Archive for June, 2010

ハイパー・ローカル・マップ (Launch:Silicon Valley 10より)

Friday, June 25th, 2010

Micello (マイセロ) という新興企業は、店舗レベルの詳細なマップを製作し、iPhoneアプリケーションとして提供している。Launch: Silicon Valley 2010では、MicelloのCEOであるAnkit Agarwal (アンキット・アガワル) が製品の紹介を行なった。

Micelloの機能概要

Micelloは、iPhone上に、ショッピング・モール、大型店舗、公共施設などの、詳細なマップを表示する機能を提供している。利用者はショッピング・モールにおいて、Micelloを起動すると、モールの案内地図をiPhoneで見ることができる。例えば、サンノゼにあるSantana Row (サンタナ・ロー) というショッピング・モールでは、下のスクリーン・ショット (出典はいずれもApple Inc.) のように、モール内の店舗の配置を示した、詳細マップが表示される。

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左側の画面は、モールの中で、Maggiano’s Little Italyという、イタリア料理のレストランを、キーワード検索している様子である。検索結果は、地図上に店舗がオレンジ色で示され、その上のボックスに追加情報が表示される。目的の店舗を探すのに、もう案内板を見て位置を確認する必要は無く、iPhoneで位置を検索できる。また、地図上の青色の円は、自分のいる位置を示している。更に、右側の画面は、現在地から、そのレストランに行くルートを検索している様子である。ルートは赤色の線で表示され、これに沿って歩いていけば目的地に到達できる。

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利用者は、更に、コンパス・ボタンにタッチすると、iPhoneをカーナビのように使って、画面に示されたルートを通って、目的地にナビゲーションされる (上のスクリーン・ショット左側画面)。利用者の現在位置は、青色の円で示されている。もし目的地が二階であれば、最適な階段で、二階に上がる指示が出る (上のスクリーンショット右側画面)。

ビジネス・モデル

Micelloはこのアプリケーションを無償で提供しているが、様々なビジネス・モデルを計画している。利用者が、店舗に表示されているボックスにタッチすると、その店舗の詳細情報や連絡先が表示される。店舗側としては、Micelloを有効な広告媒体として活用することができる。また、Micelloはこれらの地図を、アプリケーション開発会社、地図開発会社、イベント企画会社、携帯電話会社などに、無償でライセンスし、そこにMicelloが配信する広告を掲載することも計画している。Micelloは、Google Mapsのハイパー・ローカル版で、マップに関連する広告事業の展開を目指している。

食品購買と健康管理 (Launch:Silicon Valley 10より)

Friday, June 25th, 2010

Launch: Silicon Valley 2010では、スマートフォン向けのアプリケーションが数多く登場した。ScanAvert (スキャン・アバート) という会社からは、CEOであるEllen Badinelli (エレン・バディネリ) が、アプリケーション概要や利用者の健康管理方法について紹介した。

ScanAvertの機能

ScanAvertは、iPhoneとAndroid向けのアプリケーションで、消費者の食生活に応じた、食品の安全性を表示する機能を持っている。消費者が、スーパーマーケットで買い物をする際に、食品パッケージに記載されているバーコードを、スマートフォンで読み取ると、食生活に関連した食の安全性についての情報を表示する。消費者は、自分の食生活や服用している薬を、事前にScanAvertのサイトで登録しておく。そして、ScanAvertは、読み取った食品が、登録された食生活とIncompatible (不適合) の場合には、警告メッセージを表示して、利用者に注意を喚起する。

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上のスクリーン・ショット (出典:Apple Inc.) が、その様子を示している。この事例は、消費者が、グルテンを取らない食生活を登録しているケースである。スマートフォンで商品バーコードをスキャン (左側の画面) すると、その製品はHoney-Comb Cerealというブランドの、朝食用のシリアルであることを表示 (右の画面) している。ScanAvertは、この製品はグルテンを含んでおり、消費者の食生活とIncompatibleであるとの、警告メッセージを表示している様子である。利用者が、代替食品のボタンを押すと、Corn Chex Cerealなど、グルテンを含んでいないシリアルを表示する機能を搭載している。ScanAvertは、他に、食品に含まれている材料や、一日の摂取許容量など、食品に関する詳細情報を併せて表示する。

Badinelliは、いま健康管理と食品の選択が複雑になってきていると、ScanAvertが登場した背景を説明した。Coeliac Disease (シリアック病、自己免疫疾患) の人は、グルテンを摂取すると、小腸内で炎症を起こす。上の事例は、シリアック病の人がスーパーマーケットで買い物をする際に、食品にグルテンが含まれていないことを確認しているシーンである。ScanAvertは、食品がリコールの対象になっているか、また、食物アレルギー素材 (ピーナッツなど) を含んでいるかを検知するためにも使われる。他に、食品へ有害な添加物が含まれているか、遺伝子組み換えが行なわれた食品であるかなど、食の安全性を確認するために、ScanAvertが利用される。また、宗教や文化に関連して、ユダヤ教の人がKosher Food (宗教上食べて良い食品、豚肉等が含まれている食品は食べてはいけない) であることを確認するためにも、ScanAvertが使われる。個人の食生活と食品の関係が複雑になってきており、消費者が食品の説明を読んで、マニュアルで判断するには限界がある。食の安全を確認するために、ScanAvertは重要な役割を担っている。

デジタル・ヒューマン (Launch:Silicon Valley 10より)

Friday, June 18th, 2010

先週、カリフォルア州マウンテンビューで、Launch: Silicon Valley 2010というカンファレンスが開催された。このカンファレンスは、SVASE (エスベース、Silicon Valley Association of Startup Entrepreneurs) が主催するイベントで、マイクロソフトのシリコンバレー・キャンパスを会場に開催された。

Launch: Silicon Valleyとは

Launch: Silicon Valleyは、新興企業が、ベンチャー・キャピタリストやメディアに、最新技術を紹介する場である。主催者であるSVASEは、初期投資などを通して、新興企業の立ち上がりを支援する団体である。新興企業は、会場のステージでデモを交えて最新技術を披露し、ベンチャー・キャピタリストからの投資獲得を目指す。一方で、ベンチャー・キャピタリスト側としても、資金の投入先を見つけるのに苦慮しているという事情がある。ここ最近、新興企業は少ない資金で、ウェブサービス事業を開始している。企業が立ち上がり、大量の運用資金が必要となる拡大期には、新興企業は大手ベンチャー・キャピタルから資金を調達する。そのため、中堅のベンチャー・キャピタルは、成長株への投資機会が少なくなっている。Launch: Silicon Valleyは、中堅ベンチャー・キャピタルが、有望な投資先を見つける場でもある。

Evolverという企業

カンファレンスでは、新興企業はステージの上で、六分間の持ち時間で技術紹介を行い、四分間でパネリストであるベンチャー・キャピタリストが、技術に対して評価を行なう形式で行なわれた。登場する新興企業は、個人投資家の資金で事業を開始したばかりのところが多く、また、製品の完成度はかなりのばらつきがあった。その中で、視覚的にアピールしたのが、Evolver (エボルバー) という企業であった。Evolverは、アバターを製作するためのウェブサービスを開発している企業で、利用者は、ソフトウェアは不要で、ブラウザー上で三次元のアバター(下の写真、出典はいずれもEvolver, Corp.) を製作することができる。

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利用者は顔写真をアップロードして、アバターを簡単に製作できる。アバターは左の写真の通り、体全体で、立体的に構成される。顔は顔写真から生成され、身体は自動で生成される。利用者は、顔及び全身を回転させて、360度のアングルから閲覧することができる。Live Modeでは、アバターの動作を選択することができ、アバターが様々な動きを見せる。アバターが、お辞儀したり、息を吸い込み呼吸をする。また、アバターが、ダンスをしたり、ジャンプすることもできる。上の写真は、アバターが、手を振っているところである。アバターの動きは滑らかで、人間の動きに非常に近く、好感が持ている。利用者は、製作したアバターを、Facebookなどに貼り付けて、自己紹介として利用する。例えばFacebookのウォールに、お辞儀しているアバターを貼り付けて、本人に代わって、訪問者に挨拶をするシーンで利用する。

アバター製作のプロセス

アバター製作においては、利用者は、詳細な顔写真を、Evolverのサイトにアップロードする必要がある。アップロードした写真に対して、利用者は、顔のパーツの主要ポイントをマークして、クローンを製作する。クローンとは、顔の部分だけのアバターで、クローンがどれだけ本人に似ているかどうかで、評価が決まる。次に、Builderというツール (下のスクリーン・ショット) を使って、クローンを編集して、アバターを製作していく。アバターの編集では、顔つき、肌の色、目の形、頭髪などを選択し、次に、シャツ、ズボン、靴など、衣服の選択を行なう。

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完成したアバターは、Galleryに公開して、他の利用者にその作品を見てもらうことができる。反対に、Galleryに掲載されているアバターは自由に利用することができ、アバターを自分の嗜好に沿って編集することもできる。またアバターを有償で販売することもでき、Galleryでは、アバターを1ドルから10ドル程度で販売している。Galleryには900余りのアバターが公開されており、Evolverのコミュニティーが広がりつつある。

アバターの利用方法

Evolverは、製作したアバターを活用する、様々な方法を紹介している。その一つが、前述の通り、アバターをソーシャル・ネットワークに掲載する方法である。その他に、Project Wonderlandという仮想社会で、製作したアバターを利用できる。Project Wonderlandとは、Sun Microsystemsが資金を提供している団体で、Second Lifeのような仮想社会を構成するプラットフォームを開発し、これをオープンソースとして公開している。Project Wonderlandは、仮想社会において、社員教育、顧客への製品紹介、社員とのコミュニケーションを行なう場として利用されている。製作したアバターを使って、仮想社会での動きを構築でき、アバターが新製品のプレゼンテーションを行なうという使い方が始まっている。Oracleの買収の後、Sun Microsystemsからの資金提供は中止となり、現在、Project Wonderlandは、Open Wonderlandと改名して、一般から資金を調達して活動を続けている。

考察

アバターは、コンピュータ技術の進化に連れて、人間に接近し始め、Digital Humanと呼ばれるようになってきた。アバターは、ゲームを筆頭に、ソーシャルメディア、仮想社会、携帯電話アプリケーションなどで使われている。Evolverはアバター技術を、大規模オンラインゲーム、企業でのコラボレーション、連邦政府の歴史紹介プロジェクトなどに展開している。今後は、国防省の軍事シミュレーションなどへの展開を計画している。また、民間では、小売店舗のファッション・ツールとして展開する計画である。オンライン・ショッピングで衣類を買う際に、自分サイズのアバターに試着をしてもらい、似合っているかどうかを判定する。アバターはゲームにおける表現手法から、今後は、分身として、社内コラボレーションやオンライン・ショッピングに広がる勢いである。アバターは企業システムにとって必須の機能となってきた。

電気自動車充電ステーション (Green:Net 10より)

Friday, June 11th, 2010

Green:Net 2010では、電気自動車とスマート・グリッドとのインテグレーションが主要トピックスであった。情報通信技術を使って、電気自動車をインテリジェントに充電する方式などが議論された。電力供給側からは、電気自動車充電ステーションを建設している、Better Place (ベター・プレース) が出席し、その事業展開を紹介した。

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Coulomb Technologiesという企業

電気自動車の充電ステーション事業では、Better Placeが有名であるが、Coulomb Technologies (クーロム・テクノロジーズ) というベンチャー企業も、この領域で事業を展開している。電気自動車所有者は、街中に設置されているCharging Station (充電ステーション) で、バッテリーを充電する仕組みである。上の写真 (出典:Coulomb Technologies, Inc.) は、サンフランシスコ市庁舎前に設置されているCharging StationからToyota Priusを充電している模様である。Coulomb Technologiesは、全米で事業を展開しており、136ヶ所にCharging Stationを設置している。まだその数は多くはないが、急速に事業を拡大している。電気自動車やプラグイン・ハイブリッド自動車の所有者は、Coulomb Technologiesの会員に登録し、これらの充電施設を利用することができる。Charging Stationは三種類 (上の写真はBollardタイプ) あり、設置されている電源ケーブルを自動車に接続して充電を行なう。充電を開始するためには、RFIDが内蔵されたメンバーカード (ChargePass Card) をCharging Stationのリーダにかざして行なう。

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Coulomb Technologiesは、会員向けにChargePoint (上のスクリーンショット、出典:Apple) という、iPhoneアプリケーションを提供している。会員は、ChargePointを起動して、街中に設置されているCharging Stationの位置を確認することができる。また、現在地からCharging Stationまでの道順や、ドライブ経路上にあるCharging Stationの位置を確認できる。前述の通りCharging Stationの数は多くなく、運転している間、ガス欠になる不安 (Range Anxiety) が付きまとう。このためにも、ChargePointは必要不可欠なツールである。Coulomb Technologiesは電気自動車の充電を行なうに当り、運転手及びCharging Station管理者に豊富な機能を提供している。これらの機能はクラウドで提供されており、情報通信技術をフルに活用している。クリーン・エネルギーが情報通信技術と結びつき、新しいアプリケーションが生まれつつある。

iPhone・iPadで消費電力監視 (Green:Net 10より)

Friday, June 11th, 2010

クリーン・エネルギーのカンファレンスであるGreen:Netでデビューした企業に、Visible Energy (ビジブル・エナジー) という会社がある。Visible Energyは、オフィスや家庭における、電力使用量を監視するシステムを開発しているベンチャー企業である。

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Energy UFO

Visible Energyが提供しているシステムは、Energy UFO (上の写真、出典:Visible Energy) と命名されている。このシステムは、スマート・プラグの機能を司り、接続されている家電機器の電力使用量を計測する機能を提供している。携帯電話の他に、冷蔵庫やウォーター・クーラーなどをEnergy UFOに接続して、電力使用量を監視する。計測したデータは、電力線経由でGatewayに送信される。Gatewayはネットワークに接続されており、受信したデータはWiFi経由でiPhoneに送信される。利用者はiPhoneアプリケーションであるEnergy UFO (下のスクリーンショット、出典:Apple) を起動して、リアルタイムで、電力消費量をモニターする仕組みである。手順としては、まず、iPhoneを家庭やオフィス内でのWiFiネットワークに接続する。次にEnergy UFOを起動すると、Gatewayを認識する。Energy UFOは、接続されている家電機器の電力消費量を、スピードメータ形式 (下のスクリーンショット左側) で現し、利用者はリアルタイムで電力消費量を把握できる。Energy UFOは、5分おきに電力消費量を計測しており、また、過去二か月分のデータを保存している。Energy UFOは、時間毎の電力消費量を棒グラフで表示 (下のスクリーンショット右側) する機能があり、時系列的に電力消費量を把握できる。他に、Energy UFOにはスイッチ機能があり、iPhone からEnergy UFOや、そこに接続されている四つのコンセントの電源を、オン・オフすることができる。

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考察

Visible Energyは、iPad向けのEnergy UFOを開発中であることを明らかにしている。iPad向けEnergy UFOは、大きな画面を利用して、監視機能などを拡充している。多くの企業から、電力消費監視製品が出ているが、ディスプレーは専用製品で、システム価格は高価である。この業界でのトレンドは、iPadという汎用製品を採用し、タッチパネルで操作性を向上できるだけでなく、専用ディスプレーが不要となり、システム価格も下がるという方向に進んでいる。更に、スマート・メーターが設置されても、個々の家電機器の電力消費用は把握できず、省エネを進めるには、Energy UFOのような製品が必須となってくる。スマート・メーターを補完する製品が市場で広がりつつある。