Archive for December, 2012

会員カードをカードレスで展開できるサービス

Friday, December 21st, 2012

Under the Radarでは、ソーシャルとモバイルの分野で斬新な技術が登場し、特に、モバイル・コマース分野での技術革新の速度が急であった。スマートフォン・エコノミーが急速に広がり、ユニークなビジネスがモバイル・デバイス上に登場している。

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クレジットカードで会員管理

Thanx (サンクス) はSan Francisco (カリフォルニア州) に拠点を置き、小売店舗向けに会員管理プログラムを提供しているベンチャー企業である。小売店舗は会員カードを発行する必要はなく、消費者がクレジットカードで買い物をすると、特典が貯まる構造である。消費者は、まず、スマートフォンにThanxアプリをダウンロードしておく。次に、Thanxアプリにクレジットカードを登録し、そのカードで買い物をするとポイントが貯まる。小売店舗は会員カードを用意したり、POSと連携するシステムの開発は不要で、手軽に会員プログラムを構築することができる。具体的には、消費者はiPhoneでThanxアプリを起動し、クレジットカードの写真撮影を行い (上のスクリーンショット左側、出展は断りがない限りVentureClef)、カード番号をThanxアプリに登録する (同右側)。これだけの前準備で、消費者は小売店舗において買い物をして、登録したクレジットカードで支払いをすると、自動的にThanxアプリにポイントが貯まる。クレジットカードを会員カードとして利用している。

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Thanxアプリで買い物をしてみると

上のスクリーンショットは、Mixt Greens (ミックスト・グリーン) というレストランでThanxアプリ (左側) を使っている様子である。Mixt Greensはサラダ専門店で、注文すると目の前でシェフが素材をブレンドし、ボールでシェイクしてくれる。出来上がったサラダを受け取り、会計する際に登録したクレジットカードを利用するとポイントが貯まる。右上がその様子で、登録したカードで支払いをし50%のポイントが貯まっており、もう一回来店すると無料のアイスティーをゲットできる。

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上のスクリーンショットはMixt Greensで貯まったポイントで、特典のアイスティーを貰っている様子である。左側画面で中央部のバーを右にスライドすると、特典画面 (右側) が表示される。支払の際にこの画面を提示し、表示された番号 (1852) を告げるとアイスティーが無料となる。Thanxは小売店舗で登録されたクレジットカードが使用されると、そのトランザクション・データを受信し、ポイントの加算などを行う。更に、これらトランザクション・データから、利用者の消費動向などを把握することも可能となる。

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Thanxの会員プログラムを利用できる店舗は、San Francisco地区で広がっている。このプログラムを利用できる店舗は、前述のMixt Greens (上の写真) やVocanova (南米料理) などで、チェーン・レストランを中心に採用が進んでいる。使ってみると、レジで支払いをする際にアプリを開いたり、メール・アドレスを入力する操作は不要で、普段通りの支払いで、自動的にアプリにポイントが貯まり便利である。

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汎用的なプリペイドカード・サービス

小売店舗向け顧客管理について、多くのベンチャー企業から斬新なサービスが登場している。Marqeta (マーケタ) はEmeryville (カリフォルニア州) に拠点を置くベンチャー企業で、小売店舗向けにプリペードカード・サービスを提供している。消費者はMarqeta会員に加入すると、プリペイドカード (上の写真、出展:Marqeta) を受け取り、このカードで買い物の支払いを行う。

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消費者はカードにチャージするため、小売店舗が発行しているOfferを購入する。上のスクリーンショット (出展:Marqeta) がその様子で、iPhone向けアプリから行う。左側は、Marqetaに加入している小売店舗をマップ上で検索し、好みの店舗を選択している様子。ここではNorth Beach Pizzaというピザ・レストランを選択したところである。次に消費者はNorth Beach PizzaのページでOffer (右側) を閲覧し、Offerを購入する。ここには25ドルのクレジットを購入すると、5ドルのボーナスが付くOfferが示されている。25ドルチャージしたカードをNorth Beach Pizzaで使うと、30ドル分の買い物ができる。Marqetaに加入している小売店舗はSan Francisco地区のレストランやスーパーマーケットで、400店舗がこのサービスを利用している。消費者としては、各店舗のカードを持つ必要はなく、Marqetaカード一枚で複数の店舗で買い物ができる。Starbucksでは利用者の25%がプリペイドカードで支払いをしており、大きな成功を収めている。Marqetaはこのモデルを踏襲し、小売店舗向けに汎用プリペイドカードを提供している。

Googleが開発したAndroid向け拡張現実ゲーム

Friday, December 14th, 2012

GoogleはIngress (イングレス) というゲームを公開した。Ingressは、Google社内のNiantic Labs (ナイアンティック・ラブズ) により開発され、2012年11月から、ベータ版を展開している。IngressはAndroidスマートフォン向けに開発され、拡張現実技術を取り入れ、バーチャルとリアルの境界線を見失いそうになり、脚力を必要とする健康的なゲームである。

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Ingressのストーリー

Ingressは拡張現実技術を応用したゲームで、数多くのユーザがオンラインでプレーする形式となっている。IngressはAndroidスマートフォン向けのアプリとして提供されている (上のスクリーンショット、出展はいずれもVentureClef)。Ingressは全世界の利用者が参加でき、地球上で二つの勢力が陣地を取り合うゲームである。人類は地上で新物質 (Exotic Matter、上のスクリーンショット左側画面の白い点) を発見した。地球上で、Exotic Matterへの対応で意見が分かれ、これを積極的に利用するグループ(Enlightened、啓蒙派) と、これを阻止するグループ (Resistance、抵抗派) に分かれ、争いを始めた。ゲームでは重要拠点 (Portal、同右側画面のエネルギーを噴出している点) を占拠することがミッションとなる。

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ゲーム参加者は、最初にどちらのグループに属すかを選ぶ。(私はResistanceを選択。) マップ上でEnlightenedは緑色で、Resistanceは水色で表示される。参加者は街中を歩きまわり、Exotic Matterを吸収し、エネルギーを蓄える。参加者はスマートフォンでPortalの位置を把握し、ここに歩み寄る。街中の建造物などがPortalとして指定されている。上の写真は、San Francisco市内のFerry Buildingで、ここがPortalに指定されている。ここに近づき、マップ上のPortalにタッチすると、その詳細情報 (上のスクリーンショット) が表示される。利用者がPortalのすぐ近く (Action Range) に入ると、様々な操作を実行できる。Hackボタンを押すとPortalにあるアイテムを入手できる。アイテムとは、Resonator (加速器)、Portal Shield (シールド)、Portal Key (鍵) などで、これらを使ってPortalを占拠するというミッションを遂行する。

Ingressでの戦闘行為

これら基本操作を行いながら、陣地を増やしていく。マップ上で目的のPortalにタッチし、Targetボタンを押すと、Portalまでの距離が表示され、そこまで音声でナビゲーションを受ける (下のスクリーンショット左側)。Portalに到着し、Action Rangeに入ると、Hackボタンを押して、上述のアイテムを手に入れる (同右側)。このPortalはMountain View駅前の大きなゲートである。

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Portalを占拠すると、次に、これらを連結 (Link) する操作を行う。三つのPortalを連結するとその範囲が領地 (Control Field) となり、そこの住人 (Mind Units) を支配する。ゲームは両陣営のMind Unitsの数で勝敗が決まる。

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戦いの様子をブラウザーで見ることができる。上のスクリーンショットはMountain View駅前近辺の戦況である。右端のPortalが上述の占拠したPortalである。しかしその直後、敵に奪われ、今では緑色となっている。その左の緑色で囲まれたエリアがControl Fieldで、この広さが勝敗を決める。駅前では苦戦が続いているが、Mountain View市全体では水色のResistanceが圧倒的に優勢で、緑色のEnlightenedはNASAキャンパス内で勢力を拡大している。全世界ではResistanceのMind Unitsは502万でEnlightenedは468万で、Resistanceが優位に戦闘を展開している。

Ingressをプレーしてみると

上述のPortalが敵に奪われた瞬間に、メールを受信し、その旨の通知がある。寒い中苦労して占拠したPortalを奪取されるのは不愉快で、家を出てPortalを取り戻しに行きたくなる衝動を覚え、バーチャルとリアルの境界線が怪しくなる。テレビゲームと異なり、Ingressは屋外でプレーする構造で、Portalを求めて街中を歩きまわる健康的なゲームである。San Franciscoでは観光スポットにPortalが設置されており、ここを訪ね歩くことで、主要なモニュメントを見ることができる。下の写真はAdmission Day Monumentであり、普段は見落としてしまうが、Ingressがこれを教えてくれる。

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IngressはGoogleが開発した初めての本格的なゲームであるが、その目的については何も語っていない。IngressはGoogle Maps上に展開されるゲームで、様々な応用が考えられる。Portalはモニュメントに設定されているが、これを小売店舗に設定することで、販売プロモーションなどに利用できる。開発途上のGoogle Glassに実装すると、街中の風景にPortalをインポーズできる。Googleが自社でゲームを開発するのではなく、拡張現実のプラットフォームを公開することで、第三者企業がここにアプリを展開できる。Ingressは将来性を感じさせるゲームである。

スマートフォンのカメラで撮影してカード決済

Friday, December 7th, 2012

Under the Radarは、既存路線から大きく逸脱する技術を追求したカンファレンスで、ソーシャルとモバイルの分野で斬新な技術が登場した。特にモバイル技術の進展が急で、スマートフォンやタブレット上で、経済活動が鮮明になってきたのが今年の特徴である。スマートフォン・エコノミーとも言える状況で、ユニークなビジネスがモバイル・デバイス上に登場している。

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Flint Mobileというベンチャー企業

その一つがFlint Mobile (フリント・モバイル) というベンチャー企業である。Flint MobileはRedwood City (カリフォルニア州) に拠点を置き、スマートフォンでカード決済処理を行う技術を開発している。利用者はiPhoneにFlint Mobile Payというアプリをダウンロードするだけで、カード・リーダーなどハードウェアは不要である。Flint MobileのCEOで創設者であるGreg Goldfarbが、同社のオフィスでFlint Mobile Payを使いながら、新製品の説明を行ってくれた。

Flint Mobile利用者が、クレジットカードやデビットカードの売上処理をする際には、アプリを起動し、売上商品アイテムにタッチし、売上金額を入力する。次にiPhoneのカメラでカードの写真撮影 (上の写真、出展:VentureClef) を行いカード番号を読み取る。

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上の写真 (出展:Flint Mobile) は、アプリに読み込まれたカード番号で、これで正しければ、右下のUseボタンを押して決済処理を開始する。アプリはカード番号を読み取り、暗号化して送信するだけで、iPhone内にカード・イメージなど、カード情報は残らない構造である。

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顧客は売上金額を確認し、レストランなどでは、チップを追加して、サイン欄に署名 (上の写真、出展:VentureClef) をする。チップの額はボタンをスライドし、パーセンテージを選択することで入力できる。最後に領収書を受け取るためにメール・アドレスを入力する。決済処理が完了すると、売上金額、チップ、トランザクション手数料など、会計処理の詳細がアプリに表示される。

扱っているカードはMastercardとVisaで、Flint Mobileの特徴はカード処理手数料が安いことである。手数料は、デビットカードでは1.95% + $0.20で、クレジットカードでは2.95% + $0.20である。競合企業であるSquareの手数料は一律2.75%であり、Flint Mobileのデビットカード処理手数料の安さが際立っている。Goldfarbによると、これはDurbin Amendmentを反映したものである。Durbin Amendmentとは、米国議会が2010年5月に可決した修正条項で、大手銀行が受け取るデビットカード手数料を制限する法令である。

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売上統計やマーケッティング機能

顧客は入力したメール・アドレスに領収書を受領する (上の写真、出展:VentureClef)。ここには、支払金額の他に、店舗特売情報などが表示される。領収書最上部には、店舗ロゴが入り、領収書最下部には、店舗が運営しているFacebookへコメントを投稿できるリンク (Tell your friendsボタン) が表示される。リンクをクリックすると、コメントや評価を入力するページが表示され、顧客はFacebookにコメントを投稿できる。これらのコメントは店舗と顧客のFacebookページに掲載され、口コミでビジネスが拡大することを目指している。

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店舗側はFlint Mobile専用サイトにアクセスして、トランザクション詳細情報などにアクセスすることができる。Transaction タブをクリックすると、売上金額や顧客メール・アドレスなどが表示される (上の写真、出展:VentureClef)。Socialタブでは、顧客がFacebookにポストしたコメントとレーティングの一覧が表示される。これら顧客のコメントに対して、店舗側のコメントを掲載できる。店舗側は誰が商品のファンなのか、顧客動向を把握することができる。

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考察

Goldfarbは、「Flint Mobile対象利用者は、個人店舗やプロフェッショナルで、特に、モバイル・ワーカーを中心にサービスを展開している」と説明した。「プロの写真家が、撮影現場でカード決済をする際」に、Flint Mobileが利用されている。Flint Mobileはサービスを開始したところで、一件当たりの平均処理金額は230ドルと大きいのが特徴である。Flint MobileはRedwood City中心部のビル (上の写真、出展:VentureClef) にオフィスを構えている。オフィス・フロアーは仕切りが無く、大広間にテーブルを並べて仕事をしている。また、Flint Mobileのサービスはアマゾン・クラウドに展開されている。金融サービスというとウォール・ストリートの保守的な企業を連想するが、既存路線を逸脱するファイナンシャル技術は、このビルの二階で生まれている。