Archive for December, 2007

オープンソースでの省エネ製品

Friday, December 28th, 2007


今年は、「不都合な真実」 (An Inconvenient Truth) がアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞 (Documentary Feature) 受賞に始まり、ベンチャー・キャピタルのクリーン・エネルギー技術への投資が急増するという統計情報で幕を閉じそうである。アメリカ国内で、地球温暖化問題に真剣に取り組む必要があるとの国民的コンセンサスのもとで、クリーン・エネルギー産業が急速に伸びた年となった。

 

ベンチャー・キャピタルの動き

079月までのベンチャー・キャピタルのクリーン・エネルギーへの投資金額は26億ドルと、昨年通年の投資金額である8億ドルを大幅に上回っている。クリーン・エネルギーが、ソフトウェアとバイオテクノロジーに次ぐ、第三のセグメントに急成長してきた。また、クリーン・エネルギーの特徴は、コンピューター技術との親和性が高く、多くの先端クリーン・エネルギー企業はシリコンバレーに拠点を置いていることである。

 

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ハイパフォーマンス電気自動車であるTeslaも例外でなく、オラクル本社のすぐ近くに拠点を構えている。カリフォルニア州知事である、Arnold SchwarzeneggerTeslaを予約するなど、その注目度は急上昇している。(出展: Tesla)

自動車といえどもその心臓部は電子部品で、テスラ (Tesla) はデトロイトよりもシリコンバレーのほうが技術の繋がりが深い。アメリカの次世代自動車産業はシリコンバレーが拠点となると唱える人は少ないが、数多くのクリーン・エネルギー技術がシリコンバレーで生まれ始めた。

 

ゾンブというベンチャー企業

クリーン・エネルギーとITとの接点は、省エネ型コンピューターの中に見出せる。その中で、ゾンブ (Zonbu) というベンチャー企業は、メンロパーク (Menlo Park) を拠点とする省エネ型パソコン開発会社である。ゾンブのパソコンは環境に優しいだけでなく、オープンソースでパソコンを構成し、それをサブスクリプション方式で販売しているというユニークな製品である。ゾンブはデスクトップ・パソコンと、ノートパソコンを販売している。

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デスクトップ・パソコンはマック・ミニに似た形状で、手のひらに乗るくらいの大きさ。Zonbuはこのパソコンを99ドルで販売している。(出展: Zonbu)

 

ノートパソコンは279ドルで販売されており、これら購買価格にサブスクリプションとして月額14.95ドルが課金される。二年契約だとノートパソコンで合計637.80ドルの支払うことになる。ちょうど携帯電話を購入した際に、ハードウェア価格は安く、その代わり月額料金でこれを回収するという方式に似ている。

省エネ型パソコン

ゾンブの製品は省エネを追求した設計となっており、平均消費電力は15ワット (ノートパソコン) と、従来型のパソコンの平均値である175ワットを大きく下回る。これはプロセッサーにインテル互換のVIA Technologies社製の省エネルギー型チップ (1.5GHz, VIA C7-M) を採用しているためである。ゾンブはEPEAT (Electronic Product Environmental Assessment Tool) という製品が環境に与える影響を査定する基準で、ゴールドとして認定されており、環境に優しいパソコンとして公的に認められている。

 

また、デスクトップ・パソコンにはディスクを搭載してなく、4GBのコンパクト・フラッシュが採用されており、電力消費量を抑えている。デスクトップ・パソコンは、このローカル・ディスクのほかに、「エラスティック・ドライブ」 (Elastic Drive) として、インターネット上に50GBのスペースが提供されている。これは、「アマゾS3 (Amazon Simple Storage Service) を利用したものである。ゾンブは、ソフトウェアのアップデートと保守サービスを提供しており、これらがサブスクリプション料金に含まれている。

 

オープンソース・パソコン

ゾンブの特徴は、利用者が使うソフトウェアに、数多くのオープンソースを採用していることである。オープンソースの数は20数種類にも上る。OSはリナックスのディストリビューションである「ジェンツー」 (Gentoo) で、アプリケーションも著名なオープンソースが採用されている。ブラウザーは「ファイアーフォックス」 (Firefox)、オフィス製品は「オープンオフィス」 (OpenOffice)、コミュニケーションには「スカイプ」 (Skype)が、メール・カレンダーには「エボリューション」 (Evolution) が、また、インスタント・メッセージングには「ピジョン」 (Pidgin) が使われている。

 

ゾンブの特徴はこれら20数種類のアプリケーションが一括でプレインストールされており、利用者は電源を入れて、ネットワークに接続するだけで、すぐにそのままパソコンを使うことができるという手軽さである。ゾンブは、オープンソースから構成されたパソコン・アプライアンスといえる構成である。

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Zonbuのデスクトップ画面。上述の20数種類のアプリケーションがプレインストールされており、パソコンを買ってそのまま使える手軽さが利用者に受けている。(出展: Zonbu)

 

トレンド

アメリカ大統領選挙は、年明け早々の13日、アイオワ州デモイン (Des Moines) での、アイオワ党員集会 (Iowa Caucus) で幕を開ける。これから各党の大統領候補指名プロセスが始まるところだが、大統領選挙では民主党が優位であると言われている。京都議定書 (Kyoto Protocol) を批准しなかった共和党ブッシュ政権に代わり、民主党が政権を取れば、環境問題対策が連邦政府レベルで本格的に進むと期待されている。経済が景気後退局面に入っているものの、クリーン・エネルギーだけは例外で、2008年も引き続き、ベンチャー・キャピタルからのクリーン・エネルギー技術への投資は増えそうな勢いである。

太陽光発電データセンター

Friday, December 21st, 2007


今年はグリーン・コンピューティングが重要なテーマとなっているが、ついに100%太陽光発電で電力をまかなうデータセンターが登場した。市販されている電力は二酸化炭素排出の発生源となっており、「汚れた」電力であるとして、市販の電力は一切使用しないデータセンターである。この代わり太陽電池を設置し、100%クリーンな電力でデータセンターを運営している。利用者はクリーンな電力から生成される情報サービスを利用でき、間接的に環境問題に貢献できる、というのがメッセージである。データセンターは究極のエコシステムで、建物の構造から、コンピューター機器の運営まで、省エネのショーケース的な存在である。

 

AISOという企業

このデータセンターを運営しているのはAffordable Internet Services Online (AISO) という企業で、データセンターを南カリフォルニアのロモランド (Romoland) というところに構えている。ロモランドとは馴染みの薄い地名であるが、ロスアンジェルスの東120マイルのところに位置し、南カリフォルニアの太陽が降り注ぎ、太陽光発電には最適の場所である。AISOはデータセンターのホスティング事業を展開しており、米国初の100%純正太陽光発電ホスティング・センターである。

 

このセンターでは、太陽電池として「BP ソーラー」 (BP Solar) を使用しており、120枚のパネルから構成されている。パネルは二つのブロックに分けられ、それぞれ60枚の太陽電池パネルがデータセンター両脇の地上に設置されている。これらの太陽電池パネルは南を向いており、その様子はAISOのウェブカメラで実物をライブで見ることができる。

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ウェブカメラで見た太陽電池。Affordable Internet Services Onlineのデータセンターに隣接して設置されているBP Solar製の太陽電池。今日の天気は晴れであるが、AISOによると曇りの日でも発電量は晴れの日と変わらないとのこと。(出展:Affordable Internet Services Online)

 

太陽電池で生成された電力は直流であり、これをインバーターで交流に変換し、バッテリーに蓄える。このバッテリーで、コンピューター機器や空調などの運転を行う。またこのバッテリーでオフィスの電力も供給している。バッテリーはデータセンターを30日間運転するだけの容量があるが、バックアップとしてプロパンガスの発電機を設置し、非常事態に備えている。プロパンガスはディーゼルよりクリーンな燃料であり、二酸化炭素排出量が少なく、また、地球温暖化に大きく影響する二酸化硫黄を排出しない点に特長がある。

 

コンピューター機器の省エネ化

AISOはクリーンな電力を生成するだけでなく、電力を消費する側にも、数多くの工夫をしている。サーバーには「AMDオプテロン」 (AMD Opteron) ベースのシステムが採用されている。このプロセッサーは、従来のサーバーより消費電力が60%少なく、かつ、発熱量が半分である。ストレージには「ネットアップ」 (NetApps) が採用されている。省エネの中心は、「ヴィエムウェア・ヴィーモーション」 (VMware VMotion) である。ヴィーモーションは仮想化のためのソフトウェアで、仮想マシンを一つのサーバーから別のサーバーに、システムを停止しないで移動することができる。通常、サーバーの稼働率は10%程度で、AISOはこれを70から75%まで引き上げ、サーバー設置台数を95%削減している。

 

データセンターの省エネ化

データセンターは省エネだけでなく、環境にやさしい構造となっている。データセンターの壁には再生紙を用いた断熱材が使われており、高温の外気からセンターを遮断している。エアコンには「フリーアス」 (Freus) を採用している。フリーアスは水冷のエアコンで、空冷のシステムに比較して二倍近く効率が良い。AISOはこのエアコンを改造して、外気温が華氏50 (摂氏32) 以下になると、外気を取り込んで空調の効果をあげる方式を取っている。この他にも、天井から太陽光を取り入れて照明する「ソーラー・チューブ」 (Solar Tube) を採用している。更に、将来は、「グリーン・ルーフ」 (Green Roof) という、ビルの屋上に土を敷き詰めて植物を育てる方式で、空調費用を半分にすることを計画している。

 

トレンド

AISOはもともと太陽電池でデータセンターを運用しており、クリーンなセンターとして事業を展開してきた。グリーン・コンピューティングへの意識の高まりから、急速に需要が伸び、AISOはデータセンターを大改造して、究極のエコシステムを作り上げた。AISOによると、「クリーンなデータセンターであるという理由で、商談が成立するわけではなく、価格競争力があるため、利用者はクリーンなセンターの方を選ぶ」と説明している。同時に、「クリーンなセンターにすることで、運用コストを削減でき、競争力のある価格で提案できる」としている。

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AISOのセンターを利用している企業に「Greenest Host」がある。この企業はエンドユーザー向けにウェブ・ホスティングを提供している。このサイトのキャッチフレーズは「Your 100% Solar Powered Web Host」であり、純粋太陽光発電でウェブ・ホスティングしていることを強調している。(出展:Greenest Host, Inc.)

 

サンフランシスコではイエロー・キャブではなく「グリーン・キャブ」が、トヨタ・プリウスの屋根に緑色のサインをつけて走っている。サンフランシスコ空港では「プラネット・トラン」 (PlanetTran) が、黒塗りのリムジンに代わって、送迎サービスを始めた。米国ではトヨタ・プリウスのように地球環境に優しい自動車を使った事業が急増しているように、IT市場においても、環境問題を配慮したグリーン・コンピューティングが市場を伸ばしていきそうな勢いである。これからは、一般企業も、ウェブサイトに純粋太陽光発電であることを表示し、クリーンなメッセージを発信する時代になりそうである。




プロジェクト・ビッグ・グリーン

Friday, December 14th, 2007


米国のIT企業は一斉に省エネ型のデータセンターを提案し始めた。IBMは環境問題に早くから多角的に取り組んでおり、今年5月にはデータセンターの省エネを推進する「プロジェクト・ビッグ・グリーン」 (Project Big Green) を発表した。この中でIBMは、「グリーン・テクノロジー」や「グリーン・サービス」を加速させるために、10億ドルを振り当てるとしている。

 

グリーン・テクノロジー

省エネ型データセンターを支えるIBMの技術は、チップからシステムまで各段階で搭載されている。POWER6という最新のプロセッサーでは、使われていない回路の電源を切り、チップレベルでの省エネを実現した。POWER6を搭載したサーバーレベルでは、冷却ファンの回転数を可変にして省エネ対策を行っている。更に、ソフトウェア・レベルでは、「PowerExecutive」が、サーバーの電力消費量をモニターする機能を提供している。消費電力の閾値を設定しておくと、それ以上の電力消費を制限する機能を持っている。「Tivoli Usage and Accounting Manager」では、電気代を含め、利用者への課金機能を提供している。

 

グリーン・サービス

IBMはサービス面においても多彩なソリューションを用意している。「Data Center Thermal Analysis and Optimization」では、データセンター内の空気の流れをモデル化し、空調の効果を分析する。これにより、データセンター内の機器の配置を最適にすることができる。

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Mobile Measurement Technology」では、写真の台車でデータセンターの温度を三次元で測定し、温度分布とその問題点を洗い出す。この技術は電力会社 (Pacific Gas and Electric Company) との共同開発で生まれたもので、同社データセンターの電力消費量を80%削減することに成功している。(出展: IBM)

 

IBMの環境問題対策は、データセンターを対象としたプロジェクト・ビッグ・グリーンだけでなく、多岐に亘っている。「Intelligent Transportation Systems」は自動車の走行を効率化することを目的としている。「Intelligent Utility Network」は、電力を効率的に送電するシステムである。これらは省エネというよりは、ITを活用した環境問題の解決策であり、総合的な技術力が要求される分野である。

 

汎用機と省エネの関係

IBM省エネ技術は漏れなく広範囲に亘り、現実的で優れたソリューションを提供しているが、目新しい技術ではない。一方、プロジェクト・ビッグ・グリーンの中で、台風の目となりそうな技術が汎用機である。汎用機はダウンサイジングにより、市場から淘汰されてきた。しかし、オープンソースの広まりとともに、汎用機がリナックス・システムとして生まれ変わっている。IBMによると、昨年から今年にかけてIBM汎用機の売り上げが急増し、今年の売上高は昨年に比べて25%伸びている。また、出荷されている汎用機の四分の一がリナックスを搭載している。

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高い稼働率を誇る汎用機 (System z) は、価格性能比が向上している。現行サーバーの低い稼働率と高い消費電力を勘案すると、両者の生涯コストはほぼ互角となってきた。(出展: IBM)

 

汎用機で大きな力を発揮するのが仮想化技術 (z/VM) で、仮想マシンの上で複数のリナックスが稼動する構造となっている。IBMはこれを「極限の仮想化」(Extreme Virtualization) と呼んでおり、ヴィエムウェア (VMware) より優れた技術で、密に詰まったリナックス・システムを提供している。IBMはシステム360 (System/360) の出荷を始めた1960年代から仮想化技術を提供しており、その技術力は他社を寄せ付けない。z/VMでは一つの仮想マシンの上で数百のリナックスを稼動させることができ、インテルサーバーを大量に買い込むよりは、汎用機一台でシステムを構築するほうが運用が楽である。また、汎用機ではシステム価格が安くなるだけでなく、二酸化炭素の排出量を抑えることができ、環境対策としても有効な手段である。チープ革命で安いと思っていたインテルサーバーが、実は台数が増えるにつれてその維持費が嵩み、汎用機より手間とコストがかかる事態になってきた。

 

汎用機の再起用

IBMはリナックスを搭載した汎用機を販売するだけでなく、社内データーセンターで積極的に活用している。IBMはデータセンターの統合を進めており、ここで使われている3900台のサーバーを30台の汎用機 (System z9) で置き換える計画である。更にIBMはレッドハットと提携して、セキュアーなリナックスの開発を行っている。IBM汎用機のリナックスは、コンピューター・セキュリティーの国際規格である「コモン・クライテリア」 (Common Criteria) EAL4+ (商用製品で最も厳しいセキュリティー基準) と認定された。IBM汎用機でのリナックス・システムが最も安全性の高いシステムとして、国防関係に納入されることとなる。

 

トレンド

グーグルのデーターセンターでは、数十万台のサーバーが稼動していると言われており、電力消費量や維持費の観点からは無駄の多いシステムである。グーグルは豊富な資金と優秀なエンジニアでこれを支えているが、今後、環境に優しい汎用機に乗り換えるのか興味深いテーマである。IBM汎用機はサーバーに淘汰されて行くのとは反対に、リナックスとの組み合わせで新市場を見出した。省エネ型システムとしての圧倒的な優位性で、この流れが加速しそうである。長年に亘り培われてきた汎用機が、いまその実力を再認識されている。優れた製品が市場より正しい評価を受け、少し救われた気がする。

RE < C

Friday, December 7th, 2007


今年のクリスマスは異変が起こっている。例年だと、近所の家では庭に飾りつけをし、夜には数多くの電球が灯り、クリスマスの雰囲気が盛り上がっていた。毎年この飾り付けが派手になっていたが、今年は、地球温暖化を意識しているのか、この飾り付けが極めて質素となった。今年はアメリカ人のエネルギー諸費に対する意識が根本的に変わった年である。

 

グーグルの挑戦

企業も急速にグリーン・コンピューティングに舵を切り始めた。先月、グーグルは、「Renewable Energy Cheaper Than Coal(石炭より安い再生可能エネルギー、略してREというプロジェクトを発表した。これは石炭による火力発電より安いコストで、クリーンな電力を生み出すプロジェクトである。グーグルが自社で使用する電力を、クリーン・エネルギーで賄うだけでなく、1ギガワットの電力 (サンフランシスコが消費する電力に相当) を発電する計画である。このために、グーグルは自社でエンジニアを採用し、更に、有望なスタートアップに投資を行うという計画である。

 

石炭による火力発電が、全世界の電力供給量の40%を占めていると言われており、これが二酸化炭素排出の主要な発生源となっている。これは石炭による火力発電が一番安いためであり、そのコストは6セント/kWhといわれ、このコストが再生可能エネルギーの目標値となっている。ちなみに太陽光発電のコストは20セント/kWh程度で、まだまだ大きな開きがある。各社がしのぎを削っている中、グーグルはこれを下回るコストで、大規模な発電ができるクリーン・エネルギー技術の開発に踏み出した。

 

グーグルのクリーンエネルギー開発の歴史

昨年グーグルは、マウンテンビューにある本社キャンパスのビルの屋上に、太陽電池を敷き詰めて、自社で消費する電力の30%をこの太陽電池で発電している。グーグルはいち早くクリーン・エネルギーへの取り組みをはじめ、この分野で市場をリードするようになってきた。今年は、グーグルの駐車場の屋根全体に太陽電池を敷き詰めて、ここからトヨタ・プリウスに電気を供給できる方式を考案した。

 

グーグルはプリウスを改造し、高性能の大型バッテリーを搭載し、これを駐車場で充電できるようにした。また、プリウスが走行してバッテリーに充分電気が溜まっているときは、プリウスから電力会社 (Pacific Gas and Electric) に電気を戻し、電力を販売できる仕組みを考案した。

 

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このプロジェクトは「RechargeIT」と呼ばれ、家庭の120ボルトのコンセントからプリウスを充電できるだけでなく、余剰の電力を電力会社に販売することができる。街中をこんな自動車が走っているのを時々目にする。自動車がミニ発電所として機能し、利用者が電力を消費すると同時に発電も行う。これが普及した暁には、発電所のロングテールとなるのか。(出展: Google.org)

 

グーグルが投資しているベンチャー

RE」では、グーグルが自ら技術開発をするだけでなく、グーグルが先進的なスタートアップに投資をしている。インテル・キャピタルが、先進的IT企業に投資をしているのと同じように、グーグルがベンチャー・キャピタリストとなり、有望なエネルギー企業を育てている。グーグルが投資している企業に、「イーソーラー」 (eSolar) と「マカニ・パワー」 (Makani Power) がある。

 

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eSolarは扇形状の反射板の集合体から太陽光をタワー上部に集約し、ここで水を熱して発電機のタービンを回す方式。タワー式太陽熱発電と呼ばれ、低コストで大規模な発電ができるのが特徴。(出展: eSolar Inc.)

 

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Makani Powerは上空での風力発電技術を開発している企業。巨大な凧を高い高度に揚げて発電を行うという方式。地上と比べて高度10,000メートルでは高速の風が安定して吹いているため、このリソースを利用しようという試み。ただし、その詳細は公表されていない。(出展: Makani Power Inc.)

 

グーグルとクリーン・エネルギーの関係

検索エンジンを開発している企業がなぜクリーン・エネルギーの開発を行うのか、業界からは疑問の声が絶えない。ウォール・ストリートのアナリストは、グーグルがエネルギー開発という畑違いの領域に手を染めると、必ず業績が悪くなるとして、否定的な意見が多い。グーグルはもともとGoogle.orgという非営利団体で、地域やコミュニティーに対する慈善活動を行っている。「RE」もこの一環で、地球温暖化対策を行い、世界の環境対策に貢献しているというのが大方の解釈である。

 

一方で、グーグルは携帯電話事業から月面探査プロジェクトまで、急速に守備範囲を広げている。クリーン・エネルギー対策はクリーンなエネルギーを生み出す技術と、それを効果的に使う技術に区分できる。多くのIT企業は後者の技術開発を目指しているが、グーグルは前者の技術を追求している。グーグルはここに大きなビジネス・チャンスがあると見ているのか。また、今後はこの両者が融合して、新しい市場が生み出されると見ているのか。将来のIT企業は、クリーンな電力の生成から、その効率的な利用まで、一貫して提供することになるのか。世界の頭脳が集まっているグーグルは、再生可能エネルギー技術の開発に乗り出した。

 

トレンド

IT企業が一斉にクリーン・エネルギーに向かい始めた。グーグルの対極に位置するのがIBMで、今年5月、「Project Big Green」を発表し、省エネ型データセンター技術を紹介した。また多くのベンチャー企業は、独自のアイディアでこの問題に取り組んでいる。これから数回に分けて、IT企業における環境問題対策の先進的技術を紹介する。