディアから首を傾げたくなるものまで多彩で、ウエアラブルでビジネスを構築するためのアイディアが見え隠れしている。

オープンソース教科書

Friday, September 24th, 2010

アメリカの学校教育システムは、多くの問題を抱えており、統計データがそれを如実に示している。OECDが発行している、世界の学力を比較したデータによると、科学において、アメリカの順位は58か国中30位である。(因みに日本は6位で、トップはフィンランド。) 数学においては、アメリカの順位は36位である。(日本の順位は10位で、トップは台湾。) 丁度、本日、FacebookのCEOである、Mark Zuckerberg (マーク・ザッカーバーグ) は、自身のFacebookページで、「Startup: Education」という基金の設立を発表し、Newark (ニュージャージー州) の学校教育改善のために、1億ドルを寄付することを発表した。メディア受けの悪いZuckerbergは、この寄付は慈善活動なのか、それとも、企業イメージ改善を狙ったPRなのかと、ニュースの論調はいずれも厳しいものが目立っている。この基金が象徴しているように、IT関係者の多くが、学校教育問題に危機感を抱いており、学校教育改善に、様々な形態で貢献している。

Currikiという団体

その一人が、Sun Microsystemsの元CEOである、Scott McNealy (スコット・マクニーリ) である。McNealyはCurriki (カリキ) という非営利団体を立ち上げて、学校教育の改善に取り組んでいる。Currikiは、Sunが運営していた、Global Education and Learning Communityという団体を踏襲し、発展させたものである。Currikiは、教育関係者向けのウェブサイトで、このサイトには、学校教育に関する様々な教材が掲載されている。教師はここで必要な教材を検索し、ダウンロードして、無料で利用することができる。教材はK-12 (Kindergarten through 12th Grade、幼稚園から高校まで) を対象に開発されている。教材の科目は、芸術、健康、情報メディア、文学、数学、科学、社会科学、外国語などに分かれている。また、教材だけなく、教師のための資料として、教育方法や教育技術などに関するドキュメントも掲載されている。

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上のスクリーンショット (出展:Curriki) は、その事例で、Science / Biologyの分野での、教材の一覧を表示している様子である。ここには、講義資料 (ppt形式)、副教材・参考資料 (doc形式)、ワークシート・テスト問題(doc形式) などが掲示されている。教師は、希望の教材をダウンロードして、それらを自分のクラス向けに変更して、授業で使うことができる。これらの教材は、現役の教師や、教師を引退した人などが、ボランティアで開発したものである。ちょうど、オープンソース・ソフトウェアが、コミュニティで開発されるのと同じコンセプトである。Solarisのオープンソース化に反対してきたMcNealyが、オープンソース教材のサイトを運営するのは皮肉であるが、Currikiが示しているように、情報通信技術を教育に応用する試みが、多くの局面で進んでいる。教育という国の将来を左右する社会基盤を、国に任せておくだけでなく、業界の著名人が、情報技術を活用して学校教育改善を目指している。