Archive for July, 2010

グーグル・リッチ・スニペッツ (SemTech 10より)

Friday, July 30th, 2010

今週のレポートは、最新のセマンティック技術を議論するカンファレンスであるSemantic Technology Conferenceから、Googleのセマンティック・ウェブ技術について考察する。レポート作成では、GoogleのKavi GoelとPravir Guptaが行った講演「Google Rich Snippets」を参考にした。

Google Rich Snippets概要

Googleは、昨年のSearchology (サーチオロジー、検索技術の発表会) で、Google Rich Snippets (グーグル・リッチ・スニペッツ) という、セマンティック技術を発表した。Rich Snippetsとは、ウェブサイトを記述するHTMLなどのマークアップに、セマンティックな情報を付加するツールで、検索結果の表示を構造化するために用いる。ウェブサイ運営者は、Rich Snippetsを使って、ウェブページがどんな内容を表しているかという、セマンティックな情報を付加する。

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Google検索エンジンで、「xanh restaurant」というキーワードで検索した結果が、上のスクリーンショット (出展:Google Inc.) である。これは、Xahn (ザン) というベトナム料理レストランの検索結果を示しているもので、通常の検索結果の表示に加えて、星印でレストランの評価を示している。また評価 (Review) の件数が652と表示されている。この星印や評価件数が、Rich Snippetで付加したセマンティック情報である。検索結果のリンクをたどり、Yelp (イェルプ、店舗紹介サイト) のページを開くと、下のスクリーンショット (出展:Yelp) の通りである。Yelpのサイトにおいて、Xahnの評価は星四つで、評価件数は652となっている。

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更に、このウェブページのソースコードを見ると、次頁の通りである。(出展:Google Inc.)ソースコードは、「hReview-aggregate」というタグから始まっており、この一塊がRich Snippetsである。Rich Snippetsで、色々な記述ができるが、この事例は、Review (評価) に関する記述である。ソースコードの中の「fn = Xahn Restaurant」は店舗の名前を、「rating value = …. 4.0」で四星を、「count = 652」がレビューの数を示している。

検索結果の最適化

Yelpのウェブサイトは、上の事例の通り、ウェブページにRich Snippetsを組み込み、レストランの評価が四星などと、レストランに関する情報を追加している。Google検索エンジンは、この追加情報を解釈して、検索結果に、四星を表示している。また合わせて、レストラン評価件数が652あり、価格帯が$$であることも表示している。利用者は、数多く表示される検索結果の中で、星印が付いたYelpのサイトが目に留まり、このリンクをクリックする。Rich Snippetsにより、Yelpサイトへの訪問者が増えることになる。Googleによると、Rich Snippetsを導入しても、検索順位は変わらないとしている。しかし、上述の通り、Rich Snippetsによる付加情報が、検索結果で際立っており、SEM (Search Engine Marketing) で有効な手段となる。これからのウェブサイト運営者は、検索結果順位の向上だけでなく、Rich Snippetsによる最適化も導入する時期に差し掛かっている。Google Rich Snippetsは、上述のReviewsのほかに、People (人物)、Business and Organizations (会社や組織)、Events (イベント)、Video (ビデオ) のタグをサポートしている。レストラン以外にも、コンサート・チケット販売やDVDの販売のプロモーションなどで、幅広く使用できる。

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Goelらが行った講演で、Google Rich Snippetsの普及状況を公開した。それによると、米国においては、Google Rich Snippetsを実装しているページが、09年10月時点と比較して二倍に増え、全世界では四倍に増えているとしている。一般利用者にとってセマンティック技術はまだ敷居が高いが、Googleの参入などでその普及が広がりつつある。またYahooは、SearchMonkey (サーチ・モンキー) という同様なサービスを展開している。セマンティック・ウェブを使った検索エンジン・マーケッティングの機が熟してきた。

GoogleFacebookの構図

Google Rich Snippetsは、前回紹介したFacebook Open Graphに似ており、どちらもウェブページにセマンティックな情報を付加するためのツールである。セマンティック技術を含め、GoogleとFacebookの争いが、鮮明になりつつある。7月28日のWall Street Journal電子版は、Googleはソーシャル・ゲームのプラットフォームとして、Google Meというサービスを開発中であると報道している。Google Meとは、ソーシャル・ゲームを実行するためのウェブ基盤である。ソーシャル・ゲームとは、ソーシャル・グラフを活用したゲームで、ゲームの進展状況を友人と共有したり、友人と共同でゲームを展開することができる。更に、Wall Street Journal電子版は、Googleはソーシャル・ゲーム開発企業であるPlaydom (プレイダム)、Playfish (プレイフィッシュ)、Zynga (ジンガ) と交渉中であると報じている。

Facebookがソーシャル・ゲームを独占しており、Zyngaが開発したFarmVille (ファームビル) では、6,000万人の利用者がある。日本で先行しているソーシャル・ゲームが、いまアメリカで大きく動いている。Electronic Artsは、昨年11月に、上述のPlayfishを$400Mで買収している。Walt Disneyは7月27日に、上述のPlaydomを、$563.2M+$200Mで買収することを発表した。また日本のSoftBankは、昨日、Zyngaとの提携を発表し、Zyngaを日本で展開するとしている。このような背景で、Googleがソーシャル・ゲームに進出しようとしている。一方でFacebookは、広告ネットワークをFacebookから外部のサイトに展開する動きを見せている。FacebookがGoogle AdSenseの事業に進出しようとしている。GoogleとFacebookのテリトリーが重なり始め、暑い夏となっている。

オープン・グラフ (SemTech 10より)

Friday, July 23rd, 2010

最新のセマンティック技術を議論するカンファレンスであるSemantic Technology Conferenceは、10年6月21日から五日間、サンフランシスコで開催された。このレポートでは、セマンティック・ウェブのマクロな動向を、数回に分けて解析する。レポート作成に当たっては、ion interactive (アイオン・インタラクティブ) の社長兼CTOであるScott Brinker (スコット・ブリンカー) の「The Semantic Web in Marketing & Advertising」 (マーケティング及び広告におけるセマンティック・ウェブ) という講演を参考にした。Brinkerは、この講演の中で、セマンティック・ウェブの12のトレンドを紹介した。この中から、重要なトレンドを取り上げ、その内容を掘り下げて、セマンティック技術の潮流を紹介する。

Facebook Open Graph概要

初回は、Facebook Open Graph (フェースブック・オープン・グラフ) の概要と、その潜在能力について考察する。Facebookは、10年4月21日に、f8 (開発者向けのカンファレンス、フェイトと発音) において、Facebook Open Graphを発表した。Open Graphとは、ざっくり表現すると、Facebook上でのソーシャル機能を、他のウェブサイトで利用するための仕組みである。Open Graphは、ウェブサイトで、利用者の嗜好を把握するために利用され、その際に、セマンティック技術を用いて、利用者の嗜好を精密に定義する。

Open Graphは、三つのコンポーネントから構成され、それぞれ、Social Plugins、Open Graph Protocol、Graph APIである。Social Pluginsは、ウェブサイトにFacebookのソーシャル機能を導入するためのプラグインである。Facebookでは、会員が音楽や写真などに対して、好きを表現するために、Like Button (ライク・ボタン、サムアップのアイコン) がある。会員が、特定の音楽や写真を気に入った時に、このLike Buttonをクリックして、ファンであることを宣言する。このアクションは、会員のWall (掲示板) に掲載され、他の会員に向けてこの情報を発信する。更に、この情報は会員のProfile (プロフィール) に、嗜好情報として記録される。Facebookやそのパートナーは、この嗜好情報を参考に、個人に特化した情報や広告メッセージを配信している。

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Facebook Open Graph事例

これと同様な機能を、Facebook以外のウェブサイトで実装するツールが、Social PluginsのLike Buttonである。映画やテレビ番組に関する人気サイトにIMDbがある。IMDbは、Like Buttonを導入しており、このサイトを訪れた利用者は、気に入った映画やスターに出会った際に、Like Buttonを押してファインであることを宣言できる。現在上映中の人気映画である「Inception」のページ (上のグラフィックス、出展はいずれもIMDb) にもLike Button (画面右上の部分、それを拡大したのが下のグラフィックス) が実装されている。このボタンを押すと下のグラフィックスのメッセージとともに、IMDbのウェブサイトに表示される。またこの情報は、利用者のFacebookのWallに掲載され、この情報を友人と共有できるだけでなく、この嗜好情報がProfileの中に記録される。

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次に、Open Graph Protocolは、セマンティックなマークアップで、ウェブサイト開発者が、ウェブページの属性を定義するために使用する。つまり、Open Graph Protocolは、ウェブページが何を記述しているかの、セマンティック情報を付加するためのツールである。IMDbサイトで、前述のInceptionのウェブページのソースコードを見ると、下記の記述がある。

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セマンティック技術

メタタグの中に記載されている”og:type”という部分が、Open Graph Protocolを示している。ここで、ウェブページのタイプが映画であると定義している。Open Graph Protocolは、上述のLike Buttonと対で使用される。上述のように、このページでLike Buttonを押すと、Facebookは、この利用者は数あるコンテンツの中で、テレビ番組ではなく、映画が好きであると認識する。さらに、その映画のタイトルは「Inception (2010)」であると理解し、その情報を、当該会員のFacebook Profileに記録する。このように、ウェブサイトでセマンティックなマークアップを追加することで、利用者の嗜好について、より精密に把握することができる。ウェブサイトのタイプは、映画以外にも、スポーツ、会社、ホテル、レストラン、慈善団体、学校、政府、俳優、著者、都市、ランドマークなどが用意されている。Facebookは、世界のウェブサイトで利用者の嗜好を把握して、これらの区分に分類して、その情報を記録する。これらの個人情報を使って、Facebookは、会員に特化したコンテンツの配信を目指している。これらの情報は公開されており、パートナー企業も会員の個人情報にアクセスできる。この情報にアクセスするツールがGraph APIである。パートナー企業も、これらの情報を元に、会員に最適な広告メッセージの配信を目指している。

考察

ソーシャル・ネットワークは、個人情報の宝庫で、これらを利用して、広告メッセージの個人化や商品の販売促進が進むと期待されていた。しかし、現実には、Facebook Beacon (個人の購買情報のトレース) で、個人のプライバシー問題から、Facebookは早々に、この機能を撤回した経緯がある。ソーシャル・ネットワークでのマーケティングは、プライバシー問題とのバランスで、期待したほど進展がなかった。ここに来て、Facebookは、Open Graphを投入して、人と人の繋がりだけでなく、人とオブジェクト (前述の映画のような対象物) の繋がりを精密に定義できるようにした。このセマンティック情報を付加されたデータが公開されており、この基盤上でユニークなアプリケーションを開発する絶好の機会でもある。現在、Facebookの会員数は5億人と言われているが、その数は増え続けている。2013年までに、世界のインターネット利用者の全員が、Facebookの会員になるという予測もある。今年10月には、Facebookを描いた「The Social Network」という映画が封切られる。映画の題名とは裏腹に、Facebookはもはやソーシャル・ネットワークではなく、インターネットそのものになろうとしている。

オンライン・カウンセリング (Launch:Silicon Valley 10より)

Friday, July 2nd, 2010

Launch: Silicon Valley 2010では、ライフサイエンスを中心に、最新の医療技術などが紹介された。その中で、Breakthrough (ブレークスルー) という新興企業は、インターネットを活用した医療サービスを提供している。

Breakthroughの機能概要

Breakthroughは、カリフォルニア州マウンテンビューに拠点を置く、オンラインで医療サービスを提供する企業である。Breakthroughが対象としている医療分野は、メンタル・ヘルスで、利用者はインターネット経由で、治療を受けることができる。利用者は、氏名を明かすことなく入会でき、メンタル・ヘルスに関する治療を受けることができる。メンタル・ヘルスという、他人に知られたくない病気を、オンラインで治療を受けることができる仕組みである。会員はまず、Breakthroughに登録されている医師の検索を行う。そして、選択した医師と治療スケジュールの調整を行い、遠隔で診察を受けるというプロセスとなる。

会員は検索した医師の名前をクリックすると、医師のプロフィールなどを閲覧できる。ここには、治療方法、専門分野、ライセンス番号、治療対象患者概要、メディカル・スクールなどが記載されており、会員はこれらの情報を参考として、医師を選択する。次のスクリーンショット (出典:Breakthrough) は、Deborah Reisfeldという医師の事例である。Reisfeld先生は、Carlsbad (カリフォルニア州) にオフィスがあり、Cognitive Behavioral Therapy (認知行動療法、感情の機能障害などへの治療法) を専門とするとの説明がなされている。治療方法と費用については、医師により異なるが、電話やSkypeでの治療は時間当たり70ドルで、面接による治療は時間当たり90ドル程度である。この他に、ウェブカメラを利用したビデオ形式や、チャット形式での治療も行なわれている。アメリカでは1994年に、遠隔治療に保険の適用が認められており、Breakthroughでの遠隔治療に、保険の適用が可能となっている。

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考察

Breakthroughでは、情報通信技術を活用した医療サービスが展開されている。例えば、医師とアポイントメントを取るのもオンラインで、ウェブサイトにて会員の氏名、電話番号、希望の日時、診察方式を記入して送信する。このリクエストに対して、先生から診察時間の連絡を受けることになる。会員は、オンライン・ショッピングする感覚で、治療を受けることができ、治療に入る敷居が低くなっただけでなく、電話での煩わしい時間調整作業から開放される。アメリカの医療サービスは極めて評判が悪いが、ここ最近は、情報通信技術が導入され、オンライン化が進み始めた。Breakthroughを筆頭に、長い間停滞したままであった医療サービスの、オンライン化の事例が増えてきた。

ブラインド・メッセージ (Launch:Silicon Valley 10より)

Friday, July 2nd, 2010

Launch: Silicon Valley 2010で、一番最初に製品紹介を行なったのが、BccthisのCEOであるDave Waldman (デーブ・ウォルドマン) である。Bccthisは、Outlook、Gmail、BlackBerryのプラグインとして、メール本文へブラインドのメッセージを追加する機能を提供している。

Bccthisの機能概要

下のスクリーンショット (出典はいずれもBccthis, LLC) は、OutlookでBccthisを使ってメールを作成している様子である。スクリーン・ショット上部は、いつものOutlookのメール作成画面である。Bccthisは、メール本文下部に、第二のボックスを開き、ここでブラインド・メッセージを作成することができる。ブラインド・メッセージの送信先は、右下のボックスにおいて、送信先アドレスを選択する。ブラインド・メッセージは、このアドレスで指定された受信者だけが、メール本分に加えて、読ことができる。通常のメール受信者は、このブラインド・メッセージは読むことはできない。

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次のスクリーン・ショットは、ブラインド・メッセージをOutlookで受信した様子である。画面上部の枠内に、ブラインド・メッセージが表示され、その下にメール本文が表示される。ブラインド・メッセージの利用方法は様々で、このケースでは、上司が特定の部下だけに、仕事の指示を出している様子である。Dave Waldmanという上司が、部下三人に、プロジェクトが完了し、労いのメッセージを送っているところである。ここで、Bccthisの宛先にBrian Elkanを指定し、Elkanだけにブラインド・メッセージで、慰労会のアレンジを依頼しているシーンである。

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Waldmanによると、電子メールは日常のビジネスで、標準コミュニケーション手法として幅広く普及しているが、電子メールでの情報伝達では、その半分が意思疎通が上手く行っていないとしている。その結果、受信者の誤解により、受信者が不快な思いをするケースが多いと分析している。Bccthisは、ブラインド・メッセージを添付することで、発信者の真意を伝える枠を設け、スムーズなコミュニケーションができるとしている。

考察

アメリカ人とのコミュニケーションでは、親切丁寧に説明してくれるケースが多く、特にブラインド・メッセージの必要性は感じない。一方で、日本人同士の交信では、言葉数が少ないケースが見受けられる。Bccthisは、アメリカではなく日本において、本文で言葉が足らない分を、ブラインド・メッセージで補う利用法が適しているのかもしれない。