Archive for the ‘ドキュメント管理’ Category

建設現場での設計図

Friday, March 30th, 2012

PlanGrid (プラン・グリッド) という新興企業は、建設工事の設計図をクラウドで管理する機能を提供している。利用者は、これら設計図をiPadにダウンロードし、建設現場で閲覧することができる。

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PlanGridという新興企業

まず設計責任者は、デスクトップで作成した設計図を、PlanGridクラウドに登録して管理する。次に建設現場の責任者は、クラウドに登録された設計図を、iPadのPlanGridアプリにダウンロードして閲覧する仕組みとなる。上のスクリーンショット (出展はいずれもVentureClef) は、iPadに搭載しているPlanGridアプリを起動して、IDとパスワードでログインしている様子である。iPadからPlanGridにログインすると、プロジェクト一覧が表示される。建設現場責任者は、プロジェクトの中から希望の設計図を選択してiPadに表示する。下のスクリーンショットがその様子で、設計図(L2.1)を選択し、設計図がiPad画面全体に表示されている。この設計図を指でスナップすると、その部分が拡大する。建設現場責任者は、紙の設計図を広げる代わりに、iPadで設計図を閲覧しながら建設を進めることができる。

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工事現場の責任者はPlanGridに表示された設計図に従って工事を進めていく。工事中に設計図に間違いがある場合や、工事の変更が必要な際には、iPad上の設計図に手書きで修正を入れることができる。下の画面がその様子で、画面右端のパレットからオプションを選択し、図形や文字を書き込む。修正した設計図はPlanGridアプリから、電子メールで設計責任者に送信する。

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CADの登場で設計図はコンピュータ化されているが、建設現場では設計図を印刷した紙を見ながら作業を進めている。そのため、最新設計図と現場で閲覧している設計図の版数が異なり、工事をやり直すケースが発生し、建設費が嵩む原因となっている。PlanGridはこの問題を解決するために登場した。一方、iPadの画面サイズが限られているため、設計図を移動しながら、拡大・縮小の操作を繰り返すことになる。使いにくい面はあるものの、建設現場でのIT化という意味では、画期的な技術である。

家族のためのクラウド (DEMO Spring 2011より)

Thursday, March 31st, 2011

AboutOne (アバウト・ワン) は、家庭向けのクラウド・サービスで、家族の情報を、一元的に管理する機能を提供している。主に、お母さんが、家族の管理をすることを念頭において設計されているクラウドである。

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AboutOneの機能概要

AboutOneは、家族の健康管理を行い、家計をやりくりするための機能を提供している。上のスクリーンショット (出展:AboutOne) は、AboutOneの初期画面で、ここから、AboutOneの機能を利用する。主な機能は、Family Newsletter (家庭内の掲示板)、Caregiver Report (両親の介護の履歴)、Education History (子供の就学記録)、Home Maintenance (家の改築記録)、Health History (家族の健康の記録)、Capital Gains (固定資産の記録) などである。

具体的には、Health Historyにおいては、家族の健康に関する基本情報を記録する。家族の健康状況や、アレルギー症、処方してもらっている薬、飲んでいるサプリメントを記録する。また、ホーム・ドクターの連絡先や診察予約日、更に、緊急の際の連絡先などを記録しておく。医療保険については、保険証書をスキャナーで読み込んで、ここにアップロードしておく。Health Historyは、家庭における電子カルテの役割を果たしている。緊急の際に、病院などから、Health Historyにアクセスして、治療に必要な情報を取り出す。AboutOneは、このように、病気や事故に備えて、必要な書類を一元管理する機能を提供している。このサービスは有償で、月額5ドルまたは、年間で30ドルとなっている。創設者のJoanne Langは、以前SAPに勤務しており、その時の経歴を生かして、家庭向けのクラウド・サービスを、女性の視点から開発した。

考察

アメリカのメディアは、今週は、リビア軍事介入の報道一色で、地震と津波による被災者の様子は置き去りにされた感がある。多くの人が家族や家を失って、悲痛な生活をしており、地震や津波などの災害に備えたシステムの重要性を再認識する。企業や地方自治体は、システムのバックアップが必須であるが、家庭においても、AboutOneのようなクラウドで、重要な書類 (保険証、契約書、処方箋、免許証、クレジットカード情報など) をバックアップしておく必要がある。非常事態には、スマートフォンから、これらのファイルにアクセスし、病院での治療や、役所での手続きに役立てる。更に、思い出の詰まった写真アルバムを、クラウドに退避しておくことも重要である。普段の生活では気が付かなかったが、家族の写真の多くは、Flickrだけでなく、写真アルバムに大事に収められている。今回の大災害を教訓に、家族向けクラウドで、バックアップ・サービスを準備しておく必要がある。地震国日本としては、民間企業からのサービスの提供が第一義であるが、防災の一環として行政がこれを支援することも検討に値する。

オバマ政権とオープンソース

Friday, March 19th, 2010

アメリカ連邦政府のオープンソース・ソフトウェア調達については、世界の水準から見て、出遅れているのが実情である。MicrosoftやOracleなど、世界的なソフトウェア産業を抱えているアメリカであるが故に、連邦政府のオープンソース採用は、消極的であった。しかし、オバマ大統領が就任して、Open Government Initiativeを発表してから、連邦政府のオープンソースへの対応が大きく前進してきた。

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アメリカ連邦政府のオープンソース政策

アメリカ連邦政府が、オープンソース調達の指針について触れたのは、ブッシュ政権に遡る。ブッシュ政権下で、ITとE-Govの責任者であったKaren Evans (カレン・エバンス) らは、連邦政府におけるオープンソース調達についての通達を発行した。この通達は「Software Acquisition」というタイトルで、2004年7月に、各省庁の調達責任者とCIOに向けて発信された。この通達では、ソフトウェア購買において、プロプライエタリ・ソフトウェアだけを対象とするのではなく、オープンソース・ソフトウェアについても同様に評価すべしという趣旨であった。オバマ大統領が就任した直後、「Transparency and Open Government」を発表し、アメリカ政府を前例の無いほどオープンにすると宣言した。この政策を推進するために、オープンデータやオープンソースが基本要素となる。オバマ政権では、オープンソース調達の指針は示していないが、連邦政府システムを構築するうえで、オープンソースは当然考慮すべき技術というスタンスである。

ホワイトハウスのオープンソース採用

昨年の11月に、ホワイトハウスは、ウェブサイト (Whitehouse.gov、上のスクリーンショット、出典:The White House) をリニューアル・オープンした。ウェブサイトの外見からは分からないが、そのシステムにオープンソースが採用され、大幅に機能強化が行なわれた。採用されたオープンソースは、コンテンツ管理ソフトウェアであるDrupal (ドゥルーパル) を中心に、Linux、Apache、MySQL、PHPなどである。また、検索エンジンにはSolr (ソーラー) が採用された。ホワイトハウスは、Drupalなどオープンソース採用についてはコメントを発表していないが、Drupalのサイトでこれを公表している。このサイトの中で、ホワイトハウス責任者が、Drupal User Groupに対して、システム概要について説明を行なったビデオ (下の写真、出典:Drupal) を公開している。

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このビデオの中で、ホワイトハウスの責任者である、Macon Phillips (New Media Dir、写真右側)、David Cole (Technology Deputy Dir、中央)、及び、Nik Lo Bue (Creative Dir、左側) が、Drupalを使ったウェブ・システム開発について説明している。このビデオはここ (http://drupal.org/whitehouse-gov-launches-on-drupal-engages-community) に掲載されている。

三人の意見を纏めると、ホワイトハウスのウェブサイト改良については、オバマ大統領就任の日から開始した。政府内には、オープンソースに対して偏見があった。このため、政府内でオープンソースの仕組みや安全性について、啓蒙活動や教育を行い、組織の文化を変えてきた。Drupalを選択した理由は、コミュニティーにより豊富な機能が開発されているため。システム開発では、コラボレーション機能、Facebookなどのソーシャル・メディアとの連携機能、検索機能に重点を置いた。今後は、ユーザ認証機能、プライバシー管理(ユーザ情報管理方式)、省庁間でのシングル・サインオン、検索エンジンでのアラート機能などの実装を計画していると述べている。

Open Source Activity Map

アメリカ連邦政府のオープンソース政策は、オバマ政権で積極的な展開が始まったが、世界全体のオープンソース普及率について、「Open Source Activity Map」で見ることができる。このマップは、Georgia Institute of Technologyが実施した、世界のオープンソース活動評価調査「Open Source Index Project」結果を、Red Hatがインタラクティブなマップ (下のグラフィックス、出展: Red Hat, Inc.) として掲示しているものである。Open Source Indexでは、世界75カ国のオープンソースに関する「活動」と「環境」の指標を示している。「活動」とは、現在行なわれているオープンソース・プロジェクトや標準化などの活動で、「環境」とは、将来オープンソース活動が展開される可能性についての評価である。

「活動」状況総合ランキングのトップ3は、はフランス、スペイン、ドイツと欧州勢が占めている。アメリカは9位で日本は14位となっている。政府のオープンソースへの取り組みを評価した指標では、フランス、スペイン、ブラジルの順で、アメリカは28位で大きく出遅れている。日本は11位で、先頭集団ではないが、日本政府のオープンソースへの取り組みは、それなりに評価されている。

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(Open Source Activity Map、赤色の色が濃い順にオープンソース活動が盛んであることを示している。このマップはここ(http://www.redhat.com/about/where-is-open-source/activity/) に掲示されている。)

考察

ホワイトハウスのウェブサイトが、オープンソースで構成されたことは、オバマ政権が目指す方向が示された、象徴的な出来事である。明後日には、医療保険改革法案が下院で採決される見込みであり、オバマ政権は瀬戸際に立たされている。冒頭のスクリーンショットは、改良されたウェブサイトで、オバマ大統領が、医療保険改革の重要性を、訴えているビデオである。ホワイトハウスは、ITを最大限に活用して、オバマ大統領の政策をアピールしている。大統領選挙のときの盛り上がりには及ばないが、「Hope」を感じることができるメッセージである。

ライフ・キャッシング (DEMOfall 09より)

Friday, October 30th, 2009

DEMOfall 09の中で特異な存在であったのが、カリフォルニア州ダブリンを拠点とする、Rseven (セブン) というベンチャー企業である。Rsevenは、携帯電話向けのアプリケーションで、人生の出来事を記録するサービスを提供している。

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Rsevenの機能概要

DEMOのステージの上で、CEOのHisyam Halim (ヒスヤム・ハリム) が、ノキア携帯電話を使って、Rsevenの機能を実演した。Rsevenは、利用者が発信した通話と、受信した通話の、通信記録を全てログする機能を提供する。上のスクリーンショット (出展:Rseven Mobile) の通り、時間ごとに、通話相手の名前と内容を記録する。音声通話の場合は、会話の内容を、先方の了解の元に録音する。テキスト・メッセージの場合は、その内容を記録する。携帯電話で写真やビデオを撮影した場合には、それらコンテンツを保存する。携帯電話に搭載しているGPSから、これらのイベント発生の場所を同時に記録する。これらのデータは、Rsevenのサイトにバックアップされ、必要に応じて、携帯電話にリストアーできる。これらログを解析して、通話してた相手の名前や通話時間などをグラフにして見ることができる。

ライフ・キャッシング

Rsevenは、このサービスをLifecaching (ライフ・キャッシング) と呼んでおり、利用者の日々の生活をキャッシュとして保存する。通話と写真の記録をLifecachingと呼ぶのは、少し大袈裟であるが、その意図は伝わってくる。デモにおいて、Halimは、Lifecachingの応用分野について、従業員の仕事ぶりをモニターして、業務の効率化を行なうことができると説明した。四六時中監視されるのは抵抗があるが、ビジネス・ツールとして利用することを目指している。更に将来は、製品名が示唆しているように、キャッシングの機能を拡張していくと想像できる。

Rseven以外にも、自らの生活を記録するというプロジェクトは数多く進行している。その中で一番有名なのが、Microsoft ResearchのGordon Bell (ゴードン・ベル) が行なっている、MyLifeBits (マイ・ライフ・ビッツ) というプロジェクトである。Bellは、90年代の終わりにこのプロジェクトを始め、生活に関わる全ての出来事を記録している。読んだ本、論文、メモ等をスキャンして保存するだけでなく、閲覧したウェブページ、テレビ番組、電話での通話、電子メール、テキスト・メッセージ、写真、ビデオ、テレビ会議など様々な内容を記録している。Bellのブログによると、このプロジェクトの目的は、限りなく自分に近い存在を作り出すためであるとしている。しかし、人生がキャッシュされると、どんな利点があるのかについては未回答のままで、いまはそれを求めて実験を続けている。Rsevenも同様に、Lifecachingでどう生活が変わるのかを求め、試行錯誤が続いている。

Rsevenは、背後に大きなテーマを背負い、DEMOの中で異色の存在であった。

セマンティック・ウィキペディア

Friday, June 13th, 2008

2008 Semantic Technology Conference」のカンファレンス・セッションで、Metaweb (メタウェブ) 社のJamie Taylor (ジェイミー・テーラー) から「Freebase (フリーベース) の概要とその応用事例について紹介があり、実際にFreebaseを使ってみた。

Freebaseとは

Freebaseとは一言で表現すれば、セマンティック技術を適用したウィキペディアである。Freebaseのコンセプトはウィキペディアと同様に、コミュニティーが編纂する「百科事典」であり、利用者が自由に記事を編集したり追加することができる。

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これはFreebaseで、「インディ・ジョーンズ」シリーズの最新映画である「The Kingdom of the Crystal Skull」の記事を検索したところである。この説明文はウィキペディア記事をそのまま利用している。(出展は断りが無い限りFreebase)

Freebaseがウィキペディアと異なる点は、その背後にあるセマンティック技術である。記事の下に、この映画の概要をテーブル形式に纏めたものが表示される。(次のスクリーンショット) テーブルは「Film(映画)というカテゴリーの配下に様々な属性を表示している。「The Kingdom of the Crystal Skull」という「映画」の属性は、その「Directed by(監督)は「Steven Spielberg(スティーブン・スピルバーグ)で、「Performances(登場人物)は「Harrison Ford(ハリソン・フォード)と続く。

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セマンティック技術

ウィキペディアでは記事のタイトルと説明文から構成されているが、Freebaseではこれに上記の通り、記事の属性が付加される。この記事は「映画」について記述したものであり、映画の内容は「監督」、「封切日」、「俳優」、「製作者」などから構成されていることを示している。これら記事の属性の構成を「オントロジー」 (Ontology) と呼んでおり、これが記事に「意味」を付加する要素となる。

この属性が威力を発揮するのは、キーワード検索を行うときである。ウィキペディアで「The Kingdom of the Crystal Skull」のキーワードで記事を検索すると、「映画」についての記事が表示される。一方で、Freebaseで同じキーワードで検索すると、検索ボックスに選択肢が示される。(次のスクリーンショット) Freebaseはこの選択肢で、利用者に、求めているものは「映画」についての記事なのか、それとも「コンピュータゲーム」なのか、または「テレビ番組」なのかを問いかける。つまりFreebaseは質問の「意味」を理解することができる。

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Freebaseの編集方法

前述の通り、Freebaseはウィキペディアと同じように、ユーザ登録すればだれでも自由に記事を追加したり、編集することができる。

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このスクリーンショットは、Freebaseの「The Kingdom of the Crystal Skull」記事で、俳優の「役割」を記入しているところである。Freebaseでは、「映画」という概念が決定され、記事の構造が決まっているので、テーブルに従って情報を入力していく。スクリーンショットでは、「俳優」の「Cate Blanchett(ケート・ブランシェット)が映画の中でKGBエージェントの「Irina Spalko(イリーナ・スパルコ)を演じている情報を追加しているところである。記入が終わればセーブボタンを押して作業が完了する。

Freebaseで何ができるのか

Freebaseで記事の検索や閲覧を行うことができるだけでなく、コンピュータが記事を読んで内容を理解できるところに大きな意味がある。セマンティック技術は、ソフトウェアが、Freebaseにアクセスして記事を読み込んで、処理をすることを目的にしている。

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これは「James Home」というサイトの「FMDb[1] 」とい映画検索のアプリーションの事例である。FMDbというアプリケーションがFreebaseにアクセスして、情報を読み込んで表示するというシンプルな構造をしている。アプリケーションがデータベースにSQL (Structured Query Language) を発行する様に、FreebaseMQL (Metaweb Query Language) というクエリーを発行して記事のデータを読み込む。因みに、「The Kingdom of the Crystal Skull」で検索すると、先に入力した「俳優」の情報がリアルタイムで反映されている。

トレンド

セマンティック・ウェブでは誰がオントロジーを構築して、それに従って誰がデータを入力するのかが常に問題となる。Freebaseでは集合知を活用して、コミュニテーがこの役割を担っているところに特徴がある。




[1] FMDb, http://jameshome.com/freebase/fmdb/index.html