Archive for May, 2009

最適なエコ製品推奨サービス (Green:Net 09より)

Friday, May 29th, 2009

カリフォルニア州サンフランシスコで開催された、「Green:Net 09」 (グリーンネット 09) では、情報通信技術を地球温暖化問題解決のために、如何に活用すべきかが、中心テーマであった。カンファレンス出席者は、エネルギー分野の専門家が多く、いつもとは異なる雰囲気の中で、新しい技術やアイディアが議論された。

 

サンフランシスコ市長の講演

地元サンフランシスコからは、市長であるGavin Newsom (ギャビン・ニューサム) が、カンファレンスの冒頭に基調講演を行なった。Newsomは、市が取り組んでいる、地球温暖化対策について紹介した。この模様はYouTube(http://www.youtube.com/watch?v=L5Oa0zQd17w&) で見ることができる。Newsomは、先進的なエコ政策の事例として、完成したばかりのグリーンな博物館を紹介した。

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この建物はCalifornia Academy of Sciences (カリフォルニア科学アカデミー、上の写真中央部の建物、出展: Doug Letterman) で、昨年9月にリニューアル・オープンした科学博物館である。Newsomは、「California Academy of Sciencesは、LEED Platinumの認定を受けた」と紹介した。LEED (Leadership in Energy and Environmental Design) とは、アメリカのグリーン・ビルディングの認定基準で、建物が環境に及ぼす要因を、エネルギーや水の使用効率、建材がリサイクル素材を使用している比率等で評価する。California Academy of Sciencesは、その最高位であるPlatinumを受賞し、全米で最も環境に優しい博物館と評価された。

 

この他に、Newsomは、Better Placeと共同で、サンフランシスコに電気自動車を導入する計画を紹介した。また、Newsomは、サンフランシスコ湾で潮流を利用した発電を計画していることも紹介した。Googleと共同で、サンフランシスコ市街にWiFiネットワークを施設したように、Newsomはテクノロジーを重視した政策を取っている。この政策について、Newsomは、「サンフランシスコ市は新技術のインキュベータとして機能している」と説明した。市がベンチャー企業養成の役割を担っていることが分かる。Newsomはこれを、サンフランシスコ市は「Laboratory of Innovation」であると表現した。サンフランシスコで再生可能エネルギーなど新技術が登場する背景には、ベンチャー・キャピタルだけではなく、市の政策が大きく関与していることを、改めて認識した基調講演であった。

 

Wattbotという企業

カンファレンスでは、Startup Launchpad (スタートアップ・ローンチパッド) というセッションで、環境ビジネスを目指す新興企業10社が、壇上で新技術紹介を行なうという場が設けられた。これら新興企業は、ベンチャー・キャピタルからのファンディングが付く前の生まれたての企業で、グリーン・ビジネスという新しい分野で、ユニークな技術を紹介した。プレゼンテーションの後に、三人の審査員が採点を行い、優勝者を決めるという方式であった。更に、すべてのプレゼンテーションが終了した後には、会場の出席者が、携帯電話のショート・メッセージで投票を行い、会場審査も行なわれた。

 

Startup Launchpadで、審査員が選んだ優勝者が、「Wattbot」(ワットバット) という企業である。Wattbotは、サンフランシスコに拠点を置き、エコ製品購入のための各種情報やツールをウェブサイトで提供している企業である。Wattbotは、下のスクリーンショット (出展: Wattbot) のように、消費者に最適なエコ製品を推奨する機能を提供している。

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消費者は、Wattbotのサイトで会員登録を行い、名前や住所などの基本情報を入力する。更に、消費者は、家屋の広さ、月々の電気代、現在使用している空調装置、冷蔵庫、温水器、洗濯乾燥機などの情報を入力する。Wattbotは、これらの情報をもとに、その家庭に最適なエコ製品を推奨し、その製品の概要と価格、年毎の節約金額を表示する。Wattbotは家電製品以外にも、太陽光発電パネルについても推奨を行なう。消費者は推奨製品について購入を希望する場合は、商品販売店紹介のページに進む。ここで消費者は、販売店のリストと、販売店の評価を見ることができる。この中から、気に入った販売店を選び、コンタクト・ボタンをクリックする。複数店舗へ同時にコンタクトすることも可能で、販売店からの回答をWattbotのサイトで受け取る仕組みである。

 

一方、製品販売店は、Wattbotに会員登録し、製品やその特徴を入力することで、Wattbot上に出店することができる。消費者が求めている製品仕様にマッチすれば、消費者側に推奨製品として提示される。消費者が、前述のコンタクト・ボタンをクリックすると、これが見込み顧客情報として、消費者の家庭におけるエネルギー消費情報とともに、販売店に提示 (下のスクリーンショット、出展: Wattbot) される。

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考察

Wattbotは、このように、エコ製品について、消費者と販売店を仲介するサービスを提供している。Wattbotが自らエコ製品を販売する訳ではなく、エコ製品販売店に有料でセールス・リードを提供する。ちょうど今月、OpenTableという、レストラン予約サービスを提供している企業が株式公開を行なった。久しぶりの株式公開で話題となった企業である。利用者は、OpenTableでレストランを検索し、そのままウェブで予約でき、とても便利なサイトである。Wattbotはこのモデルをエコ製品に適用している。太陽光発電パネルをはじめ、様々なエコ製品が登場し、これらが小規模な店舗で販売されている。Wattbotは全米で小規模店舗のロングテールを束ねる事業を目指している。

地球温暖化対策の目標値 (Green:Net 09より)

Friday, May 22nd, 2009

カリフォルニア州サンフランシスコで、インターネットや情報通信技術を、地球温暖化対策に役立てるという、ユニークなカンファレンスが開催され出席した。このカンファレンスは、「Green:Net 09」 (グリーンネット 09) という名称で、ゴールデンゲート・ブリッジの袂に位置するPresidio (プレシディオ) で、先々月、開催された。

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本題とはそれるが、カンファレンスの会場は、「Golden Gate Club」 (上の写真、出展: The Presidio Trust) という、元アメリカ軍の施設で行なわれた。白い壁とシエナ色の屋根のこの建物は、歴史的に重要な場所である。1951年9月8日に、サンフランシスコのWar Memorial Opera House (通称オペラハウス) で、Treaty of San Francisco (サンフランシスコ講和条約) が締結され、日本と連合国の間で、第二次世界大戦が正式に終結した。この調印式のあと、日本とアメリカは、このGolden Gate Clubで、「Joint Security Pact between the United States and Japan」(日米安全保障条約) を締結した。この条約は、吉田茂内閣総理大臣により署名され、後の日米安保に繋がることになる。今回のカンファレンスは、日米安全保障条約が署名された会場で開催され、地球温暖化問題が議論された。

 

Makaniという企業

カンファレンスの中で特に興味深かったのが、Makani Power (マカニ・パワー) の社長であるSaul Griffith (ソウル・グリフィス) による「An Engineer’s Approach To Climate」 (エンジニアとしての気候問題への取り組み) と題する講演であった。Makaniとは、上空の風を利用した風力発電技術を開発しているベンチャー企業である。Google.orgがこの企業に投資していることから、一躍有名になった会社である。一方で、Makaniが開発している技術については、殆ど公表されておらず、ベールにつつまれている。その概要を垣間見ると、Makaniは、上空5キロから10キロにカイトを上げて、ここで風力発電を行なう構想である。カイトにはタービンが設置されていて、上空でタービンが風車の役割をして、発電をするという仕組みである。発電された電力は、カイトを固定するケーブルを通して地上に送電する。風が無いときは、タービンを電力で回し上空に留まる仕組みになっている。

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このグラフィックスは、Makani 社製ではなく、Sky WindPowerという会社が開発している製品の完成予想図で、上空で風力発電を行なうことを目指している。Makaniの方式は、写真のSky WindPowerにカイトを装着した形状であると思われる。

Griffithによる基調講演

次世代エネルギーを開発している会社の社長であるGriffithが、地球温暖化問題対策に、どのようなスタンスで対処すべきかという、興味深い講演をおこなった。Griffithは、シドニー出身の、30歳半ばの素材分野の研究者で、多くの企業を創設してきた。今回の講演は、Makaniの紹介ではなく、地球温暖化問題を議論するときに基礎となる考え方を紹介した。この講演はYouTube (http://www.youtube.com/watch?v=hxwHStgUs48&) に掲載されている。Griffithは、この講演で、我々に、環境問題にたいして、どんなオプションを選択すべきかについて問いかけている。

 

地球規模の目標値

Griffithの基調講演の中心メッセージは、地球規模で共通の目標を設定することだとしている。Griffithの提案は、2100年までに、地球大気の二酸化炭素濃度を450ppmに押さえることだとしている。数学モデルを使って試算すると、この二酸化炭素濃度では、地球の気温が1980年を基準に2℃上昇するとしている。地球の気温が2℃上昇すると、海中のサンゴの90%が死滅するなど大きな打撃があるが、温度が下降すればまた元に戻ることができる点であるとしている。反対に、気温が2℃以上上昇すると、非可逆プロセスとなり、元に戻ることができなくなるとしている。

 

次のグラフは、ハワイのマウナロア山頂で測定された、二酸化炭素の濃度を1978年からプロットしたものである。(出展: National Oceanic and Atmospheric Administration) 青色のグラフは月毎の二酸化炭素濃度の平均で、赤色のグラフが年毎の平均である。1979年の平均二酸化炭素濃度は336.78 ppmで、2008年は385.57 ppmで、30年間で48.79 ppm増加している。このペースで二酸化炭素が増え続けると、40年後の2048年には二酸化炭素濃度が450ppmを超えることになる。

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ここから少し議論がジャンプするが、Griffithによると、450ppmの目標値を達成するためには、2033年までに、次のような組み合わせで、クリーン・エネルギーを生成する必要があるとしている。2033年には、地球全体で16テラワットの電力が必要で、それを再利用可能エネルギーで生成するには、原子力発電で3テラワット、地熱発電、風力発電、太陽熱発電、太陽光発電でそれぞれ2テラワット、バイオ燃料で0.5テラワットとしている。ここには従来型の火力発電所2テラワットが残っているとしている。この目標を達成するためには、原子力発電所 (3ギガワットの発電能力) だけで1,000基の新設が必要で、今から猛烈なペースでクリーン・エネルギー施設の建設を進める必要があると結論付けている。

 

まとめ

Griffithの主張は、我々はどのような社会を望むのか、世界レベルでコンセンサスが必要であるとしている。二酸化炭素濃度を指標に、目指すべき社会像を決め、ここから逆算して、クリーン・エネルギーを生成すべきであるとしている。58年前に、この地で、第二次世界大戦後の世界秩序が合意されたが、今回は環境問題において、世界レベルのコンセンサスが求められている。

行動ターゲッティング広告 (1) (Ad:Tech 09より)

Friday, May 15th, 2009

カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたAd:Tech (アドテック) には、広告関連技術を開発している多くのベンチャー企業が参加していた。その中で、Behavioral Targeting (行動ターゲッティング) の手法で広告技術を提供している企業も少なくなかった。

 

AdBriteというベンチャー企業

AdBrite (アドブライト) は、サンフランシスコを拠点として、広告ネットワークを運営している企業である。AdBriteは、広告ネットワークの上で、広告主が的を絞って広告メッセージを表示する、行動ターゲッティングという手法を提供している。広告ターゲッティングとは、利用者の嗜好を把握して、利用者が感心を持っているであろう広告を表示する技術である。例えば、旅行を趣味としている人に対しては、ヨーロッパ腺の割引航空券の広告を、バナーで表示するなどの手法である。個人に特化した広告技術であり、この手法でコンバージョン率の向上を目指している。

 

AdBriteのブースで、営業担当のTommy Burton (トミー・バートン) から、AdBriteの機能について、パソコンやカタログを見ながら説明を聞いた。AdBriteは、行動ターゲッティング方式の広告で、最大級のネットワークを運営している。Burtonは、「AdBriteの特徴は、行動ターゲティングをはじめ、様々なターゲッティング技術を採用していることである」と説明してくれた。行動ターゲッティング以外に、AdBriteは、「利用者の地域や性別・年齢に最適な広告、また、ウェブサイトのコンテンツにマッチした広告を表示する」と説明した。多くのウェブサイトでは、行動ターゲッティング技法を単独で採用するのではなく、複数のターゲッティング技法を複合して、最適な広告表示を行なうのが主流である。更に、Burtonによると、AdBriteは「Open Targeting Exchangeという広告プラットフォームで、ソフトウェア企業が様々なターゲッティング機能を提供している」と説明した。つまり、AdBrite一社で全ての技術を開発するのではなく、システムのAPIを公開して、それぞれ得意な企業がターゲッティング技術をAdBriteに提供している。

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行動ターゲッティングの実例: AdBriteで広告を購入する際に、広告主は上のスクリーンショット (出展: AdBrite) のように、広告を掲載するカテゴリーを選択できる。

 

考察

Googleは08年3月に、広告配信サービス会社であるDoubleClickを買収し、この技術を使って、今年3月から行動ターゲッティング広告をスタートした。Googleは、利用者のウェブ閲覧履歴をクッキーに格納し、利用者の嗜好を把握する。そして、Google広告ネットワーク上で、利用者に最適な広告を表示する。つまり、Googleは従来のAdWordsとAdSenseに加えて、行動ターゲッティング技術で、多角的に広告表示を最適化している。行動ターゲッティング技術は、特殊な技術ではなく、広告表示において必須オプションとなってきた。

行動ターゲッティング広告 (2) (Ad:Tech 09より)

Friday, May 15th, 2009

eXelate (エクセレイト) という会社は、イスラエルのベンチャー企業で、行動ターゲッティング領域でユニークなビジネスを展開している。eXelateは、自ら行動ターゲッティングの手法で広告配信を行なうのではなく、広告ネットワーク企業に、行動ターゲッティング基礎データを販売する事業を展開している。eXelateのブースにおいて、Chief Technology OfficerであるElad Efraim (イラッド・エフレイム) から、eXelateの機能について説明を受けた。

 

eXelateのビジネス手法

行動ターゲッティングでは、利用者の嗜好に沿った広告を表示するのであるが、その基礎データを如何に収集するかが鍵になる。Efraimによると、「利用者データについては、ソーシャル・ネットワークから収集する」と説明してくれた。eXelateが、ソーシャル・ネットワークを運用している訳ではないので、「これらデータをソーシャル・ネットワーク運用者から購入する」と説明してくれた。Efraimは、購入したデータの使用方法について、「英語版Facebookを使っているスペイン人会員に、スペイン語で広告を掲載することで、クリック・スルー率が三倍から五倍に向上した」と、その使い方と効果を説明してくれた。Facebook会員のように、個人のプロフィールが入力され、個人の行動がログされ、また、個人の購買活動まで追跡しているサイトでは、個人データには様々な情報が詰まっている。

 

この他にも、多くのウェブサイトで、個人情報を収集している。Efraimは、具体的な名前は出さなかったが、便利な旅行サイトなどが使われてる。例えばKayak (カヤック) という航空運賃検索サイトがそのひとつである。Kayakは、様々な航空運賃サイトの中から、最安値のフライトを探してくれる、とても便利なサイトである。アメリカで旅行する人は、必ずお世話になっているサイトである。利用者がKayakにアクセスするとクッキーが生成される。利用者は出発地、目的地、日付、クラスなどを入力すると、これら入力情報が個人情報として収集される。先のFacebookと同様に、利用者データが売買され、当該利用者は、航空券を購買する意図のある見込み顧客として登録される。このデータを購入した広告ネットワークは、この利用者がアクセスしたサイトに、航空券の広告バナーを表示するという仕組みである。

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利用者としては、自分が知らない間に、個人データが売買されるとは、あまりいい心持はしない。行動ターゲッティングでは、広告表示最適化と個人のプライバシー保護が常に表裏一体である。eXelateはこの問題に対して、収集されたデータを利用できないよう、利用者が設定する機能を設けている。(上のスクリーンショットで左下のボタンを選定、出展: eXelate) 反対に、利用者は、積極的に自分が好みの分野を指定して、最適な広告表示をしてもらう機能も搭載している。(スクリーンショット中央部分。) 行動ターゲッティング技術は、プライバシー保護を行ないながら個人情報を操作するという、微妙なバランスの上で成立している。

iPhone向け広告技術

Monday, May 11th, 2009

カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたAd:Tech (アドテック) では、会場にMobileMix Zone (モバイル・ミックス・ゾーン) が設けられ、携帯電話向けの広告技術が紹介された。また、パネル・ディスカッションでは、携帯電話向けの広告メッセージの効果を如何に計測するかなどが議論された。

 

MedialetsiPhone向け広告

Ad:Tech開催中に、Medialets (メディアレッツ) という企業が話題になった。Medialetsは、カリフォルニア州サンマテオに拠点を置くベンチャー企業で、Apple iPhoneを中心に広告技術を開発している。Ad:Techには出展していなかったが、同時期に、MedialetsはiPhone向けにユニークな広告 (下のスクリーンショット、出展: The Editorial Engine) を開始した。

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このれはLevi Strauss (リーバイ・ストラウス) 社のDockers (ドッカーズ) ブランド向けの広告で、カーキ色のズボンのビデオ・コマーシャルである。 この広告は、iPhone上のアプリケーションの中に組み込まれている。iPhoneアプリケーションは、Apple iTunes Storeからダウンロードして利用するが、この広告は無料ゲーム・ソフトウェアであるiBowl (アイボール) やiBasketball (アイバスケットボール) などに組み込まれている。

 

iPhoneでiBowlを起動すると、アプリケーションのローディングが始まり、初期画面が登場する。そしてこの広告ビデオが、ゲームの前に、プレロールという形式でスタートする。この広告はストリート・ダンサーであるDufon Smith (デュフォン・スミス) が、Dockersのズボンを穿いてダンスするだけであるが、途中でダンスが停止する。広告は利用者に、ダンスを続けるために、iPhoneを振るように指示を出す。iPhoneを振るとダンスが再開される。ダンスが終わると、アンコールするために、再度iPhoneを振るように指示が出る。iPhoneを振ればダンスが再開されるという仕組みである。音楽もダンスもお洒落な出来で、何回もiPhoneを振って、広告を見ることになる。この模様はYouTube(http://www.youtube.com/watch?v=NwnuwGhcpRU&feature=channel_page) に掲載されており、一連の流れを見ることができるだけでなく、見て楽しいコマーシャルである。

 

Medialetsの仕組み

この広告ビデオは、広告代理店であるOMDのIgnition Factory (イグニション・ファクトリー) 部門が制作したものである。このビデオの撮影は、Microsoftが買収した広告会社aQuantive (アクワンティブ) のRazorfish (レイザーフィッシュ) 部門が手がけている。この広告ビデオをiPhone に統合するための技術を、Medialetsが提供している。Medialetsは、iPhoneアプリケーション開発者と広告代理店向けに様々な機能を提供している。アプリケーション開発者には、Advertising SDKとよばれる開発環境を提供している。これを使えば、開発者はアプリケーションの中に、簡単に広告メッセージを組み込むことができる。

 

Analytics SDKでは、利用者の挙動をモニターする機能を提供している。先のダンスの例では、利用者が何回アプリケーションを起動して、何回広告ビデオを見たかの情報を、このSDKで収集する。これらの利用者情報は、一旦、iPhoneの中のデータベース (SQLite) に格納される。iPhoneがネットワークに接続された際に、これらのデータをMedialetsのサーバに送信する仕組みになっている。今回のケースでは、iPhoneを振るという動作が、iPhone内の加速度計で計測され、利用者がいつ何回iPhoneを振ったかというデータを収集できる。つまり、広告主は、このコマーシャルが、いつ、何回、どれだけの時間、見られたかを把握できる。

 

Medialetsは、他にAd Action (アド・アクション) として、アプリケーションと利用者の様々なインターフェイスを提供している。Click to Callでは、利用者がボタンを押すと、広告商品販売元に電話をかけることができる。Click to App Storeでは、ボタンを押すとApple iTunes Storeにリンクし、そこで広告のアプリケーションをダウンロードできる。Click to GeoLocateは、ボタンを押すと店舗の位置をGoogle Mapsに表示する。これらの情報が、iPhoneからMedialetsに送信され、アプリケーション開発者や広告主は、放送した広告がどのように見られているかの統計情報を得ることができる。インターネット上の広告が、何回表示され、何回クリックされたかを測定するのと同じように、Medialetsは、iPhone上の広告効果測定機能を提供している。

 

考察

日本の携帯電話市場はガラパゴス化しているとの記事をしばしば目にするが、携帯電話のOSの観点からすると、日本は世界の標準偏差の中に位置し、世界のトレンドに沿っている。いまガラパゴス化しているのは北米の携帯電話市場である。北米において、携帯電話のシェアが、特異な動きをしている。従来型の携帯電話から、iPhoneを含むスマートフォンのシェアが大きく伸びている。スマートフォンのOSはSymbianが主流であるが、北米だけはiPhoneが突出している。GoogleのAndroidもこの市場に参入してきた。

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iPhoneでは、20,000本のアプリケーションが登録されており、利用者が急増している。このアプリケーションでは無償のものが数多く使われており、ここが広告掲示の中心舞台となってきた。(上のスクリーンショット、iPhone上のゲームでは画面下部に広告が表示される。出展: Thump) 無償でアプリケーションを使う代わりに、広告を表示するという仕組みである。iPhoneでの広告は、Appleのイメージに沿って、お洒落なクリエイティブが増えてきた。携帯電話では個人を特定でき、GPSで場所を特定できるため、個人や位置に特化した広告が登場するのは時間の問題である。この市場にAndroidも加わり、スマートフォンでの広告がホットな話題となってきた。