Archive for April, 2015

Apple Watchでの支払いは予想以上に便利!”おサイフウォッチ”がブレーク寸前

Friday, April 24th, 2015

Apple Watchを手に取ると写真以上に美しかった。実際に腕にはめてみると快適だった。Apple Storeで試着した印象で、これが決め手となり、ウェブサイトで購入した。Apple Watchで生活すると、一番便利な機能は断然「Apple Pay」(下の写真)。レジの支払いが、Apple Watchをかざすだけでできる。自動販売機にウォッチをかざすとコーラが買える。おサイフケータイの次は”おサイフウォッチ”の時代が到来すると強く感じた。

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Apple Watchでの支払いは快適

「Apple Pay」は米国版おサイフケータイで、iPhone 6で利用できる。Apple Watchもこの機能を備え、ウォッチをかざすだけで支払いができる。

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レジで支払いする際に、サイドボタンをダブルクリックすると、Passbookに登録しているクレジットカードが表示される (上の写真)。これリーダーにかざすと支払が完了する。上のケースでは、リーダーのディスプレイ部分にApple Watchをかざす。ポケットからiPhoneを取り出し、TouchIDで指紋認証する必要は無く、ウォッチで支払いができるのは格段に便利と感じた。

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クレジットカード登録と安全機能

Apple Payを使う前に、専用アプリ「Apple Watch」でカードを登録する。iPhoneの時と同じ手順で、カメラでカードを撮影し、カード番号など必要なデータを入力する。カード登録が完了すると、Apple WatchのPassbookに格納される (上の写真、左側)。

iPhoneでApple Payを使う際は、指紋認証で本人確認をする。これに対して、Apple Watchでは、PINを入力して本人確認をする。Apple Watchを着装する際に、四桁のPINを入力すると (上の写真、右側)、デバイスがアンロックされる。支払いの際には認証は必要なく、Apple Watchをリーダーにかざすだけで処理が完了。Apple Watchを外すとログオフした状態となり、ウォッチを盗まれても、他人が支払いをすることはできない。Apple Watchでも安心して買い物ができる。

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一気におサイフウォッチに移行するか

iPhoneと同様に、Apple WatchとリーダーとはNFC (Near Field Communications) 方式で交信する。支払いする際は、Apple Watchをリーダーに接触させるくらい近づけて使う (上の写真)。米国では大規模なカードデータ盗用事件が相次ぎ、多くの店舗がNFC機構を搭載したリーダーの設置を進めている。このため、Apple Payを利用できる店舗が増えてきた。便利になったのと同時に、プラスティックのカードを使うのと比べ、安心感が格段に向上した。

Apple WatchをiPhone 5とペアリングして使うことができる。つまり、iPhone 5でApple Payを使えるようになった。iPhone 5利用者はApple Watch側で支払いができる。これは、Apple Payに対応したデバイスが急増することを意味し、普及が一層進むこととなる。米国では、おサイフケータイが普及する前に、一気におサイフウォッチに移行する気配をみせている。

Apple Watchでコカコーラを買う

Apple Watchで自動販売機の支払いができる。Coca-Colaは北米で、Apple Payに対応した自動販売機の整備を進め、今年末までに10万台を導入するとしている。iPhoneやApple Watchをかざすだけで、清涼飲料水を購入できる。

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上の写真がその様子で、Apple Watchでコーラを買ったところである。自動販売機にはクレジットカードやNFCリーダーが装着されている。Apple WatchをNFCリーダー (上の写真の黄色の部分) にかざすと支払処理ができ、買いたい商品のボタンを押すとボトルが出る。

日本では駅構内に設置されている自動販売機で、Suicaを使って清涼飲料水を購入するのは、日常生活の一部になっている。米国ではNFC機構を搭載した自動販売機が、ホテルやスーパーマーケットなどに設置されている。Apple Watchで飲み物を買える社会が到来した。

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米国版SuicaもApple Watch対応へ

電車の改札でもApple Watchが使えるようになる。サンフランシスコ地区では公共交通機関「Caltrain」などで、米国版Suicaともいえる「Clipper Card」が使われている。上の写真は駅に設置されている検札機に、Clipper Cardをかざしている様子。乗り降りの際と、車内での検札で、カードをかざす必要がある (車内検札では車掌さんが持っているポータブルリーダーにかざす)。 いまClipper Card機能をiPhone 6とApple Watchに実装する計画が進められている。これからは改札でカードの代わりにApple Watchで乗車でき、通勤が格段に便利になる。

Appleは日本でのApple Payの展開についてはコメントしていないが、最重要市場と見ているのは間違いない。今後、日本においてApple Watchで支払いができ、電車に乗れるようになれば、生活がより一層便利になる。Apple Watchを使ってきて、おサイフウォッチ機能は、むしろ日本社会向きだと感じている。

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StarbucksもApple Watch対応

StarbucksではApple Watchでコーヒーを買える。Passbookに格納している「Starbucks Card」を使って支払いをする。レジで、Apple WatchにカードのQRコードを表示し、ウォッチをリーダーにかざして支払いする (上の写真)。今まではiPhoneにStarbucks Cardを表示していたが、Apple Watchをかざすだけでスマートに支払いができる。

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ただ、Apple Watchのアイコンは小さいので、Passbookアプリを探してオープンするのは、慣れるまでに時間がかかる。上の写真左側が筆者のホーム画面で、Passbookアイコンは中央最下部に位置している。レジでの支払いでは、事前にPassbookを開いて準備しておく必要がある (上の写真、右側)。Siriを使い、音声で「Hey Siri Open Passbook」と語りかけ、Passbookをオープンする方法もある。ただ、レジの待ち行列では他人の迷惑になり、控えた方がよさそうだ。

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ホテルのルームキーとなる

Apple Watchがホテルのルームキーとなるサービスも登場している。ホテルチェーン「Starwood Hotels & Resorts」は、iPhoneをルームキーとするサービス「SPG Keyless」を提供している。これをApple Watchに展開している。Apple Watchに部屋番号が表示され、ドアにウォッチをかざすと鍵が開く。ホテルカウンターで長い行列に並ぶ必要は無く、スマートにチェックインできる。

利用者は事前に、iPhoneで必要事項を記入しデバイスを登録をしておく。宿泊24時間以内に通知を受け、確認ボタンを押すとチェックインが完了する。アプリを起動すると部屋番号が表示され、そのまま部屋に向う手順となる。部屋だけでなくホテル施設でも利用できる。Apple Watchと鍵はBluetoothで交信する。SPG Keylessが利用できるホテルは「W Hotels」や「Aloft Hotels」など、ちょっとお洒落なホテルが中心となる。荷物を抱えながらiPhoneを取り出すより、Apple Watchで部屋に入れるのは便利そうだ。

「ウォッチ・ネイティブ」のアプリ

Apple Watchを使ってみて、便利な機能とそうでない機能がはっきり分かってきた。メール、テキストメッセージ、通話機能、カレンダーなどは、確かに便利ではあるが、なくてもそれ程困らない。一方、便利と感じる機能はApple Payや健康管理「Activity」などである。ざっくり区分けすると、iPhoneのセカンドスクリーンになっているアプリは余り便利と感じない。一方で、Apple Watch”ネイティブ”のアプリは便利と感じる。ネイティブアプリは、Apple Watchに搭載されているハードウェア機構を駆使し、有益な機能を提供する。Apple PayではNFC機構であり、Activityのケースでは心拍数計測などのバイオセンサーである。Apple Watchのアプリの数は3000本といわれているが、ほとんどがiPhoneアプリの焼き直しである。今後、ウォッチ・ネイティブのアプリが登場し、クールな機能を提供してくれることを期待する。

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Appleらしいお洒落なデザイン

機能面とは別に、いたるところにAppleらしいお洒落なデザインが施されている。Apple Watchを最初に起動して、iPhoneとペアリングするが、銀河星雲が回転しているようなイメージが登場した (上の写真)。ペアリングでは通常QRコードが使われるが、Apple Watchはポイントクラウドと呼ばれる、データポイントの集合体を使う。銀河星雲が四桁の数字を示し、iPhoneカメラで撮影してペアリングする。ポイントクラウドで機能が向上するわけではないが、単純作業も楽しくできる。

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ガジェットがファッションアイテムになる

やはりAppleの色彩感覚が気になる。スポーツモデル「Watch Sport」のバンドの色は五種類提供されている (上の写真、Apple Storeのショーケース)。実は、この五色の配色は、グリーンを除いて、すべてGoogle Glassのフレームの色に同じである。色調もコピーしたようによく似ている。AppleがGoogle Glassの色を参考にしたとも思えなく、消費者が好む色を絞り込むと、これら五色になるのかもしれない。

筆者はブルーのバンドと装着感に惹かれて、Apple Watchを購入した。このモデルを着装するとすがすがしい気分にな。着装するときは、袖を少しめくり、Apple Watchがチラッと見えるようにしている。Appleがスマートウォッチをデザインすると、ITガジェットからファッションアイテムになる。

生活が横着になったシリコンバレー、人工知能を使った宅配サービスが大ブーム!

Friday, April 17th, 2015

シリコンバレーでベンチャーキャピタルの投資が過熱している。1999年のインターネットバブルの投資金額を上回り、第二のブームになっている。インターネットバブルでは、ウェブサービスが中心だったが、今回はリアル社会のサービスが中心となる。その中で、人工知能を駆使した宅配サービスが波紋を広げている。宅配は日本企業の得意分野であるが、ITを駆使したシステムから、学ぶところが少なくない。宅配サービスで横着になった生活をレポートする。

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大型投資の衝撃

生鮮食料品宅配サービスを提供する新興企業「Instacart」は、昨年12月、大手ベンチャーキャピタルから、2億2千万ドル (264億円) の投資を受けた。ベンチャーキャピタルの投資が活発だが、誕生まもない新興企業にこれだけの規模の投資をするのは異例。Instacartは生鮮食料品を”オンデマンド”で配送する。スマホ専用アプリ「Instacart」から、商品を注文すると、宅配スタッフ(Shopperと呼ばれる) が指定したスーパーマーケットで買い物をして、自宅まで届けてくれる (上の写真)。宅配費用は安く、配送時間を一時間ごとに指定できるのがうれしい。

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スーパーマーケットで販売されている商品を購買

このサービスが大人気で、筆者もスーパーマーケットに買い物に行く代わりに、スマホで宅配サービスを利用するようになった。操作は簡単で、アプリで行きつけのスーパーマーケット「Whole Foods」を選ぶと、ホーム画面に商品一覧が表示される (上の写真、左側)。野菜やフルーツの他に、食肉や魚介類 (上の写真、右側)、デリ、牛乳や卵、食パン、パスタ、調味料など、スーパーマーケットで販売されている商品が全て揃っている。通常のショッピングアプリと同じで、アイコンににタッチし、個数を指定して商品をカートに入れる。

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希望する時間帯を一時間単位で選ぶ

商品の選定が終わると、カートアイコンにタッチして、チェックアウトする (上の写真、左側)。決済は登録しているApple Payででき、新興企業のサービスでも安心して利用できる。従来通り、クレジットカードを登録して、支払いするオプションもある。最後に、配送時間の指定画面で、希望する時間帯を一時間単位で選ぶ (上の写真、右側、別の日の事例)。

通常1~2時間程度で配送される。商品は店舗と同じ価格に設定されている。配送手数料は3.99ドルだが、混雑時は4.99ドルかかる。また、購買金額が35ドル以下の場合は、配送手数料が7.99ドルに跳ね上がる。日本では時間単位の同日配送は当たり前だが、シリコンバレーではInstacartが初めて手掛けた。明日朝のシリアルを切らしたときも、直ぐに注文でき、今では手放せないサービスになった。

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注文した商品はInstacart専用のショッピングバッグで、時間通りに届けられた (上の写真)。但し、注文したブロッコリーは在庫が無く、その旨をボイスメッセージで連絡を受け、後ほど、この代金が払い戻された。米国のサービス品質は必ずしも良くないが、商品が時間通りに届き、欠品についての細かい対応に、正直驚いた。

柔軟な勤務体系がサービス品質向上の鍵

宅配スタッフはJimという名前の男性で、自分の自動車を運転して商品を届けてくれた。JimはWhole Foods店舗を担当する配達員で、スマホで注文を受け、それに従い買い物をし、商品を顧客に届ける。Jimは毎週五日程度勤務し、当日は10時から14時までと、16時から18時まで勤務していた。このように、宅配スタッフは自分の都合のいい時間帯だけで仕事ができる。

宅配スタッフの多くは20歳代を中心とする、若い労働層が中心になる。しかし、Jimは60過ぎの男性で、仕事を引退して宅配スタッフをしているようであった。自動車はプリウスで、身なりや話し方からすると、生活に困っている様子ではなかった。引退後も社会にかかわっていたい、という雰囲気を感じた。Instacartは柔軟な勤務体系を提供し、これが優秀な人材を惹きつける。シリコンバレーでの働き方が大きく変わった。

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配送員になるプロセス

宅配スタッフを希望する人はInstacart専用サイトから応募する。応募者は履歴などの調査の後、面接と教育を受け採用される。上の写真は応募のプロセスを示したもので、氏名などの基本情報の他、希望の勤務体系を記載する。ここで、仕事をする曜日や勤務時間などを指定する。また、希望する勤務地域を指定できる。自動車を持っていればその情報を記載する。ウェブサイトで応募し、簡単に宅配スタッフになれる。

Instacartはパートタイムとは異なる。パートタイムでは、会社が勤務時間を指定するが、Instacartは従業員が勤務時間を選択できる。好みの時間を自由に選択できるという意味で”アラカルト勤務”とも呼ばれている。自由度が大きい勤務体系が、今の時代の労働者にアピールしている。

ソフトウェアの力にかかっている

一方、雇用側は、配送スタッフの数が曜日や時間帯により大きく変わるため、需要に合わせた労働力の確保が新たな課題となる。マニュアルでの調整では間に合わず、人工知能など、ソフトウェアを駆使して最適化する。待ち時間を最小限にし、顧客へ1時間以内に配送できるシステムの構築は、ソフトウェアの機能にかかっている。配送員の位置情報をGPSで把握し、日時や天候などの要因を勘案し、最適なロジスティックスを構成する。パターンの数が膨大で、Machine Learningなどの手法を活用し、過去の事例を学習し、労働力の最適化を図っている。

システムは学習を続けている

Instacartのシステムは完成している訳ではなく、まだ学習を続けている。Instacartの宅配スタッフは正社員ではなくコントラクターで、4000人いるとされる。宅配スタッフの給与は、配送件数と商品アイテムの数から算出される。Instacartは時給25ドル程度としているが、閑散期には時給10ドル程度ともいわれている。顧客からの注文が少ない時は、配送員は自動車の中で待機し、次の注文を待つことになる。配送員は多めに配置され、バッファーとしての機能も担っているようだ。

Uberのモデルをコピー

Instacartのシステムは、合法なハイテク白タク「Uber」のモデルをコピーしたものである。Uberはライドシェアと呼ばれる運輸ネットワークを展開し、45か国130都市でビジネスを展開している。ドライバーは、自家用車を使い、自分の都合に合わせ働くことができる。この労働形態がドライバーに訴求し、サンフランシスコ地区ではタクシードライバーが、雪崩を打ってUberに移動している。

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Uberモデルをレストランの出前に応用

宅配サービスは、スーパーマーケットの買い物だけに留まらない。出前サービス「DoorDash」が破竹の勢いで事業を拡大している。同社は、地域のレストランと提携し、出前サービスを展開している。スマホ専用アプリから、レストランの料理を注文すると、DoorDashの宅配スタッフ (Dasherと呼ばれる) が届けてくれる。

アプリには近所のレストランが掲載され (上の写真、左側)、希望のレストランのメニューから料理を選ぶ (同右側)。この日は昼ごはんに、クレープを注文しているところである。料理を選んで、チェックアウト画面で支払いをする。ここでもApple Payで決済でき、安心して利用できる。料理の値段は同じだが、配送手数料が一律に5.99ドルかかる。チップはオプションでパーセントボタンを押して支払う。

注文が終わると、アプリには配送プロセスが表示される。11:02に注文を受け付け、到着予定時刻は11:49と表示された。実際には11:38に料理が届けられ、配達されるまでの時間は36分だった。30分程度で料理が届くので、一回使い始めると、止められなくなった。

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レストランで食事するより早い

この日は「Crepevine」というレストランでSiena CrepeとPattaya Crepeを注文した (上の写真)。サラダとスプーンやフォークがついてきて、そのまま食事ができる。ここは大人気のレストランだが、予約は取らず、店では席が空くのを待たなくてはならない。DoorDashを使うと30分程度で食事が届くので、レストランで食事するより早く食べられる。

出前スタッフは女子学生で、自分の車で配送してくれた。女性は時間がある時に、DoorDashで出前サービスをしているとのこと。忙しそうでゆっくり話を聞けなかったが、学費や生活費を稼ぐため、働いている様子であった。

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インフラのコストは最少

出前で使う自動車には、フロントグラスにDoorDashのプレートが付いているだけで、特別な仕様にはなっていない。また、配送スタッフはDoorDashのTシャツを着ているが (上の写真)、私服で来る人も少なくない。つまり、DoorDashは、出前サービスのインフラには、ほとんどコストをかけていない。ハードウェアにはお金をかけないで、ITを駆使して身軽に配送事業を展開するのが、いまのビジネスモデルになっている。ただ、DoorDashのケースでは、調理というプロセスが入るので、ロジスティックスが格段に複雑となる。調理時間や間違った料理への対応などが必要となり、人工知能の手法であるMachine Learningを使っていると言われている。

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Googleがベンチャーに苦戦

ベンチャー企業の登場で、Googleが苦戦している。Googleは、独自の配送サービス「Shopping Express」を展開しているが、伸び悩んでいる。Amazon対抗のサービスとして開始したが、実際には、小回りの利くベンチャー企業との競合が厳しくなっている。Shopping Expressで注文すると、配送は翌日で、しかも配送時間帯は午前・午後・夜の枠から選ぶこととなる。同日配送や一時間ごとの指定ができない。配送手数料も4.99ドルと、やや高めの設定である。

そもそもShopping Expressは、生鮮食料品を取り扱っておらず、衣料品や家庭用品などが中心となる。そのため、毎日利用するのではなく、使用頻度はぐっと低くなる。ずっとShopping Expressを使ってきたが、今ではInstacartに乗り換えた格好となっている。上の写真はShopping Express専用車両で、通りで頻繁に目にする。インフラにコストがかかっており、Googleのサービスが重厚長大で、時代の波に乗り遅れているのを感じる。

シリコンバレーの生活パターンが変わる

Instacartはニューヨークなど15の主要都市で事業を展開している。シリコンバレーでは多くの家庭がInstacartを利用している。また、DoorDashはサンフランシスコを中心に、7都市でサービスを展開している。シリコンバレーではDoorDashが大人気で、パロアルトでは4軒に1軒が利用しているといわれている。前述の通り、人気レストランで食事を注文するより、出前サービスのほうが早く食事できる。ただ、DoorDashの出前料金は少し高いので、筆者宅では友人と一緒にレストランに行く代わりに、DoorDashを利用している。出前サービスで料理を注文すると、自宅でくつろいで食事ができる。

シリコンバレーで働き方も大きく変わった。パートタイムとして企業に就職する代わりに、InstacartやDoorDashなどで、自分の都合のいい時間に働くスタイルが広まってきた。類似のサービスが数多く登場しており、これを本業としている人も出始めた。複数の仕事を掛け持ちし、時給が最大になる組み合わせで働く。稼ぐ人であれば、年収6万ドル (720万円) になる人もでてきている。Uberが仕掛けたビジネスモデルが、幅広い分野で波紋を広げている。

企業側のビジネスモデル

大手ベンチャーキャピタルがInstacartに大規模な投資をし、DoorDashに注目しているのは、このビジネスモデルを高く評価しているため。Instacartで買い物をしても、価格はスーパーマーケットと同じ設定となっている。これが可能となるのは、Instacartがスーパーマーケットから、販売コミッションを貰う仕組みとなっているため。つまり、スーパーマーケットとしては、Instacartを新しい販売チャネルとして位置づけ、新規顧客を呼び込み売り上げが増えるとみている。

一方で、大手スーパーマーケット「Safeway」で買い物をすると、商品価格が15%増しとなる。これは、コミッションを貰えないケースで、追加料金がInstacartの事業収益となる。実は、Safewayは独自の配送サービスを展開しており、Instacartとは競合する関係にある。

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DoorDashも同じ構造で、レストランからコミッションを貰っているといわれている。レストラン側としては、DoorDashの出前サービスが新たな販売チャネルで、売り上げが伸びるとみている。事実、レストラン側としては、出前サービスで売り上げが伸びており、重要な新規事業として力を入れている。ただ、消費者の視点からは、レストラン出前サービスが乱立状態で、受け取る料理の品質に大きな幅があり、レストランの選択には注意が必要。上の写真はクレープを注文したCrepevineで、ウェブサイト前面でDoorDashを紹介し、出前サービスを積極的にプロモーションしている。

高齢化社会の重要なインフラ

このモデルは日本の都市部での配送システムに応用できるかもしれない。日本では既に大手企業の宅配サービスが充実しているが、もっとフットワークの軽いモデルを構築できれば、誰でも気軽に安い値段で利用できる。特に、自由に買い物に行けないシニア層向けに提供できれば、高齢化社会の重要なインフラとして機能する。これらのサービスを支えているのがMachine Learningなど人工知能で、IT企業の果たす役割が重要となる。

Apple Watchを見据えたデジタルヘルス、臨床試験基盤「ResearchKit」で医学が進歩!

Friday, April 3rd, 2015

センサーやウエアラブルや人工知能の進化で、デジタルヘルスが転換点に差し掛かっている。Appleは昨年9月、「Health」アプリを投入し、健康管理市場へ参入した。先月は、臨床試験基盤「ResearchKit」を発表し、医療研究を下支えするフレームワークを投入。来月にはApple Watchが登場し、健康管理で重要な役割を担う。Appleのデジタルヘルス戦略のストーリーが繋がってきた。

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臨床試験を支援するサービス

医療現場でResearchKitが話題になっている。ResearchKitは医療機関向けの技術で、これを使えば簡単に臨床試験アプリを開発できる。一方、臨床試験に参加するモニターは、iPhoneでこのアプリを稼働し、身体情報を記録する。具体的には、臨床試験アプリは、健康管理アプリ「Health」が収集したデータを読み込み、モニターのアクティビティや健康状態を収集する。医療機関はこれらデータを解析し、医療情報に関する知見を得る構造となっている。

既に、ResearchKitで開発された臨床試験アプリが登場している。Stanford Medicine (スタンフォード大学医学部) は、心臓の健康状態を解析するアプリ「MyHeart Counts」を開発した (上の写真、アプリ専用サイト)。このアプリはモニターの日常生活をモニターすることで、生活習慣と心臓疾患の関係を医学的に解明することを目標にしている。更に、心臓疾患を予防するためには、どのような生活を送るべきかを理解する。

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モニターになってみた

筆者もこのアプリを使った臨床試験に参加した (上の写真左側、アプリ初期画面)。こう書くと仰々しいが、誰でも簡単に臨床試験に参加できるのがこのアプリの最大の特徴だ。アプリで研究目的や注意事項を読み (上の写真右側)、同意書に名前をタイプするだけで手続きが完了。スタンフォード大学病院に行って説明を受ける必要は無く、全てアプリで完結する。使用できるスマホは、iPhone 5s、iPhone 6、及びiPhone 6 Plusだが、既にApple Watch向け機能も実装されている。モニターは、身体情報を大学病院に”寄付”するが、その見返りとして、心臓の健康状態を把握できる。

モニターはアプリが指定するタスクを実行し、アンケート調査に回答する方式で進む。アプリはiPhoneセンサーでモニターの動きを自動で把握し、収集したデータから、行動パターンや心臓の健康状態を理解する。収集したデータは暗号化して送信され、名前はランダムに発生したコードで置き換えられる。身体情報を扱う研究なので、セキュリティー機能に配慮されている。ただ、収集したデータはスタンフォード大学以外でも使われる可能性ありとの記述が気になったが、ここは目をつぶってサインした。

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アプリが読み込むデータソース

試験開始前に、アプリが読み込む身体情報のデータソースを指定する。上述の通り、モニターの行動は、iPhoneに搭載されている各種センサーで、自動的に収集される。センサーが収集したデータはHealthに格納され、これをアプリが利用する構造となっている。上の写真左側がその設定画面で、Healthに格納しているデータの中で、アプリがアクセスできる項目を指定する。身長や体重などの基本情報へのアクセスを許諾した。また、血糖値や血圧など、健康診断情報へのアクセスも許諾した。最後に、アンケート調査に回答する。質問は、健康状態から家族の病歴まで、広範囲に及ぶ。上の写真右側がアンケート調査の画面で、ここでは仕事と運動量についての質問に回答している。

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データ計測は自動で行われる

試験中はiPhoneを携帯して生活するだけで、何も特別な操作は必要ない。iPhoneはズボンのポケットに入れるよう指定され、加速度計がアクティビティーや歩数を自動で計測する。一日が終わると、前日の睡眠時間など、簡単な質問に回答する。これで計測が終了し、その結果が円グラフで表示される (上の写真左側、下段)。円グラフの色が、アクティビティー種目 (睡眠、座ってる状態、運動している状態など) を示す。更に、一日の歩数が示される。アクティビティーや歩数は、上述の通り、健康管理アプリHealthで収集される。上の写真右側がHealthアプリの「Step」画面で、一日の歩行数を示している。アプリはここから歩数などのデータを読み込む。

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心臓年齢や病気に罹る確率

計測は一週間続き、最後に「ストレステスト」が行われる (上の写真左側)。これは名前の通り、心臓に負荷をかけ、心拍数を測定し健康状態を算定するものである。モニターは三分間、できるだけ早く歩き、アプリはその歩行距離を記録する。Apple Watchや他のウエアラブルで、歩行中と終了三分後の心拍数を計測する。アプリは年齢、性別、身長・体重に応じた歩行距離や心拍数をベースに、モニターのフィットネスを算定する。まだApple Watchは出荷されていないので、今回は歩行距離だけが使われた。

アンケート調査「Heart Age」に回答すると、モニターの心臓年齢を算出する (上の写真右側、サンプル)。心臓の健康年齢と病気 (心臓疾患と脳梗塞) にかかるリスクの割合が表示される。このケースでは、62歳のモニターの心臓年齢は60歳と若く判定されている。病気発症の確率は6%と、目標値 (7%) よりいい結果となっている。(筆者のケースでは、病気に罹るリスクが標準より高いと判定された。健康状態をデジタルに示されるとインパクトが大きい。これを契機に、食生活の改善や運動の強化を考えているところ。)

運動を促すコーチング

試験は7日間続き、これが1セットとなり、三か月ごとに繰り返される。一週間の試験が終わると、アプリはモニターに対し、毎日運動するよう「コーチング」を行う。三か月後に、再度、同じ試験を一週間にわたり行う。コーチングはゲームやメッセージなどで、アプリはどの方式が一番効果があるかを検証する。但し、筆者のケースでは、一週間のテスト期間が終了したが、コーチング情報は表示されていない。

大反響を呼んだ臨床試験アプリ

スタンフォード大学は、アプリを公開して24時間で、1万人が登録したと公表した。これだけの規模のモニターを募るには、通常、一年の歳月と50の医療機関が必要とされる。iPhoneアプリとHealthで臨床試験ができるようになり、多くのモニターを短期間で集めることができた。収集したデータはそのままクラウドに記録される。従来の紙ベースの臨床試験と比べ、はるかに効率的に知見を得ることができると評価している。

臨床試験アプリへのコメント

一方、ResearchKitで開発したアプリを使った臨床試験に対し、様々な意見が寄せられている。モニターから得られるデータの質が議論となっている。iPhone利用者は高学歴・高収入という統計情報があり、臨床試験モニターはデモグラフィックスを正しく反映していないのでは、という疑問の声も聞かれる。その一方で、FDA (米国食品医薬品局、新薬などの認可をする機関) はスマホを使った臨床試験について肯定的な評価をしている。アプリを使った臨床試験で、医療技術が進むことを期待している。因みに、このアプリは医療行為は行わないため、FDAの認可は不要である。

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パーキンソン病研究アプリなど

MyHeart Counts以外にも、ResearchKitで開発されたアプリが登場している。その一つがパーキンソン病研究のためのアプリ「mPower」で、University of RochesterとSage Bionetworksにより開発された。アプリで敏捷性、バランス、記憶力、足並みを測定することで、日常の行動と病気の関係を理解する。モニターはアプリを起動し、人細指と中指で画面を早くタップしたり (上の写真)、マイクに向かって長く「アー」と発声する。俊敏性や発声とパーキンソン病の関係を解析する。研究に寄与するだけでなく、モニターは自身の病気の予兆を早く知ることができる。また、糖尿病研究のためのアプリ「GlucoSuccess」や乳癌研究のアプリ「Share the Journey」などもリリースされている。

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IT企業はデジタルヘルスに向う

Googleは2014年7月、人体の研究を行うプロジェクト「Baseline Study」を開始した。Baseline Studyは175人の健康なモニターから遺伝子と分子情報を収集し、健康な人体のベースライン情報を把握する。心臓疾患や癌の兆候を早期に発見することを目的とする。身体情報はウエアラブルで収取される。Googleが開発したコンタクトレンズを使うと、血糖値をリアルタイムで測定できる。測定したデータは、個人の遺伝子情報と共に、人工知能を使って解析される。健康な人体を定義し、医師は病気予防に重点を置いた措置が可能となる。他に、Microsoft、IBM、Samsungなども、デジタルヘルス分野で技術開発を加速している。IT企業がデジタルヘルス事業を展開する背後には、テクノロジーの進化がある。プロセッサーやセンサーや人工知能の技術開発が進み、低価格で生体情報を収集・解析できるようになった。

AppleはResearchKitで、Healthやウエアラブルを束ねるアプローチを取っている。ResaerchKitを使うと、病院や製薬会社は、簡単に臨床試験を展開できる。現在は、iPhoneで身体情報を収集するが、やはり最適なデバイスはウエアラブルで、Apple Watchを見据えた設計となっている (上の写真)。Apple Watchの機能は心拍数の計測に留まるが、将来は、幅広い生体情報を収集すると期待されている。消費者にとってはResearchKitは無縁の存在であるが、医療現場では医学研究にインパクトを与える画期的なツールとして評価が高まっている。今年はデジタルヘルス市場でブレークスルーが起ころうとしている。