Archive for November, 2009

AT&Tモバイル・インターネット

Friday, November 27th, 2009

サンフランシスコにおいて、今月、Open Mobile Summitというカンファレンスが開催された。携帯電話を中心とするネットワークは、クローズドな基盤の上に構築され、ともすれば日々の技術進化に遅れをとってきた。Open Mobile Summitでは、キャリアの世界をオープンにすることで、どんな事業が可能となるかが議論され、また、生まれつつある新技術が紹介された。

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AT&Tが展開するモバイル・インターネット

先のWeb 2.0 Summitでは、スマートフォンを中心とする携帯端末上でのイノベーションが議論された。Open Mobile Summitでは、アメリカの代表的なキャリアであるAT&Tが、ネットワークを維持運営する視点からの、モバイル・インターネットを紹介した。カンファレンス基調講演で、AT&TのCTOであるJohn Donovan (ジョン・ドノバン、上の写真、出展:Open Mobile Media Ltd) は、「Mobile Internet: The New Business of Mobile Networks」 (モバイル・インターネット:無線ネットワークでの新事業) というタイトルで講演を行なった。Donovanは、キャリア側から見たモバイル・インターネットの現状を紹介し、また、Apple iPhoneを中心とするAT&Tのエコシステムについても言及した。

講演内容を要約すると、AT&Tが販売しているiPhoneの利用者数の激増で、AT&Tの予想を遥かに上回るペースで、データ通信量が増えているという内容であった。更に、オープンなモバイル環境がイノベーションを生む源泉で、AT&Tは開発環境やツールを提供して、多種多品種の携帯電話をサポートしている、という趣旨であった。基調講演の冒頭で、Donovanは、AT&Tの携帯電話のデータ通信量が激増していることをグラフで示した。07年3月から約二年間で、音声通信量は2倍に増加しているが、データ通信量は18倍になっている。Donovanは、ネットワーク上でデータ量が急増している理由として、携帯電話のほかに、ノートブック、MID (携帯インターネット機器)、ゲーム機、自動車搭載機器、Eリーダー、ナビゲーション機器などがネットワークに接続されたためと分析している。基調講演の中で、iPhoneの登場回数は少なかったが、DonovanはiPhoneのネットワークへのインパクトは想定外であったと述べた。

オープン・モバイル

Donovanは、このカンファレンスのテーマである、オープン・モバイルについて、開発環境やシステムをオープンにすることで、市場が活性化されていると評価している。具体的に、オープン・モバイルとは、Open SDK (オープンな開発環境)、Open Platform (オープンなOS)、及びWidget (オープンなアプリケーション) から構成されると分析している。Open SDKでは、Forum Nokia (ノキアの開発フォーラム)、Open PlatformではAndroid、WidgetではPlusmo (スマートフォン向けアプリケーション・ストアー) をその事例に挙げた。Apple iPhoneのOS自体はクローズでであるが、システム開発環境や、アプリケーション開発環境は、第三者が自由に参加でき、オープンであると評価している。スマートフォンを中心にオープンに向かいつつあり、これがイノベーションを生んでいると結論付けた。

AT&Tネットワーク事情

基調講演のあと、ウォール・ストリート・ジャーナルの、Walt Mossberg (ウォルト・モスバーグ) の司会で、パネル・ディスカッションが行なわれた。パネルでは、Mossbergの厳しい質問に対して、Donovanが回答する形式で進行し、熱くなった議論が展開された。この議論の背景には、AT&Tの携帯電話ネットワーク事情がある。前述の通り、iPhoneの急激な利用者数の増加で、AT&Tのネットワークが逼迫しているという事情がある。iPhone利用者数が急増しただけでなく、iPhone利用者は他のスマートフォンに比べて、10倍ネットワーク資源を消費するという統計もある。iPhone利用者がAT&Tのネットワーク資源の大きな部分を消費している。

全米において、AT&Tは900万台のiPhoneをサポートしており、その20%がニューヨークとサンフランシスコに集中している。このため、両市においては問題が特に深刻で、携帯電話の回線が通話中に切れたり、テキスト・メッセージの着信が遅れたり、また、iPhoneでデータ・ダウンロード速度が遅くなるという問題を抱えている。このような背景のもと、MossbergはDonovanに、両市におけるAT&Tの対応を詰め寄った。Donovanは、AT&Tの投資金額の多くの部分を、ネットワーク性能改善に当てていると答えた。実際に、AT&Tは、09年度に、全米で2100基のセルタワー (基地局) の増設や、光通信技術の導入で通信性能をアップグレードしている。サンフランシスコにおいても、セルタワーの増設を進めている。

アメリカ携帯電話市場

今月から、競合相手であるVerizon (ベライゾン) は、AT&Tのこの問題を、コマーシャル放送で厳しく攻撃している。下の写真 (出展:Verizon) はVerizonが放送しているコマーシャルの一部で、両社の携帯電話3Gネットワークの範囲を比較している。赤色がVerizonで、青色がAT&Tで、Verizonのほうが、カバレージが五倍広いと主張している。AT&Tは、このコマーシャルは利用者に誤解を与えるとして、Verizonを提訴し、現在も係争中である。AT&Tの空白の部分はサービスが無いわけではなく、2.5Gのサービスを提供している。しかし、AT&Tは、iPhoneなどが必要としている3Gネットワークについては出遅れていて、更なる整備が必要なことは事実である。

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Donovanの発言が示している通り、当事者のAT&Tでさえ、iPhoneの爆発的な広がりを予想することができなかった。更に、iPhoneは、携帯電話の領域を超え、パソコンのようにインターネットにアクセスする利用特性については、全く予想外であった。この爆発的な携帯端末の使われ方が、O’Reillyの主張しているウェブ・スクエアードに当たる。AT&Tが提供しているiPhoneの利用形態が、次世代を先取りした携帯端末の先行事例ということができる。

モバイル・インターネット定量分析

Friday, November 20th, 2009

Web 2.0 Summitでは、Morgan Stanley (モルガン・スタンレー) の証券アナリストである、Mary Meeker (マリー・ミーカー) が、「Economy + Internet Trends」と題して、今年の経済動向とインターネット動向について講演を行なった。 (下の写真、出展:O’Reilly Media) この講演の模様については、ここ (http://www.web2summit.com/web2009/public/schedule/detail/9176) で見ることができる。

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講演概要

Meekerは、毎年、インターネット動向について講演を行なっており、市場動向を把握する上で、重要なデータ・ポイントとなっている。Meekerは、上述の通り、証券アナリストで、インターネット市場で起こっている様々な出来事を、定量的な手法で解析している。この分析を通して、我々が日々の生活で直感的に感じている点を、数字やグラフで確認することができる。また反対に、数字で解析すると、日々の印象とは異なった方向に、インターネットが進んでいることもある。このレポートでは、Meekerの「Economy + Internet Trends」中から、今年のインターネット動向のポイントを紹介する。

「Economy + Internet Trends」は二部構成になっていて、前半が経済動向で、後半がインターネット動向である。Meekerの前半部分の結論は、経済は失業率が高いというリスクはあるものの、企業のEPS (一株利益)、インテルの収益、全世界のテクノロジー企業の収益が急速に回復しており、また、IPO (株式公開) 件数・金額とも増えており、景気は底を打って回復しているというものである。特に、テクノロジー分野においては、景気は飛躍的に良くなっていると分析している。

インターネット動向について

一番気になる、今年のインターネット動向については、Meekerは、モバイル・インターネットが予想以上のペースで伸びているとしている。モバイル・インターネットとは、スマートフォンを中心とした、携帯端末からインターネットへのアクセス形態を指す。従来型の、パソコンからのインターネットへのアクセスは、デスクトップ・インターネットと呼んでいる。今年は、デスクトップ・インターネットから、モバイル・インターネットに急速にシフトしていると分析している。更に、Meekerは、このモバイル・インターネット動向を構成する、八つの特徴を示している。

Meekerは、第一番目の特徴として、モバイル・インターネットの市場規模を指摘している。コンピュータ技術は、汎用機、ミニコン、パソコン、デスクトップ・インターネットへと進化し、いまモバイル・インターネットに進んでいる。技術サイクルがひとつ進むと、マシンの数は10倍となってきた。汎用機は100万台出荷され、ミニコンではこれが1,000万台に、パソコンでは1億台となった。今では、インターネットに接続されているデスクトップと携帯電話の台数は10億台となり、2010年にはモバイル機器の台数が100億台となると予想している。モバイル機器とは、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ゲーム機などで、インターネットに接続される各種機器を示している。

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Meekerは、モバイル・インターネット利用者数は、予測を上回るペースで進むと予測している。これを従来型のインターネットと比較すると、その違いが鮮明となる。製品出荷開始から8四半期における、Apple (iPhone + iTouch) 利用者数は、最初にISPサービスを開始したAOLの利用者数の八倍にあたるとしている。(上のグラフ、緑色の線がApple、オレンジ色の線がAOL、出展:Morgan Stanley) モバイル・インターネット利用者数の伸び率は、デスクトップ・インターネット利用者数を遥かに上まり進行している。

Apple iPhoneのインパクト

モバイル・インターネットの第二の特徴は、Apple iPhoneの出荷台数である。消費者向けテクノロジー機器の出荷台数を比較すると、出荷開始10四半期で、Apple (iPhone + iTouch) はNintendo WII、Nintendo DS、Sony PSPを抜いてトップになっており、テクノロジー製品としては破格の伸び率を示している。そして、短期的にはAppleのエコシステム (iPhone、iTouch、iTunes、サービスなど) の成長が市場の予測を上回ると見ている。しかし、長期的にはオープン・モバイル (Androidなど) や、キャリアのネットワーク性能問題がApple成長の足枷となると見ている。(キャリアのネットワーク性能問題については、来週のレポートで報告予定。)

第三の特徴として、モバイル・ソーシャルネットを指摘している。ソーシャル・ネットワークの機能拡張と、モバイル・インターネットの性能強化により、携帯端末向けのソーシャル・ネットワークが、次世代の通信基盤になるとしている。携帯端末がクラウドにアクセスして、様々な機能を利用する形態となると指摘している。更に、第四の特徴としては、日本の携帯電話市場を分析し、事業の中心が携帯端末の回線接続から、オンライン・ショッピング、有料サービス、広告事業にシフトするとしている。この有料サービスとは、オンライン・バンキングなど、ショッピング以外の有料サービスを指している。その他の特徴として、米国・欧州キャリアの苦戦を指摘している。これが前述のネットワーク性能問題で、全世界の携帯電話データ通信量は、2013年までに66倍(08年比) となるとしている。欧米のキャリアは、爆発的に増え続けるデータ通信量への対応を迫られている。

考察

厳しい不況から立ち直ろうとしているいま、インターネットはデスクトップからモバイルに遷移している。このトレンドの起爆剤となったのがApple iPhoneである。Apple iPhoneが市場に与えた影響は、日々の生活実感として認識していたが、アナリストによる定量的な分析により、それが確認できた。先のレポートの通り、O’Reillyはこれを、ウェブ・スクエアードと呼び、携帯端末上の集合知と定義している。日本での先行事例が示しているように、モバイル・インターネットで新しい事業を興すべく、多くの企業が急ピッチで準備を進めている。

携帯電話で渋滞情報センシング

Saturday, November 14th, 2009

Tim O’Reillyは、Web 2.0の次はWeb2 (ウェブ・スクエアード) に進化すると述べ、Web 2.0 Summit 09において、次期ウェブ技術のコンセプトを紹介した。このレポートでは、登場し始めたウェブ・スクエアードの事例を紹介する。

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Mobile Millenniumプロジェクト

カリフォルニア大学バークレー校のCalifornia Center for Innovative Transportationは、携帯電話を自動車運行状況のセンサーとして利用し、交通渋滞をリアルタイムでモニターするシステムの研究を行なっている。この研究は08年6月に始まり、20台の自動車を使ったプロトタイプが構築された。更に、08年10月には、100台の自動車を使った大規模な展開が行なわれ、これをMobile Millennium (モバイル・ミレニアム) と呼んでいる。

Mobile Millenniumは、自動車のドライバーが持っている、GPS搭載のノキア製携帯電話を利用して、自動車の位置やスピードをリアルタイムに収集して、渋滞情報をリアルタイムに監視するものである。(上の写真、道路の渋滞情報がセンターに表示されている様子、出展:California Center for Innovative Transportation) そして、これらの渋滞情報は、リアルタイムでドライバーの携帯電話に送信される。運転しながらリアルタイムで道路渋滞情報を見ることができる。また、Mobile Millenniumでは、今後は、渋滞情報を解析して、渋滞が後どのくらいすると緩和するのか、また、いつから渋滞が始まるのかなどの、予想情報を併せて携帯電話に送信する計画である。

システム概要

Mobile Millenniumは、自動車のドライバーが持っている携帯電話のGPS位置情報から、自動車が特定のポイントを通過した際に、走行速度情報をサーバに送信する。(下のグラフィックス、路面上に立っている棒が走行速度を表している、出展:California Center for Innovative Transportation)

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サーバ側では、フィールドから受信するデータを統合して、道路の渋滞情報を生成する。通信回線の制約から、データ送信量を抑えるため、携帯電話からのデータ送信のポイントは必要最低限に設定されている。現在は、サンフランシスコ地区とニューヨークでシステムが構築され、ボランティアーによる試験が続いている。サンフランシスコ地区においては、プロジェクト対象道路は、ハイウェーであるが、将来は主要一般道路まで拡大するとしている。

携帯電話向けGoogle Maps

グーグルはGoogle Mapsで、ハイウェーの渋滞情報を提供している。地図上で「Traffic」ボタンをクリックすると、ハイウェーでの自動車の走行速度を色分けして表示する。これをスマートフォンで使うと、即席のカーナビとなるのだが、問題も少なくなかった。Google Mapsで車が流れていると表示されているにも係わらず、実際に走ってみると、渋滞であったケースが少なくなかった。

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これに対してグーグルは、リアルタイムの渋滞情報サービスを開始した。スマートフォンのGoogle Mapsを起動すると、デスクトップでお馴染みの地図画面が登場する。ここで「My Location」ボタンをクリックすると、地図上に現在地を青色の円で表示する。GPSやWiFiアクセスポイントなどを利用して、位置を表示する。そして、自動車に乗るときにGoogle Mapsを起動すると、GPS搭載のスマートフォンが、位置と走行速度情報をセンシングして、その情報をグーグルに送信する。グーグルは、これらの情報を集約して、リアルタイム渋滞情報として、Google Maps上に表示する。(上のスクリーンショット、出展:Google)

グーグルは、これをCrowdsourcing (クラウド・ソーシング) と呼び、利用者との共同作業で、リアルタイム渋滞情報を構築できるとしている。グーグルは、このCrowdsourcingへの参加者が増えることで、幅広い地域をカバーできるとして、参加を呼びかけている。現在、T-Mobile myTouch 3GやPalm Preには、Google Mapsがプレ・インストールされているが、その他携帯電話は、無料でソフトウェアをダウンロードできる。グーグルは、利用者のプライバシー保護のために、匿名でデータを収集し、利用者が目的地に到着すれば、データを消去するとしている。

考察

Mobile Millenniumは、大学研究所のプロジェクトとして、GPS搭載の携帯電話を活用して、リアルタイムで渋滞情報を表示するシステムの開発を進めてきた。Google Mapsでは、これを商用ベースで展開している。両者に共通していることは、Crowdsourcingで、利用者の携帯電話がセンサーとなり、リアルタイムで位置と速度情報を収集する。これがウェブ・スクエアードで定義している、センサーによるCollective Intelligenceである。人間に代わり、マシンがデータを収集して、人間に役に立つ情報を構成する。

これに対して、既存の道路渋滞情報は、路面に設置されたセンサーや自動車に搭載されたトランスポンダーなどから収集している。この方式は、確実に自動車の走行状態をモニターできるが、センサーを道路や自動車に設置・運用するために、多額の費用が発生する。これに対して、携帯電話のGPSを活用する方式では、導入費用が安い反面、カバーできるエリアが限られている。しかし、ここにきてスマートフォンの爆発的な普及で、センサーがカバーするエリアも飛躍的に広がりつつある。ウェブ・スクエアードの定義の通り、スマートフォンで集合知が形成される土台が整いつつある。モバイル版Web 2.0が現実のものとなってきた。

ウェブ・スクエアード

Saturday, November 7th, 2009

毎年サンフランシスコにおいて、ウェブ技術の最新動向を議論するカンファレンスである、Web 2.0 Summitが開催される。今年も、ウェブ技術の第一人者が招待され、最新技術や将来動向が議論された。カンファレンスでの議論の模様はウェブサイト(http://www.web2summit.com/web2009/)に掲載されているビデオで見ることができ、ここから今年のウェブ技術動向を考察する。

Web 2.0からWeb2に進化

今年のウェブ技術動向のキーワードは、Web2 (ウェブ・スクエアード) である。Web 2.0 Summitに先立ち、Web 2.0という言葉の命名者であるTim O’Reillyは、「Web Squared: Web 2.0 Five Years On」 (ウェブ・スクエアード:Web 2.0の五年間を振り返り) というタイトルの白書を公開した。この白書の中で、ウェブ・スクエアードという新しいコンセプトを紹介している。昨年のWeb 2.0 Summitは、「Web Meets World」(ウェブが実社会と交わる) というテーマで、ウェブ技術が議論された。今年は、これをもう一歩進めて、Web 2.0 + World をウェブ・スクエアードと命名した。ウェブ・スクエアードとは、ウェブが実社会と交わる技術と定義され、デスクトップだけでなくスマートフォンを含む、日々の生活における拡大ウェブ技術を示している。ウェブ技術はWeb 2.0から、Web 3.0ではなく、Web2に進化するとしている。

Web 2.0を振り返ると

白書では、五年前にO’Reillyが命名したWeb 2.0という現象を振り返り、それを検証するとともに、ウェブ・スクエアードにどのように展開されるかを解説している。O’Reillyは、Web 2.0の“2.0”はソフトウェアの版数ではなく、ドットコム・バブル崩壊後に来る“次”のウェブという意味であると、その由来を解説している。更に、Web 2.0の本質はCollective Intelligence (集合知) であると述べている。Collective Intelligenceとは、利用者がウェブから情報を得るだけでなく、ウィキペディアのように、利用者がウェブに知識をインプットし、コミュニティーが新しい価値を創造する動きである。

これに対して、ウェブ・スクエアードでは、人間が知識をインプットするだけではなく、センサーが計測した様々な情報をシステムにインプットする。センサー・ネットワークから構成されるCollective Intelligenceであるとしている。白書ではこのように、ウェブ技術は、人間だけでなく、様々な機器と連携することで、進化するとしている。そして、このトレンドの切欠が、様々なセンサーを搭載しているスマートフォンであるとしている。スマートフォンの爆発的な普及が、ウェブ・スクエアードという現象を引き起こしたことになる。

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ウェブ・スクエアードの事例

白書では、登場し始めたウェブ・スクエアードの事例を、紹介している。その代表が、「Google Mobile App」 (上のグラフィックス、出展:Apple) という、iPhone向けのアプリケーションである。このアプリケーションは、キーワードをタイプする代わりに、音声入力でグーグル検索を行う機能を提供する。ただこれだけの機能であるが、これがウェブ・スクエアードの事例である。スマートフォンでの音声認識技術は、iPhoneではなく、サーバ側に搭載されている。音声認識の対象は検索キーワードで、頻繁に使われる言葉を中心に、ボキャブラリーが増える。つまり、頻繁に使われることで、賢くなっていく。センサー・ネットワークからインプットされた情報で、インテリジェンスが増していくことを示している。アプリケーションを起動して、「Pizza」 (ピッツァ) と質問すると、今いる近辺のピザ・レストランを検索結果に表示する。ピサの斜塔のPisa (ピザ) ではなく、食べ物のピッツァで、しかも現在地に一番近いレストランをトップに表示する。また、前述の通り、音声認識はグーグル側のサーバで行い、クラウド・コンピューティングが、スマートフォンまで降りてきた事例でもある。このように、iPhoneという実生活で一番身近にあるセンサーを利用したシステムがウェブ・スクエアードであり、この形態が社会に広がっている。

情報の影

白書では、ウェブ・スクエアードのひとつの側面が、Information Shadow (情報の影) であるとしている。情報の影とは、リアルの社会のオブジェクトが、バーチャルな社会に影をつくるという意味である。そして、バーチャルな世界の影を、我々は、センサーを通して見ることができる。その実例が、Layar (レイヤー) によるAugmented Reality (拡張現実) である。Layarはオランダの企業で、スマートフォン向けに、同名のLayarという拡張現実のアプリケーションを開発している。下の写真 (出展:Layar) がその事例で、スマートフォンのカメラを通して街の景色を見ると、そこに主要な建造物の説明が付加されるというものである。付加される説明は、銀行名やATMがある場所の表示、また、アパートなど不動産の空室情報である。このように、スマートフォントいうセンサーを通して、建造物というオブジェクトを見ると、その内容説明という影を、バーチャルな世界に投影してくれる。これがウェブ・スクエアードの一面であるとしている。

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考察

本日、Verizonはアンドロイド搭載スマートフォンであるDroid (ドロイド) の販売を開始した。アメリカで最大の携帯電話会社が、アンドロイドをサポートすることで、iPhoneとの競合が鮮明になった。日本は携帯電話先進国であるが、アメリカではスマートフォンが、予想以上のスピードで市場に入ってきた。このような背景で、ウェブ・スクエアードが登場した。ウェブ・スクエアードの意味を、敢えて一言で表現すれば、スマートフォンでのウェブ技術ということになる。Web 2.0はデスクトップでのウェブ技術であったが、ウェブ・スクエアードは、モバイル版Web 2.0と呼んでも大きく外れてはいない。Web 2.0は人々の暮らしを劇的に変えたが、ビジネスとしての成功事例は多くは無かった。これに対して、ウェブ・スクエアードは、如何に社会生活に貢献できるか、また、事業として成り立つかに、大きな期待が集まっている。