Archive for April, 2011

クリーン・エネルギー最新動向 (Green:Net 2011より)

Wednesday, April 27th, 2011

福島原子力発電所の事故は、アメリカのエネルギー政策に、大きな影を落としている。先週、サンフランシスコにおいて、Green:Net 2011という、情報通信技術とクリーン・エネルギーのカンファレンスが開催された。この中で、福島原子力発電所事故の影響や、クリーン・エネルギー最新技術について、幅広く議論された。

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原子力発電所の建設中止

以前にもレポートした通り、オバマ大統領は、事故後も、クリーン・エネルギー政策で、原子力発電の推進を維持している。オバマ大統領は、1月25日に行なった、State of Union Address  (一般教書演説) の中で、石油への依存を断ち切り、2035年までにクリーン・エネルギーでの発電量を、40%から80%に引き上げると表明している。福島原子力発電所の事故を受けて、オバマ大統領は、3月30日に、アメリカはこの政策を維持すると述べ、引き続き、原子力発電を推進していくことを表明している。

一方で、民間企業からは、原子力発電所建設中止の動きが出ている。Princeton (ニュージャージー州) に拠点を置く、エネルギー開発企業であるNRG Energyは、4月19日に、原子力発電所建設のプロジェクトを中止すると発表した。これはSouth Texas Nuclear Development Projectと呼ばれ、Matagorda County (テキサス州) に、1,350MWの原子力発電所を二基建設するものである。2016年の運転開始を目指していたが、福島原子力発電所の事故を受けて、プロジェクトの中止を決定し、3億3千万ドルの償却を行なうことを発表した。このプロジェクトには、東芝も参加しており、日本のプラント事業にも影響がでてきた。

NRG Energyの見解

カンファレンスでは、NRG EnergyのCEO兼社長であるDavid Crane (デービッド・クレイン、左の写真中央の人物、出展:GigaOM) がパネルとして出席しており、この決定を行なった背景を聞くことができた。NRG Energyは、クリーン・エネルギー関連技術を開発している民間企業で、Craneは原子力発電を、クリーン・エネルギーの機軸技術として位置づけている。Craneによると、「原子力がクリーン・エネルギーの本命で、五年間にわたり、3億3千万ドルを費やして、プロジェクトを進めてきた」と説明した。

Craneは、「福島原子力発電所事故の影響は甚大で、気候変動との戦いで、大きな敗北を期した」と述べ、更に、「39ヶ月にわたり、日本企業と開発してきた、モジュラー型の原子炉が実用化されない」ことに、失望感を表した。アメリカでは、原子力発電所の増設が中断しているなか、この穴を埋めるために、市場は天然ガスによる発電に進みつつある。Craneは、「天然ガスによる発電は、石炭や石油による発電に比べクリーンではあるが、クリーン・エネルギーの割合を2035年までに80%にするのは不可能である」と述べ、新技術の開発を急ぐべきであるとの見解を示した。オバマ大統領は、原子力発電を推進しているものの、市場では原子力発電所の建設は止まり、クリーン・エネルギー新技術の開発に急転回している。

クリーン・エネルギー開発最前線

カンファレンスにおいては、事故の問題とは別に、最新のクリーン・エネルギー技術が紹介された。その中でCiscoは、スマートシティの取り組みを紹介した。Ciscoは、Charlotte (ノースカロライナ州) において、市当局と電力会社 (Duke Energy) と共同で、Envision: Charlotte (エンビジョン・シャーロット) というプロジェクトを進行している。このプロジェクトは、2015年までに、市のエネルギー消費量を20%削減することを目標にしており、ビルのエネルギー管理を中心に省エネ・ソリューションを展開している。ビルで使用する電力を、電力会社の電力供給量に沿って、調整している。例えば、昼間の気温が高くなると予想されると、企業は従業員に対して、在宅勤務を行なうか、または、共有オフィスで仕事をすることを指示する。このように、電力会社からの電力供給量に応じて、電力消費量を調整する方式を、Demand Responseと呼び、企業のビルや施設管理で、採用が始まっている。

また、スマートグリッドが全米の主要都市で、導入されている。工事が完了し、消費者がスマートグリッドの機能を利用し始め、その評価が明らかになってきた。評価は分かれており、最初にスマートグリッドを導入したBoulder (コロラド州) は、大きな問題に直面している。世界に先駆けて導入した最新技術であるが、導入費用が予想外に膨れ、それに対して省エネ効果が見えにくいとの反応で、プロジェクト存続の危機に直面している。ここ北カリフォルニアでは、スマートメーターの導入が八割程度完了し、順調に設置作業が進んでいるが、反対運動が顕著になってきた。スマートメーターを導入してから、健康を害したという人が増え、電力会社 (Pacific Gas and Electric) は、その対応に追われている。省エネの切り札として導入されたスマートグリッドであるが、問題点も明らかになってきた。一方、これらの先行プロジェクトを学習して、消費者にアピールするスマートグリッドの設置も始まっている。Austin (テキサス州) では、Pecan Street Project (下の写真、出展:Pecan Street Project, Inc.) という名称で、スマートグリッドの実効性を計測する実証実験が展開中である。このプロジェクトは、エネルギー省から補助金を受け、Oracle、GridPoint、 Cisco、Dell、IBMなどのIT企業が参加している。アメリカ市場ではスマートグリッドについて、失敗と成功を繰り返しながら、最適化に向かって進んでいる。

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トレンド

今年の夏には、計画停電が予定されており、日本経済にとって大きな足かせになっている。また、東日本復興のためには、エネルギー新技術が求められている。この報告書から、アメリカで展開されている、クリーン・エネルギーについて、情報通信技術の観点からレポートする。これらの技術が、計画停電回避の解となり、また、中長期的には、東日本復興のヒントとなることを目指す。日本再興に向けて、IT企業として貢献できることを、アメリカ市場から報告する。

ソーシャル・ネットワーク安全対策 (DEMO Spring 2011より)

Wednesday, April 6th, 2011

LinkedInやFacebookなど、著名なソーシャル・ネットワークを狙った攻撃が多発している。架空の人物が、LinkedInやFacebookで友人となり、社員を中心に、個人情報を盗用する犯罪である。

企業内ソーシャル・ネットワークの危険性

DEMO Spring 2011でのインタビュー・セッションにおいて、CiscoのSecurity Technology Business Unitの副社長であるTom Gillis (トム・ギリス) は、「How Social Media is Affecting Security in the Enterprise」 (ソーシャル・メディアが如何に企業セキュリティーを脅かしているか) というタイトルで、企業内におけるLinkedInとFacebookの問題を解説した。Gillisは、スパム・フィルタリング技術を開発したIron Port Systemsの創設メンバーであり、同社は、2007年にCiscoに買収されている。

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Gillisは、実際にCisco社内で発生した、LinkedInとFacebookへの攻撃の事例について紹介した。まず、LinkedInのケースでは、Cisco社員は、John xxという人物からメール (上のグラフィックス、出展:Cisco) を受信し、「Ciscoに入社したばかりで、知り合いの輪を広げるため、知人としてコネクトして欲しい」、との依頼を受けた。このメールを受信した社員は、確認のため、LinkedInでJohn xxの頁 (下のグラフィックス、出展:Cisco) を開くと、顔写真入で、Cisco社員として登録してあり、詳細な情報が表示された。しかしこれは実在の人物ではなかった。この人物の目的は、Cisco社員の友人となることで、社員の個人情報を入手することであった。そして、経理担当などの特定社員を狙って、マルウェアを埋め込み、企業の機密情報を盗むことにあった。

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Koobface問題

Cisco社内では、Facebookを使った攻撃も発生した。これは、Koobface (クーブフェイス、逆さまの綴り) という、ソーシャル・ネットワークを対象とする、悪名高いワームである。利用者の友人からメッセージを受け取り、そのリンクをクリックすると別のサイトに導かれ、マルウェアをダウンロードする仕組みである。

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犯罪者はCisco社内で、社員の友人となり、社員のWallに、上のようなメッセージ (出展:websense) を送信した。「ビデオに映っているよ」というメッセージで、社員が驚いて、そのリンクをクリックすると、下の画面 (出展:websense) が登場し、そこには、「ビデオを見るためにはFlash Playerが必要」と表示され、Downloadボタンをクリックすると、マルウェアがインストールされる仕組みである。感染したパソコンは、利用者の友人情報を収集し、上述のメッセージを友人に向かって発信することになる。

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このように、ソーシャル・メディアを対象にした攻撃が広がっており、Ciscoなどのネットワーク企業が、セキュリティー製品を提供している。

Defencioという防衛策

DEMO Spring 2011においては、websense (ウェブセンス) という、サンディエゴに拠点を置く、セキュリティー企業から、Facebook向けの防衛策が紹介された。websenseのブースにおいて、CTOであるDan Hubbard (ダン・ハバード) が、デモを交えて機能概要を解説してくれた。これは、Defensio (ディフェンシオ、下のスクリーンショット、出展:VentureClef) という、Facebook上のアプリケーションで、包括的なセキュリティー機能を提供している。Defensioは、スパムや不適切な内容・言葉を検出して、利用者に通知する仕組みである。

Defensioが対象としているページは、Wall、News Feed、写真、ビデオである。Defensioは、悪意あるサイトへのURLを含んでいるコンテンツを、ブロックする機能を提供している。悪意あるサイトとは、前述のKoobfaceのように、セキュリティーに問題があるサイトや、アダルト・サイトなどである。また、Profanity Filterとして、問題がある言葉を含んだページをフィルタリングする機能も提供している。

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上のスクリーンショットは、Defencioの初期設定をしている様子である。設定が終わると、Defensioは問題があるコンテンツを検出すると、利用者にメールで通知し、上のページのCommentsタグに、問題となっている内容を表示する。利用者は、Commentsタグで、検出されたコンテンツを消去するなど、対応することができる。

トレンド

Defensioは、有償と無償のサービスを提供しており、個人が無償で利用するだけでなく、企業が有償で包括的な機能を利用している。前述のKoobface対応に加え、FacebookにPageを開設して、商品広告を行なっている企業などが、このセキュリティー機能を利用している。websenseは、2009年に、このDefensioを買収して、製品ラインに統合している。Defensioは、当初、ブログへのプラグインとして、記事への不適切なコメントをフィルタリングしていた。現在では、Facebookを中心に、セキュリティー機能を提供している。企業内でFacebookの使用を禁止しているところも少なくないが、多くの企業はコラボレーション・ツールとして利用している。Koobfaceのような攻撃から社内ネットワークを守るツールが登場している。