Archive for August, 2011

アンドロイド電球

Thursday, August 25th, 2011

Googleは、サンフランシスコで開催した、開発者向けのカンファレンスであるGoogle I/Oにおいて、Android関連技術を発表した。その中で、Android@Homeという、家庭で使用している様々な家電を制御する技術を発表した。

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Android@Home概要

Android@Homeは、Androidを搭載したタブレットやスマートフォンから、家電を制御するシステムである。Android携帯端末が、家の中の家電を見つけ、交信し、制御する仕組みとなる。Android携帯端末が家電と通信する方式は6LowPANが使われている。6LowPANとは、IPv6 over Low power Wireless Personal Area Networksの略で、低出力のパーソナル・エリア・ネットワークで、IPv6方式で通信する方式である。Google I/Oにおいて、Androidタブレットから、家庭の電灯を制御するデモが行なわれた。上の写真 (出展:Google Inc.) は、Androidタブレットから、電灯をオン・オフしている様子である。また、起床時間には、目覚まし時計が鳴る前に、部屋の電気を徐々に明るくしたり、音楽のボリュームを上げるなどの操作を行なうことができる。更にGoogleは、LEDライト製造企業であるLighting Scienceと提携して、Android Bulb (アンドロイド電球) を開発しているといわれている。Android Bulbとは、LEDライト (下の写真、出展:Lighting Science) に、通信機能を司るチップを組み込んで、Android携帯端末から、無線制御できる電灯である。LEDライトに組み込むチップは、Green Chipと呼ばれ、NXP Semiconductorsから供給される。NXP Semiconductorsは、Philipsからスピンオフしたオランダ企業で、Google純正スマートフォンであるNexus SのNFCチップも提供している。Android Bulbの出荷時期は2011年末といわれている。

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トレンド

電灯をネットワークとして管理する技術は、Berkeley (カリフォルニア州) に拠点を置くAdura Technologiesなどが開発している。これらの企業は、オフィスビルや公共施設などを対象としているが、Android Bulbは、一般消費者を対象としている。また、Adura Technologiesなどは、ZigBeeのプロトコールで無線通信を行なっている。Googleが採用した6LowPAN は、ZigBeeと異なり、インターネットのプロトコールである。様々な低出力の無線通信プロトコールがあるが、Googleが6LowPANを選択したのは、電灯といえどもアプライアンスであり、これらはインターネット・プロトコールで通信すべしという意図が感じられる。Android Bulbが普及すれば、電灯に留まらず、家庭に設置されている家電を対象に、Android@Homeのスマート・アプライアンスの登場が期待される。

ケーブルテレビの省エネ事業

Thursday, August 25th, 2011

家庭におけるエネルギー監視への関心が高まる中、Comcast (コムキャスト) はこの事業に参入し、特定の地域でサービスを開始した。Comcastは、アメリカで最大手のケーブルテレビ会社で、ケーブルテレビ放送に加え、電話サービスとブロードバンド・サービスを展開している。今般、このトリプルプレイに加え、セキュリティ及びエネルギー監視サービスを開始した。

XFINITY Home Security

Comcastは、2011年6月から、XFINITY Home Securityというブランドで、家庭向けのセキュリティー及びエネルギー監視サービスを開始した。このサービスは、Comcastが家庭のセキュリティを遠隔監視するもので、併せて、家庭にけるエネルギー管理機能を提供するものである。

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このサービスには、OpenHome Converge (オープンホーム・コンバージ、上の写真、出展はいずれもComcast Corp.) というタブレットからアクセスする。このサービスに加入すると、利用者にこのタブレットが提供され、タッチスクリーンから操作を行なうことができる。OpenHome Convergeは、WiFi、ZigBee、携帯電話のインターフェイスで、家庭内の機器やComcastのセンターと接続される。利用者は、タブレットから、不審者の侵入を検知し、監視カメラの画像をモニターし、空調サーモスタットの設定を行い、室内の電灯のオン・オフを行なうことができる。OpenHome Convergeが、家庭における、セキュリティとエネルギー監視のダッシュボードとして機能する。この他に、パソコンやiPhone (下の写真) から、これらのサービスを利用できる。Comcastは、このサービスを、Houston、Philadelphia、Portland、Jacksonville地区で開始し、サービス価格は月額39.95ドルからとなっている。

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iControl Networks

Comcastはこのサービスを、Redwood City (カリフォルニア州) に拠点を置くiControl Networksというベンチャー企業のソフトウェアを利用して提供している。iControl Networksは、家庭におけるセキュリティ、エネルギー、ヘルスケアー管理を行う技術を開発している。同社が重点を置いているのがエネルギー管理機能で、タブレットを家庭に設置されているスマートメーターと連動させ、消費者が電力消費量を監視でき、スマート・アプライアンスを制御する機能の開発を行なっている。又、同社は、OpenSMAという業界団体を創設し、SMA (Security、Monitoring、Automation) の分野で標準化を進め、製品間での互換性を推進している。OpenHomeというブランド名が示唆しているように、スマートホームでは、ベンダー間の製品の互換性が普及の鍵を握る。

高校生による節電ソリューション

Thursday, August 18th, 2011

前回のレポートで紹介した通り、オバマ政権は、次世代のスマートグリッド構想について明らかにした。この記者会見の席に、シリコンバレーの高校生二人が招待され、スマートメーターを活用した、節電技術を披露した。

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Harker Upper School

この二人は、Harker Upper School (ハーカー・アッパー・スクール) という高等学校の学生である。Harker Upper Schoolは、San Jose (カリフォルニア州) にある、私立の高等学校である。発表した二人 (Shreya IndukuriとDaniela Lapidous) は、同校のJunior (日本の高校二年生に相当) で、学校に導入した省エネ技術を紹介した。上の写真 (出展:The White House) は、ホワイトハウスでの記者会見の模様で、二人が演台の前で講演し、それをエネルギー省のSteven Chu (スティーブン・チュー) 長官 (右から二番目) も熱心に聴いていた。二人は学校に、電力消費をモニターする装置を導入して、電力使用量を13%削減することに成功した。二人は、Smart Sub-Meter (スマート・サブメーター) と呼ばれる装置を学校の校舎に設置して、電力消費量を監視するプロジェクトを推進した。Smart Sub-Meterとは簡易電流計で、配電盤の電線をリング状に挟み、流れる電流を測定する装置である。その情報をゲートウェイからインターネットでサーバに送信する構成である。導入したシステムは、Echelon (エシュロン) 社のビル管理システムで、測定した電力を同社のクラウドで監視する構成となっている。

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二人は、Smart Sub-Meterを、キャンパス内 (上の写真、出展:Harker Upper School) の各校舎に設置して、電力消費量を監視できるようにした。機器を設置して電力消費量を監視していくと、電力消費量に異常な動きがあることが分かった。これを解析すると、同校の体育館は、毎日午後9時から午前3時まで、エアコンが稼動していたことを発見した。このように、キャンパス内の電力消費パターンを監視することで、節電を行い実績をあげた。同時に、他の生徒たちが、自分たちの電力消費量を把握することで、省エネへの意識が向上し、教育効果もあったと報告している。

トレンド

二人は成果を全米の他校にも利用してもらうために、SmartPowerEdという非営利団体を創設した。このサイトにおいて、学校の電力管理システムを導入するための解説や、プロジェクトを進めるため、学校側との調整や資金調達についての説明を掲載している。アメリカの高校生は環境問題に敏感であるとともに、シリコンバレーという土地柄、高校生の時から、起業家精神に富んでいる。

スマート・アプライアンス

Thursday, August 18th, 2011

オバマ大統領のAmerican Recovery and Reinvestment Act (景気対策法) により、45億ドルがスマートグリッド・プロジェクトに拠出され、アメリカ国内では500万個のスマートメーターが設置されている。このプロジェクトには、民間企業から、55億ドルが出資され、官民一体でスマートグリッドの整備が進んでいる。スマートグリッドというインフラの整備と並行して、ユーザ・インターフェイスの部分で、新技術の開発が進んでいる。オバマ大統領が期待している、イノベーションが起こり始めている。このレポートでは、大手企業で開発されている、消費者向けの電力管理システムの最新動向を考察する。

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GE Nucleus

アメリカ大企業で、クリーンテックに一番積極的なのが、General Electric (GE) である。ウィンドタービンから家電まで、幅広い製品ポートフォリオを持っている。消費者向けのエネルギー管理システムでは、GE Nucleus (ニュークリアス、上の写真、出展はいずれもGeneral Electric Co.) を発表しており、今年第四四半期に製品が出荷される。価格は200ドル程度になる予定である。GE Nucleusは、家庭の消費電力をモニターするためのデバイスで、ZigBeeのインターフェイスで、スマートメーター、家電、空調サーモスタットなどと交信を行なう。家庭のパソコンに、専用ソフトウェアをインストールし、パソコンから家庭の電力消費を監視することができる。GE Nucleusとパソコンは、EthernetまたはWiFi経由で接続する。GE Nucleusは、そのままコンセントに差し込んで使用する。

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同時にGEは、Brillion (ブリリオン) という名称で、家電がスマートグリッドと交信を行なう技術を開発している。Brillion機能を搭載した家電は、上述のGE Nucleus経由でスマートグリッドと交信することができる。これにより家電は、電気料金が安い時間帯に、自動運転できるようになる。上の写真は洗濯機のデモの様子で、利用者はパワーボタンを押すだけで、洗濯機は電気料金が安いオフピークに運転を始める。洗濯機がスマートグリッドと交信して、電気料金体系を把握して、料金が安い時間帯に運転を行なう仕組みである。一方、オーバーライドのボタンを押すと、電気料金に関わらず、直ぐに運転開始する。GEはこの他に、Brillion機能を搭載した食器洗い機、冷蔵庫、乾燥機、レンジなどを販売する予定である。消費者向けインターフェイスでは、ボタン一つで操作できる分かりやすさが鍵となる。スマートグリッドと連携したスマート・アプライアンスが、やっと現実のものとなってきた。

次世代スマートグリッド構想

Thursday, August 11th, 2011

オバマ政権は、2011年6月13日、次世代のスマートグリッド構想について明らかにした。この構想は、「Building the 21st Century Grid」と命名され、エネルギー省のSteven Chu (スティーブン・チュー) 長官など、エネルギー責任者による記者会見で発表された。記者会見の模様はホワイトハウスのウェブサイト (下のスクリーンショット、出展:The White House) に掲載されている。

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発表概要

オバマ政権は、現在進行しているスマートグリッド・プロジェクトの総括を行い、次世代スマートグリッドを構築するための施策を示した。この中で、スマートグリッド構築のために、2億5千万ドルの追加投資を行なうことを明らかにし、次世代スマートグリッド展開のために、様々なプログラムを発表した。この構想の背景には、オバマ大統領のエネルギー戦略がある。オバマ大統領は、今年1月のState of the Union Address (一般教書演説) で、2035年までに電力の80%をクリーン・エネルギーで供給すると、従来の目標値を倍増すると明言した。この目標を達成するために、スマートグリッド技術を使い、インフラを近代化する必要があるとしている。スマートグリッドを施設し、再生可能エネルギーを電力網に取り込み、電気自動車に対応し、新規発電所の建設を抑制する必要があると述べている。

Grid 21

オバマ政権はGrid 21というプログラムを発表した。Grid 21とは、電力使用量を管理・抑制するためのアプリケーション開発を促進する非営利団体である。Grid 21は、活動の一環として、2011年6月に、Biggest Energy Saver Campaignというキャンペーン (下のスクリーンショット、出展:Biggest Energy Saver) を開始した。このキャンペーンは、スマートメーター向けのアプリケーションを開発し、家庭の電力消費量を監視し、節電を促進するものである。このキャンペーンは、Oncor、CenterPoint Energy、IBM、Landis+Gyr、Itron、 GE、San Diego Gas & Electricがスポンサーをしている。

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このキャンペーンでは、アプリケーション開発コンテストと節電コンテストが実施されている。アプリケーション開発コンテストでは、スマートメーターを活用した、利用者向けアプリケーションの開発で、節電能力を競うものである。開発されたアプリケーションは、消費者に提供され、どれだけ節電でき、いかに人気があるかの尺度で評価される。アプリケーションは、Smart Meter Texas (テキサス州内のスマートメーター利用者向けの統合ウェブサイト) のデータを使用し、Oncor又はCenterPoint Energyのスマートメーターを設置している家庭向けに提供される。アプリケーション開発は7月6日に開始され、8月21日に終了する。開発されたアプリケーションは、8月1日から9月30日までの期間、消費者が実際に使用し、節電コンテストの実施となる。節電コンテストでは、これらのアプリケーションを使って、節電量を競うだけでなく、いかに無理なく節電できたかも評価される。アプリケーション開発コンテストの優勝者には5万ドル贈られる。また、節電コンテストでは、電気自動車やGE Profile (GE製の省エネ機能付き家電) が賞品となっている。

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SmartGrid.gov

その他に、オバマ政権は、スマートグリッドに関する情報を統合するウェブサイトとしてSmartGrid.govを開設したことを発表した。このサイト (上のスクリーンショット、出展:SmartGrid.gov) は、スマートグリッドに関する技術情報や、景気対策法に従って展開しているスマートグリッド・プロジェクトについての情報を、包括的に掲載している。What is the Smart Gridというページでは、スマートグリッド、スマートホーム、再生可能エネルギー、プラグイン電気自動車など、様々な技術を分かりやすくビデオで紹介している。Recovery Act Smart Grid Programsのページでは、景気対策法に従って建設が進んでいる、スマートグリッド関連プロジェクトについて、詳細な情報を提供している。現在全米で79億ドル規模のプロジェクトが進んでおり、このうち政府からの出資分は34億ドルである。これら進行中のプロジェクトを地図上に表示し、ピンをクリックすると詳細情報が表示される。下のスクリーンショット (出展:SmarGrid.gov) は、その様子を示しており、サンフランシスコにおいて、Pacific Gas & Electric Co. (北カリフォルニアの電力ガス会社) が、2,500万ドルの助成金で、圧縮空気によるエネルギー・ストレージの開発を行なっていることを示している。

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トレンド

オバマ大統領は、野党共和党から歳出削減を求められるなか、次世代スマートグリッドの指針を示した。景気対策法の時と比べ、大幅な緊縮予算となったが、ITを活用して近代化を進める姿勢が鮮明になっている。特に、スマートグリッドの消費者向けツールの開発に重点が置かれており、オバマ政権は、この分野において、ベンチャー企業によるイノベーションを期待している。