Archive for the ‘オンデマンド’ Category

生活が横着になったシリコンバレー、人工知能を使った宅配サービスが大ブーム!

Friday, April 17th, 2015

シリコンバレーでベンチャーキャピタルの投資が過熱している。1999年のインターネットバブルの投資金額を上回り、第二のブームになっている。インターネットバブルでは、ウェブサービスが中心だったが、今回はリアル社会のサービスが中心となる。その中で、人工知能を駆使した宅配サービスが波紋を広げている。宅配は日本企業の得意分野であるが、ITを駆使したシステムから、学ぶところが少なくない。宅配サービスで横着になった生活をレポートする。

g408_instacart_01

大型投資の衝撃

生鮮食料品宅配サービスを提供する新興企業「Instacart」は、昨年12月、大手ベンチャーキャピタルから、2億2千万ドル (264億円) の投資を受けた。ベンチャーキャピタルの投資が活発だが、誕生まもない新興企業にこれだけの規模の投資をするのは異例。Instacartは生鮮食料品を”オンデマンド”で配送する。スマホ専用アプリ「Instacart」から、商品を注文すると、宅配スタッフ(Shopperと呼ばれる) が指定したスーパーマーケットで買い物をして、自宅まで届けてくれる (上の写真)。宅配費用は安く、配送時間を一時間ごとに指定できるのがうれしい。

g408_instacart_02

スーパーマーケットで販売されている商品を購買

このサービスが大人気で、筆者もスーパーマーケットに買い物に行く代わりに、スマホで宅配サービスを利用するようになった。操作は簡単で、アプリで行きつけのスーパーマーケット「Whole Foods」を選ぶと、ホーム画面に商品一覧が表示される (上の写真、左側)。野菜やフルーツの他に、食肉や魚介類 (上の写真、右側)、デリ、牛乳や卵、食パン、パスタ、調味料など、スーパーマーケットで販売されている商品が全て揃っている。通常のショッピングアプリと同じで、アイコンににタッチし、個数を指定して商品をカートに入れる。

g408_instacart_03

希望する時間帯を一時間単位で選ぶ

商品の選定が終わると、カートアイコンにタッチして、チェックアウトする (上の写真、左側)。決済は登録しているApple Payででき、新興企業のサービスでも安心して利用できる。従来通り、クレジットカードを登録して、支払いするオプションもある。最後に、配送時間の指定画面で、希望する時間帯を一時間単位で選ぶ (上の写真、右側、別の日の事例)。

通常1~2時間程度で配送される。商品は店舗と同じ価格に設定されている。配送手数料は3.99ドルだが、混雑時は4.99ドルかかる。また、購買金額が35ドル以下の場合は、配送手数料が7.99ドルに跳ね上がる。日本では時間単位の同日配送は当たり前だが、シリコンバレーではInstacartが初めて手掛けた。明日朝のシリアルを切らしたときも、直ぐに注文でき、今では手放せないサービスになった。

g408_instacart_04

注文した商品はInstacart専用のショッピングバッグで、時間通りに届けられた (上の写真)。但し、注文したブロッコリーは在庫が無く、その旨をボイスメッセージで連絡を受け、後ほど、この代金が払い戻された。米国のサービス品質は必ずしも良くないが、商品が時間通りに届き、欠品についての細かい対応に、正直驚いた。

柔軟な勤務体系がサービス品質向上の鍵

宅配スタッフはJimという名前の男性で、自分の自動車を運転して商品を届けてくれた。JimはWhole Foods店舗を担当する配達員で、スマホで注文を受け、それに従い買い物をし、商品を顧客に届ける。Jimは毎週五日程度勤務し、当日は10時から14時までと、16時から18時まで勤務していた。このように、宅配スタッフは自分の都合のいい時間帯だけで仕事ができる。

宅配スタッフの多くは20歳代を中心とする、若い労働層が中心になる。しかし、Jimは60過ぎの男性で、仕事を引退して宅配スタッフをしているようであった。自動車はプリウスで、身なりや話し方からすると、生活に困っている様子ではなかった。引退後も社会にかかわっていたい、という雰囲気を感じた。Instacartは柔軟な勤務体系を提供し、これが優秀な人材を惹きつける。シリコンバレーでの働き方が大きく変わった。

g408_instacart_05

配送員になるプロセス

宅配スタッフを希望する人はInstacart専用サイトから応募する。応募者は履歴などの調査の後、面接と教育を受け採用される。上の写真は応募のプロセスを示したもので、氏名などの基本情報の他、希望の勤務体系を記載する。ここで、仕事をする曜日や勤務時間などを指定する。また、希望する勤務地域を指定できる。自動車を持っていればその情報を記載する。ウェブサイトで応募し、簡単に宅配スタッフになれる。

Instacartはパートタイムとは異なる。パートタイムでは、会社が勤務時間を指定するが、Instacartは従業員が勤務時間を選択できる。好みの時間を自由に選択できるという意味で”アラカルト勤務”とも呼ばれている。自由度が大きい勤務体系が、今の時代の労働者にアピールしている。

ソフトウェアの力にかかっている

一方、雇用側は、配送スタッフの数が曜日や時間帯により大きく変わるため、需要に合わせた労働力の確保が新たな課題となる。マニュアルでの調整では間に合わず、人工知能など、ソフトウェアを駆使して最適化する。待ち時間を最小限にし、顧客へ1時間以内に配送できるシステムの構築は、ソフトウェアの機能にかかっている。配送員の位置情報をGPSで把握し、日時や天候などの要因を勘案し、最適なロジスティックスを構成する。パターンの数が膨大で、Machine Learningなどの手法を活用し、過去の事例を学習し、労働力の最適化を図っている。

システムは学習を続けている

Instacartのシステムは完成している訳ではなく、まだ学習を続けている。Instacartの宅配スタッフは正社員ではなくコントラクターで、4000人いるとされる。宅配スタッフの給与は、配送件数と商品アイテムの数から算出される。Instacartは時給25ドル程度としているが、閑散期には時給10ドル程度ともいわれている。顧客からの注文が少ない時は、配送員は自動車の中で待機し、次の注文を待つことになる。配送員は多めに配置され、バッファーとしての機能も担っているようだ。

Uberのモデルをコピー

Instacartのシステムは、合法なハイテク白タク「Uber」のモデルをコピーしたものである。Uberはライドシェアと呼ばれる運輸ネットワークを展開し、45か国130都市でビジネスを展開している。ドライバーは、自家用車を使い、自分の都合に合わせ働くことができる。この労働形態がドライバーに訴求し、サンフランシスコ地区ではタクシードライバーが、雪崩を打ってUberに移動している。

g408_instacart_06

Uberモデルをレストランの出前に応用

宅配サービスは、スーパーマーケットの買い物だけに留まらない。出前サービス「DoorDash」が破竹の勢いで事業を拡大している。同社は、地域のレストランと提携し、出前サービスを展開している。スマホ専用アプリから、レストランの料理を注文すると、DoorDashの宅配スタッフ (Dasherと呼ばれる) が届けてくれる。

アプリには近所のレストランが掲載され (上の写真、左側)、希望のレストランのメニューから料理を選ぶ (同右側)。この日は昼ごはんに、クレープを注文しているところである。料理を選んで、チェックアウト画面で支払いをする。ここでもApple Payで決済でき、安心して利用できる。料理の値段は同じだが、配送手数料が一律に5.99ドルかかる。チップはオプションでパーセントボタンを押して支払う。

注文が終わると、アプリには配送プロセスが表示される。11:02に注文を受け付け、到着予定時刻は11:49と表示された。実際には11:38に料理が届けられ、配達されるまでの時間は36分だった。30分程度で料理が届くので、一回使い始めると、止められなくなった。

g408_instacart_07

レストランで食事するより早い

この日は「Crepevine」というレストランでSiena CrepeとPattaya Crepeを注文した (上の写真)。サラダとスプーンやフォークがついてきて、そのまま食事ができる。ここは大人気のレストランだが、予約は取らず、店では席が空くのを待たなくてはならない。DoorDashを使うと30分程度で食事が届くので、レストランで食事するより早く食べられる。

出前スタッフは女子学生で、自分の車で配送してくれた。女性は時間がある時に、DoorDashで出前サービスをしているとのこと。忙しそうでゆっくり話を聞けなかったが、学費や生活費を稼ぐため、働いている様子であった。

g408_instacart_08

インフラのコストは最少

出前で使う自動車には、フロントグラスにDoorDashのプレートが付いているだけで、特別な仕様にはなっていない。また、配送スタッフはDoorDashのTシャツを着ているが (上の写真)、私服で来る人も少なくない。つまり、DoorDashは、出前サービスのインフラには、ほとんどコストをかけていない。ハードウェアにはお金をかけないで、ITを駆使して身軽に配送事業を展開するのが、いまのビジネスモデルになっている。ただ、DoorDashのケースでは、調理というプロセスが入るので、ロジスティックスが格段に複雑となる。調理時間や間違った料理への対応などが必要となり、人工知能の手法であるMachine Learningを使っていると言われている。

g408_instacart_09

Googleがベンチャーに苦戦

ベンチャー企業の登場で、Googleが苦戦している。Googleは、独自の配送サービス「Shopping Express」を展開しているが、伸び悩んでいる。Amazon対抗のサービスとして開始したが、実際には、小回りの利くベンチャー企業との競合が厳しくなっている。Shopping Expressで注文すると、配送は翌日で、しかも配送時間帯は午前・午後・夜の枠から選ぶこととなる。同日配送や一時間ごとの指定ができない。配送手数料も4.99ドルと、やや高めの設定である。

そもそもShopping Expressは、生鮮食料品を取り扱っておらず、衣料品や家庭用品などが中心となる。そのため、毎日利用するのではなく、使用頻度はぐっと低くなる。ずっとShopping Expressを使ってきたが、今ではInstacartに乗り換えた格好となっている。上の写真はShopping Express専用車両で、通りで頻繁に目にする。インフラにコストがかかっており、Googleのサービスが重厚長大で、時代の波に乗り遅れているのを感じる。

シリコンバレーの生活パターンが変わる

Instacartはニューヨークなど15の主要都市で事業を展開している。シリコンバレーでは多くの家庭がInstacartを利用している。また、DoorDashはサンフランシスコを中心に、7都市でサービスを展開している。シリコンバレーではDoorDashが大人気で、パロアルトでは4軒に1軒が利用しているといわれている。前述の通り、人気レストランで食事を注文するより、出前サービスのほうが早く食事できる。ただ、DoorDashの出前料金は少し高いので、筆者宅では友人と一緒にレストランに行く代わりに、DoorDashを利用している。出前サービスで料理を注文すると、自宅でくつろいで食事ができる。

シリコンバレーで働き方も大きく変わった。パートタイムとして企業に就職する代わりに、InstacartやDoorDashなどで、自分の都合のいい時間に働くスタイルが広まってきた。類似のサービスが数多く登場しており、これを本業としている人も出始めた。複数の仕事を掛け持ちし、時給が最大になる組み合わせで働く。稼ぐ人であれば、年収6万ドル (720万円) になる人もでてきている。Uberが仕掛けたビジネスモデルが、幅広い分野で波紋を広げている。

企業側のビジネスモデル

大手ベンチャーキャピタルがInstacartに大規模な投資をし、DoorDashに注目しているのは、このビジネスモデルを高く評価しているため。Instacartで買い物をしても、価格はスーパーマーケットと同じ設定となっている。これが可能となるのは、Instacartがスーパーマーケットから、販売コミッションを貰う仕組みとなっているため。つまり、スーパーマーケットとしては、Instacartを新しい販売チャネルとして位置づけ、新規顧客を呼び込み売り上げが増えるとみている。

一方で、大手スーパーマーケット「Safeway」で買い物をすると、商品価格が15%増しとなる。これは、コミッションを貰えないケースで、追加料金がInstacartの事業収益となる。実は、Safewayは独自の配送サービスを展開しており、Instacartとは競合する関係にある。

g408_instacart_10

DoorDashも同じ構造で、レストランからコミッションを貰っているといわれている。レストラン側としては、DoorDashの出前サービスが新たな販売チャネルで、売り上げが伸びるとみている。事実、レストラン側としては、出前サービスで売り上げが伸びており、重要な新規事業として力を入れている。ただ、消費者の視点からは、レストラン出前サービスが乱立状態で、受け取る料理の品質に大きな幅があり、レストランの選択には注意が必要。上の写真はクレープを注文したCrepevineで、ウェブサイト前面でDoorDashを紹介し、出前サービスを積極的にプロモーションしている。

高齢化社会の重要なインフラ

このモデルは日本の都市部での配送システムに応用できるかもしれない。日本では既に大手企業の宅配サービスが充実しているが、もっとフットワークの軽いモデルを構築できれば、誰でも気軽に安い値段で利用できる。特に、自由に買い物に行けないシニア層向けに提供できれば、高齢化社会の重要なインフラとして機能する。これらのサービスを支えているのがMachine Learningなど人工知能で、IT企業の果たす役割が重要となる。

Googleの事業多角化、ケーブル・テレビ市場へ参入

Friday, August 3rd, 2012

Googleは先週、Kansas City (カンザス州) のプレス・イベントで、Google Fiberの詳細を明らかにした。Google Fiberとは、Googleが試験的に運営する、光ケーブルによるブロードバンド・サービスである。Googleはこの中で、Google Fiber TVという名称で、ケーブル・テレビ事業を展開することを発表した。これによりGoogleの事業多角化に拍車がかかってきた。

g276_google_fiber_01

Google Fiberとは

Google FiberとはGoogleブランドのブロードバンド・サービスで、利用者は高速にインターネットにアクセスでき、併せて、ケーブル・テレビを見ることができる。Googleは事前にGoogle Fiber導入を希望する都市を募り、1100の都市から応募があった。Googleはこれらの都市から、2011年3月に、Kansas City (カンザス州) を選定し、Google Fiberを展開することを表明している。その後、2011年5月には、Kansas City (ミズーリ州) を選定し、この二つの都市でGoogle Fiberを展開してきた。上述の通り、先週、Googleはブロードバンド・サービスに加え、ケーブル・テレビを展開することを明らかにし、GoogleがComcastなど既存のケーブル・テレビ企業と競合する構図が鮮明になった。

Google Fiberは三つのパッケージを提供する。「Gigabit + TV」というパッケージでは、高速インターネットとケーブル・テレビが提供される。高速インターネットでは、通信速度は1Gbps (Giga Bit per Second) で、通常のブロードバンドの100倍の性能を持つ。ダウンロードだけでなく、アップロードも1Gbpsで、シンメトリックな性能が特徴である。ケーブル・テレビでは、主要ネットワークを含む100局超のチャンネルが提供される。

このサービスでGoogleが提供する機器は、TV Box (セットトップ・ボックス、上のスクリーンショット左手前、出展はいずれもGoogle)、Network Box (EthernetとWiFi付き ルータ、同左端上段)、Storage Box (2TBのデジタル・ビデオ・レコーダ、同左端下段)である。またリモコンとしてGoogleブランドのタブレットであるNexus 7 (手前中央)、及び、クラウド・ストレージとしてGoogle Drive (1TB) が添付されている。「Gigabit + TV」の料金は月額120ドルである。「Gigabit Internet」は、上記からケーブル・テレビを除く、ブロードバンド・サービスだけで、月額料金は70ドルである。また「Free Internet」として、現行ブロードバンドに匹敵するサービスを、一時金300ドルで使うことができる。

g276_google_fiber_02

Googleは、Google Fiberを開発した理由を、次ぎのように説明している。市場ではコンピュータ性能 (上のグラフ・黄色の線) や、ストレージ容量 (同赤色の線) が伸びるなか、ブロードバンド通信速度(同緑色の線) は、2000年から停滞したままで、今後もこの状況が続くと予想される。Google Fiberを導入することで、ブロードバンド通信速度もコンピュータやストレージと同じカーブで性能が向上する (同青色の線)。これによりGoogleはインターネット上の情報を幅広く利用者に届けることができるとしている。

g276_google_fiber_03

Googleのケーブル・テレビ

Google Fiber TVは、光ケーブルを利用した、Googleブランドのケーブル・テレビである。Google Fiber TVでは、テレビ番組がグリッド形式で表示される (上のスクリーンショット) 。グリッド上でみたい番組をクリックするとテレビ放送が始まる。リモコンの検索ボタンを押すと、テレビ番組検索画面が表示され、Smart Recordボタンを押して、番組を録画予約する。Google TV Fiberは500時間のHD番組を記録することができる。

g276_google_fiber_04

Google Fiber TVでは、タブレットやスマートフォンをリモコンとして使える。AndroidのほかにiPhoneをサポートしている。Nexus 7を使って、番組を音声で検索することができる。検索結果はTV Showsのカラムに表示され、見たい番組にタッチすると番組が始まる。配信先のテレビを指定することができ、Play – on Living Roomボタンにタッチすると、リビングのテレビで番組が始まる。Google Fiber TVで見ている番組の続きを、タブレットで見ることができる。上のスクリーンショットがその様子で、テレビで見ていたSesame Streetの続きを、Nexus 7で見ることができる。Nexus 7では、テレビ番組を見ながら、ソーシャル・ネットワークにコメントを投稿できる。

g276_google_fiber_05

光ファイバー施設とGoogleの狙い

光ファイバー設置工事については、Googleはユニークな方式を取り入れている。光ファイバー設置は、市民の申し込みが多い順に行なわれる。また規定の申し込み数に達した地域だけに光ファイバーが施設される。Kansas City (カンザス州) での申し込み状況は上のグラフィックスの通りで、緑色の地区は申し込み目標数を達成し、光ファイバーが設置される。黄色の地区は申し込み目標数に達成していない地域を示している。Kansas City (ミズーリ州) については、光ファイバー施設工事は2013年初頭から開始される。Google Fiberで、Googleは既存ケーブル・テレビ会社と直接競合することとなる。Googleがケーブル・テレビ事業に進出するのは、インターネットと消費者を結ぶ通路を自らコントロールし、消費者が検索やYouTubeなど、Googleクラウドに高速にアクセスするため。更に、Googleがケーブル・テレビ事業を展開することで、テレビにおける消費者の挙動を把握し、広告配信に利用することができる。Googleはタブレット事業に続き、事業多角への歩みを速めている。