Archive for the ‘マイクロプロセッサ’ Category

スマート・ファブリック~衣服がセンサーとなり健康状態をモニター

Friday, November 22nd, 2013

仕事でストレスがたまると、アプリが「深呼吸が必要」とアドバイスをする (下の写真)。着ているアンダーシャツがセンサーで、心臓の鼓動をモニターし、健康状態を把握する。これは「OMsignal Shirt」というスマート・シャツで、著名人によるトライアルが始まった。

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シャツにセンサーが織り込まれている

この製品はMontreal (カナダ) に拠点を置くOMsignalというベンチャー企業で開発されている。OMsignal Shirtは利用者の心拍数、呼吸数、歩行数、カロリー消費量などを測定する。他に、Heart Rate Variability (心拍間隔の変位、HRV) を測定することで、ストレス・レベルを算出する。スマート・シャツは、利用者がリラックスしているのか、緊張しているのかを把握し、上述の通り、アドバイスを行う。センサーはシャツの胸のあたりに帯状に実装されている。センサーは二種類あり、それぞれ加速度計とECGである。加速度計で歩行数を測定し、消費カロリー量を算定する。ECGは、心拍数や心拍の間隔を測定する。これらのデータからHRVを算出し、ストレスの度合いを把握する。

家族メンバーが健康管理で利用

測定されたデータはスマートフォンに送信され、日々の生活において、運動量や消費カロリー量を把握する (下の写真)。ストレス・レベルが高い時には、アプリの指示に従って、呼吸法を調整し、緊張感を和らげる。OMsignalは、個人で利用するだけでなく、家族内での健康管理を提唱している。妻のストレス・レベルが高い時には、アラートが夫に届き、電話して様子を見ることができる。両親の健康状態についてもモニターでき、心臓の異常を検知すると、すぐに病院に連れていくなどの措置が可能となる。

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衣服にセンサーを織り込むことで、わざわざデバイスを身に着けないで、定常的に身体の状態をモニターできる。また、衣服は身体の表面を幅広く覆っているので、データを収集には適している。一方で、センサーを織り込んだシャツは、一般のシャツと同じように、快適であることが必須条件で、更に、お洒落なデザインも求められる。OMsignalは、開発者がスマート・シャツを基盤とするアプリを開発できるよう、プラットフォームを公開する予定である。

スマート・ベビーウェアで赤ちゃんを監視

衣服にセンサーを織り込むアイディアはベビーウェアでも採用されている。Rest DevicesはBoston (マサチュセッツ州) に拠点を置くベンチャー企業で、「Mimo Baby Monitor」 (下の写真) というスマート・ベビーウェアを開発している。

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ベビーウェアは「Kimono」という名前で、センサーがプリントされ、赤ちゃんの呼吸をモニターする。上の写真の緑色のストライプの部分がセンサーで、収集されたデータは、「Turtle」 (写真下段の亀の装置) と呼ばれる送信機兼センサーから「Lilypad」と呼ばれるアクセス・ポイントにBluetooth Low Energyで送信される。Lilypadは受信データをWiFiでスマートフォンに送信する仕組みとなる。

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両親はスマートフォンに専用アプリ「The Mimo」(上のスクリーンショット)をインストールして利用する。アプリはリアルタイムで赤ちゃんの状態を表示する。赤ちゃんが起きているか眠っているか、また、這っているか、立ち上がっているかを表示する。呼吸の間隔はグラフで表示され、赤ちゃんの呼吸に異変があると警告メッセージを送信する。赤ちゃんをここまで監視する必要があるのかという意見がある反面、お母さんに安心を与えるツールとして反響も大きい。Mimo Baby Monitorは2014年1月より販売が開始され、価格は200ドルの予定である。

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ソックスがランニングのコーチとなる

ソックスにセンサーが埋め込まれ、ジョギングのフォームを矯正する。このソックスはHeapsylon社の「Sensario Fitness」 (上の写真) で、底部に圧力センサーを搭載している。Sensario Fitnessは歩数、速度、移動距離、カロリー消費量の他に、ペース、接地方法、体重移動などを測定する。これらのデータを元に、ランニングのフォームについてリアルタイムでアドバイスを行う。将来はゴルフ・スイングの体重移動に関するアドバイスを行う。

FitBitやNike Fuelなどのウェアラブルが健康管理の定番商品であるが、スマート・ファブリックを使い、衣服を着るだけで身体の状態をモニターできる。本当の意味でのウェアラブルで、早くからアイディアはあったが、現実に製品の登場が始まった。

モバイル・プロセッサー

Friday, February 18th, 2011

Nvidia (発音はインヴィディア) は、今週、携帯端末向けのプロセッサーであるTegra (テグラ) の次世代製品を公表した。また、Nvidiaは、この製品のベンチマーク・テストをビデオで公開し、モバイル・プロセッサーの性能が、パソコンの領域に入ってきたことを、強く印象付けた。

Nvidiaについて

Nvidiaは、よく知られているように、グラフィックス処理を中心とした半導体の製造会社である。本社ビルはシリコンバレーにあり、通りを走ると、高速艇の船首を思わせるデザイン (下の写真、出展:VentureClef) が目に留まる。Nvidiaは1993年に創業し、1999年にGeForceというブランドで、グラフィック処理向けのシングル・チップを世に出した。この際に、GPU (Graphics Processing Unit) というコンセプトを発表し、CPU (Central Processing Unit) に対比する言葉として、市場に定着している。現在では、グラフィックス技術以外に、スマートフォンやタブレット向けに、Tegraというブランドで省エネ型のプロセッサーを提供している。

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TegraはARMベースのプロセッサーで、SoC (System-on-a-Chip) 構成をしており、消費電力が小さいというのが最大の特徴である。現行製品であるTegra 2 (下の写真、以下出展はNvidia) は、デュアル・コア構成で、マルチ・タスキングによる高速化を実現している。前述のGeForce GPU機構をチップの中に組み込んでおり、高速でグラフィックス処理を行なうことができる。また、携帯端末でフルHD画像を再生する機能を搭載している。チップの周波数は1GHzで、メモリは最大1GBをサポートしている。Tegra 2は、多くの携帯端末で採用されており、スマートフォンでは、LG Optimus 2Xで、タブレットでは、Motorola XoomやToshiba Tabletなどで使われている。

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Project Kal-Elについて

Nvidiaは、上述の通り、Tegraの次世代ロセッサーの発表を行なった。このプロセッサーはKal-El (キャルエル) と命名され、その概要とベンチマークの様子をブログ (http://blogs.nvidia.com/2011/02/tegra-roadmap-revealed-next-chip-worlds-first-quadcore-mobile-processor/) の中で明らかにした。Kal-Elは、現行のTegra 2の次に位置する製品で、Tegra 3と見られている。また、併せて、Tegra製品ラインのロードマップも明らかにした。Kal-Elは、クアッド・コアのプロセッサーで、周波数は最大1.5GHz。グラフィックス機構には、12コアのGeForce GPUを搭載しており、ビデオのアウトプットはExtreme HDで2560×1600のモニターに対応している。現在サンプリングが行われており、出荷は今年夏の予定である。

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Nvidiaはビデオで、Kal-Elの性能測定の様子を公開している。NVbenchとCoremark 1.0という、ベンチマーク・プログラムが、Androidタブレット上で実行された。NVbenchは、ブラウザーでウェブサイトを閲覧するプログラムで、タブレットにウェブページが表示され、モニター下部には4つのコアのCPU稼働率がグラフで表示された。4つのコアで異なるウェブページが処理され、ウェブページを高速に切り替える様子が実演された。次に、 Coremark 1.0はプロセッサー・コアのベンチマーク・プログラムで、コアの性能を測定するために実施された。上の写真はその結果で、プロセッサーに対応する測定値が、棒グラフで示されている。グラフにおいて、数字が大きいほうが性能が高いことを示している。 この結果、Kal-Elの性能は、Tegra 2の1.94倍で、Intel Core2Duoの1.12倍である。このベンチマークが示しているように、携帯端末のプロセッサーの処理速度は、パソコンで使われるプロセッサーの領域に入ってきた。

トレンド

以前にレポートした通り、MicrosoftのCEOであるSteve Ballmerは、Consumer Electronics Showにおいて、次世代のWindowsは、ARMベースのプロセッサーをサポートすることを明言した。ARMプロセッサーでは、Android、Symbian、iOSに加えて、Windowsが稼動することになる。プロセッサー市場では、Intelが独占的な立場にあるが、スマートフォンやタブレット市場では、TegraをはじめARMベースのプロセッサーが急速にシェアを広げている。更に、上述のベンチャーマーク・テストが示しているように、モバイル・プロセッサーの性能はパソコンの領域に入ってきた。

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Nvidiaは、Tegraを携帯端末向けに提供するだけでなく、今後は、パソコンやサーバー市場に、更には、スパコンの領域に進出しようと目論んでいる。Nvidiaは、先月、Project Denverという、高速サーバ開発プロジェクトの概要を公開した。Project Denverは、ARMベースの高性能プロセッサーを開発するプロジェクトで、省エネ型プロセッサーであるARM技術と、NvidiaのGPU技術を統合して、パソコンからデータセンター、及び、スパコン領域をカバーする技術を開発している。データセンターにおいては、高性能・高集積化が進むに連れて、発熱の問題が緊急の課題になっている。Project Denverは、Intel x86プロセッサーの代替技術として、ARMベースのプロセッサーを高密度に実装し、省エネでスパコン並みの性能を提供することを目指している。Nvidiaは、現在、Teslaというプロセッサーをスパコン向けに供給している。Teslaは中国のShenzhen Supercomputing Centerにおいて、Nebulaeというスパコン (上の写真) で使われている。今度は、ARMベースのモバイル・プロセッサーで、大規模サーバやスパコンの開発に挑んでいる。

パソコン時代の終焉

Thursday, January 6th, 2011

Microsoftは、ラスベガスで開催されている、Consumer Electronics Show (CES) において、WindowsをARM (アーム) プロセッサーに対応させることを発表した。MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer (スティーブ・バルマー) は、基調講演の中で、ゲーム機 (Xbox)、スマートフォン (Windows Phone)、Windows新機能を紹介した。そして講演の一番最後に、ARMプロセッサーでWindowsのデモを行なった。講演内容は、MicrosoftのCES特集サイト (http://www.microsoft.com/presspass/events/ces/liveevent.aspx) で見ることができる。

ARMプロセッサー対応について

Microsoftは、基調講演に先立ち、次期WindowsはSystem on a Chip (SoC) アーキテクチャをサポートすることを表明した。SoCとは、コンピュータで必要な全てのコンポーネントを一つのチップに実装する方式である。Windowsが対応するSoCは、Intel、AMD、ARMで開発される。ARMプロセッサーでは、NVIDIA、Qualcomm、Texas Instrumentsの三社から製品が出荷される。Microsoftは、WindowsでSoCアーキテクチャーをサポートする目的は、プロセッサーの消費電力を抑えるためとしている。更に、WindowsとSoCアーキテクチャーの組み合わせで、タブレットから上位の領域で、新製品を開発するとしている。

基調講演でのデモ概要

前述の通り、基調講演では、WindowsがSoCプロセッサーで稼動していることをデモしながら、新技術の紹介を行なった。デモでは、Intel、Qualcomm、Texas Instruments、及びNvidiaのSoCが搭載されたシステムで、Windowsやそのアプリケーションが稼動することを実演した。Intelのデモでは、SoC版のAtomプロセッサーで構成されたシステムで、Windowsなどが稼動している様子をデモした。下の写真 (出展はいずれもMicrosoft) がそのシステムで、SoC版のAtomを搭載したパソコンで、次期Windowsが稼動している様子である。但し、スクリーン上に表示されているWindows画面は現行の製品を使っており、コアの部分が次期製品のコードである。SoC版Atomチップの大きさは、小指の爪ほどで、ここにシステムで必要な機能が全て実装されている。このチップが、マザーボード (切符ほどの大きさ) に装着され、パソコンを構成する。

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次に、Qualcommのデモでは、ARMベースのプロセッサーであるSnapdragon (スナップドラゴン) を搭載したシステムでWindowsを稼動させた。下の写真がその様子を示している。デモでは、コマンドライン、写真ライブラリー、デスクトップ背景画面操作などが行なわれた。このデモは、ARMプロセッサー上で、Windowsが稼動した最初のケースで、技術的に、また、歴史的に大きなマイルストーンである。このSnapdragonは、様々な携帯端末で使われており、GoogleのスマートフォンであるNexus One (製造はHTC) でも採用されている。更に、Texas Instrumentsからは、同社のARMアーキテクチャーのOMAPを搭載したシステムが使われた。また、Nvidiaでは、同じくARMベースのプロセッサーであるTegra (テグラ) を搭載したシステムでデモが行なわれた。

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ARMシステムの概要

ARMは、よく知られているように、携帯端末向けの省エネ型のプロセッサーである。ARMは、32ビットのRISC方式アーキテクチャーで、ARM Holdingsにより開発されている。ARMの特徴は、プロセッサーの消費電力が小さいことで、バッテリーで稼動する携帯端末で採用されている。ARMの製品ラインは、Classic、Embedded、Applicationから構成されている。ClassicはARMのオリジナルのプロセッサーで、15年以上に亘り、携帯電話、セットトップボックス、デジタル・テレビなどで使われている。Embeddedは組み込み型のプロセッサーで、家電制御、自動車制御、汎用制御などに使われており、最近ではスマート・メーターで採用されている。Application (Cortexシリーズ) はハイエンドの製品で、Linux、Android、Windows CE、Symbianなどが稼動し、スマートフォン、タブレット、ネットブックなどで使われている。ARMは半導体のIP (Intellectual Property) をパートナー企業にライセンスする方式で、自社でチップを製造している訳ではない。ライセンスを受けた企業が、チップの製造や関連ソフトウェアの開発を行なうというビジネス・モデルである。

トレンド

Apple iPhoneやiPadが登場してから、スマートフォンとタブレット市場が、急成長している。CESにおいても、Android搭載のスマートフォンやタブレット新製品が、多くの企業から投入されている。これにより、パソコン市場規模は、確実に緊縮している。多くの利用者は、パソコンでWindowsを使う代わりに、タブレットやスマートフォンでメールを読み、ウェブにアクセスしている。この市場に出遅れているMicrosoftは、ARMプロセッサーでWindowsを稼動させることで、タブレットやスマートフォン市場への進出を目指している。基調講演のデモが示唆しているように、ラップトップ製品は、Intelプロセッサーが、ARMプロセッサーに置き換わることとなる。Microsoft社内では、Windows XPをARMプロセッサーに移植するプロジェクトは存在したが、製品ラインとしてWindowsをARMプロセッサーで稼動させてのは、今回が初となる。長年に亘り築いてきたWindowsとx86の独占関係が崩れ、これからは、ARMと共存することなる。Intelは、前述のSoC版Atomなど、技術開発を行なっているが、ARMとの差は大きく開いている。アナリストの分析によると、2013年までに、ARMがx86のシェアを抜くとの予想も示されている。かつて汎用機がパソコンに置き換わったように、いま、パソコンが携帯端末にダウンサイジングを始めている。この現象を端的に捉えているのが、上の写真で、SnapdragonでWindowsが稼動しているシーンである。x86プロセッサーを搭載したパソコンの時代は、終わりに向かって進み始めた。

三次元入力 (NewTeeVee Liveより)

Friday, December 11th, 2009

先月、サンフランシスコにおいて、NewTeeVee Live (ニューTVライブ) という、次世代テレビについてのカンファレンスが開催された。カンファレンスの副題は、Television Reinvented (テレビ再発明) で、インターネット社会におけるテレビ技術について議論された。

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NewTeeVee Liveの概要

カンファレンスは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMission Bay Conference Center (上の写真、出展:University of California, San Francisco) を会場として開催された。このキャンパスは、サンフランシスコ・ジャイアンツの拠点であるAT&T Parkのすぐ南側に新設され、バイオ・クラスターの一角を担い、バイオ・テクノロジー研究の拠点となっている。このモダンでかつ質実な会議場で、次世代テレビ技術について、議論された。

NewTeeVee Liveは、上述の通り、インターネット時代において、テレビの役割を再び検証しようという目的で始まり、今年で三回目を迎える。今年のテーマは、「TV Everywhere」として、テレビ番組をテレビやパソコンで見るだけでなく、生活の中で急速に広がりつつある携帯端末で、場所の制約無しに視聴できる技術が紹介された。カンファレンスは、パネル・ディスカッションを中心に進行し、マイクロソフトやシスコなどの大企業から、ベンチャー企業などが招待され、最新技術が質疑応答の形式で紹介され、議論された。また、ビデオコンテンツを配信する側である、YouTubeやCBS Interactiveなどが、ネットワークの観点から、次世代ビデオ・サービスを紹介した。

Canestaというベンチャー企業

カンファレンスのデモで、一番印象的だったのが、Canesta (カネスタ) というベンチャー企業が提供している、三次元入力技術であった。三次元入力とは、利用者が身振りや手振りで、テレビなどの電子機器を制御する方式のことを指す。下の写真 (出展:Canesta Inc.) のように、テレビのリモート・コントロールを使う代わりに、利用者が手振りでテレビを操作する方式である。

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カンファレンスでは、CanestaのCEOであるJames Spare (ジェームス・スペアー) が、Next Big Thingというセッションで、ビデオでのデモを交えながら、その概要を紹介した。デモでは、Canestaの技術を使って、実際にテレビを操作している様子が実演された。テレビを見ている男性が、手を右から左に振ると、テレビ画面が左側にスクロールした。(上の写真は、その様子で、さながらAir iPhoneという感じであった。) テレビ画面をスクロールしながら、見たいチャネルになると、手を前に押し出すと、そのチャネルが選択される。テレビの音量を調整するときは、手で円を書くように回し、右回転でボリューム・アップ、左回転でボリューム・ダウンとなる。最初に、テレビの電源を入れるときは、片手でバイバイするように振る。

三次元入力の仕組み

Canestaは、三次元入力を行なうための、センサー技術を開発している会社である。この技術は、半導体チップ (製品名はCanestaVision Chip) に実装され提供されている。このセンサーは、カメラから被写体までの距離を正確に測定し、撮影しているオブジェクトを三次元で認識することができる。センサーには、赤外線光源が搭載されており、半導体チップは、反射波の位相を読み取り、距離を測定する仕組みとなる。つまり、厚みのある人間の手と、紙に印刷された手を区別できる。そして、認識した人間の手のイメージを追跡することで、利用者が行なう様々な手振りを読み取り、それをコマンドに置き換えて、テレビの操作を行なう。Canestaが開発しているのは、この半導体センサーの部分だけであり、センサー情報を読み込んで、それをコマンドに置き換える部分は、GestureTek (ゼスチャーテック) という企業が開発したソフトウェアを利用している。上述のデモには、このGestureTekの技術が使われている。

三次元入力の応用分野

Spareは、この技術は既に日立で採用されており、手振りで操作するテレビが開発されていると紹介した。(昨年、幕張メッセで開催されたCEATECにおいて、そのデモが行なわれている。) また、三次元入力技術を積極的に開発しているのがマイクロソフトである。マイクロソフトは、Canestaとは別のセンサー技術を使って、次世代のゲーム機を開発している。現行のXbox 360に続く機種で、この研究はProject Natal (プロジェクト・ナタール) と呼ばれている。

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Project Natalは、利用者の動きを検出し、コントローラー無しでゲーム機を操作するシステムである。サッカー・ゲームの場面では、利用者は、モニターの前で、身振りでゲームを展開する。(上の写真、出展:Microsoft) 利用者の体や手足の動きをNatalが認識し、ゲーム内のアバターが同じ動きをする。利用者がボールをキックすれば (上の写真左側)、画面内のアバターが、ボールをキックする。そしてゴールキーパー (上の写真右側) が、体を屈めてボールをキャッチする。

考察

Canestaの技術は、元々、自動車に搭載するセンサーとして開発され、安全走行を手助けするツールとして製品化された。その後、応用範囲が広がり、三次元入力のための要素技術として、利用され始めた。テレビやゲーム機以外にも、様々な応用形態が開発されている。パソコンでは、マウスの代わりに、手振りで操作する方式がデモされている。少しばかり近未来の雰囲気を味わったデモであった。

オープンソース・ネットブック (DEMO 09より)

Friday, March 6th, 2009

3月1日から3日まで、カリフォルニア州パームデザートで開催されたDEMO 09に出席した。DEMOは、今年は節目の年にあたり、名プロデューサであるChris Shipley (クリス・シップリー、写真左側、出展:DEMO) が、今年秋に開催されるDEMOfall 09を最後に、バトンをMatt Marshall (マット・マーシャル、写真右側) に渡すことになった。DEMOの冒頭で、Shipleyがこの方針を明らかにし、両者が握手を交わし、引継ぎを確認しあった。

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Marshallはシリコンバレーでは馴染みの人物で、地元紙であるSan Jose Mercury Newsでテクノロジー関連記事を書いていた。現在は、新聞記者からブロガーに転進し、VentureBeat (ベンチャー・ビート) というブログサイトを運営している。Shipleyの名調子の舞台進行が聞けなくなるのは寂しいが、MarshallがこれからDEMOに新しい風を吹き込むことになり、DEMOが次の時代に向かって進むことになる。

 

Always Innovating

このレポートより、DEMO 09で際立ったベンチャー企業を紹介していく。今年は、不況の影響で参加企業の数が、昨年に比べて少なかったが、昨年同様、将来大きく飛躍する可能性を秘めた企業が、数多く登場した。最初は、「Always Innovating」 (オールウェイズ・イノベーティング) という、カリフォルニア州メンロパークの企業について紹介する。

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この会社は、「Touch Book」 (タッチ・ブック、上の写真、出展:Always Innovating) という製品を出展した。Touch Bookはノート型パソコンを小型化した、ネットブックという製品区分となる。Touch Bookの特徴は、上の写真の通り、本体からスクリーンの部分だけを引き抜いて使うことができる。抜き取ったスクリーン側に、プロセッサーが実装されており、スクリーンが携帯端末に早変わりする。スクリーンの大きさは、8.9インチでSony PlayStation Portableより、一回り大きいサイズである。Touch Bookは製品名の通り、タッチスクリーンを指で操作する構成となっている。製品イメージとしては、大型サイズのApple iPhoneという感じである。

 

Touch Bookのシステム概要 

Always Innovatingのブースにおいて、PR責任者であるMarivi Lerdo de Tejeda (マリヴィ・レルド・デ・テハダ) が製品の概要について、分かりやすく説明してくれた。「Touch Bookのスクリーン背後は磁石となっており、スクリーンをキーボードから切り離して、冷蔵庫のドアにつけて使うことができる。ここに買い物リストを入れたり、また、家族の写真を表示すれば、即席の写真アルバムとしても使える。」と説明してくれた。また、Touch Bookのネットワークは、「WiFiとBluetoothをサポートしている」と説明してくれた。

 

興味深いのが、ハードウェアとOSであり、Tejedaは、「オープンなハードウェアにLinuxなどのオープンなOSを乗せている」と説明してくれた。Touch Bookは「Beagle Board」 (ビーグル・ボード) という、Texas Instrumentsが中心となって開発した、シングル・ボード・コンピュータをベースに開発されている。Beagle Boardは、コミュニテーが参加して開発された、オープンソース・プリント基板といえる製品である。Beagle Boardには、ARMベースのプロセッサー (Texas Instruments OMAP3) が搭載されている。このボードを基盤として、ここに周辺機器を接続して、最終製品に仕上げている。OSは、「OpenEmbedded」 (オープン・エンベッディド) という、組込みデバイス向けのLinuxを使用している。将来はGoogle Androidなども搭載される予定である。ブラウザーには、携帯電話向けのMozillaである「Fennec」 (フェニック) を使っている。Fennecはまだ開発中で、昨年末にアルファー版がリリースされており、今年中に正式版が出荷される予定である。

 

Touch Bookの特徴 

Tejedaによると、「Touch Bookは、ARMを使っているため、消費電力が非常に小さく、また、空冷のファンがなく、バッテリーでの運転時間が長い」と、その特徴を説明してくれた。Touch Bookのスペックによると、バッテリーでの稼働時間は10時間から15時間となっている。Touch Bookは、前述の通り、Beagle Boardを使用しており、メモリー素子にはMicro SD Card (8GB) が、また、ネットワークにはWiFiカードが、内蔵USBポート経由で接続されている。下の写真 (出展:DEMO) がTouch Bookの内部で、WiFiカード (右下の緑色のカード) がUSBポート経由で搭載されている。またその上の緑色の箱状の部分は内蔵USB端子で、ここにGSMカード等を差し込んで使う。このようにTouch Bookのアーキテクチャーは、携帯電話に近く、最強のARMプロセッサーを搭載した、携帯端末ということができる。

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考察

Touch Bookは、オープンソース・ハードウェアやソフトウェアを部品として採用し、最終製品に仕上げている。ハードウェアでもソフトウェアでも、優秀な部品が低価格で手に入り、それを組み合わせて、ユニークな製品を構成している。Touch Bookは、Apple iPhoneのようなタッチスクリーンとお洒落なデザインで、ここにAlways Innovatingの付加価値が集結している。ブースで実物を見せてもらったが、日本メーカーのデザインかと思うくらい、センスよく仕上がっていた。ただ、まだ稼動しているTouch Bookはなく、実際に操作することはできなかった。製品出荷は今年の5月ごろの予定であるとのこと。Touch Bookは、アメリカで携帯端末のオープン化が進行し、イノベーションが生まれている、典型的な事例である。