Archive for March, 2010

ニューヨーク・アプリ・コンテスト

Friday, March 26th, 2010

オバマ政権が推進しているOpen Government Initiativeは、そのコンセプトが地方政府に広がりつつある。ニューヨーク市は、一番積極的にオープン・ガバメント政策を推進している。また、以前にもレポートしたが、サンフランシスコ市も、このイニシアティブを積極的に展開している。

ニューヨーク市の政策

ニューヨーク市長であるMichael Bloomberg (マイケル・ブルームバーグ) は、01年に市長に当選し、05年に再選され、09年に再度再選を果たし、現在三期目を勤めている。Bloombergは、よく知られているように、株式情報配信会社であるBloombergの創設者であり、企業経営の手腕を生かしてニューヨーク市政を行い、その実績は高く評価されている。Bloombergは、情報技術を幅広く活用して、市民、企業、観光客に、迅速なサービスを提供している。

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Bloombergは、オバマ政権が推進しているOpen Government Initiativeに賛同して、その仕組みをニューヨーク市に適用している。オバマ政権が、連邦政府のデータをData.govで公開しているように、Bloombergは、市のデータを「NYC DataMine」 (NYCデータマイン) というサイト (上のスクリーンショット、出展: The City of New York) で公開している。このサイトには、ニューヨーク市の30の部門が所有しているデータが登録されている。NYC DataMineで公開されているデータ形式は、マシン・リーダブルで、ソフトウェアから読み込んで使うことを前提としている。公開されているデータは、Raw DataとGeographic Dataに分かれており、だれで自由にアクセスすることができる。

BigApps Competition

Bloombergは、NYC DataMineで公開しているデータを有効に活用する目的で、「NYC BigApps Competition」という、アプリケーションのコンペを実施した。市は大量の情報を公開しているものの、市民はこれら情報にアクセスする手段が限られており、情報が有効に活用されていないのが現状である。このため、 Bloombergは、市民や企業にアプリケーション開発を促し、市が公開している情報を、分かり易い形で、市民や企業や観光客に提示することを目指した。コンペは09年10月に開始され、一般からの投票や審査員の審査を経て、先月10年2月に入賞者が決定した。コンペは5つの部門に分かれており、Best Overall Application (総合部門) 一位には「WayFinder NYC」 (ウェイ・ファインダーNYC) が選ばれ五千ドルの賞金を獲得した。

WayFinder NYC機能概要

これは、WayFinderMobile.comが開発した、ニューヨーク地下鉄とPATH (パス・トレイン、ニューヨーク市とニュージャージーを結ぶ列車) の駅を表示するAndroid向けアプリケーションである。(下のスクリーンショット、出展: WayFinderMobile.com)  WayFinder NYCは、Augmented Reality (拡張現実) 技術を使い、Androidを搭載したスマートフォンのファインダーから街並を見ると、地下鉄駅の位置を写真上にインポーズする仕組みである。写真イメージ上に、駅名と路線番号が表示される。利用者はスマートフォンのファインダーを見ながら、左右にパンすると、近くの駅を見つけられ、上にティルトすると、遠くの駅を見つけることができる。また、スマートフォンを地面に向けると、Google Mapsが表示され、目的の駅にタッチすると道順が示される。

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上のスクリーン・ショットでは、目の前0.4マイルのところにAtlantic Ave駅とPacific St駅があり、左方向1.4マイルのところにBergen St駅があることを示している。駅名の下の数字は路線番号である。WayFinder NYCは、前述のNYC DataMineの中の「Path Station Locations」というデータを参照している。これは、shapefile (地理データ) 形式で、Information Technology and Telecommunications部門が作成した、駅の位置を示すデータである。WayFinder NYCは、一般市民が利用できなかったデータを、スマートフォンを通して、分かり易いかたちで提供している。

サンフランシスコ市のオープン政策

サンフランシスコ市長であるGavin Newsom (ギャビン・ニューサム) は、09年10月に、「Open Data」と題するExecutive Directive (市長令) を発行した。この中でNewsomは、サンフランシスコ市のデータを一般に公開することを宣言し、これを利用して市民の間でイノベーションが生まれることを期待していると述べている。Newsomは、DataSF.orgのサイトに、サンフランシスコ市の各部門で所有しているデータを公開している。現在、9の部門から119のデータセットが公開されている。

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このデータを利用して、Elbatrop Ltdは、「SF Trees」 (上のスクリーンショット、出展:Apple) という、通りに植えてある樹木の種別を判別するアプリケーションを開発した。利用者は、サンフランシスコ市内の樹木の位置情報 (住所やGPSデータ) を入力 (左の画面、HaightとAshburyの交差点と入力) すると、樹木の名前 (右の画面、Pyrus、ナシの一種) が表示される。SF Treesは、App Storeで99セントで販売されている。

考察

不況のため税収が落ち込み、アメリカの地方政府が財政難に陥っている。このような時期に、予算を増やして住民サービスを拡充することは不可能である。そこで市は、市の最大のリソースである住民の頭脳を使って、住みやすい街づくりを始めている。住民側は、ボランティア活動だけでなく、これをビジネス・チャンスと捉えて、積極的に参加している。ニューヨークとサンフランシスコで先行事例が出始めたが、この波が全米でどう波及していくのか、注目する必要がある。

オバマ政権とオープンソース

Friday, March 19th, 2010

アメリカ連邦政府のオープンソース・ソフトウェア調達については、世界の水準から見て、出遅れているのが実情である。MicrosoftやOracleなど、世界的なソフトウェア産業を抱えているアメリカであるが故に、連邦政府のオープンソース採用は、消極的であった。しかし、オバマ大統領が就任して、Open Government Initiativeを発表してから、連邦政府のオープンソースへの対応が大きく前進してきた。

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アメリカ連邦政府のオープンソース政策

アメリカ連邦政府が、オープンソース調達の指針について触れたのは、ブッシュ政権に遡る。ブッシュ政権下で、ITとE-Govの責任者であったKaren Evans (カレン・エバンス) らは、連邦政府におけるオープンソース調達についての通達を発行した。この通達は「Software Acquisition」というタイトルで、2004年7月に、各省庁の調達責任者とCIOに向けて発信された。この通達では、ソフトウェア購買において、プロプライエタリ・ソフトウェアだけを対象とするのではなく、オープンソース・ソフトウェアについても同様に評価すべしという趣旨であった。オバマ大統領が就任した直後、「Transparency and Open Government」を発表し、アメリカ政府を前例の無いほどオープンにすると宣言した。この政策を推進するために、オープンデータやオープンソースが基本要素となる。オバマ政権では、オープンソース調達の指針は示していないが、連邦政府システムを構築するうえで、オープンソースは当然考慮すべき技術というスタンスである。

ホワイトハウスのオープンソース採用

昨年の11月に、ホワイトハウスは、ウェブサイト (Whitehouse.gov、上のスクリーンショット、出典:The White House) をリニューアル・オープンした。ウェブサイトの外見からは分からないが、そのシステムにオープンソースが採用され、大幅に機能強化が行なわれた。採用されたオープンソースは、コンテンツ管理ソフトウェアであるDrupal (ドゥルーパル) を中心に、Linux、Apache、MySQL、PHPなどである。また、検索エンジンにはSolr (ソーラー) が採用された。ホワイトハウスは、Drupalなどオープンソース採用についてはコメントを発表していないが、Drupalのサイトでこれを公表している。このサイトの中で、ホワイトハウス責任者が、Drupal User Groupに対して、システム概要について説明を行なったビデオ (下の写真、出典:Drupal) を公開している。

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このビデオの中で、ホワイトハウスの責任者である、Macon Phillips (New Media Dir、写真右側)、David Cole (Technology Deputy Dir、中央)、及び、Nik Lo Bue (Creative Dir、左側) が、Drupalを使ったウェブ・システム開発について説明している。このビデオはここ (http://drupal.org/whitehouse-gov-launches-on-drupal-engages-community) に掲載されている。

三人の意見を纏めると、ホワイトハウスのウェブサイト改良については、オバマ大統領就任の日から開始した。政府内には、オープンソースに対して偏見があった。このため、政府内でオープンソースの仕組みや安全性について、啓蒙活動や教育を行い、組織の文化を変えてきた。Drupalを選択した理由は、コミュニティーにより豊富な機能が開発されているため。システム開発では、コラボレーション機能、Facebookなどのソーシャル・メディアとの連携機能、検索機能に重点を置いた。今後は、ユーザ認証機能、プライバシー管理(ユーザ情報管理方式)、省庁間でのシングル・サインオン、検索エンジンでのアラート機能などの実装を計画していると述べている。

Open Source Activity Map

アメリカ連邦政府のオープンソース政策は、オバマ政権で積極的な展開が始まったが、世界全体のオープンソース普及率について、「Open Source Activity Map」で見ることができる。このマップは、Georgia Institute of Technologyが実施した、世界のオープンソース活動評価調査「Open Source Index Project」結果を、Red Hatがインタラクティブなマップ (下のグラフィックス、出展: Red Hat, Inc.) として掲示しているものである。Open Source Indexでは、世界75カ国のオープンソースに関する「活動」と「環境」の指標を示している。「活動」とは、現在行なわれているオープンソース・プロジェクトや標準化などの活動で、「環境」とは、将来オープンソース活動が展開される可能性についての評価である。

「活動」状況総合ランキングのトップ3は、はフランス、スペイン、ドイツと欧州勢が占めている。アメリカは9位で日本は14位となっている。政府のオープンソースへの取り組みを評価した指標では、フランス、スペイン、ブラジルの順で、アメリカは28位で大きく出遅れている。日本は11位で、先頭集団ではないが、日本政府のオープンソースへの取り組みは、それなりに評価されている。

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(Open Source Activity Map、赤色の色が濃い順にオープンソース活動が盛んであることを示している。このマップはここ(http://www.redhat.com/about/where-is-open-source/activity/) に掲示されている。)

考察

ホワイトハウスのウェブサイトが、オープンソースで構成されたことは、オバマ政権が目指す方向が示された、象徴的な出来事である。明後日には、医療保険改革法案が下院で採決される見込みであり、オバマ政権は瀬戸際に立たされている。冒頭のスクリーンショットは、改良されたウェブサイトで、オバマ大統領が、医療保険改革の重要性を、訴えているビデオである。ホワイトハウスは、ITを最大限に活用して、オバマ大統領の政策をアピールしている。大統領選挙のときの盛り上がりには及ばないが、「Hope」を感じることができるメッセージである。

オープン・ガバメント最新動向

Friday, March 12th, 2010

オバマ大統領が就任して一年余り経過するが、国民の支持率は大きく低下している。景気は最悪期を脱して、回復基調にあるものの、雇用情勢が改善されず、苦戦している。医療保険改革法案では、野党共和党の全面的な抵抗で、窮地に立たされている。一年前の「Yes, We Can」が遠い過去のことのように感じられる。

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Open Government Initiative概要

支持率とは裏腹に、オバマ政権は、IT政策においては、着実に実績を上げている。以前にレポートした通り、オバマ大統領は就任直後に、「Transparency and Open Government」というメモランダムを発表し、アメリカ政府を前例の無いほどオープンにすると宣言した。オバマ大統領のこの指針は、Open Government Initiativeと呼ばれている。この指針は三つの柱から構成され、それぞれ、透明性、国民参画、共同作業である。透明性とは、政府のデータを公開して、国民に分かり易い形で提示すること。国民参画と共同作業は、政府の施策に、国民の参加と協力を求めることである。データを公開して、アメリカ最大のリソースである国民の知恵を活用して、より良い社会を建設することを目指している。

Recovery.gov概要

このイニシアティブに沿って、ウェブサイトが開設され、機能強化が実施されている。その中で、国民最大の関心事である、景気対策法予算の執行状態を公開したのがRecovery.gov (上のスクリーンショット、出展:Recovery.gov) というサイトである。Recovery.govは、景気対策法の元で実施されているプロジェクトの、予算執行状況を表示したサイトである。このサイトでは、予算執行状況を分かり易い形で開示することと、予算の不正や無駄を発見し報告することを目的としている。ホームページでは、プロジェクト合計で1990億ドルの予算があり、この中で現在570億ドルの予算が使われ、直近の四半期で59万人の雇用が生まれたことを示している。

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更に、地図をドリルダウンしていくと、特定地域での予算執行状態を見ることができる。上のスクリーンショット (出展:Recovery.gov)は、カリフォルニア州マウンテンビューにおける、景気対策法により予算が割り当てられたプロジェクトを、地図上にプロットしている。プロジェクトは、Contract (契約)、Grant (助成金)、Loan (貸付) に分かれて色分けされている。そして、円印をクリックすると、プロジェクトの内容を見ることができる。上のスクリーンショットの中央部のボックスがそれで、SETI Institute (地球外知的生命体探査を行なっている機関) が597,600ドルの助成金を獲得し、これにより3.11人の雇用が生まれたことを示している。

更に、予算の概要には、大学生が行なっている探査研究を継続するためで、予算消化率は50%未満であると記載されている。Recovery.govのサイトで、国民は、景気対策法に基づくプロジェクトの概要や、予算の使われ方について理解することができる。更に、国民は、そのプロジェクトに問題があると判断すると、「Complaint Form」というページから、問題点を指摘することができる。巨額の税金が景気回復に充てられており、国民は、個別プロジェクトのレベルまで、監視できる仕組みとなっている。

Apps for Healthy Kidsというコンペ

各省庁では、オープン・ガバメントに向かって活動を展開している。U.S. Department of Agriculture (米国農務省、USDA) は、「The Apps for Healthy Kids」という名称のコンペを開始した。(下のスクリーンショット、出展: U.S. Department of Agriculture)   これは、9歳から12歳までの子供 (これをTweensと呼んでいる) の肥満を防止するためのキャンペーンである。ソフトウェア開発者が、肥満防止のためのユニークなアプリケーションを開発し、審査員や一般参加者が、その内容を評価するというコンペである。

コンペ参加者は、Data.gov (連邦政府が公開しているデータのポータル) に掲載されている、「USDA Nutrition Dataset」というデータを利用して、ゲームやツールのアプリケーションを開発する。USDA Nutrition Datasetは、食品に含まれているカロリー量を示したデータベースで、一日のカロリー摂取許容量の計算等で使用される。コンペは、一昨日 (3月10日) にスタートし、審査結果は8月14日に発表され、最優秀賞には1万ドルの賞金が支払われる。審査員には、Mark Pincus (Zynga CEO) やSteve Wozniak (Apple共同創設者) が名を連ねている。

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考察

Michelle Obamaは、現在、「Let’s Move! 」というキャンペーンで、子供の肥満を防止するために活動中である。Let’s Move! では、家庭や学校での食生活を改善し、定期的に運動を行うという教育活動である。Apps for Healthy Kidsは、このキャンペーンの一環として、政府が公開しているデータを利用して、ゲームやツールでこれを推進している。また、Michelle Obamaは、ホワイトハウスの芝生を野菜畑に転換して、食生活改善のための啓蒙活動を展開していることでも有名である。オバマ政権は、連邦政府の情報を公開することで、政治や経済対策の動きを可視化して、国民に分かり易い形で情報を提示している。これにより、国民の頭脳という、国家で最大のリソースを活用することを目指している。民主党と共和党の全面対立で、議会はこう着状態にあるが、オバマ大統領のIT政策は、着実に進んでおり、「Change」を実感することができる。

歴史を変える発電技術

Friday, March 5th, 2010

先週、Bloom Energy (ブルーム・エナジー) というベンチャー企業が、華々しくデビューした。Bloom Energyは、Fuel Cell (燃料電池) 技術を改良し、企業向けの発電装置を開発している会社である。

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Boom Energy製品発表イベント

Bloom Energyには、Kleiner Perkins (クライナー・パーキンス) のJohn Doerr (ジョン・ドーア) らが4億ドルの投資を行い注目を集めてきた。しかし、会社はステルス・モードで運営され、事業内容は闇の中であった。Bloom Energyは、2月24日に、カリフォルニア州サンノゼのeBay本社にて、Energy Server (エナジー・サーバー) という製品を発表した。発表会には、カリフォルニア州知事のArnold Schwarzenegger (アーノルド・シュワルツェネッガー、上の写真左側の人物、出展:Reuters) や、元国務省長官のColin Powell (コリン・パウエル) ら著名人が招待され、基調講演を行なった。上の写真右側の人物が、会社創業者でCEOであるKR Sridhar (KR シュリダー)である。発表イベントの模様は、同社のウェブサイト (http://www.bloomenergy.com/bloom-energy-launch-event-staff/) に、ビデオが掲載されている。また、発表会のパネル・ディスカッションでは、Doerrが司会を行い、John Donahoe (ジョン・ダナホー、eBay CEO )、Bill Simon (ビル・サイモン、Wal-Mart COO)、Larry Page (ラリー・ページ、Google社長) 等が、Energy Serverを使った感想や、クリーン・エネルギーについて意見交換を行なった。

Energy Server製品概要

Energy Serverは、Bloom Energyが開発したFuel Cell技術を使った、分散発電 (Distributed Power Generator) 装置である。Fuel Cell技術は、電気化学反応で、燃料を電気に変換するクリーンな発電技術である。Fuel Cellは、1960年代に、NASAが有人宇宙飛行計画で採用し、一躍有名になった。その後、多くの企業がFuel Cell技術を開発しているが、商用化においては、コストや運用性などで、大きな課題を抱えている。Bloom Energyが開発したFuel Cell技術は、これらの問題を解決し、実用化に大きな一歩を踏み出したものである。

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上の写真 (出展:Bloom Energy Corp.) は、eBay本社キャンパスに設置されているEnergy Serverである。キャビネット状のものがEnergy Serverで、発電容量は100kWである。eBayは、上の写真の通り、Energy Serverを5基設置しており、キャンパス内で使用する電力の15%をまかなっている。Energy Serverの設置面積は、駐車場の車一台分の広さである。Energy Serverに、燃料となる天然ガスと空気を送風すると、発電を行ない、副産物として水と熱と少量の二酸化炭素を発生する。この水と熱 (水蒸気) を発電のサイクルで再利用する。非常にクリーンで静かに発電することができる。

Energy Serverの仕組み

Energy Serverの最小構成要素がFuel Cellそのものである。下のグラフィックス (出展:Bloom Energy Corp.) 下段の部分がFuel Cellを示している。三層から構成され、中央の灰色の板がセラミック版で、Electrolyte (電解質) となる。その両面に、特殊インクで電極をプリントする。Anode (陰極、緑色の部分) 側に、燃料(天然ガス)と水蒸気を送ると、Reformed Fuelを生成する。Cathode (陽極、黒色の部分) 側に、暖かい空気を送風すると、酸素イオンが、Electrolyteを通過し、Reformed Fuelと化学反応を起こし、電気、水、熱、少量の二酸化炭素を生成する。Fuel Cellの発電量は25Wである。

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このFuel Cellを40層重ねたものが、Fuel Cell Stack(1kW)で、これを25個搭載したものがFuel Cell Module (25kW)である。Energy Serverには、Fuel Cell Moduleを4基搭載し、 100kWの電力を発電する。このFuel Cell技術は、Solid Oxide Fuel Cells (SOFCs、固体酸化物形燃料電池) という方式で、SOFCsは白金系などの触媒は不要で、安価に製造できる。一方で、SOFCsは高温 (800°C) で運転する必要があったが、Bloom Energyが開発した技術で、暖かい空気を送風するだけで発電が可能となった。このため、巨大な発電設備は不要で、前頁の写真の通り、小型コンテナーのサイズで運転することができる。

Bloom Energyの将来性は

Energy Serverは、既に、Google、eBay、Walmart、FedExなどで実際に使われている。これら企業は、電力会社から電気を購入する代わりに、一部を自社で発電して供給している。Bloom Energyは、この方式を、分散型発電と呼んでおり、現行の集中型発電から、そのモデルが大きく変わることになる。分散型発電では、電力消費地で発電するため、電力送電のためのインフラが不要となり、産業構造が大きく変わることになる。Bloom Energyは、汎用機がパソコンに置き換わったように、発電所もダウンサイジングすることになると説明している。また、Schwarzenegger知事は、早くからBloom Energyに注目し、助成金制度を創設し、カリフォルニア州でのエネルギー産業育成に力を注いでいる。また、この不況から立ち直るため、エネルギー産業を雇用拡大の機会として、積極的に誘致活動を展開している。Doerrは、GooleやeBayを育てた投資家として有名である。将来は各家庭向けに、Fuel Cell Stackを3千ドルで販売し、一般家庭での発電を目指している。華々しくデビューしたのとは裏腹に、会社の前を通っても、表札には会社名は記載されておらず、いまだ隠密に運営されている。Bloom Energyが発表した通りの商用製品が登場するのか、業界はまだ懐疑的である。それとも、Bloom Energyが発電の歴史を変え、第二のGoogleになるのか、注目が集まっている。