Archive for February, 2010

iPhoneアプリケーション (5)

Friday, February 26th, 2010

医療分野でiPhoneアプリケーションが急速に増えている。O’Reilly Mediaによると、iPhoneアプリケーション数が一番増えているのがBooks (ブックリーダー・アプリケーション) である。以前にも紹介したが、Amazon Kindleの機能をソフトウェアで実装した「Kindle for iPhone」などが人気を集めている。第二位は、Travel (旅行関連アプリケーション)で、第三位がMedical (医療関連アプリケーション) となっている。まだ、医療関連アプリケーション総数は少ないものの、いまその数が急速に増えている。

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AirStrip OB概要

iPhone向け医療関連アプリケーションの中で、実際に病院で使われているのが、「AirStrip OB」というアプリケーションである。AirStrip OBは、テキサス州サンアントニオに拠点を置く、AirStrip Technologiesが開発した、産科医向けの医療アプリケーションである。医師は、AirStrip OBを使って、iPhoneから、妊婦や胎児の状況をリアルタイムでモニターすることができる。上のスクリーンショット (出展:Apple) 右側の画面は、医師が担当している患者の一覧で、名前にタッチすると、妊婦や胎児の様々な情報を見ることができる。

医師は、その中で、「Fetal Strip」というボタンにタッチすると、上のスクリーンショット左側画面の通り、Fetal Heart Tracing (胎児の心拍数トレーシング) をリアルタイムで、グラフで見ることができる。グラフ上部のオレンジ色の線がそれで、130 近辺を示している。Heart Tracing は、略称でStripと呼ばれている。胎児の心拍数をリアルタイムで見るだけでなく、グラフにタッチすると、過去のデータに遡って見ることができる。下の白色のグラフは、妊婦のUterine Contraction (子宮収縮) の強さを現している。

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AirStrip OBシステム

担当医師は、この情報をWiFiで受信して、リモートで患者の状態を監視することになる。但し、これら妊婦は、すべて病院に入院していることが前提で、病室の患者を担当医師がリモートで監視するという構成である。病室の妊婦には、上の写真 (出展:Memorial Hermann Healthcare System) のように、計測機器が装着され、計測されたデータは、AirStrip OBサーバに送信される。そして、iPhoneからこのサーバにアクセスして、Fetal Heart Tracingやその他のデータにアクセスする仕組みとなる。担当医師は、病院内のどこにいても、簡単に妊婦の容態を見ることができる。

また、AirStrip OBは、Fetal Heart Tracing機能以外にも、下のスクリーンショット (出展:Apple) のように、様々な情報を表示する。左側画面のExamsにタッチすると、妊婦を検診した日時が表示され、Vitalsにタッチすると、妊婦と胎児のバイタル・サインが表示される。ここでは、血圧、胎児と妊婦のSPO2 (Saturation of Peripheral Oxygen、酸素飽和度)、心拍数、体温が示される。また、Notesにタッチすると、その妊婦に関するメモ (右側画面) を閲覧できる。このように、AirStrip OBは、患者の電子カルテにアクセスするためのツールでもある。

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医療アプリケーション市場

AirStrip OBは、実際に、テキサス州ヒューストンにある、Memorial Hermann (メモリアル・ハーマン) という病院で使われている。病院では、iPhoneをリモート監視ツールとして使うだけでなく、スケジュール管理や電子メールで患者の医療情報の送受信を行なっている。シリコンバレーにおいては、Stanford Hospital & Clinicsが、大手医療システム・インテグレータであるEpic Systemsと供に、iPhoneを使った医療情報システムのトライアルを行なっている。先にレポートしたとおり、米国で最大規模の医療サービス機関であるKaiser Permanente (カイザー・パーマネンテ) は、病院内の医療システムをiPadで構築する計画である。

今までは、病院における医療携帯端末では、Windowsを搭載したタブレットが主流であった。現在でも多くの病院が、タブレットを使って患者の電子カルテにアクセスしているが、スマートフォンの登場でその市場構成が大きく変わりつつある。現在では、医療機関における携帯端末として、BlackBerryとこのiPhoneが使われ始めた。BlackBerryは、患者の機密情報を安全に扱えるという機能が評価され、幅広く導入されている。一方、iPhoneは、便利でクールなアプリケーションの登場で、そのシェアを急速に広げている。

考察

アメリカの医療技術は世界最高水準であるが、それを支えている医療システムは、オバマ大統領が苦戦しているように、大きく出遅れている。しかし、若い世代の医師がその状況を変えつつある。かかりつけ病院の若い先生は、デスクトップにGoogleで検索した写真を表示して病状の説明をし、胸ポケットに入れているBlackBerryを、医学辞典代わりに使っている。歯科医では、先生自らが、次の予約や領収書の発行をiPhoneで行なっている。今後、iPhoneに親しんでいる若いドクターが病院に入ると、医療システムのクライアントは、必然的にiPhoneが主流となっていく。更に、iPhoneは、一般社会でも、健康監視ツールとして使われ始めている。以前に紹介したRingfulというベンチャー企業は、喘息患者向けにiPhoneアプリケーションを提供している。また、糖尿病患者向けには、血糖値測定機器をiPhoneに接続し、家庭で血糖値を測定し、健康管理をオンラインでできるシステムが登場している。オバマ大統領が普及を推進している電子カルテとあいまって、iPhone医療アプリケーションが大きく動き出した。

iPhoneアプリケーション (4)

Friday, February 19th, 2010

iPhone向けビジネス・アプリケーションの中で、生産性向上のツールに、Documents Freeという製品がある。これは、オーストラリア・メルボルンに拠点を置く、SavySoda (サヴィー・ソーダ) という会社が開発した、iPhone向けのスプレッドシートとドキュメント製品である。

Documents Free概要

利用者は、iPhone上でDocuments Freeを使って、表計算を行い書類の作成をすることができる。下のスクリーンショット (出展:Apple) 左側は、Documents Freeの中の「Spreadsheet」という表計算アプリケーションを操作している様子である。年度ごとのバランスシートをiPhone上で作成しているところである。対象のセルを選んで、そこに数字、テキスト、関数などを、ソフト・キーボードから入力していく。フォーマッティング機能で、セル背景の色を指定できる。まさに、パソコン上での表計算操作を、iPhoneで行なうことができるアプリケーションである。

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スクリーンショット右側は、「Text Document」というアプリケーションで、メモ帳に相当する機能を提供する。このアプリケーションで、ソフト・キーボードから文字を入力し、文書を作成している様子である。これらスプレッドシートやドキュメント作成が完了すると、それらをiPhone上にファイルとして保存する。更に、Googleのアイコンをクリックすると、Google Docsへのログイン画面が表示される。ここでユーザ名とパスワードを入力すると、Google Docsへアクセスできる。利用者は、iPhoneで作成したファイルを、Google Docsに保存でき、また、Google Docsに保存しているファイルをiPhoneにダウンロードして編集することができる。また、WiFiボタンを押すと、iPhoneとパソコン間でファイル共有を行なうことができる。パソコンのブラウザーに、iPhoneのIPアドレスを入力すると、パソコンからDocuments Freeで作成したファイルを閲覧できる。また、パソコンからiPhoneにファイルをアップロードすることもできる。iPhoneの小さなスクリーンという制約はあるものの、iPhoneでMicrosoft Officeに匹敵した機能を使うことができる。

ビジネス・モデル

Documents Freeは名称の通り無償のアプリケーションである。利用者はApp Storeからダウンロードして自由に利用できるが、同時に広告が配信される。表計算のアプリケーションの最下部に、AdMob (アドモブ) という広告ネットワーク企業から、Comcast Business Classなど、中堅企業向けの広告が配信される。他に、Domino Pizzaの広告では、利用者がピザのスペックを細かく指定して、近所の宅配サービスに注文を出すことができる。表計算のバランスシートの内容まで分析して、ターゲッティング広告を配信しているとは思えないが、利用者のプロフィールを絞り込めるはずである。このように、SavySodaというソフトウェア企業は、オフィス関連アプリケーションへの広告収入で、ビジネスを構成している。

iPhoneアプリケーション (3)

Friday, February 19th, 2010

iPhone向けビジネス・アプリケーションの中で、社外で仕事をするときに使えそうなのが、Remote Desktop Liteという製品である。Remote Desktop Liteは、デンマーク国籍のMochaSoft Aps (モカソフト・アプス) という会社が開発したものである。

Remote Desktop Lite概要

Remote Desktop Liteは、iPhoneから遠隔操作で、会社のパソコンにアクセスするアプリケーションである。下のスクリーンショット (出展:Apple) 右側は、iPhoneから、リモートでWindows 7のデスクトップにログインし、スタート・ボタンをクリックした様子である。iPhoneの前景にはスタート・ボタンのメニューが表示され、その背景にはWindows 7の初期画面が見えている。

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スクリーンショット左側は、Windows Explorerを起動して、ドキュメント・ファイル名を入力している様子である。Remote Desktop Liteのキーボードを起動すると、iPhoneのソフト・キーボードが立ち上がり、ここからファイル名などを入力する。Remote Desktop Liteの仕組みは、WindowsのRemote Desktop機能をそのままiPhoneから使うものである。まず、アクセスされる側のパソコンで、Remote Desktop機能をオンにしておく。そして、iPhone側で、アクセスするパソコンのIPアドレス、ユーザ名、パスワードを入力するとリモート端末にアクセスできる。

実際に使ってみると、簡単にiPhoneから、WiFi経由でパソコンにアクセスすることができた。上述の認証プロセスが終了すると、ウインドウズの初期画面が表示される。ここでMicrosoft Wordを開いて、ソフト・キーボードで編集して保存するという、一連のプロセスを実行できた。他に、ExcelやPowerPointにアクセスして同様な処理をすることができた。処理速度は充分に速く、画面操作をスムーズに違和感なく行なうことができた。因みに、Remote Desktop LiteがサポートしているOSは、Windows 7とWindows Vistaである。

ビジネス・モデル

出張などで社外で仕事をする際に、ラップトップからパソコンにアクセスしていたが、これからはiPhoneでこの操作が可能となる。非常に便利な反面、iPhoneの小さなスクリーンでは、パソコン上の処理は、簡単なテキスト作成などに限られてしまう。操作上の制約はあるものの、iPhoneから手軽に、自分のデスクトップを参照できるのは、便利である。Remote Desktop Liteは、無料でApp Storeからダウンロードして使うことができる。MochaSoftは、機能強化した製品をRemote Desktopとして、$5.99で販売している。MochaSoftのビジネス・モデルは、無償製品を試供品として無償で提供し、有償製品の販売や会社知名度の向上に役立てている。MochaSoftは、無償で製品を提供しても、しっかりリターンを得ている。

iPhoneアプリケーション (2)

Friday, February 12th, 2010

iPhone向けアプリケーションの中で、一番使ってみたいと思っていたのがSiri Assistant (シリ・アシスタント) である。Siri Assistantは、昨年6月に開催された、2009 Semantic Technology Conferenceで紹介され、セマンティック技術を採用したアプリケーションである。このアプリケーションが今月からApp Storeに登場した。

Siri Assistant概要

Siri Assistantは、名前の通り、バーチャルな個人秘書機能を提供する、iPhone向けアプリケーションである。Siri Assistantへの入力は音声で行い、Siriからの出力は、吹き出しの中にテキストで表示される。(下のスクリーンショット、出展:Apple)

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Siri Assistantに、いきなり、「A table for two tonight at Chez TJ」と指示すると、Siri Assistantは、「Thinking…」と表示し、処理を開始したことを意思表明する。暫らくして、こちらからの指示を復唱し、レストラン予約画面を表示する。このレストラン予約画面は、OpenTableという、アメリカで一番人気のある予約ウェブサイトである。この画面には、指示したレストラン (Chez TJ) が、指示した時間 (今夜午後7時と表示) に示された。ここで「Confirm」ボタンを押すだけで、レストラン予約が完了する。Siri Assistantは、文脈からChez TJがレストランであると認識し、また、場所は携帯電話から、Mountain Viewであると認識している。

Siri Assistantに、「What’s playing in Mountain View」と問いかけると、Siri Assistantは、「I’m not sure what you are asking, Kaz」と噴出しの中に表示し、質問の意味が曖昧だと指摘された。そしてSiri Assistantは、質問の意味は「Movies」なのか「Events」と選択肢を示した。それに対して「Movies」にタッチすると、今日、Mountain Viewで上映されている映画名と上映時間を示し、希望の映画にタッチすると、その映画の概要とトレーラー・ビデオを見ることができる。このように、Siri Assistantと、会話しながらタスクを進めていくため、機械ではなく人間と話している感覚に近い。Siri Assistantは、この他に、コンサート・チケットの予約、店舗の検索、タクシー予約などを行なうことができる。

Siri Assistantとビジネス

Siri Assistantは、前回にもレポートしたように、利用者のコンテクストを把握して、最適な情報を表示する。今の時間が何時で、いま何処にいて、家の住所はどこかを把握して、回答を作成する。Siri Assistantは、使い心地が良くて、便利なアプリケーションであるとの同時に、究極のターゲッティング広告配信システムでもある。利用者の指示に沿った情報を提示してくれるため、極めてコンバージョン率が高い。将来は利用者の嗜好にそった店舗や商品やサービスを紹介するであろうから、Google検索より遥かに実ビジネスに結びつく。気に入っているiPhoneアプリケーションの一つである。

iPhoneアプリケーション (1)

Friday, February 12th, 2010

Appleは、先週のレポートで報告した通り、iPad (アイパッド) を発表したが、その評価は分かれている。一方で、iPhoneについては、市場からの圧倒的な人気に支えられ、iPhone向けアプリケーションの数は14万本を超え、ダウンロード回数は30億回を突破した。iPhone向けアプリケーションは、ゲームなど消費者向けが中心であるが、企業向けアプリケーションも少なくない。iPhone向けアプリケーションの数が膨大で、全貌が見渡せないのが実情であが、このレポートでは、iPhoneビジネス・アプリケーションに焦点を当てて、最新トレンドを報告する。

IBMiPhoneアプリケーション

IBMは、サンフランシスコで開催されたMcWorldにおいて、昨日、IBM LotusソフトウェアをiPhone向けに開発していることを発表した。具体的にはLotus ConnectionsとLotus Sametimeを、iPhone向けのアプリケーションとして開発している。Lotus Connectionsは、ドキュメント共有、ブログ、ウィキなどの機能を提供し、IBM版ソーシャル・ネットワーキング基盤である。Lotus Sametimeは、電話通信、ビデオ通信、インスタント・メッセージング機能などを提供し、IBM版コラボレーション基盤である。こららのアプリケーションが、もう暫らくすると、App Storeに掲載されることになる。

IBMはこれに先立ち、App Storeに、「IBM Lotus Notes Traveler Companion」というアプリケーションを登録している。このアプリケーションは、出張者向けのLotus Notesであり、遠隔地から安全にDominoサーバにアクセスして、電子メールを送受信することができる。デスクトップのLotus Notesと同様な操作で、ユーザ名とパスワードを入力して、メールサーバにアクセスすることができる。(下のスクリーンショット、出展:Apple)

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IBMの戦略変更

App Storeには、IBM Lotus機能を提供するアプリケーションが登録されているが、その殆どがIBMパートナー企業が開発した製品である。IBM自らが開発した製品は、上述のアプリケーションだけである。IBMは、iPhoneがエンタープライズ市場で普及しているのは把握しているが、iPhone向けのアプリケーション開発については、必ずしも積極的ではなかった。しかし、最初に述べた通り、Lotus製品の中で主力製品であるLotus ConnectionsとLotus Sametimeを、IBM自らが、iPhone向けアプリケーションとして開発するなど、流れが変わってきた。なぜ、IBMの開発方針が変わったかについて、IBMは何も公表していないが、iPadの発表と大きく関連していると思われる。Lotus Sametimeは、テレビ会議で幅広く利用されており、iPadの広くて高速なスクリーンで表示するには最適なソフトウェアである。IBMは、この前哨戦としてiPhone向けの製品を投入し、市場の反応を確かめているのかもしれない。iPadの発表と供に、IBMが急速にApple携帯端末に接近し始めた。