Archive for May, 2007

成長が止まったブログ

Friday, May 4th, 2007


昨年からブログの動きが変である。ブログの投稿件数が減りつつあることが明らかになってきた。 これは、テクノラティ (Technorati) が四半期ごとに公表している、「ブログ白書」(The State of the Live Web) の統計情報によるものである。昨年前半までは、ブログ投稿数が急速に伸び続け、一日の投稿件数が150万件を突破した。テクノラティが指摘しているように、ブログ投稿件数は、「事件」と密接に関連しており、067月のイスラエルとヒズボラの戦闘では、ブログ投稿件数が急増し250万件を超えた。 しかしその後は、150万件前後で停滞している。

 

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ブログの一日あたりの投稿件数が頭打ちになってきた (出展:Technorati)

 

ブログ投稿件数のトレンドを把握するのは難しいが、昨年の中から今年にかけて、ブログ投稿件数は、減少傾向にある。 テクノラティも一日あたりの投稿件数について、「成長が鈍っている」との見方を示している。 しかし、何が原因でブログの成長が止まったのか、その理由については明らかにしていない。

 

日本語ブログの急成長

これと同時に、テクノラティは、言語別のブログ投稿数で、日本語のブログ投稿数が英語のブログ投稿数を押さえてトップになったことを明らかにした。 日本語のブログといえば、日本で日本人が作製するものが殆どである。一方、英語のブログというカテゴリーには、米国、カナダ、英国、豪州、ニュージーランドなどで英語で作製されたブログが含まれる。英語を母国語とする人は全世界で38千万人いるといわれており、一方、日本語を母国語とする人口は日本の人口と同じで13千万人である。 言語人口で三倍の差があるところで、日本語ブログ投稿数がトップになった。 つまり、日本人は英語圏の人間に比べて三倍ブログを書いていることになる。

 

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言語別ブログ投稿数で日本語() が英語() を押さえてトップになった (出展:Technorati)

 

ブログが日本人の嗜好にヒットしたことは間違いないが、もう少し詳しく見ていくと、日本人と英語圏のブログに対する考え方が異なっていることが分かる。英語のブログでは、いわゆる「メガサイト」が中心であるが、日本語のブログにはこれがない。米国のブログの一番人気は「Engadget (エンガジェット) である。 このブログは最新の小道具を紹介するサイトで、デジカメや携帯電話からITまでをカバーする商用サイトである。 クールなガジェットの紹介については、ニューヨークタイムズ (New York Times) の得意とするところであるが、今では、Engadgetがお株を奪っている。 ブログが本格的なメディアに成長した事例である。 一方、日本語のブログサイトで世界のトップ100にランクされるとことはなく、日本語のブログは個人を中心に情報発信されている実態が浮かんでくる。 日本ではオピニオンリーダーが世論を引っ張るという形式より、個人が出来事を記録する掲示板として使われている。使い方は異なるが、シリコンバレーで生まれたブログが、本家では衰退を始めたが、日本では独自の成長を遂げている。

 

ビデオとブログ

英語のブログ投稿数が減少しているが、ブログを書かなくなった人が、何処に行ったのかという統計は、残念ながら見たことがない しかしビデオの世代では、ブロガーがマイスペース (MySpace) やユーチューブ (YouTube) に流れていると見るのは、妥当な線である。 テクノラティはもともとブログ検索エンジンとして誕生し、ブログの動向をモニターしてきた。しかし今では、テクノラティは、ブログではなくビデオや音楽の人気サイトを中心にモニターしている。時代は確実に、ブログからマルチメディアに移っている。

 

これを端的に表しているのがユーチューブでの08年米国大統領選挙キャンペーンである。これはユーチューブ上のチャネルとして設定されており、その名称も「ユーチューズ 08 (YouChoose 08) となっている。ここに大統領候補者がウェブサイトを設け、ビデオを中心に選挙キャンペーンを展開している。04年の大統領選挙ではブログが大盛況で、ブログで論戦が交わされ、これが草の根運動として選挙戦を底辺で支えていた。08年の大統領選挙では、インターネット技術が、ブログからユーチューブに移行した。ユーチューブがテレビと同じ土俵で勝負できるほど、影響力を及ぼしている。04年の大統領選挙でブログは脇役であったが、今回の大統領選挙では、ユーチューブが選挙戦を左右するメディアとなってきた。

 

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08年大統領選挙キャンペーンのチャネルであるYouChoose ‘08 (出展:YouTube)

 

日本のブログはどこに向かうのか

一方、大統領選挙に関連するビデオで視聴者を集めているのは、テレビ放送のクリップを投稿したものや、各陣営で製作したビデオを投稿したものである。アマチュアの役割は、膨大なビデオコンテンツの中から、特定のビデオ・クリップを投稿するというフィルターの役割に留まっている。まだまだ自作コンテンツは少ないが、ビデオ選択という集合知で大統領選挙に大きな影響を与えている。文字から画像に移るのが自然の流れなのか、米国大統領選挙では論戦の場がブログからユーチューブに移った。日本人とブログの相性は抜群であるが、日本でもこれから米国と同じ軌跡を辿るのか。それともインテリジェントな国民性を背景に、ブログという形式の活字文化は定着し、独自の進化を遂げるのか。ブログの将来が決まる岐路にさしかかっている。