Archive for July, 2009

簡易版セマンティック広告 (SemTech 09より)

Friday, July 24th, 2009

同じく、「Semantic Advertising Roundtable」から、セマンティック広告の最新技術を紹介する。パネル・ディスカッションでは、Dapper (ダッパー) というベンチャー企業が、誰でも簡単に使える、セマンティック広告配信サービスを紹介した。

 

Dapperの機能概要

Dapperは、サンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業で、ウェブ時代に相応しく、ブラウザー・ベースで、クリエイティブの作成から、配信まで行なえるサービスを提供している。パネル・ディスカッションでは、Product Management担当副社長であるAmit Kumar (アミッド・カマー) が、Dapperの機能を紹介した。Dapperは、非常にユニークなウェブサービスで、ウェブサイトのコンテンツを読み込んで、編集し、他のサイトに、ダイナミックに配信する機能を提供している。

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もともとDapperは、ウェブサイトのコンテンツを編集して、XMLやRSS形式で、他のサイトや利用者に配信する機能を提供している。Dapperの利用者は、ウェブサイトを指定して、ウェブページのコンテンツをコピーして、編集して、他のウェブサイトに配信する。上のスクリーンショット (出展: Dapper) は、YouTubeのページの一部である。利用者は、このページの中で、配信すべきコンテンツを指定しているところである。利用者は、ビデオや、タイトルや、説明文など、希望するコンテンツを選び出す。オレンジ色の枠が、選択されたコンテンツを示している。これら選択されたコンテンツは、簡単な編集を経て、ウェブページとして保存される。このウェブページはDapp  (ダップ)  と呼ばれ、このDappが、別のウェブサイトに配信される。配信形式は、XML、RSS、Google Mapsなど、様々な方式をサポートしている。

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広告配信への応用

Dapperの仕組みを、広告配信に応用した事例が、上のスクリーンショットである。(出展: Dapper) ホテルチェーンのMarriott (マリオット) が、旅行サイトであるFodor’s (フォーダーズ) に、広告を掲載している様子である。Marriottのサイトで、都市名で検索をして、その地域のホテルの写真と概要説明を選択し、Dappを作成する。次に、Fodor’sのサイトで、ページ構造を解析し、そこに登場する都市名に関連するDappを、受信して表示するよう指定する。上のスクリーンショットは、Fodor’sで、ベルリンのページを開いたところである。サイト上に、ベルリン市内のホテルの紹介が、ポップアップ画面に紹介されている。Dapperを使えば、旅行サイトの都市名に対応するホテルの広告を、10分以内に作成できるという、超簡単セマンティック広告作成の事例である。広告クリエータの多くが、ジェネレーションYであり、Dapperは、若い世代に向けた、広告作成と配信サービスを提供している。

セマンティック広告 (続) (SemTech 09より)

Friday, July 24th, 2009

セマンティック技術のカンファレンスであるSemTech (セムテック) における、「Semantic Advertising Roundtable」から、引き続き、セマンティック広告の最新動向を紹介する。このパネル・ディスカッションでは、Peer39 (ピア・サーティーナイン) というベンチャー企業が、同社のセマンティック広告技術を紹介した。

 

Peer39というベンチャー企業

Peer39は、ニューヨークに拠点を置くベンチャー企業である。パネル・ディスカッションでは、CEOのAmiad Solomon (アミアッド・ソロモン) が、製品コンセプトや使用事例などを紹介した。Peer39のアドバイザリー・ボードには、Eytan Elbaz (エイタン・エルバス) やDaniel Jaye (ダニエル・ジェイ) など、広告技術開発の歴史を形成した人物が、名を連ねている。Elbazは、Applied Semanticsという会社を創設して、「Contextual Ads」という、ウェブページの内容に沿った広告配信技術を開発した。この会社は、2003年に、Googleに買収され、AdSenseの基盤技術を構成している。

 

Jayeは、Tacoda (タコーダ) というベンチャー企業のCEOとして、会社を運営してきた。Tacodaは、「Behavioral Ads」という手法で、利用者のウェブ閲覧履歴を解析して、利用者の嗜好に沿った広告を配信する技術を、提供している。Tacodaは、2007年に、AOLに買収され、現在では、同社の広告ネットワークであるPlatform-Aに組み込まれている。Peer39のボードメンバーが、広告技術進化の歴史を物語っている。広告技術は、Contextual Adsから出発し、Behavioral Adsに進化し、更に、Peer39で開発している、「Semantic Ads」 (セマンティック広告) に進展している。

 

Peer39のセマンティック広告

Solomonは、Peer39のセマンティック広告は、ソフトウェアが、ウェブページの内容を読み込んで、その内容を把握し、ページに最適な広告メッセージを選択する、と説明した。Peer39は、クッキーを使わないで、リアルタイムでウェブページを解析して、最適な広告を配信する。Peer39は、ウェブページの文章全体を見て、意味を理解し、その区分を決定する。「Amazon is a great place to visit」という文章が現われるページは、旅行やブラジルなどに区分けされる。「Amazon is a great site to visit」では、Eコマースに区分される。従来型の検索技術では、この両者の違いを、判別することができなかった。

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適用事例

Solomonは、このシステムはNewsweek (上のスクリーンショット、出展: Newsweek) などで使われており、記事の内容に沿った、広告メッセージを配信していると説明した。ニュースという区分は、その中に数多くのセグメントを含んでいる。Solomonは、これらを厳密にに定義して、ニュース記事に対して、最適な広告を配信していることを強調した。

セマンティック技術が、広告配信で、必須の機能になりつつある。

セマンティック広告 (SemTech 09より)

Thursday, July 16th, 2009

セマンティック技術のカンファレンスである「2009 Semantic Technology Conference」 (通称SemTech、セムテック) から、引き続き、今年のセマンティック技術動向について報告する。先のレポートで述べたように、今年のSemTechの特徴は、セマンティック技術が、直接、ビジネスに貢献していることである。セマンティック技術が、研究段階から成長し、便利なツールを経て、製品の中に要素技術として組み込まれてきた。このレポートでは、セマンティック技術を広告配信に応用した事例を紹介する。

 

Expert Systemという企業

カンファレンスの中で「Semantic Advertising Roundtable」という、最新のセマンティック広告を議論するパネル・ディスカッションに出席した。このセッションでは、セマンティック技術を、広告配信に応用した事例が紹介された。その中で、Expert System USAからは、CEOであるBrooke Aker (ブルック・エイカー) が、Cogito (カギトー) という技術を紹介した。Expert Systemとは、イタリア国籍の企業で、アメリカではExpert System USAとして、コネチカット州に拠点を置いている。Expert Systemは、長年にわたり、セマンティック技術に特化した製品を開発している。

 

Cogito Semantic Advertiser

パネル・ディスカッションでは、Akerが、「Cogito Semantic Advertiser」という名称のセマンティック広告技術を紹介した。Cogito Semantic Advertiserは、ウェブページの内容に最適な広告を配信するためのソフトウェアである。Cogito Semantic Advertiserは、リアルタイムでウェブページの内容を理解し、それに最適な広告メッセージを選択して、配信する機能を持っている。Google AdSenseも、ウェブページの内容に沿った広告を配信するシステムであるが、Cogito Semantic Advertiserのほうが、高度な機能を搭載している。AdSenseは、ウェブページに記載されている単語を選び出し、全体の内容を推測する。一方で、Cogito Semantic Advertiserは、ウェブページを読んで、言葉の意味を理解して、そこで何が議論されているかを把握することができる。

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Akerによると、従来型の広告配信技術では、記事の内容を正確に把握できないとしている。New York Timesにおいて、ジャガーの生態を議論している記事に対して、Googleは、自動車のジャガーの広告 (上のスクリーンショット下部、出展: Expert System) を配信していると説明した。一方、Cogito Semantic Advertiserでは、単語だけでなく文脈から、ここに登場するジャガーは、生態学や環境として定義されるジャガーであり、自動車ではなく、動物であると理解する。このセマンティック技術により、ウェブページで議論されている話題に沿った広告を配信することができると説明した。

携帯電話向け広告配信と検索

Expert Systemは、携帯電話向けの広告配信や検索サービスを開始した。スマートフォンを中心とする携帯電話では、パソコン上のウェブページとは異なり、広告配信や検索において、厳しい条件が要求される。携帯電話はスクリーンサイズが小さいため、広告配信では、利用者が求めていること、そのものズバリの広告が求められる。また、検索においては、入力キーパッドが小さいため、一言で質問して、それに対して、一言で正解を配信する必要がある。通常の検索のように、回答を多数羅列したり、回答へのリンクを表示する方式は適切でない。

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上のスクリーンショット (出展: Expert System) のように、「Jay Lenoの番組に誰が登場する?」と、自然言語で質問すると、システムは、「俳優のKevin Baconと女優のHayden Panettiere」と、一言で回答する。このシステムは「Cogito Semantic Search」というソフトウェアで、セマンティック技術を使って、利用者の質問の意味を理解して、ピンポイントで回答を行なう機能を提供している。これは、上の例のとおり、多くの場合、企業が利用者に対する情報サービスとして提供している。

 

Expert Systemは、特に、携帯電話への広告配信技術に力を注いでいる。携帯電話では、デモグラフィックス (性別、住所、年収等) を容易に取得でき、最適な広告配信が可能となる。Expert Systemは、これに加えて、ダイナミックなプロフィール作成を行なっている。利用者の直近のウェブ閲覧履歴や、現時点での場所が、購買行動に大きく影響している。このため、リアルタイムで利用者のプロフィールを形成し、最適な広告メッセージを配信している。

 

動作概要

これら広告配信や検索機能の背後には、Cogitoという技術が使われている。Cogitoとは、非定型データから、そこに隠れている情報を抽出する技術である。このプロセスは、Semantic Intelligenceと呼ばれ、自然言語解析 (Natural Language Processing) 技術を使っている。入力データの文章の構造を解析し、構成要素に分解し、文章を理解し、それらの意味を把握する。そして、文章に含まれている要素の相関関係を理解し、それをConceptual Mapとして、RDF形式で出力する。Cognitoは、単語やコンテクストの相関関係を定義した「辞書」を持っており、ここに35万語を定義しているとしている。

 

考察

Cogitoとは、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」の、「我思う」の部分である。Cogitoは、前述したように、Semantic Intelligenceで、非定型データからの情報抽出技術である。これは、Business Intelligenceという、定型データから情報を抽出する技術に対応した用語である。ウェブの殆どが非定型データであり、Cogitoはここから利用者にとって有益な情報を抽出している。ソフトウェアが、また一歩、人間のように考える技術を身につけてきた。