Archive for January, 2011

会員カード集中管理

Friday, January 28th, 2011

消費者が利用するデバイスが、パソコンから、急速に、スマートフォンやタブレットに遷移を始め、今年はモバイル端末が注目を集める年となりそうである。

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CardStarというアプリケーション

モバイル端末上での技術進化が足早になり、スマートフォンを使った集客プログラムが本格化している。CardStarもそのひとつで、利用者が持っている会員カードを集中管理する機能を提供している。CardStarは、利用者の会員カードを格納し、小売店舗での買い物の際に、その会員カードを提示すると特典を受けられる仕組みである。上のスクリーンショット (出展はいずれもVentureClef) は、CardStarをiPhoneで起動したところである。左側の画面には、登録した会員カードの一覧が表示されている。ここから、BevMo (ビブモ、酒類販売量販店) を選択すると、右側の画面の通り、BevMoの会員カードが表示される。実際に、BevMoで買い物をして、会計の際に、プラスチックの会員カードの代わりに、iPhoneに表示した右側の画面を店員に提示した。BevMoの店員は、この番号で会計を行い、会員価格でワインを購入でき、また、ポイントも加算された。今まで、買い物の際に会員カードを忘れて、値引きを受けられず悔しい思いをしたことが何度もあったが、これからはiPhoneを持っていれば、値引きを受けることができる。BevMoのスタッフから、CardStarについて話を聞くと、ここ最近はプラスチックの会員カードではなく、iPhoneで会員カードを提示する人が急増しているとのこと。急速に会員カードのデジタル化が進んでいる。キーチェインに大量の会員カードをぶら下げている光景は、過去のものとなりつつある。

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消費者向けのプロモーション

CardStarは、消費者だけでなく、企業側にとっても便利なツールである。上のスクリーンショットは、Marriott Rewardsというホテルの会員カードの事例である。Marriott Rewardsの場合は、会員カードを選択するとバーコードではなく、会員番号を表示 (左側の画面) し、ホテルにチェックインする際に利用する。同時に、Marriott Rewardsは、現在展開中のキャンペーンをCardStarに表示する。その中で興味あるキャンペーンにタッチすると、その詳細情報が表示 (右側の画面) される。上述のBevMoも、特売情報をCardStarに配信する計画で、消費者はこの情報を見て店舗に足を運ぶことになる。スマートフォンにより、消費者と小売店舗の距離が短くなってきた。

モバイル・クーポン

Friday, January 28th, 2011

アメリカにおける先のクリスマス商戦では、小売店の売り上げが予想を大きく上回り、久しぶりの明るいニュースとなった。この背景には、アメリカの景気が回復基調にあるためだが、スマートフォンが消費者を店舗に誘導したことも指摘されている。いまスマートフォンを使って、小売店舗の売り上げを伸ばす試みが広がっている。

Coupon Sherpaというアプリケーション

ブラック・フライデーからクリスマスにかけて、スマートフォン向けのアプリケーションが、大量に登場した。これらのアプリケーションは、消費者が買い物をする際に、値引きを受けたり、価格を比較するために使われた。その中でCoupon Sherpa (キューポン・シャーパ) が人気を集めた。これは、iPhoneでクーポンを受信し、買い物の際に値引きを受けることのできるアプリケーションである。

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Coupon Sherpaは、小売店舗が発行しているクーポンを、一挙に集約するiPhoneアプリケーションである。iPhoneでCoupon Sherpaを起動すると、利用者周辺の小売店舗が発行している、クーポンの一覧表を表示する。利用者は目的の店舗を選択すると、クーポンの内容と店舗の位置が表示される。上のスクリーンショット (出展はいずれもVentureClef) は、Coupon Sherpaを使っているところで、左側画面に、Borders (書籍量販店) が発行しているクーポンの内容が表示されている。この画面で、View Couponボタンにタッチすると、右側の画面の通り、クーポンが表示される。Bordersで買い物をして会計する際に、値引きを受けることができる。

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実際にここに示されているBorders (上の写真) に出向いて買い物をしてみた。買い物を終えて、会計の際に、上述のクーポンを提示すると、額面どおり33%の値引きを受けることができた。Bordersの店員は、iPhone上に表示されたクーポンを一瞥して、いとも簡単に値引きをしてくれた。

トレンド

スーパーマーケットにおいて、買い物客が新聞折込広告を切り抜いたクーポンを持参して、会計の際に値引きを受けている光景を、しばしば目にする。しかし、若い世代がクーポンを活用しているシーンは稀である。Coupon Sherpaは、独自のクーポンを発行している訳ではなく、折り込み広告のクーポンをデジタル化して、iPhoneに配信しているだけである。このため、クーポンを切り抜いて、小売店に持参する手間が省け、特に若い世代の消費者が、モバイル・クーポンを利用するようになってきた。モバイル・クーポンは、若い世代の消費者を、小売店舗に呼び戻しつつある。

パソコン時代の終焉

Thursday, January 6th, 2011

Microsoftは、ラスベガスで開催されている、Consumer Electronics Show (CES) において、WindowsをARM (アーム) プロセッサーに対応させることを発表した。MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer (スティーブ・バルマー) は、基調講演の中で、ゲーム機 (Xbox)、スマートフォン (Windows Phone)、Windows新機能を紹介した。そして講演の一番最後に、ARMプロセッサーでWindowsのデモを行なった。講演内容は、MicrosoftのCES特集サイト (http://www.microsoft.com/presspass/events/ces/liveevent.aspx) で見ることができる。

ARMプロセッサー対応について

Microsoftは、基調講演に先立ち、次期WindowsはSystem on a Chip (SoC) アーキテクチャをサポートすることを表明した。SoCとは、コンピュータで必要な全てのコンポーネントを一つのチップに実装する方式である。Windowsが対応するSoCは、Intel、AMD、ARMで開発される。ARMプロセッサーでは、NVIDIA、Qualcomm、Texas Instrumentsの三社から製品が出荷される。Microsoftは、WindowsでSoCアーキテクチャーをサポートする目的は、プロセッサーの消費電力を抑えるためとしている。更に、WindowsとSoCアーキテクチャーの組み合わせで、タブレットから上位の領域で、新製品を開発するとしている。

基調講演でのデモ概要

前述の通り、基調講演では、WindowsがSoCプロセッサーで稼動していることをデモしながら、新技術の紹介を行なった。デモでは、Intel、Qualcomm、Texas Instruments、及びNvidiaのSoCが搭載されたシステムで、Windowsやそのアプリケーションが稼動することを実演した。Intelのデモでは、SoC版のAtomプロセッサーで構成されたシステムで、Windowsなどが稼動している様子をデモした。下の写真 (出展はいずれもMicrosoft) がそのシステムで、SoC版のAtomを搭載したパソコンで、次期Windowsが稼動している様子である。但し、スクリーン上に表示されているWindows画面は現行の製品を使っており、コアの部分が次期製品のコードである。SoC版Atomチップの大きさは、小指の爪ほどで、ここにシステムで必要な機能が全て実装されている。このチップが、マザーボード (切符ほどの大きさ) に装着され、パソコンを構成する。

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次に、Qualcommのデモでは、ARMベースのプロセッサーであるSnapdragon (スナップドラゴン) を搭載したシステムでWindowsを稼動させた。下の写真がその様子を示している。デモでは、コマンドライン、写真ライブラリー、デスクトップ背景画面操作などが行なわれた。このデモは、ARMプロセッサー上で、Windowsが稼動した最初のケースで、技術的に、また、歴史的に大きなマイルストーンである。このSnapdragonは、様々な携帯端末で使われており、GoogleのスマートフォンであるNexus One (製造はHTC) でも採用されている。更に、Texas Instrumentsからは、同社のARMアーキテクチャーのOMAPを搭載したシステムが使われた。また、Nvidiaでは、同じくARMベースのプロセッサーであるTegra (テグラ) を搭載したシステムでデモが行なわれた。

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ARMシステムの概要

ARMは、よく知られているように、携帯端末向けの省エネ型のプロセッサーである。ARMは、32ビットのRISC方式アーキテクチャーで、ARM Holdingsにより開発されている。ARMの特徴は、プロセッサーの消費電力が小さいことで、バッテリーで稼動する携帯端末で採用されている。ARMの製品ラインは、Classic、Embedded、Applicationから構成されている。ClassicはARMのオリジナルのプロセッサーで、15年以上に亘り、携帯電話、セットトップボックス、デジタル・テレビなどで使われている。Embeddedは組み込み型のプロセッサーで、家電制御、自動車制御、汎用制御などに使われており、最近ではスマート・メーターで採用されている。Application (Cortexシリーズ) はハイエンドの製品で、Linux、Android、Windows CE、Symbianなどが稼動し、スマートフォン、タブレット、ネットブックなどで使われている。ARMは半導体のIP (Intellectual Property) をパートナー企業にライセンスする方式で、自社でチップを製造している訳ではない。ライセンスを受けた企業が、チップの製造や関連ソフトウェアの開発を行なうというビジネス・モデルである。

トレンド

Apple iPhoneやiPadが登場してから、スマートフォンとタブレット市場が、急成長している。CESにおいても、Android搭載のスマートフォンやタブレット新製品が、多くの企業から投入されている。これにより、パソコン市場規模は、確実に緊縮している。多くの利用者は、パソコンでWindowsを使う代わりに、タブレットやスマートフォンでメールを読み、ウェブにアクセスしている。この市場に出遅れているMicrosoftは、ARMプロセッサーでWindowsを稼動させることで、タブレットやスマートフォン市場への進出を目指している。基調講演のデモが示唆しているように、ラップトップ製品は、Intelプロセッサーが、ARMプロセッサーに置き換わることとなる。Microsoft社内では、Windows XPをARMプロセッサーに移植するプロジェクトは存在したが、製品ラインとしてWindowsをARMプロセッサーで稼動させてのは、今回が初となる。長年に亘り築いてきたWindowsとx86の独占関係が崩れ、これからは、ARMと共存することなる。Intelは、前述のSoC版Atomなど、技術開発を行なっているが、ARMとの差は大きく開いている。アナリストの分析によると、2013年までに、ARMがx86のシェアを抜くとの予想も示されている。かつて汎用機がパソコンに置き換わったように、いま、パソコンが携帯端末にダウンサイジングを始めている。この現象を端的に捉えているのが、上の写真で、SnapdragonでWindowsが稼動しているシーンである。x86プロセッサーを搭載したパソコンの時代は、終わりに向かって進み始めた。