Archive for October, 2009

ライフ・キャッシング (DEMOfall 09より)

Friday, October 30th, 2009

DEMOfall 09の中で特異な存在であったのが、カリフォルニア州ダブリンを拠点とする、Rseven (セブン) というベンチャー企業である。Rsevenは、携帯電話向けのアプリケーションで、人生の出来事を記録するサービスを提供している。

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Rsevenの機能概要

DEMOのステージの上で、CEOのHisyam Halim (ヒスヤム・ハリム) が、ノキア携帯電話を使って、Rsevenの機能を実演した。Rsevenは、利用者が発信した通話と、受信した通話の、通信記録を全てログする機能を提供する。上のスクリーンショット (出展:Rseven Mobile) の通り、時間ごとに、通話相手の名前と内容を記録する。音声通話の場合は、会話の内容を、先方の了解の元に録音する。テキスト・メッセージの場合は、その内容を記録する。携帯電話で写真やビデオを撮影した場合には、それらコンテンツを保存する。携帯電話に搭載しているGPSから、これらのイベント発生の場所を同時に記録する。これらのデータは、Rsevenのサイトにバックアップされ、必要に応じて、携帯電話にリストアーできる。これらログを解析して、通話してた相手の名前や通話時間などをグラフにして見ることができる。

ライフ・キャッシング

Rsevenは、このサービスをLifecaching (ライフ・キャッシング) と呼んでおり、利用者の日々の生活をキャッシュとして保存する。通話と写真の記録をLifecachingと呼ぶのは、少し大袈裟であるが、その意図は伝わってくる。デモにおいて、Halimは、Lifecachingの応用分野について、従業員の仕事ぶりをモニターして、業務の効率化を行なうことができると説明した。四六時中監視されるのは抵抗があるが、ビジネス・ツールとして利用することを目指している。更に将来は、製品名が示唆しているように、キャッシングの機能を拡張していくと想像できる。

Rseven以外にも、自らの生活を記録するというプロジェクトは数多く進行している。その中で一番有名なのが、Microsoft ResearchのGordon Bell (ゴードン・ベル) が行なっている、MyLifeBits (マイ・ライフ・ビッツ) というプロジェクトである。Bellは、90年代の終わりにこのプロジェクトを始め、生活に関わる全ての出来事を記録している。読んだ本、論文、メモ等をスキャンして保存するだけでなく、閲覧したウェブページ、テレビ番組、電話での通話、電子メール、テキスト・メッセージ、写真、ビデオ、テレビ会議など様々な内容を記録している。Bellのブログによると、このプロジェクトの目的は、限りなく自分に近い存在を作り出すためであるとしている。しかし、人生がキャッシュされると、どんな利点があるのかについては未回答のままで、いまはそれを求めて実験を続けている。Rsevenも同様に、Lifecachingでどう生活が変わるのかを求め、試行錯誤が続いている。

Rsevenは、背後に大きなテーマを背負い、DEMOの中で異色の存在であった。

セマンティックな電子メール (DEMOfall 09より)

Friday, October 30th, 2009

DEMOfall 09のエンタープライズ部門で最優秀賞を受賞したのが、Liaise (リエイズ) というベンチャー企業である。Liaiseは、カリフォルニア州サニーベールに拠点を置き、電子メール向けのコラボレーション・ツールを開発している企業である。ステージの上で、同社のCEOであるSidney Minassian (シドニー・ミナシアン) が、Liaiseの機能を紹介した。

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Liaiseの機能概要

Liaiseは、マイクロソフト・アウトルック向けの、インテリジェントなツールである。Liaiseは、利用者の電子メールの内容を読んで、理解し、整理する機能を提供する。上のスクリーンショット (出展:Liaise) は、Minassianがアウトルックを使って、Luke MarshallとJenny Jackson宛に、メールを作成しているところである。メールの内容は、「仕様書作成が遅れていて困る。Lukeよ、すぐに提出しなさい。」というものである。Liaiseが、この内容を理解して、メールの下に脚注を挿入している場面である。Liaiseが挿入した脚注は、「Issue for Luke Marshall」 (Luke Marshallの問題)、「due: Monday, September 21, 2009」 (提出期限:2009年9月21日)、「priority: HIGH」 (重要度:高) というものである。Liaiseは、Minassianが書いているメールをリアルタイムで読み、その内容を理解して、メールの内容を、すぐに対応できる形式で整理してくれる。

この他に、Liaiseは、過去のメールのやり取りを、テーマ毎に纏めてくれる。MinassianがKeyPoint Reportボタンを押すと、電子メールのやり取りを、項目ごとに分類して表示する。電子メールが、Customer SurveysやMarketingなどのプロジェクトごとにソートされる。プロジェクトの中で、スケジュール遅延などの問題がある件は、Liaiseが項目の前にフラッグを立てる。Minassianが、フラッグをクリックすると、実際のメールを閲覧でき、そこには前述の脚注が加えられている。更に、Liaiseは、メールの中の問題が発生しているパラグラフを鍵括弧で示し、問題箇所が一目瞭然となる。

Liaiseの仕組み

Minassianは、Liaiseの仕組みについては、何も触れなかったが、機能から類推すると、セマンティック技術を使って、メールの内容を理解しているように思える。アメリカ国防省の人工知能開発プロジェクト (CALO) において、Personal Assistantという製品が開発された。Personal Assistantは、受信したメールを、テーマごとにソートする機能であるが、Liaiseは、これをもう一歩進め、プロジェクト管理機能を付け加えている。Liaiseは、優秀な秘書が、感情的なメールを解釈して、事務作業ができるように、エッセンスを抽出する機能を提供する。デモを見ていて、Liaiseは痒いところに手が届くように、心憎い機能を、さりげなく提供する点に感銘を受けた。気働きのできるソフトウェアであると感じた。Liaiseは派手さはないが、日々の業務ですぐに使えそうな製品である。

携帯電話での健康管理 (DEMOfall 09より)

Thursday, October 22nd, 2009

DEMOfall 09では、ユーザー・インターフェイスが、パソコン上のブラウザーから、iPhone上のアプリケーションに移ってきた。テキサス州オースティンに拠点を置くRingful (リングフル) もその一つで、iPhoneやAndroid向けの、健康管理アプリケーションを開発している企業である。RingulのCEOであるMichael Yuan (マイケル・ユアン) は、AlphaPitchにおいて、健康管理アプリケーションを紹介した。

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Ringfulの機能概要

Ringfulのブースにて、Yuanから、iPhone上にインストールされているアプリケーションを使って、製品の紹介をしてもらった。Yuanは、アメリカでオバマ大統領が医療制度の改革を推進していることに象徴されるように、アメリカの医療は大きな問題を抱えていると、社会背景を説明してくれた。マスコミで報道されるように、医療費の金額がGDPの17.6%を占めており、かつ、医療費の伸びがGDPの伸び率を上回っている。Yuanは、Ringfulを医療問題に対するソリューションとして開発していると、開発思想を紹介した。アプリケーションのデモで、「Asthma Journal」 (アズマ・ジャーナル、喘息日誌) を紹介してくれた。Asthma Journalは、喘息患者のためのアプリケーションで、患者が毎日の症状などを入力し、健康状態をモニターするために使用する。Asthma JournalのSymptomsの画面 (スクリーンショット左側、出展:Apple) において、喘鳴や息切れなど症状の程度を入力する。Medicationsの項目では、どんな薬を使用しているかについて、Peak Flow Measurements (息の深さ測定値) などを入力する。患者はこれらのデータを元に、健康管理を行なうだけでなく、Asthma JournalはGoogle Healthとリンクしており (スクリーンショット右側) 、ウェブ上でデータ管理を行なうことができる。更に、将来は、病院の電子カルテとリンクする計画で、医師がAsthma Journalを介して、患者の健康状態を監視できるようになるとしている。

Ringfulの構想

Ringfulは、Asthma Journalの他にPollen Journal (花粉日誌、花粉症予防) など、手軽に使える健康管理アプリケーションを開発している。Ringfulは、これらアプリケーションを、病気予防のためのツールとして開発している。患者が病院の医師に診察してもらう代わりに、Asthma Journalから、患者が日々のデータを入力し、医師が病院から患者の容態を監視する方式を目指している。更に、Yuanは、アメリカの医療費を削減するためには、利用者が自ら健康管理を行なう必要があるとしている。患者が日々の健康状態を把握して、健康な生活を送るためにも、Asthma Journalのようなアプリケーションが必要であるとしている。アメリカのバイオ・テクノロジーが示しているように、医療技術は世界の最先端を走っている。しかし、オバマ大統領が苦戦しているように、アメリカの医療システムは大きな問題を抱えている。Yuanのように若い世代のアイディアが、膠着した医療制度に新風を吹き込んでいる。

デートの相手の素性調査 (DEMOfall 09より)

Thursday, October 22nd, 2009

Intelius (インテリアス) という企業は、ワシントン州ベルビューに拠点を置き、インターネット上に散在しているデータを収集し、そこから有益な情報を抽出するサービスを提供している。DEMOfall 09では、このセマンティック技術を、デートの相手に応用した、DateCheckというiPhone向けのアプリケーションを披露した。

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DateCheckの機能概要と仕組み

DateCheckは、その名前の通り、デートの相手の背景情報をチェックするアプリケーションである。DateCheckの初期画面で、デートした相手の電話番号を入力すると、相手の素性が分かるという仕組みである。DateCheckの機能の一つが「Sleaze Detector」 (スクリーンショット左側画面、出展:Intelius) である。Sleaze Detectorは、相手の犯罪歴を検出して表示する機能である。「Net Worth」 (スクリーンショット右側画面) は、相手が住んでいる家の広さ、間取り、固定資産税額を表示するものである。デートの相手が金持ちかどうかを査定する機能である。この他に、「Compatibility」では、星占いから、両者の相性を判定する。「Living Situation」は、誰と一緒に住んでいるのかを表示する。DEMOfall 09のステージでは、若い男女二人が登場し、デートの後に女性が、相手の素性をDateCheckで調べるというシーンが展開された。会場からは爆笑と大きな拍手が起こり、一番人気のデモであった。特に周りの女性たちに大うけのアプリケーションであった。

実は昨年のDEMOfall 08において、InteliusはiSearchという、人物検索サービスをデモした。iSearchは、クローラーがインターネットで公開されている、様々な人物情報を収集し、それを整理整頓して、データベースの形で提供するサービスである。個人の名前、住所、収入、職歴、ドメイン名、学歴、電話番号を始めとし、家の住所、家の価格、家の間取り、所有者、売買履歴など、様々な情報を提供するサービスである。これらはすべてインターネット上にある情報を纏めたもので、便利なツールであると同時に、個人のプライバシー問題の観点から、少し怖くなるサービスでもある。今年はこの基礎技術を、デート相手の素性調査に応用したサービスを発表した。

基礎技術と応用技術

InteliusがDateCheckを開発した背景には、オンライン・デート・サービスが大きな市場となっているという事情がある。Inteliusは、市場の要請に応えるため、iSearchの基本機能を、オンライン・デート・サービスに焼きなおした。市場のニーズに迅速に対応する点が、ベンチャー企業の強みであるが、その変わり身の早さには、改めて驚いた。ブースにおいて、実際にDateCheckを使わせてもらった。真っ先に自分の電話番号を入力したが、Person Not Foundであった。まだInteliusのクローラーが、データを収集していないようである。データ揃ったらどう表示されるのか、とても気になるサービスである。