Archive for the ‘自動車’ Category

音声操作できない製品はもう売れない!家電、ロボット、クルマが相次いでAmazon AIボイスクラウドを採用

Friday, January 20th, 2017

AmazonのAIスピーカーEchoが爆発的に売れている。その理由はAIの適用で会話機能が格段に進化したためだ。自然な会話でEchoを快適に使うことができる。Amazonはこの会話機能をAIボイスクラウドとして一般に公開した。メーカーは相次いでAIボイスクラウドの採用を決めた。Amazonはサーバクラウドの次はAIボイスクラウドで市場を席捲しようとしている。

出典: Amazon

Amazon Echoとは

Amazonは2014年にAIスピーカー「Echo」を発売し、累計で510万台が出荷され、大ヒット商品となった。今では「Echo Tap」(携帯版Echo) と「Echo Dot」(小型版Echo、上の写真) が製品ラインに加わった。製品の背後ではAIボイス機能「Alexa」が稼働し会話を司る。デバイスに話しかけて音楽を再生しニュースを聞く。また、スマートホームのハブとして機能し、家電を言葉で操作できる。

コンセプトは宇宙大作戦

Amazon Alexaの開発は2012年に始まり、クラウド機能をすべて音声で操作するシステムを目指した。このアイディアはテレビ番組「Star Trek」(宇宙大作戦) にあり、宇宙船内の複雑な機器を言葉で操作できるシーンからヒントを得た。Alexaはデバイスに触ることなく言葉だけで情報にアクセスし、家電を操作できる構造となっている。言葉は人間の本質的なコミュニケーション手段で、Amazon開発チームはこれをAlexaに応用した。

Amazon Alexaはプラットフォーム

Amazon AlexaはEchoだけでなく一般に公開され、多くの企業にボイスサービスを提供している (下の写真)。つまり、Alexaはプラットフォームとして位置づけられ、ここにエコシステムが形成されている。パートナー企業はこの機能を使い音声で操作するボイスアプリを開発する (下の写真、Alexa Skills Kitの分部)。また、家電や自動車メーカーはそれぞれの製品にボイス機能を組み込むことができる (下の写真、Alexa Voice Serviceの分部)。更に、スマートホーム企業は音声で操作できる機器を開発する (下の写真、Amazon Smart Homeの分部)。

出典: Amazon

ボイスアプリの数が急増

ボイスアプリはAmazonだけでなくパートナー企業により開発されている。ボイスアプリはAmazon Echoで稼働し、出荷当初は10本程度であったが、今では5000本を超えた。人気のボイスアプリは「Amazing Word Master Game」で、Echoとゲームで対戦する。これはしりとりをするゲームで、単語の長さが得点となる。Echoを相手にゲームをする形式で、英語の勉強にもなる。一人で時間を持て余している時にEchoが遊び相手になってくれる。

Alexaでレンタカーを予約

ビジネスと連携したボイスアプリが増えてきた。旅行サイト「Expedia」はAlexaを使って言葉で予約できるサービスを開始した。航空機を予約している人は言葉でフライト内容を確認できる。「Alexa, ask Expedia to get my trip details」と指示すると、Echoは予約状況を読み上げる。「Alexa, ask Expedia to book a car」と指示すればレンタカーを予約できる。ただし、フライトとホテルの予約にはまだ対応していない。

LenovoはAmazon Echo対抗製品を発表

LenovoはAIスピーカー「Smart Assistant」 (下の写真) を発表した。Echoとよく似た形状で、ボイス機能としてAmazon Voice Serviceを使っている。形状だけでなく機能的にもEchoと類似の製品仕立てになっている。Smart AssistantがEchoと異なる点はプレミアムスピーカー「Harman Kardon」を搭載している点。価格は179.99ドルで2017年5月から出荷が始まる。この事例が示すように、Amazonは競合デバイスの開発を歓迎しており、事業の目的はAIボイスクラウドの拡大にある。

出典: Lenovo

Fordはクルマに会話機能を組み込む

Fordは自動車メーカーとして初めてAlexa Voice Serviceの採用を決めた。利用者は家庭のAmazon Echoからクルマを操作できる。「Alexa, ask MyFord Mobile to start my car」と指示するとエンジンがかかる。運転中はナビゲーションパネルから音声でAlexaを利用できる (下の写真)。目的地の検索やガレージドアの開閉などを言葉で指示できる。これはFord「SYNC 3」技術を使ったもので、ドライバーのスマホアプリからクルマにアクセスする構成となる。前者の機能は2017年1月から、後者の機能は夏から利用できる。クルマが自動運転車に向かう中、ドライバーとクルマのインターフェイスはボイスとなる。

出典: Ford

HuaweiはスマホにAlexaを組み込む

Huaweiは最新のスマートフォン「Mate 9」 (下の写真) にAlexaをプレインストールして出荷することを明らかにした。Mate 9はボイスアプリを搭載し、この背後でAlexa Voice Serviceが使われている。利用者は音声で備忘録を作成し、天気予報や渋滞情報を尋ねることができる。また、スマートホームのハブとして家電を操作することもできる。ボイスアプリは2017年初頭から提供される。GoogleはAndroid向けにAI会話機能「Assistant」を提供しており、Alexaと正面から競合することになる。

出典: Huawei

UBTechはロボットのインターフェイスにAlexaを採用

UBTechはShenzhen (中国・深セン) に拠点を置くロボット開発会社で「Lynx」 (下の写真) を発表した。LynxはAlexa Voice Serviceを組み込み、言葉でロボットを操作することができる。音楽再生やメールの読み上げなどを言葉で指示できる。Alexaが提供する機能の他に、Lynxは搭載しているカメラで利用者を識別し、個人に沿った対応ができる。また、カメラをセキュリティモニターとして使えば、Lynxが留守宅を監視する。価格は800ドルから1000ドルで2017年後半に発売される。ロボット開発では会話機能がネックとなるが、Alexa Voice Serviceを使うことで、開発工程が短くなる。手軽にロボットを開発でき、市場への参入障壁が大きく下がる。LynxはAlexaがロボットの標準インターフェイスとして普及する可能性を示唆している。

出典: UBTech

テレビを音声で操作する

DISHは衛星テレビ会社でテレビ放送やインターネットサービスを提供する。DISHはセットトップボックス「Hopper DVR」をAmazon Echo又はDotとリンクし、テレビを言葉で操作できる機能を提供する (下の写真)。Echoに対し「Alexa, Go to ESPN」と指示すると、テレビはスポーツ番組「ESPN」にチャンネルを変える。番組を検索するときは「Alexa, what channel is the Red Sox game on?」と尋ねる。EchoはRed Soxの試合中継があるチャンネルを回答する。このサービス2017年前半から提供される。これからのテレビはリモコンだけでなく、音声操作が必須のインターフェイスとなる。GoogleはAI会話機能「Assistant」でテレビを音声で操作する機能を提供している。テレビ操作のインターフェイスでもAmazon AlexaとGoogle Assistantが覇権を争うことになる。

出典: DISH

LGは冷蔵庫にAlexaを搭載

LGはスマート冷蔵庫「Smart InstaView Door-in-Door」 (下の写真) でAlexa Voice Serviceを利用することを発表した。冷蔵庫は29インチのタッチパネルを搭載し (下の写真、右上のパネル) Microsoft Cortanaを音声インターフェイスとして利用してきた。今般、LGはこれをAlexa Voice Serviceに変更する。Alexaが組み込まれることで、音声でレシピを検索し、ショッピングリストを作成できる。また、Amazonでの買い物が音声でできる。冷蔵庫はスマートホームのハブとしても機能する。LGスマート冷蔵庫は音声で操作できない家電は売れなくなることを示唆している。

出典: LG Electronics

AIを駆使した高度な会話機能

メーカーが相次いでAlexaを採用する理由はAIを駆使した高度な会話機能にある。Alexaを搭載したデバイスは「Alexa」という枕言葉を検出すると、それに続く音声ストリームをクラウドに送信する。一連の会話処理はクラウドで実行される。具体的には音声認識 (Speech Recognition)、自然言語解析 (Natural Language Processing)、音声生成 (Text-to-Speech Synthesis) の処理が実行され、これらのプロセスでAIが使われている。単一のAIではなく、各モジュールに高度なAIが実装されボイスサービスを支えている。

Alexa人気の秘密は教育データ

Amazon Alexaが高度な会話機能を提供できる理由はAIアルゴリズムを最適化する教育データにある。教育データとは喋った言葉 (サウンド) とそれを書き下した文字 (テキスト) の組み合わせを指す。ボイス教育データとしてはコールセンターのオペレータの会話が使われる。しかし、家庭環境での会話 (「ガレージのドアを閉めて」など) をベースにした教育データは存在しない。Amazonは2014年に製品を出荷し、利用者からのフィードバック (下の写真) などを使い、教育データを整備してきた。この蓄積が高度な会話機能を支え、他社の追随を許さない理由になっている。

出典: VentureClef

日本企業のオプションは

家電メーカー、自動車メーカー、ロボット開発企業はAlexa Voice Serviceを利用することで製品に会話機能を組み込むことができる。自社でAIボイス機能を独自に開発する手間が省ける。Amazon AWSを利用するように、これからはAlexa Voice Serviceが標準ボイスクラウドとなる勢いをみせている。AIの基礎技術であるボイスサービスをAmazonに頼るのか、それとも独自で開発する道を進むのか、日本産業は岐路に差し掛かっている。

NvidiaとAudiは2020年までに完全自動運転車を投入、Deep Learning AIがクルマを運転する

Friday, January 6th, 2017

NvidiaとAudiは2020年までに完全自動運転車を投入すると発表した。Nvidiaの自動運転技術がベースとなり、Deep Learning (深層学習) がドライブテクニックを学びクルマを運転する。Nvidiaはこれを「AI Car」と呼び人工知能がクルマのドライバーとなる。

出典: Nvidia

NvidiaとAudiは完全自動運転車を開発

Nvidia CEOのJen-Hsun Huangは、2017年1月5日、ラスベガスで開催された家電ショーCESで最新の自動運転技術を発表した。この模様はビデオで公開された。この中でNvidiaはAudiと共同で完全自動運転車を開発し、2020年までに市場に投入することを明らかにした。クルマはAI Carと呼ばれ、Deep Learningが自動運転技術を司る。AIをフルに実装した自動運転車が市販モデルとして登場する。

自動運転車開発モジュール

Nvidiaはグラフィック半導体メーカーであるが、今ではAI企業として事業を展開している。Nvidiaは自動運転車向けのプロセッサや開発環境を提供している。自動運転を司るモジュールは「AI Auto-Pilot」と呼ばれDeep Learningが実装されている。他に、Nvidiaはドライバーの運転を支援するモジュールを明らかにした。これは「AI Co-Pilot」と呼ばれ、文字通りAIが副操縦士になりドライバーの運転をチェックする。これらのモジュールは車載AIスパコン「Drive PX 」で高速に処理される。

Auto-Pilotが操縦士となる

自分で運転したことのないクルマに運転技術を教えるのは非常に難しい。しかし、Deep Learningがドライブテクニックを学ぶことで自動運転技術が大きく前進した。Auto-PilotはDeep Learningの手法でクルマの周りのオブジェクト (クルマや歩行者など) を認識する。更に、それらの意味を把握して、Auto-Pilotは周囲の車両などがどう動くかを予想する。これによりクルマは安全なルートを選択して走行することができる。Auto-Pilotが操縦士となりクルマを運転する。

自動運転のメカニズム

Auto-Pilotはクルマに搭載されているカメラやLidarの画像を読み込み、それを解析してステアリングを操作する。具体的には、クルマは走行中に目の前のイメージと高精度マップ「HD Map」を比較して、位置を確認し、その意味を把握し、次に取るべきアクションを決定する。HD MapがGround Truth (規準) となり、クルマはこれを頼りに走行する。(下の写真はHD MapでLocalization (位置決定) をしている様子。クルマはセンチメートル単位で現在地を決定し、安全に走行できる車線を把握する。)

出典: Nvidia

HD Mapが必要となる

このために高精度マップHD Mapを事前に整備しておく必要がある。HD Mapとは道路や道路標識などが高精度で表示されたマップを指す。更に、マップ上のオブジェクトにはそれが何かを示す意味情報が付加されている。作成されたHD Mapはクラウドに格納される。

Deep Learningで自動運転アルゴリズムを教育

自動運転アルゴリズムはDeep Learningで教育される。カメラで捉えた画像とドライバーのステアリング操作が手本となり、Deep Learningを構成するニューラルネットワークはこれを学習する。Auto-Pilotは運転アルゴリズムをプログラミングされているわけではなく、人間のようにドライバーの運転を見てテクニックを学んでいく。データ入力から出力までをDeep Learningで処理する構成でAI Carと呼ばれる所以である。

コンセプトカーのデモ走行

Nvidiaはこれに先立ちAuto-Pilotを搭載した自動運転車「BB8」を発表している。CESではBB8デモ走行がビデオで紹介された (下の写真)。BB8はAI Carで最新の自動運転技術を搭載している。ドライバーとクルマのインターフェイスはタブレットで音声などで操作する。緊急事態に備えてストップボタンが装備されている。

出典: Nvidia

目的地までのルートを表示

クルマに乗ると音声で行き先を告げる。例えば「take me to starbucks in san mateo」などと指示する。クルマは指示に従って目的地までのルートを算出しタブレットに表示する (下の写真)。詳しい説明はなかったが、自動運転できる箇所は緑色で示される。自動運転できない箇所もマップ上に示され、ここはドライバーがマニュアルで運転することになる。HD Mapが整備されていない道路や運転が難しい地域が対象となる。いわゆる”圏外”の道路で、自動運転車の性能は自動走行できる範囲の広さが決定的に重要な要素になる。

出典: Nvidia

道路標識に従って走行

BB8は道路標識や車両を認識し自動走行する (下の写真)。一時停止の交差点や信号機のある交差点では、交通ルールに従って運転する。BB8はカーブの大きさ応じて速度を調整する。きついカーブでは速度を落として進行する。高速道路へのアプローチでは加速し、走行車線にスムーズに合流する。高速道路では自動で車線を変更し、高速道路を自動で降りることができる。BB8は道路という概念を把握しているので、車線がペイントされていない道路や砂利道でも自律走行できる。

出典: Nvidia

無事目的地に到着

自動運転からマニュアルモードに切り替えるときは「disengage autopilot」と指示する。市街地ではBB8はマニュアル運転で走行し、無事に目的地のスターバックスに到着した。走行した場所はシリコンバレーの住宅地と高速道路で、自動運転車にとっては比較的走りやすい環境。Auto-Pilotはこのレベルの運転テクニックを習得していることが伺える。今後は市街地や悪天候など運転が難しい環境での学習に進むことになる。

CES会場でのデモ

NvidiaはCES会場でAuto-Pilotのデモ走行を実施した。会場の一角に円周コースが設けられBB8が無人で走行した。また、Audi Q7ベースの自動運転車のデモ走行も行われた (下の写真)。クルマにはAuto-Pilotが搭載され、コースを周回した。シンプルなデモであるが、Nvidiaはクルマの教育は数日で終了したと述べ、Deep Learningを使うと学習速度が早いことをアピールした。

出典: Nvidia

ドライバーの運転支援技法

この他にNvidiaはドライバーの運転を支援する技法「AI Co-Pilot」を明らかにした。クルマに搭載されているAIは自動運転だけでなく、ドライバーの安全運転を支援する。クルマに搭載したカメラの画像を解析し危険な状況をキャッチする。例えば、前方を自転車が走っているとAI Co-Pilotは「右前方45フィートに自転車あり」と音声で注意メッセージを流す (下の写真)。ここではオブジェクトの判定や、それを言葉に置き換える技術が使われているが、これらはAIの得意分野である。

ドライバーの運転状態監視

車内にもカメラが備え付けてあり、AI Co-Pilotはその画像を解析して運転を支援する。AI Co-Pilotは顔認識機能がありドライバーを認証する。クルマは搭乗したドライバーの好みの設定になり、始動のためのキーは不要となる。この他に「Head Tracking」と「Gaze Tracking」機能がありドライバーの身体状態を把握する。例えば、疲れていると判定した時はクルマを止めるようアドバイスする。Auto-PilotがあればCo-Pilotは不要とも思えるが、Nvidiaは自動運転車が市販されてもマニュアルモードでの運転が残り、ドライバー支援技術は必須との見かたを示している。

出典: Nvidia

Lip Reading技術を採用

この他にCo-Pilotは音声認識機能を備えている。ドライバーが喋った言葉ではなく、唇の動きから何が語られたかを把握する。これは「Lip Reading」と呼ばれ、唇の動きから何を話しているかを判定する。騒音が大きい車内では音声認識機能ではなくLip Readingが有効な技法となる。これはOxford Universityが開発した「Lip Net」という技術を使っている。Lip Netの認識精度は95%で人間の精度53%を大きく上回る。Lip NetはAlphabet DeepMindと共同で研究を進めており将来が期待される技術である。

自動運転を構成するモジュール

Nvidiaは自動運転車開発のための包括的なシステムを提供する。オンボードプロセッサが「Drive PX」 (下の写真) で、ここにはAIスパコンチップ「Xavier」が搭載されている (銀色のモジュール)。Xavierは8コアのARM64 CPUで、512コアのVolta GPUを搭載し、毎秒30兆回の計算ができる。ここで基本ソフト「DriveWorks」が稼働し、Auto-PilotとCo-Pilotが実行される。ドライバーの言葉を理解する技術は「NLU」というモジュールで提供される。更に、クラウド経由でAI仮想アシスタントを使うことができる。Googleの仮想アシスタント「Assistant」をクルマから使う計画を進めている。

出典: Nvidia

自動車メーカーやサプライヤーとの提携

前述の通りNvidiaはAudiと自動運転車を共同開発する。更に、Mercedes-Benzとの事業提携も発表した。また、大手サプライヤーZFと自動運転システム「ZF ProAI」の共同開発を進めることを明らかにした。そして、大手サプライヤーBoschと自動運転技術を共同開発することを発表。NvidiaのオンボードプロセッサDrive PXとBoschのレーダーやセンサーを組み合わせて自動運転技術を開発する。

HD Map開発でトップ企業と提携

NvidiaはHD Map開発でも事業提携を拡大している。マップ技術で世界のトップを走るHEREはNvidiaとHD Mapの共同開発を進める。HEREはNvidiaが提供するマップ開発モジュール「MapWorks」を使って高機能マップ「HERE HD Live Map」を開発する。また、Nvidiaはゼンリンとの提携を発表した。ゼンリンはDrive PXとDriveWorksを使い日本でHD Mapを作成する。中国においてはNvidiaはBaiduと提携しHD Mapの開発を進めている。中国が自動運転車の巨大市場になり、そのためにHD Mapの開発が欠かせない。今年のCESではNvidiaの事業提携発表が相次いだ。

AI Carの課題と期待

NvidiaのAI Auto-Pilotはコンセプト段階であったが、Audiとの提携で一気に製品化に向かうことになる。Deep Learningをフルに実装した自動運転車としてその先進性に注目が集まっている。一方、AIが人間に代わりクルマを安全に操縦するためには解決すべき課題も少なくない。Deep Learningはアルゴリズムがブラックボックスで、クルマが下した判断を人間が理解するのが難しいという課題を抱えている。アルゴリズムを可視化する技術やそれを修正する技法が必要となる。果たしてAIをフル実装した市販車の開発は可能なのか、その取り組みに注目が集まっている。

トランプ新大統領はシリコンバレーの追い風となる、ハイテク企業経営者の新政権評価に変化の兆し

Wednesday, January 4th, 2017

シリコンバレーの企業経営者はトランプ氏の発言に強い抵抗感を示し、その考え方を批判してきた。しかし、トランプ氏が政策を示し始めると、シリコンバレートップの態度が変わってきた。選挙戦での過激な発言とは異なり、トランプ氏はテクノロジーの重要性を認識し、これを経済政策に活用する動きを示している。一方、ハイテク企業社員はこの動きに敏感に反応し、会社トップがトランプ氏にすり寄っていると嫌悪感を表している。

出典: Chance Miller

トランプ氏に警戒感を示してきた

トランプ次期大統領は選挙期間中、シリコンバレーのハイテク企業を批判してきた。FBI捜査に協力しないAppleの姿勢を問題視し、トランプ氏は国民にApple製品を購買しないよう呼び掛けた。また、Amazon CEOのJeff Bezosに対して、Amazonは独占禁止法に抵触する可能性があると警告した。これは同氏が経営するWashington Postがトランプ氏に批判的な記事を掲載するための対抗措置とされる。シリコンバレーの経営者はトランプ氏の発言は民主主義への挑戦と受け止め、危機感を募らせてきた。

シリコンバレー経営者の姿勢が変わった

しかし、トランプ氏が政権移行の過程で政策概要を示し始めるにつれ、シリコンバレーの企業経営者たちの姿勢が変わってきた。トランプ氏が打ち出す政策はIT企業にとって不合理ではなく、むしろ事業拡大のチャンスとなりそうだ。シリコンバレーの経営者たちは新政権に危機感を抱いていたが、それが期待に変わり始めた。

サミットミーティングが切っ掛け

その切っ掛けはシリコンバレートップとのサミットミーティングであった。Trump Towerに米国を代表する経営者が招かれ、トランプ氏との意見交換の場が設けられた (上の写真)。会議の内容は非公開であるが、その一端が漏れてきた。トランプ氏はテクノロジーに耳を傾け、興味を示したとも伝えられる。また、トランプ氏に批判的だった経営者が招かれ、反対者からも意見を聞くというトランプ氏の寛容な態度も評価されている。更に、政権移行チームも胸襟を開き幅広く意見を求めており、オープンな姿勢が好感を呼んでいる。

規制緩和が進むか

企業経営者たちがトランプ氏に期待しているのは税制改定や規制緩和である。トランプ氏は規制緩和に向け大きく舵を切ることを表明している。金融やエネルギー産業を対象とすると述べており、関連企業の株価が上昇している。ハイテク産業については言及していないが、トランプ新政権はシリコンバレーと関わりの深いFDA (連邦食品医薬品局) やFAA (連邦航空局) の規制緩和に動くといわれている。

出典: VentureClef

新薬認可のプロセスを緩和

FDAはHHS (米国保健福祉省) の組織で食品や医療に関する行政を司る。FDAは国民の健康を守るため強い指導力を発揮することでも有名。FDAは新薬の認可で厳しいルールを設けているが、トランプ新政権はこれを緩和するとの見方が広がっている。医薬品企業にとっては承認プロセスが緩和されると事業を進めやすくなる。

遺伝子解析事業が大きく前進するか

FDAの規制緩和はシリコンバレーのベンチャー企業に大きな影響を及ぼす。Google配下の23andMe (上の写真) は個人向け遺伝子解析事業を進めてきたが、FDAの命令で事業停止に追い込まれた。23andMeは収集した遺伝子をAIで解析することで、遺伝子変異と病気の関係を紐づける技術を開発している。遺伝子データから知見を引き出す技術が新薬開発に大きき寄与すると期待されている。トランプ新政権になると遺伝子解析事業が大きく前進する可能性を秘めている。

ドローン飛行に関する厳格なルール

FAAはDOT (米国運輸省) の機関で民間航空機の運航を管轄する。航空機の管制業務やドローン運行ルールの設定などが主な任務となる。FAAはドローン飛行に関して厳格なルールを打ち出し、個人所有のドローンが航空機や住民に危害を与えないよう定めている。同時に、企業がドローンを商用飛行するためにも厳しい条件が定められている。

出典: Amazon

米国内でドローン産業を育成

このため、ドローン開発企業は米国を離れて試験飛行を展開することが多い。Amazonはドローン配送システムPrime Airを開発しているが、米国を離れ英国で配送試験を進めている (上の写真、Cambridgeshire (英国) での実証実験)。Googleは高速で飛行するドローンProject Wingの開発をオーストラリアで展開していた。トランプ氏はFAAの規制を緩和して米国でドローン産業を育てる意向を示している。ただ、FAAは厳しい規制を保持する姿勢を示しており、トランプ新政権との衝突は不可避だ。ドローン規制がどこまで緩和されるのか見通せないなか、産業界からはトランプ氏の指導力に期待が集まっている。

新政権が自動運転車運行ルールを策定

DOTは米国内の運輸を管轄する機関で自動運転車の運行ルールはここで制定される。DOT長官にはElaine Chao氏が就任したが、自動運転車についての運行指針は示されていない。オバマ政権で自動運転車に関する運行指針の策定を進めてきたが、トランプ新政権がこれを受け継ぐこととなる。

トランプ氏は次世代交通網に関心を示す

トランプ氏自身も自動運転車についてはポジションを示していないが、新政権の意向を反映した規制をゼロから策定することとなる。トランプ氏のアドバイザーにUber CEOのTravis KalanickとTesla及びSpaceX CEOのElon Muskが任命された。これはトランプ氏が次世代交通網に強い関心を示していることを示唆している。新政権のもとでライドシェアや自動運転車の規制緩和が進み、技術開発が加速する環境が整うのか関心が集まっている。

(下の写真はSelf-Driving Uber。Uberはカリフォルニア州政府からサンフランシスコでの試験営業の停止命令を受けた。トランプ政権になると再び試験営業できるのか、それともカリフォルニア州は立場を変えないのか、せめぎ合いが続く。)

出典: Uber

インフラ整備に1兆ドル投資

トランプ氏はインフラを整備するために1兆ドルの投資を実施するとしている。道路整備を中心に交通ネットワークを近代化する。インフラ整備にはスマートシティや自動運転車も含まれるとみられる。既に、スマートグリッドなどネットワーク企業の株価が上昇している。インフラ整備には情報通信技術は必須でハイテク企業との関連が注目される。DOTはスマートシティ構築でGoogleや主要都市と連携し都市の近代化を進めている。

支出と予算のバランスが議会で審議される

一方、トランプ氏は就任100日以内に議会にインフラ整備の法案を提出するとしていたが、ここにきてトーンダウンしている。連邦議会が招集されたがオバマケア (医療保険制度改革法) 撤廃に向けた決議案や税制改正法案が先に審議されることとなる。インフラ整備に関しては1兆ドルの支出と予算のバランスが議会で審議されることになり紆余曲折が予想される。

諮問委員会から幅広く意見を聞く

トランプ氏は業界著名人から構成される諮問委員会「Strategic and Policy Forum」を設立した。トランプ氏は経済政策立案のため委員会から幅広く意見を聞く。委員会は18名で構成され会長は大手投資会社Blackstone CEOのSchwarzman。諮問委員会に上述のKalanickとMuskが加わった。次世代交通、自動運転技術、再生可能エネルギー、宇宙開発などについて助言するものと思われる。この他に、IT企業からはIBM CEOのGinni Romettyがメンバーに加わっている。

既成勢力を破壊するという共通点

シリコンバレーはクリントン氏を支持し、トランプ氏の信条や政策とは相いれないものがあった。しかし、トランプ新政権の輪郭が見え始めると両者の共通点も明らかになってきた。トランプ氏や主要閣僚の多くは政治家ではなく、いわゆる部外者である。門外漢がワシントンに新しい風を送り、政治を変えようとしている。シリコンバレーがディスラプターとして既成産業を破壊しているように、トランプ氏がワシントンの古い政治を破壊し、新しい価値を生み出すとの期待が高まる。創造的破壊がシリコンバレーとトランプ氏を結ぶ共通項となる。

シリコンバレーのエンジニアは失望

この一方で、シリコンバレーのエンジニアからは企業経営者はトランプ新大統領に投降したと失望の声が聞かれる。選挙期間中にトランプ氏を激しく非難しておきながら、サミットミーティングではトランプ氏に論戦を挑むものはいなかった。トップの変節ぶりに多くのエンジニアは失望している。同時に、新政権の下で企業は事業を拡大できるチャンスであることも社員たちは理解している。現実と理想の祖語に苦悶しているのがシリコンバレーの今の空気かもしれない。

最悪の事態は回避されそう

トランプ氏に対する根強い不信感があるものの、シリコンバレーは選挙直後の深い失望感から回復しつつある。トランプ新大統領の誕生でイノベーションが途絶えると危惧されたが、最悪の事態は回避されそうだ。むしろ、トランプ大統領がシリコンバレーの追い風となる勢いだ。米国企業だけでなく、日本企業にとっても新政権誕生はプラスに作用する流れとなってきた。ただ、トランプ新政権が発足し経済政策が示されるまでは予断は許されない。トランプ氏が打ち出す変化の激しい政策に臨機応変に対応することが求められる。

Uberはシリコンバレーに人工知能研究所を設立、次世代AIで自動運転技術のブレークスルーを狙う

Friday, December 30th, 2016

UberはAIベンチャーを買収し、人工知能研究所を設立することを発表した。研究所はSan Franciscoに設立し、次世代AI技術を開発する。研究成果を自動運転車に適用し、人間のようにスマートに運転できるクルマを開発する。更に、この成果を航空機やロボットに応用することも計画され、UberはAI研究を本格的に推進する。

出典: Uber

Uber AI Labsを設立

Uberは2016年12月5日、San FranciscoにAI研究所「Uber AI Labs」を設立することを発表した。あわせて、AIベンチャー「Geometric Intelligence」の買収を明らかにした。AI研究所はDeep Learning (深層学習) とMachine Learning (機械学習) を中心テーマとして研究開発を進める。買収したGeometric Intelligenceの研究員15名が研究所の構成メンバーとなる。所長には同社CEOのGary Marcusが就任する。

Geometric Intelligenceとは

Uberが買収したGeometric Intelligenceだが、その実態は殆ど知られていない。同社はMarcusらにより設立され、論文などは発表されておらずステルスモードで研究が進んでいる。一方、Marcusは業界の著名人で、講演などでGeometric Intelligenceの一端を紹介している。それによると、同社は少ないデータでアルゴリズムを教育できるDeep Learning技法を開発している。

少ないデータでイメージを認識

Deep Learningでオブジェクトを判定できるようになるには、大量の写真を読み込みアルゴリズムを教育する必要がある。これに対しGeometric Intelligenceは、人間が物を認識するように、少ないデータでイメージを判定できるアルゴリズムを開発している。少量データは「Sparse Data」と呼ばれ、Deep Learning研究の主要テーマになっている。

自動運転車開発の課題

MarcusはDeep Learningで自動運転車アルゴリズムを開発する際の問題点を挙げている。自動運転車開発ではクルマは遭遇するすべてのケースを学習する必要がある。このため、雨や雪の日の走行環境が必要で、天気のいいカリフォルニア州を離れ、別の地域での走行試験が必要となる。クルマやドローンやロボットを含む自律システムの開発ではアルゴリズム教育のためのデータが最大のネックとなる。Geometric Intelligenceは少量データでアルゴリズムを教育し、開発期間を大幅に短縮することを目標にしている。

ハイブリッドAIを開発する

更に、この研究所の最大の特徴はハイブリッドAIを開発することにある。Geometric IntelligenceはDeep Learningだけではなく従来型AIを開発している。具体的にはBayesian Model (階層構造での統計技法) やProbabilistic Model (確率分布の統計技法) などの研究を進めている。これらはMachine Learningの根幹技法で幅広く使われている。しかし、Deep Learningの登場で影が薄れ人気がなくなっているのも事実。

出典: Gary Marcus

ルールベースと統計手法を組み合わせる

Geometric Intelligenceはこれら従来モデルを改良し、Deep Learningと組み合わせて使う技法を開発する。これをハイブリッドAIと呼び、ルールベースの学習モデル (Machine Learning) と統計手法の学習モデル (Deep Learning) を組み合わせたアプローチを取る。多くの自動運転車ベンチャーがアルゴリズムをDeep Learningだけで実装するのに対し、Uber AI Labsは幅広い技法をミックスして使う。

Deep Learningは行き詰る

この背後にはMarcusのAIに対する際立った考え方がある。MarcusはNew York Universityの教授で心理学が専門。MarcusはDeep Learningは行き詰ると主張する。その理由はDeep Learningの教育には大量のデータが必要で、適用できる分野が限られるためである。実社会では常に大量データが揃っているわけではない。特に、言語解析と自動運転車でこの問題が顕著になるとMarcusは指摘する。(上の写真はMarcusのホームページ。Marcusは心理学、言語学、生物学の観点からヒトのインテリジェンスに迫る。)

ハイブリッドAIで構成する自動運転技術

このハイブリッドAIで自動運転アルゴリズムを構成する。ハイブリッド型の学習モデルでは、画像認識にはDeep Learningを使い、少ないデータでアルゴリズムを教育する。運転テクニックについてはルールベースの学習モデルを使う。運転テクニックは汎用的な運転ルールだけでなく、地域に特有な運転ルールなどを学習する。例えば、San FranciscoとPittsburghでは運転マナーが異なるが、ルールベースの学習モデルがこれを吸収する。Geometric IntelligenceはDeep Learningに特化するのではなく、複数の学習手法を組み合わせて使う点に特徴がある。

出典: Uber

Self-Driving Uberの試験営業を開始

Uberはこれに先立ち2015年2月、自動運転車開発センター「Uber Advanced Technologies Center」をPittsburgh設立した。Carnegie Mellon Universityと共同で、自動運転技術とマップ作製技術を開発している。Uberは同5月からPittsburgh で自動運転車の試験営業を始めた。自動走行するUberは「Self-Driving Uber」と呼ばれ、客を乗せて試験営業を展開している (上の写真)。同12月にはSan FranciscoでSelf-Driving Uberの営業試験を始めた。しかし、カリフォルニア州から運行停止命令を受け、Uberの試験営業は中止に追い込まれた。このため、Uberは試験場所をアリゾナ州に移し、2017年早々から試験営業を始めるとしている。

Self-Driving Uberを無人走行させることが最終ゴール

Self-Driving Uberは自動で走行するがドライバーが搭乗し、システムが対応できない時は運転を代わる。クルマがドライバーの支援なしで走れる距離は限られており、頻繁にドライバーの割り込みが必要となる。San FranciscoではSelf-Driving Uberは横断歩道を赤信号で横切ったことがニュースで大きく報道された。このため、Self-Driving Uberの試験営業は時期尚早ではという疑問の声も聞かれる。Self-Driving Uberの自動運転技術は完成度が低いと専門家は指摘する。Uber AI Labsの使命は自動運転技術を飛躍的に進化させることにあり、Self-Driving Uberを無人走行させることが最終ゴールとなる。

出典: Uber

ロジスティックからAI・ロボティックス企業に

UberはAI研究所の成果を自動運転技術だけでなく飛行機やロボットなどにも応用する。Uberは2016年10月、オンデマンドで利用する航空輸送サービス「Uber Elevate」を発表している。Uber Elevateはパイロットが登場しない航空機で、空飛ぶSelf-Driving Uberとして位置づけられる。(上の写真、Uber Elevate はSan FranciscoとSan Joseの間70キロを15分で結ぶ計画。価格は129ドルとUberXと同じレベル。) また、Uberはロボットについては具体的な製品を発表していないが、登場は間近とみられている。UberはロジスティックスからAI・ロボティックスに大きく舵を切り、2017年は企業形態が大きく変わろうとしている。

Uberはサンフランシスコでの自動運転試験を中止、認可を巡りカリフォルニア州政府と激突

Friday, December 23rd, 2016

Uberは必要な手続きをしないでSan Franciscoで自動運転車の試験営業を始めた。カリフォルニア州政府はこれを認めず、試験車両の登録を取り消す強硬策を取った。これに対し、Uberは隣のアリゾナ州に移り、ここで路上試験を始める計画だ。Uberが法令に従わないで自動運転車を運行するのは危険だという意見がある。同時に、カリフォルニア州は規制が厳しすぎるという意見も聞かれる。

出典: Uber

San Franciscoで試験運転を始める

Uberは2016年12月14日、San Franciscoで自動運転車の試験操業を始めるた。この車両は「Self-Driving Uber」と呼ばれ、Volvo XC90に自動運転技術を搭載した構成となっている (上の写真) 。Uberはこの車両で無人タクシーの試験営業を開始した。ただし、車両にはUber専任ドライバーが搭乗しており、問題が発生すると運転を代わる手順となっている。

タブレットがインターフェイスとなる

誰でもSelf-Driving Uberを利用できる。いつもの手順でUberアプリで配車をリクエストする。もし配車車両が自動運転車であれば、その旨がアプリに通知される。利用者は確認ボタンを押すとSelf-Driving Uberが配車される。利用者が搭乗すると、車内にはタブレットが備えてあり、これでクルマと交信する (下の写真)。タブレットがインターフェイスとなり、無人走行時に乗客が安心できる機能を搭載している。

タブレットで走行状態を把握

乗客はシートベルトを装着し出発準備が整い、タブレットでスタートボタンを押すとクルマは発進する。走行中はタブレットに運行状況に関する情報が示される。Self-Driving Uberに搭載されているセンサーで捉えたクルマ周囲のイメージが表示される (下の写真)。またタブレットで自撮りすることもできる。カメラアイコンを押すと写真撮影でき、それを友人とシェアできる。

出典: Uber

San Franciscoを選んだ理由

Uberは既にPittsburgh(ペンシルベニア州)でSelf-Driving Uberの営業試験を展開している。UberはSan FranciscoでSelf-Driving Uberを試験する理由について、試験走行の環境を拡大することで、技術開発を加速するとしている。San Franciscoは自転車が多く道路は狭く交通量が多く、難しい環境で技術を磨くとしている。当地はUber発祥の地であり、ここで試験を展開するのは自然な流れとなる。

認可を受けないで試験営業を開始

しかし、Uberは認可を受けないで試験営業を始めた。カリフォルニア州で自動運転車を試験走行するときは、自動車運行を管轄するDepartment of Motor Vehicles (DMV) から認可を受けることが義務付けられている。Uberはこの法令に従わづ、自動運転車運行許可証を取得しないでSelf-Driving Uberの営業試験を始めた。このためカリフォルニア州政府はUberに対してSelf-Driving Uberの運行停止の命令を発行した。

なぜ認可を受けないで運行するのか

UberはSelf-Driving Uber営業試験を始めるにあたり、自動運転試験の認可を取得する必要はないとの見解を表明した。この理由はSelf-Driving Uberは自動運転車の定義に該当しないというもの。DMVは自動運転車「Autonomous Vehicles」を「ドライバーが制御しないで運行する車両」と定義している。Self-Driving Uberはドライバーが制御しながら運行する車両で、この定義に当たらないとUberは主張している。

自動運転車の定義を明確にすることを求める

Uberは、Self-Driving Uberは高度な運転アシスト技術であり、Tesla Autopilotと同じ方式で運行を制御するとしている。Tesla Autopilotの走行は認可が必要でないように、Self-Driving Uberも認可が必要でないと解釈すると述べている。更に、Uberは法の穴をかいくぐるのが目的ではなく、自動運転車関連法を明確にすることが目的とも述べている。Uberは「Autonomous Vehicles」の法的な定義を明確にすることを求めている。

DMVはUberの試験車両16台の登録を取り消す

UberとDMVは12月21日、自動運転車試験の認可について協議した。しかし、認可必要性についての解釈の相違は埋まらず、Uberは認可申請を行わないとの立場を崩さなかった。このため、DMVはUberの試験車両16台の登録を取り消すという措置に出た。これにより試験車両は路上を走行できなくなり、Uberは走行試験中止に追い込まれた。

アリゾナ州に試験場を移す

DMVとの協議が決裂した翌日、アリゾナ州知事Doug DuceyはUberが同州で自動運転車の試験をすることを明らかにした。アリゾナ州はハイテク企業誘致に積極的で、Duceyは2015年、自動運転車の試験や運行を認める法令に署名している。GoogleやGMは既にアリゾナ州で自動運転車試験を展開している。DuceyはUberを大歓迎すると述べ、同時に、カリフォルニア州は規制が厳しすぎるとも指摘した。(下の写真は自動運転トラックOttoがSelf-Driving Uberを積んでSan Franciscoを出発する光景。)

出典: Doug Ducey

Uberとカリフォルニア州の駆け引き

Uberは規制に従わないことで関係当局との交渉を優位に進めたいとの意図がある。Uberが投入する新技術は既成法令の枠を超え、既存ビジネスとの軋轢を生んできた。法令をUberに都合よく改定するため、Uberは規制当局と全面対決する手法で交渉を進める。一方、カリフォルニア州は住民の安全を最優先に規制を強化するが、ハイテク企業はこれを嫌い州を離れていく。安全を優先するのか、それともイノベーション育成を支援するのか、難しいかじ取りを迫られている。

試験車両の技術的問題も明らかになる

Self-Driving Uberは規制当局との軋轢がクローズアップされるが、技術的な問題も明らかになってきた。Self-Driving Uberは横断歩道を赤信号で横切ったことがニュースで大きく報道された。隣の車線で停止していたクルマから撮影されたもので、Self-Driving Uberは赤信号を無視して進行した。これに対してUberは、Self-Driving Uberは自動運転モードではなく、ドライバーが運転していたとコメントした。技術的な問題ではなく、ヒューマンエラーであるとしている。しかし、これを裏付けるデータは示されていない。

自転車レーンを無視して違法に右折する問題

Self-Driving Uberは自転車レーンを無視して違法に右折する問題を指摘されている。自転車レーンがある道路で右折するには、自転車レーンにマージしてから右折することが義務付けられている。Uberはこの問題を認め、すでにソフトウェアでバグを修正したとしている。(下の写真は自転車レーンの事例。左の走行車線から破線部で自転車レーンとマージし、右側レーンから右折する。走行レーンから直接右折することはできない。Waymo自動運転車はこのテクニックを既に習得している。)

出典: VentureClef

試験走行は時期尚早という基本的な疑問

Self-Driving UberはPittsburghで試験営業しているが、クルマがドライバーの支援なしで走れる距離は限られているとの報告もある。頻繁にドライバーの割り込みが必要となる。Self-Driving Uberが他車に接近しすぎて走行したなど、不安定な挙動もレポートされている。これに上述のSan Franciscoでの問題が重なり、消費者はUberの安全性に不安を抱く結果になった。Self-Driving Uberの試験営業は時期尚早ではという疑問の声も聞かれる。Uberはこれを認識しており、自動運転技術を抜本的に改良する方策を打ち出してきた。(詳細は次回のレポートで報告。)