Archive for August, 2014

【緊急レポート】 Apple iWatchはおサイフケータイ機能搭載か!?

Friday, August 29th, 2014

Appleは9月9日に、次期スマートフォン (通称iPhone 6) とウエアラブル端末 (通称iWatch) を発表すると言われている。発表を直前に控え、主要メディアは新製品の踏み込んだ内容を報道している。iPhone 6とiWatchはNFC (近距離無線通信) 機構を搭載し、決済サービスに使われる。Appleは金融サービス事業に乗り出すことが見えてきた。

g382_apple_iwatch_nfc_01

白亜の特設会場

Appleは本社キャンパス近くのFlint Centerで、製品発表を行う。会場に隣接して、白亜の建造物 (上の写真) が建てられ、地元で話題となっている。ここに新製品が展示され、スマートホーム「HomeKit」のデモが行われるとの見方もある。

iWatchで決済する

iWatchは健康管理ウエアラブルと言われてきたが、NFC機構も搭載される見込みだ。iPhone 6にもNFC機構を搭載すると言われている。日本では馴染みの機能で、おサイフケータイやSuicaで使われている。iPhone 6やiWatchをリーダーにかざすだけで、支払いができる。決済は登録しているiTunesで行う。

g382_apple_iwatch_nfc_02

本人認証はどうするのか

Appleはセキュリティ機能を強化し、iPhone 6とiWatchで、異なるワンタイム・パスワードを導入する。iPhone 6では「Touch ID」 (上の写真) を踏襲し、指紋認証で本人を確認する。ではiWatchではどうするのか。手がかりになる情報は無いが、バイオメトリック情報をセンサーで読み込み、認証に使うのかもしれない。ECG (心電図) を認証で利用している事例もある。

Amaerican Expressなどと合意

主要メディアRe/codeは、AppleはAmerican Expressと、iPhone 6での決済システムについて合意したと報道。iPhone 6をクレジットカードやデビットカードとして利用する。Bloombergは、American Expressに加え、VisaとMasterCardとも合意に達したと報道。Bloombergは明確に、NFC機構を使った決済システムであるとしている。「Apple Wallet」が生まれることとなる。

大規模な既存ユーザを持っている

NFC決済ではiTunesインフラを利用する。Apple Storeで買い物をするように、店舗で買い物をした際に、iPhone 6やiWatchから、iTunesにアクセスし、登録しているクレジットカードで決済する。iTunes顧客数は8億人で、この決済システムが登場すると、Appleは一躍、大手カード会社となる。Appleが金融サービスに乗り出すことを意味する。

g382_apple_iwatch_nfc_03

アメリカではNFC決済が流行っていない

しかし、アメリカではNFC機構での決済システムは人気が無い。Googleは「Google Wallet」 (上の写真) でおサイフケータイ機能を提供しているが、余り利用されていない。アメリカで販売されているスマートフォンは、20%しかNFC機構が搭載されていない。普及は大きく遅れている。理由は利便性で、カードをスワイプするのと、スマートフォンをかざすのと、大きな違いは無い、というのが一般的な意見。

Apple Walletは成功するのか

ではAppleのおサイフケータイは成功するのか。やはり鍵はiWatchで、リストバンドで買い物できると、NFC決済の便利さが大幅に上がる。ポケットやバッグからスマートフォンを取り出す必要が無く、iWatchで支払いができるのは便利。これが決め手で、Appleが決済サービスに進出することを決めたのか、発表が待たれる。

このアイディはベンチャー企業から

リストバンドで決済するシステムはAppleが最初ではなく、既にベンチャー企業「Bionym」から登場している。同社はカナダのトロントに拠点を置き、「Nymi」というリストバンドを開発している。リストバンドのセンサーが、前述の通り、利用者のECG (心電図) を読み取り、本人を確認する。

g382_apple_iwatch_nfc_04

リストバンドがリモコン

小売店舗で買い物をした際には、レジのリーダーにリストバンドをかざすだけで支払いが完了する (上の写真)。但し、通信方式はBluetoothを利用。自動車のトランクの前で腕を上げるしぐさをすると、トランクが開く。これはNymiに搭載されているモーション・センサーが腕の動きを感知して、トランクを開く指示を自動車に発信するため。

リストバンドでスマートホーム

自宅に帰りドアの前に立つと自動でドアがアンロックされる。これはNymiのProximityセンサーが使われ、レンジに入るとドアが開錠される。部屋に入ると、Nymiはスマート家電と交信し、空調のスイッチを入れ、テレビの電源を入れる。

iWatchHomeKitの連携

この事例を見ると、iWatchはHomeKitと連携し、スマートホームのコントローラとなりえる。iWatchからスマート家電を操作するというストーリーが成り立つ。前述の白亜の建物は、スマートホームをデモするために建設された、という解釈も分かる。

iWatchの出荷が遅れる

既に報道されているように、iWatchは二つのサイズで提供され、ディプレイには曲面OLEDが使われる。搭載しているセンサーで、健康状態やエクササイズをモニターする。収集したデータは健康管理クラウド「Health」に保管する。iWatch出荷については、量産の準備が間に合わず、年内は無理との見方がある。Appleは11月の出荷を目指していたが、遅れることになる。生産は台湾Quanta Computer が行う。

iWatchのキラープアリは何か

発表直前でiWatchの輪郭が見えてきた。多くの企業からスマートウォッチが出荷されているが、利用者のハートを掴むのに苦戦している。搭載している機能がスマートフォンと重複し、スマートウォッチの存在意義が問われている。iWatchはウエアラブルでしか提供できない機能を示せるか、発表まで一日半となった。

Googleは「翼プロジェクト」で無人飛行機を開発、物流ネットワーク革命が始まる!

Friday, August 22nd, 2014

Googleは、8月28日、高度研究所Google Xで無人航空機 (Self-Flying Vehicles) を開発していることを明らかにした。これは無人ヘリではなく、翼と一体になった飛行機で、高速で長距離の飛行ができる。Googleは、自動運転車 (Self-Driving- Car) の次は飛行機で、物流ネットワークの改革に着手した。

g381_google_project_wing_01

プロジェクトの概要

このプロジェクトは「Project Wing」と呼ばれ、二年間にわたりGoogle Xで研究開発が行われてきた。無人航空機の外観は上の写真の通りで、飛行機全体が主翼となっている”Blended Wing”構造。座っている状態から離着陸する”Tail Sitter”方式を採用。滑走路は不要で、上空で水平飛行に移り、高速で長距離の飛行ができるのが特徴。

g381_google_project_wing_02

Googleは研究成果を、オーストラリア・クイーンズランド州におけるデモ飛行で公開した。これは物資輸送のデモで、農場主にドッグフードを届けるというもの。無人航空機は近くの農場を飛び立ち、事前にプログラムされたコースに沿って飛行する (上の写真)。

g381_google_project_wing_03

上空からワイヤーで荷物を下ろす

目的地に到着すると、上空でホバリングを行い、荷物ベイからパッケージをワイヤーで地上に下ろす (上の写真)。ワイヤーと荷物を接続している機構を「Egg」と呼び、荷物が地上に着地したことを検知してリリースする。無人航空機はEggに搭載しているセンサーとワイヤーの長さで、着地したことを判断する。もし途中で何かに引っかかった場合は、それを検知し、自律的に対応する仕組みとなる。無人ヘリは地上に着陸して、人が荷物を降ろすが、Project Wingは上空から無人で荷物を下ろす点に特徴がある。Googleは、上記の他に、救急医薬品、キャンデー、飲料水の輸送デモを行っている。

g381_google_project_wing_04

次世代の流通基盤構築

無人航空機は四基のローターを搭載し、幅は1.5メートルで、高さは0.8メートル。重さは8.5キロで1.5キロの貨物を搭載できる。テール部分にコンピュータが積まれ、その隣にはIMU (慣性計測装置) を搭載。IMUは加速度計とジャイロで、機体の速度や方向などを把握する。先頭部分にはGPS装置を、テール部分にカメラを搭載している。Googleは無人航空機の用途を、地震や洪水で孤立した住民に、支援物資を空輸するためとしている。将来は、一般消費者に、短時間で物資を輸送するために利用する。Googleは無人航空機のキラーアプリは運輸であると判断し、次世代の流通基盤構築に焦点をあて、技術開発を加速している。

ブータンにおける実証実験

ベンチャー企業も無人航空機を活用し、物流ネットワーク構築に取り組んでいる。Matternetというベンチャー企業は、開発途上国向けに、無人ヘリを使った物資輸送ネットワークを開発。同社はブータンで大規模なパイロットプロジェクトを展開した。ブータンは人口に占める医師の数が少なく、かつ、山岳地帯で病院への通院が困難を極める。Matternetはブータン政府とWHO (世界保健機関) からの要請を受け、首都の国立病院 (National Referral Hospital) と地方の三か所の保健所を無人ヘリで繋いだ。

g381_google_project_wing_05

このプロジェクトでは4台の無人ヘリが使われた。上の写真は国立病院でのデモ飛行の様子。無人ヘリは2キロの荷物を搭載でき、航続距離は20キロメートル。無人ヘリは、事前に設定されたステーション (Landing Station) から飛び立ち、目的地のステーションに着陸する。一連の飛行はアルタイムで監視される。無人ヘリが運ぶ荷物は病院からの医薬品やワクチンなど。また患者から採取した血液も運ぶ。ブータンは山岳地帯の国で、道路事情は必ずしも良くない。このプロジェクトは、道路インフラが整備されていない地域で、無人ヘリによる物流ネットワークが効果を上げることを実証した。

g381_google_project_wing_06

無人機で携帯電話のようなネットワーク

Matternetのビジョンは、発展途上国の道路が整備されていない地域に、無人航空機で物流ネットワークを築くこと。アフリカ・サハラ砂漠以南では、雨期には85%の道路が通行できなくなる。この地域で無人航空機で輸送ネットワークを構築し、医薬品を空輸することを目指している。ステーションをネットワーク状に配置しこれらを無人航空機で結ぶ (上の写真)。無人ヘリは飛行距離が限られているため、ステーションでバッテリー交換をする。複数ステーション経由して目的地に到達する。

Matternetは、無人航空機を使った大規模な輸送ネットワークを構築する際に、如何に安全性を確保するかについても検討を始めた。無人航空機自体の安全機構や、無人機同士での衝突回避メカニズムが必要となる。更に、無人航空機や物資を盗難から守る手立ても必要となる。Matternetはブータンでのパイロットプログラムに先立ち、ドミニカ共和国やハイチで、無人航空機による医薬品輸送の試験を行っている。発展途上国では電話通信回線が整備されてなく、携帯電話が通信インフラで重要な役割を担っている。Matternetは、これと同様に、道路が整備されてない国々で、無人航空機による物流ネットワーク構築を目指している。

g381_google_project_wing_07

AmazonPrime Air開発中

Amazon CEOのJeff Bezosは昨年12月、無人ヘリによる商品配送デモ飛行を公開した。これは「Prime Air」と呼ばれ、大きな話題となった。Prime Airで配達できる商品重量は5ポンドまでで、配達時間は30分以内。配送距離は配送センターから10マイル以内としている。無人ヘリは電池で稼働し、配送先のGPSコーディネートを入力すると、自動で飛行する仕組み。

Prime Airは会社PRビデオだと受け止められていたが、Amazonは実際にPrime Airの技術開発を展開している。Amazonは、無人航空機での商品配送を、ビジネスに取り入れようとしている。アメリカでは無人航空機の商用飛行が禁止されているため、AmazonはFAA (アメリカ連邦航空局) のテストサイトで試験を繰り返している。AmazonはFAAに対して、自社敷地内での試験飛行を認めるよう嘆願したことを明らかにした。Prime Airは性能が大幅に向上し、時速50マイルで5ポンドの荷物を積んで飛行できるようになった。Amazonは、航続距離を伸ばし、搭載しているセンサーで障害物を避ける機能などを開発している。

無人航空機で物流インフラ構成

上述の通り、アメリカではFAAの規制により、無人航空機の商用運転が認められていない。このためProject Wingのデモは、運用を認めているオーストラリアで実施された。FAAは、連邦議会や市場からの圧力で、無人航空機を航空機管制システムに統合する方向で準備を進めている。FAAは「ドローン解禁」のスケジュールを示していないが、早ければ2015年とも言われている。無人航空機の商用利用は、写真撮影、治安維持、農業などが中心である。一方、GoogleやAmazonなどは、無人航空機を物流インフラのコア技術として位置づけている。両社を中心に、無人航空機を使った物流ネットワーク改革が始まった。

Apple iWatchはスリープトラッカー搭載か?睡眠測定センサーは生活必需品!

Friday, August 15th, 2014

健康管理ウエアラブルは、運動量の計測に加え、睡眠の質をモニターする。Appleが発表予定のiWatchも、睡眠状態を計測するセンサーを搭載すると噂されている。ベンチャー企業からは、スリープトラッカーの登場が相次ぎ、睡眠を解析する技術が急速に進歩している。

g380_sense_01

Appleで睡眠の研究が始まる

Appleは昨年、大手家電メーカーPhilipsから、睡眠研究科学者Roy Raymannを採用した。Raymannは睡眠研究の第一人者で、ウエアラブルやセンサーの知識も豊富で、睡眠の質を向上する技法の研究を行ってきた。iWatchは健康管理とフィットネスのためのウエアラブルと言われている。Raymannの移籍により、iWatchにスリープトラッカーが搭載される可能性がぐんと高くなった。

眠りと環境をモニターする

新興企業からもユニークなスリープトラッカーが登場している。Helloはサンフランシスコに拠点を置き、スリープトラッカー「Sense」を開発している (上の写真)。Senseは睡眠の状態と、寝室の環境を測定し、安眠を得るためのアドバイスを行う。Senseは睡眠の状態として、深い眠り、浅い眠り、起きている時間などを計測する。同時に、Senseは、騒音、明るさ、温度、湿度、微粒子などの環境状態を測定する。両者のデータから睡眠に最適な条件を把握し、安眠のためのアドバイスを行う。また、Senseにはスマートアラーム機能があり、睡眠サイクルを考慮して、最適なタイミングで目覚ましを鳴らす。浅い眠りの時に、爽快に起床でき、上の写真のようにSenseに手をかざすと、目覚ましが止まる。SenseはクラウドファンディングKickstarterで230万ドル募り話題となった。製品価格は129ドル (プレオーダ) で、出荷は2014年11月の予定。

g380_sense_02

Senseの利用方法

製品は三つのコンポーネントから構成される。前述の「Sense」は球状センサーで、ナイトスタンドに置いて、寝室の環境を測定する。「Sleep Pill」は小型センサーで、枕に装着し、睡眠の状態を計測する。このSleep Pillが眠りの質を把握する。これらセンサーをスマホの専用アプリで制御する。上の写真はSenseをテーブルに置き、Sleep Pillを枕に取り付け (白色の円形のデバイス) 使用している。

g380_sense_03

Senseは測定結果を専用アプリに表示する。上の写真がその様子で、睡眠スコアーを「Sleep Score」として表示 (左側画面)。スコアーは良く眠れたかの指標で、寝室環境、屋外要因、睡眠の質が勘案される。寝室が最適な温度で、外部からの騒音が無く、安眠できたかが、100点満点で示される。下段のグラフは眠りの深さを示している。グラフが途切れている箇所は、夜中に目覚めたことを示す。Senseは睡眠中の騒音を録音するため、再生して、夜中に目覚めた理由を確認できる。更に、Senseは睡眠を妨げた要因を解析する。右側画面がその様子で、室温が高すぎたと結論付けている。Senseは利用者の好みの温度を学習し、最適な室温を推奨する。

g380_sense_04

Senseは数多くのセンサーを搭載

枕に装着するSleep Pill (上の写真、中央円形のデバイス) は6軸加速度計とジャイロを内蔵し、睡眠中の動きを検知する。センサーは動きから、眠りについたことを把握し、深い眠りなのか、寝返りを打っているのかを認識する。目覚めも自動で検知する。二人で一緒に寝ている時は、パートナーもSleep Pillを装着できる。相手がいびきをかいたり、寝返りを打つことを検知し、睡眠を妨げている要因を把握する。

Senseは五種類のセンサーを搭載。ライト・センサーは寝室の明るさを測定。寝室が暗い方が安眠できるとされている。温度と湿度センサーで温度と湿度を測定し、利用者の好みの条件を学習する。微粒子センサーは寝室内の微粒子を検出。花粉などを検知でき、花粉症対策を行うことができる。距離センサーで利用者の手の動きを検出し、アラームを止める。SenseはBluetooth LEでスマホと通信し、計測データを送信する。SenseとSleep Pill間はANTで交信する。因みにSleep Pillは防水加工されており、誤って枕カバーと一緒に洗濯しても壊れない。

g380_sense_05

スマホで睡眠状態をモニター

専用センサーを買わないで、スマホの加速度計を使ったスリープトラッカー・アプリで、睡眠状態をモニターできる。Azumioはカリフォルニア州パロアルトに拠点を置くベンチャー企業で、デジタルヘルス・アプリを開発。数多くのアプリを提供しているが、その中で「Sleep Time」アプリは睡眠状態をモニターする (上の写真)。アプリで目覚ましをセットし、スタートボタンを押して利用する (左側画面)。スマホは枕の下に、ディスプレイ面を下にして置いておく。アプリは、床に入ってから朝目覚めるまで、利用者の動きで睡眠状態をモニターする。測定する項目は、浅い眠り、深い眠りとREM睡眠、起きていた時間など (右側画面)。アプリはこのデータから、眠りの効率を表示する。上のグラフでは76%であるが、快適な眠りには85%以上が必要とされ、改善の余地があることを示している。

このアプリを使っているが、睡眠の質を客観的に把握でき、快眠できなかったときは、その原因を探ることもできる。今まで闇の部分であった睡眠の解析をアプリで手軽に行え、健康管理での大きな前進となった。一方、明らかに間違いと分かる計測結果が表示されることもあり、スマホで計測することの限界も感じる。精度の高いデータを求めるには、Senseのような専用センサーが必要となる。睡眠解析は健康管理の重要な部分で、スリープトラッカーが日常生活の必須機能になっていることを感じる。

センサーで食事の栄養価を解析、画期的ウエアラブルはクラウドファンディングで生まれる!

Friday, August 8th, 2014

医療やフィットネス向けウエアラブルの登場が相次いでいる。新製品の殆どがクラウドファンディングで生まれている。ベンチャー・キャピタルから出資を受ける代わりに、クラウドファンディングで消費者から資金を募る。ウエアラブルやセンサーとの相性が良く、ヒット商品はクラウドファンディングで生まれている。

g379_scio_01

ハンドヘルド光学センサー

クラウドファンディングから画期的な光学センサーが誕生した。これは「SCiO」と呼ばれ (上の写真)、イスラエル・テルアビブに拠点を置くConsumer Physicsにより開発された。SCiOはハンドヘルド光学スキャーで、物質の化学組成を読み取る。食物、植物、医薬品、オイル、燃料、プラスティック、木材等などにかざすと、その組成を分析する。

g379_scio_02

使い方は簡単で、SCiOを指で持ち、リンゴに光を照射すると、その組成が分かる (上の写真)。皮の上から果肉の組成を読み取り、その結果をスマホの専用アプリに表示する。このリンゴ100グラムは70カロリーで、糖分は17グラム含まれている、と表示される。スーパーで果物を買う時にSCiOで計測すると、どのリンゴが甘いかを見分けられる。スイカを指で叩く代わりに、SCiOで甘いスイカを見つけることができる。

g379_scio_03

ダイエット中に食事の栄養価を把握

SCiOで身の回りの物を幅広く解析できる。その手順として、専用アプリで測定する項目を選択する(上の画面左側)。上述リンゴの事例では「How Sweet」という項目を選択し、糖度を測定した。上の画面では「Nutrition Facts」を選択し、チーズの栄養価を測定したところ。測定の結果、このチーズは71カロリーで、脂肪6グラム、タンパク質5グラム、炭水化物0グラムを含んでいることが分かる (同右側)。ダイエット中、食事の際に、SCiOを食べ物かざして、栄養価を確認することができる。店頭でチーズなど食品を買う時に、SCiOで測定し、表示されている栄養価が正しいか確認できる。

組成解析の利用範囲は広い

この他に「Medicine」を選択すると、薬を検査できる。検査結果は「Advil PM Pfizer」などとブランド名が表示され、模造品ではなく本物と確認できる。「Plants」の項目を選択し、SCiOを植物の葉にかざすと、水分量を測定できる。水をやるタイミングが分かる。この方式で自分の肌をスキャンすると、体内に十分水分があるかを確認できる。「Ripeness」の項目で果物の熟れ具合を検査する。アボカドを買う時に、熟したものを選べる。「Freshness」では牛乳の鮮度を測定し、「Coffee」ではコーヒー豆の種類を判定する。将来は化粧品の成分や、衣服の素材などを判定できるとしている。

g379_scio_04

小型の分光器

SCiOは近赤外線を使った分光法で物質の組成を解析する。分子は固有振動をしており、光を当てると反射波は、それに応じた反応をする。センサーは光源と分光器から成り、分光器で反射波をスペクトラムに分解し、その特性を把握する。近赤外線分光器は研究施設などで幅広く利用されているが、大型装置で高価なため、消費者が手軽に使えない。SCiOはこれを小型化し、消費者が手にもって使うことができる。上の写真はSCiOに搭載されている分光器を示している。計測したスペクトラムはクラウドに送信し解析する。具体的には、SCiOは計測したスペクトラムをスマートフォン経由でクラウドに送信。クラウドで専用データベースを検索し、スペクトラムを解析し、その結果をリアルタイムでスマホに返す。2秒程度で結果が分かる。SCiOはConsumer Physicsのサイトで販売されており、価格は249ドルで、出荷は2015年3月から。

Kickstarterは医療機器を禁止

SCiOはクラウドファンディング「Kickstarter」で資金を募り、目標額を大幅に上回る276万ドルを集めた。KickstarterはNew Yorkに拠点を置く人気のクラウドファンディング。Kickstarterは570万人のサポーターから10億ドルの資金を調達し、13万5千件のプロジェクトをサポートしている。大手ベンチャーキャピタルに匹敵する機能を果たしている。Kickstarterは芸術、映画、テクノロジーなど、クリエイティブなプロジェクトを対象に事業を展開。一方、医療関連機器についてはサポート対象外で、病気治療を目的とするプロジェクトは禁止している。

Kickstarterは医療プロジェクトは禁止しているものの、SCiOのような健康関連機器は認めている。更に、スマートウォッチの魁となった「Pebble」はKickstarterで1027万ドルを集め、一番人気のプロジェクトとなった。医療とフィットネスの境界はグレーゾンで、両者の区別は難しい。Kickstarterは指針を見直し、医療プロジェクトについても認める方向との見方もある。

g379_scio_05

Indiegogoは医療機器をサポート

IndiegogoはSan Franciscoに拠点を置くクラウドファンディングの老舗企業。Indiegogoはアイディア実現、慈善活動、起業のために資金を調達するサイト。Indiegogoは医療プロジェクトを積極的にサポートしており、医療機器開発がここに集結する結果となっている。人気ウエアラブル「Misfit Shine」はKickstarterで断られ、Indiegogoで資金調達を行った経緯がある。この他にも、Indiegogoから画期的な医療機器が登場している。Scanaduはハンドヘルド医療センサー「Scout」の開発で166万ドルの資金を調達した。Scoutはデバイスを額に当てるだけで、心拍数、体温、血中酸素濃度、呼吸数、血圧、心電図、精神状態を測定できる画期的な医療センサー (上の写真)。ScoutはFDA (アメリカ食品医薬品局) の認可を受け製品を販売する予定。

Kickstarterはフィットネスまでを、Indiegogoは医療機器までを対象とするという相違はあるが、クラウドファンディングとウエアラブル機器の相性は良く、画期的な技術はここで生まれている。ベンチャー・キャピタリストより、一般消費者の投資判断が正しいのか、数多くのヒット商品がクラウドファンディングで生まれている。ウエアラブルは消費者が育てていると言っても過言ではない。

バイオセンサーでストレスに勝つ!混戦を生き残る健康管理ウエアラブルの戦略とは

Friday, August 1st, 2014

Appleは健康管理アプリ「Health」を発表した。Healthはウエアラブルで収集した情報を一元管理するダッシュボード。分類科目に「Galvanic Skin Response」という項目があり、健康管理のキーワードとして注目を集めている。

g378_galvanic_01

バイオセンサーでストレス管理

Galvanic Skin Responseとは皮膚の電流の流れやすさを計測する手法で、健康状態をモニターするために利用される。アイルランド・ダブリンに拠点を置くGalvanic社は、社名の通り、この手法で健康管理を行う技術を開発。これは「PIP」という製品で、指でつまんでストレス・レベルを測定する (上の写真、右側のデバイス)。PIPは個人が感じているストレスをリアルタイムで計測し、精神状態を可視化する。更に、PIPを使ってストレス・レベルを下げるトレーニングを行うこともできる。

g378_galvanic_02

ゲームを介してストレスを表示

ストレス・レベルはタブレットやスマートフォンのゲームで表示される。「The Loom」というゲームでは、PIPを指でつまむと、その結果がグラフィックスで表示される。ストレス・レベルが高い時は、画面の景色は冬で、地面や木々は凍り、空は曇り、雪が降っている (上の写真)。

g378_galvanic_03

ストレス・レベルが下がると、大地の氷が解け、青空がのぞき、春の景色に変わる (上の写真)。ゲームを楽しみながら、自分のストレス・レベルを把握できる。

この他に「Relax and Race」というゲームがある。これは空飛ぶ恐竜のレースで、リラックスするほど速く飛べる。レースでは緊張が高まりストレス・レベルが上がるが、このゲームは競技中いかにリラックスできるかが勝敗を分ける。ゲームを通して、緊張を強いられる局面で、リラックスするコツを学習できる。マインドセットを変え、深呼吸をしながら、ストレス・レベルを下げる手法を学んでいく。日々の生活に応用できそうな技法である。

g378_galvanic_04

ストレス・カレンダーで管理

「PIP Stress Tracker」というアプリを使うと、日々のストレス・レベルを時間ごとに把握できる。どの日がストレス・レベルが高かったか(上の写真左側)、また、時間帯ごとの状態を把握できる (同右側)。このアプリでストレスのパターンを認識し、健康管理に役立てる。PIPベータ版は、既に、Quantified Selfで利用されている。Quantified Selfとは、ウエアラブルなどで身体の指標を測定し、健康な生活を目指す人々を指す。文字通り、身体状態を定量化する手法である。PIPでストレス・レベルを把握し、メンタル面での健康管理に役立てる。また、試合前の緊張感を和らげるためにも、PIPが利用されている。PIPでストレス・レベルを把握し、深呼吸などを通して、落ち着きを取り戻す。

センサーの仕組み

ストレス・レベルはGalvanic Skin Responseの手法で算定する。これは、前述の通り、皮膚の電流の流れやすさを計測する手法。ストレス・レベルが上がると、血液が身体の末梢部に流れ込み、汗腺が開き、発汗を促す。発汗すると電流が流れやすくなり、これを測定することでストレス・レベルを把握する。ストレスの変化は短時間で恒常的に発生する。このため、PIPは毎秒8回、サンプリングを行う。

PIPはクラウドファンディング「Kickstarter」で資金を募り開発された。スマートウオッチのさきがけとなった「Pebble」など、多くのウエアラブルがクラウドファンディングで開発されている。PIPは今月末から出荷が開始され、価格は159ドル(アメリカ向け)。

g378_galvanic_05

BodyMediaというリストバンド

Galvanic Skin Response はPIPの他に、高機能ウエアラブルに搭載されている。「BodyMedia」は腕に装着するタイプのウエアラブルで、カロリー消費量を計測する (上の写真)。専用アプリでカロリー摂取量を入力し、入出量を管理することで、ダイエット効果を定量的に把握できる。BodyMediaは高機能センサーを搭載しており、カロリー消費量を高精度で測定できる点が評価されている。BodyMediaが計測するカロリー消費量は、中程度の運動、激しい運動、歩行数、睡眠時間などに区分して表示される。カロリー摂取量については、食事毎に利用者がマニュアルで入力する。

BodyMediaは四種類のセンサーを搭載している。三軸加速度計で利用者のアクティビティを把握。Galvanic Skin Responseセンサーで発汗量を計測し運動量を把握。ここでは運動の激しさを計測する指標として使われる。二つの温度センサーで、表面体温と身体からの放熱量を測定。測定したデータを専用ロジックで解析し、アクティビティの量と消費カロリー量を算定する。

g378_galvanic_06

BodyMediaは二つのモデルから成り、ワイヤー接続タイプ (上の写真右側) とBluetooth接続タイプ (同左側) がある。価格はそれぞれ89ドルと199ドル。高精度な情報を収集できるため、個人だけでなく、医療機関などでも利用されている。

g378_galvanic_07

JawboneBodyMediaを買収

Jawboneは昨年4月、BodyMediaを買収した。買収額は1億ドルと言われている。Jawboneは「UP」という人気リストバンドを販売している (上の写真)。UPは搭載している三軸加速度計で、消費カロリー量などを計測する。Jawboneの買収目的は、BodyMediaの高度センサー技術に関する特許を入手するため、と言われている。UPは加速度計だけを搭載したシンプルなウエアラブル。今後UPに高機能センサーを搭載し、消費カロリー量を精密に測定できるかが注目されている。

この買収が示すように、健康管理ウエアラブル市場は、高機能センサー技術に向っている。Appleが開発している「iWatch」は、10種類以上のセンサーが詰まったリストバンドと噂されている。iWatchの登場で、市場は高機能・高精度製品に向うこととなる。ウエアラブルはトレンディーなガジェットから、健康管理に必須なバイオセンサーに、その役割が変わってきた。