Archive for May, 2012

Facebook株価が映す将来性

Friday, May 25th, 2012

Facebookは、先週の金曜日、全米の注目を集め、新規株式公開を行なった。主要メディアは、Facebookキャンパスで行なわれた、セレモニーの様子 (下の写真、出展:Bloomberg) をテレビ中継した。米国西部時間の午前6:30に、Zuckerbergがボードのボタンを押して、オープニング・ベルを鳴らし、パネルにサインして、ナスダックで取引が始まった。

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Facebook株価の急落

Facebookの株は、米国西部時間の午前8:00から取引が開始される予定であったが、システムの問題で、30分遅れてのスタートとなった。初値は42.05ドルで、公開価格の38ドルを11%上回ったが、終値は38.23ドルと、公開価格を辛うじて上回った(下のグラフィックス、出展:VentureClef)。初日はナスダックのシステム障害という不運があったが、その後も株価は低迷し、今週は31.91ドルで取引を終えた。株価下落とその原因について、市場では混迷が続いている。今週は連日、主要メディアがトップニュースで、Facebookの新規株式公開に至るプロセスを報道した。事実関係は調査中であるが、経緯は次ぎの通りである。Facebookは、市場からの需要が大きいと見て、新規株式公開前に、公開株式数を増やし、公開価格を引き上げた。その一方で、Facebookは、リスク要因として、携帯端末向けの広告事業が低調であると公表した。更に、引受主幹事であるMorgan Stanleyが、新規株式公開直前に、Facebookの業績見通しを引き下げ、それを一部の機関投資家だけに伝え、一般投資家には知らされなかった。取引開始直後から、株価が大きく値下がるという展開となった。この一連のプロセスについて、SEC (米証券取引委員会) は、不正がなかったかどうか、調査を始めている。また、個人投資家は、業績見通しの情報を隠匿していたとして、ZuckerbergとMorgan Stanleyに対して、訴訟を起こしている。

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新規株式公開の軌跡と業績見通し

株式公開前はFacebookバブルであったが、今では一転して、企業の将来性に疑問が投げかけられている。Facebookは、市場の期待通り、大きく成長することができるのか。Facebook株は買いなのか。この手がかりは、FacebookがSECに提出した、新規株式公開のための申請書類 (Registration Statement) にある。Facebookは、4月23日に、新規株式公開のための申請書類の改版 (Amendment #4) をSECに提出している。この中で、Facebookは、2012年度第一四半期の業績を公表し、売上高は$1,058Mで、前年同期から45%の増加したものの、純利益は$205Mで、12%減少している。Facebookは、研究開発費用が大幅に伸びたためと説明しているが、爆発的な成長は見られない。Facebookは、5月3日に、申請書類へのアップデート (Update to Preliminary Prospectus) をSECに提出し、この中で携帯端末向け広告事業について、懸念を表明している。Facebookは、「現在、携帯端末向けに広告配信を殆ど行なっていない。携帯端末での利用者数の増加が、広告配信数の増加を上回っている」と述べている。つまり、Facebook利用者は、携帯端末に大移動しているが、ここでは広告配信が行なわれてなく、これが事業低迷の原因となっている。更に、前述の通り、Morgan Stanleyが、Facebookの業績見通しを引き下げた。その詳細は明らかでないが、Business Insiderによると、Facebookは今期 (第二四半期) も、事業が低調であるとの情報をMorgan Stanleyに伝え、これが業績見通し引き下げに繋がったとしている。

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パソコンからスマートフォンへ

一連の情報が示しているのは、Facebookの携帯端末での広告事業は、予想外に深刻である、という感触である。現在、Facebookは、パソコン向けに、Sponsored Stories (上のスクリーンショット、出展:VentureClef) という方式の広告を展開している。これは、友人の行動 (Likeボタンを押すなど) をスポンサーのメッセージと供に、利用者のNews Feedに掲載する方式である。上の事例は、友人がSouthwest航空が好きであるというコメントが、広告メッセージと供に掲載されている様子である。Facebookはこの方式を、昨年2月から、携帯端末向けに展開を始めた。携帯端末は、パソコンと異なり、ディスプレー面積が小さく、バナー広告を表示する余裕は無い。このためFacebookは、利用者のNews Feedに掲載できる、Sponsored Storiesを展開している。下のスクリーンショット (出展:VentureClef) がその事例で、左側最上段が、上述Southwest航空のiPhone向けSponsored Storiesである。右側は、ポップ歌手Katy Perryが発信したSponsored Storiesである。これに対して、一部の利用者は、News Feedに、広告メッセージが混ざることに抵抗感を示しており、Facebookは少しずつ慎重に、広告事業を展開をしている。これが、携帯端末における、広告収入が低迷している原因である。

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考察

Facebookはパソコン向けソーシャル・ネットワークを開発している企業である。スマートフォンの普及に伴い、急遽、携帯端末での事業を開始したが、大きく出遅れている。Microsoftが携帯端末向けのOSで苦戦しているのと、状況がよく似ている。Facebookは、携帯端末向け広告事業だけでなく、基本機能そのものについても、将来性が問われている。株価の低迷は、Facebookがパソコンからスマートフォンにダウンサイジングできるのか、その懸念を反映したものである。

スマートフォン管理新技術

Friday, May 18th, 2012

新興企業が新技術を紹介するカンファレンスであるUnder the Radarでは、クラウドをテーマに、BYOD (Bring Your Own Device) ワーク・スタイルに対応するための新技術が登場した。

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Bitzer Mobile Appで安全に業務遂行

Bitzer Mobile (ビッツアー・モバイル) というベンチャー企業は、Sunnyvale (カリフォルニア州) に拠点を置き、企業内におけるタブレットやスマートフォンの管理技術を新しい視点から開発している。同社CEOのNaeem Zafar (ナイーム・ザファー) と、副社長のAndy Smith (アンディ・スミス) が、新技術について解説してくれた。社員はスマートフォンにBitzer Mobile Appをインストール (上のスクリーンショット左側画面、出展はいずれもVentureClef) して、企業内のデータに安全にアクセスする仕組みである。社員は、アプリを起動し、IDとパスワードで企業システムにログイン (右側画面) する。アプリはコンテナー (システム内のセキュアな領域) として機能し、スマートフォン上の業務データはコンテナーに保管され、他のアプリからはアクセスできない。このため社員は、スマートフォンから企業データに安全にアクセスすることができる。Bizter Mobileから企業サーバにログインするとLibraries (下のスクリーンショット左側) が表示される。

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Librariesには業務で使用するアプリが登録されており、利用者はこれらのアプリを起動して仕事を行なう。ここにはSugar CRMやSalesforceやSharePoint Web等が登録されている。右側画面はSugar CRMアプリを起動した様子で、カラムにタッチして、住所録、顧客情報、セールス・リードなどを閲覧する。社内のウェブサイトには専用のブラウザーを使ってアクセスする。ここではSharePoint Webというアプリが提供されており、このアプリを起動して、Microsoft SharePointにアクセスし、社内ウェブサイトを閲覧する。このように、社内ウェブサイトにアクセスする際は、Bitzer Mobile内の専用ブラウザーから安全に行なう。一方で、社外のウェブサイトにアクセスする際は、Safariブラウザーを使用する仕組みとなっている。

IT管理者向けの機能

スマートフォンから安全に企業システムにアクセスする方式は、Mobile Container Managementと呼ばれ、IT管理者は専用のウェブサイトから、社員が所有している携帯端末を管理する。下の写真がパソコンから専用ウェブサイトにアクセスした様子である。このサイトのダッシュボードで、Bizter Mobile Appがインストールされているスマートフォン機種や、使用されているアプリの種別などを把握する。またIT管理者は、遠隔でスマートフォンをロックしたり、スマートフォン上のデータを消去することができる。更に、Location機能を使って、携帯端末を紛失した場所を特定することができる。

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IT管理者は、このサイトから各種セキュリティの設定を行なう。社員は特定のグループに帰属し、グループ毎にセキュリティ・ポリシーが設定される。上の写真は、PoliciesのタブからGeo Accessの設定を行なっている様子である。Geo Accessとは社内サーバにアクセスできる地域のことである。ここでは、Geo AccessをJapanと設定しており、社員は日本国内だけでBitzer Mobileを利用することができる。この設定で、米国においてBitzer Mobileを使うと、ログインが認証されない仕組みとなっている。

Bitzer Mobileのシステム概要

Bitzer Mobileは、前述の通り、スマートフォン内にコンテナーを構成し、企業内のデータに安全にアクセスする機能を提供している。また、Bitzer Mobile Appは、NOC (ネットワーク・オペレーション・センター) が不要で、直接、企業サーバと交信し、Kerberosプロトコールで認証を行なう。Bitzer Mobile Appは、App Tunnelというアクセス方式で、アプリが企業内サーバとセキュアなトンネルを構成する。社員が利用する業務アプリだけが、サーバとセキュアに交信できる。つまり、スマートフォンにインストールされている私用アプリ (Facebookなど) はサーバと交信できないし、仮にマルウェアがインストールされても、サーバにアクセスすることはできない。VPN (Virtual Private Network) と比較すると分かり易い。VPNはデバイス・レベルでトンネルが形成されるが、Bitzer Mobileはアプリ・レベルでトンネルが形成され、きめ細かなセキュリティ制御が可能となる。Bitzer Mobileは、日本市場での展開を計画しており、日本でのパートナーを模索中である。

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Plug & Playというインキュベータ

Bitzer Mobileのオフィスは、Plug & Play Tech Centerに設けられている。Plug & Playとは、新興企業向けのインキュベータで、オフィス・スペースやIT環境などを提供し、新興企業の成長を支えている。上の写真はロビーの様子で、世界各国から起業家が集まり、事業を展開している。Bizter Mobileはこのビルの二階の一角にオフィスを構えている。Plug & Playには数多くの企業が入居しており、整然としたオフィス環境ではなく、雑然とした活気あふれる共同作業場である。起業家が大きな夢に向かって、生き生きと活躍しており、その熱気を肌で感じた。

高性能ストレージ・クラウド

Friday, May 11th, 2012

新興企業が新技術を紹介するカンファレンスであるUnder the Radarでは、アマゾン・クラウドを補完する、高性能なストレージ・クラウドが登場した。

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Zadaraというベンチャー企業

Zadara (ザダーラ) は、Irvine (カリフォルニア州) に拠点を置くベンチャー企業で、クラウド上で高速ストレージ (Virtual Private Storage Arrays、VPSA) を構築する技術を開発している。利用者はクラウドに専用のストレージを追加して、高速に、かつ、安全にアプリケーションを実行できる。同社副社長のNoam Shendar (ノーム・シェンダー) が、システム概要と位置づけを解説してくれた。Amazon Web Services (AWS) では、クラウド・ストレージとして、Elastic Block Store (EBS) を提供しているが、ZadaraはEBSの高性能版を提供するという位置づけとなる。ZadaraはAWSに接続して使われ、利用者は、AWSの仮想マシンから、Zadaraを利用する仕組みとなる。つまり、Zadaraが提供するストレージは、ESBを補完する位置づけで、ディスク・アレイを構成し、高速でデータ処理を行なうことができる。実際にZadaraは、Amazonのパートナーとして事業を展開している。

Zadaraの利用方法

利用者は、まず、AWSにストレージを接続する作業を行なう。上のスクリーンショット (出展はいずれもZadara Storage) がその様子で、ここでAWSを選択する。Zadaraは、Amazon の他に、RackspaceとOpSourceをサポートしている。次に、接続するストレージの構成を指定する。画面では279GBの容量をもつSAS型ディスク六台を指定している。そして、ディスクの設定 (RAIDタイプの指定など) を行い、生成したストレージをクラウドに接続し、初期化を行なうことで、初期設定が完了する。下のスクリーンショットは管理画面で、AWSにディスクが接続され、三台の論理ボリュームが生成されている様子を示している。

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Amazonが提供するEBSは、ストレージを複数の利用者で共有するため、処理速度が遅く、性能のばらつきが大きい、という問題を抱えている。これに対してZadaraは、利用者がストレージを占有するために、処理速度が速く (Amazonの11.6倍) 、性能が安定し、セキュリティの問題も解消される。Zadaraはベータ試験が終了し、本格稼動を始めたところである。今年前半には、Nation Institutes of Healthに導入され、Zadaraストレージ・クラウドに、大規模な人間遺伝子のデータベースが構築され、ビッグデータ解析が行なわれる予定である。

10分でインストールできるクラウド

Friday, May 11th, 2012

新興企業が新技術を紹介するカンファレンスであるUnder the Radarでは、クラウドを主要テーマに、新しい視点からのクラウド・インフラ技術が紹介された。

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Piston Cloud Computingという企業

カンファレンスで一番注目を集めたのが、Piston Cloud Computingというベンチャー企業である。同社はSan Franciscoに拠点を置き、オープンソースのクラウドであるOpenStackを商用製品として提供している。この製品はPiston Enterprise OS (PentOS、ペントス) と呼ばれ、OpenStackでクラウドを構築するために必要なコンポーネント全てを含んでいる。利用者はPentOSをコモディティー・ハードウェアにインストールして、プライベート・クラウドを構築する。PentOSの特徴は、10分間でクラウドをインストールできることである。PentOSはUSBメモリー・スティック (Piston CloudKeyという製品名) で配布され、利用者は、これをパソコンに挿入して、初期設定を行なう。上の写真 (出展はいずれもPiston Cloud Computing) がその様子を示しており、白色のUSBメモリー・スティックがPiston CloudKeyである。 パソコンでディスクの中のcloud.confというファイルを開いて、クラウド導入の初期設定 (サーバ数の指定やID・パスワードの設定など) を行なう。更に、PentOSディレクトリを開き、バリデーション・ツールを起動し、OSの整合性を確認する。

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次に、実際にクラウドをインストールするラックマウント・サーバで、最上部に設置されているネットワーク・スイッチに、Piston CloudKeyを挿入する。上の写真がその様子で、Arista Networks社のネットワーク・スイッチにPiston CloudKeyを差し込んでいるところである。そしてネットワーク・スイッチの電源を入れると、PentOSのインストール処理が始まる。システムはハードウェア構成を検出し、それに最適な構成で、PentOSを自動でインストールする。このプロセスに要する時間が10分である。

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インストールが完了すると、IDとパスワードでログインして、PentOSのダッシュボード(上のスクリーンショット) にアクセスし、システムの稼働状況を監視制御する。このようにPentOSは、OpenStackを簡単な操作で導入できる技術を提供している。Red HatがLinuxのパッケージを提供しているように、Piston Cloud Computingは、クラウド市場におけるRed Hatを目指している。

iPadから安全に資料を閲覧

Friday, May 4th, 2012

新興企業が新技術を紹介するカンファレンスであるUnder the Radarでは、BYOD (Bring Your Own Device) ワーク・スタイルが広がる中、iPadで如何に安全に業務を行なえるかが議論の中心となった。

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Framehawkという企業

Framehawk (フレームホーク) は、San Francisco (カリフォルニア州) に拠点を置くベンチャー企業で、タブレットから企業内のアプリケーションやウェブサイトに、安全にアクセスできるプラットフォームを紹介した。これはFramehawk Mobile Application Platformと呼ばれ、企業内で稼動しているアプリケーションやウェブ・アプリを、iPadなどの携帯端末から、セキュアにアクセスするシステムである。タブレット側には専用アプリ (上の写真、出展:Framehawk) が実装され、利用者はここから企業システムにアクセスする構成である。カンファレンスでは、同社のCEOであるPeter Badger (ピーター・バジャー) が、iPadを使ってデモをしながら、Framehawkの説明を行なった。下の写真 (出展:VentureClef) は、iPadからSalesforce.comにアクセスしている様子である。これはiPad上のSafariブラウザーからSalesforce.comにアクセスしているのではなく、専用アプリであるFramehawkからSalesforce.comにアクセスしている様子である。多くの企業は、機密データの漏洩を防ぐため、インターネット経由でSalesforce.comにアクセスすることを禁止している。これに対してFramehawkは、専用アプリからウェブサイトにアクセスする構造で、ウェブサイトのデータをダウンロードすることなく、ウェブページの画面イメージだけを送信する仕組みとなっている。iPad側にデータが蓄積されないため、安全に企業データを閲覧できる。一方、画面イメージを送信するリモート・デスクトップとは異なり、Salesforce.comはiPadアプリとして稼動するので、ネイティブなアプリを使う感覚で、快適に操作できる。

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トレンド

Badger によると、Framehawkは金融機関を対象に事業を展開しており、既に、大手銀行でFramewahkのトライアルが始まっている。スイスに拠点を置く世界最大規模の銀行であるUBSはFramehawkを使ってiPadから企業内データやソフトウェアにアクセスする仕組みを試験している。UBSのアナリストは、客先からiPadで、顧客情報など社内データへのアクセスが可能となった。Framehawkは社内の機密データを安全に表示できるため、応用分野が拡大中である。