Archive for the ‘プロセッサ’ Category

iPad向けアプリケーション

Sunday, February 7th, 2010

Appleは、先週、iPad (アイパッド) を発表し、今週はテレビやウェブにはiPadの評価記事が数多く登場し、iPadの話題性の高さを物語っている。iPadについては、評価が分かれている。iPadの使い易く滑らかなハードウェアを評価するグループと、iPadには斬新な機能はなく、大型iPhoneにすぎないという評価に二分される。

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(iPadのディスプレーと動作速度についての評価は高い、出展:Apple)

iPadについての議論

PBS (Public Broadcasting Service) の人気テレビ番組に、Charlie Rose (チャーリー・ローズ) というトークショーがある。ホストのCharlie Roseが、政治家からタレントから実業家まで、幅広くインタビューしながら、時の話題に迫ると言う番組である。昨日、この番組で、Apple iPadが取上げられた。この放送はウェブに掲載されており、ここ (http://www.charlierose.com/view/interview/10848) で見ることができる。

この番組には、IT業界を代表する三人である、Michael Arrington (マイケル・アーリントン)、Walter Mossberg (ウォルト・マスバーグ)、David Carr (デービッド・カー) が論客として参加し、iPadについての持論を展開した。Arringtonは、テック・ブログであるTechCrucnhの代表で、彼のテクノロジーに対する理解は深く、その評価は少し辛口だが常に参考になる。Mossbergは、Wall Street Journalの記者で、Personal Technologyというブログでは、コンシューマー製品を中心に、幅広い分野をカバーしている。David Carrは、New York Timesの記者で、テレビや新聞など、メディア関係の記事を書いている。

プラスとマイナスの評価

討論での意見を纏めると、MossbergとCarrは、iPadに対してポジティブの評価を行い、ArringtonはiPadの問題点を指摘し、ネガティブな評価であった。Mossbergは、iPadが大型のiPhoneであると評価するのは間違いで、大型スクリーンで画面操作を滑らかに行なえ、ソファーに座って本を読み、ビデオを楽しみ、音楽を聴くには最適な端末であると高く評価した。価格について、Mossbergは、当初999ドル程度と予測していたが、499ドルであり、わが耳を疑ったと述べた。Carrは、iPadのキラー・アプリケーションは二つあり、それらはゲームと書籍であると述べた。特にブックリーダーとしてのiPadは、自然な操作でカラー印刷の本を読め、Amazon Kindleと比較すると、その差は歴然であると述べた。

ArringtonのiPadに対する評価は厳しく、iPadの最大の問題点はAdobe Flashをサポートしていないと指摘した。iPhoneにおいても同じ問題を抱えており、Flashで構成されているビデオ・ファイルを見ることができない。Huluなどの人気サイトに掲載されているテレビ番組を見ることができない。Arringtonは、新規格のHTMLでこの問題は解決されるが、その実現までにはあと数年かかるとしている。新規格のHTMLとはHTML5を指し、オーディオやビデオ機能が組み込まれ、Flashなどのプラグインが不要になると言う意味である。また、Arrigntonは、iPadにカメラが搭載されていなく、Skypeなどでテレビ会議ができなと問題を指摘した。

三人の間でiPadについての評価が分かれたが、意見が一致したのは、iPadの製品としての位置付けである。Mossbergはこれを、Steve Jobs (スティーブ・ジョブズ) は、マーケティングの発想でiPadを作ったのではなく、利用者がまだ気が付いていない好みの製品を世に送り出したとしている。iPadは、新しいジャンルの製品で、利用者が使ってみて初めて惹き付けられる製品である、と説明した。三者ともこの意見には賛同した。

アプリケーション開発者の視点

iPadは新ジャンルの製品で、iPadをどのように使うかで、市場の評価が決まっていく。つまり、iPadでどんなアプリケーションが動くのかが鍵になる。NBCのPress:Hereというテレビ番組でも、今週はiPadが話題を独占した。番組司会役のScott McGrew (スコット・マグルー) が、Bolt CreativeのDave Castelnuovo (デーブ・カステルヌォボ) に、iPadの評価について質問した。Bolt Creativeは、iPhone向けのゲーム・アプリケーションを開発している会社で、CastelnuovoのそのCEOである。iPhoneアプリケーション開発者の視点から、iPadは携帯端末とコンソールのブリッジであると評価している。利用者はソファーに座って、Nintendo Wiiクラスの品質でゲームができるとしている。更に、iPhoneは個人向け端末であるのに対して、iPadは仲間と同じ画面を共有できる点が大きく異なるとしている。つまり、テーブルにiPadを置いて、二人で向かい合って、チェス・ゲームをすることが可能となる。更に、MicrosoftがSurfaceというテーブル型のコンピュータを発表しているが、この機能をiPadで実現できるとしている。因みにSurfaceとは、テーブル・トップにタッチスクリーンを搭載したコンピュータで、利用者は画面に触れながら、ゲームをしたり、写真アルバムを見ることができる。

iPadのアプリケーション

iPadが普及するためには、iPhoneと同じように、斬新なアプリケーションの登場が必要である。前述の通り、ゲームと書籍、また今後は、テレビや映画が主要なアプリケーションとなると期待されている。これと並行して、市場は、何がiPad のキラー・アプリケーションとなるかを模索し始めた。AppFundという会社は、iPadアプリケーション開発企業に投資するベンチャー・キャピタルとして登場した。AppFundは、開発者からアプリケーション開発のプロポーザルを受け付け、審査を通過した企業に、5千ドルから50万ドルを出資する。AppFundはここに大きなビジネス・チャンスを見ている。

一方、Kaiser Permanente (カイザー・パーマネンテ) は、カリフォルニア州を中心に展開している、米国で最大規模の医療サービス機関である。Kaiser Permanenteは、病院内の医療システムをiPadで構築しようとしている。病院内で医師やナースが、紙ファイルの代わりに、iPadで電子カルテを閲覧する方式を評価している。iPadのアプリケーションについては、まだ手探りの状況であるが、その一旦が見え始めてきた。iPadの評価が割れているが、iPadのアプリケーションが評価を決定することになる。今後も随時、iPadのアプリケーション動向を報告する。

iPad

Wednesday, January 27th, 2010

Appleは、本日 (1月27日) 、噂されていたApple Tabletを発表した。製品名称はiPad (アイパッド) である。この製品発表は、サンフランシスコ市内のYerba Buena Center (下の写真、Apple社のロゴがデザインされた会場、出展:londonist@Flickr) で、午前10時から行なわれた。この製品発表は、全米のメディアが揃って報道し、Apple iPadの話題で、過熱気味な一日となった。この製品発表の模様は、CNNビデオで見ることができる。

(http://www.cnn.com/2010/TECH/01/27/apple.tablet/index.html?hpt=T1)

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iPadの概要

会場のステージの上で、AppleのCEOであるSteve Jobs (スティーブ・ジョブズ) が、iPadをセンセーショナルに紹介した。Jobsは、iPadを、ラップトップとスマートフォンの中間に位置する製品として紹介した。この領域の製品は、Mobile Internet Device (MID) と呼ばれ、ネットブックなどの製品が出荷されている。Jobsは、ネットブックは両製品より劣ると評価し、iPadが両製品より優れていると説明した。下の写真 (出展:New York Times) は、JobsがiPadを手に持っている様子で、その大きさは9.6 x 7.5インチ (24.3 x 19.0 センチ) で、重さは1.5ポンド (680グラム) である。おおよそB5サイズの大きさである。また、幅は0.5インチ (1.3センチ) で、噂されていたように、大型のiPhoneというイメージである。

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iPadの機能についても、iPhoneの機能をそのまま大きなスクリーンで実行するイメージである。下の写真 (出展:Apple Inc.) は、写真アルバムを指で操作している様子である。スクリーンは、マルチタッチ機能を実装しており、iPhoneのように指で画面を操作することができる。但し、iPadは大型の画面を搭載しており、ウェブページ全体を表示することができ、スクロールや拡大操作を頻繁に行なうことなく、スムーズに記事を読むことができる。

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iPadの入力機能など

iPadへの入力は、これもiPhoneと同様に、ソフト・キーボードから行なう。iPadのキーボードの大きさは、ラップトップに搭載されているキーボードと同じ位で、入力操作が大幅に楽になるものと思われる。ただ、キーを押したときの反応 (Tactile Perception) が無いため、どれだけ使い易いかは、実際に使ってみる必要がある。下の写真 (出展:Apple Inc.) は、メール・アプリケーションを起動した様子である。写真右側が、受信メール・リストから、特定のメールを選択したところである。写真左側が、メールを作成している場面である。ここで、ソフト・キーボードが表示され、メールへの入力を行なう。

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下の写真 (出展:Apple Inc.) は、iPadからiTunes Storeにアクセスしている様子である。ここでもiPhoneと同様に iTunes Storeにおいて音楽を購入し、App Storeからアプリケーションをダウンロードする仕組みとなっている。Jobsは、現在、アプリケーションの本数は14万本あり、ダウンロード回数が30億回を超えたと説明した。また、iPhone向けに開発されたアプリケーションは、変更することなく、そのままiPadで使用できると説明した。更に、iPadのハードウェア機能をフルに活用するために、iPhone SDK最新版をリリースしたと述べた。

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iBooks機能概要

iPadの特徴は、iPadがAmazon Kindleのような、ブック・リーダーとなることである。AppleはiBooksというアプリケーション (下の写真、出展:Apple Inc.) を開発し、利用者は、App StoreからこのアプリケーションをiPadにダウンロードして使用する。書籍等のコンテンツは、Appleが新しく開設するiBookstoreで購入し、iPadにダウンロードして読む方式である。ちょうど、iTunes Storeで音楽コンテンツを購入すると同じ方式で、iBookstoreで書籍コンテンツを購入する。

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現在、iPhoneにおいても、様々なブック・リーダー・アプリケーションが提供されており、利用者はAmazon.comなどのサイトから、書籍を購入して読むことができる。これからは、iPadの大きな画面で読書でき、iBooksがiPadの重要なアプリケーションであると言われている。Appleは、HachetteやPenguinなどの出版会社と、電子書籍の提供について準備を進めている。また、Appleは電子書籍をePubという、電子書籍標準形式で提供する。このため、ePub をサポートしているSony Reader やBarnes & NobleのNookで提供されている電子書籍を読むことができる。

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iPadのブック・リーダー機能に対して、出版業界が、大きな関心を寄せている。出版社は、iBookstore経由での電子書籍販売で、新しいビジネスを期待している。また、新聞・雑誌社は、ウェブサイトやアプリケーションを通しての、ニュースや記事の配信に期待をかけている。上の写真 (出展:Apple Inc.) は、Safariブラウザー上に、New York Timesのウェブサイトを表示している様子である。 New York Timesは、iPhoneと同様に、アプリケーション経由でiPadへ新聞記事の配信を行なう計画である。新聞をiPad上で読む習慣が定着すれば、ここに広告事業など新しい収入の道が開けることになる。また、出張の際には、電子書籍や新聞記事をiPadにダウンロードしておき、それを飛行機の中で読むという使い方も可能となる。Jobsは、iPadのバッテリー持続時間が10時間であり、サンフランシスコから東京へのフライトでも、充分使えると説明している。

その他の機能

iPadは、上記のほかに、HDでのビデオ再生、YouTube閲覧、地図の表示、カレンダー、住所録などの機能を備えている。通信機能としては、WiFiとBluetoothのほかに、3G携帯電話通信機能を備えている。iPadをサポートする携帯電話会社はAT&Tで、月額$29.99でデータ通信ができる。iPadは、アンロック・モードで3Gネットワークをサポートしており、SIMカードを挿入することで、他社ネットワークでも使用できる。iPadに搭載しているプロセッサーは、Appleが独自で開発した、Apple A4 (1GHz) というカスタム・チップである。これは、Appleが08年に買収したP.A. Semiという半導体企業のテクノロジーを使っている。P.A. Semiは、グリーン・チップとして知られており、10時間のバッテリー寿命を生み出す元となっている。iPadの販売開始時期は、60日後で、価格は$499からとなっている。

考察

iPadについては、昨日からNBCなどの主要メディアが報道を開始し、発表当日は、前述の通り、テレビとウェブでiPadについての報道が過熱気味であった。しかし、発表内容については、現行のiPhone機能から大きく進化しておらず、軽く失望したというのが、正直な感想である。iPadにおいては、クオンタム・リープはなかったが、現行ビジネスが確実に拡大していくという印象を強く受けた。開発者コミュニティーがiPhoneに対してイノベーションを生み出したように、iPadでの革新的なアプリケーションの登場が期待される。

コンピュータの未来を予測する

Friday, March 2nd, 2007


米国セキュリティ業界最大のカンファレンスであるRSA  Conference 2007がサンフランシスコのMoscone Center (マスコーニ・センター)で開催された。基調講演にはマイクロソフト会長のBill Gates (ビル・ゲイツ)、オラクル会長のLarry Ellison(ラリー・エリソン)、また、元米国国務省長官のColin Powell(コリン・パウエル)など著名人が名前を連ね、メディアも注目するカンファレンスとなった。オラクルはセキュリティ企業を買収し、新戦略を発表するのではとの噂もあったが、Ellisonは基調講演を欠席するというハプニングがあった。マスコミの話題には上らなかったが、私が一番期待していた基調講演は、Ray Kurzweil(レイ・カーツワイル)の「Singularity」(特異点)で、その期待は裏切られなかった。

 

Ray Kurzweilが示す未来

Kurzweilは米国を代表する研究者で、ITを中心にテクノロジーの未来を予測する未来学の研究に従事している。Kurzweilの手法は、正確な技術に元ずく精度の高い未来予想ということで高い評価を受けている。一方で、Kurzweilは「現代版の旧約聖書預言者」と揶揄されることもあり、評価は分かれている。Kurzweilは視覚障害者のためにテキストを音声に変換する装置を開発している。最近は、遺伝子工学(Genetics)、ナノテクノロジ(Nanotechnology)、及びロボット工学(Robotics)の研究に従事し、これら「GNR技術」がもたらす恩恵とともに、その危険性について啓蒙活動を行っている。Kurzweilは「The Singularity is Near」(特異点はすぐ近く)という本で、人類は2045年までに特異点に到達すると予測しマスコミの話題となった。特異点とは、科学技術進化の速度が指数関数的に増加するため、「人類の歴史というネットが破れる点」を表している。

 

Ray Kurzweilの基調講演

Kurzweilは「Singularity」(特異点)というタイトルで基調講演を行った。Kurzweilはインターネットの爆発的な広がりを例に技術進化の特性を説明した。WWWが登場して以来、インターネット利用者人口は急増した。今まで静かであったインターネットが、ある日突然利用者人口が急増する現象が、技術進化の代表的なパターンであると説明した。この現象をインターネット人口と時間軸でプロットすると、1980年代はインターネット人口がほぼ横ばいで推移していたが、1990年代の後半から、急速に立ち上がるというカーブを描く。しかしインターネット人口の対数を取りグラフを描くと、下のグラフの通り、インターネット人口はほぼ直線に乗ることが分かる。

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対数軸ではインターネット人口の増加は直線的  (出展:Raymond Kurzweil)

 

ムーアの法則

Kurzweilは、「人間の目からするとインターネット人口がある日突然急増する現象も縦軸を対数で表示すると直線的な増加を示す」と説明している。この現象は一般的にムーアの法則(Moore’s Law)と呼ばれており、IT業界では余りにも有名である。ムーアの法則とはICチップの中でトランジスターの大きさが指数関数的に縮小する現象を示す。インテル会長であったゴードン・ムーア(Gordon Moore)が、ICチップの中のトランジスターの数は二年ごとに倍増することを発表し、この現象はムーアの法則と呼ばれるようになった。「今ではトランジスターの数は一年ごとに倍増しているが、ムーアの法則が示すところは、コンピュータ技術は指数関数的に進化するということである」と説明した。

 

Kurzweilは基調講演の中で、「コンピュータ技術の進化において、ムーアの法則は第五世代の技術進化を表現したもの」であり、「コンピュータが誕生した当初からこの法則が観測される」と説明した。第一世代はパンチカードで、「1890年に米国国勢調査の集計に使われ」有名になった。第二世代はリレー(継電器)で、「第二次世界大戦下、ナチスドイツのEnigma(エニグマ)という暗号化装置で作られた暗号を解読した」ことで注目を集めた。第三世代は真空管で、「米国CBS放送が大統領選挙でいち早くアイゼンハワー(Eisenhower)の当選を予測し」、コンピュータ・パワーが社会で認識される切欠となった。第四世代はトランジスターで、米国の「人工衛星打ち上げで使われ」、そして現行世代であるICチップへと続く。

 

第六世代のコンピュータへ

Kurzweilは、「各世代でコンピュータ技術が指数関数的に進化し、ムーアの法則が適用できる」とし、更に、「それぞれの世代で技術進化が壁に当たり進化が止まる」としている。歴史を振り返ると、ある技術が飽和すると、「パラダイムシフトが起こり、新技術が登場してきた」と説明した。Kurzweilは、「現在のICチップは、2019年には壁にあたり成長が止まる」と予測している。ICチップはトランジスターの大きさが指数関数的に縮小しているが、「トランジスターが原子の大きさレベルに到達すると、ここで技術進化は停止しする」と説明した。Kurzweilによると、ここで「パラダイムシフトが起こり、第六世代のコンピュータに向かう」としている。

 

Kurzweilは、「次世代のコンピュータは、三次元構造になる」と予測している。「人間の脳が三次元構造をしているように、コンピュータのプロセッサも三次元構造となり、カーボン・ナノチューブ(Carbon Nanotube)のような炭素原子が円筒の網目状に繋がった構造になる」と予測している。そのほかの候補技術としては三次元のシリコンチップ、光学コンピュータ(Optical Computing)、DNAコンピュータ、量子コンピュータ(Quantum Computer)などを挙げている。

 

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カーボンナノチューブの構成  (出展:Wikipedia)

 

Kurzweilによると「人間の脳は1,000億個のニューロンからなり、一つのニューロンは1,000個の接点を持ち、ここで毎秒200回の計算が行われている」と説明した。更に、「2023年頃には人間の頭脳に匹敵する性能のコンピュータが千ドルで手に入るようになり、2045年ころには特異点到達する」と予測している。目の前の技術を深く掘り下げることは必要不可欠であるが、時には、マクロなスケールでコンピュータを俯瞰することも必須である。講演が終わると会場の全員が立ち上がり、しばらく拍手が鳴り止まなかった。