Archive for November, 2010

ウェブ・テレビと広告技術 (NewTeeVee Liveより)

Friday, November 26th, 2010

11月10日に、サンフランシスコにおいて、オンライン・ビデオの最新技術を議論する、NewTeeVee (ニュー・ティーヴィー) というカンファレンスが開催された。カンファレンスでは、FoxやCNBCなどのメディア企業と、GoogleやTwitterなどのIT企業が、プレゼンテーションやパネル・ディスカッション形式で、最近技術を議論した。

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Huluの最新動向

カンファレンスの基調講演では、Hulu (フル) のCEOであるJason Kilar (ジェイソン・カイラー) が、広告技術を中心に、サービス概要や市場動向を紹介した。Huluは、テレビ番組や映画をストリーミングするサービスを展開している企業であるが、YouTubeとは異なるアプローチで、事業として成功を重ねており、その企業戦略が業界で注目されている。YouTubeは、アマチュア・ビデオの共有サービスを中心としているが、Huluはプロが製作したビデオに特化した、ウェブサイトのテレビ局として事業を展開している。

Huluは、テレビ番組や映画を、NBC、Fox、ABCのほかに、PBS、USA Network、Bravoなどの、パートナー企業から供給を受けている。Huluが配信するテレビ番組や映画では、同時に、コマーシャルも放送される。利用者は、テレビを見るときと同様に、無料で番組を見ることができるが、コマーシャルも見ることになる。Huluは、メディア企業と、広告収入をシェアする形式で、事業を運営している。今年6月からは、Hulu Plusという有料サービスが始まった。利用者は、月額7.99ドルの料金で、コンテンツをiPad  (上の写真、出展はいずれもHulu)、ゲーム機、テレビで見ることができる。また、コンテンツは、現行の内容を拡充した形式となっている。因みに、Hulu Plusは有償であるが、コマーシャルが表示される。

Huluの広告技術

基調講演で、Kilarは、Huluの業績を支えている広告技術に力点を置いて、最新のサービスを紹介した。

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Huluはストリーミング・ビデオ広告を様々な方式で提供している。上のスクリーンショットは、一番標準的な形式 で、Instream Video Adと呼ばれ、番組が始まる前に30秒間、広告ビデオが放送される。他に、Branded Slateと呼ばれる形式では、番組が始まる前に5秒間、商品のスティル・イメージが表示される。これらの方式に加え、Kilarは、視聴者が好みの広告を選択できる方式を紹介した。その中で、Ad Selectorという方式では、下のスクリーンショットの通り、利用者が好みの広告ビデオを選ぶことができる。この事例では、Chevrolet Cruze、Ford Focus、Toyota Corollaの三車種の中から、Chooseボタンを押して、見たい広告を選択できる。

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また、下のスクリーンショットは、Branded Entertainment Selectorという方式で、広告表示形式を視聴者が選択できる。この事例はPhiladelphia Cream Cheeseの広告で、視聴者が広告表示形式 (番組の前に長い広告を一回だけ表示するか、番組中に短い広告を複数回表示するか) を選択できる。

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この他に、Ad Tailorという方式は、広告主が視聴者に質問を投げかける形式である。例えば、自動車の購入計画について、今後六ヶ月以内に購入計画はあるか、という質問を表示し、視聴者は三択形式で、ボタンを押して回答する。Kilarは、テレビでの広告とは異なり、Huluは視聴者を巻き込んで、視聴者の反応を把握して、視聴者の関心を惹く広告を配信できる点を強調した。

オンライン・ビデオ市場

Kilarは、このように視聴者とのインタラクションを通じて、広告配信の最適化を行なうことで、ケーブルテレビなどでの広告配信と比較して、大きな効果を挙げていると説明した。具体的には、Huluの収入は、08年が2,500万ドル、09年が1億800万ドル、10年の予測は2億4,000万ドルであり、07年に創業してから、急速に業績を伸ばしていることを、質疑応答のセッションで明らかにした。この発言を裏付けるように、comScoreから、オンライン・ビデオへの広告配信数の統計データが発表されているが、Huluは首位を占めている。アメリカにおける10年10月度のビデオ広告配信件数において、Huluの広告配信数が10億件を突破して、他のサイトを大きく引き離している。因みに、YouTubeを運営するGoogleは、オンライン・ビデオ配信件数では、他社を引き離しトップであるが、広告配信件数においては、第十位に甘んじている。

トレンド

カンファレンスでの共通テーマは「Cord Cutting」であった。これは文字通り、コードの切断を意味しており、このコードとはケーブルテレビを筆頭とする、Pay TV (有償テレビ) を指している。今年から、アメリカでは、ケーブルテレビを解約して、ウェブ・ビデオに切り替える家庭が増えてきた。テレビをインターネットに接続して、Huluのようなビデオを配信するサイトにアクセスして、無料でテレビ番組や映画を観る形態である。ケーブルテレビの最大手であるComcastは、今年に入り加入者数が減少していることは認めているが、その理由は不況のためであるとしている。Comcastによると、ケーブルテレビを解約した視聴者は、地デジに乗り換えているのであって、ウェブ・テレビに移っている訳ではないとしている。Cord Cuttingの結論は出ていないが、市場ではYouTubeやHuluへのアクセス数が急増し、Apple TVが売れて、Google TVが発売開始となっている。アメリカの家庭では、明らかに、テレビを観る形態が大きく変わり、ウェブ・テレビが家庭のリビングルームに入ってきた。

パソコンとテレビのワイアレス接続 (DEMO Fall 10より)

Sunday, November 21st, 2010

Veebeamは、Burlingame (カリフォルニア州) に拠点を置くベンチャー企業で、パソコンとテレビをワイアレスで接続する技術を開発している。同社はVeebeamという名称で、パソコンとテレビを接続する機器の販売を始めており、利用者はパソコン上のインターネット・ビデオを、テレビの大画面に映し、家族全員で観ることができる。(下の写真 (出展はいずれもVeebeam) 中央部の四角い機器がVeebeam本体。)

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Veebeamの製品概要

次のグラフィックスは、Veebeamのシステム構成を模式的に示しており、パソコン画面をワイアレスUSBで、テレビにストリーミングする機能を提供する。利用者は、まずパソコンに、Veebeamソフトウェアをダウンロードする。次に、Veebeamとテレビをコンポジット・ケーブルまたはHDMIケーブルで接続する。そして、パソコンにUSBアンテナを接続するだけでセットアップが完了し、パソコンのモニター画面がそのままテレビにストリーミングされる。Veebeamは、利用形態において、二つのモードを提供している。Screencastモードは、パソコン画面をそのままテレビ画面にストリーミングするモードで、ウェブサイトでのビデオや録画ビデオを、テレビで閲覧するときに使う。Play-Toモードは、パソコンでアプリケーションを使っている背後で、録画ビデオをテレビにストリーミングするモード。どちらのモードも、ビデオの操作はパソコンから行なう。

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Veebeam本体とパソコンに接続するUSBアンテナは、Wireless USBのプロトコールで接続され、転送速度は480Mbit/秒である。利用者はパソコン上で、YouTube、Netflix (映画レンタル)、Hulu (テレビ番組) などにアクセスして、ビデオ映像をテレビにストリーミングする形態となる。今までラップトップで見ていたビデオを、リビングルームのテレビに映し、家族で観ることができる。Veebeamは、シンプルな機能を簡単な操作で使えることが特徴で、価格は$99からとなっている。

市場概況

インターネット上のビデオを、テレビに映して観る家庭が急増し、この市場で様々な製品が登場している。Google TVは10月から販売が始まり、SonyとLogitechから製品が出ている。Google TVは、テレビにAndroidを搭載し、テレビとインターネットが一体となっている。一方、Apple TVは片手に乗る小型のデバイスで、インターネット上の映画やテレビ番組をレンタルすることができる。Veebeamは、第三の方式で、パソコンをテレビにストリーミングする方式を提供している。米国では、高額なケーブルテレビを解約して、インターネット上の有償・無償のコンテンツを楽しむ家庭が急増してきた。

第二世代のクレジットカード (DEMO Fall 10より)

Sunday, November 21st, 2010

DEMO Fall 2010で一番話題になった企業は、ピッツバーグに拠点を置く、Dynamicsというベンチャー企業である。Dynamicsは、次世代のクレジットカード技術を開発しており、Citibankで採用が決まり、試験運用が始まっている。

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Dynamicsという企業

Dynamicsがデモしたクレジットカードは二種類あり、MultiAccountカードとHiddenカードである。MultiAccountカードは、上の写真 (出展:Dynamics, Inc.) の通りで、一枚のカードが二つの番号を持ち、クレジットカードとデビットカードとして使用できる。または、同じクレジットカードでも、個人カードと企業カードを一枚に収納できる。利用者は1又は2のボタンを押して、種別を選択をする。

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Hiddenカードは上の写真 (出展:Dynamics, Inc.) の通りで、カード番号の中六桁がマスクされている。利用者は暗証番号を、AからEのボタンから入力し、認証されるとカード番号のマスクされている部分が表示される。(上の写真はマスクされている部分が表示されている様子。) 従って、カードを紛失しても悪用されることはない。どちらのケースも、利用者の入力が完了すると、磁気ストライプに情報が書き込まれ、使用可能となる。

Citibankでの運用事例

Citibankは、Dynamicsの技術を搭載したクレジットカードの発行を計画している。ブランド名はCiti Dividend Platinum Select MasterCardとCiti PremierPass Elite (下の写真、出展:Citibank)である。どちらのカードにもボタンが二つ付いていて、Regular CreditとRequest Rewardを選択できる構造である。 Regular Creditとは、このカードを通常のクレジットカードとして利用し、 Request Rewardとは、貯めた特典から支払いを行なう際に利用する。利用者は、C又はRのボタンを押して使う機能を選択する。このカードは、今月から試験運用が開始され、来年末までに本格運用が始まる。

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カードの中には、半導体回路と電池が搭載されているが、フォームファクターは現行のカードと同じで、既存のクレジットカードのインフラをそのまま使用できる。クレジットカードは、1970年代に登場し、40年間技術進化が無かったが、Dynamicsはカードにインテリジェンスを持たせ、利用者に便利で安全な機能を提供している。

価格交渉ショッピングサイト (DEMO Fall 10より)

Friday, November 12th, 2010

Browsemob (ブラウズモブ) は、Hemet (カリフォルニア州) に拠点を置くベンチャー企業で、ウェブ・ショッピングにおいて、価格値引き交渉ができる機能を提供している。DEMO Fall 2010の会場で、同社の創設者であるMatthew Hurewitz (マシュー・ヒュアウィッツ) に、その仕組みや狙いなどについて、聞くことができた。

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Browsemobという企業

Browsemobは、利用者がウェブ・ショッピングをする際に、定価で購入するのではなく、値切ることのできる機能を提供している。まず、利用者は、Browsemobで会員登録を行い、IDとパスワードでログインする。Browsemobのサイトに入ったら、初回だけ、Price Tagアイコンをドラッグして、ブックマーク・バーに登録しておく。次に、他社のショッピング・サイトに入り、買い物を行なう。現在、Browsemobは試験運転中で、Gap.comだけを対象にサービスを提供している。上のスクリーンショット (出展:VentureClef) は、Gap.comでショッピングしている様子である。このサイトでWool Blend Blazerという商品のページで、この商品を購入しようとしているところである。通常なら、このサイトでチェックアウトして購入するのであるが、この商品をカートに入れる代わりに、ブックマーク・バーに登録したBrowsemobのアイコンをクリックすると、画面右端の青色のウィンドウが開く。これは、Browsemobのウィンドウで、ここに商品名 (Wood Blend Blazer) と定価 ($128.00) が表示される。利用者は、Your Priceという枠に、応札価格を入力する。定価で買うのではなく、希望価格を提示するのである。この例では、$90を提示しているところである。この提示価格に対してBrowsemobは、Likelyと表示して、価格交渉は成立する可能性があると教えてくれる。この他にNot likely…、Maybe、Very likely!のコメントが表示される。後日、利用者は、Browsemobのサイトで再度ログインして、価格交渉の結果を閲覧する。交渉が成立した商品については、My Approved Dealsというフォルダーに表示され、利用者は指定された近所のGap店舗に出向いて、その商品を、合意した価格で購入することになる。(上述の事例では、こちらから提示した価格については、ペンディングとなっており、三日経過しても、結果は出ていない。)

Hurewitzは、このサービスの狙いについて、店舗側からの観点を強調して説明してくれた。Browsemobで利用者が入力した価格は、近くの店舗の責任者に送信される。店舗側は、在庫や販売の状況から、利用者が提示した価格を、受けるかどうかを決定する。店舗側は、広告掲載による値引きではなく、利用者との直接交渉での値引きとなる。これにより、店舗はウェブ上の消費者を、店舗に引き入れることができる。Hurewitzはこれを、「顧客をリアルな店舗に導くツール」であると表現した。情報技術をリアル店舗の販売促進に活用する事例が増えてきた。

企業向けチェックイン (DEMO Fall 10より)

Friday, November 12th, 2010

若者の間では、Check-In (チェックイン) と呼ばれる、スマートフォンのアプリケーションがブームになっている。この市場を切り開いたのが、Foursquare (フォースクエア) というベンチャー企業で、これを追ってFacebookは、Placesという機能をリリースした。チェックイン機能をゲームとして使うだけでなく、企業は販売促進に活用すべく、様々な試みを始めた。Facebookは、小売店舗がPlacesにクーポンを配信して、利用者を呼び込むサービスを開始した。

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DoubleDutchという企業

Facebook Placesというパブリックなチェックイン機能を使うのではなく、キャンペーンを展開する企業に特化したサービスが登場している。その一つがDoubleDutch (ダブルダッチ) という、サンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業である。DEMO Fall 2010の会場において、同社CEOのLawrence Coburn (ローレンス・カバーン) から、製品概要や応用事例について説明を聞いた。DoubleDutchは、iPhoneやAndroid向けに、ホワイト・ラベルのチェックインを提供している。ホワイト・ラベルとは、無印のアプリケーションで、企業が自社のロゴを入れ、キャンペーン内容を定義して、消費者にチェックイン機能を提供する方式である。Coburnは、DoubleDutchの狙いを、「企業がカストマイズできるチェックイン機能」、と説明してくれた。この機能を実際に使っているのは、Footbalistic (フットボーリスティックス) という企業で、サッカー・ファン向けに、レストランやバーの情報配信を行なっている。上のスクリーンショット (出展:Footbalistics) は、FootbalisticsというiPhoneアプリケーションで、DoubleDutchのチェックイン機能を、Footbalistics向けにカストマイズしたものである。左側の画面は、サッカー・ファンが集うバーやレストランを表示している。右側の画面は、これらのバーやレストランにチェックインした利用者を示している。このアプリケーションは、サッカー・ファンがバーやレストランに集まって、一緒に試合を観戦するためのツールである。同時に、サッカー・ファンは、チェックインを重ねることにより、Stickers (バッジ) の数を競うゲームを楽しむことができる。一方、Footbalisticsとしては、利用者サービスの向上に加え、レストランやバーのプロモーションを展開できる。DoubleDutchは、他にも、アリゾナ州立大学で、大学構内の案内と、学生間でのコミュニケーション・ツールとしても使われている。

チェックイン機能を利用して、商品の販売促進を行なう企業が増えてきた。チェックインには、Facebook Placesというパブリックなサービスを利用する方式と、DoubleDutchのように、独自のサービスを展開するという、二つの方式がある。DoubleDutchは、今後、利用者のチェックイン状況を分析する、アナリティックスを提供するとしている。企業としては、何処でどれだけチェックインされたかを把握でき、キャンペーン効果を測定することができる。チェックイン機能が如何に販売促進に貢献できるか、検証され始めた。