Archive for the ‘newteevee’ Category

映画ストリーミング配信

Friday, December 10th, 2010

サンフランシスコで開催された、NewTeeVee (ニュー・ティーヴィー) カンファレンスでは、テレビとインターネットの融合が進むに連れ、テレビ上でのキラー・アプリケーションは何かが話題となった。カンファレンスでの議論の中で、しばしばNetflix (ネットフリックス) という会社が引用され、同社が展開している、インターネット・テレビ向けの映画配信サービスに注目が集まった。

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Netflix会社概要

Netflixは、上述の通り、インターネットで映画配信を手掛けている企業で、1997年に、DVDレンタル・サービスの会社として創業した。現在でも、映画DVDを郵送する方式で、映画レンタル・サービスを展開している。真っ赤な封筒でDVDが郵送され、アメリカで人気のDVDレンタル・サービスである。2003年には、インターネット・ブームに乗って、Netflixはインターネット経由で映画コンテンツを配信する技術を開発し、セットトップボックス形状の機器を300ドルで販売を始めた。この機器を家庭に設置して、映画のダウンロードを行なう方式であったが、一本の映画をダウンロードするのに6時間以上かかり、普及には至らなかった。2005年頃には、YouTubeが絶大な人気を集め、市場ではストリーミング方式でビデオを観る方式が定着してきた。Netflixは、映画をダウンロードする方式ではなく、今度は、ストリーミングする方式で事業を再構築した。会員はパソコンのブラウザーから、Netflixのサイト (上のスクリーンショット、出展:Netflix) にアクセスし、希望の映画を選択して閲覧する方式である。希望する映画のPlayボタンを押すと、映画コンテンツがストリーミングされ、そのまま直ぐに映画を観ることができる。利用者はパソコンのブラウザーで、手軽に映画鑑賞を楽しめるようになった。

Netflixのサービス拡大

Netflixは、コンテンツ配信先を、パソコンだけでなく、リビングルームのテレビを目指して、新しいサービスを開始した。Netflixは、家電メーカーと提携して、コンテンツのストリーミングを、ゲーム・コンソール (Microsoft Xbox等)、ストリーミング・プレーヤ (Apple TVやRoku等)、薄型テレビ(Sony BraviaやPanasonic Viera等)、DVR (TiVo) 向けに開始した。利用者は、これらの機器をインターネットに接続し、ストリーミングされた映画を受信し、それをテレビ画面に表示して、映画を楽しめるようになった。このストリーミング・サービスは、従来型のDVDレンタル・サービスとバンドルして提供されていた。しかし今月から、Netflixは、ストリーミング方式単独のサービスを、月額7.99ドルで開始した。利用者は、月額7.99ドル払うと、観たい映画を何本でも観れるようになった。この価格は、Hulu Plusの月額7.99ドルに対抗するもので、市場での競争が激化してきた。

この新価格を契機に、我が家でも、このストリーミング・サービスを契約して、テレビでNetflixを見る生活パターンが定着してきた。今までは、NetflixをiPad向けに契約しており、9.7インチの小さな画面で、一人で観ていた。新契約に更新してから、改めて、映画はみんなで、テレビの大画面で観るものであることを実感している。

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映画閲覧の操作は簡単で、Netflixのウェブサイトで観たい映画を選択し、Playボタンではなく、Instant Queueボタンを押して、キューに登録する。次に、テレビ (上の画面、出展:VentureClef) でNetflixアプリケーションを起動して、キューに入っている映画のPlayボタンを押すと、映画のストリーミングが始まる (次の画面、出展:VentureClef) 。映画のストリーミングが始まるまでに、1-2分程度時間を要するが、一旦ストリーミングが始まると、映画は途切れることなく、スムーズに表示される。途中で映画をポーズして、後日観ることもできるし、また、異なるデバイスで観ることもできる。映画がストリーミングされるため、コンテンツは手元には残らないが、DVDを買って観る方式に比べ、格段に便利で、映画を観る本数が一挙に増えた。

コンテンツ配信企業

配信されるコンテンツは、映画とテレビ番組である。利用者は、それぞれのジャンルごとに、観たい映画やテレビ番組を検索できる。New Arrivalsのタブを選択すると、最新の映画やテレビ番組のサムネールを見ることができる。Netflixが配給を受けている映画会社は、ParamountやMGMなどである。映画会社としては、Netflixにコンテンツを供給すると、DVDなどの売り上げが落ちてしまう懸念がある。しかし、その一方で、映画会社は、不況で、DVDの販売不振が続いており、上述の映画会社は、Netflixにコンテンツを供給し、このチャネルでの販売増加を期待している。

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Netflixの急成長

Netflixは事業拡大に伴い、システムも大幅にアップグレードしている。コンテンツ配信機能については、Netflixは、自社サーバからアマゾン・クラウドに移行している。また、コンテンツ配信ネットワークについては、Akamai、Limelight、Level3の三社を使っている。Netflixの通信性能は2.9Tbpsで、100万人の利用者に同時に、高画質コンテンツを配信できるとしている。アメリカにおいて、ゴールデンタイムのインターネット・トラフィックの20%が、Netflixのコンテンツ配信であるといわれており、Netflixが各家庭に浸透していることを物語っている。Netflixは、ケーブルテレビや衛星放送と、正面から競合することになり、Cord Cuttingという現象を引き起こした張本人とも言われている。Netflixは、今年に入り、急速に業績を伸ばし、いまでは映画レンタルの半分以上が、ストリーミング方式によるものであると公表している。NetflixをAmazon Video on Demand (アマゾンの映画ストリーミング・サービス) などが追撃しているが、その差は歴然としている。当分の間、Netflixの独壇場が続きそうである。

Google TV発売 (NewTeeVee Liveより)

Saturday, December 4th, 2010

サンフランシスコで開催された、NewTeeVee (ニュー・ティーヴィー) カンファレンスでは、Google TVの開発責任者であるRishi Chandra (リシ・チャンドラ) が、カンファレンス主催者であるOm Malik (オム・マリック) との対談で、Google TVの製品概要や製品戦略などについて議論した。

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Google TV製品概要

Google TVは、10年10月から販売が開始され、SonyとLogitechから、製品が出荷されている。製品はスタンドアロン型と、薄型テレビに接続するセパレート・ボックス型として提供されている。Sonyからは、Internet TV (スタンドアロン型、上の写真左側、出展:Google) と、Internet TV Blu-ray (セパレート・ボックス型、写真右下) が、また、LogitechからはRevue (セパレート・ボックス型、写真右上) が出荷されている。両社の製品には、テレビを操作するために、専用のキーパッドが添付されている。Sony製品では、上の写真のキーパッドを両手で持って、テレビを操作する方式である。

Google TVは、テレビ機能とインターネット機能とが、一つに融合された形式となっている。Google TVでは、テレビを観るだけでなく、ウェブサイトへのアクセス、検索、アプリケーションの実行を行なえる。ここで言うアプリケーションとは、Androidアプリケーションで、製品にプレロードして出荷されている。

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上の画面 (以下出展はいずれもVentureClef) は、Google TVの初期画面でApplicationsを選択した様子である。CNBC Real-Time (CNBCウェブ・テレビ番組閲覧、下の写真)、Google Chrome (ブラウザー)、Netflix (映画レンタル) などのアプリケーションが表示されている。その下には、Pandora (インターネット・ラジオ)、TV (テレビを観るアプリケーション)、Twitter (ツイッター) などのアプリケーションが続く。今後は、Android Marketからアプリケーションを、Google TVにダウンロードして、利用することができる。

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Google TVとウェブサイト

Google TVは、テレビ機能とインターネット機能が、一体化して実装されている点に最大の特徴があり、上述のGoogle Chromeから、ウェブサイトにアクセスすることができる。Google Chromeをクリックすると、初期ページではGoogle検索エンジンが表示され、ここにキーワードを入力して、目的のサイトに到達する仕組みとなる。テレビから任意のウェブサイトにアクセスできるようになった。YouTubeにも、専用のアプリケーション経由では無く、ブラウザーから直接アクセスできる。このサイトは、YouTube Lean Backという、Google TV向けにインターフェイスが最適化された構造となっている。初期画面には、検索ボックスなどなく、すぐにビデオが始まり、テレビ番組を見る感覚でビデオを閲覧できる。

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Google TVでは、このブラウザー経由で、ウェブサイトに掲載されている、テレビ番組を観ることができる。上の画面は、NBCの人気ニュース番組である「Nightly News with Brian Williams」をGoogle TVで閲覧している様子である。テレビで放送されるニュースがそのままウェブサイトに掲載されており、視聴者にとっては大変うれしいサイトである。一方、同じNBCであるが、人気コメディー番組「The Office」はブロックされていて観ることはできない。下の画面はGoogle TVからThe Officeにアクセスした様子で、画面に「Sorry, the content….is not available on this device.」と表示され、番組を配信できない旨を説明している。他に、Huluは全てのコンテンツをブロックしているが、Hulu PlusでGoogle TVに対応することを検討中である。その一方で、Time Warner (HBOなど) やTurner Broadcasting System (CNNなど) ほか、多くのネットワークは、積極的にGoogle TVに番組を供給している。Huluを含む四大ネットワークは、人気コンテンツをブロックしているが、その他のネットワークは、コンテンツを提供している構図となっている。

Google TVの製品戦略

カンファレンスでは、Chandraが、四大ネットワークの人気テレビ番組が、Google TV向けにブロックされていることについては、次の通り説明した。多くのコンテンツ供給者は、Google TVを歓迎しており、Google TV向けに番組を供給している。Google TVの狙いは、ケーブルテレビを置き換えるのではなく、テレビとウェブが共存することを目指しているとし、Chandraは、Google TVがコンテンツ供給者に、新しいビジネス・チャンスを与えていることを強調した。

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実際にGoogle TVを使って見ると、ウェブ・ビデオとテレビ番組が、同次元で閲覧でき、チャネル数が一挙に増えた感覚である。今までテレビ内に閉じ込められていたが、壁を破って、インターネットという自由を手に入れた感慨がある。テレビでウェブ・サーフィンすると、ウェブ上には、数多くのテレビ番組が掲載されていることを改めて認識した。更に、これらウェブサイトのインターフェイスは、テレビ向けに最適化され始めており、ソファに腰掛けて快適に閲覧できる。利用者がテレビでウェブ・ビデオを観る生活様式は、早くやって来そうである。これに会わせて、コンテンツ供給者としても、Google TV上で新事業が開けてくる。Google TVは、製品としては荒削りのところはあるが、テレビとウェブの融合を加速させる製品である。

ウェブ・テレビと広告技術 (NewTeeVee Liveより)

Friday, November 26th, 2010

11月10日に、サンフランシスコにおいて、オンライン・ビデオの最新技術を議論する、NewTeeVee (ニュー・ティーヴィー) というカンファレンスが開催された。カンファレンスでは、FoxやCNBCなどのメディア企業と、GoogleやTwitterなどのIT企業が、プレゼンテーションやパネル・ディスカッション形式で、最近技術を議論した。

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Huluの最新動向

カンファレンスの基調講演では、Hulu (フル) のCEOであるJason Kilar (ジェイソン・カイラー) が、広告技術を中心に、サービス概要や市場動向を紹介した。Huluは、テレビ番組や映画をストリーミングするサービスを展開している企業であるが、YouTubeとは異なるアプローチで、事業として成功を重ねており、その企業戦略が業界で注目されている。YouTubeは、アマチュア・ビデオの共有サービスを中心としているが、Huluはプロが製作したビデオに特化した、ウェブサイトのテレビ局として事業を展開している。

Huluは、テレビ番組や映画を、NBC、Fox、ABCのほかに、PBS、USA Network、Bravoなどの、パートナー企業から供給を受けている。Huluが配信するテレビ番組や映画では、同時に、コマーシャルも放送される。利用者は、テレビを見るときと同様に、無料で番組を見ることができるが、コマーシャルも見ることになる。Huluは、メディア企業と、広告収入をシェアする形式で、事業を運営している。今年6月からは、Hulu Plusという有料サービスが始まった。利用者は、月額7.99ドルの料金で、コンテンツをiPad  (上の写真、出展はいずれもHulu)、ゲーム機、テレビで見ることができる。また、コンテンツは、現行の内容を拡充した形式となっている。因みに、Hulu Plusは有償であるが、コマーシャルが表示される。

Huluの広告技術

基調講演で、Kilarは、Huluの業績を支えている広告技術に力点を置いて、最新のサービスを紹介した。

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Huluはストリーミング・ビデオ広告を様々な方式で提供している。上のスクリーンショットは、一番標準的な形式 で、Instream Video Adと呼ばれ、番組が始まる前に30秒間、広告ビデオが放送される。他に、Branded Slateと呼ばれる形式では、番組が始まる前に5秒間、商品のスティル・イメージが表示される。これらの方式に加え、Kilarは、視聴者が好みの広告を選択できる方式を紹介した。その中で、Ad Selectorという方式では、下のスクリーンショットの通り、利用者が好みの広告ビデオを選ぶことができる。この事例では、Chevrolet Cruze、Ford Focus、Toyota Corollaの三車種の中から、Chooseボタンを押して、見たい広告を選択できる。

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また、下のスクリーンショットは、Branded Entertainment Selectorという方式で、広告表示形式を視聴者が選択できる。この事例はPhiladelphia Cream Cheeseの広告で、視聴者が広告表示形式 (番組の前に長い広告を一回だけ表示するか、番組中に短い広告を複数回表示するか) を選択できる。

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この他に、Ad Tailorという方式は、広告主が視聴者に質問を投げかける形式である。例えば、自動車の購入計画について、今後六ヶ月以内に購入計画はあるか、という質問を表示し、視聴者は三択形式で、ボタンを押して回答する。Kilarは、テレビでの広告とは異なり、Huluは視聴者を巻き込んで、視聴者の反応を把握して、視聴者の関心を惹く広告を配信できる点を強調した。

オンライン・ビデオ市場

Kilarは、このように視聴者とのインタラクションを通じて、広告配信の最適化を行なうことで、ケーブルテレビなどでの広告配信と比較して、大きな効果を挙げていると説明した。具体的には、Huluの収入は、08年が2,500万ドル、09年が1億800万ドル、10年の予測は2億4,000万ドルであり、07年に創業してから、急速に業績を伸ばしていることを、質疑応答のセッションで明らかにした。この発言を裏付けるように、comScoreから、オンライン・ビデオへの広告配信数の統計データが発表されているが、Huluは首位を占めている。アメリカにおける10年10月度のビデオ広告配信件数において、Huluの広告配信数が10億件を突破して、他のサイトを大きく引き離している。因みに、YouTubeを運営するGoogleは、オンライン・ビデオ配信件数では、他社を引き離しトップであるが、広告配信件数においては、第十位に甘んじている。

トレンド

カンファレンスでの共通テーマは「Cord Cutting」であった。これは文字通り、コードの切断を意味しており、このコードとはケーブルテレビを筆頭とする、Pay TV (有償テレビ) を指している。今年から、アメリカでは、ケーブルテレビを解約して、ウェブ・ビデオに切り替える家庭が増えてきた。テレビをインターネットに接続して、Huluのようなビデオを配信するサイトにアクセスして、無料でテレビ番組や映画を観る形態である。ケーブルテレビの最大手であるComcastは、今年に入り加入者数が減少していることは認めているが、その理由は不況のためであるとしている。Comcastによると、ケーブルテレビを解約した視聴者は、地デジに乗り換えているのであって、ウェブ・テレビに移っている訳ではないとしている。Cord Cuttingの結論は出ていないが、市場ではYouTubeやHuluへのアクセス数が急増し、Apple TVが売れて、Google TVが発売開始となっている。アメリカの家庭では、明らかに、テレビを観る形態が大きく変わり、ウェブ・テレビが家庭のリビングルームに入ってきた。

Avatar

Friday, December 25th, 2009

先週、3D映画として前評判が高かった、Avatar (アバター) が封切られた。Avatarは、Pandora (パンドラ) という惑星で展開される、SFファンタジー映画で、James Cameron (ジェームス・キャメロン) 監督の最新作である。Avatarの映像はフューチャー・ショッキングで、映画が確実に、次の時代に踏み込んだのを感じた。Avatarの映像の60%はコンピュータで生成されており、映画製作には最新の情報技術が使われている。今回は、映画製作技術や3Dビジネスの動向に焦点をあててレポートする。

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Avatar概要

Avatarは、封切前にテレビで頻繁に紹介されたため、映画館は満席であった。映画館では、RealD (リアルディー) のロゴの入った偏光メガネを手渡され、これをかけて映画を観た。多くの映画館では、3Dプロジェクション・システムとして、このRealDの技術を使っている。Avatarは、地球人とPandoraの住人Na’vi (ナヴィ) とのラブストーリーであり、アドベンチャーである。上の写真はヒロインのNeytiri (ネイティリ) で、このイメージはコンピュータで生成されたものである。(出展:20th Century Fox) 映画が始まると、地球からPandoraに向かう宇宙船の内部のシーンが三次元で登場した。三次元空間を、無重力でさ迷う様子が映しだされたが、画像を三次元に感じたのはこの辺りまでで、いつの間にか、映画の中に埋没していた。

完成度の高いコンピュータ・グラフィックスで、リアルとバーチャルな世界の見分けが付かず、Pandoraでは色彩豊かな輝く世界が広がった。舞台の中心であるPandoraの原始林の様子は、すべてコンピュータ・グラフィックスである。前述のNaytiriを含むPandoraの住人は、すべてコンピュータ・グラフィックスである。Neytiriが、Ikranという巨大な鳥に乗って、崖を急降下するシーンでは、画面の中に落ちていく感触を味わった。この映画は2時間40分の大作であるが、あっという間に終わり、映画終了と供に、館内で大きな歓声が沸きあがった。大歓声が表しているように、観客のハートを掴む映画であった。スリリングで手に汗握るが、後味爽やかな映画でもあった。

Avatar製作の背景

Avatarを観て、映像を三次元に感じたのではなく、映像がごくごく自然に感じられた。いつも見慣れている、自然な感触であった。反対に、エンディング・クレジットは二次元で表示され、多くの名前が、シルバー・スクリーンに張り付いて、スクロールしていった。いつもこんな平たい世界で映画を観ていたのかと、そのギャップに驚かされた。Avatar封切前には、Cameron監督が多くのテレビ番組に登場し、PRを兼ねて映画の紹介を行なった。その中で、CBSの人気番組である「60 Minutes」では、Morley SaferがCameron監督に、インタビューを行なった。この中で、Cameron監督が映画製作のビジョンや撮影方法を紹介し、映画がどのように製作されたのかを解説した。

この番組はCBSのウェブサイト (http://www.cbsnews.com/video/watch/?id=5737218n) に掲載されている。インタビューの中で、Cameron監督は、この映画の構想を長い間暖めてきたが、映画製作のためのコンピュータ技術が整ったため、製作に踏み切ったと述べている。この映画は3Dであり、また、俳優の演技とコンピュータ・グラフィックスを融合させた構成となっている。

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Avatar撮影技術

映画は3000のシーンから構成され、それぞれがコンピュータ・グラフィックスで処理されている。映画の撮影はFusion Camera (フュージョン・カメラ) という、Cameron監督らが開発したステレオ・カメラが使用されている。(上の写真、Cameron監督が抱えているカメラ、出展:CBS)  Fusion Cameraは、3ality (スリーアリティ) と同様に、二つのカメラを対にした構造で、左右の目で見たイメージを撮影する。この撮影は、ロスアンジェルス空港の北側に位置するPlaya Vista (プラヤ・ビスタ)という街で行なわれた。上の写真の通り、俳優はグリーン・スクリーンを背景に、モックアップを使って演技を行い、このシーンをFusion Cameraで撮影した。

Avatar撮影での新しい試みは、俳優の顔の表情をカメラでキャプチャーして、コンピュータに入力する方式である。俳優は小型カメラが実装されているヘッドギアを装着し、カメラが俳優の表情を撮影する。俳優の顔には複数の緑色のドットが書き込まれており、この動きをカメラで捉え、表情を正確に再現する。このデータを入力して、Pandoraの住人であるNa’viの顔の表情を、コンピュータ・グラフィックスで構成する。下の写真 (出展:CBS) は、Naytiriの役を演じている、Zoe Saldaña (ゾーイ・サルダナ) の顔の表情を、小型カメラでキャプチャーしている様子である。このデータを元に構成したNeytiriの顔の表情が、前頁の写真である。コンピュータ・グラフィックスであるが、人間と同じくらい表情が豊かで自然である。

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また、俳優はボディースーツを着て演技を行い、カメラはボディースーツに描かれているマークを捕らえ、演技をキャプチャーした。これは、従来と同じ方式で、俳優の体の動きを、コンピュータ・グラフィックスに変換する方式である。

Avatar編集技術

前述の通り、俳優はモックアップを使って、演技を行なう。Neytiriが、Ikranという巨大な鳥に乗って、空を駆け巡るシーンの撮影では、Saldañaが鳥のモックアップに跨って演技をした。そのシーンを、前述のFusion Cameraで撮影する。撮影と同時に、Cameron監督は、モニターで俳優の演技をモックアップではなく、コンピュータ・グラフィックで生成したIkranの上で見ることができる。これは、Augmented Reality (拡張現実) 技術を使い、リアルタイムで、低解像度の背景シーンをインポーズする。Cameron監督は、実際の映画で上映するシーンを、リアルタイムで観ることができる。(下の写真はSam Worthington (サム・ワーシントン) が演じるJake Sully (ジェイク・サリー) がIkranに跨っているシーン、出展:20th Century Fox)

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Cameron監督は、カメラで撮影した映像をコンピュータで処理する部分が、最大の難所であったと述べている。この処理は、Weta Digitalという企業が、ニュージーランドで行なった。Weta Digitalは、撮影した俳優の演技を入力として、コンピュータ・グラフィックスで、体や顔の映像を生成した。Cameron監督によると、コンピュータ・グラフィックスによる顔の表情が、アニメではなくリアルでなくては、映画として成り立たないと述べている。また、Pandoraのシーンはすべてコンピュータ・グラフィックスで、木や草や花や生物などはすべてコンピュータで生成されている。(下は発光する植物の中を泳いでいる場面、出展:20th Century Fox)

3Dビジネス動向

アメリカにおいてここ近年3D映画が登場して、小さな成功を重ねてきている。2008年は、公開された映画の3%が3D映画で、収入の10%がこれら3D映画から上がっており、来年は24本の3D映画が予定されている。当初、ハリウッドで作成された3D映画が、広く受け入れられなかった理由は、3D効果の使い方にあるという見方が主流である。ハリウッドは、観客の目を惹くための「特撮」効果として3Dを使用したが、観客の評判は良くなかった。Avatarでは、3D撮影で、観客に特撮ではなく、「自然」な映像を提供している。Avatarが成功すれば、それに関連する産業である、テレビ、ゲーム、ケーブル、再生機などの分野で3D事業への道筋が見えてくる。SonyがFIFAワールドカップの試合を3Dで中継することを表明しており、テレビにおいてはHDから3Dへの展開が目の前に迫っている。

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考察

Pandoraの基地内の指令所で、JakeがNa’viの拠点を地図上で示すシーンが登場する。この地図は三次元で表示され、山や谷や森の様子が、空間上に立体的に表示された。このシーンは、将来、Google MapsやGoogle Earthが3Dで表示されることを示唆している。Google Street Viewも3Dとなれば、プライバシーの問題はあるが、利用者としてはより臨場感を味わえる。ステレオ・カメラが消費者向けに販売されれば、YouTube はHDから3Dに進化することになる。Avatarは映画だけでなく、テレビやインターネットが大きく変わる可能性を秘めている。最後に、映画の感想を一言で纏めると、Avatarを観ると、もう今までの平らな世界には戻れない、というのが実感である。

三次元イメージ製作技術 (NewTeeVee Liveより)

Friday, December 18th, 2009

次世代テレビのあり方について議論するカンファレンスであるNewTeeVee Live (ニューTVライブ) で、参加者に一番アピールしたのが、3Dテレビのデモであった。日本では、3Dテレビの製品発表や展示が行なわれ、3Dテレビが身近な存在になっているようであるが、アメリカにおいては、まだまだ遠い存在である。

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3Dコンテンツ

カンファレンスでは、3ality Digital (スリーアリティ・ディジタル) というベンチャー企業が、3D番組をテレビで上映し、参加者の関心を集めた。3ality Digitalは、ハリウッド近郊のBurbank (バーバンク) で、三次元のハイビジョン・デジタル映画製作技術を開発している会社である。3alityは、フットボールやコンサートなど、ライブ・イベントを三次元で撮影する技術を中心に開発している。カンファレンスにおいては、NewTeeVee’s Next Big Thingというセッションで、3ality Digital副社長のAngela Gyetvan (アンジェラ・ゲットバン) が、三次元コンテンツを紹介した。

ステージ上に大型スクリーンのテレビを設置して、3ality Digital技術で作成した、三次元コンテンツを放送した。参加者には、事前にメガネが手渡され、これをかけてテレビを見た。テレビでは「U2 3D」という、U2のコンサートが再生され、立体的な映像が浮かび上がった。(上の写真、出展:3ality Digital)  番組が始まると、テレビを設置してあるステージが延びてきて、すぐ目の前にせり出し、そこでU2のコンサートが行なわれているように見えた。演奏中に、Bonoが、歌いながら右手を差し出すと、手が体に触れたように感じた。デモが終了すると、参加者から大きな拍手が沸きあがり、カンファレンスで一番人気のデモとなった。

3ality Digital概要

U2 3D の製作では、前述の通り、3alityの技術が使われている。3alityが提供する技術は、三次元撮影のためのカメラ (3Flex Camera、下の写真、出展:3ality Digital) や、撮影した三次元イメージを編集するソフトウェアである。このカメラは、通称ステレオ・カメラと呼ばれ、二台のSony製のカメラが搭載され、それぞれが人間の左右の目でみたイメージを録画する。

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他に、三次元イメージ編集ソフトウェア、三次元イメージ放送技術など、3ality Digitalは、三次元ビデオ作製に必要な一式の技術やサービスを提供している。

アメリカにおいて、3ality Digitalが一躍有名になったのは、今年2月に行なわれたスーパーボールで、3Dコマーシャルを放送したことによる。スーパーボールでのコマーシャルが、フットボールと肩を並べるほど人気で、企業は高額な予算を投じて、消費者の気を惹くクリエイティブを製作する。PepciCoは、3ality Digital技術を使って、SoBeという清涼飲料水のコマーシャルを作成した。SoBeのロゴとなっているトカゲがダンスするという内容である。視聴者は、赤と青のフィルターが掛かったメガネをかけてコマーシャルを見ると、イメージが立体的に見えるという仕組みである。

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RealDという企業

前述の、U2 3Dは、もともと3D映画として撮影され、昨年初頭に、主要な映画館に配給され上映された。映画館においては、この三次元コンテンツを映写する技術として、RealD (リアル・ディー) という技術が使われている。RealDは、ビバリーヒルズ (Beverly Hills) に拠点を置く企業で、映画館や企業向けに、三次元プロジェクション技術を提供している。この技術を提供している企業には、他に、音響技術で有名なドルビー (Dolby Laboratories) があるが、RealDは全米の1500の映画館で導入されており、業界のトップベンダーである。

RealDは、映画館に設置されているプロジェクターに、特殊装置を装着して3D映画を上映するシステムを提供している。3D映画は、右目と左目のイメージから構成され、シネマ・サーバーがこれらのイメージを、デジタル・プロジェクターに交互に送信する。RealDは、プロジェクターの前に、Z Screenと呼ばれる偏光装置を装着し、左右のイメージと同期を取って、円偏光 (Circular Polarization) をかける。観客は偏光メガネ (Polarized Glasses) をかけて、投射されるイメージを、左右の目で交互に見ることで、三次元画像が生成される。上の写真 (出展:RealD) がその装置で、レンズが見えている部分がデジタル・プロジェクターで、その前の四角い枠がZ Screenである。

3D映画コンテンツ

RealDは、既存のデジタル・プロジェクターに装置を付加することで、簡単に3D映画を上映できることから、多くの映画館で導入が進んでいる。それと並行して、3D映画の製作も進み始めている。2007年には、Walt Disney Pictures製作の「Meet the Robinsons」が公開され話題を呼んだ。またDreamworksは、「Monsters vs. Aliens」を皮切りに、すべての映画を3Dで製作すると表明している。

ちょうど今日、3D映画として前評判が高い、Avatar (アバター) が封切られた。Avatarは、James Cameron (ジェームス・キャメロン) 監督の最新作で、Pandora (パンドラ) という星で展開される、SFファンタジー映画である。この映画がRealDの技術を使って三次元でプロジェクションされる。3D映画は色々と観てきたが、Avatarは別格で、フューチャー・ショックを受けた。同時に、映画のあり方が、大きく変わりつつあるのを感じた。Avatarで使われているコンピュータ技術や、3D映画市場動向については、次回のレポートで報告する。