ベンチャー企業が審査員の前で最新技術をアピールするカンファレンスであるUnder the Radarが、カリフォルニア大学サンフランシスコ校 (下の写真、出展:VentureClef) で開催された。カンファレンスは、既存路線から大きく逸脱する技術を追求しており、ソーシャルとモバイルの分野で斬新な技術が登場した。今年のトレンドを一言で括ると、ソーシャル・メディアはビジュアルに向い、モバイルはコマースに向かっている。このレポートから数回に分けて、ソーシャル及びモバイルの最新技術を解析する。
Pinterestを使ったプロモーション
ソーシャル・ネットワークは急速にビジュアル化している。Pinterest (ピンタレスト) は写真を媒体としたソーシャル・ネットワークで、会員は気に入った写真をボード (写真アルバム) にピン留し、コミュニケーションを行う場である。Pinterestには様々な写真が掲載されているが、女性ファッションなどが人気のジャンルである。下のスクリーンショット (出展:Pinterest) がその様子で、Pinterestのファッション・カテゴリーに掲載されている写真を閲覧しているところである。
Pinterestは趣味の写真アルバムとしてスタートしたが、今ではPinterestを基盤としたビジネスが始まっている。多くの有名ブランドがPinterestで商品プロモーションを展開している。下のスクリーンショット (出展:VentureClef) がその様子で、左側はファッション・ブランドのdELiA*s (ディリアス) が、若い女性向けにジーンズの写真などを掲載している。利用者は気に入った写真にタッチすると、dELiA*sのショッピング・サイト (右側) にジャンプし、ここで買い物をすることができる。趣味の写真アルバムが製品プロモーションとしても利用されている。
Pinterestは消費者動向を把握するに最適な場でもある。多くの利用者は、気に入ったファッションやアクセサリーの写真を自分のボードに掲載し、一般に公開している。Pinterestに掲載されている写真を閲覧すると、ファッション・ブランドの人気商品が見えてくる。しかしブランドは、Pinterestにどんな商品が掲載され、また、その商品がどのように伝達されていくのか把握できていないのが現状である。Pinterestの特性は写真でメッセージが主張されることで、テキストの記載は最小限に留まっている。利用者は「dELiA*sのSkinny Jeansが欲しい」とコメントする代わりに、写真を掲載し、「これ欲しい」とコメントする。このため、従来のテキスト解析では、商品を追跡することができない。
Curalateというベンチャー企業
Curalate (キュラレイト) はPhiladelphia (ペンシルバニア州) に拠点を置くベンチャー企業で、ブランド向けにPinterestにおけるアナリティックス機能を提供している。上のスクリーンショット (出展:Curalate) がその様子で、Pinterestの解析結果を表示している。これはH&Mブランドに対する解析結果で、Pinterestにおいて、利用者がH&M商品の写真に如何に反応したかを解析している。スクリーンショット上段は、Brand Activityとして、利用者が掲載したH&M商品の写真が閲覧された数、そこに記入されたコメント数、写真のフォロワーの数などが表示される。下段はYour Top Contentsとして、利用者が掲載及び再掲載した商品の写真一覧が表示される。このランキングを見ることで、H&Mは消費者動向や、消費者の間で話題となっている商品を把握することができる。
Your Top Contentsでサンダルが上位にランクされていると、それと同じ商品をH&Mのボード (上のスクリーンショット、出展:Pinterest) に掲載することで、利用者がこの商品を購入する確率が大きく上がる。
トレンド
CuralateのCEOであるApu Gupta (上の写真、出展:VentureClef) によると、「インターネットはVisual Webに向かっている。コンテンツの40%はイメージで、ソーシャル・メディアでは70%がイメージを介在したアクションである。」と述べている。その代表がPinterestであり、Tumblrである。「イメージは感情を刺激し商品購入に繋がりやすい」と述べ、「サイトでの購買金額は、Facebookが95ドルであるのに対して、Pinterestは169ドルである」としている。Visual Webが幅広く浸透し、ここで事業が発生するにつれて、Curalateのメージ・アナリティックスが重要な技法となってくる。