Archive for June, 2011

インテリジェントな自動車

Thursday, June 30th, 2011

Googleは、このところ、急速に事業分野を広げており、以前レポートした通り、クレジットカードやクリーン・エネルギー発電事業に参入している。Googleの新事業のもう一つの柱は自動車で、Fordと共同で、インテリジェントな自動車の開発を進めている。また、スタンフォード大学と共同で、自動運転技術の開発にチャレンジしている。

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クラウドに接続された自動車

Fordは、サンフランシスコで開催された、開発者向けのカンファレンスであるGoogle I/O 2011で、自動車をクラウドに接続する技術を公開した。具体的には、Google Prediction APIという、クラウドを利用する仕組みを、自動車に適用する研究成果を発表した。Google Prediction APIとは、クラウド機能を利用するためのインターフェイスで、利用者はこのAPIを利用して、知的なアプリケーションを開発することができる。Google Prediction APIは、機械学習により、過去のデータを学び、ルールを把握する機能を提供する。この機能を使うことで、スパム・フィルターを作成したり、文章から要点を抽出したり、また、利用者の嗜好を把握して音楽の推奨を行なうアプリケーションを、簡単に開発できるようになった。Fordは、このGoogle Prediction APIに、自動車からアクセスして、運転者の挙動を学習して、最適な運転ルートを提案するシステムを開発している。この研究はFord Researchで進行中で、同研究所のRyan McGee (ライアン・マギー) がその概要を紹介した。実際の応用分野としては、自動車をクラウドに接続して、リアルタイムで渋滞情報や天気情報などを入手し、個人に特化した運転情報を提供することである。具体的には、プラグイン・ハイブリッド車をクラウドに接続し、ガソリン走行と電気走行の最適化を行なう計画である。この機能が搭載される車種は、Ford C-Max Energi (シーマックス・エナジー、プラグイン・ハイブリッド車、上の写真、出展:Ford Motor Co.) で、出荷は2011年秋の予定である。

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プラグイン・ハイブリッド車への適用事例

McGeeは、利用者がこの機能を使うシーンとして、火曜日の午後5時に、会社で仕事を終えて、自動車に乗るところを紹介した。自動車に乗ると、自動車が音声で、「これから家に帰るのですか?」と問いかける。これに対して利用者は、「そうです」と、声で返答すると、自動車は、「帰り道にEV Zoneがあるが、そのためにバッテリーを確保しておきますか?」と問いかける。利用者は、「それで行こう」と回答する。このシーンに登場するEV Zone (上の地図の緑色の部分、出展:Ford Research) とは、二酸化炭素排出量が少ない電気自動車だけが走れる区域で、今後、アメリカにおいて導入が計画されている。上述のシーンでは、自動車は、利用者の行動を把握しており、平日の午後5時に搭乗すると、高い確率で、自宅に向かうと判断した。自動車は目的地を確認したあと、会社から自宅までの、最適なルートを計算し、その途中に、EV Zoneがあることを把握する。EV Zoneでは、ハイブリッド車は電気走行する必要があるため、バッテリーに充分電気を蓄えておく必要があり、通常の道路ではガソリン走行を行なうという判断をした。この意思決定のプロセスにおいて、Google Prediction APIが使われている。このように、これからは自動車と利用者が、音声でのやり取りを通して、自動車が走行ルートを決定し、最適な運転方式を設定することになる。

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自動走行技術

Googleは、Fordのプロジェクトとは別に、自動車の自動走行技術を開発している。Googleは、スタンフォード大学のSebastian Thrun (セバスチャン・スラン) 教授と共同で、自動走行技術の開発を進めている。San Mateo (カリフォルニア州) で開催されたMaker Faire (メーカー・フェアー、手作り機会の展示会) において、Thrun教授がこのプロジェクトについて、ビデオを交えて紹介した。自動車は、Prius (上の写真、出展:Google) をベースとしており、屋根の上にLIDAR (レーザー光による距離測定センサー) を搭載しており、距離を測定し、車両の周りの3Dマップを作成する。また、車両の前と後ろにレーダーを搭載し、前後の物体との距離を測定し、位置を把握する。フロントグラスにはビデオ・カメラが設置され、信号や移動物 (自転車や歩行者など) を検知する。屋根にはGPSが搭載されていて、位置情報を把握し、左後部車輪にPosition Estimatorが搭載され、短距離の移動を測定し、正確な位置を特定する。

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自動車がこれらのセンサーを使って認識する道路の様子は、上の写真 (出展:VentureClef) の通りである。自動車は、交差点の赤信号で止まり、信号が青になって左折をするが、横断歩道で歩行者を認識し、その手前で止まっている様子である。Thrun教授によると、この技術は実用化までには時間がかかるが、交通事故を無くし、道路を有効利用できるとしている。

トレンド

このところ、Googleの本業である検索エンジンでは、画期的な技術が登場していないが、研究プロジェクトは活発に動いている。自動車においては、省エネがキーワードで、環境に優しい技術開発が進んでいる。Googleは変化を続けており、検索企業から、次の機軸事業を模索して苦悶している。同時に、新たにCEOに就任したLarry Pageの言葉を借りれば、Googleは、株主からの圧力に抗して、技術革新の灯をともし続けている。

Linked Data (SemTech 11より)

Thursday, June 23rd, 2011

セマンティック技術最大のカンファレンスである、Semantic Technology Conference 2011では、Linked Dataに関する事例が、数多く登場した。Linked Dataとは、前回のレポートで触れたFreebaseなどを指し、インターネット上では、Linked Dataのサイト数が急増している。このレポートでは、Juan Sequeda (ワン・セケダ、University of Texas at Austinの研究者) の「Creating, Publishing and Consuming Linked Data」と題するセッションを参考にした。

Linked Dataの概要

Linked Dataとは、ざっくり表現すると、データベース化されたウェブサイトである。マイクロソフト・エクセルで作られたテーブルのように、Linked Dataも、ウェブサイトが表形式で定義される。人物や場所やモノが、セマンティック技術を使って定義されて、ウェブページに記載される。

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上のスクリーンショット (出展:New York Times) は、New York Timesが開発しているLinked Dataの事例である。このサイトは、Linked Open Dataという名称で、一般に公開されている。New York Timesは、過去150年間の記事について、アーカイブを作成し、インデクシングを行なってきた。このプロセスで、新聞記事のタイトルで使用された用語 (News Vocabularies) の編集も行なわれた。New York Timesは、2009年から、これらの用語をLinked Open Dataとして、公開するプロジェクトを進めてきた。現在公開されている用語は、人名、組織名、地名などで、総数は一万件を超えている。上のスクリーンショットは、Hillary Clinton (ヒラリー・クリントン) の事例で、同氏に関する情報が、テーブル形式で記載されている。Linked Open Dataは、この様に、人間が読むことができるだけでなく、RDFファイルで公開されており、ソフトウェアから読める形式となっている。RDFとは、Resource Description Frameworkの略で、データ定義の方式である。RDFでは、Triple Data Model (主語、述語、目的語) という方式で、データを記述していく。このように、Linked Open Dataは、アプリケーションからデータにアクセスすることを主眼に公開されている。

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Linked Open Dataの目的

New York Timesは、過去の記事に対して、検索機能を提供しており、「Hillary Clinton」をキーワードに検索を行なうと、同氏が登場する記事の一覧が表示される。Linked Open Dataでは、単純なキーワード検索ではなく、ウェブサイトから意味を抽出することを目的としている。上のスクリーンショット (出展:New York Times) がその事例を示している。これはNew York Timesが提供しているAlumni In The News というアプリケーションで、大学の同窓生が、New York Timesに登場している記事を検索するツールである。検索ボックスに、大学名を入力すると、検索結果には、New York Timesに登場している同窓生の氏名が表示される。因みに検索キーワードに、「Santa Clara University」と入力すると、検索結果には、国防省長官に就任する「Leon Panetta」などの名前と記事タイトルが表示される。記事タイトルをクリックすると、記事が表示される。また、名前の下には、Wikipedia、DBpadia、Freebaseへのリンクが表示される。これらのリンクを辿ると、人物についての詳細情報を閲覧することができる。このように、Linked Open Dataは、アプリケーションから、名前、組織名、地名などを、有機的に検索できることを目標としている。

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GoogleLinked Dataへの取り組み

前回レポートしたMetaweb社は、FreebaseというオープンなLinked Dataを開発し、2007年から一般に公開している。Metawebは、2010年7月に、Googleにより買収された。Googleはこのように、Linked Dataに着目し、システム開発を進めている。Freebaseは、コミュニティにより開発されたナレッジベースで、Wikipediaのセマンティック版と位置づけられ、多くのコンテンツをWikipediaから引用している。

Googleは、Freebaseのコンテンツを、Google News Timelineで利用している。Google News Timelineとは、Google Labsの研究プロジェクトで、ニュースや出来事などを、時系列に表示する検索エンジンである。上のスクリーンショット (出展:Google) が、Google News Timelineで、記事が年代ごとに表示されている。この画面は、「Jack Nicholson」というキーワードで検索した結果で、同氏が出演した映画のタイトルと解説が、時系列に表示されている。これらのデータソースはFreebaseで、リンクをクリックすると元の記事にジャンプする。Googleは、様々な方法で、検索結果の質の向上を目指しているが、Google News Timelineは、この取り組みの一つである。

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Googleは、既に、検索エンジンにセマンティック技術を応用している。これは、Google Squaredと呼ばれる技術で、セマンティック・ウェブから情報を抽出し、検索結果をテーブル形式で表示するものである。上のスクリーンショット (出展:Google) がその事例で、検索キーワードに「barack obama date of birth」と入力すると、上の通り、「オバマ大統領の誕生日は、1961年8月4日である」と、ストレートに回答する。そして、参照したデータソースの一覧が表示される。

トレンド

Linked Dataは、ここ最近、多くのサイトで開発が進んでいる。ウェブ技術が登場した頃には、HTMLを使って、多くのウェブサイトが開発されたように、今では、RDFを使って、Linked Dataを含むセマンティック・ウェブの開発が進んでいる。今後、如何に魅力的なアプリケーションが登場するかが、セマンティック・ウェブ進展の鍵となる。

ツイッター広告とデータマイニング (SemTech 11より)

Thursday, June 16th, 2011

セマンティック技術最大のカンファレンスである、Semantic Technology Conference 2011が、先週、サンフランシスコで開催された。会場は、ユニオン・スクエアー傍のHilton San Francisco Union Square (下の写真、出展:VentureClef) で、研究成果の発表に加え、企業での応用事例などが紹介された。

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ツイッターとセマンティック技術

ソーシャル・メディアが爆発的に広がる中で、セマンティック技術を使って、ウェブから有益な情報を抽出する事例が増え始めた。カンファレンスでは、「How Hollywood Learned to Love the Semantic Web (なぜハリウッドはセマンティック・ウェブを好きになったか)」と題して、映画スターとセマンティック技術の関係が紹介された。Beverly Hills (カリフォルニア州) に拠点を置く、Adly (アドリー) というベンチャー企業から、Chris Testa (クリス・テスタ) が、ツイッターを使ったブランド広告と、その背後のシステムを紹介した。学術的な色彩が濃いカンファレンスであるが、このセッションは、多くの広告代理店からの出席があり、華やいだ雰囲気で、議論が進んだ。

Adlyという企業は、ツイッターを中心に、ソーシャル・メディアを使って、商品をプロモーションするサービスを展開している。ツイッターでの広告方式が模索される中で、Adlyは、ハリウッドのセレブのツイッターを使って、ブランド・プロモーションを行なう方式を生み出した。ブランド・イメージを、セレブとマッチングさせ、セレブのツイッターなどで、ブランドに関するメッセージを発信するというものである。Adlyは、セレブが発信するツイートの中に、広告メッセージを含めて発信する。ツイッターのフォロワーは、メッセージに添えられている、リンクを辿り、商品の購入を行なう仕組みである。

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Charlie Sheenの事例

Adlyが、一躍有名になったのは、セレブにCharlie Sheen (チャーリー・シーン) を採用してからである。Sheenは、CBSテレビのコメディー番組「Two and a Half Men」で、絶大な人気を得ていた。しかし、Sheenの発言や行動の問題から、先の3月に、この番組を降板となった。いわく付きのセレブであるが、人気は衰えていない。Sheenは、この時期に、Adlyにアプローチして、ツイッターを始めた。上のスクリーンショットは、Sheenの2011年3月7日のツイート (出展:Twitter) である。メッセージは、「I’m looking to hire a #winning INTERN with #TigerBlood.」で、「#winning (成功を目指し) 、#TigerBlood (熱い血の) インターンを求む」、というものである。このメッセージに挿入されているリンク (http://bit.ly/hykQQF) を クリックすれば、Internships.comという、企業インターン募集サイトにジャンプする。Sheenが、ツイートで、この広告を行い、多くのフォロワーが、このサイトでインターン応募に応募して、このキャンペーンは大成功を収めた。

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データマイニング

Adlyはこのように、企業ブランドとセレブを組み合わせて、プロモーションを行なう仕組みを生み出し、その効果が認められてきた。Adlyに登録しているセレブは、Charlie Sheenのほかに、Kim Kardasian (キム・カーダシアン、テレビ女優) など千人以上に上る。また、Adlyと契約している企業は、NBC、Sony、Microsoft、Old Navyなど150社を超える。Testaによると、セレブの登録数が急増しており、セレブのプロフィール情報を如何に収集し、解析するかが大きな課題となってきた。このため、Adlyは、セマンティック技術を使って、ウェブサイトからセレブ情報を、データマイニングする方式を開発した。

また、Testaによると、ウェブ上には豊富なデータが揃っており、特に、セレブに関する情報は充実している。Adlyが利用しているウェブサイトは、Linked Dataと総称される、セマンティック化されたウェブである。具体的には、Freebaseなど、コミュニティーにより構築された、セマンティック・ウェブである。上のスクリーンショット (出展:Metaweb) は、Freebaseにおいて、Kim Kardashianを検索した様子である。Freebaseは、Metaweb社により開発されたセマンティック・ウェブで、2010年7月に、Googleが買収している。Freebaseは、セマンティック化されたWikipediaと表現でき、記事にアクセスするための様々なAPIやツールを公開している。Adlyは、これらAPIやツールを利用して、データマイニングを行なっている。Adlyは、マイニングしたセレブ情報を、ビジネス・インテリジェンスの手法で解析し、セレブのプロフィールを構築する。このプロフィールにマッチするブランドを選び、ツイッターでメッセージを発信する手順となる。

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トレンド

セレブがツイッターを使って、製品紹介を行なうことに対して、読者から反対の声があるものの、多くの読者は好意的に受け止めている。上のスクリーンショット (出展:Twitter) はMandy Moore (シンガー・ソング・ライター) が、ツイートで、AOLの新しいロゴについて述べている様子である。ちょうどテレビ広告で、セレブが、製品紹介を行なうのと同じ方式である。これらのメッセージには、(Ad) と表記され、広告メッセージであることを明示している。ツイッターが広告モデルを模索している中で、Adlyは、セマンティック技術を応用し、ひとつの筋道を示している。

グーグルのエネルギー事業戦略

Thursday, June 9th, 2011

Googleは、クリーン・エネルギー分野への投資を、積極的に展開している。また、Googleは、Google Energyという会社を設立して、電力の卸売り事業に参入した。Googleは、クリーン・エネルギー企業としての側面が、鮮明になってきた。

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RE < C

Googleは、早くから、クリーン・エネルギー分野で、活動を行なってきた。2007年11月には、同社の慈善団体であるGoogle.orgを通して、RE < Cというプロジェクトを開始した。RE < Cとは、RE (Renewable Energy、再生可能エネルギー) の発電コストを、C (Coal、石炭) による火力発電コストより下げるための技術開発である。これを目指して、Googleは、クリーン・エネルギーを開発しているベンチャー企業に投資を行なってきた。Google.orgは他にも、Google PowerMeterという、スマートメーターの可視化プロジェクトを展開している。

ウインド・ファームへの投資

Googleは、2010年5月に、NextEra Energy (ネクステラ・エナジー) が建設しているウィンド・ファーム (風力発電所) に、$38.8Mの出資を行なうことを発表した。このウィンド・ファームは、ノースダコタ州 (世界有数の風資源地帯) に位置し、Ashtabula (上の写真、出展はいずれもGoogle)  とWilton Wind 2と呼ばれ、合計で169.5MWの発電容量を持っている。このプロジェクトが、Googleがクリーン・エネルギー発電所に投資する、最初のケースとなった。同年7月には、NextEra Energyが運転しているウィンド・ファームから、電力を購買する契約を締結した。このウィンド・ファームはStory County II (アイオワ州) と呼ばれ、Googleは114MWの電力を20年間にわたり購入するという内容である。これに先立ち、Googleは、電力売買を行なうための子会社として、Google Energyを設立している。電力購入はGoogle Energyを通して行なわれ、購買した電力は、当地の電力市場で再販される。

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更に、Googleは、2010年10月に、Atlantic Wind Connection (AWC、上のグラフィックス) というプロジェクトに出資することを発表している。このプロジェクトは、ニュージャージ州からバージニア州の沖合いに、ウィンド・タービンを建設して、6,000MWの発電を行なうものである。発電した電力を、ニューヨークなどの大都市に供給する計画である。この電力ラインはクリーン・エネルギーのスーパーハイウェイと呼ばれている。

Googleは、2011年4月には、世界最大規模のウィンド・ファームであるShepherds Flat Wind Farmに、$100Mの出資を行なったことを発表した。この発電所は、Arlington (オレゴン州) に建設されており、2012年の完成を目指している。発電容量は845MWで、発電された電力はSouthern California Edisonに販売される。総工費は$2Bで、Googleの他に、Sumitomo Corp. of AmericaやTyr Energy (伊藤忠商事の子会社) が出資している。このプロジェクトでは、GE社製のGE 2.5xlという、ウィンド・タービンが使われる。 GE 2.5xlは、2.5MWの発電容量を持つウィンド・タービンで、アメリカで導入される最初の事例となる。

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Googleは、同じく2011年4月、前述のNextEra Energyが建設中のウインド・ファームであるMinco II (オクラホマ州、上のグラフィックスの白色の部分) から、100.8MWの電力を20年間にわたり購買すると発表した。電力購買は、上述のGoogle Energy経由で行なわれる。この施設は、2011年末の運転開始を目指している。Googleは、同じく2011年4月に、BrightSource EnergyがMojave Desert (カリフォルニア州) に建設しているIvanpah Solar Electric Generating System (イバンパ太陽光発電システム、下の写真) に$168M投資することを発表している。太陽光発電では、Heliostatという反射板で光をタワー上部のパイプに集め、中の水を加熱して発電を行なう仕組みである。

クリーン・エネルギー戦略

Googleは、このように、クリーン・エネルギー分野への投資を、積極的に展開している。Googleがこの分野に投資する構造は、Google.orgは慈善団体として、初期ステージの技術開発に投資し、産業の育成に貢献している。Googleのベンチャー・キャピタルであるGoogle Venturesは、エネルギー企業のほかに、IT企業など、有望ベンチャーに投資をしている。一方で、Google本体は、会社に投資をするのではなく、上述のように、プロジェクトに出資を行なっている。

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Googleがプロジェクトに出資する目的は、プロジェクトからの配当を受け取ることが第一義であるが、大規模プロジェクトで、雛形となるモデルに出資して、クリーン・エネルギーの先端技術の開発を目指している。また、Googleは、Google Energyを通して、電力の卸売事業を開始した。電力取引に加え、Renewable Energy Credits (カーボン・クレジット) の売買で利益を上げることを目指している。一方で、現行法では、Googleが購入した電力を、自社で使用することは禁止されているため、Googleが運用するデータセンターへ適用は不透明である。Googleは、事業の多角化を目指しているが、クリーン・エネルギー分野においては、その速度を加速している。ここカリフォルニアでは、二年後には、Googleから電力を購入することとなり、アメリカの電力市場が大きく変わろうとしている。

Google Wallet

Thursday, June 2nd, 2011

Googleは、検索エンジンの会社であるが、ここ最近は、風力や太陽熱電所の建設に大規模な投資を行なったり、Fordと共同でスマートカーの開発を行なったり、事業を急速に多角化している。今月は、数回に分けて、Googleの最新の事業戦略をレポートする。初回は、Googleの金融サービス事業について報告する。

Google Walletとは

Googleは、先週、ニューヨーク・オフィスで記者会見を行い、Google Walletを発表した。Google Walletでは、Androidスマートフォンをクレジットカードとして利用することができる。

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Google Walletの機能を一言で表現すると、おサイフケータイ機能に、クーポン機能を連動させたものとなる。ここで言うおサイフケータイとは、クレジットカード機能と電子マネー機能である。クレジットカード機能では、Citiが発行するMasterCard (上の写真、出展はいずれもGoogle Inc.) を搭載している。また、電子マネーは、Google Prepaid Card (下の写真左側) という名称で、Googleブランドのプリペイド・カードとなっている。これらおサイフケータイ機能は、MasterCardのPayPassリーダー (下の写真右側) で使用することができる。PayPassとは、MasterCardが発行しているクレジットカードのブランドで、チップを内臓しており、カードをリーダーにタッチするだけで、決済ができる。アメリカ国内では、PayPassのネットワークが展開されており、12万4千店舗で、これを利用することができる。

Google Offersとの連携

Google Walletのもう一つの機能は、Google Offersとの連携である。Google Offersとは、Googleが開始した共同購入クーポンで、Google版のGroupon (グルーポン) である。噂が先行していたGoogle Offersであるが、Google Walletの記者会見で、このサービスを正式発表する形となった。Google Offersは、6月1日から、Portland (オレゴン州) でサービスが開始された。Google Offersは、毎朝、利用者のGmailに特売情報を配信する。利用者は、購買期限内にクーポンを購入し、商品購買時にGoogle Walletを、リーダーにタッチするだけで、自動的に値引きを受けることができる。今までのように、クーポンを印刷して、店舗に持参する必要はなくなった。

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現在、Google WalletをサポートしているスマートフォンはNexus Sで、携帯電話通信会社であるSprint Nextelから出荷されている。Nexus Sには、NXP Semiconductors社製のチップが搭載されており、NFC (Near Field Communication) 機能とSecure Element機能を提供している。Secure Elementは、暗号化キーやカード情報など、機密情報を安全に格納し、通信する機能を司る。現在、Google Walletは、サンフランシスコとニューヨークで、試験されており、今年の夏から、サービスが開始される。

Google Wallet利用シーン

Google Walletは、アメリカにおいて、おサイフケータイ事業の魁として、一歩を踏み出した。MasterCardは、Nokiaの携帯電話でクレジットカード機能を提供しているが、普及には至っていない。また、Google Walletは、金融決済機能だけでなく、多角的な商品プロモーション機能を展開している点に特徴がある。スマートフォンで、買い物の会計ができるだけでなく、クーポンや広告と、有機的にリンクしている。

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Googleは、発表記者会見の中で、この機能に重点を置いて説明した。まず、利用者は、前述のGoogle Offersのサイトで、希望するクーポンを表示し、「Save to Wallet」というボタンを押すと、そのクーポンがGoogle Walletに読み込まれる。上の写真左側中段が、その様子で、American Eagle Outfitters (カジュアル衣料品店) のクーポンを、Google Offersから読み込んだところである。また、上の写真右側の画面は、利用者の近くの店舗が発行しているクーポンを表示している。これは、Facebook が提供しているDealsと同じ方式である。利用者が希望する店舗 (Subwayというサンドイッチ・レストラン) のSaveボタンを押すと、クーポンがGoogle Walletに読み込まれる。

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American Eagle Outfittersで、買い物をして、Google Walletで会計すると、上の写真左側の画面が表示される。MasterCardに課金され、読み込んだクーポンで20%割引が適用され、会員カードにポイントが加算される。これらの処理が、一回のタッチで完了する。利用者は、上の写真右側の画面の通り、Google Walletに会員カードを登録しておくこともできる。

トレンド

日本の消費者にとっては、おサイフケータイ機能やクーポン機能などは、目新しいものではないが、アメリカ市場においては、画期的なサービスとなる。また、Google Walletでは、GrouponやFacebook Dealsに匹敵する機能を搭載しており、Googleは遅れを一気に取り返している。Google は事業の多角化を進めているが、Appleに先駆けて、金融サービス事業に足を踏み出した。