Archive for the ‘太陽電池’ Category

日本のインフラ事業の強敵か、Googleが未来都市開発に進出

Friday, June 19th, 2015

Googleは未来都市開発に乗り出した。独立会社「Sidewalk Labs」を設立し、住民が生活しやすい都市を開発する。これはIBMやCiscoが手掛けているスマートシティーとは大きく異なる。都市開発ではInternet of Things (IoT) を中心とするITを総動員するだけでなく、建造物の素材やアーキテクチャーも研究対象となる。Googleが開発している自動運転車や再生可能エネルギー発電も視野に入る。このプロジェクトはGoogle Xに続く高度研究所「Google Y」と噂されていた。限られた情報からGoogleの壮大な構想を読み解く。

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Sidewalk Labsとは

Googleは2015年6月、革新的な街づくりを目指す「Sidewalk Labs」を発表した。CEOのLarry Pageはブログの中で、設立経緯や目的を明らかにした。地球規模で都市化が進み (上の写真、国連調査レポート)、人口集中が顕著になっている。Sidewalkは都市部で生活する人々の暮らしを改善するための技術を開発する。これは「Urban Technologies」と呼ばれ、住宅、交通、エネルギーの三分野を対象とする。具体的には、住宅コストを低減し、交通渋滞や電車混雑の少ない効率的な交通網を作り、エネルギー消費量を低減する。

Sidewalkの事業はGoogleのコアビジネスとは異なるため別会社とする。Sidewalkは長期レンジのプロジェクトで、今より10倍住みやすい都市を作ることを目指す。CEOにはBloomberg社の元CEOであるDan Doctoroffが就任する。

Google Yの構想を引き継ぐ

Sidewalkは都市開発における具体的な手法についても言及した。Sidewalkはリアルとバーチャルの世界をテクノロジーで結び、都市部における住民、企業、政府の生活水準の向上を目指す。革新的に進化しているモバイルやIoT技術を活用し、建築では柔軟構造のアーキテクチャーを利用する。Sidewalkは都市開発のための製品を提供するだけでなく、プラットフォームを構築し、パートナー企業とともにソリューション開発に取り組む。これにより、住宅費用が安くなり、通勤時間が短くなり、公園や緑地が増え、安全に自転車に乗ることができる。

Pageは2013年に、新たな研究機関「Google Y」の創設を検討していた。社会が直面する大きな課題を解決することを目標とした。同時に、Googleの次の事業モデルを模索するという意味もあった。最初のテーマとして、空港整備や都市開発が挙げられた。SidewalkはGoogle Yの構想を受け継ぐものとなり、都市開発を中心に事業を進める。

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世界の人口は大都市に集中

Googleが都市開発に乗り出した背景には、世界の人口が都市部に集中していることがある。国連は世界の人口統計「World Urbanization Prospects」を発表した。都市部の人口推移を解析するもので、都市計画などに利用される。このレポートによると、世界は都市部に人口が集中する傾向が強まっている。1950年には全人口の30%が都市部で生活していたが、2014年にはこれが54%に上昇した。更に、2050年には66%になると予測している。

上のグラフがそれを示している。大都市数の推移を示したもので、赤色の部分 (最上部) が人口1000万人以上のメガ都市を示す。2014年のメガ都市のトップは東京 (人口3800万人) で、これにインド・Delhi (同2500万人)、中国・Shanghai (同2300万人) が続く。1990年にはメガ都市の数は10都市であったが、2014年には28都市と三倍近くに増加。2030年には41都市になり、世界の人口の12%がここで生活すると予想している。

日本は人口減少が予想され、労働力の確保などで苦慮している。しかし世界はその反対で、人口の急増と都市部への集中でインフラ整備に苦しんでいる。因みに大阪は、1990年の人口統計で世界第2位であったが、2030年には13位に後退すると予想されている。

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柔軟構造ビル

Sidewalkは具体的な技術については公開していないが、都市開発で目指す柔軟構造ビルのヒントは、Google新本社キャンパスにある。Googleは2015年2月、新キャンパスについて発表した。建物はコンクリート製ではなく、軽量ブロック構造で、必要に応じて解体し移動できる構造になっている。上の写真は建物内部の様子で、右奥の構造物は積木細工のように、解体して移動できる。ガラス繊維でできた透明のドームで外光や外気を取り入れる (写真上部)。建物の周囲には歩道や緑地が整備される。デザインは英国に拠点を置くHeatherwick Studioが手掛ける。

アーキテクチャの特徴は事業内容に応じて建物のレイアウトを再構築できること。自動運転車の製造工場やバイオロジーの植物栽培施設などが必要になると、建物のレイアウトを容易に変更できる。現在のGoogleキャンパスは、ビル周囲に駐車場が広がり樹木は少ない。新キャンパスは自然との調和を重視し、エコロジカルシステムの中に建造物が存在する位置づけとなる。シリコンバレーの本社キャンパスに続き、ロンドン本社もHeatherwick Studioが手掛けると噂されている。Sidewalkが目指す柔軟構造の建造物は、Google新本社がモデルとなるのかもしれない。

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都市交通の整備

都市交通整備で重要なカギを握るのが自動運転技術だ。自動運転車の登場で交通事故が大幅に減少するだけでなく、移動コストも低下する。消費者は自動車を所有するのではなく、必要な際にオンデマンドで無人タクシーを利用する。この方式だと自動車を所有する時と比べ、コストが1/10になるという試算もある。更に、無人タクシーで移動すると駐車場がいらなくなり、土地を有効活用できる。自動運転車の登場で生活にかかるコストが大きく下がる。

Googleは自動運転車「Prototype」(上の写真) の路上試験をこの夏から始める。Prototypeは軽自動車を半円形にした車体に自動運転技術を搭載している。二人乗りで、車内にはハンドル、アクセル、ブレーキペダルは無い。完全自動運転ができるデザインで市街地での移動に適している。

Googleは、電車やバスなど都市交通の整備には、ビッグデータを活用する。都市交通解析システム開発企業「Urban Engines」に投資し、「Internet of Moving Things」の手法で交通ネットワークの最適化を行う。専用アプリ「Urban Engines Maps」を提供し、消費者は電車や自動車で目的地までの経路を検索する。利用者の位置情報を解析することで、電車やバスの乗客の動きを把握できる。解析結果は地方政府の交通部門などに提供され、乗客動向を把握し、運賃政策などで電車やバスの運行を最適化する。既にシンガポール、ブラジル、コロンビア特別区で使われている。

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再生可能エネルギー技術

Googleは省エネ技術だけでなく、再生可能エネルギー関連で豊富な経験がある。Googleは再生可能エネルギー分野に積極的に関与してきた。2007年、同社の慈善団体であるGoogle.orgを通して、「RE < C」というプロジェクトを開始し、発電コストを下げるための技術開発を展開。これがGoogleの再生可能エネルギー開発の切っ掛けとなった。2010年からは、ウィンドファームに投資し、大規模再生可能エネルギー発電事業に参画した。2011年には、世界最大規模のウィンドファーム「Shepherds Flat Wind Farm」に1億ドル出資し市場を驚かせた。一方、Googleの投資手法はハイリスク・ハイリターンで、技術開発で危険性も伴う。2011年、カリフォルニア州に建設している太陽熱発電プロジェクト「Ivanpah Solar Electric Generating System」に投資した (上の写真)。施設は稼働を始めたが、発電量は予定の40%にも満たなく、抜本的な見直しを迫られている。

Googleはこれまでに米国を中心に、20プロジェクトに累計20億ドル投資した。Googleは再生可能エネルギー発電事業に関与するとともに、自社データセンターで使う電力を賄うことも目的としている。

2015年6月、Googleはアフリカで再生可能エネルギー開発を行うことを公表した。ケニアで大規模なウインドファーム「The Lake Turkana Wind Power Project」を展開する。2017年の完成を目指し、同国で消費する電力の20%を生成する。アフリカは急成長が続き、2040年までに消費電力の50%が再生可能エネルギーとなると予測されている。Googleは気球プロジェクト「Project Loon」で上空からインターネット網を構成する。電力とインターネットインフラを供給することで、Googleのアフリカにおける存在感が大幅に増すことになる。

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IoT向けプラットフォーム

Googleの未来都市開発が上手くいくと、住民の生活コストが大幅に低下する。これを支えるのが急速に進化するテクノロジーで、センサーや人工知能がカギを握る。特にセンサー技術の進化は凄まじく、10年後には1兆個のセンサーが使われるとの試算もある。これを「Trillion-Sensor Economy」と呼び、IoTがデバイスを統合するインフラとなる。

Googleは2015年5月、IoT向けのソフトウェア技術「Project Brillo」を発表した (上の写真)。身の回りの家電や自動車など、様々なデバイスを統合するプロジェクトで、三つの領域で構成される。それらはOS、コミュニケーション、ユーザインターフェイスとなる。OSはAndroidをベースとし、IoT向け基本ソフトとして機能する。コミュニケーションでは「Weave」という通信レイヤーを導入し、IoTシステムの上位階層として位置づけ、デバイス、クラウド、スマホ間の通信を司る。ユーザーインターフェイスは、スマホのAndroid上に構築される専用アプリで、室内の電燈などデバイスを操作する。当面はスマートホームを対象とするが、未来都市で大規模に展開されるIoTシステムも視野に入っている。Googleだけでなくパートナー企業は、このプラットフォーム上でIoTソリューションを開発する。

Googleの技術が未来都市にまとまる

Sidewalkは具体的な技術や手法を公開していないが、Googleの新本社キャンパス建設、自動運転技術、ビッグデータ解析手法、再生可能エネルギー開発プロジェクトが未来都市開発に集約される。バラバラに動いていると思っていたプロジェクトが、Sidewalkという共通項で有機的に結合する。Googleは未来都市開発を大都市化が進むインドや中国などで展開する。日本が得意とするインフラ開発であるが、Googleがここに参入することとなり、世界の構図が大きく変わる。

太陽光発電データセンター

Thursday, July 28th, 2011

データセンターは、省エネ技術の導入で、消費電力を大幅に抑えるだけでなく、創エネ技術により、データセンター施設内で、積極的にエネルギーを生成する方向に向かって進んでいる。このレポートでは、データセンターにおける、太陽光発電による、創エネ技術の最新動向を検証する。

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Ciscoの最新データセンター

最初の事例は、Ciscoの新設したばかりのデータセンターである。Ciscoは、ブログの中で、2011年4月に、データセンター (上の写真、出展:Cisco Systems, Inc.) をオープンしたことを発表した。このセンターは、Allen (テキサス州) に建設された。このセンターの直ぐ近くのRichardson (南に15マイルの位置) では、すでに別のデータセンターが運営されており、両センターが連動して稼動する構成になっている。二つのデータセンターは、アクティブ・ミラー・センター (Active-Active Mirrors) として運営され、どちらかのセンターが停止した際は、別のサイトで業務を継続する構成となっている。一方のサイトのデータが更新されると、同時に、もう一方のサイトのデータも更新され、アクティブなバックアップ体制が取られている。これらのデータセンターの業務は、Cisco社内で使用するクラウド・アプリケーションをホスティングすることである。Ciscoは、アクティブ・ミラー・センターの方式で、全世界のデータセンターを、三つの仮想データセンター (Metro Virtual Data Center) に統合する計画である。

データセンターの構造

Ciscoがデータセンターを運営しているテキサス州は、竜巻が頻繁に発生する場所である。このため、Allenデータセンターは、175mph (秒速78メートル) の竜巻に耐える構造となっている。また、非常用電源 (UPS、Uninterruptible Power Supply) は通常のバッテリーではなく、フライホイール・ロータリー方式のUPSを採用している。停電となってもフライホイールが回り続け、短期間 (15秒程度) 電力を供給し、その間にディーゼル発電機が起動する仕組みである。

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上の写真 (出展:Cisco Systems, Inc.) は、Allenデータセンター内部の様子である。データセンターの空調システムは、Facebookと同様に、Air-Side Economizerという、外気の冷気を使って空調する方式である。外気の温度が低い時は、Chiller (冷却装置) を運転しないで、外気をフィルタリングして冷却に使用する。Ciscoによると、運転時間の65%は外気を使用でき、冷却費用を年間で60万ドル削減できるとしている。センターの冷却は、Overhead Coolingという方式で、天井から冷気をコールド・アイルに落下させ、サーバの中を抜けてホット・アイルに入り、暖気を天井から排出する構造である。従って、従来の二重床 (Raised Floor) は不要となる。

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ソーラーパネル

Allenデータセンターは、ソーラーパネル (上の写真、出展:Cisco Systems, Inc.) を使って、クリーン電力を自家発電している。施設の屋上にソーラーパネルを設置して、100kWの発電を行なっている。発電された電力は、データセンターのオフィス部分で使用されている。ソーラーパネルで発電された電力は、データセンター全体に電力を供給するには充分でなく、施設の電力を補完する目的で使われている。また、このセンターは、電力会社から、クリーンな電力の購入も行なっている。Allenデータセンターが、センターにおける、創エネ技術のトレンドを現している。最近では、新設されるデータセンターには、ソーラーパネルが必須オプションとして設置されている。但し、ソーラーパネルだけでは、施設全体の電力を供給できないので、オフィス施設など、ノン・クリティカルな部分に、電力を供給している。また、先のレポートで紹介した、Facebookの新データセンターも、敷地内にソーラーパネルを設置し、クリーン電力を発電している。発電量は100kWで、主にオフィスなどに電力を供給している。データセンター全体の消費電力は、数十メガワットと推定され、施設の電力の一部を補完する構成となっている。

100%太陽光発電データセンター

CiscoやFacebookのデータセンターが、最新の創エネ技術のトレンドを代表しているが、一方で、データセンターの消費電力を、全てソーラーパネルで発電するという試みも続いている。Affordable Internet Services Online (AISO) という会社は、データセンターとオフィスで使用する電力を、全て太陽光発電で生成する、クリーンなデータセンターである。AISOデータセンターは、Romoland (ロスアンジェルスの東80マイルの位置、年間を通じて晴天の日が続く) に建設され、施設全体で120枚のソーラー・パネルがセンター両脇の地上に設置されている。AISOは、太陽光発電による電力を使ったホスティング・サービスを、Solar Hosting Plansとして提供している。利用者は、100%クリーン・エネルギーで、ウェブサイトを運営することができる。

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トレンド

データセンターは、当初はAISOのように、全電力をソーラーパネルで供給することを模索したが、コストや安定性の面から、普及には至らなかった。しかし、新設されるデータセンターでは、消費電力の一部を、ソーラーパネルで補うという、現実的な方式が定着してきた。日本では、ピーク電力カットが求められており、上述の方式が、データセンターとして対応できる、節電対策の参考データとなる。

原発事故と米国エネルギー政策

Friday, March 25th, 2011

東北関東大震災で、被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。地震と津波による甚大な被害のほかに、福島原子力発電所での、復旧作業が難航しており、アメリカのエネルギー政策に大きな影を落としている。

GE Mark 1

福島原子力発電所の事故を受けて、アメリカ国内で稼動している原子力発電所の安全性について、一気に疑問が噴出した。NBCやNew York Timesは、事故直後、GE (General Electric) 社製のMark 1という原子炉について、その危険性を指摘した。Mark 1は、1960年代に、GEにより設計された原子炉で、冷却装置が停止し、燃料棒がオーバーヒートすると、原子炉格納容器が破壊される弱点があると報道している。この問題は、1972年から指摘されているが、福島原子力発電所で使用されていることから、再度、注目されることとなった。

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New York Timesによると、Mark 1は、アメリカ国内において、16箇所 (上のグラフィックス、出展:New York Times) で23基が運転されているとしている。国外も含めると、32基が運転されている。GEは、この原子炉を販売する際に、低価格で容易に建設できることをPRしていた。一方、GEはこれらの報道に対して、原子炉に対して必要な補強を実施済みである、とコメントを出している。

危険な原子力発電所

アメリカ国内では、旧式の原子力発電所が、数多く運転されており、その危険性が指摘されている。アメリカ国内で最も危険な原子力発電所は、Indian Point Energy Center (下の写真、出展:Orange County, New York) である、といわれている。この原子力発電所は、Entergy (エンタジー) という電力会社により運用されており、1962年に運転が開始された。現在は、Indian Point 2と3という二基の原子炉が運転されている。

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Entergyによると、福島原子力発電所は、地震ではなく津波による被害だと主張している。原子力発電所は、想定外の地震には耐えており、Indian Pointもこの地区で予想される地震には対応できるとしている。一方、メディアからは、Indian Pointの問題は、事故発生の際の非難区域であると指摘されている。Nuclear Regulatory Commission (NRC、原子力規制委員会) の規定に従って、避難範囲を50マイル (80キロ) と設定すると、ニューヨーク市を含み、二千万人が避難の対象となる。Google Maps (下のグラフィックス、出展:VentureClef) に発電所の位置を表示すると、ニューヨーク市の直ぐ北に位置していることが分かる。Indian Pointは、9/11事件の後、テロ攻撃の対象となる危険性があり、早急に運転を停止すべきとの意見が出されている。

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原子力発電所建設抑制論と推進論

アメリカ国内では、福島原子力発電所事故直後から、オバマ大統領が進めている、原子力エネルギーへの回帰について、賛否両論が激しくぶつかっている。アメリカ議会においては、民主党から、原子力発電所推進について、慎重な意見が出ている。3月17日に開催された、連邦議会委員会公聴会で、カリフォルニア州選出の上院議員であるBarbara Boxer (バーバラ・ボクサー) は、福島原子力発電所の問題の概要が分かるまで、国内の旧式の原子力発電所について、運転を停止すべきだとの見解を示した。一方で、この公聴会において、NRC会長のGregory Jaczkoと、Department of Energy (エネルギー省) 長官であるSteven Chuは、アメリカの原子力発電所は安全であることを強調している。公聴会とは別に、共和党は原子力発電所建設を支持しており、下院議長であるJohn Boehner (ジョン・ベイナー) は、CNBCとのインタビューの中で、日本の原子力発電所事故から学ぶ必要があるとしながらも、原子力発電所建設を推進していく考え方を示している。

オバマ政権のポジション

オバマ大統領は、福島原子力発電所の事故の後も、原子力エネルギー開発の方針を維持している。オバマ大統領は、先に、原子力発電所建設のために、545億ドルのLoan Guarantee (負債保障) を行なっている。また、オバマ大統領は、国民に向けた演説 (下の写真、出展:The White House) の中で、NRCに対して、原発の安全性を再検証するよう指示を出していることを説明した。これを受けてNRCは、Callaway Nuclear Plant (ミズーリ州) など、安全性に懸念のある発電所にスタッフを派遣して、現地での点検を実施している。更に、NRCは、原子力発電所の安全基準の見直しに着手していることを明らかにしている。オバマ大統領としては、原子力エネルギーが、地球温暖化防止に寄与できるだけでなく、アラブ諸国に原油を依存する必要性から開放されるため、エネルギー政策を見直すことは痛手となる。

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調査会社であるPew Researchは、3月17日から20日にかけて、1,004人を対象に世論調査を実施した。これによると、アメリカで原子力発電に反対する人の割合が、前回調査の44%から52%に急増している。テレビのニュースは、福島原子力発電所の建屋が、大きく破損している様子を、連日報道しており、アメリカにおいて、原子力エネルギーに対する反対意見が大勢を占めてきた。今後、事故処理が難航するようであれば、オバマ政権としては、原子力発電への回帰路線を維持するのが困難となってくる。

エネルギー政策

政治を離れ、アメリカの識者の間で、これからのエネルギーはどうあるべきか、議論が活発になっている。もしアメリカが、全ての原子力発電所を停止して、石炭による火力発電に切り替えると、二酸化炭素排出量が14%増加するこという試算がある。火力発電だけに頼るのは、世界の時流に逆行する。それでは、2050年までに、アメリカのエネルギー需要を、全て再生可能なエネルギーで賄うためには、62万台のウインド・タービン (5MW)、14,000箇所の大型太陽光発電施設 (300MW) が必要となり、家庭においては2.6億戸の住宅で、屋根にソーラーパネル(3kW) を設置する必要があると試算している。(「Providing all global energy with wind, water, and solar power」より引用、アメリカ国内のケースに換算)

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世界の流れは、クリーン・エネルギーであるが、これも、今すぐに実現できる訳ではない。その代替案として、Shale Gas (シェール・ガス) を活用する方式が提唱されている。Shale Gasとは、岩石に含まれる天然ガスで、アメリカ国内で大規模な埋蔵量がある。天然ガスの価格上昇と、採掘技術の発達で、Shale Gas事業が進み始めている。また、Shale Gasは石炭に比べて、クリーンに燃焼できることから、次善の策として注目を集めている。長期的には、再生可能エネルギーに移ることは間違いないが、その中継ぎとしてShale Gasが登場し、アメリカ国内でブームを引き起こしている。(上の写真はChesapeake EnergyによるFayetteville Shale (アーカンソー州) での採掘の様子。)

分散型発電技術

以前にもレポートしたが、Bloom Energy (ブルーム・エナジー) は企業向けにFuel Cell (燃料電池) 技術を開発しているベンチャー企業である。Kleiner Perkins Caufield & Byersなどから、4億ドルの投資を集め、役員には元国務省長官のColin Powellなどが名前を連ねている。

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Bloom Energyの製品は、Bloom Boxと呼ばれ、天然ガスを燃料として、クリーンに発電する装置である。上の写真 (出展:Bloom Energy) は、eBay本社に設置されているBloom Box (黒っぽい箱の部分) である。他にも、GoogleやAdobeなどで導入されている。これらの企業は、二酸化炭素排出量を抑制するために、Bloom Boxを導入している。Bloom Energyは、電力会社の集中型発電から、分散型発電(Distributed Generation) に変えることを提唱している。分散型発電とは、電力消費地で発電する方式で、電力送電のためのインフラが不要となる利点がある。福島原子力発電所事故による計画停電対策として、従来のディーゼル発電に加え、Fuel Cellの導入も、遠い先の話ではなくなってきた。アメリカにおけるエネルギー政策論は、切り札はなく、現行技術を組み合わせて進んでいる。国難を切り抜けるためには、斬新な技術が必要で、日米両国ともその実力が試されている。

太陽光発電データセンター

Friday, December 21st, 2007


今年はグリーン・コンピューティングが重要なテーマとなっているが、ついに100%太陽光発電で電力をまかなうデータセンターが登場した。市販されている電力は二酸化炭素排出の発生源となっており、「汚れた」電力であるとして、市販の電力は一切使用しないデータセンターである。この代わり太陽電池を設置し、100%クリーンな電力でデータセンターを運営している。利用者はクリーンな電力から生成される情報サービスを利用でき、間接的に環境問題に貢献できる、というのがメッセージである。データセンターは究極のエコシステムで、建物の構造から、コンピューター機器の運営まで、省エネのショーケース的な存在である。

 

AISOという企業

このデータセンターを運営しているのはAffordable Internet Services Online (AISO) という企業で、データセンターを南カリフォルニアのロモランド (Romoland) というところに構えている。ロモランドとは馴染みの薄い地名であるが、ロスアンジェルスの東120マイルのところに位置し、南カリフォルニアの太陽が降り注ぎ、太陽光発電には最適の場所である。AISOはデータセンターのホスティング事業を展開しており、米国初の100%純正太陽光発電ホスティング・センターである。

 

このセンターでは、太陽電池として「BP ソーラー」 (BP Solar) を使用しており、120枚のパネルから構成されている。パネルは二つのブロックに分けられ、それぞれ60枚の太陽電池パネルがデータセンター両脇の地上に設置されている。これらの太陽電池パネルは南を向いており、その様子はAISOのウェブカメラで実物をライブで見ることができる。

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ウェブカメラで見た太陽電池。Affordable Internet Services Onlineのデータセンターに隣接して設置されているBP Solar製の太陽電池。今日の天気は晴れであるが、AISOによると曇りの日でも発電量は晴れの日と変わらないとのこと。(出展:Affordable Internet Services Online)

 

太陽電池で生成された電力は直流であり、これをインバーターで交流に変換し、バッテリーに蓄える。このバッテリーで、コンピューター機器や空調などの運転を行う。またこのバッテリーでオフィスの電力も供給している。バッテリーはデータセンターを30日間運転するだけの容量があるが、バックアップとしてプロパンガスの発電機を設置し、非常事態に備えている。プロパンガスはディーゼルよりクリーンな燃料であり、二酸化炭素排出量が少なく、また、地球温暖化に大きく影響する二酸化硫黄を排出しない点に特長がある。

 

コンピューター機器の省エネ化

AISOはクリーンな電力を生成するだけでなく、電力を消費する側にも、数多くの工夫をしている。サーバーには「AMDオプテロン」 (AMD Opteron) ベースのシステムが採用されている。このプロセッサーは、従来のサーバーより消費電力が60%少なく、かつ、発熱量が半分である。ストレージには「ネットアップ」 (NetApps) が採用されている。省エネの中心は、「ヴィエムウェア・ヴィーモーション」 (VMware VMotion) である。ヴィーモーションは仮想化のためのソフトウェアで、仮想マシンを一つのサーバーから別のサーバーに、システムを停止しないで移動することができる。通常、サーバーの稼働率は10%程度で、AISOはこれを70から75%まで引き上げ、サーバー設置台数を95%削減している。

 

データセンターの省エネ化

データセンターは省エネだけでなく、環境にやさしい構造となっている。データセンターの壁には再生紙を用いた断熱材が使われており、高温の外気からセンターを遮断している。エアコンには「フリーアス」 (Freus) を採用している。フリーアスは水冷のエアコンで、空冷のシステムに比較して二倍近く効率が良い。AISOはこのエアコンを改造して、外気温が華氏50 (摂氏32) 以下になると、外気を取り込んで空調の効果をあげる方式を取っている。この他にも、天井から太陽光を取り入れて照明する「ソーラー・チューブ」 (Solar Tube) を採用している。更に、将来は、「グリーン・ルーフ」 (Green Roof) という、ビルの屋上に土を敷き詰めて植物を育てる方式で、空調費用を半分にすることを計画している。

 

トレンド

AISOはもともと太陽電池でデータセンターを運用しており、クリーンなセンターとして事業を展開してきた。グリーン・コンピューティングへの意識の高まりから、急速に需要が伸び、AISOはデータセンターを大改造して、究極のエコシステムを作り上げた。AISOによると、「クリーンなデータセンターであるという理由で、商談が成立するわけではなく、価格競争力があるため、利用者はクリーンなセンターの方を選ぶ」と説明している。同時に、「クリーンなセンターにすることで、運用コストを削減でき、競争力のある価格で提案できる」としている。

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AISOのセンターを利用している企業に「Greenest Host」がある。この企業はエンドユーザー向けにウェブ・ホスティングを提供している。このサイトのキャッチフレーズは「Your 100% Solar Powered Web Host」であり、純粋太陽光発電でウェブ・ホスティングしていることを強調している。(出展:Greenest Host, Inc.)

 

サンフランシスコではイエロー・キャブではなく「グリーン・キャブ」が、トヨタ・プリウスの屋根に緑色のサインをつけて走っている。サンフランシスコ空港では「プラネット・トラン」 (PlanetTran) が、黒塗りのリムジンに代わって、送迎サービスを始めた。米国ではトヨタ・プリウスのように地球環境に優しい自動車を使った事業が急増しているように、IT市場においても、環境問題を配慮したグリーン・コンピューティングが市場を伸ばしていきそうな勢いである。これからは、一般企業も、ウェブサイトに純粋太陽光発電であることを表示し、クリーンなメッセージを発信する時代になりそうである。