Archive for the ‘ネットワーキング’ Category

Googleが通信キャリア事業をスタート、LTEとWiFiを統合し生活空間が単一の通信網となる

Friday, July 17th, 2015

Googleが通信キャリア事業に乗り出した。このサービスは「Project Fi」と呼ばれ、MVNO (仮想移動体通信事業者) 方式でネットワーク・インフラを提供する。低価格でサービスを提供するだけでなく、通信キャリアが提供する機能を根本から改良する。スマホの理想形「Nexus」を開発したように、ネットワークのあるべき姿を探求する。米国でProject Fiがスタートし、通信キャリア市場を揺さぶっている。

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近未来の通信網

Googleは2015年6月から、米国で「Project Fi」を始動した。Googleはこのプロジェクトを試験的に展開するとし、地域ごとに人数を限定してサービスを始めた。このため、プロジェクトへの参加は、Googleから招待状が必要となる。筆者も申し込みをしていたが、やっと招待状を受け取り、Project Fiを使い始めた。サポート対象デバイスはNexus 6で、Project Fi専用SIMカード (上の写真) を挿入して利用する。SIMカードはクリップ止めされており、これを使ってスロットを開ける。

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実際に使ってみると、Project Fiは近未来の通信網と言っても過言ではない。LTEやWiFiなど、異なるネットワーク間で、最適な通信網を選択し、サービスを途切れなく利用できる。屋内では、通話やテキストメッセージは、WiFi経由でやり取りする。屋外に出ると、Googleの移動体ネットワーク「Fi Network」に接続される。

ロックスクリーン左上にFi Networkと表示され、Project Fiのネットワークを利用していることを確認できる (上の写真左側)。また、ネットワークの設定や使用状況などは専用アプリ「Project Fi」を使う (上の写真右側)。Network FiはSprintとT-Mobile USの4G LTEを利用している。この意味でMVNOであるが、単に通信網を利用するだけでなく、Fi Networkは両者のうち電波強度の強いネットワークに接続する。

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WiFiとLETでシームレスな通信

印象的なのは、ネットワーク間で途切れなくサービスを利用できることだ。自宅でWiFi経由で電話している時、屋外に出るとネットワークがLTEに切り替わる。通話は途切れることなく、シームレスにハンドオーバーされる (上の写真左側)。屋内でWiFiを使って通話している時は「Calling via Home-7392」と表示される (Home-7392は筆者宅のWiFi)。屋外では「Fi Network」と表示され、Googleの通信網を利用していることが分かる。(上の写真の事例では表示されていない。) Fi Networkと表示されるだけで、背後でSprintとT-Mobileのうち、どちらのネットワークが使われているかは示されない。屋外でWiFiホットスポットがあれば、自動的にここに接続される。

通話だけでなく、データ通信でも自動でネットワークが切り替わる。自宅のWiFiでGoogleの音楽ストリーミング「Play Music」を聞きながら、自動車で屋外に出るとFi Networkに切り替わる。音楽は途切れることなくシームレスに続き、ドライブしながら好みの曲を楽しめる。今まではWiFi域外に出ると、エラーメッセージが表示され、再度接続する必要があった。WiFiとLTEの壁が取り払われ、生活空間全てが単一のネットワークになった感覚だ。どこでも継続して電話やインターネットを使え、生活が格段に便利になったと感じる。

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消費者に優しい料金体系

もう一つの魅力は消費者に優しい料金だ。料金体系はシンプルで、基本料金とデータ料金の組み合わせで構成される。基本料金は月額20ドルで、ここに、通話、テキストなどが含まれる (上の写真、The Fi basicsの部分)。データ通信は月額10ドル/GBとなる。例えば2GBで契約すると月額20ドルとなる(上の写真)。制限量まで使っていない場合は、翌月分の料金から差し引かれる、良心的な料金体系となっている。Project Fiを使い始め、電話料金が半額になった。

ネットワークでイノベーションを興す

革新的なネットワークを低価格で提供するが、Googleの狙いはどこにあるのか、興味深い発言がある。Android部門などの責任者Sundar Pichaiは、Project Fiについての見解を表明した。Googleは基本ソフト (Android) とデバイス (Nexus) だけでなく、ネットワークを含めた統合システムで、技術開発を進める必要がある。個々のネットワークでは技術進化が停滞しているが、包括的なネットワーク環境ではイノベーションが起こると期待を寄せている。

通信キャリアとの関係にも言及した。Project Fiは限定的なプロジェクトで、VerizonやAT&Tなど、既存キャリアと競合することは無い。SprintとT-Mobileはネットワーク回線をGoogleに卸し、空回線を有効利用できる。これにより、ユーザ数が減少し収入は減るかもしれないが、利益率が改善し、収益は増えると期待している。

既存キャリアへの圧力

米国の消費者は低価格で先進的なサービスを使うことができるとして、一様にProject Fiを評価している。つまり、Project Fiが新しい基準となり、VerizonやAT&Tを値下げや新サービス開発に向かわせる可能性を秘めている。Project Fiが黒船となり、米国のキャリア市場が大きく変わろうとしている。

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既に米国キャリアの中で、Project Fi方式を模したサービスが登場した。ノースカロライナ州に拠点を置くRepublic Wirelessは、MVNO方式のキャリアでProject Fiと類似のサービスを導入した。通信はWiFi経由で行い、WiFi環境がない場合は携帯電話回線を利用する。両者の間でシームレスな移行はできないが、有料サービスを最小限に留める仕組みとなる。料金体系でProject Fiの方式を模している。基本料金 (通話とテキストとWiFi) は月額10ドルで、データ通信 (1GB) は月額15ドルとなる (上の写真)。未使用の部分は翌月に払い戻しを受ける仕組みとなっている。Project Fi方式が米国市場で普及し始めた。

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Googleの狙い

モバイル環境でイノベーションが起こり、便利な機能が登場し、通信価格が下がれば、利用者数の増加につながる。これは消費者にとってのメリットであり、同時に、これがGoogleの狙いでもある。より多くの人がインターネットにアクセスすれば、Googleサービス利用者が増え、広告収入などが増える。

Googleは一貫してこの手法を展開しており、Project Fi以外に、高速ブロードバンド「Google Fiber」の前例がある。Google Fiberの最大転送速度は1Gbpsで、主要都市で施設が進んでいる。大手ケーブル会社Comcastはこれに対抗するため、Google Fiberの二倍の性能を持つ「Gigabit Pro」の施設を始める。15年以上無風状態であった米国のブロードバンド市場が、Google Fiberの登場で一気に動き出した。

地球規模では、Googleは気球インターネット「Project Loon」の開発を急いでいる (上の写真)。アフリカや南米など、インターネット環境が整っていない地域に、気球からブロードバンドサービスを展開する。地域住民の社会インフラを提供するとともに、インタネット利用者を増やし、Googleサービスの利用者を増やす狙いがある。

Project Fiの日本への影響

前述の通り、Project Fiの背後では、SprintとT-Mobileの通信網が使われている。T-Mobile最高経営責任者John Legereは、Project Fi向けにネットワークを供給し、新技術が展開されることにを全面的にサポートしている。

一方、Sprint親会社SoftBankの孫正義社長は、Project Fiへの参加に躊躇したとも言われている。Sprintは多くのMVNOに回線を卸しているが、Googleに対しては懐疑的なポジションを取っている。この理由は明らかにされていないが、Googleが通信キャリア事業に参入し、Sprintと競合することを避けたいという思惑があったと推察される。

しかし、Google向けに通信網を提供したのは、Project Fiの手法を学び、日本で類似サービスを展開する意図があるのかもしれない。SoftBankが直接手掛けないとしても、日本のMVNOはProject Fiから学ぶところは少なくない。モバイルサービスは完成形ではなく、まだまだ大きく進化できる余地があることをProject Fiは示している。

LEDライトによるインドア・ポジショニング~店舗内消費者の位置をピンポイントに把握

Tuesday, October 1st, 2013

アマゾン化する小売店舗(4)

小売店舗がAmazon.comの手法を取り入れ、デジタル化を進めている。店舗内の顧客位置情報を正確に把握することが、販売促進のための必須要件となる。店舗内ではGPSシグナルを捕捉できないため、WiFiシグナルを使う方式が一般的である。このレポートでは、照明用のLEDライトを使った、高精度なポジショニング技術を検証し、その応用分野を考察する。

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博物館でナビゲーションとして利用

ByteLightはBoston (マサチューセッツ州) に拠点を置くベンチャー企業で、LEDライトを利用した位置情報システムを提供している。利用者が持っているスマートフォンのカメラで、天井に設置されているLEDライトを読み込み、位置を把握する。LEDライトは、ミリセカンドの周期で点滅し、固有のシグナルを発信する。スマートフォンでLEDライトの異なるシグナルを読み込み、位置を計測する仕組みとなる。LEDライト内には専用チップが組み込まれ、ソフトウェアを搭載し、固有のシグナルを発生させる。

ByteLightは、BostonにあるMuseum of Scienceで導入されている。博物館のCahners ComputerPlaceというコーナーには、20基超のSolais Lighting社製LEDライト (上の写真) が天井に設置されている。博物館は専用アプリが搭載されたiPadを貸出し、入館者はこれをガイドブックとして、館内を移動する。アプリはフロアーマップに利用者の現在地を示し、目的の展示物までナビゲーションする (下のスクリーンショット)。セルフ・ツアーでは、展示物の前に立つと、その説明がiPadに配信される。また利用者は、iPadでPersonal Exploration Rover (火星探査ローバの模型) を操縦することもできる。これらは、ByteLightの技術で、利用者の位置を精密に測定できるため、可能となる。

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小売店舗でのプロモーション

ByteLightは小売店舗への導入が期待されている。小売店舗は、ByteLight技術で、消費者の正確な位置を把握でき、位置に応じた情報を配信する。消費者が特定の商品の前にいれば、その商品に関するクーポンや特売情報をスマートフォンにプッシュする。下の写真がそのイメージで、消費者がタブレットを使って買い物をしているところで、ピンクのTシャツの前に立っている。店舗側は、消費者のタブレットに、この商品に関する特売情報を配信する。小売店舗は、消費者の過去の購買履歴や嗜好などを把握しており、これらデータを元に、最適な情報を配信する。このソリューションも、ByteLight技術で、消費者の場所をピンポイントで把握できるため、可能となる。

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決済システムへの応用

ByteLightは、Light Field Communication (LFC) という通信方式の開発を行っていることを明らかにしている。LFCとはライトによる通信方式で、スマートフォンをLFC Reader (下の写真、白いデバイス) にかざすだけでチェックインできる。LFC ReaderがLEDライトのシグナルを発信し、消費者のスマートフォンでこれを読み取る。消費者は小売店舗のレジでスマートフォンをかざし、ポイントを貯めたり、ポイントを使うことができる。また、おサイフケータイの要領で、スマートフォンをLFC Readerにかざして支払いをするシステムも開発されている。

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インドア・ナビゲーションが今年の主戦場

多くの企業は屋内のマップ技術の開発にリソースを集中している。Googleは、2011年から、主要建造物内部のマップサービスを展開している。利用者は施設内でも、屋外と同じ要領で、Google Mapsを利用できる。Appleは独自技術でマップサービスを提供しているが、Google Mapsに大きく後れをとっている。Appleは、2013年5月、インドア・ナビゲーション技術強化のため、WiFiSLAMというベンチャー企業を買収した。また、WiFi関連製品を提供するAruba Networksは、2013年5月、Meridian Appsというベンチャー企業を買収すると発表した。Meridian Appsはインドア・ポジショニング技術を開発し、デパートで買い物客用にナビゲーション・サービスを展開している。店舗内でのポジショニング技術は、商品プロモーションでの必須要件で、ベンチャー企業からユニークな技術の登場が相次いでいる。今年は、マップ技術がアウトドアからインドアに移る、節目の年となっている。

市民の抗議活動をウェブで展開

Friday, August 17th, 2012

PublikDemand (パブリック・デマンド) は、Mountain View (カリフォルニア州) に拠点を置く企業で、消費者が企業に対するクレームを掲載できるサイトを運営している。Demo Dayでは、PublikDemand創設者でCEOであるCourtney Powell (コートニー・パウエル) が、その仕組みを解説した。

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消費者のクレームを集約

消費者は企業からのサービスで問題が発生した際に、その内容をPublikDemandに掲載し、企業に問題解決を迫ることができる。上のスクリーンショット (出展はいずれもPublikDemand) がその様子で、ここに消費者からのクレームが記載され、他の消費者がこれらの記事を読み、コメントを記入し、サポートの意思を表明している。上の事例では、Bank of AmericaやAT&Tに対するクレームが掲載されている。下のスクリーンショットは、Matt Spaccarelliという人物が、AT&Tに対して、問題点を主張している事例である。 同氏は、「iPhoneのUnlimitedの契約を行なったが、AT&Tは通信速度を絞るThrottlingを行い、契約に違反している」と主張している。Unlimitedの契約をすると、iPhoneで無制限にデータ通信を行なえるはずであるが、実際にはAT&Tは、通信量が多い利用者に対して、データ通信量を制限しているという問題である。Spaccarelliは、「AT&TはThrottlingを停止し、裁判所の指示に従い、800ドルを支払うべきである」と主張している。この記事に対して、1771人が賛同の意を示している。

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PublikDemandのビジネス・モデル

PublicDemandは、賛同者が100人以上になると、消費者に代わり企業と交渉を行い、サービスの改善を要求する。上述のケースではこの条件を満たしており、PublikDemandがAT&Tと交渉を行い、この問題を解決することとなる。一方で、交渉を行なってもサービス改善が行なわれない時は、PublikDemandはこれら利用者を競合他社に紹介し、そこから手数料を受け取り事業を展開するとしている。AT&Tの他に、Bank of America、Chase、Wells Fargo、Citibank、Verizon、Time Warner Cable、Comcast、PayPalについて専用ページが設け、クレームを受け付けている。銀行、モバイル・キャリア、ケーブルテレビに対して、クレームが集中していることが分かる。Occupy Wall Streetの活動が示しているように、アメリカでは大企業と消費者の間に不公平感が広がっている。PublikDemandは、この不満を解消するためのサービスとして登場し、新しいモデルで事業展開を試みている。

Googleの事業多角化、ケーブル・テレビ市場へ参入

Friday, August 3rd, 2012

Googleは先週、Kansas City (カンザス州) のプレス・イベントで、Google Fiberの詳細を明らかにした。Google Fiberとは、Googleが試験的に運営する、光ケーブルによるブロードバンド・サービスである。Googleはこの中で、Google Fiber TVという名称で、ケーブル・テレビ事業を展開することを発表した。これによりGoogleの事業多角化に拍車がかかってきた。

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Google Fiberとは

Google FiberとはGoogleブランドのブロードバンド・サービスで、利用者は高速にインターネットにアクセスでき、併せて、ケーブル・テレビを見ることができる。Googleは事前にGoogle Fiber導入を希望する都市を募り、1100の都市から応募があった。Googleはこれらの都市から、2011年3月に、Kansas City (カンザス州) を選定し、Google Fiberを展開することを表明している。その後、2011年5月には、Kansas City (ミズーリ州) を選定し、この二つの都市でGoogle Fiberを展開してきた。上述の通り、先週、Googleはブロードバンド・サービスに加え、ケーブル・テレビを展開することを明らかにし、GoogleがComcastなど既存のケーブル・テレビ企業と競合する構図が鮮明になった。

Google Fiberは三つのパッケージを提供する。「Gigabit + TV」というパッケージでは、高速インターネットとケーブル・テレビが提供される。高速インターネットでは、通信速度は1Gbps (Giga Bit per Second) で、通常のブロードバンドの100倍の性能を持つ。ダウンロードだけでなく、アップロードも1Gbpsで、シンメトリックな性能が特徴である。ケーブル・テレビでは、主要ネットワークを含む100局超のチャンネルが提供される。

このサービスでGoogleが提供する機器は、TV Box (セットトップ・ボックス、上のスクリーンショット左手前、出展はいずれもGoogle)、Network Box (EthernetとWiFi付き ルータ、同左端上段)、Storage Box (2TBのデジタル・ビデオ・レコーダ、同左端下段)である。またリモコンとしてGoogleブランドのタブレットであるNexus 7 (手前中央)、及び、クラウド・ストレージとしてGoogle Drive (1TB) が添付されている。「Gigabit + TV」の料金は月額120ドルである。「Gigabit Internet」は、上記からケーブル・テレビを除く、ブロードバンド・サービスだけで、月額料金は70ドルである。また「Free Internet」として、現行ブロードバンドに匹敵するサービスを、一時金300ドルで使うことができる。

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Googleは、Google Fiberを開発した理由を、次ぎのように説明している。市場ではコンピュータ性能 (上のグラフ・黄色の線) や、ストレージ容量 (同赤色の線) が伸びるなか、ブロードバンド通信速度(同緑色の線) は、2000年から停滞したままで、今後もこの状況が続くと予想される。Google Fiberを導入することで、ブロードバンド通信速度もコンピュータやストレージと同じカーブで性能が向上する (同青色の線)。これによりGoogleはインターネット上の情報を幅広く利用者に届けることができるとしている。

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Googleのケーブル・テレビ

Google Fiber TVは、光ケーブルを利用した、Googleブランドのケーブル・テレビである。Google Fiber TVでは、テレビ番組がグリッド形式で表示される (上のスクリーンショット) 。グリッド上でみたい番組をクリックするとテレビ放送が始まる。リモコンの検索ボタンを押すと、テレビ番組検索画面が表示され、Smart Recordボタンを押して、番組を録画予約する。Google TV Fiberは500時間のHD番組を記録することができる。

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Google Fiber TVでは、タブレットやスマートフォンをリモコンとして使える。AndroidのほかにiPhoneをサポートしている。Nexus 7を使って、番組を音声で検索することができる。検索結果はTV Showsのカラムに表示され、見たい番組にタッチすると番組が始まる。配信先のテレビを指定することができ、Play – on Living Roomボタンにタッチすると、リビングのテレビで番組が始まる。Google Fiber TVで見ている番組の続きを、タブレットで見ることができる。上のスクリーンショットがその様子で、テレビで見ていたSesame Streetの続きを、Nexus 7で見ることができる。Nexus 7では、テレビ番組を見ながら、ソーシャル・ネットワークにコメントを投稿できる。

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光ファイバー施設とGoogleの狙い

光ファイバー設置工事については、Googleはユニークな方式を取り入れている。光ファイバー設置は、市民の申し込みが多い順に行なわれる。また規定の申し込み数に達した地域だけに光ファイバーが施設される。Kansas City (カンザス州) での申し込み状況は上のグラフィックスの通りで、緑色の地区は申し込み目標数を達成し、光ファイバーが設置される。黄色の地区は申し込み目標数に達成していない地域を示している。Kansas City (ミズーリ州) については、光ファイバー施設工事は2013年初頭から開始される。Google Fiberで、Googleは既存ケーブル・テレビ会社と直接競合することとなる。Googleがケーブル・テレビ事業に進出するのは、インターネットと消費者を結ぶ通路を自らコントロールし、消費者が検索やYouTubeなど、Googleクラウドに高速にアクセスするため。更に、Googleがケーブル・テレビ事業を展開することで、テレビにおける消費者の挙動を把握し、広告配信に利用することができる。Googleはタブレット事業に続き、事業多角への歩みを速めている。

AT&Tモバイル・インターネット

Friday, November 27th, 2009

サンフランシスコにおいて、今月、Open Mobile Summitというカンファレンスが開催された。携帯電話を中心とするネットワークは、クローズドな基盤の上に構築され、ともすれば日々の技術進化に遅れをとってきた。Open Mobile Summitでは、キャリアの世界をオープンにすることで、どんな事業が可能となるかが議論され、また、生まれつつある新技術が紹介された。

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AT&Tが展開するモバイル・インターネット

先のWeb 2.0 Summitでは、スマートフォンを中心とする携帯端末上でのイノベーションが議論された。Open Mobile Summitでは、アメリカの代表的なキャリアであるAT&Tが、ネットワークを維持運営する視点からの、モバイル・インターネットを紹介した。カンファレンス基調講演で、AT&TのCTOであるJohn Donovan (ジョン・ドノバン、上の写真、出展:Open Mobile Media Ltd) は、「Mobile Internet: The New Business of Mobile Networks」 (モバイル・インターネット:無線ネットワークでの新事業) というタイトルで講演を行なった。Donovanは、キャリア側から見たモバイル・インターネットの現状を紹介し、また、Apple iPhoneを中心とするAT&Tのエコシステムについても言及した。

講演内容を要約すると、AT&Tが販売しているiPhoneの利用者数の激増で、AT&Tの予想を遥かに上回るペースで、データ通信量が増えているという内容であった。更に、オープンなモバイル環境がイノベーションを生む源泉で、AT&Tは開発環境やツールを提供して、多種多品種の携帯電話をサポートしている、という趣旨であった。基調講演の冒頭で、Donovanは、AT&Tの携帯電話のデータ通信量が激増していることをグラフで示した。07年3月から約二年間で、音声通信量は2倍に増加しているが、データ通信量は18倍になっている。Donovanは、ネットワーク上でデータ量が急増している理由として、携帯電話のほかに、ノートブック、MID (携帯インターネット機器)、ゲーム機、自動車搭載機器、Eリーダー、ナビゲーション機器などがネットワークに接続されたためと分析している。基調講演の中で、iPhoneの登場回数は少なかったが、DonovanはiPhoneのネットワークへのインパクトは想定外であったと述べた。

オープン・モバイル

Donovanは、このカンファレンスのテーマである、オープン・モバイルについて、開発環境やシステムをオープンにすることで、市場が活性化されていると評価している。具体的に、オープン・モバイルとは、Open SDK (オープンな開発環境)、Open Platform (オープンなOS)、及びWidget (オープンなアプリケーション) から構成されると分析している。Open SDKでは、Forum Nokia (ノキアの開発フォーラム)、Open PlatformではAndroid、WidgetではPlusmo (スマートフォン向けアプリケーション・ストアー) をその事例に挙げた。Apple iPhoneのOS自体はクローズでであるが、システム開発環境や、アプリケーション開発環境は、第三者が自由に参加でき、オープンであると評価している。スマートフォンを中心にオープンに向かいつつあり、これがイノベーションを生んでいると結論付けた。

AT&Tネットワーク事情

基調講演のあと、ウォール・ストリート・ジャーナルの、Walt Mossberg (ウォルト・モスバーグ) の司会で、パネル・ディスカッションが行なわれた。パネルでは、Mossbergの厳しい質問に対して、Donovanが回答する形式で進行し、熱くなった議論が展開された。この議論の背景には、AT&Tの携帯電話ネットワーク事情がある。前述の通り、iPhoneの急激な利用者数の増加で、AT&Tのネットワークが逼迫しているという事情がある。iPhone利用者数が急増しただけでなく、iPhone利用者は他のスマートフォンに比べて、10倍ネットワーク資源を消費するという統計もある。iPhone利用者がAT&Tのネットワーク資源の大きな部分を消費している。

全米において、AT&Tは900万台のiPhoneをサポートしており、その20%がニューヨークとサンフランシスコに集中している。このため、両市においては問題が特に深刻で、携帯電話の回線が通話中に切れたり、テキスト・メッセージの着信が遅れたり、また、iPhoneでデータ・ダウンロード速度が遅くなるという問題を抱えている。このような背景のもと、MossbergはDonovanに、両市におけるAT&Tの対応を詰め寄った。Donovanは、AT&Tの投資金額の多くの部分を、ネットワーク性能改善に当てていると答えた。実際に、AT&Tは、09年度に、全米で2100基のセルタワー (基地局) の増設や、光通信技術の導入で通信性能をアップグレードしている。サンフランシスコにおいても、セルタワーの増設を進めている。

アメリカ携帯電話市場

今月から、競合相手であるVerizon (ベライゾン) は、AT&Tのこの問題を、コマーシャル放送で厳しく攻撃している。下の写真 (出展:Verizon) はVerizonが放送しているコマーシャルの一部で、両社の携帯電話3Gネットワークの範囲を比較している。赤色がVerizonで、青色がAT&Tで、Verizonのほうが、カバレージが五倍広いと主張している。AT&Tは、このコマーシャルは利用者に誤解を与えるとして、Verizonを提訴し、現在も係争中である。AT&Tの空白の部分はサービスが無いわけではなく、2.5Gのサービスを提供している。しかし、AT&Tは、iPhoneなどが必要としている3Gネットワークについては出遅れていて、更なる整備が必要なことは事実である。

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Donovanの発言が示している通り、当事者のAT&Tでさえ、iPhoneの爆発的な広がりを予想することができなかった。更に、iPhoneは、携帯電話の領域を超え、パソコンのようにインターネットにアクセスする利用特性については、全く予想外であった。この爆発的な携帯端末の使われ方が、O’Reillyの主張しているウェブ・スクエアードに当たる。AT&Tが提供しているiPhoneの利用形態が、次世代を先取りした携帯端末の先行事例ということができる。