Archive for October, 2012

タッチ・インターフェイスに統一されたWindows 8

Wednesday, October 31st, 2012

Microsoftは、2012年10月25日、New YorkにおいてWindows 8と関連製品の発表を行った。Windows 8とSurfaceは、翌日の10月26日から、販売が開始された。Windows 8とSurfaceを使ってみて、統合されたインターフェイスの機能性をレポートする。

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デスクトップでWindows 8を使ってみると

Windows 8は早くからPublic Betaとして公開されており、様々な検証が行われている。Windows 8はタッチスクリーンを意識したインターフェイスで、デスクトップでは使いにくい、という評価が目につく。実際に、デスクトップのWindows 7をWindows 8にアップグレードして使ってみると、市場の評価とは異なり、快適に操作できる。Windows 8のStart Screen (上のスクリーン・ショット、出展はいずれもVentureClef) はTileから構成され、Tileはアプリやコンテンツとリンクしている。Tile表面にはニュースや写真などライブ・データが表示される。これをLive Tileと呼んでいる。画面左半分はWindows 8に組み込まれているアプリが、中央部にはWindows 7で使っていたアプリケーションが、画面右側にはWindows Storeからダウンロードしたアプリが配置される。これがデフォルトの構成であるが、Tileの配置や大きさを自由に変更できる。画面右下にカーソルを合わせると右端のバーが表示される。このバーにはSearch、Share、Start、Devices、Settingsボタンが配置されており、これらをCharmと呼んでいる。Startボタンをクリックすると上のHome Screenが表示される。

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Home ScreenのMusic Tileをクリックすると、Musicアプリが起動し、Xbox Music (上のスクリーンショット) が表示される。Xbox Musicは、Microsoftの音楽ストアーで、ここで音楽を購入し、ストリーミングで音楽を聴くことができる。このアプリから、デバイスに格納している音楽を聴くこともできる。Apple iTunes Music Storeに相当する機能である。

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Windows 8にはMail、Calendar、People、Messages、Weather、Desktop、Store、Maps、SkyDrive、Photos、Music、Videoなどのアプリがプレ・インストールされている。この他に、利用者はWindows Store (上のスクリーンショット) でアプリを購入することができる。ここには有償・無償のアプリが揃っており、希望のアプリをダウンロードして利用できる。アプリはカテゴリー別に区分されており、希望のアプリを選択する。Apple App Storeに相当する機能である。

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Windows 8にはSkyDriveアプリがプレ・インストールされ、クラウド・ストレージ機能を提供している。上のスクリーンショットは、SkyDriveを起動したところで、フォルダーが表示されている。フォルダー内のファイルをクリックすると内容を参照・編集できる。タブレットやスマートフォンから同じファイルにアクセスできる。業務においては社員間でデータを共有しコラボレーションできる。

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Home ScreenのDesktopアプリをクリックすると、見慣れたデスクトップ (上のスクリーンショット) が表示される。ここでPowerPointなどを使って仕事をする。仕事中はこのスペースに留まり、別のアプリケーションを起動する際に、Home Screenに戻るというパターンである。デスクトップからStartボタンが無くなり、Home Screenに戻ってアプリケーションを起動する必要がある。仕事が終わるとHome Screenに戻り、音楽を聴き、ビデオを見て、今日のニュースを読むというパターンである。タイル形式のインターフェイスはすっきりしており、新鮮な印象を受ける。マウスで充分操作できる。市場の評価とは異なり、デスクトップでのWindows 8は、Windows 7より機能が増え、格段に使いやすくなったと感じる。

Surfaceを使ってみると

MicrosoftはWindows 8と同時にSurfaceの販売を開始した。SurfaceはMicrosoftブランドのタブレットで、今回発売するモデルはARM (NVIDIA Tegra 3) を搭載しWindows RTが稼働する。Windows RTとはWindows 8をARMプロセッサー向けに最適化した基本ソフトである。Windows RTはMicrosoft Office 2013をサポートし、Windows Storeからアプリをダウンロードして使用する。Surfaceは丸一日バッテリーで稼働し、既存の周辺機器とUSBケーブルなどで接続して利用する。

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Microsoft Storeにおいて、Surfaceを使いその操作性を試してみた。タッチパネルは敏感で、指での操作は滑らかである。Tileにタッチすると、アプリが起動する。iPadのように小さなアイコンが密集しているのではなく、大型のLive Tileが配置され、少し気分が楽になる。Live Tileの上には、最新ニュースのタイトルや写真が、電光掲示板のように、フラッシュする。Mailアプリにタッチすると、Hotmailが起動した。Mailアプリには、Gmailなど、自分が利用しているメールを登録できる。メール作成画面では、ソフト・キーボードから入力できる。メールのような短い文章はソフト・キーボードから行える。

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次に、Home Screenで、Microsoft Excelを使ってみたが、この時はTouch Cover (上の写真の赤色の部分) から入力した。Touch Coverはタブレットのカバーにキーボードが印字されている構成で、タイプしても指への反応はなく、ソフト・キーボードを使っている感覚に近い。慣れてくると通常のキーボードのように速くタイプできる。ExcelやWordなど長い文章を入力する際はTouch Coverで行うのが楽である。Touch Coverは簡単に取り外しでき、Touch Coverを裏返すと、タブレットとして使える。Desktopで仕事を行う際はTouch Coverから入力を行い、それ以外のアプリを使うときはタッチスクリーンから入力を行うという切り分けができる。Windows 8のタッチ・インターフェイスは、やはりタブレットで威力を発揮する。

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Microsoft Storeの盛況

Microsoftは2009年10月から全米に小売店舗を展開してきたが2012年4月には、Palo Alto (カリフォルニア州) のStanford Shopping CenterにMicrosoft Storeをオープンした。店舗入り口の隣には、Windows 8ロゴとLive Tileが掲載されていた (上の写真)。Microsoft StoreにはWindows 8を搭載した主要パソコンやタブレットが展示され、Surfaceは入口正面の一番目立つところに配置されていた。店舗内はAcer、Dell、Lenovo、Sonyなど主要ベンダーからの製品が展示され、自由に試してみることができた。Windows 8でデバイスのバリエーションが格段に増えた。タブレットはSurface以外にASUS Vivo Tab RTなどが販売されていた。Acer Aspire S7-391はUltrabookでMacBook Airのようにスタイリッシュなデザインである。Lenovo IdeaCentre A720はAll-in-Oneで、iMacが太った構成である。店舗内は大盛況で、新製品を試している客で混雑し、Surfaceの前では待ち行列ができていた。店舗スタッフがSurfaceのデモ機を持ち歩き、使い方を解説するというサービスも行われていた。

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考察

Windows 8のコンセプトは、タッチとマウス操作両方に対応し、娯楽と仕事の両方で使えることである。インターフェイスの概念は、MicrosoftとAppleで大きく異なる。MicrosoftはWindows 8という単一の基本ソフトでモバイルとデスクトップをカバーするというアグレッシブな方式である。一方Appleは、モバイルはiOS6でデスクトップはMountain Lionという二つの基本ソフトを使い分けている。Mountain LionにはiOS機能の流入が続き、Macが徐々にiPhone/iPadに近づいているが、二つの基本ソフトを運用している。市場では、Windows 8は中途半端で、モバイルとデスクトップのどちらにも対応できていない、という意見も聞かれる。これに対して、消費者はWindows 8をどのように評価するのか、見定める必要がある。一つの基本ソフトが、モバイルとデスクトップの架け橋になれるのか、壮大な社会実験が始まった。

手の動きでテレビを操作

Thursday, October 25th, 2012

新興企業が最新技術を紹介するカンファレンスであるDEMO Fall 2012では、ウェアラブル・コンピュータの試作品が登場し、話題を集めた。

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逆転の発想でテレビを操作

Tarsier (ターシア) はShoreview (ミネソタ州) に拠点を置く企業で、MoveEyeという装置を開発した。MoveEyeはメガネとソフトウェアから構成されたシステムで、利用者の視線を追跡し、手の動きを把握する機能を持っている。同社CEOであるShafa Wala (上の写真、出展はいずれもVentureClef) がMoveEyeを着装し、デモを行ないながら機能の説明をしてくれた。メガネの上に二台のウェブカメラを搭載し、イメージをパソコンに転送する。「カメラは利用者がモニターのどこを見ているかを追跡し、手によるジェスチャーの意味を解読する」とWalaがその仕組みを解説した。下の写真はWalaがMoveEyeを着装してカーレースのゲームをしている様子である。Walaは腕を伸ばしハンドルを持っている感覚で、自動車を操作した。ハンドルを左右に切り方向を変え、手前に引いてシフト・アップを行なう。MoveEyeを着装して、実際に試してみたが、ハンドル操作は非常に敏感で、すこし動かすだけで、自動車の方向が大きく変わる。慣れるに従い、ハンドル操作がスムーズになり、カーレースの臨場感を味わった。短時間で操作のコツがつかめゲームを楽しめた。

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Walaは、「MoveEyeは試作品で、最終製品ではメガネの内部にカメラを実装し、データは無線でパソコンに送信する方式となる」と、プロトタイプを手にしながら説明した。ゲームの他に、テレビでビデオ・ライブラリーを表示し、手を動かして希望の映画を選択できる。ボリュームの調整をジェスチャーで行なう機能も搭載されている。

トレンド

利用者が手や体の動きでゲームを操作する装置では、Microsoft Kinectが幅広く利用されている。KinectはXboxと連携し、カメラと赤外線カメラを使って、利用者の動きを三次元で把握する。一方MoveEyeは、カメラはビデオ側ではなくメガネに実装しているのが特徴である。メガネから手の動きを追跡する仕組みである。手はメガネから見えるところに位置する必要はあるが、MoveEyeを操作してみると、ウェアラブル・コンピュータとゲームの相性は良いと感じた。Google Glassもメガネにカメラやモニターを実装した構造である。これからはメガネから手の動きを入力信号として処理する方式が広まりそうである。

大統領選挙での投票先を推奨

Thursday, October 25th, 2012

新興企業が最新技術を紹介するカンファレンスであるDEMO Fall 2012は、Santa Clara (カリフォルニア州) のHyatt Regencyで開催された。アメリカ大統領選挙は投票日まで10日余りとなり、オバマ大統領とロムニー候補が支持率で拮抗しており、激しい競り合いが続いている。

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質問に答えて投票先を決定

ElectNext (エレクト・ネクスト) はNew York (ニューヨーク州) に拠点を置く企業で、ユニークなサービスを開発した。ElectNextは、大統領選挙で、利用者がどの候補者に投票すべきかを10の質問への回答から判定する。上のスクリーンショット (出展:ElectNext) がその事例で、利用者に対して10の質問が表示される。質問は政治的課題に関してで、利用者は各質問に賛成か反対かの意思を表明する。上の事例は、「自動車業界は新しい燃費基準に準拠すべきか」という質問で、利用者はこれに対して、賛成か反対かの意思表示を行なう。その結果が次ぎのグラフィックス (出展:ElectNext) である。これによると、私の意見はオバマ大統領の政策と80%マッチしており、投票先はオバマ大統領であると推奨している。一方で、ロムニー候補とは政策の共通点が47%である。この他にSenator (アメリカ議会上院議員) ではDianne Feinsteinを、Representative (同下院議員) ではAnna Eschooに投票すべきとの結果が下された。

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ElectNextのブースにて、CEOであるKeya Dannenbaumに、サービスの背景などを聞いた。Dannenbaum によると、「ElectNextは政治データと解析技術企業である」とし、「大統領選挙と上下院議員選挙での候補者の政策を収集し、データベースを構築している」と説明してくれた。

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このサービスは既にMSNBCのNBC Politicsというサイト (上のスクリーンショット右側、出展:MSNBC) で採用されている。各候補者のウェブサイトで政策を熟読し、投票先を判定する代わりに、このサイトで質問に答えて決定できる。投票先を決めるには、政策だけでなく、候補者の人柄も大きな要因であるため、最終的には両者を総合的に判断して決定することになる。ElectNextは、政治に関するビッグデータ処理を行う企業で、大規模な政治関連データベースの構築と解析を目指している。

IT企業内のリーン・スタートアップ

Friday, October 5th, 2012

新興企業が最新技術を紹介するカンファレンスであるDEMO Fall 2012は、10月1日から3日まで、Santa Clara (カリフォルニア州) のHyatt Regencyで開催された。カンファレンスには77の企業が参加し、ステージ上で6分間のデモを実演し、最新技術を紹介した。カンファレンスにはCitrixの社内ベンチャーである、Citrix Startup Acceleratorのポートフォリオ企業が参加し、先進的な技術を披露した。

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Startup Acceleratorというインキュベータ

カンファレンスに先立ちStartup AcceleratorのChief TechnologistであるMichael Harriesに、組織概要や投資目的について話を聞いた。Startup AcceleratorはCitrix社内に設立されたインキュベータで、新興企業への投資と育成を行なっている。上の写真 (出展:VentureClef) はCitrixのオフィスビルで、Startup Acceleratorは三階に入居している。Startup Acceleratorは新興企業に対して、25万ドルまでの投資を行い、オフィス・スペースなどを提供する。新興企業はこれらの資金とリソースを使って、18ヶ月間で製品開発を行なう。Harriesは「Lean Startups (リーン・スタートアップス) という投資手法で、限られた資金で、短期間で製品開発を行なう」と説明した。CitrixがStartup Acceleratorを運用している目的は、「新興企業が開発した技術をCitrix製品にフィードバックするのではなく、動きの激しい市場で、技術動向をモニターすることである」と説明した。Startup Acceleratorは現在までに12社に投資を行い、今後6-8社に投資を行う予定である。Startup Acceleratorの対象分野はモバイル・ワークスタイルとクラウド・サービスである。Harriesにポートフォリオ企業の中で、期待を寄せている企業について尋ねると、「自分の子供の中で、どの子が好きかと聞かれているようで、答えにくい」としながらも、モバイル・ワークスタイルの分野ではZeroMailを、クラウド・サービスの分野ではGraymaticsを挙げた。これらの企業はDEMO Fallに出展しており、会場で両社からデモを交えて、製品の説明を聞いた。

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ZeroMail: メールボックスの近代化

ZeroMailは、ここ20年間技術進化が止まっているメールボックスを改良し、利用者に使いやすいメール機能を提供することを目指している。ZeroMail創設者であるBart Jellemaがデモを実演し、使い方を解説してくれた。多くのGmail利用者のメールボックスには、3000通近いメールが未読のまま溜まっている。ZeroMailは3分間で、受信メールを区分けして、整理整頓する機能を提供している。上のスクリーンショット (出展:ZeroMail) がZeroMailのダッシュボードで、ここにGmail Inboxの2993通のメールを項目別に区分けして表示している。ZeroMailは四つの区分を設けており、それらはConversations (交信メール)、Notifications (通知メール)、Groups (グループ討議)、Newsletters (購読ニュース) である。利用者はZeroMailの指示に従ってメールを整理していき、仕事や個人関連で、返信などのアクションが必要なメールだけを抽出し、これらを特定のフォルダーに格納する。ZeroMailのデモで、実際に、2993通の未読メールを3分足らずで整理整頓できた。

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Graymatics: イメージ認識の広告への応用

Graymaticsは写真やビデオでのイメージ認識技術を開発し、これを広告分野に応用したソリューションを提供している。同社CEOであるAbhijit Shanbhagが、ブースにて広告への応用事例を解説してくれた。上の写真 (出展:VentureClef) は、イギリスの大衆紙であるThe Sunのウェブサイトである。ニュース記事の写真の中で、衣服、サングラス、カメラなどに添付された矢印をクリックすると、それらに嗜好が近い製品が表示される。この事例では、Brad Pittが着ているシャツの矢印をクリックしたところで、Pittが羽織っているシャツに近いイメージの男性向けシャツが表示されている。これをクリックするとAmazon.comで買い物ができる。この技術はConVisual (コンビジュアル) と呼ばれ、画像イメージに沿った商品を紹介するサービスである。これに対して、Google AdSenseなどは、テキストの文脈 (Context) に沿った商品広告を掲示するサービスである。

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上の写真 (出展:VentureClef) は、この技術を使って、広告掲載の設定を行なっている様子である。写真中央はJaguar Light Gray Convertibleで、これに嗜好の近い商品を右上の枠内に表示する。利用者が商品イメージを右上の枠内にドラッグすると、システムが両者の親和性を計算する仕組みである。Graymaticsは、ビデオ世代において、Contextではなく、ConVisualな解析技術を開発している。

考察

Startup AcceleratorはCitrixオフィス・ビル内にあり、新興企業がフロアーにブースを構え、オフィスを構成している。シリコンバレーを中心に、Lean Startupsの手法で技術開発が行なわれているが、Citrixはこの手法を社内ベンチャーに応用した、新しい試みを展開している。Citrixはモバイル・ワークスタイルやクラウド・サービスにおいて業界をリードしているが、Startup Acceleratorをセンサーとして、日々技術動向を追っている。モバイルやクラウドなど、動きの速い分野では、IT企業は市場の動きを追跡するメカニズムが必要なことをCitrix Startup Acceleratorは示している。