Archive for the ‘semtech’ Category

Linked Data (SemTech 11より)

Thursday, June 23rd, 2011

セマンティック技術最大のカンファレンスである、Semantic Technology Conference 2011では、Linked Dataに関する事例が、数多く登場した。Linked Dataとは、前回のレポートで触れたFreebaseなどを指し、インターネット上では、Linked Dataのサイト数が急増している。このレポートでは、Juan Sequeda (ワン・セケダ、University of Texas at Austinの研究者) の「Creating, Publishing and Consuming Linked Data」と題するセッションを参考にした。

Linked Dataの概要

Linked Dataとは、ざっくり表現すると、データベース化されたウェブサイトである。マイクロソフト・エクセルで作られたテーブルのように、Linked Dataも、ウェブサイトが表形式で定義される。人物や場所やモノが、セマンティック技術を使って定義されて、ウェブページに記載される。

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上のスクリーンショット (出展:New York Times) は、New York Timesが開発しているLinked Dataの事例である。このサイトは、Linked Open Dataという名称で、一般に公開されている。New York Timesは、過去150年間の記事について、アーカイブを作成し、インデクシングを行なってきた。このプロセスで、新聞記事のタイトルで使用された用語 (News Vocabularies) の編集も行なわれた。New York Timesは、2009年から、これらの用語をLinked Open Dataとして、公開するプロジェクトを進めてきた。現在公開されている用語は、人名、組織名、地名などで、総数は一万件を超えている。上のスクリーンショットは、Hillary Clinton (ヒラリー・クリントン) の事例で、同氏に関する情報が、テーブル形式で記載されている。Linked Open Dataは、この様に、人間が読むことができるだけでなく、RDFファイルで公開されており、ソフトウェアから読める形式となっている。RDFとは、Resource Description Frameworkの略で、データ定義の方式である。RDFでは、Triple Data Model (主語、述語、目的語) という方式で、データを記述していく。このように、Linked Open Dataは、アプリケーションからデータにアクセスすることを主眼に公開されている。

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Linked Open Dataの目的

New York Timesは、過去の記事に対して、検索機能を提供しており、「Hillary Clinton」をキーワードに検索を行なうと、同氏が登場する記事の一覧が表示される。Linked Open Dataでは、単純なキーワード検索ではなく、ウェブサイトから意味を抽出することを目的としている。上のスクリーンショット (出展:New York Times) がその事例を示している。これはNew York Timesが提供しているAlumni In The News というアプリケーションで、大学の同窓生が、New York Timesに登場している記事を検索するツールである。検索ボックスに、大学名を入力すると、検索結果には、New York Timesに登場している同窓生の氏名が表示される。因みに検索キーワードに、「Santa Clara University」と入力すると、検索結果には、国防省長官に就任する「Leon Panetta」などの名前と記事タイトルが表示される。記事タイトルをクリックすると、記事が表示される。また、名前の下には、Wikipedia、DBpadia、Freebaseへのリンクが表示される。これらのリンクを辿ると、人物についての詳細情報を閲覧することができる。このように、Linked Open Dataは、アプリケーションから、名前、組織名、地名などを、有機的に検索できることを目標としている。

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GoogleLinked Dataへの取り組み

前回レポートしたMetaweb社は、FreebaseというオープンなLinked Dataを開発し、2007年から一般に公開している。Metawebは、2010年7月に、Googleにより買収された。Googleはこのように、Linked Dataに着目し、システム開発を進めている。Freebaseは、コミュニティにより開発されたナレッジベースで、Wikipediaのセマンティック版と位置づけられ、多くのコンテンツをWikipediaから引用している。

Googleは、Freebaseのコンテンツを、Google News Timelineで利用している。Google News Timelineとは、Google Labsの研究プロジェクトで、ニュースや出来事などを、時系列に表示する検索エンジンである。上のスクリーンショット (出展:Google) が、Google News Timelineで、記事が年代ごとに表示されている。この画面は、「Jack Nicholson」というキーワードで検索した結果で、同氏が出演した映画のタイトルと解説が、時系列に表示されている。これらのデータソースはFreebaseで、リンクをクリックすると元の記事にジャンプする。Googleは、様々な方法で、検索結果の質の向上を目指しているが、Google News Timelineは、この取り組みの一つである。

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Googleは、既に、検索エンジンにセマンティック技術を応用している。これは、Google Squaredと呼ばれる技術で、セマンティック・ウェブから情報を抽出し、検索結果をテーブル形式で表示するものである。上のスクリーンショット (出展:Google) がその事例で、検索キーワードに「barack obama date of birth」と入力すると、上の通り、「オバマ大統領の誕生日は、1961年8月4日である」と、ストレートに回答する。そして、参照したデータソースの一覧が表示される。

トレンド

Linked Dataは、ここ最近、多くのサイトで開発が進んでいる。ウェブ技術が登場した頃には、HTMLを使って、多くのウェブサイトが開発されたように、今では、RDFを使って、Linked Dataを含むセマンティック・ウェブの開発が進んでいる。今後、如何に魅力的なアプリケーションが登場するかが、セマンティック・ウェブ進展の鍵となる。

ツイッター広告とデータマイニング (SemTech 11より)

Thursday, June 16th, 2011

セマンティック技術最大のカンファレンスである、Semantic Technology Conference 2011が、先週、サンフランシスコで開催された。会場は、ユニオン・スクエアー傍のHilton San Francisco Union Square (下の写真、出展:VentureClef) で、研究成果の発表に加え、企業での応用事例などが紹介された。

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ツイッターとセマンティック技術

ソーシャル・メディアが爆発的に広がる中で、セマンティック技術を使って、ウェブから有益な情報を抽出する事例が増え始めた。カンファレンスでは、「How Hollywood Learned to Love the Semantic Web (なぜハリウッドはセマンティック・ウェブを好きになったか)」と題して、映画スターとセマンティック技術の関係が紹介された。Beverly Hills (カリフォルニア州) に拠点を置く、Adly (アドリー) というベンチャー企業から、Chris Testa (クリス・テスタ) が、ツイッターを使ったブランド広告と、その背後のシステムを紹介した。学術的な色彩が濃いカンファレンスであるが、このセッションは、多くの広告代理店からの出席があり、華やいだ雰囲気で、議論が進んだ。

Adlyという企業は、ツイッターを中心に、ソーシャル・メディアを使って、商品をプロモーションするサービスを展開している。ツイッターでの広告方式が模索される中で、Adlyは、ハリウッドのセレブのツイッターを使って、ブランド・プロモーションを行なう方式を生み出した。ブランド・イメージを、セレブとマッチングさせ、セレブのツイッターなどで、ブランドに関するメッセージを発信するというものである。Adlyは、セレブが発信するツイートの中に、広告メッセージを含めて発信する。ツイッターのフォロワーは、メッセージに添えられている、リンクを辿り、商品の購入を行なう仕組みである。

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Charlie Sheenの事例

Adlyが、一躍有名になったのは、セレブにCharlie Sheen (チャーリー・シーン) を採用してからである。Sheenは、CBSテレビのコメディー番組「Two and a Half Men」で、絶大な人気を得ていた。しかし、Sheenの発言や行動の問題から、先の3月に、この番組を降板となった。いわく付きのセレブであるが、人気は衰えていない。Sheenは、この時期に、Adlyにアプローチして、ツイッターを始めた。上のスクリーンショットは、Sheenの2011年3月7日のツイート (出展:Twitter) である。メッセージは、「I’m looking to hire a #winning INTERN with #TigerBlood.」で、「#winning (成功を目指し) 、#TigerBlood (熱い血の) インターンを求む」、というものである。このメッセージに挿入されているリンク (http://bit.ly/hykQQF) を クリックすれば、Internships.comという、企業インターン募集サイトにジャンプする。Sheenが、ツイートで、この広告を行い、多くのフォロワーが、このサイトでインターン応募に応募して、このキャンペーンは大成功を収めた。

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データマイニング

Adlyはこのように、企業ブランドとセレブを組み合わせて、プロモーションを行なう仕組みを生み出し、その効果が認められてきた。Adlyに登録しているセレブは、Charlie Sheenのほかに、Kim Kardasian (キム・カーダシアン、テレビ女優) など千人以上に上る。また、Adlyと契約している企業は、NBC、Sony、Microsoft、Old Navyなど150社を超える。Testaによると、セレブの登録数が急増しており、セレブのプロフィール情報を如何に収集し、解析するかが大きな課題となってきた。このため、Adlyは、セマンティック技術を使って、ウェブサイトからセレブ情報を、データマイニングする方式を開発した。

また、Testaによると、ウェブ上には豊富なデータが揃っており、特に、セレブに関する情報は充実している。Adlyが利用しているウェブサイトは、Linked Dataと総称される、セマンティック化されたウェブである。具体的には、Freebaseなど、コミュニティーにより構築された、セマンティック・ウェブである。上のスクリーンショット (出展:Metaweb) は、Freebaseにおいて、Kim Kardashianを検索した様子である。Freebaseは、Metaweb社により開発されたセマンティック・ウェブで、2010年7月に、Googleが買収している。Freebaseは、セマンティック化されたWikipediaと表現でき、記事にアクセスするための様々なAPIやツールを公開している。Adlyは、これらAPIやツールを利用して、データマイニングを行なっている。Adlyは、マイニングしたセレブ情報を、ビジネス・インテリジェンスの手法で解析し、セレブのプロフィールを構築する。このプロフィールにマッチするブランドを選び、ツイッターでメッセージを発信する手順となる。

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トレンド

セレブがツイッターを使って、製品紹介を行なうことに対して、読者から反対の声があるものの、多くの読者は好意的に受け止めている。上のスクリーンショット (出展:Twitter) はMandy Moore (シンガー・ソング・ライター) が、ツイートで、AOLの新しいロゴについて述べている様子である。ちょうどテレビ広告で、セレブが、製品紹介を行なうのと同じ方式である。これらのメッセージには、(Ad) と表記され、広告メッセージであることを明示している。ツイッターが広告モデルを模索している中で、Adlyは、セマンティック技術を応用し、ひとつの筋道を示している。

グッド・リレーションズ (SemTech 10より)

Friday, August 6th, 2010

今週は、最新のセマンティック技術を議論するカンファレンスであるSemantic Technology Conferenceから、オンライン・ショッピング・サイトにおける、セマンティック・ソリューションの最新動向を検証する。このレポート作成においては、Best Buy (ベスト・バイ、米国の大手家電量販店) のJay Myers (ジェイ・マイヤーズ) らが行った講演「Semantic Tools for More Profitable Online Commerce」を参考にした。

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Best Buyとセマンティック技術

Best Buyは、Richfield (ミネソタ州) に本社を置き、アメリカを中心に、カナダ、ヨーロッパ、中国で、家電製品を販売する大手企業である。Best Buyは、オンライン・ショッピング・サイトとして、BestBuy.comを運用しており、商品の販売だけでなく、販売店舗利用者に対して、製品情報を提供している。消費者は、オンライン及びオフライン・ショッピングにおいて、検索エンジンを使って商品を検索し、機能や価格の比較を行っている。Best Buy店舗で買い物をする利用者の半数以上が、商品購入前に、ウェブサイトで商品情報を収集し、下調べをしている。

このためBest Buyは、これら消費者に向けて、商品データを提供することに加えて、検索エンジンなどのマシンに対しても、商品データの提供を始めた。マシンに対してデータを提供するために、セマンティック技術を導入し、ウェブページ (上のスクリーンショット、出展はいずれもBest Buy) のように、HTMLマークアップに、store name、address、geo、review dataなどのアトリビュートを付加して、ウェブページが何について記載しているかを表現している。Best Buyが導入しているセマンティック技術実装方式は、RDFaとMicroformatsである。(両者ともHTMLの中でセマンティック情報を定義するマークアップ。RDFaはW3Cが認定した書式で、Microformatsは民間団体が作成した簡易版。現在はMicroformatsが普及している。)オントロジー (言葉の体系や定義) は、GoodRelations (グッド・リレーションズ) を採用している。

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ウェブサイトにセマンティック技術が導入されることで、商品に関する記述 (上のスクリーンショットの上部) を、検索エンジンが理解して、その検索結果 (上のスクリーンショットの下部) に、商品の評価情報 (星印など) を付加して表示する。これは、前回、Google Rich Snippetsで紹介した通りである。Best Buyは、この方式に加えて、セマンティック技術を活用した、新時代のマーケッティングを試行している。

Open Boxという再販システム

アメリカでは、消費者は購買した商品に問題があれば、いつでも返品することができる。小売量販店は、この制度の運用が、大きな負担となっている。Best Buyも例外ではなく、アメリカにおける商品返品率は27%に登っている。一方で、返品された製品を検証すると、製品に問題がない場合が85%に上るという状況である。Best BuyはOpen Boxという名称で、返品された商品で問題がないものを、安く再販する仕組みを展開している。

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上のスクリーンショットは、返品されたSony BRAVIA XBRが、Best BuyのWillow Grove店 (フィラデルフィア州) で、$1749.00で再販されているという、Open Boxの事例である。リストプライスだと$2999.99の製品が、半額近くの値段で再販されている。消費者は、Open Boxのウェブサイトを見て、販売されている商品を確認し、その店舗に足を運んで、商品を購入することになる。この背後では、その店舗のスタッフが、返品された問題のない商品について、Open Boxのウェブサイトで、その商品についてのデータを入力する。入力する項目は、製品番号、値引きした新価格、返品された理由、セールの期間などである。これらのデータを入力して、Saveボタンを押すと、この情報がOpen Boxのウェブサイトに掲示される。このシステムは、ブログ・システムで人気のあるWordPressを使って構築されている。複雑なデータベースの構築は不要で、セマンティック技術とウェブ技術の融合で、店舗ごとに、特売情報を簡単に掲示することができるようになった。

Best Buyの将来構想

Best Buyは、導入したセマンティック技術を使って、商品マーケティングを幅広く展開しようとしている。Best Buyのウェブサイトに掲載している商品は、前述の通り、GoodRelationsというオントロジーを使っている。GoodRelationsは、Eコマースにおいて、製品、価格、会社情報などの「標準ボキャブラリー」である。そのため、Best Buyのウェブサイトは、「方言」ではなく、「標準語」で記述されている。例えば、特定の商品を示すため、Universal Product Code (バーコードなどで使われている製品コード) などが使われ、商品の種類を規定する。

このため、検索エンジンやアプリケーションで、特定製品について、サイト内だけでなく、サイトを跨って、スペックや価格の比較を精密に行うことができる。将来、Best BuyとAmazonで、特定の商品について、厳密な比較が可能となる。会社間で、商品を厳密に比較できるようになると、消費者にとっては朗報であるが、企業にとっては競争が厳しくなる。しかし、大きな流れはこの方向で、AmazonやO’Reilly Media (オンライン書籍販売) などで、セマンティック技術の導入が始まっている。セマンティック技術を実装するものの、まだ、それを利用するアプリケーションが少ないのも事実である。今後は、商品比較だけでなく、商品販売を促進する画期的なアプリケーションの登場が期待され、ここが大きなビジネス・チャンスとなっている。

グーグル・リッチ・スニペッツ (SemTech 10より)

Friday, July 30th, 2010

今週のレポートは、最新のセマンティック技術を議論するカンファレンスであるSemantic Technology Conferenceから、Googleのセマンティック・ウェブ技術について考察する。レポート作成では、GoogleのKavi GoelとPravir Guptaが行った講演「Google Rich Snippets」を参考にした。

Google Rich Snippets概要

Googleは、昨年のSearchology (サーチオロジー、検索技術の発表会) で、Google Rich Snippets (グーグル・リッチ・スニペッツ) という、セマンティック技術を発表した。Rich Snippetsとは、ウェブサイトを記述するHTMLなどのマークアップに、セマンティックな情報を付加するツールで、検索結果の表示を構造化するために用いる。ウェブサイ運営者は、Rich Snippetsを使って、ウェブページがどんな内容を表しているかという、セマンティックな情報を付加する。

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Google検索エンジンで、「xanh restaurant」というキーワードで検索した結果が、上のスクリーンショット (出展:Google Inc.) である。これは、Xahn (ザン) というベトナム料理レストランの検索結果を示しているもので、通常の検索結果の表示に加えて、星印でレストランの評価を示している。また評価 (Review) の件数が652と表示されている。この星印や評価件数が、Rich Snippetで付加したセマンティック情報である。検索結果のリンクをたどり、Yelp (イェルプ、店舗紹介サイト) のページを開くと、下のスクリーンショット (出展:Yelp) の通りである。Yelpのサイトにおいて、Xahnの評価は星四つで、評価件数は652となっている。

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更に、このウェブページのソースコードを見ると、次頁の通りである。(出展:Google Inc.)ソースコードは、「hReview-aggregate」というタグから始まっており、この一塊がRich Snippetsである。Rich Snippetsで、色々な記述ができるが、この事例は、Review (評価) に関する記述である。ソースコードの中の「fn = Xahn Restaurant」は店舗の名前を、「rating value = …. 4.0」で四星を、「count = 652」がレビューの数を示している。

検索結果の最適化

Yelpのウェブサイトは、上の事例の通り、ウェブページにRich Snippetsを組み込み、レストランの評価が四星などと、レストランに関する情報を追加している。Google検索エンジンは、この追加情報を解釈して、検索結果に、四星を表示している。また合わせて、レストラン評価件数が652あり、価格帯が$$であることも表示している。利用者は、数多く表示される検索結果の中で、星印が付いたYelpのサイトが目に留まり、このリンクをクリックする。Rich Snippetsにより、Yelpサイトへの訪問者が増えることになる。Googleによると、Rich Snippetsを導入しても、検索順位は変わらないとしている。しかし、上述の通り、Rich Snippetsによる付加情報が、検索結果で際立っており、SEM (Search Engine Marketing) で有効な手段となる。これからのウェブサイト運営者は、検索結果順位の向上だけでなく、Rich Snippetsによる最適化も導入する時期に差し掛かっている。Google Rich Snippetsは、上述のReviewsのほかに、People (人物)、Business and Organizations (会社や組織)、Events (イベント)、Video (ビデオ) のタグをサポートしている。レストラン以外にも、コンサート・チケット販売やDVDの販売のプロモーションなどで、幅広く使用できる。

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Goelらが行った講演で、Google Rich Snippetsの普及状況を公開した。それによると、米国においては、Google Rich Snippetsを実装しているページが、09年10月時点と比較して二倍に増え、全世界では四倍に増えているとしている。一般利用者にとってセマンティック技術はまだ敷居が高いが、Googleの参入などでその普及が広がりつつある。またYahooは、SearchMonkey (サーチ・モンキー) という同様なサービスを展開している。セマンティック・ウェブを使った検索エンジン・マーケッティングの機が熟してきた。

GoogleFacebookの構図

Google Rich Snippetsは、前回紹介したFacebook Open Graphに似ており、どちらもウェブページにセマンティックな情報を付加するためのツールである。セマンティック技術を含め、GoogleとFacebookの争いが、鮮明になりつつある。7月28日のWall Street Journal電子版は、Googleはソーシャル・ゲームのプラットフォームとして、Google Meというサービスを開発中であると報道している。Google Meとは、ソーシャル・ゲームを実行するためのウェブ基盤である。ソーシャル・ゲームとは、ソーシャル・グラフを活用したゲームで、ゲームの進展状況を友人と共有したり、友人と共同でゲームを展開することができる。更に、Wall Street Journal電子版は、Googleはソーシャル・ゲーム開発企業であるPlaydom (プレイダム)、Playfish (プレイフィッシュ)、Zynga (ジンガ) と交渉中であると報じている。

Facebookがソーシャル・ゲームを独占しており、Zyngaが開発したFarmVille (ファームビル) では、6,000万人の利用者がある。日本で先行しているソーシャル・ゲームが、いまアメリカで大きく動いている。Electronic Artsは、昨年11月に、上述のPlayfishを$400Mで買収している。Walt Disneyは7月27日に、上述のPlaydomを、$563.2M+$200Mで買収することを発表した。また日本のSoftBankは、昨日、Zyngaとの提携を発表し、Zyngaを日本で展開するとしている。このような背景で、Googleがソーシャル・ゲームに進出しようとしている。一方でFacebookは、広告ネットワークをFacebookから外部のサイトに展開する動きを見せている。FacebookがGoogle AdSenseの事業に進出しようとしている。GoogleとFacebookのテリトリーが重なり始め、暑い夏となっている。

オープン・グラフ (SemTech 10より)

Friday, July 23rd, 2010

最新のセマンティック技術を議論するカンファレンスであるSemantic Technology Conferenceは、10年6月21日から五日間、サンフランシスコで開催された。このレポートでは、セマンティック・ウェブのマクロな動向を、数回に分けて解析する。レポート作成に当たっては、ion interactive (アイオン・インタラクティブ) の社長兼CTOであるScott Brinker (スコット・ブリンカー) の「The Semantic Web in Marketing & Advertising」 (マーケティング及び広告におけるセマンティック・ウェブ) という講演を参考にした。Brinkerは、この講演の中で、セマンティック・ウェブの12のトレンドを紹介した。この中から、重要なトレンドを取り上げ、その内容を掘り下げて、セマンティック技術の潮流を紹介する。

Facebook Open Graph概要

初回は、Facebook Open Graph (フェースブック・オープン・グラフ) の概要と、その潜在能力について考察する。Facebookは、10年4月21日に、f8 (開発者向けのカンファレンス、フェイトと発音) において、Facebook Open Graphを発表した。Open Graphとは、ざっくり表現すると、Facebook上でのソーシャル機能を、他のウェブサイトで利用するための仕組みである。Open Graphは、ウェブサイトで、利用者の嗜好を把握するために利用され、その際に、セマンティック技術を用いて、利用者の嗜好を精密に定義する。

Open Graphは、三つのコンポーネントから構成され、それぞれ、Social Plugins、Open Graph Protocol、Graph APIである。Social Pluginsは、ウェブサイトにFacebookのソーシャル機能を導入するためのプラグインである。Facebookでは、会員が音楽や写真などに対して、好きを表現するために、Like Button (ライク・ボタン、サムアップのアイコン) がある。会員が、特定の音楽や写真を気に入った時に、このLike Buttonをクリックして、ファンであることを宣言する。このアクションは、会員のWall (掲示板) に掲載され、他の会員に向けてこの情報を発信する。更に、この情報は会員のProfile (プロフィール) に、嗜好情報として記録される。Facebookやそのパートナーは、この嗜好情報を参考に、個人に特化した情報や広告メッセージを配信している。

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Facebook Open Graph事例

これと同様な機能を、Facebook以外のウェブサイトで実装するツールが、Social PluginsのLike Buttonである。映画やテレビ番組に関する人気サイトにIMDbがある。IMDbは、Like Buttonを導入しており、このサイトを訪れた利用者は、気に入った映画やスターに出会った際に、Like Buttonを押してファインであることを宣言できる。現在上映中の人気映画である「Inception」のページ (上のグラフィックス、出展はいずれもIMDb) にもLike Button (画面右上の部分、それを拡大したのが下のグラフィックス) が実装されている。このボタンを押すと下のグラフィックスのメッセージとともに、IMDbのウェブサイトに表示される。またこの情報は、利用者のFacebookのWallに掲載され、この情報を友人と共有できるだけでなく、この嗜好情報がProfileの中に記録される。

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次に、Open Graph Protocolは、セマンティックなマークアップで、ウェブサイト開発者が、ウェブページの属性を定義するために使用する。つまり、Open Graph Protocolは、ウェブページが何を記述しているかの、セマンティック情報を付加するためのツールである。IMDbサイトで、前述のInceptionのウェブページのソースコードを見ると、下記の記述がある。

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セマンティック技術

メタタグの中に記載されている”og:type”という部分が、Open Graph Protocolを示している。ここで、ウェブページのタイプが映画であると定義している。Open Graph Protocolは、上述のLike Buttonと対で使用される。上述のように、このページでLike Buttonを押すと、Facebookは、この利用者は数あるコンテンツの中で、テレビ番組ではなく、映画が好きであると認識する。さらに、その映画のタイトルは「Inception (2010)」であると理解し、その情報を、当該会員のFacebook Profileに記録する。このように、ウェブサイトでセマンティックなマークアップを追加することで、利用者の嗜好について、より精密に把握することができる。ウェブサイトのタイプは、映画以外にも、スポーツ、会社、ホテル、レストラン、慈善団体、学校、政府、俳優、著者、都市、ランドマークなどが用意されている。Facebookは、世界のウェブサイトで利用者の嗜好を把握して、これらの区分に分類して、その情報を記録する。これらの個人情報を使って、Facebookは、会員に特化したコンテンツの配信を目指している。これらの情報は公開されており、パートナー企業も会員の個人情報にアクセスできる。この情報にアクセスするツールがGraph APIである。パートナー企業も、これらの情報を元に、会員に最適な広告メッセージの配信を目指している。

考察

ソーシャル・ネットワークは、個人情報の宝庫で、これらを利用して、広告メッセージの個人化や商品の販売促進が進むと期待されていた。しかし、現実には、Facebook Beacon (個人の購買情報のトレース) で、個人のプライバシー問題から、Facebookは早々に、この機能を撤回した経緯がある。ソーシャル・ネットワークでのマーケティングは、プライバシー問題とのバランスで、期待したほど進展がなかった。ここに来て、Facebookは、Open Graphを投入して、人と人の繋がりだけでなく、人とオブジェクト (前述の映画のような対象物) の繋がりを精密に定義できるようにした。このセマンティック情報を付加されたデータが公開されており、この基盤上でユニークなアプリケーションを開発する絶好の機会でもある。現在、Facebookの会員数は5億人と言われているが、その数は増え続けている。2013年までに、世界のインターネット利用者の全員が、Facebookの会員になるという予測もある。今年10月には、Facebookを描いた「The Social Network」という映画が封切られる。映画の題名とは裏腹に、Facebookはもはやソーシャル・ネットワークではなく、インターネットそのものになろうとしている。