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Apple Watchを見据えたデジタルヘルス、臨床試験基盤「ResearchKit」で医学が進歩!

Friday, April 3rd, 2015

センサーやウエアラブルや人工知能の進化で、デジタルヘルスが転換点に差し掛かっている。Appleは昨年9月、「Health」アプリを投入し、健康管理市場へ参入した。先月は、臨床試験基盤「ResearchKit」を発表し、医療研究を下支えするフレームワークを投入。来月にはApple Watchが登場し、健康管理で重要な役割を担う。Appleのデジタルヘルス戦略のストーリーが繋がってきた。

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臨床試験を支援するサービス

医療現場でResearchKitが話題になっている。ResearchKitは医療機関向けの技術で、これを使えば簡単に臨床試験アプリを開発できる。一方、臨床試験に参加するモニターは、iPhoneでこのアプリを稼働し、身体情報を記録する。具体的には、臨床試験アプリは、健康管理アプリ「Health」が収集したデータを読み込み、モニターのアクティビティや健康状態を収集する。医療機関はこれらデータを解析し、医療情報に関する知見を得る構造となっている。

既に、ResearchKitで開発された臨床試験アプリが登場している。Stanford Medicine (スタンフォード大学医学部) は、心臓の健康状態を解析するアプリ「MyHeart Counts」を開発した (上の写真、アプリ専用サイト)。このアプリはモニターの日常生活をモニターすることで、生活習慣と心臓疾患の関係を医学的に解明することを目標にしている。更に、心臓疾患を予防するためには、どのような生活を送るべきかを理解する。

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モニターになってみた

筆者もこのアプリを使った臨床試験に参加した (上の写真左側、アプリ初期画面)。こう書くと仰々しいが、誰でも簡単に臨床試験に参加できるのがこのアプリの最大の特徴だ。アプリで研究目的や注意事項を読み (上の写真右側)、同意書に名前をタイプするだけで手続きが完了。スタンフォード大学病院に行って説明を受ける必要は無く、全てアプリで完結する。使用できるスマホは、iPhone 5s、iPhone 6、及びiPhone 6 Plusだが、既にApple Watch向け機能も実装されている。モニターは、身体情報を大学病院に”寄付”するが、その見返りとして、心臓の健康状態を把握できる。

モニターはアプリが指定するタスクを実行し、アンケート調査に回答する方式で進む。アプリはiPhoneセンサーでモニターの動きを自動で把握し、収集したデータから、行動パターンや心臓の健康状態を理解する。収集したデータは暗号化して送信され、名前はランダムに発生したコードで置き換えられる。身体情報を扱う研究なので、セキュリティー機能に配慮されている。ただ、収集したデータはスタンフォード大学以外でも使われる可能性ありとの記述が気になったが、ここは目をつぶってサインした。

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アプリが読み込むデータソース

試験開始前に、アプリが読み込む身体情報のデータソースを指定する。上述の通り、モニターの行動は、iPhoneに搭載されている各種センサーで、自動的に収集される。センサーが収集したデータはHealthに格納され、これをアプリが利用する構造となっている。上の写真左側がその設定画面で、Healthに格納しているデータの中で、アプリがアクセスできる項目を指定する。身長や体重などの基本情報へのアクセスを許諾した。また、血糖値や血圧など、健康診断情報へのアクセスも許諾した。最後に、アンケート調査に回答する。質問は、健康状態から家族の病歴まで、広範囲に及ぶ。上の写真右側がアンケート調査の画面で、ここでは仕事と運動量についての質問に回答している。

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データ計測は自動で行われる

試験中はiPhoneを携帯して生活するだけで、何も特別な操作は必要ない。iPhoneはズボンのポケットに入れるよう指定され、加速度計がアクティビティーや歩数を自動で計測する。一日が終わると、前日の睡眠時間など、簡単な質問に回答する。これで計測が終了し、その結果が円グラフで表示される (上の写真左側、下段)。円グラフの色が、アクティビティー種目 (睡眠、座ってる状態、運動している状態など) を示す。更に、一日の歩数が示される。アクティビティーや歩数は、上述の通り、健康管理アプリHealthで収集される。上の写真右側がHealthアプリの「Step」画面で、一日の歩行数を示している。アプリはここから歩数などのデータを読み込む。

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心臓年齢や病気に罹る確率

計測は一週間続き、最後に「ストレステスト」が行われる (上の写真左側)。これは名前の通り、心臓に負荷をかけ、心拍数を測定し健康状態を算定するものである。モニターは三分間、できるだけ早く歩き、アプリはその歩行距離を記録する。Apple Watchや他のウエアラブルで、歩行中と終了三分後の心拍数を計測する。アプリは年齢、性別、身長・体重に応じた歩行距離や心拍数をベースに、モニターのフィットネスを算定する。まだApple Watchは出荷されていないので、今回は歩行距離だけが使われた。

アンケート調査「Heart Age」に回答すると、モニターの心臓年齢を算出する (上の写真右側、サンプル)。心臓の健康年齢と病気 (心臓疾患と脳梗塞) にかかるリスクの割合が表示される。このケースでは、62歳のモニターの心臓年齢は60歳と若く判定されている。病気発症の確率は6%と、目標値 (7%) よりいい結果となっている。(筆者のケースでは、病気に罹るリスクが標準より高いと判定された。健康状態をデジタルに示されるとインパクトが大きい。これを契機に、食生活の改善や運動の強化を考えているところ。)

運動を促すコーチング

試験は7日間続き、これが1セットとなり、三か月ごとに繰り返される。一週間の試験が終わると、アプリはモニターに対し、毎日運動するよう「コーチング」を行う。三か月後に、再度、同じ試験を一週間にわたり行う。コーチングはゲームやメッセージなどで、アプリはどの方式が一番効果があるかを検証する。但し、筆者のケースでは、一週間のテスト期間が終了したが、コーチング情報は表示されていない。

大反響を呼んだ臨床試験アプリ

スタンフォード大学は、アプリを公開して24時間で、1万人が登録したと公表した。これだけの規模のモニターを募るには、通常、一年の歳月と50の医療機関が必要とされる。iPhoneアプリとHealthで臨床試験ができるようになり、多くのモニターを短期間で集めることができた。収集したデータはそのままクラウドに記録される。従来の紙ベースの臨床試験と比べ、はるかに効率的に知見を得ることができると評価している。

臨床試験アプリへのコメント

一方、ResearchKitで開発したアプリを使った臨床試験に対し、様々な意見が寄せられている。モニターから得られるデータの質が議論となっている。iPhone利用者は高学歴・高収入という統計情報があり、臨床試験モニターはデモグラフィックスを正しく反映していないのでは、という疑問の声も聞かれる。その一方で、FDA (米国食品医薬品局、新薬などの認可をする機関) はスマホを使った臨床試験について肯定的な評価をしている。アプリを使った臨床試験で、医療技術が進むことを期待している。因みに、このアプリは医療行為は行わないため、FDAの認可は不要である。

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パーキンソン病研究アプリなど

MyHeart Counts以外にも、ResearchKitで開発されたアプリが登場している。その一つがパーキンソン病研究のためのアプリ「mPower」で、University of RochesterとSage Bionetworksにより開発された。アプリで敏捷性、バランス、記憶力、足並みを測定することで、日常の行動と病気の関係を理解する。モニターはアプリを起動し、人細指と中指で画面を早くタップしたり (上の写真)、マイクに向かって長く「アー」と発声する。俊敏性や発声とパーキンソン病の関係を解析する。研究に寄与するだけでなく、モニターは自身の病気の予兆を早く知ることができる。また、糖尿病研究のためのアプリ「GlucoSuccess」や乳癌研究のアプリ「Share the Journey」などもリリースされている。

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IT企業はデジタルヘルスに向う

Googleは2014年7月、人体の研究を行うプロジェクト「Baseline Study」を開始した。Baseline Studyは175人の健康なモニターから遺伝子と分子情報を収集し、健康な人体のベースライン情報を把握する。心臓疾患や癌の兆候を早期に発見することを目的とする。身体情報はウエアラブルで収取される。Googleが開発したコンタクトレンズを使うと、血糖値をリアルタイムで測定できる。測定したデータは、個人の遺伝子情報と共に、人工知能を使って解析される。健康な人体を定義し、医師は病気予防に重点を置いた措置が可能となる。他に、Microsoft、IBM、Samsungなども、デジタルヘルス分野で技術開発を加速している。IT企業がデジタルヘルス事業を展開する背後には、テクノロジーの進化がある。プロセッサーやセンサーや人工知能の技術開発が進み、低価格で生体情報を収集・解析できるようになった。

AppleはResearchKitで、Healthやウエアラブルを束ねるアプローチを取っている。ResaerchKitを使うと、病院や製薬会社は、簡単に臨床試験を展開できる。現在は、iPhoneで身体情報を収集するが、やはり最適なデバイスはウエアラブルで、Apple Watchを見据えた設計となっている (上の写真)。Apple Watchの機能は心拍数の計測に留まるが、将来は、幅広い生体情報を収集すると期待されている。消費者にとってはResearchKitは無縁の存在であるが、医療現場では医学研究にインパクトを与える画期的なツールとして評価が高まっている。今年はデジタルヘルス市場でブレークスルーが起ころうとしている。

Apple Watchの健康管理機能は意外に普通?既に次期モデルが話題に!

Friday, September 12th, 2014

Appleはウエアラブル端末「Apple Watch」を発表。お洒落なデザインで話題となっているが、健康管理に限ると、画期的な機能は登場しなかった。Apple Watchは高機能ウエアラブルと言われてきたが、基本機能の搭載に留まった。しかし、これは出発点で、次期モデルに搭載される高機能センサーが、既に話題となっている。

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二つの健康管理アプリ

Apple Watchは健康管理機能を二つのアプリで提供。それらは「Activity App」 (上の写真左側、出典はいずれもApple) と「Workout App」 (同右側)。Activity Appは活動状態をモニターする。アプリは三つの機能で構成され、活動状況がグラフで表示される。「Move」は消費カロリー量を、「Exercise」は運動量を、「Stand」は立っている時間を示す。一日の目標値を設定し、それに到達すると円グラフとなる。

Standとは聞きなれないコンセプトであるが、一時間のうちに一回以上立ち上がった回数を記録。仕事中に椅子に座ったままでなく、立ち上がることを奨励している。最近では、長時間座っていることは、喫煙と同じくらい健康に悪いと言われている。Standは、一日12時間のうち、各時間で立ち上がることを目標値としている。

Work Appはトレーニングのためのアプリ。ランニング、ウォーキング、サイクリングなどで使う。アプリは過去の履歴を参照し、目標を自動で設定する。目標値は走行距離や走行時間など。勿論、利用者がマニュアルで変更できる。トレーニングをしている最中は、途中経過情報を表示し、目標を達成すると本物そっくりのバッジを貰える。

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センサー情報を解析

Apple WatchはiPhoneとペアリングして利用する。Apple Watchは加速度計と光学センサー (上の写真、四つの円形の部分) を搭載しており、それぞれ、体の動きと心拍数を計測する。iPhone側に搭載されているGPSとWiFiで位置を把握する。またiPhone 6に搭載されるM8コプロセッサーは気圧差の測定ができ、垂直方向の移動(階段の上り下りなど) を測定できる。Activity AppやWorkout Appは、これらセンサーで収集した情報を利用する。アプリで解析した情報は健康管理プラットフォーム「HealthKit」で管理され、医療機関と共有することができる。

光学センサーに特徴あり

Apple Watchは、上述の通り、背面に光学センサーを四基搭載している。センサーは可視光と赤外線のLED光源を持ち、フォトダイオードで反射波を読み取る。腕表面の血管に光をあて、その反射波から心拍数を測定する。心拍数測定では、ECGのように電気信号を読み取るのが一般的で、病院などで使われている。ウエラブルでは、心拍数測定に、可視光か赤外線のどちらかを使う。これに対しApple Watchは、両者を併用する点に特徴がある。

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リアルタイムで心拍数が測れるか

Apple Watchは腕の血管の血流を読み取り、心拍数を算定する。高機能スマートウォッチBasisも同じ方法で心拍数を測定する。但し、Basisは赤外線だけでセンシングする。Basisは心拍数を測定する際は、静止状態である必要がある。運動しながら測定することはできない。つまり、トレーニング中にリアルタイムで心拍数を把握できない。Appleは前述の通り、二つの光源で心拍数を測定する。Appleは詳細機能については公開しておらず、運動しながらApple Watchで心拍数を測定できるのか、関心が集まっている。因みに、BasisはIntelに買収され、高機能ウエアラブルでは、Apple対Intelの構図が生まれた。

Apple Watchは心拍数の測定結果をコミュニケーションで利用している。これはDigital Touchという機能の一つで、利用者の心拍を相手に送ることができる (上の写真)。受信者は送信者の心臓の鼓動を腕で感じることができる。離れているカップルが使うのか、今の気持ちを振動で伝えることができる。

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以外に標準的なセンサー

これらの機能は概ね他社から提供されており、革新的センサーと言う訳ではない。なぜ、Apple Watchは標準機能に留まったのか、議論が起こっている。その一例がスリープトラッカー。これは睡眠状態をモニターするセンサーで、FitBitなど多くのウエアラブルに搭載されている。Apple Watchにスリープトラッカーが搭載されなかった理由は、バッテリー容量と言われている。バッテリーは一日しかもたず、毎晩充電する必要がある。このためApple Watchをつけたまま寝ることはできない。一方、Appleは睡眠研究の第一人者Roy Raymannを採用し、開発を重ねている。この問題が解決すると、スリープトラッカー機能が搭載されると言われている。

センサーよりファッション性を優先

Apple Watchは、フィットネス情報だけでなく健康情報を収集し、HealthKitに格納する。Appleはこれらの情報を病院と共有し、治療に役立てる構想を打ち出している。そのためには、Apple Watchで身体情報を幅広く収集する必要がある。前述の通り、このための高機能センサーは、搭載が見送られた。今回は光学センサーで心拍数計測だけに留まった。これはファッション性を優先し (上の写真)、高機能センサーを無理やり実装することは避けたためと思われる。まずは、ファッションや使い易さを優先したデザインとなっている。また一説では、AppleはFDA (アメリカ食品医薬品局) の認可が必要な医療機器としてのセンサーを、あえて搭載しなかったとも言われている。

次期モデルで血圧、心電図、血糖値などの測定ができるのか、すでに議論となっている。今回の発表で、Apple Watchのスタートラインが明らかになり、これからの技術進化に期待が寄せられている。

Apple iWatchはスリープトラッカー搭載か?睡眠測定センサーは生活必需品!

Friday, August 15th, 2014

健康管理ウエアラブルは、運動量の計測に加え、睡眠の質をモニターする。Appleが発表予定のiWatchも、睡眠状態を計測するセンサーを搭載すると噂されている。ベンチャー企業からは、スリープトラッカーの登場が相次ぎ、睡眠を解析する技術が急速に進歩している。

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Appleで睡眠の研究が始まる

Appleは昨年、大手家電メーカーPhilipsから、睡眠研究科学者Roy Raymannを採用した。Raymannは睡眠研究の第一人者で、ウエアラブルやセンサーの知識も豊富で、睡眠の質を向上する技法の研究を行ってきた。iWatchは健康管理とフィットネスのためのウエアラブルと言われている。Raymannの移籍により、iWatchにスリープトラッカーが搭載される可能性がぐんと高くなった。

眠りと環境をモニターする

新興企業からもユニークなスリープトラッカーが登場している。Helloはサンフランシスコに拠点を置き、スリープトラッカー「Sense」を開発している (上の写真)。Senseは睡眠の状態と、寝室の環境を測定し、安眠を得るためのアドバイスを行う。Senseは睡眠の状態として、深い眠り、浅い眠り、起きている時間などを計測する。同時に、Senseは、騒音、明るさ、温度、湿度、微粒子などの環境状態を測定する。両者のデータから睡眠に最適な条件を把握し、安眠のためのアドバイスを行う。また、Senseにはスマートアラーム機能があり、睡眠サイクルを考慮して、最適なタイミングで目覚ましを鳴らす。浅い眠りの時に、爽快に起床でき、上の写真のようにSenseに手をかざすと、目覚ましが止まる。SenseはクラウドファンディングKickstarterで230万ドル募り話題となった。製品価格は129ドル (プレオーダ) で、出荷は2014年11月の予定。

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Senseの利用方法

製品は三つのコンポーネントから構成される。前述の「Sense」は球状センサーで、ナイトスタンドに置いて、寝室の環境を測定する。「Sleep Pill」は小型センサーで、枕に装着し、睡眠の状態を計測する。このSleep Pillが眠りの質を把握する。これらセンサーをスマホの専用アプリで制御する。上の写真はSenseをテーブルに置き、Sleep Pillを枕に取り付け (白色の円形のデバイス) 使用している。

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Senseは測定結果を専用アプリに表示する。上の写真がその様子で、睡眠スコアーを「Sleep Score」として表示 (左側画面)。スコアーは良く眠れたかの指標で、寝室環境、屋外要因、睡眠の質が勘案される。寝室が最適な温度で、外部からの騒音が無く、安眠できたかが、100点満点で示される。下段のグラフは眠りの深さを示している。グラフが途切れている箇所は、夜中に目覚めたことを示す。Senseは睡眠中の騒音を録音するため、再生して、夜中に目覚めた理由を確認できる。更に、Senseは睡眠を妨げた要因を解析する。右側画面がその様子で、室温が高すぎたと結論付けている。Senseは利用者の好みの温度を学習し、最適な室温を推奨する。

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Senseは数多くのセンサーを搭載

枕に装着するSleep Pill (上の写真、中央円形のデバイス) は6軸加速度計とジャイロを内蔵し、睡眠中の動きを検知する。センサーは動きから、眠りについたことを把握し、深い眠りなのか、寝返りを打っているのかを認識する。目覚めも自動で検知する。二人で一緒に寝ている時は、パートナーもSleep Pillを装着できる。相手がいびきをかいたり、寝返りを打つことを検知し、睡眠を妨げている要因を把握する。

Senseは五種類のセンサーを搭載。ライト・センサーは寝室の明るさを測定。寝室が暗い方が安眠できるとされている。温度と湿度センサーで温度と湿度を測定し、利用者の好みの条件を学習する。微粒子センサーは寝室内の微粒子を検出。花粉などを検知でき、花粉症対策を行うことができる。距離センサーで利用者の手の動きを検出し、アラームを止める。SenseはBluetooth LEでスマホと通信し、計測データを送信する。SenseとSleep Pill間はANTで交信する。因みにSleep Pillは防水加工されており、誤って枕カバーと一緒に洗濯しても壊れない。

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スマホで睡眠状態をモニター

専用センサーを買わないで、スマホの加速度計を使ったスリープトラッカー・アプリで、睡眠状態をモニターできる。Azumioはカリフォルニア州パロアルトに拠点を置くベンチャー企業で、デジタルヘルス・アプリを開発。数多くのアプリを提供しているが、その中で「Sleep Time」アプリは睡眠状態をモニターする (上の写真)。アプリで目覚ましをセットし、スタートボタンを押して利用する (左側画面)。スマホは枕の下に、ディスプレイ面を下にして置いておく。アプリは、床に入ってから朝目覚めるまで、利用者の動きで睡眠状態をモニターする。測定する項目は、浅い眠り、深い眠りとREM睡眠、起きていた時間など (右側画面)。アプリはこのデータから、眠りの効率を表示する。上のグラフでは76%であるが、快適な眠りには85%以上が必要とされ、改善の余地があることを示している。

このアプリを使っているが、睡眠の質を客観的に把握でき、快眠できなかったときは、その原因を探ることもできる。今まで闇の部分であった睡眠の解析をアプリで手軽に行え、健康管理での大きな前進となった。一方、明らかに間違いと分かる計測結果が表示されることもあり、スマホで計測することの限界も感じる。精度の高いデータを求めるには、Senseのような専用センサーが必要となる。睡眠解析は健康管理の重要な部分で、スリープトラッカーが日常生活の必須機能になっていることを感じる。

センサーで食事の栄養価を解析、画期的ウエアラブルはクラウドファンディングで生まれる!

Friday, August 8th, 2014

医療やフィットネス向けウエアラブルの登場が相次いでいる。新製品の殆どがクラウドファンディングで生まれている。ベンチャー・キャピタルから出資を受ける代わりに、クラウドファンディングで消費者から資金を募る。ウエアラブルやセンサーとの相性が良く、ヒット商品はクラウドファンディングで生まれている。

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ハンドヘルド光学センサー

クラウドファンディングから画期的な光学センサーが誕生した。これは「SCiO」と呼ばれ (上の写真)、イスラエル・テルアビブに拠点を置くConsumer Physicsにより開発された。SCiOはハンドヘルド光学スキャーで、物質の化学組成を読み取る。食物、植物、医薬品、オイル、燃料、プラスティック、木材等などにかざすと、その組成を分析する。

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使い方は簡単で、SCiOを指で持ち、リンゴに光を照射すると、その組成が分かる (上の写真)。皮の上から果肉の組成を読み取り、その結果をスマホの専用アプリに表示する。このリンゴ100グラムは70カロリーで、糖分は17グラム含まれている、と表示される。スーパーで果物を買う時にSCiOで計測すると、どのリンゴが甘いかを見分けられる。スイカを指で叩く代わりに、SCiOで甘いスイカを見つけることができる。

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ダイエット中に食事の栄養価を把握

SCiOで身の回りの物を幅広く解析できる。その手順として、専用アプリで測定する項目を選択する(上の画面左側)。上述リンゴの事例では「How Sweet」という項目を選択し、糖度を測定した。上の画面では「Nutrition Facts」を選択し、チーズの栄養価を測定したところ。測定の結果、このチーズは71カロリーで、脂肪6グラム、タンパク質5グラム、炭水化物0グラムを含んでいることが分かる (同右側)。ダイエット中、食事の際に、SCiOを食べ物かざして、栄養価を確認することができる。店頭でチーズなど食品を買う時に、SCiOで測定し、表示されている栄養価が正しいか確認できる。

組成解析の利用範囲は広い

この他に「Medicine」を選択すると、薬を検査できる。検査結果は「Advil PM Pfizer」などとブランド名が表示され、模造品ではなく本物と確認できる。「Plants」の項目を選択し、SCiOを植物の葉にかざすと、水分量を測定できる。水をやるタイミングが分かる。この方式で自分の肌をスキャンすると、体内に十分水分があるかを確認できる。「Ripeness」の項目で果物の熟れ具合を検査する。アボカドを買う時に、熟したものを選べる。「Freshness」では牛乳の鮮度を測定し、「Coffee」ではコーヒー豆の種類を判定する。将来は化粧品の成分や、衣服の素材などを判定できるとしている。

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小型の分光器

SCiOは近赤外線を使った分光法で物質の組成を解析する。分子は固有振動をしており、光を当てると反射波は、それに応じた反応をする。センサーは光源と分光器から成り、分光器で反射波をスペクトラムに分解し、その特性を把握する。近赤外線分光器は研究施設などで幅広く利用されているが、大型装置で高価なため、消費者が手軽に使えない。SCiOはこれを小型化し、消費者が手にもって使うことができる。上の写真はSCiOに搭載されている分光器を示している。計測したスペクトラムはクラウドに送信し解析する。具体的には、SCiOは計測したスペクトラムをスマートフォン経由でクラウドに送信。クラウドで専用データベースを検索し、スペクトラムを解析し、その結果をリアルタイムでスマホに返す。2秒程度で結果が分かる。SCiOはConsumer Physicsのサイトで販売されており、価格は249ドルで、出荷は2015年3月から。

Kickstarterは医療機器を禁止

SCiOはクラウドファンディング「Kickstarter」で資金を募り、目標額を大幅に上回る276万ドルを集めた。KickstarterはNew Yorkに拠点を置く人気のクラウドファンディング。Kickstarterは570万人のサポーターから10億ドルの資金を調達し、13万5千件のプロジェクトをサポートしている。大手ベンチャーキャピタルに匹敵する機能を果たしている。Kickstarterは芸術、映画、テクノロジーなど、クリエイティブなプロジェクトを対象に事業を展開。一方、医療関連機器についてはサポート対象外で、病気治療を目的とするプロジェクトは禁止している。

Kickstarterは医療プロジェクトは禁止しているものの、SCiOのような健康関連機器は認めている。更に、スマートウォッチの魁となった「Pebble」はKickstarterで1027万ドルを集め、一番人気のプロジェクトとなった。医療とフィットネスの境界はグレーゾンで、両者の区別は難しい。Kickstarterは指針を見直し、医療プロジェクトについても認める方向との見方もある。

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Indiegogoは医療機器をサポート

IndiegogoはSan Franciscoに拠点を置くクラウドファンディングの老舗企業。Indiegogoはアイディア実現、慈善活動、起業のために資金を調達するサイト。Indiegogoは医療プロジェクトを積極的にサポートしており、医療機器開発がここに集結する結果となっている。人気ウエアラブル「Misfit Shine」はKickstarterで断られ、Indiegogoで資金調達を行った経緯がある。この他にも、Indiegogoから画期的な医療機器が登場している。Scanaduはハンドヘルド医療センサー「Scout」の開発で166万ドルの資金を調達した。Scoutはデバイスを額に当てるだけで、心拍数、体温、血中酸素濃度、呼吸数、血圧、心電図、精神状態を測定できる画期的な医療センサー (上の写真)。ScoutはFDA (アメリカ食品医薬品局) の認可を受け製品を販売する予定。

Kickstarterはフィットネスまでを、Indiegogoは医療機器までを対象とするという相違はあるが、クラウドファンディングとウエアラブル機器の相性は良く、画期的な技術はここで生まれている。ベンチャー・キャピタリストより、一般消費者の投資判断が正しいのか、数多くのヒット商品がクラウドファンディングで生まれている。ウエアラブルは消費者が育てていると言っても過言ではない。

バイオセンサーでストレスに勝つ!混戦を生き残る健康管理ウエアラブルの戦略とは

Friday, August 1st, 2014

Appleは健康管理アプリ「Health」を発表した。Healthはウエアラブルで収集した情報を一元管理するダッシュボード。分類科目に「Galvanic Skin Response」という項目があり、健康管理のキーワードとして注目を集めている。

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バイオセンサーでストレス管理

Galvanic Skin Responseとは皮膚の電流の流れやすさを計測する手法で、健康状態をモニターするために利用される。アイルランド・ダブリンに拠点を置くGalvanic社は、社名の通り、この手法で健康管理を行う技術を開発。これは「PIP」という製品で、指でつまんでストレス・レベルを測定する (上の写真、右側のデバイス)。PIPは個人が感じているストレスをリアルタイムで計測し、精神状態を可視化する。更に、PIPを使ってストレス・レベルを下げるトレーニングを行うこともできる。

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ゲームを介してストレスを表示

ストレス・レベルはタブレットやスマートフォンのゲームで表示される。「The Loom」というゲームでは、PIPを指でつまむと、その結果がグラフィックスで表示される。ストレス・レベルが高い時は、画面の景色は冬で、地面や木々は凍り、空は曇り、雪が降っている (上の写真)。

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ストレス・レベルが下がると、大地の氷が解け、青空がのぞき、春の景色に変わる (上の写真)。ゲームを楽しみながら、自分のストレス・レベルを把握できる。

この他に「Relax and Race」というゲームがある。これは空飛ぶ恐竜のレースで、リラックスするほど速く飛べる。レースでは緊張が高まりストレス・レベルが上がるが、このゲームは競技中いかにリラックスできるかが勝敗を分ける。ゲームを通して、緊張を強いられる局面で、リラックスするコツを学習できる。マインドセットを変え、深呼吸をしながら、ストレス・レベルを下げる手法を学んでいく。日々の生活に応用できそうな技法である。

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ストレス・カレンダーで管理

「PIP Stress Tracker」というアプリを使うと、日々のストレス・レベルを時間ごとに把握できる。どの日がストレス・レベルが高かったか(上の写真左側)、また、時間帯ごとの状態を把握できる (同右側)。このアプリでストレスのパターンを認識し、健康管理に役立てる。PIPベータ版は、既に、Quantified Selfで利用されている。Quantified Selfとは、ウエアラブルなどで身体の指標を測定し、健康な生活を目指す人々を指す。文字通り、身体状態を定量化する手法である。PIPでストレス・レベルを把握し、メンタル面での健康管理に役立てる。また、試合前の緊張感を和らげるためにも、PIPが利用されている。PIPでストレス・レベルを把握し、深呼吸などを通して、落ち着きを取り戻す。

センサーの仕組み

ストレス・レベルはGalvanic Skin Responseの手法で算定する。これは、前述の通り、皮膚の電流の流れやすさを計測する手法。ストレス・レベルが上がると、血液が身体の末梢部に流れ込み、汗腺が開き、発汗を促す。発汗すると電流が流れやすくなり、これを測定することでストレス・レベルを把握する。ストレスの変化は短時間で恒常的に発生する。このため、PIPは毎秒8回、サンプリングを行う。

PIPはクラウドファンディング「Kickstarter」で資金を募り開発された。スマートウオッチのさきがけとなった「Pebble」など、多くのウエアラブルがクラウドファンディングで開発されている。PIPは今月末から出荷が開始され、価格は159ドル(アメリカ向け)。

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BodyMediaというリストバンド

Galvanic Skin Response はPIPの他に、高機能ウエアラブルに搭載されている。「BodyMedia」は腕に装着するタイプのウエアラブルで、カロリー消費量を計測する (上の写真)。専用アプリでカロリー摂取量を入力し、入出量を管理することで、ダイエット効果を定量的に把握できる。BodyMediaは高機能センサーを搭載しており、カロリー消費量を高精度で測定できる点が評価されている。BodyMediaが計測するカロリー消費量は、中程度の運動、激しい運動、歩行数、睡眠時間などに区分して表示される。カロリー摂取量については、食事毎に利用者がマニュアルで入力する。

BodyMediaは四種類のセンサーを搭載している。三軸加速度計で利用者のアクティビティを把握。Galvanic Skin Responseセンサーで発汗量を計測し運動量を把握。ここでは運動の激しさを計測する指標として使われる。二つの温度センサーで、表面体温と身体からの放熱量を測定。測定したデータを専用ロジックで解析し、アクティビティの量と消費カロリー量を算定する。

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BodyMediaは二つのモデルから成り、ワイヤー接続タイプ (上の写真右側) とBluetooth接続タイプ (同左側) がある。価格はそれぞれ89ドルと199ドル。高精度な情報を収集できるため、個人だけでなく、医療機関などでも利用されている。

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JawboneBodyMediaを買収

Jawboneは昨年4月、BodyMediaを買収した。買収額は1億ドルと言われている。Jawboneは「UP」という人気リストバンドを販売している (上の写真)。UPは搭載している三軸加速度計で、消費カロリー量などを計測する。Jawboneの買収目的は、BodyMediaの高度センサー技術に関する特許を入手するため、と言われている。UPは加速度計だけを搭載したシンプルなウエアラブル。今後UPに高機能センサーを搭載し、消費カロリー量を精密に測定できるかが注目されている。

この買収が示すように、健康管理ウエアラブル市場は、高機能センサー技術に向っている。Appleが開発している「iWatch」は、10種類以上のセンサーが詰まったリストバンドと噂されている。iWatchの登場で、市場は高機能・高精度製品に向うこととなる。ウエアラブルはトレンディーなガジェットから、健康管理に必須なバイオセンサーに、その役割が変わってきた。