Archive for November, 2013

大学病院でGoogle Glass臨床試験が始まる、「グラス診療」がブレーク寸前

Friday, November 29th, 2013

Google Glass完全ガイド:メディカル編】

病院で医師はGoogle Glassをかけて患者の診察を行う。手術室で麻酔専門医は、Google Glassで患者のバイタル・サインを見ながら処置を行う。Google Glassを使った医療トライアルが大学病院で始まった。Google Glassが医療現場を大きく変えようとしている。

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Google Glassで治療の様子をストリーミング

Santa Clara (カリフォルニア州) で開催されたDEMOカンファレンスで、Pristine社CEOのKyle Samani (上の写真) は、Google Glassをかけて手術するデモを行った。PristineはAustin (テキサス州) に拠点を置くベンチャー企業で、Google Glass向けに医療アプリを開発している。アプリは、「Pristine CheckLists」と呼ばれ、病院内の作業手順を自動化する。手術後に内視鏡など複雑な装置を殺菌処理する際に、Google Glassに手順が表示され、これに沿って作業を進める。

もう一つのアプリは「Pristine EyeSight」で、医師がGoogle Glassを着装し、治療の様子をカメラで捉え、ストリーミングする機能を提供する。担当医が見ているイメージを他の医師とスマートフォンやタブレットで共有する。PristineはPristine EyeSightの様々な活用法を提唱している。看護麻酔師が手術室で麻酔を行う際に、Google Glassから指導医にビデオを送信し、必要に応じてアドバイスを受ける。集中治療室においては、担当医がGoogle Glassをかけて患者の様態を専門医にストリーミングし、治療方針などを決定する。この他にも、指導医がGoogle Glassをかけて治療を行い、その様子をストリーミングし、研修医の教育などで使用する。下の写真はPristine EyeSightのデモで、人形を患者に見立て、治療の様子をGoogle Glassからストリーミングしている。

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カリフォルニア大学でトライアルが始まる

後日、Samaniから、Pristine開発状況などの説明を受けた。Samaniによると、Pristineはカリフォルニア大学アーバイン校メディカル・センター (下の写真) でトライアルを行っている。このプログラムは先月から始まり、Google GlassとPristineが医療現場で使われ、その機能や使い勝手を検証するものである。他の病院でもトライアルが計画されており、Google Glassを活用した医療技術に対して、アメリカ医療機関は高い関心を示している。

Google Glassのシステム・インテグレーションが必要

同時に、Google Glassを医療現場に導入するためには、解決すべき課題も少なくない。PristineはHIPPA (医療保険に関する法令) に従って、患者の個人情報を保護することが求められる。このためPristineは、Googleが提供しているMirror APIを使わないで、病院内のサーバに患者データを保存する方式を採用している。Mirror APIを利用すると、患者個人のデータがGoogleサーバに保存され、HIPPAの規定に反することになる。このためPristineは、Androidネイティブ・アプリを開発し、Google Glassで利用している。一方Pristineは、これらアプリを患者の状態をビデオ撮影するツールとして位置づけており、FDA (アメリカ食品医薬品局) の認可は不要であるとのポジションを取っている。Samaniに、日本での事業計画について聞いたところ、現在はアメリカでの事業立ち上げに集中しているが、今後は、パートナー経由で日本で事業を展開することを検討中とのことであった。

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Google Glassは製品出荷前で、利用できる数量に限りがある。また、Google Glassはシステムが不安定で、バグが多いといわれている。これら悪条件にも係わらず、Pristineはプロトタイプを組み上げ、大学病院でトライアルを行っている。ベンチャー企業の機動力には改めて目を見張るものがある。また、大学病院側もGoogle Glassを活用した医療技術に大きな関心を寄せており、「グラス診療」が大きく進展する勢いを感じる。

大手医療ベンダーもGoogle Glassを導入

Google Glassは、発表された時から、医療アプリケーションに最適であると言われてきた。PhilipsとAccentureは、Google Glassを使った医療システムのコンセプトを発表した。製品化されている訳ではないが、手術室環境を使ったデモで、Google Glassを医療に応用するコンセプトが示された。ここでは、医師が子供の患者を治療するという設定で、Google Glassの役割が分かり易く示されている。

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上の写真がその様子で、手術室で麻酔措置を行っているところである。麻酔専門医は、頭上に設置されているモニターを見ながら患者の様態を監視してきた。Google Glassを使うことで、メガネに患者の氏名、心拍数: 85、酸素飽和度: 88、呼吸数: 24が表示され、酸素飽和度の値が低いとの警告メッセージも表示されている。このコンセプトは、「Philips IntelliVue」という医療システムを、Google Glassに適用したものである。患者のバイタル・サインをGoogle Glassに表示することで、医師は措置を行いながら、患者から視線を離すことなく、患者の状態をモニターできる。大手医療ベンダーは、現行医療システムをGoogle Glassに発展させる形で、ウェアラブルを医療技術に取り込んでいる。

Google Glassをメガネ屋さんから購入

Wall Street Journalによると、VSP GlobalはGoogleとGoogle Glassについて協議を始めたことを明らかにした。VSP Globalとは、メガネ・フレームとレンズのアメリカ最大手の健康保険会社で、3万人の眼科医を抱え、6000万人の会員がいる。VSP Globalは、Google Glass向けにファッショナブルなフレームやレンズの開発、及び、眼科医をGoogle Glass向けに教育することについて協議している。アメリカでメガネを作る時に必ず利用する健康保険がVSPであり、この交渉が上手くいくと、消費者はGoogle Glassを街のメガネ屋さんから購入することになり、販売チャネルが一気に拡大する。同時に、Google Glassはクールなガジェットという位置づけから、日常必需品にイメージも変わる。Androidスマートフォンが街の家電量販店で販売され普及したように、Google Glassも大衆路線に舵を切っているのか、正式出荷を前に販売戦略の調整が続いている。

ベンチャー企業から大手医療ベンダーまで、Google Glassを活用した医療技術の開発が加速している。Google Glassの正式出荷は、来年初頭とも言われており、来年からは、医師がGoogle Glassをかけて診察する光景が一気に増えそうである。

スマート・ファブリック~衣服がセンサーとなり健康状態をモニター

Friday, November 22nd, 2013

仕事でストレスがたまると、アプリが「深呼吸が必要」とアドバイスをする (下の写真)。着ているアンダーシャツがセンサーで、心臓の鼓動をモニターし、健康状態を把握する。これは「OMsignal Shirt」というスマート・シャツで、著名人によるトライアルが始まった。

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シャツにセンサーが織り込まれている

この製品はMontreal (カナダ) に拠点を置くOMsignalというベンチャー企業で開発されている。OMsignal Shirtは利用者の心拍数、呼吸数、歩行数、カロリー消費量などを測定する。他に、Heart Rate Variability (心拍間隔の変位、HRV) を測定することで、ストレス・レベルを算出する。スマート・シャツは、利用者がリラックスしているのか、緊張しているのかを把握し、上述の通り、アドバイスを行う。センサーはシャツの胸のあたりに帯状に実装されている。センサーは二種類あり、それぞれ加速度計とECGである。加速度計で歩行数を測定し、消費カロリー量を算定する。ECGは、心拍数や心拍の間隔を測定する。これらのデータからHRVを算出し、ストレスの度合いを把握する。

家族メンバーが健康管理で利用

測定されたデータはスマートフォンに送信され、日々の生活において、運動量や消費カロリー量を把握する (下の写真)。ストレス・レベルが高い時には、アプリの指示に従って、呼吸法を調整し、緊張感を和らげる。OMsignalは、個人で利用するだけでなく、家族内での健康管理を提唱している。妻のストレス・レベルが高い時には、アラートが夫に届き、電話して様子を見ることができる。両親の健康状態についてもモニターでき、心臓の異常を検知すると、すぐに病院に連れていくなどの措置が可能となる。

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衣服にセンサーを織り込むことで、わざわざデバイスを身に着けないで、定常的に身体の状態をモニターできる。また、衣服は身体の表面を幅広く覆っているので、データを収集には適している。一方で、センサーを織り込んだシャツは、一般のシャツと同じように、快適であることが必須条件で、更に、お洒落なデザインも求められる。OMsignalは、開発者がスマート・シャツを基盤とするアプリを開発できるよう、プラットフォームを公開する予定である。

スマート・ベビーウェアで赤ちゃんを監視

衣服にセンサーを織り込むアイディアはベビーウェアでも採用されている。Rest DevicesはBoston (マサチュセッツ州) に拠点を置くベンチャー企業で、「Mimo Baby Monitor」 (下の写真) というスマート・ベビーウェアを開発している。

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ベビーウェアは「Kimono」という名前で、センサーがプリントされ、赤ちゃんの呼吸をモニターする。上の写真の緑色のストライプの部分がセンサーで、収集されたデータは、「Turtle」 (写真下段の亀の装置) と呼ばれる送信機兼センサーから「Lilypad」と呼ばれるアクセス・ポイントにBluetooth Low Energyで送信される。Lilypadは受信データをWiFiでスマートフォンに送信する仕組みとなる。

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両親はスマートフォンに専用アプリ「The Mimo」(上のスクリーンショット)をインストールして利用する。アプリはリアルタイムで赤ちゃんの状態を表示する。赤ちゃんが起きているか眠っているか、また、這っているか、立ち上がっているかを表示する。呼吸の間隔はグラフで表示され、赤ちゃんの呼吸に異変があると警告メッセージを送信する。赤ちゃんをここまで監視する必要があるのかという意見がある反面、お母さんに安心を与えるツールとして反響も大きい。Mimo Baby Monitorは2014年1月より販売が開始され、価格は200ドルの予定である。

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ソックスがランニングのコーチとなる

ソックスにセンサーが埋め込まれ、ジョギングのフォームを矯正する。このソックスはHeapsylon社の「Sensario Fitness」 (上の写真) で、底部に圧力センサーを搭載している。Sensario Fitnessは歩数、速度、移動距離、カロリー消費量の他に、ペース、接地方法、体重移動などを測定する。これらのデータを元に、ランニングのフォームについてリアルタイムでアドバイスを行う。将来はゴルフ・スイングの体重移動に関するアドバイスを行う。

FitBitやNike Fuelなどのウェアラブルが健康管理の定番商品であるが、スマート・ファブリックを使い、衣服を着るだけで身体の状態をモニターできる。本当の意味でのウェアラブルで、早くからアイディアはあったが、現実に製品の登場が始まった。

センサーをこめかみに当て、体温・心拍数から血圧までを測定

Friday, November 15th, 2013

テレビ番組「スタートレック」で登場した医療センサー「トライコーダ」 (最後の写真) が現実のものとなっている。現代版トライコーダは「Scout」という名前で開発が進み、小型円盤の形状 (下の写真) で、こめかみに当てるだけで、身体の様々なデータを測定できる。各家庭では、体調が悪くなると体温計で熱を測るのが常套手段であるが、これからはScoutで健康状態をスキャンする時代となる。

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Scoutは七種類のデータを計測する

この製品を開発しているのはScanaduというベンチャー企業で、Moffett Field (カリフォルニア州) に拠点を置き、NASA (アメリカ航空宇宙局) 敷地内で研究開発を行っている。Scoutを使う時は、上面円盤に人差し指を当ててデバイスを持ち、正面をこめかみにあてて測定する (下の写真)。Scoutに搭載されている遠赤外線センサーで体温を測定する。マイクで心拍数と呼吸数を計測。可視光LED・近赤外線LEDとセンサーで血中酸素飽和度を測定する。一般にこの機能はSpO2センサーと呼ばれている。

ECG (心電図) センサーで心臓の電気的シグナルを測定し、不整脈を検知する。血圧はPWTT (Pulse Wave Transit Time) という方式で、パルス伝搬速度を計測し算出する。具体的には、ECGとSpO2センサーを使い、心臓の鼓動と脈波が指に伝わる時間から血圧を算出する。このためカフを巻かないで簡便に血圧測定ができる。

Scoutは基本ソフトとしてMicrium社製のRTOS (リアルタイムOS) を使用している。このソフトウエアは、NASA火星探査機「Curiosity Rover」の分析装置で使用され、信頼性に定評がある。Scoutはセンサーとして、電極、可視光・赤外線センサー、加速度計、温度計、ジャイロ、マイクなどを搭載している。

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ScanaFloで尿検査を行う

Scanaduは、Scoutの他に、尿検査のためのキット「ScanaFlo」 (下の写真) を開発している。 ScanaFloはスマートフォンの専用アプリと連動し、被験者の肝臓、腎臓、メタボリズム、尿道に関する病気を検知する。使用法は、円形部分を指で持ち、四角の試験紙を尿に浸す。試験紙の色が変わり、これをスマートフォンで撮影すると、検査結果が表示される。Scoutを購入すると、ScanaFloが二個付いてくる。

クラウド・ファンディングで資金を調達

先にレポートした通り、書籍「Abundance」は、テクノロジーが加速度的に進化している理由の一つに、「DIY革命」を挙げている。DIY革命とは、クラウド・ファンディングで資金を調達する仕組みが整い、イノベーションが加速していることを指す。Scanaduがこの事例に該当し、クラウド・ファンディング「Indiegogo」で開発資金を募り、Scoutの開発を始めた。Scanaduは、2013年5月から二か月間で166万ドルを集め、目標金額の10万ドルを大きく上回った。Indiegogo出資者は、定価より安く出荷前のScoutを入手することができる。

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計測データを集約しビッグデータの解析

利用者はScoutで測定したデータをクラウドにアップロードして健康を管理する。Scoutのビジネス・モデルは、利用者の計測データをクラウドに集約し、ビッグデータの解析を通し、健康に関する新たな情報を発見することにある。世界の利用者の健康状態をスキャンし、年齢、体重、血圧、心拍数などの間の相関関係を解明することを目指している。現在、Scanaduは、ベータ利用者の許諾のもと、計測したデータを使って、FDA (アメリカ食品医薬品局) 認証作業を進めている。臨床試験を実施する代わりに、利用者の測定データを使って申請を行うというものである。製品出荷は来年第一四半期で、価格は199ドルの予定である。

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「トライコーダ」技術開発が加速している

トライコーダは、前述の通り、スタートレックでスポックが使い有名となった。未知の星に降り立ち、トライコーダで環境を調べたり、人体にかざして病状をを把握する (上の写真)。市場では「The Qualcomm Tricorder X Prize」というコンテストが進行中である。これはQualcomm Foundationが主催し、医療技術開発を競うコンテストで、34団体が参加している。Scanaduもその一社である。名称が示している通り、現代版「トライコーダ」を目指しており、ハンドヘルド医療スキャナーの開発が行われている。長期間のコンテストで、2015年前半に優勝団体が決定する。センサー技術と医療技術が融合し、「トライコーダ」開発が加速している。

伸縮するセンサーを皮膚に貼り健康管理、スマホ認証技術にも応用

Friday, November 8th, 2013

デジタル・ヘルスで斬新なセンサー技術の登場が相次いでいる。その中で皮膚に貼り付けるセンサーが話題になっている。これは「BioStamp」という名称で、バンドエイドのように皮膚に貼り付けて、身体の状況をモニターする (下の写真) 。BioStampは伸縮する電子回路でセンサーを構成し、MC10というベンチャー企業が開発している。

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様々なセンサーを伸縮電子回路に実装

MC10はCambridge (マサチュセッツ州) に拠点を置き、伸縮する電子回路をセンシング技術に応用している。MC10が開発している技術は、デジタル・ヘルス、医療機器、スポーツの分野で利用されている。BioStampはデジタル・ヘルス向け技術で、利用者はBioStampを皮膚に貼り、身体の状況をリアルタイムでモニターする。BioStampが収集するデータは、脈拍数、体温、紫外線吸収量、脳の活動などである。収集されたデータは、スマートフォン経由でクラウドに送信され、解析が行われる。

BioStamp回路構成は下の写真の通りで、ECG(心電図)センサー、EEG/EMG(脳波/筋電図)センサー、温度センサー、ひずみゲージを搭載している。ECGセンサーは不整脈など心臓の慢性疾患などを検出する。EEG/EMGセンサーは脳波を測定し、脳・神経の活動やストレス状況を把握する。EEG/EMGセンサーは、また、筋肉の活動を検知し、リハビリテーションなどで利用する。温度センサーは体温を測定する。

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MC10は上記以外にもセンサーを開発しており、Skin Hydration & Fitnessセンサーは発汗量や皮膚の状態を把握する。UV & SPFセンサーは紫外線吸収量を計測する。BioStamp最新モデルは、シールを貼る形式から、電子回路を皮膚にスタンプする方式に進化した。この上からコーティング・スプレイを吹きかけ、防水仕様で二週間使用できる。BioStampは開発中で、五年以内に出荷され、価格は10ドルの予定である。

Motorolaがスマホ認証技術として利用

BioStampはデジタル・ヘルス向けの技術であるが、Motorola MobilityはBioStampを認証技術に応用する研究を開始した。これは同社が明らかにしたもので、BioStampを皮膚に貼り付け、スマートフォンのユーザ認証を行う。詳細は明らかにされていないが、スマートフォンのNFC機構を利用し、BioStampの生体情報を読み込み、認証する方式と思われる。他に、Proteusというセンサーを使った認証方式も検討されている。Proteusはピルの中に超小型センサーが埋め込まれ、人がピルを飲み込んで身体の状態をモニターする。スマホ認証のために、センサーを貼り、ピルを飲み込む訳にはいかないので、どのような利用法を考えているのか、検証結果が待たれる。

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医療機器やスポーツ用品として出荷

MC10の伸縮するセンサー技術は医療機器で使われている。MedtronicはSan Franciscoに拠点を置く医療機器メーカで、この技術をカテーテルに応用している。上の写真がその事例で、カテーテルの気球状部分にセンサーを搭載し、患者の状態をモニターする。医師は収集したデータを元に処置を進めていく。他に、手術中にセンサーを直接心臓に貼り付け、術後の患者の様態を監視する方式も開発されている。

MC10の伸縮するセンサー技術はスポーツ用品メーカであるReebokで使われている。この製品は「Checklight」 (下の写真) という名称で、アスリートがヘッドギアとして着装し、頭部への衝撃の大きさをセンサーが測定する。センサーはヘッドギアに実装され、衝撃の強さをLEDライト (首の後ろの部分) で表示する。フットボールで脳震盪を起こし障害が残る事故が多発しており、頭部へ影響度を把握するために利用されている。他にアイスホッケー、ボクシング、スケートボードなどでも利用されている。

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Google Xとの共同研究

1兆個のセンサーが稼働する社会を目指し、そこでの技術的課題を議論する学会「TSensors Summit」では、Digital Healthというセッションが設けられ、センサーを医療システムに適用する技法が議論された。このセッションでMC10はBioStampのサンプルを示しながら、応用事例を中心に、製品概要を紹介した。BioStampを貼り身体の状況をモニターするのが、新しいライフスタイルであるとのビジョンが示された。

学会では触れられなかったが、Google研究機関Google Xが、MC10と共同で、伸縮する電子回路の研究を行っているといわれている。研究内容は公表されておらず、Motorolaとの関係も不明であるが、Googleはデジタル・ヘルスに関心を寄せているとも言われている。BioStampなどバイオ・センサーで、大量のデータが収集され、これを解析し、データの意味を把握するプロセスが鍵を握る。利用者が発症する前に、救急車が到着するなど、データ解析技術が求められる。データ解析はGoogleのコア技術で、デジタル・ヘルスが大きく展開しそうである。

1兆個のセンサーが稼働するスマート社会に向かう、未来は思っているより明るい

Friday, November 1st, 2013

情報通信技術が加速度的に進化する社会に向け、センサー技術の在り方を討議する学会「TSensors Summit」が、10月23日から三日間、スタンフォード大学 (下の写真) で開催された。発起人はJanusz Bryzekで、Fairchild Semiconductorセンサー・ソリューション部門副社長である。学会には大学や企業から数百人が参加し、センサー技術とスマート・システムが議論された。

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1兆個のセンサーが必要となる理由

学会のタイトル「TSensors」はTrillion Sensorsの略で、今後10年以内に世界のITインフラで毎年1兆個のセンサーが必要となることを意味している。現在、全世界で毎年10億個超のセンサーが出荷されており、10年後にはこの数が1000倍になることを意味している。この数はBryzekの推定であるが、他に、大手部品メーカーBoschなどからも同様な予測が発表されている。Bryzekが1兆個のセンサーが必要と推定した背景には、「Abundance」という書籍 (下の写真) がある。この本はPeter Diamandis (X Prize創設者) とSteven Kotler (ジャーナリスト) の共著で、世界は我々が予想する以上に豊かな社会に向って加速しているという内容である。世界の食糧不足、行き届かない医療体制、水不足、エネルギー枯渇などの問題は、20年以内に解決されると主張している。Abundanceとは文字通り、物が豊富にある状態を意味し、20年後には物資の供給が需要を上回り、このポイントをAbundanceと呼んでいる。

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こうした予測の背後にはテクノロジーの進化を挙げている。テクノロジーはムーアの法則に沿って加速度的に進化してきた。今では個人がKickstarterなどクラウド・ファンディングで資金を調達する仕組みが整い、イノベーションが加速している。これを「DIY革命」と呼んでいる。また、Bill Gatesなどのフィランソロピストが基金を作り、新興企業を育成している。更に、アフリカなどの新興国でインフラの普及が進み、急速にインターネット利用者が増えている。新興国から数十億人単位の消費者がEコマースを利用することとなり、大規模な経済効果が期待されている。技術進化の加速が豊かな社会をもたらすと結論付けている。

センサー・ネットワークが需要を押し上げる

Bryzekは、テクノロジーが加速度的に進化する領域として、バイオ技術、医療、ナノ技術、ネットワークとセンサー、デジタル製造 (3Dプリント)、コンピュータ、人工知能、ロボットを挙げている。ネットワークとセンサーの分野においては、スマート・システムの展開が始まり、これがセンサー需要を押し上げる。Bryzekが示すスマート・システムとは、スマホなどのモバイル、ウェアラブル、デジタル・ヘルス、モノのインターネット、コンテキスト・コンピューティング、CeNSE、5-in-5を指している。コンテキスト・コンピューティングとは、利用者の感情を含む、利用者の状況に応じた処理方式を指す。CeNSE (Central Nervous System of the Earth) とはHPが提唱する情報エコシステムで、大量のセンサーを配置し地球環境をモニターするコンセプト。 5-in-5はIBMの技術予測で、5年以内に世界を変える5つの技術。ここには、触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚を司るセンサーが含まれている。

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(基調講演を行うJanusz Bryzek。大学研究室と民間企業の橋渡しの役を担っている。)

Bryzekは、上記の技術展開を背景に、1兆個のセンサーが必要と予測しているが、テクノロジー企業からセンサー・ネットワーク市場規模予測が発表されている。CiscoやGEによると、モノのインターネット (Internet of Things) 市場規模は2020年までに15兆ドルとなると予測している。具体的な数字についてはさらなる検証が必要であるが、社会は大規模センサー・ネットワークに向って進んでいる。TSensors Summitは、今後社会インフラを構築する際に、課題となる研究テーマを議論することを目標としている。今後のセンサー・ネットワーク開発において、サミットでの議論が参照され、利用されることを目指している。

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民間企業で次世代センサー技術開発

アカデミアの研究開発と並行して、先進企業では、センサーを活用した次世代技術の開発が進んでいる。Nokiaは「Nokia Sensing XChallenge」 (上のグラフィックス) として、コンペの形でセンサー新技術の開発を行っている。このプロジェクトは、センサーをデジタル・ヘスルケアに応用する研究で、Nanobiosym 社が優勝した。またQualcommは、「Qualcomm Tricorder XPRIZE」というコンペを実施している。このプロジェクトは、センサーを利用して、消費者向けのデジタル・ヘルスケア技術を開発するもので、コンペが始まったところである。

Samsung Galaxy S4には9個のセンサーと3台のマイクが搭載されている。スマートフォンの急速な普及がセンサー技術の進化をもたらした。今ではスマートフォンの技術進化が鈍化してきたが、センサー技術ではイノベーションが始まっている。アメリカ社会は失業率が高止まりで、沈滞ムードが漂っているが、TSensors Summitでは豊かな社会が到来することを前提に、多彩な議論が展開された。ポジティブ思考が技術進化の糧となっている。